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4/13外務委員会 質疑(事前協議制度に関する諸問題)

【委員会】 衆議院 外務委員会
 
     
【日 時】 4月13日(水)09:30 ~10:15  【45分間】
      
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     ⇒  You tube 【岡田かつや国会論戦】2022.4.13

【質問要旨】

事前協議制度に関する諸問題

 I. 戦闘作戦行動のための事前協議
   1. 事前協議の不同意の場合の同盟関係
   2. 重要影響事態、存立危機事態認定との関係
   3. 判断の要件(「国益そして国民の安全」の意味)
   4. 国家安全保障戦略見直しにおける位置づけ

 II. 事前協議の手続き
   1. 最終決定権限者は総理か外務大臣か
   2. 手続き規定が存在しない理由
   3. 閣議決定、国家安全保障会議の役割、国会承認・報告などの必要性

 III. 中・長距離ミサイル配備と事前協議
   1. 核専用ミサイルのみが「討議の記録」の中・長距離ミサイルに該当するとの解釈の根拠
   2. 在日米軍基地からのミサイル発射は事前協議の対象か

  (答弁要求 外務大臣等)


議事録



岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。
 今日は、事前協議制度について、幾つか論点を絞って議論したいというふうに思っております。
 一九六〇年、日米安保条約締結時の岸・ハーター交換公文、ここでは三つのことを事前協議の対象にしております。米軍の日本への配置における重要な変更、装備における重要な変更、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用。
 こういった事前協議制度、とりわけ、最後に申し上げた戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用、どういう政策的意図を持ってこういったことが事前協議の対象になっているのか、大臣の見解を聞きたいと思います。
林国務大臣 日米安保条約上の事前協議制度でございますが、一九六〇年の岸・ハーター交換公文に基づくものでございます。
 同制度の意義でございますが、日米安保条約改定時の提案趣旨説明におきまして、当時の藤山外務大臣から、「特に重要な事項、すなわち、米軍の配置及び装備の重要な変更並びに戦闘作戦行動のための施設・区域の使用については、別に交換公文をもって、事前の協議にかからしめることとした」と説明したとおりでございます。
 すなわち、事前協議とは、我が国の領域にある米軍が、我が国の意思に反して一定の行動を取ることのないように義務づけられているものだと承知をしております。
岡田委員 在日米軍基地の提供、安保条約六条、それから米軍による共同防衛義務、五条、この二つが日米安保条約の本質的な部分だというふうに私は理解をいたしますが、仮に直接出撃についての事前協議があった場合に、これに同意しないというのは、極めて私は例外的な場合にならざるを得ないんじゃないかというふうに思うわけです。
 基地の提供ということを共同防衛義務の見返り、いわば見返りとして基地の提供をしているときに、大事なときにそれが使えませんよというのは、これは非常に、日米同盟という観点から見ると、例外的な限られた場合にしかできないんじゃないかというふうに思うんですが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
林国務大臣 仮定の質問にお答えすることは難しいとは思いますけれども、事前協議に際しては、我が国の国益確保の見地から、具体的事案に即して我が国が自主的に判断をして諾否の決定をするということだと考えております。
岡田委員 ちょっと観点を変えて質問したいと思いますが、日本の周辺で有事が発生した場合に、例えば重要影響事態とか存立危機事態、私は存立危機事態については大きな疑念を持っていますが、今の制度に即して言うと、重要影響事態や存立危機事態の認定というものがなされる場合があります。その重要影響事態や存立危機事態の認定よりも早いタイミングで、戦闘作戦行動のための在日米軍基地を使用するための事前協議がなされる、あるいは、日本政府としてその決断を迫られるということは当然起こり得ると思いますが、いかがですか。
林国務大臣 これも仮定の質問にお答えすることは差し控えたいというふうに思いますが、個別具体的な状況においてそれぞれ判断されるべき事柄で、どちらが先かというのも一概に申し上げることは困難であると考えます。
 まあ、全くそういう可能性がないということは言い切れないというふうに思います。
岡田委員 どちらもあり得るということだと思うんですね。
