トピックス

2/4 予算委員会(自衛隊の中東派遣、年金問題、温暖化対策)

【委員会】 衆議院予算委員会
【日 時】 2020年2月5日  9時~9時46分(46分) 

※ 動画はコチラ
⇒ YouTube 【岡田かつや国会論戦】 https://youtu.be/9zpeswUzNqY

質問要旨
1.中東への自衛隊派遣
  ・米軍との情報共有について

2.年金制度改革
  ・最低生活保障機能の底上げについて

3.地球温暖化対策
  ・カーボンプライシングについて
 
(答弁要求  総理大臣、防衛大臣、厚生労働副大臣、環境大臣、法制局長官)


            ――――◇―――――
○岡田委員 
 岡田克也です。
 きょうは、まずは中東への自衛隊派遣について基本的な議論をしたいと思っています。
 まず、総理に確認いたしますが、今回の中東への自衛隊派遣の意義ですね。私の理解するところ、日本船舶、日本関係船舶の航行の安全確保のための情報収集活動である、有志連合に参加することはなく、我が国独自の取組であるというふうに説明されていますが、そのとおりでよろしいですか。

○安倍内閣総理大臣 
 これは委員御承知のとおり、中東地域の平和と安定は、世界、我が国の平和と安定に直結するものであろう、そして、エネルギー資源、特に、供給源であり、我が国の原油の輸入量の九割を依存する中東地域において、日本関係船舶の航行の安全を確保することは非常に死活的に重要であろう、こう考えております。
 今般の政府の取組は、中東地域における平和と安定及び日本関係船舶の安全の確保のため、我が国独自の取組として、さらなる外交努力、そして航行安全対策の徹底の上に、情報収集態勢強化のための自衛隊の活用について、政府一体となって総合的な施策を関係省庁が連携して実施するものでありまして、中東地域においては、現在緊張が高まっている状況ではありますが、日本関係船舶の防護の実施を直ちに要する状況ではないと考えています。
 一方、政府としては、こうした緊張の高まりを踏まえて、日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集態勢を強化することが必要と考えています。
 こうした状況において、各国の軍が中東地域において艦船、航空機などを活用した航行の安全確保の取組を強化していること等も踏まえまして、我が国から中東地域までの距離、この地域における活動実績及び情報収集に際して行う各国部隊、機関との連携の重要性を勘案し、我が国独自の取組として自衛隊による情報収集活動が必要であると判断したものであります。

○岡田委員 
 そこで、これは防衛大臣で結構ですが、二つ確認したいというふうに思っています。
 一つは、自衛隊の活動範囲。これは既に閣議決定の中で書かれたとおりでありますが、他方で、米国中心の有志連合、もちろん、自衛隊はペルシャ湾とかホルムズ海峡には行かないということになっていますが、それ以外の自衛隊の活動範囲というのは有志連合の活動範囲と重なり合っている、ほぼほぼ重なっているというふうに認識しておりますが、それでいいかどうか。
 それから、二番目ですけれども、その地域を航行する船舶等の状況把握をするということになっておりますが、その船舶等の中には他国の軍の船舶や不審船も含まれる、今までの委員会の審議の中でそのことはお認めになったと思いますが、確認です。

○河野国務大臣 
 IMSCには日本は加わりませんから、IMSCがどの海域でどういうような行動をするかというのを申し上げる立場にはございません。
 日本の自衛隊がオマーン湾で情報収集を行いますが、これは、そこを航行している船舶の情報を一般的に収集するものであって、船舶の種類あるいは船舶の国籍、何か特定のものを排除するということは考えておりません。

○岡田委員 
 特定のものを排除することは考えていない、つまり、不審船であったり他国の軍の船舶もその範囲には含まれている、こういうことだと思います。
 それから、大臣、有志連合について申し上げる立場にないと言われましたが、有志連合の活動範囲というのは米国政府は明らかにしているわけですから、その範囲の中で、具体的にどうするかということまで私は聞いているのではなくて、範囲が重なり合っていますねと聞いているわけですから、そのぐらいはちゃんと答えなきゃ、私はちょっと、ひどい答弁だというふうに申し上げておきたいと思います。
 さて、問題は、どういう状況のもとで情報共有がなされるか。つまり、情報共有の話、今総理もおっしゃらなかったんですが、閣議決定の中でも、当然、情報共有を米軍と行うということは確認されています。
 それは、自衛隊だけで集める情報には限界もあるということで、米軍の情報も要る、そして自衛隊の情報も米軍に提供する、こういうことだと思うんですが、平時のときはともかくとして、いずれにしろ、この船舶等の位置情報とか識別情報、その船舶という中には不審船も、あるいは他国の軍の船舶も含まれるということになりますけれども、そういうものを共有するということになるわけです。
 今までの安全保障委員会の答弁などで、日本の派遣された自衛隊、つまり「たかなみ」あるいはP3C、データリンクの能力があるということで、収集した情報を米海軍の船舶等に情報提供する能力があるということは答弁されています。そのことの確認と、これはフルタイムで情報共有することができるということを意味するんでしょうか。

