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総選挙 ― なぜ立憲民主党は負けたのか

 立憲民主党は今回総選挙において、現有議席を減らすことになりました(110→96)。
 私自身、政権交代はともかくとして、自民党を単独過半数割れに追い込み、与野党伯仲状態を作り出すことは可能と思っていただけに、大変残念な結果となりました。なぜ敗北したのか、今後の客観的な検証が必要ですが、選挙を戦った一人として、私の感想は以下の通りです。

1.比例区選挙
 今回の立憲民主党の比例票は、2017年選挙において、当時の立憲民主党が得票した1100万票と同程度の1150万票となりました。2017年選挙においては、解散後に立憲民主党が結党され、完全な準備不足の中での選挙でした。これに対して今回は、昨年9月に国民民主党や無所属の衆議院議員も多数加わって、新たな立憲民主党となり、200人を超える小選挙区の候補者で臨んだ選挙であるにも関わらず、比例票は変わりませんでした。完全な失敗です。
 実は、公明、共産を除く非自民票が2000万強存在するという状況は、2003年総選挙以降続いており、2012年以降は第3極である維新が登場したことで、その票を民主党系と維新が取り合っているという状況が続いています。

 2017年選挙の立憲民主党と希望の党の比例票の合計は2070万票で、維新340万票を加えると2410万票でした。自民党1800万票をはるかに上回っています。今回は立憲(=1150万)と国民(=260万)で、1400万票で600万票強減らしており、その分を維新(340万→800万)、れいわ(220万票)が増やした形になっています。自民党も1990万票で、約200万票増やしました。
 結局、立憲民主党と国民民主党が完全には大きなかたまりとなることができず、国民民主党や無所属の多数の議員が加わったにもかかわらず、有権者からは、リベラル色の強い従来の立憲民主党のイメージのままだったのではないかと思われます。この結果として、自民党に批判的な保守層や、無党派層の票の獲得に失敗したことが、最大の敗因だと思います。
 今後比例票を増やすためには、①リベラル層を固めながら、②ウイングを保守層、無党派層に伸ばすこと、③維新との差別化、優位性の確保が重要です。国民民主党は解散前の7議席から11議席となりましたが、総投票数が720万票少なかった2019年参議院選挙と比べ、比例票を350万票から260万票へと90万票減らしています。政権交代可能な政治を目指すという大局に立って、参議院選挙までに大きなかたまりを目指すべきです。

2.小選挙区選挙
 自民党は小選挙区で23議席減(210→187)、これに対して立憲民主党は9議席増ですから一定の成果があったことも事実です。しかし、一言で言えば、野党間で選挙区調整はできたものの、それでも自民党候補に力負けした選挙区が多かったと言えます。
 なぜ多くのマスコミ調査を下回ることになったのか、最後の1週間で差をつけられたと感じる候補者が多いのがなぜなのか。立憲候補者を推薦しなかった産別組合があったことの影響はどの程度だったのか、日常の活動は十分だったのか、訴える政策は適切だったのかなど、今後十分な検証が必要です。
 小選挙区で勝利したのは、立憲57名、国民6名の合計63名です。特に立憲民主党の議席は逆風の中でも勝利した堅い議席です。これに野党系無所属と1万票以内の接戦区31を加えると100議席近くになります。これをベースに次の総選挙までに、小選挙区で確実に100議席確保できるところまで進化させることができれば、政権交代が見えてきます。

3.維新をどう考えるか
 今回、維新が大幅に議席を伸ばしたことは事実です。しかし、これは前回総選挙で立憲と希望の党に比例票を奪われ、340万票にとどまったこととの比較であって、2014年選挙の維新の比例票840万、比例30議席と比べればこれを下回っているのです。2017年と比べ選挙区選挙も3議席から16議席へと増えていますが、これは兵庫1議席以外は、大阪で候補者を出した15の小選挙区で全勝したことによるものです。大阪府では与党公明党と維新が選挙区調整を行い、公明党の候補者が存在する4選挙区で維新は候補者を立てていません。大阪において自民党が与党である公明党に対して、維新との連携(=野合)を認めてきたことが、今回の大阪における自民全敗の結果を招いたとも言えます。
 そもそも維新は、安倍派など自民党右派との親和性が高く、本来であれば立憲民主党と重なる部分は改革という点を除けば少ないのです。今後、維新が力をつければ、自民党と競合する部分が増えることも考えられます。維新とは、国会を中心に案件ごとに協力することはあっても、あくまで限られたものにとどめるべきです。立憲民主党としては、その立ち位置を明確にして、自民党と同様維新とも競い合っていくことを基本とすべきです。

