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4/27 外務委員会 質疑(2025年万博特権・免除協定、核の持ち込みをめぐる問題、中長距離ミサイルと事前協議)

【委員会】 衆議院 外務委員会
 
     
【日 時】 4月27日(水)09:30 ~10:15  【40分間】
      
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     ⇒  You tube 【岡田かつや国会論戦】2022.4.27

【質問要旨】

 I. 2025年万博特権・免除協定
   1. ロシアの万博参加について

 II. 核の持ち込みをめぐる問題
   1. 核搭載艦の一時寄港や航空機立寄りの扱い
   2. 米国政府のNCND政策
   3. 認識不一致の放置
   4. 1974年日米首脳会談に向けての努力
   5. 岸田政権における取組み

 III. 中長距離ミサイルと事前協議
   1. 中長距離ミサイル配備と事前協議
   2. ミサイル発射と事前協議
   3. 米海兵隊の機動展開前進基地作戦

  (答弁要求 外務大臣等 及び防衛省)



議事録

岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。
 まず、条約関係で一問だけ。
 先ほど来、二〇二五年万博に対するロシアの参加の問題が与党の質疑者からも質問が出ました。経済局長の方は、現状のままでは認めることができないというふうに答弁されたと思いますが、大臣の御答弁は、想定されないという答弁だったと思うんですね。
 想定されないというのはどういうことですか。やはり、今のこの状況が続く限りは認めることができないとはっきりおっしゃるべきじゃないですか。
林国務大臣 先ほど政府委員から答弁をいたしましたけれども、そこで認められないという表現を使っていたかどうか、ちょっと私は、ここで聞いておりましたけれども、想定されないというふうに申し上げていたのではないかというふうに思います。
岡田委員 想定されないというのはどういうことですか。想定する主体は誰ですか。ちょっとよく分からない答弁なんです。
林国務大臣 政府として想定をしておらないということでございます。
岡田委員 想定する、しないというのがよく分からないんですね。認める、認めない、どちらなんですか。
林国務大臣 先ほど申し上げましたように、今後の情勢をよく踏まえて対応するということでございますので、今の時点で、先ほど申し上げましたように、現下の状況が変わらなければ、今の状況であれば想定をされないということでございます。
岡田委員 現下の状況が変わらなければ認めないと違う意味で、想定されないを使っておられるんですか。
林国務大臣 最終的に判断するのは政府でございますので、この状況が続いて、二〇二五年に先立ってどこかの時点で判断をするときにこの状況が続いていれば当然認めないことになるということでございますが、まさにまだこの状況がどうなるか分かりませんので、想定をされないというふうに申し上げております。
岡田委員 この状況が続けば認めることはできないというふうに今大臣は答弁されたと思います。想定されないというのは、非常に主語もよく分からないし、想定するというのはよく分からないので、ちょっと確認をさせていただきました。
 それでは、それ以外の問題で、今日は、核の持込みをめぐる問題について少し議論をしたいと思います。
 まず大臣にお聞きしたいと思いますが、核兵器を搭載した艦船の一時寄港や航空機の立ち寄りについて、今の日本政府も、これは事前協議の対象になる、そういう考え方であると考えてよろしいですね。
林国務大臣 我が国は、一貫して、事前協議の対象である核兵器の持込みには米艦船及び航空機の寄港、飛来、通過が含まれると述べてきておりまして、この日本政府の立場は現在も同様でございます。
岡田委員 他方で、米国政府は、NCND政策を背景に、一時寄港や立ち寄りは事前協議の対象ではないという考え方を取っているというふうに理解していますが、その点もよろしいでしょうか。
林国務大臣 アメリカは、外国政府からの照会への対応などにおいて、NCND政策、すなわち、核兵器の所在を肯定も否定もしない政策を現在も取っているというふうに承知をしております。
岡田委員 したがって、アメリカは、一時寄港や立ち寄りは事前協議の対象ではないという考え方だということでよろしいでしょうか。