○河野国務大臣 
 データリンクというのは、取得した情報を艦船等にリアルタイムで情報共有するシステムで、探知した目標に関する位置情報などを共有することができるシステムでございますが、今般の情報収集活動は、あくまで我が国独自の取組として行うことから、我が国周辺海域における警戒監視の任務とは異なり、護衛艦「たかなみ」及びP3C哨戒機は、米軍とデータリンクをつなぐことはございません。データリンクを用いたリアルタイムの情報共有は行われません。

○岡田委員 能力はあるというふうに答弁をしていますね、今まで、船舶とは。
 行うことはないというのは、何を根拠に言われているんですか。

○河野国務大臣 
 今回は、我が国独自の取組でございますので、データリンクをつなぐということはございません。米軍との情報共有は、NAVCENT、米中央海軍に送ります連絡員を介して米軍とやりとりをする、そういうことになります。

○岡田委員 
 例えば、国籍不明の不審船が自衛隊の活動する範囲にあらわれた、そこに米軍も展開しているというときに、お互いに協力しつつ、その不審船に対して対処する、法令の許す範囲でですね、ということは当然考えられるんじゃないですか。そのときに、データリンクを使って情報共有することはしないということですか。

○河野国務大臣 
 差し迫った状況の場合には、船舶の共通通信システム、国際VHFなどを使って船舶とのやりとりは行うことができますので、データリンクをつなぐ必要はございません。

○岡田委員 
 データリンクを使うことはないという大臣の御答弁ですから、それを前提に議論したいと思いますが、しかし、情報共有はしなければいけない。お互い協力して、不審船についての情報を共有しながら対応するということになると思うんですね。
 その対応の仕方の中で、例えば、米軍が自衛隊の情報も踏まえて武力行使に至るということは当然考え得ると思うんですが、これは問題ないんですか。

○河野国務大臣 
 米軍と共有するのはあくまでも一般的な情報交換でございまして、その情報だけをベースに米軍が武力を行使するということは想定できません。

○岡田委員 
 一般的な情報交換ということの意味がよくわからないんですが、不審船があって、その不審船に対する情報を日米で共有しながら対応する、これは一般的じゃないと思うんですね。いかがですか。

○河野国務大臣 
 米軍との情報共有は、先ほど申し上げましたように、米中央海軍に派遣をする連絡員を通じて恐らく一日一回程度のやりとりということになろうかと思いますので、何かその情報をもとに米軍が武力を行使するということにはならないというふうに思います。

○岡田委員 
 先ほど大臣は、日米の艦船でデータリンクは使わないけれども、情報交換をしながら対応するということはあるというふうに発言したと思うんですね。
 ですから、その情報交換の情報に基づいて米軍が武力行使などを行うというときに問題はないのかと聞いているわけです。

○河野国務大臣 
 差し迫った、例えば人命救助の必要などがある場合に直接のやりとりをする、あるいは、何か本当に差し迫った状況になったときにVHFの直接のやりとりというのはあると思いますが、その情報だけで米軍が武力行使ができるというものではないと思います。
 自衛隊が収集しますのは、活動海域を航行する船舶の船種、船籍、位置、針路、速力といったものを収集をし、不審船の存在、不測事態の兆候といった船舶の航行の安全に影響を及ぼすような情報を集めるわけでございますので、それだけをベースに米軍が何か武力行使をするというのは想定できないと思います。

