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2/12 予算委員会(安倍総理の「悪夢」発言、北方領土問題)

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<質問要旨>

○ 北方領土問題

 Ⅰ 平和条約締結の意義

 Ⅱ 北方領土問題の今までの経緯

 Ⅲ 昨年11月の日露首脳会談合意の意味

 Ⅳ 今後の交渉

( 要求大臣 総理大臣 )

     ――――◇―――――

○岡田委員 立憲民主党・無所属フォーラムの岡田克也です。
 きょうは総理と北方領土問題を中心にしっかりと議論したいと考えておりますが、その前に一つ。
 先般の自民党大会で、総理は、あの悪夢のような民主党政権が誕生したというふうに言われました。もちろん、民主党政権時代の反省は我々にあります。しかし、政党政治において頭から相手を否定して議論が成り立つのか。私たちは、政権時代に、その前の自民党の歴代政権の重荷も背負いながら政権運営をやってきました。そのことを考えたら、あんな発言は私は出てこないはずだと思います。撤回を求めます。

○安倍内閣総理大臣 まさに、政党間で議論をする、私は別に議論を受け入れていないわけではなくて、先週も、七時間、五日間ずっと議論をさせていただきました。
 皆さんは、自分たちの政権の正当性であればいろいろな場所で演説されたらいいんですよ。私は自民党総裁としてそう考えている。そう考えているということを述べる自由は、まさに言論の自由なんですからあるわけでありまして、少なくともバラ色の民主党政権でなかったことは事実なんだろうな、こう言わざるを得ないわけでありますが、そこで……(発言する者あり)

○野田委員長 お静かにお願いいたします。

○安倍内閣総理大臣 そこで、では何が私が一番言いたかったかということは、やはりあのとき、若い皆さんの就職率、低いじゃないですか。だから、岡田さんにはそういう反省は全然ないんですか。
 我々は、政権を失ったとき、まさになぜ政権を失ったかということを……(発言する者あり)

○野田委員長 皆さん、お静かに願います。

○安倍内閣総理大臣 こういう雰囲気で果たしていいのかどうかということも含めて申し上げたいというんですが、なぜ政権を失ったか、我々は深刻に反省したんですよ。その中において、全国でずっと車座集会を開きながら真摯に耳を傾け、我々は生まれ変わろう、そういう決意をしたわけでございます。
 皆さん、悪夢でなかった、それを否定しろとおっしゃるんですが、では、なぜ民主党という名前を変えたんですか。私はそれが非常に不思議だ。
 自民党は、自民党という名前を変えようとは思わなかった。私たち自身が反省して生まれ変わらなければならないという大きな決意をしたんです。別に名前のせいで負けたわけではないんですよ。皆さんはこの民主党というイメージが悪いから恐らく名前を変えられたんだろう、こう推測する人はたくさんいますよ。そういう意味では、皆さんもそう思っておられるんじゃないですか。

○岡田委員 驚きました。もちろん私たちは政権運営について反省があるというふうに今申し上げました。しかし、その前の自民党政権時代の反省はないのかということを私は申し上げているわけです。その重荷を背負って私たちは運営した部分もある。
 あなたが本当に自民党政権時代の反省をしたと言うのであれば、あんな言葉は出てこないはずですよ。一方的に、民主党政権、レッテル張りしていますけれども、あなたたちがやったことで私たちも苦しんだこともある。そういったことについて、謙虚な気持ちで、総理ですから、発言してもらいたいと思うんです。
 今の発言、全く了解できませんよ。取り消しなさい。

○安倍内閣総理大臣 取り消しなさいと言われても、取り消しません。それを明確にさせていただきたいと思います。
 そこで、ですから、反省がないというわけではないということは申し上げましたよね。でも、皆さんに重荷を背負わせたというのは、これはわからない。皆さん、政権をとったんですから、自分たちの政策を進めればいいじゃないですか。重荷というのは何ですか。(発言する者あり)財政赤字……(岡田委員「そんなこと言っていない。やじしないで」と呼ぶ)

○野田委員長 皆さん、御静粛にお願いします。

○安倍内閣総理大臣 今、何か、岡田委員もそういうやじを飛ばされると迷惑だということですから、静かにしていただきたいと思います。
 例えば、財政赤字ということについては、財政赤字ということについて言えば、もちろん我々も財政赤字がたまってきた。しかし、これはそれぞれ必要があって行ったことであって、漫然と行ってきたわけではない。それぞれ、あえて赤字を覚悟しても出さなければいけないときというのはあるんですよ。
 ですから、例えば、先ほど申し上げましたように、就職氷河期等をつくってはならない。皆さんはずっと苦労するんですよ。そういうときには財政政策をするわけであります。ただ、皆さんの……(岡田委員「委員長、委員長」と呼ぶ)誰かがそうおっしゃったから答えさせていただいたわけであります。