林国務大臣 我が国を取り巻く安全保障環境や現実に核兵器が存在していることを踏まえれば、核抑止力を含む米国の拡大抑止は不可欠でございます。その上で、米国のNCND政策は、核兵器の隠匿性や残存性を確保するなど、核抑止力を有効に担保するために必要な戦略上の要請に基づくものであると理解をしております。
 その上で申し上げますと、冷戦終結後、これまで公にされた米国の核政策に加えて、米国は我が国の非核三原則に係る立場をよく理解していることから、核兵器を搭載する米艦船及び航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されていないところでございます。
岡田委員 大臣、その答弁はちょっと驚きですよ。それは密約解明前に戻ってしまっていますよ。
 要するに、密約を解明した結果、日本とアメリカの間に認識の不一致がある、その認識の不一致がいつから発生したかということについて、一九六〇年の岸・ハーター交換公文を交わしたときに果たして認識があったかどうかということについては、外務省はそのときには密約はなかったと言い、そして、有識者は広義の密約があったというふうに言っているわけですね。あるいは、外務省の元次官の中には、いやいや、一九六〇年段階でそういった一時寄港などは当然認めるという共通認識だったんだよ、その後変わっていったんだという、いろいろな見方がありますが、いずれにしても、そういった認識の不一致が、一定の段階で日本政府ははっきり認識したわけです。
 少なくとも、一九六八年の東郷局長による、密約で明らかになった文書を見れば、もうその段階では、認識の不一致があるということについて、総理大臣や外務大臣が替わるたびに外務次官が、そういう問題があるんだ、認識の不一致があるんだということはきちんとレクチャーしていたということは分かっているわけですね。
 今の大臣の御答弁は、アメリカが言ってこない以上、それは艦船に搭載されていない、そういう従来からの答弁に戻ってしまっていますよ。それはさすがに私はちょっと理解できない、容認できないんですが、いかがですか。
林国務大臣 今御指摘のありました認識の不一致を含めまして、いわゆる密約問題については、まさに民主党政権時代に外務省におきまして徹底した調査を行って、二〇一〇年の三月にその結果をいわゆる「密約」問題に関する調査報告書として公表をしておられまして、現政権として、この報告書の内容を引き継いでおるところでございます。
 当時の政府の対応につきまして、その後得られた情報に基づいて評価することは困難であり、いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会報告書においても、今委員からも少し触れていただきましたけれども、外交には、ある期間、ある程度の秘密性はつきものであるとした上で、外交に対する評価は、当時の国際環境や日本国民全体の利益、国益に照らして判断すべきものである旨述べられているところでございます。
 しかし、一方で、この問題がこれほどの長期間にわたって国民に対して明らかにされてこなかったということは遺憾であると考えております。
 政府としては、今後とも、国民とともに歩む外交を実践し、国民の負託に応える外交の実現に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
岡田委員 ちょっと私、混乱しているんですが、明らかにしなかったことは遺憾であると。それは安倍総理の答弁でもあるんですね。
 ただ、その問題に行く前に、さっきの大臣の答弁は、では、今でも、アメリカが何も言ってこないから、一時寄港とか航空機の立ち寄りとか、そこで核の搭載はない、アメリカが言ってこないからないんだとアメリカのせいにして、日本政府としては、言ってこない以上はないと信ずるという、従来の日本政府のスタンスを今も続けておられるということですか。
林国務大臣 先ほど御答弁したとおりでございますが、一方で、認識の不一致については、今まさに御答弁したように、民主党政権時代の調査によって公表されたものがあるわけでございまして、我々として、この報告書の内容を引き継いでおるわけでございます。
 そのときの報告書には、ある期間、ある程度の秘密性はつきものであるとした上で、当時の国際環境、日本国民全体の利益、国益に照らして判断すべきものであるというふうに述べられているところでございます。