○岡田委員 
 それだけをベースにというふうに私は言っておりませんが、自衛隊の収集した情報も含めて米軍が何らかの活動をするということはあるのではないか、そのときに、それは武力行使の一体化という問題が生じるということを申し上げているわけです。
 政府の、法制局の見解ですが、一般的な情報交換の一環として他国に提供することは、実力の行使に当たらず、憲法九条との関係で問題が生じるおそれはないと。確かにそうでしょう、一般的な情報交換であればそうでしょう。
 しかし、例えば、特定の国の武力行使を直接支援するために偵察活動を伴うような情報の収集を行い、これを提供する場合というように、情報の提供に特定の行動が伴うような場合には、これは例外的に他国による武力行使と一体となると判断される可能性があるというふうに考えています、これは最近の法制局の答弁であります。
 したがって、さっき私が申し上げたようなシチュエーション、つまり、不審船があって、それを自衛隊なりあるいは米海軍が見つけて、そして共同で情報交換しながら、その不審船が一般船舶に対してアクションをとらないように行動していく、こういうときに、単にそれを防御するだけならともかく、米軍が武力行使をしてしまうということになると、自衛隊の情報が非常に重要な役割を果たせば、ここで言う武力行使の一体化と判断される可能性があるということになるんじゃないんですか。

○河野国務大臣 
 特定の行動とは、従来から、我が国が、ある国から特定の戦闘行為の実行を直接支援するために特定の情報を特に戦術的にとってほしいと頼まれ、そのために情報収集活動を行うようなことを指すというふうに解しております。
 ある目標に方位何度何分、角度何度で撃てというような、そういう情報を出せば、これは軍事作戦上の指揮命令の範疇に入る、そういうことになろうかと思いますが、今回、自衛隊は、特定の国のために何か情報収集を行うものでもなく、特定の国に頼まれて特定の情報をとるというものではございません。自衛隊が日ごろ情報収集をしているものを一般的な情報交換として交換をするものでございますから、御指摘は当たりません。

○岡田委員 
 特定の行動というのを非常に狭く、今、独自の解釈を述べられたわけですけれども、しかし、先ほど言っているように、米軍と共同して情報共有しながら対応に当たっているという段階での話ですから、これは特定の国ということになるわけでしょう。そういう場合に、全く一体化のおそれがないということを私は断言できないというふうに思いますよ。
 大臣は別のところで、自動的に攻撃が行われることにならないからいい、そういう答弁もしておられると思いますが、そういうふうに、法制局の解釈を狭く狭く勝手に解釈して、大丈夫だと言っているにすぎないというふうに思います。
 私は、法制局の見解と大臣の答弁の間に大きな乖離があるというふうに思うわけですが、総理、いかがですか。

○安倍内閣総理大臣 
 先ほど来、河野大臣から答弁させていただいておりますが、自衛隊は、活動海域の船の種類や船籍、位置、針路、速力等を確認した上で、不審船の存在や不測事態の兆候といった船舶の航行の安全確保に必要な情報を収集すると承知をしています。
 その上で、こうした情報についてはデータリンクはしていないということは答弁させていただいたとおりでございますし、先般、横須賀に参りましたときにも艦長等からそのことも確認を私はしているところでございますが、その上で、今申し上げましたようなこうした情報については、基本的に、米中央海軍司令部へ派遣している連絡要員を通じて、原則として一日一回、米軍と情報共有する方向で調整はしていると承知をしておりますが、そこで、このような情報を用いて行う米軍、米国との情報共有は、航行の安全確保のための一般的な情報交換の一環として、これは情報交換ですから、こちらからも出しますが向こうからもいただくということでありまして、こちらの航行の安全の一環にもなるわけでございますが、一般的な情報交換の一環として行うものであり、武力行使との一体化、いわば、問題は、武力行使と一体化するかどうかということであります。
 その中におきましては、これはまさに憲法との関係で一体化するかどうかということであります。
 一般論として、自衛隊がその任務を遂行するために行う情報収集活動によって得られた情報を一般的な情報交換の一環として他国に提供することは、一般論として、実力の行使に当たらないため、憲法第九条との関係で問題ない。ただし、情報の提供については、従来から、例えば、特定の国の武力の行使を直接支援するために偵察行動を伴うような情報収集を行い、これを提供する場合のように、情報の提供に特定の行動が伴う場合には、例外的に他国の武力の行使と一体となると判断される可能性があるものと考えています。
 ここで言う特定の行動とは、従来から、我が国が、ある国から特定の戦闘行為の実行を直接支援するために特定の情報を特に戦術的にとってほしいと頼まれ、そのために情報収集活動を行うようなことを指すと解しております。
 また、ある目標に方位何度何分、角度何度で撃てというような行為は、情報の提供にとどまらない軍事作戦上の指揮命令の範疇に入るものであり、憲法上問題を生ずる可能性があると考えておりまして、今般の自衛隊が実施する情報収集及び米国との情報共有は、航行の安全確保のための一般的な情報交換の一環として行うものでありまして、憲法上問題は生じないと考えております。

