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2002.05.07|国会会議録

154回-衆議院 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会3号

瓦委員長 次に、岡田克也君。

〔岡田克也君登壇)

岡田克也 民主党の岡田克也です。

まず、本題に入る前に、総理に少しお聞きをしておきたいと思います。

連休中にいろいろな事件が起きました。とりわけ、参議院の前議長の秘書が逮捕され、議長自身も議員辞職を表明するということになりました。あるいは、衆 議院の前議運委員長である鈴木宗男氏の秘書が逮捕され、事務所が家宅捜索を受ける、こういうことも発生をいたしました。
いずれも国会に対する国民の信頼を大きく損なうもので大変な事件だ、こういうふうに考えておりますが、総理として、この二つの事件についてどういうふうにお感じになり、そして対応しようとしているのか、御見解をお聞きしたいと思います。


内閣総理大臣(小泉純一郎君) 政治の不祥事、いわゆる政治家にまつわる不祥事に対しまして、国民の信頼を大きく損なうものだと憂慮しております。

この問題について、このような不祥事を起こさないような対応策はどういうものが必要か、また、現行法についての改善策はどういうものが必要かということ につきまして、真剣に今、自民党におきましても与党内においても協議をしているところであり、今国会において、このような不祥事を反省しつつ、再発防止の ためにどういう体制がいいかということについて、今まで以上の、一段の改善策が必要であると思っております。

岡田委員 とりわけ鈴木宗男氏の件でありますけれども、公設秘書が逮捕され、事務所が家宅捜索を受ける、そういう事態になりました。連休中には、与党の中からも、鈴木氏は議員辞任をすべきであるという声も出ております。

鈴木氏は、言うまでもなく自民党の議員であり、総理は自民党の総裁でもあります。(発言する者あり)今は違うと言われるかもしれませんが、事件を起こし たときは、明らかに自民党の議員として起こしております。その鈴木宗男氏に対して、この際、議員辞任を求めるそのリーダーシップを総理は発揮すべきだと思 いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 本来、自身の出処進退については本人が決めるべき問題だと、私は今でも思っております。そういう観点から、この問題について、私も、いろいろな状況を勘案しながら、鈴木氏本人が決めるべき問題であると。

国会でも、今後、新たな公設秘書の逮捕という問題が出てきて議論されていると思いますが、私は、そういう点についてよく議論をしていただきたいと。私自 身もこの問題については大変大きな関心を持っておりますし、私は、そういう点から、御本人がしかるべき判断をされるのではないかと思っております。

岡田委員 議員の身分というのはいろいろ保護されていますから、最後は本人がやめると言わない限り、これは身分は保持されます。しかし、それに対してどう思うかとい う、そういう、我々同じ国会の議員として、あるいは日本国総理大臣としての考え方を示すということは、これはできるわけであります。

今の総理の御答弁を見ていると、最後はそれは議員が決めることだと。当たり前です、そういうふうになっているんですから。しかし、総理はどうお考えかということをお聞きしたいわけであります。

小泉内閣総理大臣 私は再三再四言っているんです、国民から選ばれた議員が自分の出処進退を判断できないはずがないと。

岡田委員 判断は、それは人間ですから、どちらかにしろするでしょう。しかし、総理はこの事件についてどう考え、鈴木氏の出処進退についてどうあるべきだというふうに考えるかをお聞きしているわけです。

小泉内閣総理大臣 本人が判断すべきなんです。

岡田委員 総理がこの鈴木宗男氏の事件について深刻に受けとめていない、かばおうとしているという印象を受けたことは――もしそうでないなら、はっきり言われたらどうですか、いかがですか。そうでないというなら、はっきりおっしゃってください。

小泉内閣総理大臣 真剣に考えているから言っているんです。議員たる者、国民から選ばれたその責務を持っているなら、自分で判断すべきなんです。当たり前のことじゃないですか。

岡田委員 それじゃ、今申し上げたこの二つの事件に加えて、加藤元自民党幹事長の事件もありました。政治と金の問題が大変大きな議論になっているわけであります。このことについて、国会としてしっかり対応していかなきゃいけないという問題だと思います。

