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エネルギー基本計画の見直し-逃げずに大胆な議論を

 エネルギー基本計画の見直し議論がスタートしました。現行計画は2018年作成されたもので、3年ごとに見直しを行うことになっています。現行計画は2030年度の電源構成を、火力56%(うち石炭26%)、原子力22~20%、再生可能エネルギー22~24%としています。また温暖化ガスについて、2050年までに80%削減、今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素化を実現するとしています。 この現行計画には多くの問題点があり、私もいままで予算委員会で問題点を指摘してきました。特に以下の点について、しっかりとした検討が今後なされることを期待したいと思います。

 まず2030年に22~24%という、電源構成における再生可能エネルギーの比率が低すぎることです。この点は、梶山経産大臣も「再生可能エネルギーを最大の主力電源にする」と日経新聞のインタビュー(10月14日朝刊)で述べており、方向性が変わったことは評価できます。問題はそのレベルです。2030年の英国目標値は44%、フランスも40%です。日本でも例えば経済同友会は40%とすべきと提言。実は太陽光や風力のコストは世界的には大きく低下、化石燃料や原子力に対して政府の支援なしでも競争力を持つに至っています。日本においてもコスト低減のための政策努力がなされることを前提に、40~45%を目標とすべきです。
 再生可能エネルギーが2030年で40~45%となると、その増えた約20%分だけ石炭(現行26%)と原子力(同22~20%)を減らせることとなります。どちらに重点を置いて減らすべきかは、まさしく原発のリスクと地球温暖化のリスクをどう考えるかの問題で、最善の組み合わせについて国民の皆様にもよく考えていただきたいと思います。

 原発については梶山大臣は「今後10年間は再稼働に注力する」、「再稼働もできていない状態で(原発の新増設について)その話はできない」と述べたと報じられています。現在ある原発を今後どの程度再稼働していくのか、安全性と地元の理解が十分になされることが前提ですが、私は石炭火力も減らしていく必要があることを考えると、あまり極端な議論にならないようにすべきと思っています。他方で、将来新増設するか否かについては国もしっかりとした判断をすべきで、議論の先送りは許されません。仮に今後とも原子力エネルギーに一定程度依存するということであれば、そろそろ新増設に取りかからなければなりません。新増設を認めるか否かの国の判断はタイムリミットなのです。私は将来原発に依存しない社会を実現すべきで原発の新増設は認めないことを、国として明確にすべきだと思います。

 温暖化ガス排出ゼロ、すなわちカーボンニュートラルをいつ達成するか、国として大きな課題です。EU,英国はじめ世界121か国が2050年までにカーボンニュートラル達成を目標として設置し、バイデン候補も公約に掲げています。日本は現計画では「2050年までに80%削減、カーボンニュートラルは今世紀後半のできるだけ早期に」としていますが、世界の流れからは大きく取り残されています。30年先のことは様々な不確定要素もあり、カーボンニュートラルが野心的な目標であることは事実です。しかし地球温暖化問題の深刻さを考えれば、少なくとも2050年カーボンニュートラルを決断すべきです。これは経産省のエネルギー基本計画の議論というよりは、内閣全体の最重要議題として議論し、決断すべきことです。

 カーボンニュートラルの目標を設定するだけでなく、如何にしてそれを実施していくかの議論が不可欠です。CO2を固定化するための技術開発なども重要であることは事実ですが、民主党政権で限定的に導入した炭素税の抜本的な拡充による市場メカニズムを活用した脱炭素化の推進を基本とすることを打ち出すべきです。省エネルギーや再生可能エネルギーの導入には大きな資金シフトも必要で、同時にそのことが経済成長の実現にもつながります。ポストコロナの経済対策の柱はグリーンです。その財源として現在の政府のエネルギー政策は、未だに化石燃料の開発などに多額の予算を投入していますが、既得権にとらわれず予算配分を大きく変え、グリーン化の財源とすべきです。これらの点について、政府においても今後十分な検討がなされることを期待したいものです。



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