○岡田委員 私が聞いていないことに延々と時間を使わないでもらいたい。
 私は、民主党政権時代の最大の苦しみ、そして申しわけなかったと思うことは、原発事故ですよ。あの福島の原発事故。もっとうまく対応できなかったか、私たち、反省はありますよ。だけれども、同時に、その前の自民党政権にも責任があるんじゃないですか。そこにあなたは責任を認めないんですか。はっきり答えてください。

○安倍内閣総理大臣 原子力政策について、ああした過酷な事故が起こってしまったということについては、それは、歴代の政権として、第一次安倍政権のときも含めて、反省をしております。
 しかし、総じて見れば、この原発事故のことについて皆さんの対応をどうこう言おうというつもりはありません。そうではなくて、経済政策について、私は、その後の文脈、私の演説の文脈を見てくださいよ。
 経済政策において、この間、まさに失業率が、今よりも、有効求人倍率においては我々の半分ぐらいですよね。都道府県について見てみれば、有効求人倍率については一倍を超える県、今は四十七全ての都道府県が一倍を超えています。これは史上初めてのことでありますが、民主党政権時代には七県、八県であったのも事実じゃないですか。そういう時代を超えていかなければいけない、そういう時代を解消しなければいけないということで、我々も努力をしてこういう状況をつくり出したわけであります。ですから、そういう批判をさせていただいた。
 大体、批判をするなと言うこと自体がそれはおかしいわけであって、皆さんが自由民主党に対して批判をすれば、それに対して反論しますよ。批判自体をやめろとか、そういうことを言ったことは私は一回もないですよ。

○岡田委員 批判するなと言っているんじゃなくて、全否定したようなレッテル張りはやめろと言っているんです。
 では、原発事故について……(発言する者あり)

○野田委員長 皆さん、静かにしてください。

○岡田委員 原発事故について、全会一致で設けた国会事故調、ここの報告書は何と言っていますか。総理、原発事故の根源的な原因は何だと国会事故調の報告書は結論づけていますか。述べてください。

○安倍内閣総理大臣 全否定するなとおっしゃいますが、皆さん、例えば採決のときに、安倍政治は許さないと全否定して、プラカードをみんなで持っていたのはどこの党の皆さんですか。名前が変わったらそれがもうなくなったということになるんですか。
 そこで、事故調の調査について、見解を述べろということについては、それは質問通告していただかないと、政府としては統一見解を述べなければいけないわけでありますから、既に述べていると思います。ですから、それは、個人の見解は述べることはできませんから、この場においては。政府を代表して私ここに立っているんですから。それはちゃんと通告をしていただかなければ、これは答弁することはできません。

○岡田委員 総理の見解を述べろと言っているのではないんです。国会事故調の報告書にどう書いてあるかということを聞いているわけです。
 私は驚きました。そんなことも総理は知らないんですか。
 国会事故調の報告書にはこう書いてありますよ。原発事故の根源的な原因ですよ、私が聞いたのは。「根源的な原因は、」「平成二十三年三月十一日以前に求められる。」これが結論じゃないですか。その反省もできていないんですか。いや、調査報告書、覚えてもいないんですか。
 つまり、三月十一日以降の対応について私たちは反省しなければいけないし、もちろんその前も、私たちも責任は負いますよ。だけれども、あなたたちが、三月十一日以前に、歴代自民党政権が一体何をしてきたのか。この国会事故調の中にもはっきり書いてあるじゃないですか。規制と推進を同じ役所の中に、経済産業省の中に置いたこと、そして、さまざまな提言を先送りした結果としてあの事故に至った。これが事故調の結論じゃないですか。
 そのことの反省はあなたにはないんですかということを聞いているんですよ。

○安倍内閣総理大臣 事故調に何が書いてあるか、ここで述べろと言われたら、私はその事故調のちゃんと文書を見て述べなければいけない立場なんですよ。大体、覚えていることをここで述べる立場には、内閣総理大臣ですから、ないわけですよ。そこでまた、一語一句、私が記憶の中で答えたら、ここは違うではないか、こう言われるわけでありますから。
 これは、岡田さんもこちら側に立った立場があるんですから、その質問がどういう質問であったかということは、これは考えていただかないといけないと思いますよ。お互いそういう質問をし合うというのは非生産的の最たるものなんだろう、私はこう言わざるを得ない、こう思っています。
 そこで、反省はないか、こうおっしゃるわけでありますが、先ほどから、その点については我々も反省している、こう述べて、一番最初に述べたじゃないですか。その上で申し上げているわけであります。
 政党同士ですから、いろいろお互いに戦い合っていくわけでありますよ。その中で、相手の政策は間違っていたということで申し上げているわけであって、私の党大会におけるこの演説というのは、いわば経済政策において主にこれは批判をさせていただいているわけでございまして、原発の政策について一言も私は述べていないわけでありますから。
 ほかにもありますよ、それは。外交にだって言いたいことはたくさんありますよ。全部言う時間がありませんでしたから、経済について述べさせていただいた。つまり、仕事がなかった、連鎖倒産が続いていたということを述べたわけであります。マクロ政策においても、皆さんのときのマクロ政策は私は間違っていたと思いますよ、明確に。
 ですから、私たちは三本の矢という新たな政策を打ち出したわけでありまして、その中で、もはやデフレではないという状況をかなり早い段階でつくり出すことができた。雇用状況が改善をしているのは事実ですよ。昨年の十二月の一日時点での大卒者の就職内定率は、過去最高となっているわけであります。若い皆さんが、働きたいと思う人が、やはり仕事があるという状況をつくることが政治の大きな責任だと思っている。
 申しわけないんですが、皆さんのときには残念ながらそれを果たすことができなかったのは事実ですから、この事実を受けとめないのであれば、全く反省していないと言わざるを得ないのではないですか。