○岡田委員 
 問いに答えてもらっていないんですね、ほとんど。
 つまり、司令部に対して定期的に自衛隊が情報を送るということを私は言っているのではないんです。そういう話ではなくて、特定の、例えば不審船が見つかったときに、そこに居合わせた日米で、自衛隊と海軍が情報を交換しながら対応している、そういう場面は当然起こり得るだろう。そのときに、それは果たして今までの政府の、法制局の見解と合致している、必ず大丈夫だと言えるのか。具体的に情報のやりとりをするわけです、特定の不審船に関して。ということになれば、その情報が非常に決定的に重要な情報であれば、武力行使の一体化の議論というのは当然起こり得るというふうに私は考えるんです。それは普通だと思いますが、いかがですか。

○安倍内閣総理大臣 
 一体化するかどうかということについては、今申し上げた中身が、まさに一体化論の中において、それは一体化する、憲法上も一体化するので許されないという立場の中の情報共有とは何かということを御説明させていただいたわけでございますが、自衛隊は、そもそもデータリンクをしていない。もちろん、データリンクをしているから一体化するということでもないんですが、今回はデータリンクをまず行っていないということでありまして、一日に一度、中央軍に先ほど申し上げましたような情報を提供するのでございますが、その意味におきましては、軍事作戦上の指揮命令の範疇にもちろん入るということにはならない範囲の一般的な情報を送るということでございますので、今、岡田委員が御指摘になられたような、自衛隊の船舶と米軍の船舶が近傍にあって、そこに不審船がいて共同対処するということは、我々は全く、これは想定はそもそもしていないところでございます。

○岡田委員 
 今、想定していないと言われましたが、現実に不審船があらわれれば、そういうことは必要になってくるんじゃないですか、現場の判断としては。米海軍の船がそこにあれば、当然協力して不審船に対応するということになるんじゃないんですか。想定しないというのはどういう意味ですか。
 そういうときに、じゃ、自衛隊はそっぽを向いているということですか。あるいは、米軍がそっぽを向いているということですか。私は非常におかしなことを言われたと思いますよ。

○河野国務大臣 
 そういう場合であっても、別に自衛隊は、米軍から情報の収集を依頼されて何か情報をとるわけではございません。自衛隊が米軍に共有をするのは、自衛隊が収集した情報を一般的に交換をするわけで、不審船がそこにいるからといって、別に米軍の依頼を受けて情報を収集したり情報を伝達するわけではありませんので、御指摘は当たりません。

○岡田委員 
 依頼されていないからとか一般的なという言葉でごまかされるんですけれども、現実にはそれは情報交換することになるわけですね。それはやりませんということにはならないわけでしょう。
 だから、私が問題にしているのは、そういうかなり微妙な事態の中で、現場の自衛隊にこれを判断させるんですか、どこまで情報交換すべきかとか。それはかなり酷な話だと思いますよ。だから、今おっしゃった答弁で、私は、現場の自衛隊が迷わずに行動できるとは思えないんですね。
 そして、もう一つは、仮に武力行使の一体化でないとしても、今私が申し上げたような行動を行うとすると、自衛隊の活動が日本独自の取組であるというふうには第三国から見てみなされない可能性が高いと思うんですよ。やはり日米協力してやっているということになりかねない。そうなると、結局、派遣された自衛隊の皆さんの安全の確保、あるいは、そもそもの目的であった日本関係船舶の安全確保がむしろ危うくなる可能性も秘めている。
 つまり、独自の活動じゃない、やはり有志連合に、形の上は加盟していないけれども、一緒になってやっている、そういうふうに受け取られる可能性があると思うんですが、この点については総理はどう考えていますか。