 ですから、日本国政府として重要影響事態や存立危機事態の認定という大きな判断をする、その手前に基地使用の事前協議という大きな判断を迫られる場合があるということだと思います。よく、だから、周辺有事について重要影響事態とか存立危機事態の認定が議論されるわけですけれども、実は基地使用の事前協議というものが一番最初に来る可能性があって、それは日本政府として非常に重大な決断を迫られるということだと思います。
 大臣に確認したいと思いますが、もし在日米軍基地からの直接出撃というものがなされた場合に、例えば航空部隊による相手国に対する攻撃、日本の基地から飛び立って攻撃するというようなことがなされた場合に、当然これは、相手国から当該基地に対する反撃とか攻撃、あるいは基地以外の日本に対する武力行使ということにつながる可能性があるということはお認めになりますね。
林国務大臣 これも、仮定の御質問でございますので、お答えすることは差し控えたいと思います。
 一般論として申し上げますと、事前協議への諾否と日本に対する武力攻撃の有無の間の因果関係について一概に申し上げるというのは大変困難であるというふうに考えております。
岡田委員 因果関係といいますか、当然、今、日本でも敵基地攻撃能力の議論、自民党の中でも大分やっておられると思いますが、在日米軍基地から攻撃をしてくれば、やはり、そこに対する反撃とか、あるいは、基地だけじゃなくてそれ以外の日本に対する攻撃とか、そういうことは可能性としてはあり得るということだと思います。
 そこで、先ほど大臣も答弁されましたが、事前協議について、例えば、岸田外務大臣の時代に、国益そして国民の安全という観点から、具体的事実に即して自主的に判断していきたいというふうに答弁されております。これは岸田外務大臣だけではなくて、たしか安倍総理も同様の発言をしておられたのではないかというふうに思います。
 ここで、国益そして国民の安全の観点というのは、もう少し具体的に言うとどういうことなんでしょうか。
林国務大臣 事前協議に際しましては、我が国の国益確保の見地から、具体的事案に即して我が国が自主的に判断して諾否の決定をするということでございます。
 日本の安全、これを国益というときには念頭に置いておるわけでございまして、それを確保する見地から判断を行うということでございます。
 その際に、極東の安全なくしては我が国の安全を十分確保し得ない、こういう認識の下に、極東の安全に関係する事態を常に我が国自身の安全との関連において判断し、我が国の安全に直接また極めて密接な関係を有するかどうかという見地から対処するというのが従来からの政府の立場でございます。
岡田委員 今、極東という懐かしい言葉を大臣が使われましたけれども、ただ、今、在日米軍基地というのは、狭い意味では極東ということかもしれませんが、米軍の活動範囲は広がっていて、直接出撃攻撃というのはもう少し幅広い範囲でもなされる可能性はあるわけですね、現に、ベトナム戦争のときには沖縄の基地から爆撃機が飛び立っていったわけですから。そういう意味で、私は日本の周辺という言い方をしたわけですけれども、いずれにしても、先ほど言いましたように、その反撃というリスクも抱えながら大きな政治判断をしなければいけないということだと思うんです。
 イエスと言ったことによって被るリスクと、それから、ノーと言ったことによって同盟関係が決定的な危機に至るというふうに思いますので、そのマイナスと、そういうものを判断していくということだと私は思いますが、もう少し丁寧に言うとすると、例えば、米軍が攻撃を行うことの必要性と正当性、在日米軍基地を使わずに目的を達成できる可能性、攻撃が行われることにより日本が受ける影響、とりわけ日本が攻撃を受ける可能性、そして日米同盟に及ぼす影響、そういったことが私は判断要素として考えられるんじゃないかというふうに思うわけですが、もしこれにつけ加えるべきものがあれば、大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。
 いずれにしても、国益そして国民の安全という言葉だけで判断をできるはずはなく、それから、国民にとっても非常に大きな、そのことによって攻撃を受けたり日米同盟がおかしくなったりという大きな判断ですから、もう少し丁寧に御説明されるべきじゃないかと思って私は申し上げたんですが、いかがでしょうか。
林国務大臣 今、岡田委員から四点要素を挙げていただきましたが、まさに、そうした点も含めて、国益確保の見地から、具体的事案に即して我が国が自主的に判断して諾否の決定をするということであろうか、こういうふうに考えております。
岡田委員 そうすると、私の申し上げた四点は、そこは大臣も同じような考え方であるという認識でよろしいですか。