○岡田委員 私が聞いてもいないことを長々と答弁されるわけですけれども、あの原発の事故のときに本当に残念だったことは、津波が来て、そして水につかった、予備電源が失われた、そして、電源を失われたことによって水素爆発やあるいはメルトダウンが生じてしまった。もちろん、我々の対応にも問題はあったと私は思うけれども、なぜ予備電源が地下にあったのか、なぜ津波の水が越えてきたときに水没してしまうようなところに予備電源を置いておいたのか、この本当にばかげた失敗、これはやはり自民党政権の時代の話なんですよ。そのことがわかっていたら、今のような答弁にならないですよ。
 私は、三月十一日以前にあったというこの事故調の報告書について、もう一度総理がしっかりと読み直していただきたい、そういうふうに思っています。(発言する者あり)

○野田委員長 御静粛に。

○岡田委員 民主主義というのは、お互いに相手を全否定しては成り立たないんです。だから、私は議論をこれからもします。だけれども、総理の党大会における言い方は、ほぼ全否定に近いような言い方。それでは、私は、議論は深まらないし、民主主義がどんどんおかしくなってしまう、そのことをまず申し上げておきたいと思います。
 さて、北方領土問題について、時間も大分少なくなってしまいましたので、申し上げたいと思います。
 まず、総理はたびたび、平和条約を締結するという決意を何度も示しておられますが、平和条約の法的意味というのは一体どこにあるのか、お答えいただきたいと思います。法的な意味、平和条約を結ぶことの法的な意味。

○河野国務大臣 一般に言う平和条約は、主として、戦争状態の終結、それに伴う領土問題の解決及び戦争賠償等に係る問題の解決等に関する事項を含むものであると承知しております。

○岡田委員 今、外務大臣は領土問題の解決と言われたんだけれども、外務大臣は国会答弁の中で、領土問題の解決と言われたときもありますが、領土の画定という言葉を使われたこともありますね。まず、そのことは事実として認めてください。寺田委員に対する外務委員会の答弁です。

○河野国務大臣 通告がございませんでしたので、議事録を見ておりませんので、お答えのしようがございません。

○岡田委員 自分の答弁ぐらい覚えておいていただきたいと思いますが。
 いずれにしても、領土問題の解決と今お答えですが、私は領土問題の画定も同じ意味だと思っています。
 この中の戦争状態の終結と、賠償、補償問題の解決は、既に日ソ共同宣言においてなされている。日ソ共同宣言は、単なる宣言ではなくて、国会でも承認されている、いわば条約ですね。したがって、残されたのは領土問題の解決、あるいは、私に言わせれば領土問題の画定ということになります。
 では、総理、領土問題の解決と領土問題の画定というのはどこが違うんですか。領土問題の解決の方がやや広いかもしれませんが、その一番のコアの部分は領土の画定ですよね。いかがですか。

○安倍内閣総理大臣 従来から述べておりますように、まさに領土問題の画定と領土問題の解決はどう違うのかという意味かもしれませんが、従来から政府が述べておりますように、領土問題を解決して平和条約を締結するということであります。そこで、基本的に、国境線が画定されたことをもって、この領土問題、いわば平和条約を締結するという考え方にのっとっているわけでありますが、我々も基本的に、領土問題を解決して、そして平和条約を締結するという考え方にのっとっているということでございます。

○岡田委員 総理から明確に述べていただきました領土問題の解決、私は領土問題の解決というのはもう少し幅広い概念かなと思いますが、国境を画定するということですね。総理は今明確にそう述べられましたので、それを前提に議論を進めていきたいというふうに思います。
 そうすると、領土問題が、国境が画定しないと平和条約は結べないということになりますね。

○安倍内閣総理大臣 これは従来から恐らく述べているんだろうと思います。従来は、かつては条約局長が述べていたんだろうと思いますが、基本的には、国境を画定するということによって平和条約を締結する、平和条約を締結するということは国境を画定するということでもあります。