○安倍内閣総理大臣 
 先ほど河野大臣が答弁させていただいたように、基本的には、自衛隊がいる、情報収集を行っている海域と米側が行っている海域というのは、もちろん遠いわけでございます。しかし、その中で、今委員が想定されたような事態、自衛隊艦艇と米軍艦艇が現場海域で情報収集活動によって得た情報を直接交換することは通常想定はしておりませんが、また、そもそもそういう状況にはならない、こう考えておりますが、例えば、緊急時といった、具体に危機が迫っていて、それを知らせる必要がある場合などに、国際VHF、船舶共通通信システム等を使用して、米軍艦艇を含む他国の船舶と直接通信を行うことはあり得るわけでありますが、しかし、実際に独自の判断をして対応するのは、これは米側の艦船であり、先ほど申し上げましたような、いわば一体化に当たるような情報の提供を我々が行うということは考えていないわけでありますし、事実、それは憲法との関係が生じるわけでございます。
 そして、当然、多くは現場で判断するわけでございますが、同時に、さまざまな困難な判断の場合は、東京に指示を仰ぐということにもなるわけでございます。
 また、同時に、日本と有志連合との関係については既にイラン側に説明をしているところでございまして、日本側の詳細な説明に先方は感謝をし、そして評価をし、そして、我々の意図について理解をしているということでございます。

○岡田委員 
 総理はそういう状況にはならないというふうに言われましたけれども、これから米国とイランの関係、どういうふうに展開していくかはわからない。今は小康状態かもしれませんが、根っこは非常に厳しい対立の中にあって、緊張関係がより高まる可能性もある。そういうところに自衛隊といういわば武装した部隊を出しているわけですから、これは一歩間違えると、自衛隊自身の安全の問題や、あるいは日本の国益である日本関係船舶の安全の確保ということに反するような事態を招きかねないというふうに私は思っているわけです。
 そういう議論を、本来であればしっかり国会でもやって、そして、国民の皆さんにも説明をして、理解してもらった上で自衛隊は出すべきだった。それを閣議決定だけで、ほとんど国会の質疑もないままに出してしまって、今ごろ議論しているわけですね。そういうことは私は極めて問題じゃないかということを申し上げているわけです。
 この問題はこれからもしっかり議論していかなければならないと思いますが、自衛隊員の安全確保、そして日本関係船舶の安全航行、そのために何がベストかということについて、私は、もっと思慮深く議論すべき、そういう話だったというふうに申し上げておきたいと思います。
 次に、時間も限られていますので、年金の話をちょっとしたいと思います。
 昨年八月の年金の財政検証、この結果を見て私はおやっと思いました。二〇〇四年の最初の、当時は名前は違いました、財政再計算という言い方でしたが、これと今回の財政検証を見て、大きな違いがあるということです。
 大きな違いの一つは、マクロ経済スライドの導入がおくれたことで時間が随分長引いてしまったということですね。調整の期間が随分長引いたということですが、それに加えて、従来の、二〇〇四年のときには、厚生年金、つまり報酬比例部分と基礎年金の部分は、それぞれがマクロ経済スライドで調整するということになっていたわけですね。その結果として五〇・二%になるということです。
 ところが、今回の検証結果を見ると、報酬比例部分については、赤でちょっと色をつけておいたんですが、今の二五・三がほとんど変わらない。だから、専ら基礎年金部分でマクロ経済スライドがかかって調整する。約一〇ポイント下がるわけですね。そういうことになっている。
 これはなぜそうなっているのか、まず厚労副大臣、簡単に説明してください、わかりやすく。

○稲津副大臣 
 お答えをさせていただきます。
 現在の公的年金制度の財政フレーム、これを導入した二〇〇四年の改定の際は、賃金上昇率が物価上昇率よりも高い経済が継続することを前提にいたしまして、マクロ経済スライド調整を継続的に行っていくことによりまして、保険料等の収入と年金の給付、この一階部分、二階部分とも約二十年でバランスがとれるもの、このように見通しておりました。
 しかしながら、二〇〇四年改正以降はデフレ経済が続きまして、賃金上昇率が物価上昇率を下回っていたためマクロ経済スライドが発動しなかったことにより、一階部分、二階部分とも当初の想定よりも調整がおくれることになりました。
 さらに、二階部分の比例報酬年金は賃金に連動していることから、現在の賃金の低下により、将来の報酬比例年金額も調整されることで財政のバランスが図られますが、一階部分の基礎年金は定額であることから、賃金が下がって負担側の収入減が起きても、報酬比例年金のような形での給付の調整は生じない仕組みになっております。
 このように、賃金上昇率が物価上昇率を下回ったことによる財政影響を一階部分がより強く受けたため、基礎年金部分については調整期間がより長期化しているものでございます。