林国務大臣 先ほど申し上げましたように、岡田先生からあった御指摘の点も含めて、国益確保の見地から、これは具体的事案に即して我が国が自主的に判断をするということだと思います。その際に、今先生がおっしゃったようなことというものは、この検討に当たって、判断に当たっての項目には当然入ってくるだろうというふうに考えております。
岡田委員 私は、もう少し判断の基準をはっきりとしておかないと、内々そういうものはお持ちかもしれませんが、いざ協議を求められたときに、政府の中で判断するということになると思うんですが、基準がはっきりしていなければ、議論は錯綜してしまう、結論が出ない、あるいは遅れるということになりかねないと思いますし、国民に対しても、やはりしっかりと、どういうリスクがあるかということは事前に説明して理解を求めておかないと、政府の下す決断に対しての理解はもらえないと私は思いますので、もう少しここのところは丁寧に政府として議論が行われるべきじゃないか、そして国民に対して説明されるべきじゃないかということを申し上げておきたいと思います。
 年末に国家安全保障戦略の見直しというものが行われます。ここでも、重要影響事態と存立危機事態だけではなくて、この戦闘作戦行動のための事前協議への対応というのはやはり大きなテーマだと思うんですね、最初にこれが来ちゃう可能性があるわけですから。そういう意味では、しっかり政府の中で議論されるべきではないかというふうに思っております。
 国家安全保障戦略の見直しの議論というのはもう始まっていますけれども、この事前協議制度についてもう少し、それも含めた議論というものが、どこまでそれが表に出されるかは別にして、なされるという理解でよろしいでしょうか。
林国務大臣 新たな国家安全保障戦略等の策定については、総理からも指示がありまして、関係閣僚の間で議論が行われておるところでございます。
 外務省としても、関係省庁と協力しながら、今委員からお話のあったようなことも含めて、様々な論点、これを検討していかなければならないと考えております。
岡田委員 事前協議制度についても御議論いただけるというふうに理解をいたしました。
 それでは、この事前協議制度の手続についてちょっと議論したいというふうに思っております。
 先ほど来の議論で、事前協議への対応というのは日本政府にとって非常に重要なことだということは確認されたというふうに思うんですが、この事前協議制度、これはアメリカから当然協議がなされるわけですが、日本政府における決定権者というのは誰になるんでしょうか。
林国務大臣 事前協議に関する事項でございますが、これは行政府の専権に属するものであり、事前協議の諾否の決定、これは政府の責任において行われるわけでございます。
 こうした前提の下で、事前協議を受けた場合は、原則として閣議に諮って決定するということになっておりますが、緊急閣議も招集し得ないような場合には、内閣総理大臣と外務大臣、防衛大臣というような限られた者の協議により対応することも排除されないというのが従来からの政府の立場でございます。
 その上で、行政権を担う内閣の長である内閣総理大臣が事前協議の諾否を決定する最終的責任者であるという政府の考えに変わりはないところでございます。
岡田委員 事前協議の諾否を決定する最終的な責任者は内閣総理大臣であるというのは、政府の見解、質問主意書などでも示されております。
 ただ、今大臣も言われたんですが、事前協議というのは条約の実施に当たるから外務大臣の権限だ、権限が外務大臣にあるんだ、そういう政府答弁もありますね。外務大臣に権限があるということは、外務大臣が最終的に決定するということだと思うんですよ。
 だから、内閣総理大臣が最終決定権者であるという見解と外務大臣の権限であるというのは明らかに矛盾しているわけですが、どちらが正しいんですか。
林国務大臣 先ほど申し上げましたように、事前協議に関する事項は行政府の専権に属しております。
 憲法七十二条でございますが、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」と規定をしておりますので、そういった意味で、最終的な責任者は総理だということでございます。
 事柄の重要性に鑑みて、原則として閣議にかけ、その余裕がない場合でも総理大臣及び関係大臣と相談すべきことは当然だと考えております。
 おっしゃるように、外務省は、設置法上、条約その他の国際約束の解釈及び実施に関することをつかさどるというふうになっておりますが、まさに、事柄の重要性に鑑みて、原則として閣議にかけてということですし、余裕がない場合においても総理大臣及び場合により関係大臣と相談すべきということは当然であると考えております。
岡田委員 実は、一九九七年二月五日の予算委員会で、私、この件を当時の橋本総理と議論をしております。今から二十五年前ということになります。