我々野党四党は、既に、政治資金規正法の改正を初めとする法律案を、衆議院の法制局と調整が終わりまして、そして、この連休明けの国会に提出をすることにしております。

その中には、総理御自身も問題があるとかつて言われた話、例えば、政党支部をどんどんどんどんつくって、献金の上限や下限をつくってもそれが意味のない ものにしてしまう。自民党は六千の政党支部があると言われています。そういうことに対して規制をすることでありますとか、あるいは、インターネットで政治 資金収支報告をきちんと出して、そしてきちんとチェックできるようにする話でありますとか、それから、公共事業を受注している企業からの献金を制限する話 でありますとか、そういうことが含まれているわけであります。

いずれも、総理がかつてそういうものが必要だということをおっしゃりかけた話でもありますし、私は、中身は極めて合理的なものだ、こういうふうに思いま すが、我々がそういう法案を出したときに、総理としてはそれについて賛成をしていただけますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 そういう問題点があることは、私も認識しております。そういう点も含めて、今、自民党初め与党で協議をしてもらって、一段の改善策を講じるように指示しております。

岡田委員 私は平成二年の初当選でありますが、我々は、リクルート事件ということをきっかけにして、そして政治の改革を訴えて、当時の、私は自民党でありましたが、 自民党も社会党も多くの新人議員が当選をいたしました。そして、いろいろな政治改革の議論をしてまいりましたし、政治資金規正法の改正もしてまいりました が、今思うと、一体何をしてきたのか、一体どこにそれだけの成果が上がったのかという、残念ながらそういうことを思わざるを得ないわけであります。

我々が出しております先ほどの政治資金規正法の改正案、それから、あっせん利得処罰法の強化法案、あるいは、今回の先ほど言った三つの事件はいずれも談 合に関するもので、それに対する口ききビジネス、こういうことがもし全国で起こっているとすれば、大変な税金のむだ遣いであり、とんでもないことだと思う わけで、そういう意味で、談合をいかに防止していくかということについても我々は法案を持っておりますが、そういうことについて、今、与党の中で検討だと おっしゃいましたが、会期もありますから、早く検討していただいてしっかり国会の場で議論していく、そういうお覚悟をぜひ聞かせていただきたいと思いま す。

小泉内閣総理大臣 前から申し上げていますように、今言った点も含めまして、与党、野党、いろいろな問題点を指摘されております。今国会中に、この不祥事再発防止のために一段の改善策を講じていきたいと思います。

岡田委員 これは自民党の危機であるとともに政治の危機でもある、そういうふうに思います。ぜひ国民からしっかり政治の信頼を取り戻すように自民党も危機感を持って考えていただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。

それでは、法案について幾つか聞いていきたいと思います。

先ほど総理の方から、あるいは官房長官の方からいろいろな答弁が示されましたが、ちょっと確認をしておきたいと思います。

まず、今、我が国を取り巻く国際情勢の問題でありますが、例えば、ミサイルによる攻撃でありますとかあるいは大規模テロということが我が国に起こり得る というふうにお考えでしょうか、それとも、そういうことはないんだというふうにお考えでしょうか、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 何が起こるかわからない。予測し得ないことが起こる。これは起きない、これは起こる、予測し得ないことが起こるということも予測しなきゃならないのが現在の状況ではないかと思っております。

岡田委員 私はもう少し危機感を持っているわけですね。そういう一般的な話ではなくて、ミサイル攻撃やテロなどはかなり、かなりと言うと言い過ぎかもしれませんが、 しかし、世界的な目で見たときに、やはり東アジアはかなり緊張感が高い地域である、そういう認識は持ってないといけないんじゃないか、そういうことをまず 申し上げておきたいと思います。

その上で、今回、この法案といいますか、有事法制全般というふうにまずは申し上げておきたいと思いますが、この具体的な今回出されたものではなくて、有 事法制の整備についていろいろな議論があります。例えば、具体的な危険がないからそういう整備は必要がない、こういう意見があります。それについては、私 が先ほど申し上げたようなことでお答えをしたいと思いますけれども、総理は、この具体的な危険がないから法案整備がないという考え方について、基本的にど ういうふうにお答えになるんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、今岡田議員が質問の前に言われたことについて、やはり野党第一党として責任ある立場に立ってこの議論をしようという姿勢をうかがうことができたと思うんです。