4.野党協力の今後
 今回衆議院選挙において、与党や維新、一部メディアから共産党を政権運営に参加させることになるとの批判がなされ、それに影響された有権者にも疑念をもたれることになりました。「閣外協力」という表現がこのような誤解を助長したと思います。その結果、立憲民主党の比例票や選挙区における無党派層の動向に影響を及ぼすことになりました。しかし、小選挙区制である限り、共産党や社民党、れいわなどとの候補者調整は今後とも必要であることも事実です。
 参議院選挙では調整は原則として、1人区にとどまり、複数区では野党間での競合は当然存在します。また、そもそも政権選択選挙ではありません。 参議院選挙においては、あくまで戦術的な選挙協力という原点に立ち返って、野党協力を再構築すべきです。



コメント
  1. がんちゃん より:

    失礼します。略称 民主党の案分の影響を考慮すべきだと思いますし、それを言及すべきだと思いますが、動画の方にもブログの方にも、それが、ありませんでした。また、コロナ禍であることや地域毎に総選挙時期に宣言が出ているところもあったり、群馬においては、30%の投票率のところもあります。平成の大合併において、投票所が削減されたり、経費削減の理由から時間を短縮しているところも多くあり、今回においては、短期決戦だったので、在外投票及び不在者投票も事前準備をしている間に投開票日を迎えるこことなり、投票用紙が投開票日の後に届く事態となっていますので、そちらの情報もお集め頂き、ご再考頂きたいです。

  2. あさ より:

    全てに賛同。頼もしい。戦術的選挙協力にも大賛成ですが、共産方の激しい野党共闘アナウンスが変わるのか不安も。衆院選では突っ込まれて立憲が防戦一方に、ひ弱に見えました。党首が危なっかしく見えるれいわの空想的財政論も理解を超えており、他党と手を結ぶことで力が減じられるところが痛し痒しです。

  3. りゅしおーる より:

    とても冷静な分析で、多少主観的な支援者の指摘とは異なる客観性が感じられます。

    一般的なひとりの有権者として、政党内部から見る選挙観とは異なる目線でお話しさせて頂きます。

    今回の衆院選に関しては、何はともあれ、マスメディアにおける露出度が勝敗の決め手となったように思えます。

    コロナ禍という未曾有の状況下で、大阪府知事が毎日のようにTVに映し出されたことにより、「維新」という組織が日本全国に宣伝されてしまいました。

    また衆院選直前に行われた自民党総裁選も、前述の維新と同様の効果をもたらしたはずです。

    野党共闘を応援していた有権者としては、これらの不公平な条件での闘いに憤りを感じぜずにはいられませんでした。

    左派政党でマスメディアを使いこなしていたのは、れいわ新選組だけかと…それ以外の3政党の売り込み方は、あまりバージョンアップされてなかったように思えます。
    ターゲット別に、現存する様々なメディアを駆使し組織を売り込み、あらゆる有権者に知ってもらうことが最重要課題なのではないでしょうか?