 そこで、橋本総理、池田外務大臣、ちょっと答弁が混乱したんですが、最終的には大森法制局長官が出てこられて、今大臣が言われたのとほぼ同様の答弁をされたわけですね。すなわち、事前協議は条約の実施に当たって、権限は外務大臣にあるというふうに大森長官は言われました。しかし、我が国にとって非常に重要な事項であり、閣議決定、了解が運用として相当である、閣議決定ができない緊急時には総理と相談することが法律上、憲法上の要請として望ましい、そういう趣旨のことを大森長官は答弁をされました。
 私、この議論をしていて、これは政府としての運用を述べられたんだけれども、しかし、法的根拠はないんじゃないかと。条約の実施ということで外務大臣だというのは、それはそれで分かりますけれども、我が国にとって非常に重要な事項であり、閣議決定、了解が運用として相当と。でも、それに、基になる法律の規定というのはないですよね。こんな大事なことが法的な規定がないままに運用でやっているということは私は間違いだと思うんですが、いかがですか。
林国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますが、事前協議自体は、日米安保条約第六条とその実施に関する岸・ハーター公文に基づいて行われるということでございます。
 設置法上の外務省の権限、また、その長たる外務大臣の権限は先ほど申し上げたとおりでございますが、大変重要な事柄、事柄の重要性に鑑みて閣議にかけて、その余裕がない場合においても、内閣総理大臣、場合により関係大臣と相談すべき、このことは当然であるというふうに考えております。
 先ほど申し上げました憲法の条文からも、最終的に、行政権を担う内閣の長である内閣総理大臣が事前協議の諾否を決定するという最終的責任者であるというふうに考えておるところでございます。
岡田委員 同じ答弁を大臣は繰り返されるんですけれども、私は、なぜこれは規定がないのかなということを考えてみたときに、これは最近思うようになったんですが、やはり日米の密約の存在というものが非常に影響しているんじゃないかというふうに思うわけですね。
 例えば、この一九六〇年のときには、朝鮮半島有事のときに、事前協議をせずに、経ないで直接出撃できる、そういう密約があった。これは、藤山外務大臣とマッカーサー駐日大使との間で作成された非公表の密約、朝鮮議事録、その存在は長らく政府は認めてこなかったんだけれども、密約調査の中で、そういうものがあるということが明らかになりました。
 だから、いざというときに、一九六〇年段階で見れば、やはり朝鮮半島というのは極東あるいは日本周辺で何か問題が起こり得る可能性が一番高いところでしたから、せっかく岸・ハーター交換公文で事前協議制度をつくっても、はなから、朝鮮半島有事のときはそれは機能しませんよというふうになっていたわけですね。
 そういうものがあるということになると、やはり法律に基づいて、この事前協議制度についての国内法を整備すると、法律を作っちゃうと、もうそれはやらざるを得ませんから、そういう意味で、密約が存在したことが国内法の手続を避けることになったんじゃないかと私は想像するんですが、いかがですか。
林国務大臣 政府といたしまして、事前協議の手続について、朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動に関する事前協議への対応に関する議論と結びつけて理解しているものではございません。
 いずれにしても、政府としては、現在の事前協議制度に問題があるというふうには考えておらないところでございます。
岡田委員 もう密約は明らかになっていますから、そして今はもう有効ではないということになっているので、今具体的にこれは影響するわけじゃないんですが、恐らく一九六〇年段階ではこのことがかなり影響したのかなというふうに私は思っております。
 そこで、先ほど、大臣はるる同じことを述べられたんですが、行政府の専権だという言い方もされました。しかし、行政府の専権かどうか、それは法律で決めることでありまして、違う決め方もできるはずですね。
 例えば、重要影響事態、存立危機事態、武力攻撃事態もそうですが、そこでは、内閣総理大臣は基本計画を作る、重要影響事態ですね、存立危機事態は対処基本方針を作る、そしてそれを閣議決定する。それに対して国会は承認をする、事前ないしは事後。最終的には国会に報告する。そういう手続が、一連のものが決められております。それはやはり、重要影響事態とか存立危機事態、武力攻撃事態、そこの国民に与える影響の大きさということに鑑みて、そういう規定が置かれているんだというふうに思うんですね。
 そうだとしたら、事前協議だって同じじゃないですか。やはりそういった国会との関係、それから、事前、事後の承認とか、国会への報告とか、そもそも、閣議決定をしなければいけないと法律で重要影響事態や存立危機事態は書いていますよね。あるいは、NSC、国家安全保障会議の役割の中にもそういうものが書いてある。でも、事前協議は書いていない。
 そういうところは、明らかに私は法の不備だと思うんですが、いかがですか。