当然、何が起こるかわからない、それに対して備えるということは必要だという観点からの御質問だと思うんですが、私は、冷戦が終わって、もう武力攻撃は起こらないんだというような観点からこの法案を見ている方もいるのも承知しております。

しかし、どのような時代におきましても、緊急事態あるいは一朝事があったときにどういう備えをしておくかという、いわば備えあれば憂いなしということに ついては政治の大きな責務ではないかと思っておりますし、その点は、むしろそういう議論をされると水かけ論になっちゃうんじゃないか。武力攻撃なんか起こ らないんだ、日本は平和なんだ、日本を武力攻撃する意図を持っている国とかグループはないんだと言われちゃうと、そうじゃない、ああじゃないといって、こ れはもう水かけ論になっちゃうと思うんで、そういう議論は、私は本当は、政権をとろう、一国の責任を担おうという政党であれば、そういう考えはとり得ない のではないかと思っております。

ですから、この問題については、備えあれば憂いなしという観点から、いろいろ建設的な議論を進めていきたい、民主党からもいい提案があれば、私はよく検討したいと思っております。

岡田委員 冷戦が終わって、具体的な危険が今はもうないんだ、だから、こういう有事法制、有事に備える法制というのは基本的に必要ないんだ、そういう意見があります が、私は、そういうことを言う人が、では、冷戦期には、いや、ソ連が攻めてくることなんかあり得ないんだ、だから、そもそも日本は自衛隊も要らないし、非 武装でいくんだ、そういうふうに同じ人が言っていたような気もするわけですね。

だから、それはやや無責任じゃないか、私はそういう気はするわけであります。やはり、そこは、少しでも可能性があるんなら、そのときに備えてしっかり対応しておくということは、これは政治の基本的な責任である、そういうふうに考えております。

我々は、同時に、なぜこの有事法制が一般的に必要だというふうに考えているか。その備えの問題と、しかし同時に、いざそういう武力行使事態があって自衛 隊が動くときに、それが国民の権利の制限につながるという側面は、これは入ってきます。しかし、そのときに、それが必要以上に国民の権利を制限することに なったら大変だ。そういう意味でも、あらかじめきちんとルールをつくっておくことが法治国家として当然ではないか、そういうふうに考えているわけですが、 総理も、そこのところのお考えはいかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、岡田議員の今の指摘、全く同感なんです。こういう議論がなされてこそ、野党としても責任ある、これから政権を担おうとする意欲を感じられる。私は、 このような議論がなされることにより、できれば、有事法制というのは、本来、与党と野党第一党が対立する問題じゃない。お互い、これからの日本の独立国と しての体制をどう備えをしていくかという件については、今のような議論をしていただくならば建設的な議論ができるのではないかと期待しております。

岡田委員 入り口の議論はそういうことで、今私が申し上げたとおりなんですけれども、その上で、我々民主党の基本的立場として、一般論として緊急事態に備えた法制が 要るということは党としてしっかり確認をしているということをまず申し上げた上で、しかし、今回の法案についていろいろ問題があります。そういうことにつ いて具体的にこれから議論していきたい、そういうふうに思っております。

そこで、まず、法案の個々の中身に入る前に、総理の基本姿勢についてお伺いしたいと思うんですが、総理は、国家権力と国民あるいは個人との関係というも のを一体どういうふうに認識しておられるのか。どうも、個人情報保護法もそうなんですけれども、今回の有事法制を見ても、国家権力というものが時として個 人の、国民の権利を侵害する、そういう非常に危うさ、危険を持っているものだという認識がやや薄いんじゃないか、そういう印象を受けるわけですが、基本的 にこの国家権力と個人、国民との緊張関係ということについてどのような認識でしょうか。

小泉内閣総理大臣 国家は国民のためのものであり、国民も国家あっての国民であるというお互いの協調関係、責任関係を持っていい国をつくり上げていこうということが大事だと思います。

