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事前協議制度 ― 制度の重要性の認識を

 日米安保条約に関する事前協議制度、とりわけ岸・ハーター交換公文に基づく3つの類型の中の「日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設・区域の使用」について、外務大臣とやり取りしました。

 私がまず質問したのは、事前協議の意義について。林大臣は、「我が国の領域にある米軍が、我が国の意思に反して一定の行動をとることのないように義務付けらている」と答弁。次に、日米安保条約の本質部分は、米軍による共同防衛義務(5条)と、在日米軍基地の提供(6条)であり、戦闘作戦行動のための協議があったとき、これに同意しないというのは例外的にならざるを得ないのではないかとの私の野党としては踏み込んだ指摘に対しては、「我が国の国益確保の見地から、我が国が自主的に判断」すると、形式的かつ慎重な答弁。タイミングとして、重要影響事態の決定より、事前協議が先に来ることの可能性について問うと、「全くそういうことがないと言い切れない」と、これまた慎重ながら否定はしない答弁。私が米軍が攻撃を行うことの必要性と正当性、在日米軍基地を使わずに目的達成できる可能性、米軍の基地から戦闘作戦行動を行ったことにより日本が攻撃を受ける可能性、日米同盟に及ぼす影響などを判断要素とすべきとの指摘に対しては、「まさに、そうした点も含めて、国益確保の見地から決定」 「判断にあたっての項目には当然入ってくる」と、慎重ながらも肯定的な発言。年内に予定される国家安全保障戦略の見直しにあたって、事前協議についても議論すべきとの指摘に対しては、「今委員からお話のあったようなことも含めて、これを検討していかなければならない」と答弁。私の問題意識は事前協議制度、とりわけ戦闘作戦行動のための基地使用の協議は、周辺有事となった場合に日本政府にとって重大な決定を迫られることになるということにあります。林外務大臣は、言葉を慎重に選んでの答弁でしたが、認識は共有されていると感じました。残念だったのは、私としてはかなり踏み込んだ質問をすることで、政府に答弁の機会を作ったつもりでしたが、林外務大臣は慎重な答弁に終始し、議論が深まらなかったことです。

 このように重要な事前協議制度の政府内での決定手続きや国会との関係が、法令上定められていないことが二番目の論点でしたが、議論はかみ合わないままでした。林大臣は事前協議は行政府の専権であることを繰り返し強調されたわけですが、専権だから政府内手続きの定めがなくてよいことにはなりません。重要影響事態や存立危機事態では、閣議決定や国家安全保障会議での議論が法律上求められていますが、なぜ同じように重要な決定である戦闘作戦行動のための基地使用の事前協議について、法律の規定がないのか。また国会への事前または事後の承認や報告がなぜ法律上必要とされていないのか。林大臣は「単純な比較は困難」 「事前協議制度に問題があるとは考えていない」 「特別の事由ない限り事前協議の事実を事後に公表し、国会にも報告している」と述べましたが、なぜ政府間手続きや国会との関係について、法律の定めがないのかという点について、説明は全くありませんでした。「公表されると軍事機密が明らかになり、我が国の安全保障に重大な影響を与える場合には公表できない」とも答弁しましたが、個別の戦闘作戦行動について事前協議が求められるのではなく、周辺有事の場合に、包括的な事前協議とその承認がなされることも考えられますし、国会承認も事後に行うことが可能です。全体として、全くかみ合わない議論となりましたが、政府内の決定手続きや国会との関係が何の規定もないのは、明らかに問題です。

 自衛隊が後方支援や集団的自衛権の行使を行うとの決定と比べ、在日米軍基地からの戦闘作戦行動の事前協議が、時間的に先になる可能性があり、また、相手国から見れば自衛隊の後方支援(重要影響事態)よりもはるかに大きな脅威となる可能性があるだけに、国家安全保障戦略の中でどのように位置づけるべきか、今後とも議論を深める必要があります。



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