○岡田委員 それでは、次に行きたいと思いますが、ちょっと今までの経緯を振り返りたいというふうに思います。
 冷戦時代は、ロシアは、ソ連ですけれども、領土問題は存在しないと。それに対して日本側は、いや、領土問題は存在するし、それは四島の問題であるということで、ずっと交渉を続けてきている。その中で東京宣言というのがある。東京宣言の評価は河野大臣に聞いても大臣は答えられませんでしたので、事実の問題として、ここにあるように、歯舞、色丹、国後、択捉、この四島の名前を挙げて、その帰属に関する問題について真剣に交渉する、両国の間で合意の上作成された諸文書、法と正義の原則を基礎として解決する、そのことによって平和条約を早期に締結する、これが東京宣言ですね。
 こういう基本的な考え方がずっと引き継がれてきたというふうに思うんですね。例えば、二〇〇三年の日ロ行動計画でも、日ソ共同宣言、東京宣言、それからイルクーツク声明、その他の諸合意が、四島の帰属の問題を解決することによって平和条約を締結するための交渉の基礎であるというふうに述べてあります。
 これは、安倍総理とプーチン大統領の二〇一三年の日ロ首脳共同声明です。ここでも、四島の名前は具体的には出てこないんですけれども、日ロ行動計画においても解決すべきことが確認されたその問題、すなわち、それは四島の帰属の問題だということですが、双方受入れ可能な形で最終的に解決することによって平和条約を締結する。それからもう一つは、これまでに採択された全ての諸文書及び諸合意に基づいて進めることで合意している。これは、総理、二期目の安倍内閣になった後の話、二〇一三年のプーチン大統領との間の合意ですね。
 こういう全体の流れがある中で、昨年十一月の日ロ首脳会談の合意になるわけですね。ここでは、領土問題を解決して平和条約を締結する、一九五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることをプーチン大統領と合意したということです。ここで、今までとは違う表現になっている。つまり、四島の帰属という問題がない。そのことはちょっと横に置きましょう。だけれども、一九五六年共同宣言を基礎としてということになって、それまでは、東京宣言、その他の諸文書、諸合意、全てについて基礎としてと書いてあったのが、ここでは五六年共同宣言だけが出てきている。
 これはなぜなんでしょうか。せっかく日本外交が、ソ連からロシアに変わるその中で、ゴルバチョフ大統領やエリツィンの時代に、いや、問題は四島だよというふうに確認してきた。そして、その諸文書がずっと受け継がれてきた。それが、去年の十一月に突然、五六年の共同宣言だけになったということは、私は腑に落ちないんですが、いかがでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 行動計画については、当時、私、官房副長官で交渉にも同席をしておりましたし、その後、政府の立場を説明する官房副長官として、ずっとテレビ等でこの意義等について述べておりましたからよく承知をしておりますが、日ロ間においては、今ずっと挙げられましたが、一九九三年の東京宣言、二〇〇三年の日ロ行動計画、そして二〇一三年の日ロパートナーシップの発展に関する共同声明を始め、これまで多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これら全ての諸文書や諸合意に基づいて交渉を行ってきているわけでございます。
 今回は、まさに五六年、五六年については、これは歯舞、色丹の引渡しについての言及が明確にあるということと、それと、両国においてまさに両国の国会が承認をしたものであり、現在でも有効であるということでございます。であるから、これを基礎とする。しかし、今、岡田委員が挙げられました諸文書については、当然その諸文書を踏まえて交渉しているということは言うまでもないわけであります。
 従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であると、一貫した立場には変わりはないということでございます。

○岡田委員 私は、日本側の立場を聞いているんじゃないんです。日ロ両国政府で合意してきた文書です。つまり、ロシア側も今までの諸文書には拘束されるわけです。
 その拘束される諸文書を今回落としてしまった。そして、五六年の共同宣言だけにしてしまった。これは交渉する上で大きなビハインドになるんじゃないですか。なぜそういうことをしたのか、私、総理に聞きたいんですよ。

○安倍内閣総理大臣 ここで皆さん拍手しておられますけれども、今までの交渉を果たして本当に御存じなのかということを言いたいんですが、この五六年については、この五六年宣言自体が否定されていた時期が随分あるんですよ。御承知なんでしょうかね、この五六年宣言自体が。随分長い間ありますよ。その間、途中も飛んで、これは否定されたこともあるわけであります。
 なぜ否定されたかといえば、そこには、繰り返しになりますが、日ロ間ではこれまで多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これら全ての諸文書や諸合意に基づいて交渉を行ってきています。その中でも、一九五六年の日ソ共同宣言は、両国の立法府が承認し、両国が批准した唯一の文書であり、現在も効力を有していることから、昨年十一月の日ロ首脳会談では、五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで一致をしました。一九五六年の共同宣言の第九項は、平和条約交渉が継続されること、そして、及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されることを想定しているわけであります。
 従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、ここに言う平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるとの一貫した立場であります。これから後退していることは全くないわけであります。
 委員も外務大臣を務めておられましたからよくおわかりになっておられるんだろうとは思いますが、交渉がうまくいくかいかないかは静かな交渉ができるかどうかにかかっているわけでありまして、交渉内容にかかわることや我が国の交渉方針、考え方について、交渉に悪影響を与えないためにも、この場においてお答えできないこともあるわけであります。
 先般も元島民の皆さんとお目にかかったところでございますが、それぞれ皆さん御意見があるんですが、自分たちの中にもいろいろな意見があるけれども、とにかく自分たちが年を重ねる中においては解決をしてもらいたい、そういう中で自分たちもいろいろ気をつけていることは気をつけているということをおっしゃってくれています。
 恐らく、それは、岡田委員がおっしゃっていることも、いわば日本人の、これは今までの交渉を続けてきた方々も含めて、さまざまな方々の気持ちを代弁しておられるんだろうということは私もよくわかります。しかし、その中において、私たちは、何とか次の世代に先送りすることなくこの問題を解決しよう、こう考えているわけであります。
 その中で、今申し上げましたように、まさに歯舞、色丹が引き渡されるということが明確に書かれているということ、平和条約交渉を続けていくということが明確に書かれていること、ですからこれを基礎として交渉を進めていく、それを今回判断したところでございます。