○岡田委員 
 調整期間が長引いたことの説明を求めたわけではなくて、基礎年金部分で専ら調整することになっているということについて私は説明を求めたわけです。
 いずれにしろ、それは技術的な、仕組みの中でそうなってしまった。私は、簡単に言えばそういうことだと思うんですね。しかし、それが政策的に妥当なのかどうかということはどうなんでしょうか、総理。
 つまり、厚生年金、基礎年金、つまり二階建て部分も含めた厚生年金全体を受け取っている人にとっては、これは、一階部分で調整しようが二階部分で調整しようが、それは結局トータルとして出てくるわけですからいい、同じだということになるかもしれませんが、国民年金受給者の方は基礎年金しかないわけですから、専らそこで一〇ポイントも調整されてしまうということになると、やはりそれは国民年金加入者にとってはかなりつらい話になるということになると思うんですが、そこをどう考えておられますか。

○安倍内閣総理大臣 
 被用者を対象とする定率負担の厚生年金と、自営業者を対象とし、定額負担、定額給付の国民年金は、保険料や給付の設計において大きく性格が異なり、両者を混在させた形でマクロ経済スライドを設計することは、公平性担保などの観点から課題も多いと考えております。
 他方、基礎年金水準の改善は重要な政策課題と考えておりまして、例えば、先般の財政検証においては、支え手の増加を反映して、前回よりも所得代替率が改善したところであり、これは主として基礎年金部分の改善によってもたらされたものであります。
 さらに、今般、五十人超の中小企業までの厚生年金の運用拡大を進めていくことで、厚生年金のみならず基礎年金の給付水準も向上させる財政効果を持つのは委員御承知のとおりだと思いますが、持つことから、議員の御指摘の政策論として、まさに全世代型社会保障改革によって支え手をふやして、またパートの皆さんへの適用拡大をしっかりと進めていくことで、基礎年金水準の向上を図っていきたいと考えております。
 委員は、このマクロ経済スライドの仕組みそのものを考えるべきだということでございますが、政府としては、今申し上げたような形で基礎年金の水準の向上を図っていきたい、こう考えております。

○岡田委員 
 総理、地元を回っていますと、やはり、年金を減らさないでくれという声はかなり強烈にあるんですよ。私も、マクロ経済スライドで必ずしも減るわけじゃないですよと言うんですけれども、現実に、例えば来年のマクロ経済スライドの状況を見れば、物価が〇・五、二〇一九年度、上がって、そして年金は〇・二%増加ということですから、実質的にはやはり下がっているんですね、〇・五物価が上がる中で〇・二しか年金はふえていないわけですから。
 そういう現実はあるし、そもそも、水準が極めて低いという問題がありますね。生活するには、一人当たり六万五千円余りですから、夫婦ならその倍ありますけれども、それで生活していけというのは、かなりきつい話になります。そういう国民年金加入者のところで専らマクロ経済スライドで調整していくという、それが本当にいいのかどうか。
 総理、いろいろおっしゃいましたが、それでどれだけ、じゃ、所得代替の割合が一〇ポイント下がる、現役世代と比べて下がるということについて、どれだけリカバリーできるんですか。私は、それは微々たるものだと思いますよ。
 だから、この国民年金受給者、あるいは基礎年金受給者に対して、もっと思い切った手を打っていく必要がある。そうでないと、最低生活を保障するという公的年金の役割が果たされていない、あるいはこれが今後果たされなくなる、そういう状況じゃないかと思いますが、いかがですか。