岡田委員 では、ちょっと観点を変えて、また後に戻りますが、安倍総理も言われた、長期間にわたって国民に明らかにされてこなかったことは遺憾である、大臣も言われました。
 明らかにされてこなかったと人ごとみたいに言っていますが、国会でうそを言ってきたわけです、歴代の総理や外務大臣が。ありませんと言ってきたわけですよ。そのことについてどう考えているのか、自民党政権として。もう既に、密約の結果が出て十年たつんです。
 私は、密約の結果を明らかにしたときは、当時の野党自民党や歴代総理を責めることはやめようと判断しました。密約の結果を明らかにするときに、歴代の総理大臣や外務大臣には、こういうことで発表させていただくということを事前に丁寧に説明もいたしました。
 だけれども、それから十年間、ずっとほったらかしで、いや、遺憾だと。遺憾じゃないんですよ。国会でうその答弁をしてきたことについて、やはりきちっとどこかでは総括してもらいたい、そう思って私は質問しているわけです。
林国務大臣 先ほど委員会の調査報告書について申し上げましたけれども、当時の政府の対応につきまして、その後得られた情報に基づいて評価すること、これは困難であり、この有識者委員会報告書においても、外交には、ある期間、ある程度の秘密性はつきものであるとした上で、外交に対する評価は、当時の国際環境や日本国民全体の利益、国益に照らして判断すべきものである旨、この時点で述べられているところでございます。
 そして、ここから先は先ほど申し上げたとおりでございますが、これほど長期間にわたって明らかにされてこなかったことは遺憾であるというのは、今、岡田委員がおっしゃったように、安倍総理も御答弁されたとおりでございます。
岡田委員 ですから、六〇年段階でどうだったのかということを私は言っているんじゃないんです。そこは見解が分かれるところだと思います。でも、六八年以降は、認識の不一致があることははっきりと日本政府は認めていたわけです。そして、その旨を、歴代の総理大臣や外務大臣が替わるたびにきちんと報告していたわけですね。
 だから、六〇年のことを言っているんじゃなくて、六八年、少なくとも六八年の段階では認識の不一致ははっきりと認識していたわけですから、認識の不一致があることは分かりながら、アメリカが言ってこない以上は、核を搭載した船の入港はありませんと言い続けたことは、それは明らかにうそだし、そのことについてどうなのかというふうに問うているわけです。
 大臣の先ほどの答弁は、それは六〇年段階の答弁としてはいいと思いますし、密約調査でもそういったことを、あるいは私の発言もそういうふうに述べていると思いますが、六八年以降は少なくとも通用しない話だと思いますが、いかがですか。
林国務大臣 繰り返しになるかもしれませんけれども、当時の政府の対応について、その後得られた情報に基づいて評価することは困難であるということ、そして、ある期間、ある程度の秘密性はつきものであるということが報告書に書かれております。また、外交に対する評価というのは、当時の国際環境、国民全体の利益、国益に照らして判断すべきということでございまして、これは六八年を境に、そのことについて、六八年以前のみについて語られたということでは必ずしもないのではないかというふうに思っております。
岡田委員 では、大臣、改めてお聞きしますが、現状はどうなんですか。現状でも、アメリカは言わないんです。もうそのことははっきりしている。日本は、アメリカが何も言わないから、ないんだと。これは明らかに国民を欺いていると思うんですね、アメリカが言わないことは分かっていて。だから、こういう現状にあることを大臣はどう考えておられるんですか。
林国務大臣 これは、冒頭申し上げましたとおり、冷戦終結後、米国の新たな核政策が公にされたことに加えて、米国は我が国の非核三原則に係る立場をよく理解しているということから、核兵器を搭載する米艦船及び航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されていないと申し上げたとおりでございます。
岡田委員 アメリカの核政策の変更によって、現状ではそういうことはないだろうというのは分かりますけれども、アメリカの政策はまた変わるかもしれませんよね。それから、戦略爆撃機とか戦略原潜ということだってあり得る。だから、私は、緊急時における一つの考え方というものを外務大臣としてお示しをいたしましたが、アメリカの政策が変わったらどうするんですか。