○岡田委員 総理はたびたび、一九五六年共同宣言について現在も有効であるということを、書かれた、一九五六年共同宣言を挙げられた理由として言われていますが、非常に気になるんですね。
 つまり、一九五六年共同宣言以外の諸合意は、これは現在は有効ではないんですか、それとも、それは現在も有効なんですか。日ロ間で有効であるということは確認されていますか。

○安倍内閣総理大臣 有効であるということについて言えば、なぜ有効であるかということについて強調したかといえば、これは既に両国の国会で批准しているということについて有効である、批准したということは今も変わらないということでございます。
 今でも諸文書というのはもちろん有効ですよ。しかし、それは国会で批准したわけでは残念ながらないわけでございまして、この今まで書かれたものについては、どこを対象にするかということについて、まさにそれは、書かれているのは事実でありますし、これはこの考え方のもとで交渉しているわけでございます。
 しかし、引渡しについて書かれているのは五六年宣言だけであると言ってもいいんだろうと思います。

○岡田委員 この五六年共同宣言の引渡しについて、歯舞、色丹について書いてある、平和条約を締結して引き渡す。しかし同時に、この共同宣言では、国後、択捉は全く言及されていない。そういう共同宣言だけをここで基礎とするということは、国後、択捉の交渉にとって私は大きなマイナスではないかというふうに考えているんです。
 今まで認めてきた文書をあえて今回書かなかった、十一月に書かなかったということは、それは相手方に、国後、択捉についてはもう解決済みであるという、その主張に根拠を与えることになりかねない。これは外交の常識だと思いますよ。そのことについては総理はどう考えているかということを私はお聞きしているわけです。

○安倍内閣総理大臣 私はそのようには考えておりません。
 ずっと四島について、当然、我々は北方領土問題の解決についてずっとこの交渉を続けてきているわけでございますし、今お互いに挙げた文書等々についても、その諸合意の上に交渉を続けているということは当然のことではないか、こう考えております。

○岡田委員 総理がどう考えているか、あるいは日本側がどう考えているかの問題ではなくて、ロシアも含めてどう考えているか、プーチン大統領はどう考えているかという問題なんですね。
 だから、今までの諸文書というのは合意されているわけですから、これはロシアも当然、プーチン大統領も含めてロシア政府も拘束されるわけです、その結果については。ところが、その文書が今回なくなってしまったことをもって、今まで日本外交として築き上げてきたものを一挙に後退させることになっているんじゃないかと私は思うものですから、総理の意見を聞いているんです。
 あなたがどう考えているかじゃなくて、日ロ両国政府としてこれはどうなのかということを聞いているわけです。

○安倍内閣総理大臣 それは、後退しているかどうか、向こう側がどう考えているかということを私に聞いているわけですよね。ですから、私は、当然、交渉の中で、今までの諸文書にのっとって交渉していますよ。それで議論をしているんですから。
 ですから、当然、岡田さんがおっしゃるとおりであれば、これはあなたはもう今までのことを全部捨てたんですねということであれば、もう交渉しませんよということになるわけでありますが、そういうことにはなっていません。そういうことにはなっていないんですから、今までの諸文書の上に交渉を行っているということであります。
 それ以上、これから交渉のまさに中身に入っていくわけでございますから、ここで述べることは差し控えさせていただきたい、このように考えておりますし、先方が、つまり、どう考えているかということについては、先方がどう言っているかということにもかかわってくることでございますから、ここでの答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

○岡田委員 私は、日本の交渉ポジションが非常に弱くなってしまっているんじゃないかということを申し上げているわけです。
 では、ちょっと話題をかえますけれども、総理はプーチン大統領との間で、たしか二十五回、首脳会談を重ねてこられました。その間、二人だけで、通訳だけを入れて話されたことも多いと思います。先般も随分長く話されたというふうに聞いているんですが、その通訳というのは、当然、外務省の職員ですね。