○安倍内閣総理大臣 
 マクロ経済スライドの意義、意味については、もう委員も御承知のとおり、将来世代の給付を確保するためでございますし、実額においては減っていなくて、前回も〇・一%プラスでありますし、今回も〇・二%。ただ、実質ということについては、マクロ経済スライドが発動されますから、実質では委員のおっしゃったとおりかもしれませんが、しかし、前回、マクロ経済スライドはマイナス〇・二%だったんですが、それまでたまっていたものを、それを乗せてもプラス〇・一%ふやすことができて、今回は、マクロ経済スライド自体が〇・一まで縮小してきているのも事実であります。
 そこで、手取りが減っていくということでございますが、二〇二五年にはいわゆる団塊の世代が七十五歳以上の高齢者となる中、現役世代の負担上昇に歯どめをかけることは待ったなしの課題であると考えておりまして、これまでも、高齢者を含め能力に応じた負担をしてきていただいていることは御理解をいただきたいと思いますが、その上で、年金制度については、人生百年時代の到来を見据えながら、働き方の変化を中心に据えて改革を進める必要があります。
 このため、今回の改革においては、被用者保険の適用拡大等により、支え手をふやし、制度自体の安定性を高めることとしておりまして、それが将来の年金水準の確保にもつながることとなります。このような内容を国民の皆様に御理解をいただけるよう、丁寧に説明していきたいと思います。
 なお、低所得や無年金、低年金の高齢者の方には、年金受給資格期間の二十五年から十年への短縮や、あるいは年金生活者支援給付金の支給、また、年金給付から天引きされる医療、介護の保険料軽減を実施をしてきておりまして、今後とも、社会保障制度全体で総合的な対応を検討していきたいと思います。

○岡田委員 
 この二十五年を十年にしたこととか給付金の話というのは、民主党政権時代に三党合意で確認されたこと、それが消費税を上げていく中で実現したということですが、やはり、基本的に考えると、国民年金というのは、かつては自営業者が対象で、そして資産もあるし定年もない、そういう中で、最低限の水準で、あとは自分でやってくださいということだったと思うんですが、今やその自営業者の割合は恐らく一五%ぐらいだと思うんですね。それ以外の多様な働き方の人が入っていて、その一部は確かに厚生年金の適用範囲を拡大する今回の措置などで、ある程度補われるかもしれませんが、私は非常に限界があると思うんですよ。
 だから、やはり、国民年金、基礎年金について、安心して老後が送れるだけの、余裕はなくとも最低限の生活保障できるだけの制度設計というものをきちんと議論する、それこそが私は年金改革の本丸だというふうに思うんですが、いかがですか。

○安倍内閣総理大臣 
 この問題についても、岡田委員と随分長い間議論、第一次政権のときから議論させていただきましたが、厚生年金と国民年金のそもそもの、つくったときの違い、それが設計の違いになっているわけでありますが、自営業者の方を中心とする国民年金でございますから、これは、老後も一定の生計の手段を有し緩やかに引退をされていく自営業者と、退職して収入の道がなくなる被用者との違いというのもございましたし、また、国民年金については、当初、所得捕捉の困難性の制約もある中で、国民皆年金を達成するため、定額負担、定額給付としたものでありまして、基礎年金だけで生活の全てを賄うという設計にはなっていないというのは今までも申し上げてきたとおりでございます。
 ただ、その中で、確かに、委員が御指摘になられたように、私がこう言うといつも委員から反論されるのは、働き方の多様化を背景に、国民年金の第一号被保険者の中で被用者の方も相当ふえてきている、それは事実だと思います。こうした方に対しては、被用者にふさわしい保障が受けられるよう、被用者保険の適用拡大を進め、生活の安定を確保していくことが重要だと考えています。
 また、同時に、就職氷河期世代の就業支援に取り組むことで、この世代の将来の生活の不安につながるもの、いわば就職氷河期の方々は厚年に入っておられない方もたくさんおられますので、その方々をいかに、例えば厚年に入っていただけるような形に持っていくかということではないか、このように思います。
 さらに、人生百年時代の働き方の変化に年金制度がより柔軟に対応できるものとするために、受給開始時期の選択肢を七十五歳まで広げ、受給額についても八四%までの割増しを受けることを可能にし、そして、在職老齢年金について、働くインセンティブを失われることのないような見直しを行うこととしております。
 また、低年金、無年金の方々については先ほど申し上げたとおりでありまして、こうした対応をしながら、社会保障全体で総合的な対応を検討してまいりたい、このように考えております。