    今後も協力し合う左派政党を応援していきます。左派4党で日本を変えて下さい!
    よろしくお願いいたします。

  4. カラシ味噌 より:

    こういう分析を期待していました。とても分かりやすいです。
    今回の野党統一候補調整の問題点を客観的に分析した上で、総選挙と参議院議員選挙それぞれの特徴に見合った野党協力を構築していただきたい。共産党にはアレルギーがあるから、などという感情的なことを言っていては政権奪取は無理です。

    岡田さんの分析とは別に私見を書かせていただくと、とにかく地方組織が弱すぎます。あるTVコメンテーターが“二大政党というのなら、都道府県知事選をはじめ、県議会議員選挙や市議会議員選挙でもっと候補者を立てて当選させなくてはいけない”と言っていました。
    正論です。国政選挙で活動してくれる強力なサポーターをもっと増やすべきです。

    そのうえで、何があっても当選できる盤石な組織を持つ国政選挙での候補をあと50人は作らなくてはなりません。
    大変、勉強になりました。

  5. らいとみどる より:

    いつも応援させていただいております。
    野党共闘、維新との距離は賛成です。国民民主党とも距離を置くべきと思います。前回の合流に際し、立憲にNoを言った人達です。それに国民にはこの党に対しアレルギーがあります。立憲にとってマイナス要因ではないかと。
    今回の衆議院選挙ですが、私の選挙区には立憲の候補者がおりませんでした。代わって共産党の候補者がおりましたが、どうしてもその方の名前を書くことができませんでした。共産党や社民党の強みを発揮できる地域での候補者の一本化がよろしいかと思います(すべての選挙区に立憲の候補者がいるのがベストではありますが)。私の選挙区の様に立憲の候補者がいない地域では、比例票獲得のために、市区町村議員の方々が活動されたら良かったと思います(ワンチームをアピールできるし、何より立憲号に手を振りたかった)。
    長々とすみません。ご検討いただけたら幸いです。

  6. mine より:

    岡田さんの考えに共鳴しております。
    日本の未来の為に頑張ってください。

  7. 村山 より:

    維新から支持者を奪う必要がありますが、維新との差別化の前に、有権者に対するメッセージとして維新との差異をなくして、維新の優位性をなくすことが必要です。あくまで、政策変更ではなく、有権者に与える印象の変更です。その上で、維新に対する優位性を出していくべきと考えます。

  8. 田代正純 より:

    桜費用5000万円、国家予算100兆円とすると200万分の1のウエートです。これについての”舌鋒鋭い”質疑はする。一方、台湾有事や北の核ミサイル対応についてはどうするのか、については聞こえて来ない!これでは、国政を任せられないことは明確でしょう!交渉・話合いは、政策ではありません!”200万分の1”とは、車で制限速度50kmの時、25cm違反です!

  9. Ami より:

    とても為になる分析です。立民の幹部候補になる人々に、共有した方が良いと思われます。

  10. Shoko Tanaka より:

    岡田克也様
    ブログを拝見しました。
    私は立憲民主党を応援する元英語講師の一般庶民です(党員ではありません)。
    立憲民主党の代表選挙以前から逢坂誠二さんに期待し、与野党伯仲を熱望する1人です。
    こちらは逢坂さんの衆議院選総括とほぼ同様の分析ブログと感じました。

    すでに代表を辞任されていますので申し訳ない気もしますが、「政権交代」によって枝野政権ができることには大きな抵抗感がありました。
    衆院選挙前から立憲民主党の政党支持率は一桁が続いており、コロナの失策が重なり、死者や入院できない患者が急増しても、立憲民主党の支持率は底を這うように低迷したままでした。
    党首の 知性、倫理観、見識は欠かせませんが、メディアを最大に活用して国民に政策が「伝わるように話す、解説する、説得する」熱意、パッション、魅力が欠かせません。多弁でも枝野さんには「伝える力」がないと判断できなかったのでしょうか。党の支持率という客観データがあったのですから、なぜ分析できなかったのかと残念でなりません。

    自民党は党首の顔を変え、国会を開かず何の実績もないまま衆議院選に突入しました。不埒な安倍さんとは異なる林芳正さん、河野太郎さんという実力派が自民党にはいます。
    今度は参院選で負けないように、身内に厳しく分析して、できれば逢坂誠二さんの知名度をグンと上げてほしいと願っております。頑張ってください。

  11. より:

