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これからの中国を考える――3つのシナリオ

 私が初めて中国を訪問したのは25年前です。それ以来約30回訪中してきました。健全な日中関係の構築が日本の将来にとって極めて大切だと思っているからです。
 若手議員を伴い、毎年のように訪中し、要人と会見するとともに地方にも足をのばしてきた時期もありました。李克強首相や汪洋政治協商会議主席とは、ともに40代後半から50代前半だった時から何度も会ったことがあり、私と同年の王毅外相とは20年以上の交流があります。まだ社会主義経済の影響が色濃く残っていた時代から、世界第2位の経済大国へとすさまじい勢いで変貌する姿を驚きとともに見てきました。

 かつての中国には、地方で選挙を通じてリーダーを選ぶという動きもあり、私は人々が豊かになれば、政治的自由を求める気持ちが高まり、時間はかかっても自由化、民主化は進むと楽観視していました。しかし、現在の中国は最新のテクノロジーを活用し、人々を管理しながら政治権力の集中を進めています。我々の考える民主主義とは異なる新しい統治システムです。経済的には近い将来、米国を抜くのではないかとされています。軍事的にも急速に強国となりつつあります。
 中国は日本の隣国であり、経済的にはなくてはならないパートナーです。製造拠点としてだけではなく、人々が豊かになるに伴い中国のマーケットとしての価値も高まっています。今回のコロナ危機でも中国経済の素早い回復が日本の経済を支えました。他方で核保有国であり、かつ軍事能力を高めつつある中国は日本にとって安全保障上の脅威となりうる国です。尖閣諸島をめぐっては、緊張関係が続いています。
 中国との二国間関係を日本としてどう構築していくかは日本にとって死活的に重要な問題です。私自身政治家として取り組んでいる最大のテーマの一つです。

 これからもこのブログの場で取り上げていきたいと思いますが、今回は議論の出発点として将来の中国の姿をどう考えるかについて簡単に示しておきたいと思います。現在の多くの見方は、中国の経済力が更に強くなること、そして共産党への権力集中もさらに進むというものです(シナリオ1)。これを前提に将来の中国の姿が議論されています。私も基本的にはこのシナリオの可能性が最も高いと思っています。

 
 ただし、異なる可能性も考えておかなければなりません。とくに現在の破竹の勢いの経済成長がいつまで続くのかについては、異なる見方もあり得ます。私は日本以上のスピードで進む少子高齢化の影響と企業活動に対する政府の介入が強まっていることが将来の成長の足かせになり得ると思っています。かつての改革開放の原動力は外国資本の進出と国有企業改革でした。それが外国資本にとって国家権力の介入による不透明性が高まるとともに国有企業重視の姿勢がイノベーションの停滞を招かないかという疑問です。

 中国の経済成長がより低下し、経済停滞が長期化した場合に国民の不満を抑えるために更に権力集中が進むことが懸念されます。この場合は政治介入強化と経済停滞の悪循環に陥る可能性すらあります(シナリオ2)。
 楽観的に考えれば国民の要求に応ぜざるを得ず、民主化が少しずつ進展することも考えられます(シナリオ3)。

 これらのケースもあり得ること念頭に置いて、将来の中国の姿、そしてあるべき日中関係を考えていきたいと思っています。

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コメント
  1. 西嶋 より:

    私も、同意見です。中国が如何に経済的・軍事的に巨大化しても、「民主化」しない以上、世界のリーダーにはなれないと思います。ただ、この巨大な人民を統治するテには、現在の社会主義的政治体制でなけtれば統治できないと思います。といって、この国では革命(政治体制の変革)は絶対に不可能と思います。

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