○岡田委員 
 総理、ちょっと答弁が長過ぎると思いますが、もう一言だけ。
 温暖化問題で、総理は、技術開発、例えば人工光合成とか言われます。それは夢のある話で非常に結構だと思うんですが、具体的にそれがいつ実るのかという不確定要素は非常に大きいわけですね。
 じゃ、今何ができるかといえば、カーボンプライシングなんです、炭素に値段をつける。民主党政権時代に地球温暖化税というのは既にある、しかし、非常にレベルは低く、それが精いっぱいだったんですけれども。でも、もう既に入っているわけですから、それを引き上げていけば、やはり炭素を排出するものを使うことが抑制される、市場メカニズムで抑制されるということになるというふうに思います。
 ところが、昨年閣議決定された、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略の中で、こういう表現になっているんですよ。下、最後の二行を見ていただきたいんですけれども、「国際的な動向や我が国の事情、産業の国際競争力への影響等を踏まえた専門的・技術的な議論が必要である。」これがカーボンプライシングについての結論ですよ。何も言っていないに等しいですよね、もう既にあるんだから。どうしてこれはできないんですか。
 それは、景気への影響とか一部の産業界の反対とか、いろいろなことはあると思います。我々がこの税制を入れたときもそうでした、苦労しました。だけれども、総理は安定政権なんだから、そして地球温暖化の問題は非常に重要だということなんだから、これは具体的に考えられるべきだと思いますが、いかがですか。

○安倍内閣総理大臣 
 カーボンプライシングと一概に言っても、制度設計によりその効果や評価、課題も異なるわけでございますが、このため、まずは国際的な動向や我が国の事情や影響等の観点から、関係省庁において十分な議論を行うべきであると考えております。さまざまなステークホルダーの意見も交えて、関係各方面と丁寧に議論を進めてまいりたい、こう思っています。
 さまざまな政策オプションを議論するということは、これはもちろんやぶさかではございませんが、現在、固定価格買取り制度のもと、既に二兆円を超える国民負担をいただいていることなどを考えれば、これはなかなか増税ありきという考え方はとれないところでございます。
 いずれにいたしましても、脱炭素社会という大きな目標の実現に向かっては、革新的なイノベーションなど、さまざまな政策を今盛り込んでいるところでございますが、人工光合成等々について、これは夢のような話ということではなくて、CO2を取り込むことによってかたいコンクリートをつくることは、もう既にこれは技術的に可能でありまして、あとは……(発言する者あり)

○棚橋委員長 傍聴席は御静粛に。

○安倍内閣総理大臣 
 そのコストをいかに下げるかということではないかということでございます。

○岡田委員 
 総理は結局、今の答弁で、この閣議決定の文書をほぼなぞられたんですけれども。どうしてカーボンプライシング、これはグテーレス事務総長も、日本に対して、あるいは各国に対して、カーボンプライシング、石炭税、あるいは炭素税ということで言われたというふうに思うんですね。各省庁で検討すべきだというんじゃなくて、総理が、私は、主導権をとってこれを実現すべきだというふうに思いますよ。
 最後に、小泉大臣、小泉大臣はこの点をどう考えますか。やはりこのぐらいやらなきゃ、あなたが環境大臣になった意味がないじゃないですか。いかがですか。

○小泉国務大臣 
 まず、岡田先生からカーボンプライシングの議論をこの予算委員会で取り上げていただいたことを、私は環境省に対する応援だと思っています。
 環境省、三十年間、当初は環境税というところから始まって議論をしてきましたが、今先生おっしゃったように、温対税というカーボンプライシングは民主党政権で入れられました。ただ、その水準は、国際社会、特にグテーレス事務総長などが期待をしているような、そういった水準には、この温対税に限って見ればまだその水準ではないし、これからより脱炭素の方向に向けては、産業界の理解を含めてやはり向き合っていかなければいけないさまざまな意見があるのも事実です。
 そして、増税ありきかというそういった見方に対しても、これは脱炭素の方向に産業競争力もつけていくというドライバーにもなり得るという、そういった広範な理解というのが不可欠だと思いますので、引き続き、こういった場も含めまして、カーボンプライシング、これは炭素税、そして排出量取引、これは東京都がもう既にやっていますが、こういったことを含めて、さらなる理解と議論が深まることを私としては期待をしています。

○岡田委員 
 ぜひ、期待ではなくて実行してもらいたいと思います。
 今、二千四百億円ぐらいの税収なんですね、地球温暖化税。例えばそれが一兆円ぐらいに、四倍ぐらいになれば、そのお金を省エネルギーやあるいは新エネルギーの技術開発などに投入することもできるわけですね。総理の言われる技術開発もそれで進めることができる。そこは、ぜひ総合的に考えていただきたいことを申し上げておきたいと思います。
 終わります。




TOP