    選挙お疲れさまでした。選挙戦でも代表戦でもその前からも、改革という言葉が立憲から全く伝わってこないのはなぜなのでしょう。維新との競合を避けるために使わないという謎の戦術でもあるのでしょうか。ただ、菅政権が改革派として当初圧倒的な支持を集めたように、改革の旗印はいつも力があるわけで、野党第一党としてそうした要素もあります程度の扱いにしておいて良いのでしょうか。それなくして、政権交代に何の意味があるのでしょう。民主党政権時、激しい内部抗争と政治とカネの問題はさておいても、自民党政権なら難しかった数々の改革的政策を成し遂げました。維新が盛んに自らの改革実績としてアピールしている議員定数削減とかのポピュリズム的改革とはレベルが違うことをやってきたと思います。そうした改革さをしっかり打ち出していないから、以前は改革派の範疇として受け止められていた追及姿勢がただの批判としか認識されないのでしょう。結局、自民党がいい意味でも悪い意味でも政権政党として安定しているので、政権交代のチャンスは毎回来ないわけです。今回はそうではありませんでしたし、前回がまさにその選挙でした。大変残念ながら、下野して9年後にここでまた振り出しに戻る、もしくは極めて野党勢力の今後が混沌とする状況を見るかぎり、旧民主党系は前回選挙で歴史的な役割を終えるべきだったのではないかとも思っています。あの手この手で残っているが、実は小池新党が新野党として政権交代可能な二大勢力の一角を新たに担うべきだったのではないかと。もちろん残っている旧民主党系議員やおそらく維新も包含しての形ですが。というのも既に述べたようにチャンスは多くないからです。自民党が腐敗した時に、1任期でも政権を担当できる勢力が必要なのです。はっきり申し上げて、国民は2017年選挙で政権交代を望んだにも関わらず、旧民主党系がそれをさせなかったわけです。市民の代表を自ら名乗るがほとんどの人が何なのか知らない市民連合という謎の組織と共産党との重箱の隅をつつくような議論の先に政権交代があるのでしょうか。結局、自分たちが政策や統治方法を分かっていることを何とかして示すために2009年の細かなマニフェストと同じことをしたのではありませんか。ただ、あんなマニフェストが無くても勝てた、変化を改革を国民は求めていた(細川連立政権も)のは共通認識ではないでしょうか。ここまでメディアの予想が外れると、菅政権でも与党過半数はいけたのではないかと思います。日本経済の生産性を削ぐゾンビ企業とはよく言われますが、立憲等の旧民主党系がゾンビ化してないでしょうか。新代表の元、新たな力を得て天下を取りにいけるのでしょうか。

  12. むろけん より:

    国民民主党との合流や、共産党との選挙協力によって、政党としてのアイデンティティを曖昧にしてしまったことが敗北の原因だと思いました。投票行動というのは、有権者が自分なりに確信を持って選択すべきもので、はっきりしない存在にはなかなか投票をしないと思うのです。

    非自民への投票数に着眼しての選挙戦略は、小選挙区戦では正しいとも思われます。しかしながら、前述の理由などで比例票が伸び悩んだことで、小選挙区にも負の影響があったことは間違いないと考えます。

    日本維新の会は限りなく自民党の政策・政治理念に近く、自民党の補完勢力にも見えてきます。今後更なる躍進があったとしたら、自民党と日本維新の会での2大政党制に入るかもしれません。似たような考え方の政党しか政権を取れないのであれば、政党政治の意義はほとんど失われてしまいます。

    日本の低所得層や弱い人々を大いに助け、目先のことばかり見るのではなく明るい未来を切り開くような民主党結党のころの精神を今一度議員の皆様で思い出し、国民にその魅力や必要性を啓蒙する所から再出発して頂きたいと切に望みます。

  13. かっくん より:

    政策の内容についての反省がない。
    立民が主張したいリベラル政策。
    LGBT.男女平等などは公約の優先順位は低くて良い。
    ただし、姿勢を示す為立候補者選定で示せば良い。
    講釈だけの立民は要らない。
    国民が求めている政策のトップは
    経済対策だ。
    デフレ時は
    減税と積極財政出動
    中学生の教科書にも書いている基本
    立民の御用学者は頭デッカチの
    国民の声を理解していない
    浜田教授でさえ方針転換したのに
    立民議員は人権問題には熱心だから
    マクロ経済学の勉強は落第だ。

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