 あるいは、今、航空機については、やはり、アメリカの政策といったって、航空機に核を積んでということは戦略爆撃機でなくてもあり得るわけですから、それが日本に来るということは一〇〇%否定はできないんじゃないんですか。どうですか。
市川政府参考人 米国の政策についての御質問でございましたのでお答えさせていただきますが、米国は、二〇一八年、「核態勢の見直し」におきまして、冷戦後、アジア配備の全ての核を撤去したことを表明してございます。
 また、その過程におきましては、一九九一年のブッシュ・イニシアチブにおいて、海軍の水上艦艇、攻撃型潜水艦、陸上配備航空機からの戦術核兵器を撤去する旨を表明、また、一九九四年NPRにおいて、水上艦艇及び空母艦載機から戦術核兵器の搭載能力を撤去することを決定いたしております。
 また、二〇一〇年NPRにつきましては、水上艦艇及び通常型潜水艦からの核兵器を撤去することを含めて、太平洋地域から前方展開の核兵器を撤退させたということを表明していることでございまして、先ほど大臣が答弁されましたとおり、現在の、冷戦終結後、これまでに公にされた米国の核政策に加えて、米国が我が国の非核三原則に係る立場をよく理解しているということから、核兵器搭載の米艦船あるいは航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されない、このように答弁させていただいているものでございます。
岡田委員 米国が日本の非核三原則を理解しているからそういうことはないであろう、これは従来の、六〇年代からの日本政府の答弁そのままですよ。ちょっと言い方を変えているだけですよ。
 アメリカは、そういう事態は困ると言い続けてきたんじゃないんですか。アメリカとしては、当然、一時寄港とかそういったことはあるんだ、それがないなんと言われたら困るということで、いろんな、ライシャワー発言とかラロック発言とかそういうのも出てきたし、それを、いや、アメリカは理解しているから大丈夫だというのは、それは従来と全然変わっていませんよ、密約調査のその前と。
 余りにもそれは不誠実だと思いますが、大臣、いかがですか。
林国務大臣 今局長から答弁したとおりでございまして、まさに委員がおっしゃったように、長い間このことが放置をされていたということは遺憾であるわけでございますが、一方で、今局長から答弁したとおり、冷戦終結後は、公にされた米国の核政策に加えて、米国が我が国の非核三原則に係る立場をよく理解しているということで、核兵器を搭載する米艦船及び航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されないと考えております。
岡田委員 アメリカが日本の非核三原則をよく理解していると。具体的にどういう発言があるか、教えてください。
林国務大臣 これはもう委員もよくお分かりのとおりでございますが、外交上のやり取りでございますので、相手側の発言ということについては、こちらから申し上げることは控えさせていただきたいと思います。
岡田委員 少なくとも十年前、私が外務大臣を務めたときには、そういう発言は過去にもありませんよ。こういう不一致があることはむしろ困る、それがアメリカ政府じゃないですか。
 もし、その後、何か違う発言があるというなら教えてください、具体的に。外交上の秘密と全部封じてしまって、それを唯一の根拠にして今大臣は答弁しておられるわけだから、外務委員会で議論する意味がないじゃないですか、それじゃ。きちんと答弁してください。
林国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、これは相手との関係がございますので、ここでつまびらかに、相手がこう言ったということを申し上げるのは差し控えたいと思います。
岡田委員 岸田総理は、非核三原則は変えないというふうに今国会でも答弁をされました。それはいいんですけれども、しかし、現実には、一時寄港や立ち寄りはアメリカ側は協議しないわけですから、あとはもうアメリカ頼みだけで、今、大臣の答弁のように。
 実際、非核三原則に穴が空いているんじゃないですか、一部。にもかかわらず、非核三原則は守ると強弁し続けるというのは、それは不誠実じゃないですか、国民に対して。