○安倍内閣総理大臣 当然、そうです。

○岡田委員 そうすると、その通訳者のメモは残っているわけですが、そのメモは公文書になっていますか。

○安倍内閣総理大臣 当然、メモは残っております。当然、メモが残っている以上、公文書であることは間違いありません。

○岡田委員 公文書として保存されているということですね。後で検証ができるということですね。

○安倍内閣総理大臣 もちろん後で検証はできますが、これは二人だけのやりとりでありますから、相当長い間、いわば、どうするか、秘密として何年間非公開にするかということを決めていくんだろう、こう思いますが、当然、プーチン大統領と二人だけのやりとり、これは本音で話さないとできないわけでありますから、今ここで、すぐにそれを公開するということを言えば、もう次の段階から本音では話せなくなりますし、私も本音では話せなくなっていくわけであります。
 そういうことでありますから、当然、それを踏まえて、この公開等の基準を考え、判断をしていくんだろうと思いますが、基本的には、これは私とプーチン大統領との二人だけのやりとり。
 では、なぜ二人だけでやるかといえば、大勢人がいてはなかなかお互いに話せることも話せないということでありまして、この二人だけの会談に持ち込むということ自体がなかなか大変なことでありますが、やっと二人だけの間の話になった以上、その二人だけの話というのは基本的には秘匿されてしかるべきものだろう、こう考えております。

○岡田委員 私も、すぐ公開しろとかそういうことを言っているわけではなくて、それは、事の性格上、かなり先に公開されるということになるんだと思います。文書が残してあることを聞いて、安心はいたしました。
 ただ、こういう二人で長く話すというのは、もちろんお互いの信頼関係をつくる上で非常に重要なことだというふうに思いますが、同時に、リスクもあるわけですね。一方のペースにはまってしまうという可能性もあります。
 そういう意味で、私は、総理が任期中に必ず平和条約を締結するんだ、この問題を解決するんだというふうにみずからお尻を切っておられるだけに、相手方のペースになってしまうリスクというのはあるんじゃないかと思いますが、もう少し、二人だけの話も結構ですが、幅を広げて議論するということも重要なんじゃないでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 これは岡田委員も外務大臣をやっておられたから御承知だと思いますが、首脳会談というのは、こちらがずらっと事務方が並ぶこともありますが、事務方がしゃべるということは基本的にほとんどないですよ。九九・九%、首脳間で話をします。
 相手方が外務大臣に振る場合があります。その場合はこちらも外務大臣に振ることもありますが、基本的には、特にこの領土交渉のようなことについて、むしろ他の大臣が、どちらのペースになるかということなんですが、むしろ、これは二人だけで話した方が、これは基本的に、まさに向こうの首脳の、お互いの覚悟のぶつけ合いでありますから、それはお互いが一対一にならなければ、実際どう考えているかということについては述べにくいということはあるわけでありますから。ですから、一対一に持ち込んだら向こうのペースになるということでは、これは全くないわけであります。
 そもそも、ペースはどうかということについて言えば、お互いに、これはその時々によって、どういうペースになっていくかということは確かにありますが、基本的には、どちらかのペースで一方的に進むということは、どの交渉においても余りそれはないのではないのか、こう思います。

○岡田委員 私が思うに、プーチン大統領から見ると、今、北方領土問題を解決しなければならないインセンティブというのは余りないんじゃないか。そもそも、その気はほとんどないんじゃないか。そうでなければ、国後、択捉にあれだけの軍隊を展開し、二〇一六年に地対艦ミサイルも配備しましたよね。最近は戦闘機も配置したと言われている。本当に返す気があればそんなことをするのかなというふうに、不思議に思いますね。
 そういうこともあり、一方では必ずしも解決しなくてもいいというふうに思っている、他方は任期中に必ず解決すると思っている。その非対称性の中で、私は交渉が一方的になるリスクというのはあるというふうに思うんですね。
 ずばり聞きたいと思いますが、総理、二島だけで国境線を引く、そういうおつもりはありますか。

○安倍内閣総理大臣 基本的に、今まで、日ソ時代も含めて、日ロになってからも、この平和条約交渉というのは本当になかなか大変だったですよ。今までの交渉の記録を見てきても、いわば向こう側から平和条約交渉をやろうということは基本的にないわけでありますから、基本的に日本側が求めているということであります。
 岡田委員は、どちらかが要求が、ウオンツが強い方が弱くなるのではないかということを懸念しておられるんだろうと思いますが、しかし、その中において、我々は、どういう状況であってもこの問題を解決しなければならないと私は思っています。どういう状況であってもですね。
 それは、申し上げるように、七十年以上解決されていない問題でありますからそう容易なものではないということは、もとより私も十分承知をしておりますが、であったとしても、私は、まさに、元島民の皆さんの熱意、そして日本国として当然やらなければいけない交渉として、私は内閣総理大臣としての義務としてもこの交渉を前に進めなければならない、こう決意をしているところでございます。
 そこで、今委員が御質問になられたことは、まさに我々の姿勢は領土問題を解決して平和条約を締結するという姿勢でございまして、それ以上のお答えについては、まさに交渉の中身に入っていくわけでありますから、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