林国務大臣 政府といたしましては、現在の事前協議制度に問題があるとは考えておらないところでございまして、同制度を見直す必要があるというふうには考えておらないところでございます。
岡田委員 大臣、結論だけじゃなくて理由を述べてください。
 じゃ、どうして、重要影響事態とか、国会の関与とか、それから国家安全保障会議にかけるとか、そういうことが法律で書いてあるんですか。法律で書いてあるのにはそれなりの意味があるわけです。政府の中でも、閣議をやりなさいとか、国家安全保障会議にかけなさいとか、そういうことが法律で書いてある。国会との関係も書いてある。
 それが全部すっ飛んでいるということについて、私は、中身がおかしいと思いますし、それから、法律が全く手当てされていないのもおかしいというふうに思いますが、おかしくないという結論じゃなくて理由を述べてください。
林国務大臣 武力攻撃事態等や存立危機事態の認定と事前協議のいずれも、今委員がおっしゃったように、我が国の安全保障にとって重要な事柄ではあると考えますが、武力攻撃事態等や存立危機事態の認定と、在日米軍の施設・区域の使用に関する事前協議への対応というもの、これはおのずから異なるものでございますので、単純な比較は困難であるというふうに考えております。
岡田委員 おのずから異なる理由を述べてください。
林国務大臣 これは、申し上げましたように、武力攻撃事態等や存立危機事態等の認定と、それから施設・区域の使用に関する事前協議、これは事象として別の事柄でございますので、対応もおのずから異なるというふうに考えております。
岡田委員 特に、この三つの岸・ハーター公文の類型の中での日本の基地からの戦闘作戦行動というのは、これは有事の話ですから、日本の有事じゃないですよ、日本の周りで有事があって、それへの対応ということですから、最初に議論したように、重要影響事態とか、あるいは場合によっては存立危機事態とか、これは順番がどうなるかもいろいろなケースが考えられますが、これは一体の話ですよね。
 例えば、事前協議が最初に来るということになると、ほかの重要影響事態や存立危機事態では国会との関係とか政府の中の適正手続というのが規定されているのに、事前協議についてはそういうものが全部なくて運用でやっていますというのは、私は、明らかにおかしいし、それは国民に対してきちっと説明をする機会を奪っているわけですから非常に問題があると思いますが、いかがですか。
林国務大臣 事前協議に関する事項は、先ほど来申し上げておりますように、日米安保条約第六条とその実施に関する岸・ハーター交換公文という国際約束の実施でございまして、本来、行政府の専権に属するものでありまして、国会の承認を必要とするものではないと考えます。
 しかしながら、事前協議があった場合の状況いかんによっては政府が国会に報告するということはあり得るのでありまして、いかなる場合に報告をするのか、その時期はいつか等については、政府がその時点における諸般の状況を総合的に判断した上で、政府の責任において決定をすることになるというふうに考えております。
岡田委員 国際約束の実施だから国内的な手続はなしでいいというふうに、大臣はそこまでおっしゃっていないですよね、例えば、先ほど来から、少なくとも閣議が必要だとか、そういったことをおっしゃっているわけですから。だから、国際約束の実施だから国内的な手続は要らないということには、絶対、論理的にはならないと思うんですよね。
 そこで、例えば、重要影響事態と比べれば、より深刻な国内にとって影響が出るかもしれない、反撃を食らうかもしれない、そういう重要な判断について、国会に対しても、それから閣内においても、きちっとした規定がないままに運用だけで手続が決まってしまうというのは、私は全くおかしなことだと思うんですが、いかがですか。
林国務大臣 先ほど申し上げましたように、本来、行政府の専権に属するものであり、国会の承認を必要とするものではございませんが、しかし、状況によっては国会に報告することはあり得る、そういうふうに申し上げたところでございます。
 今委員がるるおっしゃったように、事前協議の対象となる事項、これは国民あるいは国会にとっても重大関心事であるということから、政府は、特別の事由がない限り、事前協議の事実を事後に公表し、国会にも報告することとしておるところでございます。
岡田委員 例えば、国家安全保障会議にかけるんですか、かけないんですか。
林国務大臣 事前協議の諾否の決定につきましては、事態によっては安全保障会議に諮るということはある、この旨はこれまでも国会で述べてきたとおりでございます。
岡田委員 どうしてそれが明記されていないんですか。
林国務大臣 明記というのは、どこに明記をという意味でしょうか。
岡田委員 国家安全保障会議の権能として明記されていない。読めますよ。だけれども、はっきり書いていないじゃないですか。ほかの重要影響事態とかそういったものははっきり書いてありますよね。なぜですか。