林国務大臣 岸田総理が御答弁されておられますとおり、日本政府として、非核三原則を堅持する方針に変わりはないわけでございます。唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現を目指すとの考えでございまして、政府としては、非核三原則を政策上の方針として堅持をしておりまして、これを見直すような考えはないと考えております。
岡田委員 今日の外務大臣の答弁を見たら、米国側は愕然とするんじゃないかと私は思いますよ。恐らく、日米同盟にとっても深刻な事態だというふうに思うんです。この問題が難しいことは分かりますけれども、だけれども何とかしなきゃいけない、そういう方向性を持って対応することが私は必要じゃないかと。
 緊急事態における私の発言も、リスクは非常にありました。だけれども、認識の不一致があるということを明らかにしただけでは、やはり責任を果たしたとは言えない。だから、アメリカの政策の話をして、そしてもう一方では、緊急時においてはそのときの政権が判断するしかないという言い方をすることで、少しでも前に進めたつもりなんですよ、この問題の解決に向けて。
 あれから十年たって、また大臣のような御答弁では、それは元に戻っているだけじゃないですか。密約の解明によって、歴代、自民党政権で事実に反することを言ってきたこと、そのことも明らかになっているわけですから、そこのリスクは大分軽減されているんですよ。問題は、あと、今の現状のこの食い違いを、不一致をどう解決していくか。それについて全く何も言わずに、非核三原則は守ります、そして、アメリカが日本の非核三原則を分かっているから、そういうことはありませんといって、アメリカの責任にしてしまう、これで日米同盟は大丈夫ですか。
 密約調査の結果、関連の外交文書二百九十六点が秘密指定解除されています。その中で、当時、条約局審議官だった栗山元次官が作ったペーパーというのがあります、昭和五十六年六月二十二日。実は、この中で栗山さんが言っておられるのは、緊急時における対応について、国家の緊急存立の場合には政府の責任において最終的に判断するとの国内説明を行うべきだという御提案があります。実は、私の発言は、これに触発されたようなものなんです。
 栗山さんは、もう一つ、この文書の中でこう言っているんですね。従来どおりの日本の解釈で米国と合意することは、米国の核戦略に大きな制約を課すことになるので、米国が同意しない、他方で、一時寄港を全面的に事前協議の対象外とすることは、現状では国内政治上受け入れられない、その中間で日米双方が受入れ可能な新方式を見出すしかないというふうに栗山さんは言われています。
 私は非常に参考にすべき見解じゃないかというふうに思うんですが、いかがですか。
林国務大臣 当時の政府の対応について、その後判明した情報に基づいて評価するということは困難であります。
 また、御指摘の文書を含めて、公開された個別の外交文書の意義及び価値についての判断というのは差し控えたいと思いますが、いわゆる今委員がおっしゃった栗山ペーパーに言及されております、例えば国家の危急存亡の場合には政府の責任において最終的に判断をするとの国内説明を行うという考え方、今委員御自身がおっしゃったように、これは当時の岡田大臣の答弁と矛盾するものではないわけでございます。そして、この岡田大臣がされた答弁というのは、岸田内閣において引き継いでおるということを従来より申し上げてきておるところでございます。
 その上で、冷戦終結後、これまで、米国の核政策に加えて、米国は我が国の非核三原則に係る立場をよく理解していることから、核兵器を搭載する米艦船及び航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されないというのは、先ほど申し上げたとおりでございます。
岡田委員 一九七四年十一月十九日の日米首脳会談、田中総理とフォード大統領の会談ですけれども、それに向けて、当時の外務大臣は木村俊夫先生、私の郷里の大先輩であります。そして、大平蔵相が外務大臣代理を務めました、一定の期間。このお二人が中心になって、日米首脳会談に向けて、この問題の解決に、何とかできないかということで外務省の中でも様々な協議が行われたということは、この秘密指定解除をされた文書の中でも出てきます、いろいろと。
 どういう対応をされたのか御説明いただけますか、簡単に。