○岡田委員 二島返還論というのは、二島プラスアルファとか言われますが、私は全く違った二つの考え方があるというふうに思うんですね。
 つまり、四島についての国境線を引かないで、二島はまず日本のものであるということを確定する。国後、択捉については引き続き交渉する。こういう二島プラスアルファ論。しかし、そのときは、最初に総理に確認したように、国境線が画定しませんから、平和条約は締結できない。総理が平和条約を必ず締結すると言っている以上、そういう答えはないんだろうなというふうに私は思っています。
 そうすると、どこかで国境線を引く。二島で引いて、あと、つまり国後、択捉はロシア領であるということになって、しかし、そこに経済権益を一定程度認める。あるいは、人道的見地から墓参の自由化とかそういうことが入る。そういう二島プラスアルファというのは一方で考えられるわけですね。
 総理、お答えになれないと思いますから答えは求めませんが、私はやはり、歯舞、色丹だけで国境線を引く、これはやってはいけないことだというふうに思っているんです。総理もそこの思いは同じじゃないですか。

○安倍内閣総理大臣 従来から申し上げておりますように、政府の方針としては、領土問題を解決して平和条約を締結する、この方針に変わりはないということでございます。
 これ以上については、交渉の中身に入ってくるわけでございますので、答弁は差し控えさせていただきたい、このように考えております。

○岡田委員 答弁できないことは一定程度わからないわけではないんですけれども、でも、その答えでは、私は納得しませんし、国民も納得しないと思いますよ。(発言する者あり)だから聞かないと言っているじゃない。
 歯舞、色丹、面積でいうと七%ですよね。九三%は国後、択捉だ。そこで国境線を引くというのは、私はとても引き分けとは言えない。やはり引き分け以上を求めて交渉するのが総理の務めだし、それができないのであれば、無理に平和条約を結ばなければいけない、そういったことではなくて、もう少し柔軟に考えるべきだと思いますが、その柔軟性が総理にありますか。

○安倍内閣総理大臣 柔軟性というのはどういう柔軟性なんですか。

○岡田委員 柔軟性というのは、無理に総理自身が領土問題を解決して、そして平和条約を結ぶ、そういうことを総理は何度もおっしゃっているんだけれども、必ずしも、状況を見て、領土交渉、次の世代にこれを先送りするということも私は重要な判断だというふうに申し上げているわけです。

○安倍内閣総理大臣 無理に国益を害するというつもりも全くございません。
 この間、私もずっと何回か島民の皆様とお話もさせていただきました。
 基本的に、我々、領土問題を解決するというのは、いわば北方領土問題を解決する、この北方領土というのは国後、択捉、歯舞、色丹群島であるということは申し上げているとおりでございます。
 現在、約一万七千人近いロシア人がこの四島に住んでいるわけでございますが、戦前に住んでいた日本人の数も大体一万七千人ぐらいであります。そのうち、一万一千人ぐらいが国後、択捉で、六千人ぐらいが、歯舞に大体五千人なんですね、そして、あと色丹ということになっております。多くの方々、歯舞群島は非常に小さいですから、非常に人口が少ないのではないかと思っておられる方が多いんだと思いますが、当時は昆布漁等が盛んでありましたから、歯舞群島というのは五千人住んでおられて、色丹が千人ちょっとということでございます。
 そういう中において、皆さんといろいろとお話をさせていただく中においては、例えば、まずは、自分たちとしては自分たちの故郷で朝を迎えたいという話を、切実な思いをしておられます。その手紙については、スズキさんという方が書かれたんですが、ロシア語で書かれた手紙はプーチン大統領にもお見せをしたわけでございます。
 その結果、例えば航空機による墓参、皆さん、年を重ねてこられましたから、航空機の墓参というのはずっとなかなか難しかったんですが、それが今回初めて航空機の墓参が実現をしました。ことしの夏にも第二回目が行われることになっていくわけでございますが、なるべく島民の皆さんにお墓参りを、自由な墓参を可能にしていきたい。
 そして、できるだけもっと広い地域にわたって、さまざまな地域、これは制限もかけられていますから、そういう地域をなるべく広げていきたいということで努力も重ねている中において、この皆さんは、とにかく自分たちがまだ行けるうちにこの問題を解決してもらいたいという熱意があるわけであります。
 一方、冷静に国益を判断しなければいけないという、その岡田委員の主張もよくわかります。その中で何とか結果を出していきたい、こう考えているところでございます。

○岡田委員 総理が御努力されて、飛行機による墓参り、墓参が可能になったということは、私は評価しています。
 ただ、もし国境線を歯舞、色丹だけで引いてしまうということになれば、国後、択捉は戻ってこない。もちろん、一定の自由度は確保されるかもしれませんが、ロシア領に明確になってしまう。そうであれば、やはり元島民の皆さんのその気持ち、国後、択捉にかつて住んでおられた島民の皆さんの気持ちからすれば、それはとても許容できないことだというふうに思うわけですね。したがって、私は、粘り強く交渉すべきだということを申し上げているわけです。
 国後は大体沖縄本島と同じ広さ、択捉は鳥取県に相当する、かなり大きな面積ですね。それをみすみすロシア領にしてしまうということは、私はあってはならないことだと思います。
 ただし、もちろん、私も、総理が何度もおっしゃるように、外務大臣も経験して、四島全部というふうに、それでなければ絶対にだめだと言っているわけではありません。それは、やはり交渉の結果。しかし、少なくとも引き分け以上に持ち込むべきだ。それは、歯舞、色丹という七%だけでは、とてもそういうことにはならないということを申し上げているわけです。
 私のこの考え方を十分踏まえて、これから交渉に当たっていただけますか。