林国務大臣 これはまた先ほどのところに戻るわけでございますが、本来は行政府の専権に属するものであり、国会の承認を必要とするものではないということが元々ございまして、ただ、先ほど申し上げましたように、状況いかんによっては政府が国会に報告することはあり得る云々申し上げたとおりでございますので、そういったことで、先ほど申し上げましたように、事態によって安全保障会議に諮ることはあるということでございます。
岡田委員 国家安全保障会議は政府の中の話ですから、国会の話じゃないですよね。だから、政府の中の手続について、国家安全保障会議は非常に重要な、基本的に閣議と並んで重要な意思決定の手続だと思うんですが、そこに明記されていないというのは非常に不自然な感じがいたしますが、そのことを聞いているわけです。
林国務大臣 先ほど、私も、事前協議の対象となる事項は、国民あるいは国会にとっても重大関心事であるということから、政府は、特別の事由がない限り、事前協議の事実を事後に公表し、国会にも報告することとしておる、こういうふうに申し上げたところでございます。
 委員も御案内だと思いますけれども、いろいろな仮定の事態を想定して、何がこれに、どういう事象の場合はこうだということ、これを確定的、網羅的に述べるということは難しいというふうに思っておるところでございます。
 そうした意味で、事前協議の諾否の決定により、事態によっては安全保障会議に諮ることはあるということを国会で述べてきたところでございます。
岡田委員 日本の基地から、在日米軍基地から飛び立って、そして攻撃するということの諾否を求める事前協議に対して、国家安全保障会議にかけないということはあり得るんですか。私はちょっと理解できないんですが。
林国務大臣 先ほどの御答弁で申し上げたとおり、事前協議の対象となる事項、これは国民あるいは国会にとっても重大関心事であることから、政府は、特別の事由がない限り、事前協議の事実を事後に公表し、国会にも報告しているということでございます。
 そういった意味で、特段の事由、特別の事由ということでございますが、仮定の事態を想定して、これに該当することとなるか、あらかじめ確定的、網羅的に述べることは難しいというふうに考えております。
岡田委員 議論が全く深まらないんですけれども、大臣、おかしいと思いませんか。戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用、このときの事前協議がなされるというのは非常に大きな話ですよね。政府として、私、重要影響事態の認定、決定よりも、はるかに重い判断を求められるんだと思うんですよ、多くの場合は。
 そういうことについて、国内規定がない、政府の中でどういうふうにこれを決定するのかの規定もない。国会に対しても、多くは事後になるんだろうと思いますが、いずれにしろ、ほかの重要影響事態等で置かれている事前、事後の国会の承認あるいは国会への報告、こういうものが規定されていないというのは、やはり非常にバランスを欠いているんじゃないですか。
林国務大臣 先ほど、特別の事由がない限りということを申し上げましたけれども、どういう事態がこれに当たるかということを事前に確定的、網羅的に述べることはできないというふうに考えております。
 事前協議の事実が、これは一般論でございますが、公表されるということになりますと、米国の軍事機密が直接間接に明らかとなり、我が国自身の安全保障にも重大な影響を与える場合等が特別の事由に該当することとなると考えられるわけでございますが、こういう場合には、国益上の観点から、事前協議の事実、これを例えば国会に報告しないことがあるということについては御理解を賜りたいと考えておりますし、手続上の明記ということが、先ほどから委員からお尋ねがありますけれども、そうした意味で、事前協議の諾否の決定につきましても、事前に国家安全保障会議に諮ることはあり得るというふうに申し上げてきているところでございます。
岡田委員 非常に曖昧な答弁で、私は納得いたしませんので、また機会を見て議論したいと思います。
 最初に戻りますが、やはり、戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用というのは、その事前協議というのは、非常にこれは重い話であります。私は、政府はそのことをちゃんと国民にも説明すべきだと思います。
 そして、これを安易にノーと言うことは恐らくできないんだと思うんですね。日米同盟というのは、先ほど言いました五条と六条だということになると、やはりいざというときに日本を守ってもらうことの見返りとして基地を提供しているということですから、その基地がいざ米軍が使おうと思ったときに使えないということになると、別に直接出撃でなければ使えるわけですけれども、しかし、かなり制約されるということになると、これはやはり同盟の本質に関わる問題。だから、非常に政府としては狭い範囲の中で重大な決断を迫られるということだと思うんですね。