市川政府参考人 御指摘の、認識の不一致の解消に向けた当時の政府の検討状況につきまして、例えば、昭和四十九年十月二十九日付の外務省文書「事前協議問題について」におきまして、同問題について日米交渉において実現すべき基本ライン及び主要な問題点などについて検討が行われておりまして、その中では、最重点は、事前協議の対象となる核兵器の日本への持込みの概念を明確化し、原則として、単純な我が国の領海、領空通過及び一時寄港はこれに含まれないことを確立することにあると記載されており、平成二十二年の調査報告書においても、昭和四十九年十一月、外務省内で核搭載艦船の領海通過、寄港を事前協議の対象から外す可能性について検討を行い、大平外務大臣臨時代理、田中総理大臣などにも諮りつつ、米側への打診を開始したと記載されてございます。
 また、首脳会談における対応につきまして、昭和四十九年十一月十九日の田中総理とフォード大統領第一回会談における核問題詳録には、田中総理からフォード大統領に対して、日米安保条約は日本への核兵器の持込みを事前協議の対象としていること、日本政府としては、この政治的課題に応えねばならぬ立場にあることなどを述べた上で、フォード大統領に米側の理解と協力を求めたことが記録されてございます。これに対しフォード大統領からは、この問題の解決につき、できるだけ協力していきたいと思う、日米両国政府が協力すれば必ず解決策は見出されるものと信ずる、詳しいことはキッシンジャー長官と木村大臣とで話し合ってもらいたい、いずれにしても、この問題のために日米の特別な友好関係を害するようなことがあってはならないと思うとの応答がなされたことが記録されてございます。
 さらに、外相会談における対応について、昭和四十九年十一月二十日の木村外務大臣・キッシンジャー国務長官会談における核問題詳録には、木村大臣から、この問題は我が国国内政治上最高レベルの政治的決定を要する問題であるが、今日この場で詳細に触れることは適当ではないと考える、今後日米の政府間で話し合っていきたいと述べ、キッシンジャー長官から、核についての日本国民の特殊な感情は理解すると述べた上で、今日のこの会談が詳細にわたり話し合う最良の機会ではないとの貴大臣の発言には同感であり、今後、日本側よりワシントンに誰かを派遣するか、あるいは米国側より誰かが東京に来て話し合うこととしてはいかがかと思うなどの応答があったことが記録されております。
 以上でございます。
岡田委員 外相会談では、外には言わないけれども、日米間で、政府内で話し合っていくということが確認されたということです。
 ただ、残念なことに、その直後に田中総理大臣は退陣をするということになって、三木総理になった。三木総理は、この問題、とてもじゃないけれども取り扱うことは難しいということで、そこで一旦沙汰やみになったというふうに理解しております。
 ただ、外務省の中でも、それから当時の木村外相や大平外相代理のそういうイニシアチブもあって、議論はかなりされたということは事実なんですね。そのことは文書で明らかになっております。
 私は、核の持込みをめぐる日米の認識の不一致の問題を放置することは、一つは、日米両国の信頼関係を損ない同盟関係を弱めるものだ、他方で、国民に対して今後も、先ほど大臣が使われたような論理で、いわばそれは私は政治的にはうそだと思います、そういうことが国民の政治に対する信頼を損ねることになりかねない。双方の意味があるがゆえに、やはりこの問題に対して何らかの解決策というのを考える責任があるんじゃないかというふうに思います。もう密約が解明されてから十年たつんです。ずっとこの問題は放置されたままなんです。
 先ほど言いました大平大臣は、総理になった後もこの持込みの問題について非常に問題意識を持っておられたということは、例えば、身内である森田一さんの著書にも出てまいります。伊東官房長官や加藤副長官に、国民に分かってもらえる方法はないだろうかというふうに言われたとされています。
 やはりこれは、半分ぐらいはもう取り除かれているわけですから、残りのところ、これは難しいですけれども、林大臣、大平総理の系譜を継ぐ岸田内閣であり林大臣ですから、この問題を何とかしよう、そういう意欲はお持ちじゃないですか、どうですか。
林国務大臣 御指摘は多といたしたいと思います。
 そして、大平総理は、楕円の法則というのもおっしゃっておられましたが、同時に、永遠の漸進主義ということもおっしゃっておられたわけでございます。そして、岸田総理は、まさにリアリズム外交ということもおっしゃっておられるわけでございます。