○安倍内閣総理大臣 もちろん、今委員がおっしゃった考え方は、多くの国民の皆さんが確かにそれは共有しておられると私も思います。その中において私も交渉していきたい、こう思っています。
 ただ、先ほど申し上げましたように、表現の仕方なんですが、領土においては七%ということでございますが、そこがたかだか七%ではないかという言い方、我々も聞かれたら七%とお答えするんですが、たかだか七%というお答えの仕方は、例えば歯舞群島に住んでおられる方々にとっては、それは何か自分たちがちっぽけな存在だと思われているようで不愉快だということも言われました。これは事実を申し上げているわけでございまして、そこのところ、もちろん、そういう中において、ぜひ多くの島民の皆様に御了解をいただくために努力をしていきたい。
 その中で、これはお互いがいわば了解にならなければ、お互いが受入れ可能とならなければこの問題は解決をしないわけでありまして、日本側の主張をしていればいいということには、これはやはりならないんですよね。これは、お互いが受入れ可能なものはどこかということを突き詰めていく必要があるわけでありまして、では、次の世代、次の世代といって二十年、三十年たって、百年経過したら、これはもう歴史のかなたに行ってしまうという問題になるかもしれないということであります。
 もう大体、元島民の皆さんも平均年齢が八十歳近くになってきている、八十歳を超えてきているわけでございますので、そこは、我々、何とかここでお互いに受入れ可能な解決策に到達をしたい、こう思っています。

○岡田委員 多分、私と総理の間で一つ違うのは、やはりプーチン大統領に対する見方だというふうに思うんですね。
 総理は何度も何度も会談を重ねられて、見きわめておられるわけですから、そちらの方が確かなのかもしれませんが、私はやはり、ソ連からロシアになる中で、ゴルバチョフ大統領やエリツィン大統領、窓が開いた時代、それから見ると、今のプーチン大統領のロシアというのは、また時計がもとに戻ってしまったようなところがある。いわば帝国主義じゃないですけれども、少なくとも、民主化に向かって進んでいる、そういう印象は受けないわけですね。
 ですから、プーチン大統領はこの領土交渉の相手として適切なのかどうか。私は、状況を見て、余りにも不利な答えになるということであれば、それは次に先送りする、そういう勇気もあわせて持っていただきたい、そうでないと、場合によってはとんでもないことになるというふうに思っているんです。
 同時に、今度、参議院選挙の前にG20があって、そこでプーチン大統領とお会いになる。参議院選挙を意識して、そこで取り繕うような、一瞬前進したような、そういう印象を与えるようなことは総理はまさか考えておられないと思いますけれども、そういうふうにすると、交渉全体がおかしくなってしまいます、長い目で見たときの。そのことについての自覚もぜひ持っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 この交渉というのはそう簡単なことではないわけでありまして、では、ゴルバチョフ大統領時代に交渉の窓が開いていたかといえば、交渉記録を見ていけば、それは必ずしも開いていないわけでありまして、五六年宣言についても、ゴルバチョフ大統領はそれを完全に認めていたかといえば、これは必ずしもそうではないわけでございます。
 エリツィン大統領との交渉においても、これはさまざまな経緯がありましたが、しかし、最後の段階で、これは果たして向こう側が、ロシア側が本当に受け入れられるかどうかという大きな壁があるわけでありまして、これを越えられるものでなければなかなか実態としては難しいわけでございまして、だからこそ、今、四島の共同経済活動について、具体的に実現しようということで交渉を進めているわけでございます。
 そうなれば、初めて四島に日本人が行って、一緒にロシア人と経済活動をして、そこで、まさにその経済活動から生み出される富についてはお互いが享受することができるようになるわけでございます。もちろん、これはビジネスベースでありますからODAとは違いますが、しかし、一緒に日本人と今住んでいるロシアの人々が仕事をして、やはり豊かになったなという実感を持つということは大きなことなんだろうと思っております。
 そういう中で、交流が深まっていく中において信頼関係ができてくるのではないか、こう期待をしているわけでありまして、まさに今までになかった協力が進み始めているということは事実だろうと思います。

○岡田委員 共同経済活動についても、新しい法的な枠組みというのは私は議論が全然進んでいないと。ロシアはロシアの法律と言い、日本はそれを認めるわけにいかないという中で、新しい仕組みづくりは私は停滞しているというふうに思っています。
 そして、主権の問題と経済活動は全然別です。もし、国後、択捉がロシアのものになって、その中で経済活動がかなり自由にできるからいいじゃないかと考えているとすると、もちろんそれは間違いで、やはり、主権の問題、これは国益そのものですから、総理にはしっかりとそこを踏まえてこれからも交渉していただきたいと思います。
 終わります。




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