 そういうことをきちっと国民に私は説明しておく必要があるんじゃないかというふうに思います。これから年内、国家戦略について御議論される中でも、こういう説明が、私は、どこかでなされるか、あるいは最終的な成果物にそれが盛り込まれる必要があるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
林国務大臣 先ほど申し上げましたように、年末に向けて議論を進めております三文書の中でもこういう議論をやっていくということは先ほど御答弁したとおりでございますが、先ほど一般論として述べましたように、事前協議につきましてやはり考慮しておかなければなりませんのは、米国の軍事機密が直接間接に事前に明らかになって、我が国自身の安全保障にも重大な影響を与える場合というようなことも念頭に置いて議論をしていかなければならないというふうに考えております。
岡田委員 時間が中途半端になりましたので、ちょっと頭出しだけしておきたいと思いますが、この事前協議の三つの類型の中の一つ、重要な装備の変更ということについて、これも密約調査の結果、討議の記録という文書の存在が明らかになりました。この討議の記録、英文だったんですけれども、ザ・イントロダクション・イントゥー・ジャパン・オブ・ニュークリア・ウェポンズという、ここのニュークリア・ウェポンズ、この訳ですが、私は核兵器と訳すべきだと思うんですが、そこはそれでよろしいですね。
林国務大臣 今、岡田委員がおっしゃった討議の記録については、いわゆる密約問題に関する外務省の調査において、その写しと思われる文書の英文のみが発見されたものでございまして、和文が発見されていないということでございます。
 その上で申し上げますと、今お話のあったニュークリア・ウェポンズの和訳については、当該用語が使用される前後の文脈等にもよると思いますが、一般的には核兵器と訳すことが可能だと考えております。
岡田委員 実は、この討議の記録が出てくるまでの外務省の国会における説明は、藤山・マッカーサー口頭了解というものがありますという説明だったんですね。一九六八年四月に国会にそれを文書で提出をされています、それまでは国会答弁だけだったんですけれども。
 ここで書いてあるのは、装備における重要な変更というのは、核弾頭及び中長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設というふうに文書で示されているんですね。
 ニュークリア・ウェポンズというのは、なぜ核弾頭というふうに訳されていたんでしょうか。
林国務大臣 今お尋ねの装備における重要な変更は、今お触れいただいた藤山・マッカーサー口頭了解によって、核弾頭及び中長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設を意味しております。
 これは、アメリカが日本政府の意思に反して核兵器の持込みを行うことがないようにするためにできた取決めでございまして、その趣旨に照らしても、中長距離ミサイルとは、あくまでも核専用の中長距離ミサイルというものを念頭に置いて了解をされております。核、非核両用のミサイルは、核弾頭を装備した場合には核兵器でありますが、核弾頭を装着しない場合には非核兵器であり、したがって、核弾頭を装着していない核、非核両用のミサイルの持込みは事前協議の対象ではないということでございます。
 今お話がありましたように、藤山・マッカーサー口頭了解については、その後、その内容を整理した上で、一九七五年に米国政府との間で、核弾頭、ニュークリア・ウォーヘッズとの用語を含む英文も文書で確認し、そのことを当時の国会でも御説明しているというふうに承知をしております。
岡田委員 もう時間が来ましたので途中で終わりますが、大臣、多分認識が間違っておられると思うんですが、藤山・マッカーサー口頭了解というものは実は、外務省が国会で説明してきましたが、これは、こういうものは存在しなかったんです。存在したのは、先ほど申し上げた討議の記録というのが存在していて、それをはしょって、討議の記録を隠すという目的もあったんだと思いますが、はしょって一部だけ、国会で藤山・マッカーサー口頭了解がありますと説明してきたのが外務省であって、実はそれはそうじゃなかったんだということが、密約調査の結果、明らかになったと私は理解しているんですよ。
 だから、ある意味ではこれはフェイクだったということで、正しいのは討議の記録、それをつまみ食いして、外務省は、あたかも存在するように、藤山・マッカーサー口頭了解というのが存在するように言ってきたということだと私は理解しております。
 続きは、また次回やりたいと思います。




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