 繰り返しの答弁はいたしませんけれども、まさに岡田外務大臣が、緊急事態ということが発生して、核の一時的寄港ということを認めないと日本の安全が守れないというような事態がもし発生したとすれば、それはそのときの政権が政権の命運を懸けて決断し、国民の皆さんに説明する、そういうことであるということを答弁をされた。それに至る経緯が、今委員がるる述べられたこの調査報告書、また栗山ペーパーにも言及をされましたけれども、そういうことであったんだろうなということは私も推測はされるわけでございます。
 まさにこれは岸田内閣で引き継いでおるわけでございますので、今委員から御指摘のあったことも含めて、しっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。
岡田委員 国政選挙目前ですから、今慎重になられるのは分かりますが、その後、もし少し時間があるとすれば、この問題についてもしっかり岸田内閣の下で前進させるということについてお願い申し上げたいと思います。
 余りこれを政争の具にするというのはよくありませんので、この問題を解決するためにもし協力する必要があるということであれば、少なくとも、私はこの密約の問題に関わってきたわけですので、個人的には御協力をしたいというふうに思っております。
 さて、残された僅かな時間ですが、中長距離ミサイルと事前協議について、この前ちょっと議論させていただきましたが、限られた時間ですので、端的にお聞きしたいと思います。
 仮に、中長距離ミサイルを米軍が在日米軍基地に配備するということになった場合に、これは事前協議の対象なんでしょうか。
林国務大臣 装備における重要な変更、これは、藤山・マッカーサー口頭了解によりまして、核弾頭及び中長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設、これを意味しております。
 これは、米国が日本政府の意思に反して核兵器の持込みを行うことがないようにするためにできた取決めでございまして、その趣旨に照らしても、中長距離ミサイルとは、あくまで核専用の中長距離ミサイルというものを念頭に置いて了解をされております。
 核、非核両用のミサイルについては、核弾頭を装備した場合には核兵器でございますが、核弾頭を装着しない場合には非核兵器であり、したがって、核弾頭を装着していない核、非核両用のミサイルの持込み、これは事前協議の対象ではないということでございます。
岡田委員 当時、一九六〇年当時と今ではもう全然違っていて、ミサイルのそのものの性能とか位置づけとかが変わってきていると思います。
 一時、米国政府は、中距離ミサイルを配備するということを前政権のときには主張したりいたしました、まだ決まっていないとは言っていましたけれども。
 仮に、日本の在日米軍基地に中距離ミサイルを配備するということになった場合に、それは、あらかじめ協議なしで、アメリカ政府の独断でそれができるということですか。
林国務大臣 藤山・マッカーサー口頭了解につきましては、その後もその内容を整理した上で、一九七五年に米国政府との間で、核弾頭、ニュークリア・ウォーヘッズとの用語を含む英文も文書で確認し、そのことを当時の国会でも御説明をしてきているところでございます。
 したがって、制度としては、この藤山・マッカーサー口頭了解に基づいてなされるというふうに考えております。
岡田委員 大臣は藤山・マッカーサー口頭了解をよく引用されるんですが、その後に、これは密約調査の結果として討議の記録というのが出てきていて、藤山・マッカーサー口頭了解というのは、それの一部分をあたかも文書が存在するかのように説明したということも明らかになっているわけです。
 だから、議論するのならやはり討議の記録を基にして議論しなきゃいけないので、この前も申し上げましたが、藤山・マッカーサー口頭了解というのは、外務省が都合のいいように、もちろんアメリカ政府と協議したかもしれませんが、一部だけ、それをつまみ食いのようにしていったというふうに私は思いますので、その点は申し上げておきたいと思います。
 非常に中途半端になりましたが、やはり、中距離ミサイルを日本に配備した後、撃つときには、これは出撃になりますから、当然事前協議の対象になりますよね。そうであれば、やはり配備のときから当然それは協議の対象になると考えるべきだと私は思っております。
 もう少し議論したかったんですが、時間が参りましたので、この辺にさせていただきたいと思います。




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