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幼児教育・保育の無償化─いくつもの重要な問題

子ども・子育て支援法改正案の審議がスタートしました。今国会における最重要法案の1つです。

法案の内容は、消費税収を財源として、3~5歳児の幼児教育・保育を所得制限なく無償化するというものです。一昨年秋の衆院選の際に、安倍総理が消費税の使途を変えて無償化すると打ち出したことを、法案としてまとめたものですが、重要な問題がいろいろ指摘されています。

まず、必要とする予算の大きさがあります。来年度予算として計上されている額は、平年度ベースでは約3065億円です。これに加えて、地方負担分を地方消費税と地方交付税で賄うとしていますが、これらも含めると平年度ベースで総額7764億円という巨額の予算が必要となります。幼児教育・保育の負担軽減の必要性は当然ですが、本当にこれだけの予算を投入すべきなのか、しっかり議論する必要があります。

特に、住民税非課税世帯など所得の少ない保護者にはすでに無償化が実現しており、今回の無償化予算の恩恵は、主として所得の多い層に及ぶことになるという問題があります。具体的には、予算の半分が年収640万円超の世帯に充てられることになり、限られた財源の使途としてどうなのか問われるところです。

次に、待機児童の解消に取り組むことを優先すべきではないかということです。これだけのお金があれば、まず、その一部を保育士不足を解消するための待遇の抜本的改善や保育所の増設・質的充実に充てるべきです。そのことによって、待機児童の解消を早期に実現することがより重要だと考えています。特に、保育所に入ることができなかった保護者にとっては、不公平感がより強くなります。

そもそも、従来は保育に必要な予算は国が2分の1、都道府県が4分の1、市町村が4分の1という負担割合でした。このため、無償化に伴う予算措置は地方も必要となります。このことが念頭に置かれないまま、総理主導で決まった無償化だったことから、昨年年末には知事会や市町村町長会は強く反発しました。事前に何の相談もなく、地方自治の理念に全く反することがなされたのです。

来年度予算については、すべて国の負担となりましたが、その後は地方消費税と地方交付税措置により対応すると確認されています。しかし、地方消費税は地方の財源であるにもかかわらず、その使途が国の都合により勝手に固定されたことになるのではないかと私は思っています。今後、限られた歳入の中で措置せざるを得ない自治体の中には、保育所の整備などの予算を削減して無償化に充てるなどの動きがあるかもしれません。

3月12日の衆議院本会議で安倍総理は、「今回の無償化は社会保障制度を全世代型にする大転換するための重要な第一歩だ」と強調しました。全世代型への転換を唱えたのは野田政権であり、いままで消費税の使途は年金・医療・介護に限定されていたものを、法律改正により、子ども・子育てにも拡大し、7000億円の消費税収をこれに充てることにしたのです。

このことに一切言及せず、「第一歩」などと事実に反することを平気で答弁して、民主党政権を否定し、自らの成果を誇張する安倍総理には呆れるばかりです。



コメント
  1. ポケポン より:

    国会中継を見れば、マイボトルで何やら飲んでいる安倍首相。政府側の席では談笑する閣僚たち。法制局長官は、越権行為の答弁。自分の権限が分からない長官が、安保関連法について答弁した事の恐ろしさ。官房長官
    は、震災の追悼式で「記念式典」という有り様です。安倍政権の政策は、しっかりチェックする必要があります。

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