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1回接種4割で感染減少―いまでも有効なのか

 菅総理は新型コロナウイルス感染拡大に対するワクチン効果について、1回接種を終えた人の割合が4割になると感染者数が減り始める、と繰り返している。7月8日の記者会見では、「先行してワクチン接種が進められた国々では、ワクチンを1回接種した方の割合が人口の4割に達した辺りから感染者の減少傾向が明確になった、との指摘もあります」と述べ、記者とのやり取りの中では「諸外国の例を見ても、全人口の約4割に1回接種が達した辺りから、正にこの感染者というのは減少傾向になっているということが明確になっています」と断言している。7月17日の読売テレビの番組では「約4割になると感染者が減り始めると言われている。7月いっぱいで5割まで届けたい」と述べたと報じられている。この菅総理の「7月中に1回接種が4割を越え、感染者が減る」との繰り返しのメッセージには重大な問題があり、不適切なものだ。


 7月8日の記者会見は、尾身会長と菅総理の発言のちぐはぐさが目立ち、国民に危機感が伝わらなかった。尾身会長は「これからの7月、8月、この1~2か月というのは、私は今まで1年半以上にわたって行った我々のコロナ対策、取り組みの中で、最も重要な山場の1つだと思います」と、感染拡大に対する強い危機感を明らかにした。しかし、同じ記者会見における菅総理の発言は、ワクチン接種が進み、7月中には感染者数が減少するとの楽観的なメッセージとして国民に受け取られ、尾身会長の発言を打ち消しかねないものだった。
 菅総理の発言の根拠となっているのは、野村総研の「ワクチン接種先行国における接種率及び感染状況から見た今後の日本の見通し」で、2021年5月に発表され、6月に更新版が出されている。イスラエル、イギリス、アメリカでのワクチン接種率と感染状況の関係を分析したもので、菅総理はこのレポートの中にある「1回目接種が4割前後に達すると新規感染者数の減少傾向が明確になり始めた」という部分を引用している。



 しかしこの引用には、根本的な疑問がある。これらの国々が1回目接種率4割に達したのは今年の2月~4月であり、インド由来のデルタ株の本格的な拡大前だ。しかし、日本がいま直面しているのは、デルタ株の拡散による感染拡大だ。デルタ株は感染力が強く、また、ワクチン接種2回によって感染抑止効果が得られるとされており、接種1回のケースを議論しても意味がないのではないか(注)。現にデルタ株出現によって1回目のワクチン接種率が4割をはるかに超えた欧米の国々でも、感染者の急激な増加がみられている。



 日本のワクチン接種回数は順調に増えているものの、いまだ2回接種は全人口比で2割強で、2回接種が5割前後の英国や米国とは大きな差がある。そういう中で、強い感染力を持つデルタ株に対応しなければならないというのが、日本の直面している危機的状況だ。いま菅総理が国民に伝えるべきは、ワクチン接種の重要さとともに、どんなに急いでも、この夏のデルタ株対応としては、残念ながらワクチン接種は間に合わない可能性が大きいこと、だからこそ、十分な行動抑制が求められていることを、強い危機感を持って率直に語ることだ。徹底的な外国人の入国抑制や感染急拡大に備えた病床数の確保が重要なことは言うまでもない。



 東京を中心に既に感染は拡大しつつある。ワクチン接種でここ数か月の感染拡大を抑えられるという菅総理のメッセージ発信は、国民が誤解を生むことになりかねず、誤っている。直ちに訂正されるべきだ。総理のまわりに本当のことを言う人はいないのか。



(注)野村総研のレポート(更新版)でも、デルタ株を踏まえて2回目ワクチン接種率の引き上げの重要性に言及している。



コメント
  1. むろけん より:

    ワクチンの効果について菅首相がコメントを出していますが、安倍政治以来ずっと踏襲されている科学を無視する姿勢を象徴していると感じました。

    政府の方針としてコロナ対策の切り札と位置付けたワクチンだけに焦点を当て、それで万事が解決するかのようなお気楽論を展開しています。コロナウィルスは変異を繰り返すことが確認されている以上、ワクチンがよく効く株は自然淘汰されて、ワクチン有効性が低い変異株へ置き換わり、それらが蔓延っていくことが予想されます。そんなことは素人の自分ですら想像できる事象です。同じ説をもし偉い医学者が言ったとしても、科学を無視する政府は都合の悪い話に耳を貸しません。

    変異株とか関係なく一定の有効性を持つ特攻薬を作る以外にコロナ終息はないと自分は考えています。それまでの数年間をどうやって過ごして行くのか、社会の仕組みを検討する必要があるのではないでしょうか。コロナ医療体制を拡充して感染しても死亡者を多く出さない体制を取りつつ、正常に経済を回す日本社会へ戻ることを切に願っています。

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