ある国家においては、国家の権力を背景に国民を苦しめている、あるいは権利を奪っている国もなきにしもあらずであります。専制と隷従、これが国家権力に よって圧迫されていると感ずる国民も世界の中ではかなりいるでしょう。私は、そういう面において、国家は国民あってのものである。国民の基本的な人権とい うものを保護することが国家として重要である。

また、その国民の基本的人権を破壊しようという組織なりグループに対しては、国家権力をもって排除して国民を守らなきゃならない。国民の基本的人権を守 らなきゃならない。こういうことを考えますと、この国家権力の行使というものに当たっては、多くの国民の基本的人権を守るんだというこの観念を常に持たな くてはいけないと思っております。

岡田委員 総理のお考えはわかりますが、外部から、あるいは第三者が国民の権利を侵害しようとするときに、国家がそれを守る責任がある、当然のことであります。

私が申し上げたのは、その国家自身が国民の権利を侵害するということは往々にして起こる。そもそも憲法というのは、これは国家と国民の関係を規定してい るわけで、例えば基本的人権を保護する、これは国家権力が個人の基本的人権を侵害しないように憲法の規定がもともとは置かれている、そういう歴史的経緯が あるわけですね。そこのところについての総理の認識をぜひお聞きしたいと思うんです。

小泉内閣総理大臣 今、重複するかもしれませんが、基本的人権を守る、これは憲法にも国家としての責務として規定されているわけでありますが、同時に、国民の中には、その国 民の基本的人権をじゅうりんするという勢力も一部には否定できないわけであります。そういうことに対して、国家としても、多くの国民の基本的人権を守るた めに国家権力を行使しなきゃならない場合もあるわけであります。その点をどう考えるか。

いわば、日本国民としては、さまざまな基本的人権をいかに国家として守っていくか、これが重要でありまして、今回の有事法制につきましても、いわば国民 の生命財産、これをいかに守るかという観点から考えているのでありまして、これを基本に考え、国家の独立と尊厳、そして武力攻撃が起こった場合には国民の 基本的人権が破壊される面が多々出てくるわけでありますから、これに対してどのような国民の基本的人権、生命財産を守る体制をつくっていくかということ は、まさに国家として最大の責務ではないかと思っております。

岡田委員 どうも議論がかみ合っていないように思うんですが。

私は、やはり国家の権力行使に対する謙虚さといいますか注意深さというものをちゃんと政府は持つべきだというふうに思うんですね。例えば、あの民主主義 国家であるアメリカ合衆国でも、過去にはマッカーシー旋風などというのも起こりました。やはり、個人の権利を、きちんとしたいろいろな憲法や法律を持って いる民主主義国家ですら不当に侵害するということは常に起こり得ることである。そのことに対してきちんと手当てをしておかなければいけない。

そういう視点でこの有事法制についての議論も進めていかないと、総理がおっしゃるように、攻められたときに日本の国民の生命財産を効率的に自衛隊が守っ ていかなきゃいけない、それはそのとおりであります。しかし、その面だけで考えていくと、私は絶対に誤ると。そういう面と、しかし、武装集団である自衛隊 が、一つの国家権力の塊が個人の権利を侵害してしまう、不当に侵害してしまう、そういうことのないように両面からきちっと見てバランスをとっていかないと いけない。そういう視点がないと、私はこの有事法制についての議論は間違うと思うわけですが、いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 その両面の視点が大事だと思っております。

岡田委員 そういう意味で、若干最近気になることがありますので、お聞きしたいと思います。

まず、この法案そのものとは離れるわけでありますが、不審船の問題で、これにどう対応するかという議論が行われている中で、先般の防衛庁長官の記者会見 などを見ますと、不審船対応で海上保安庁が一義的に対応することに法律上はなっておりますが、自衛隊はどうするのかという議論のときに、準備行動という名 のもとに自衛艦をその現場に早く派遣しておくという話が進んでいるようでありますが、これは事実なんでしょうか。記者会見の中ではそういうふうに防衛庁長 官はお述べになっているようですが。そして、そのことが問題がないというふうにお考えなんでしょうか。

中谷国務大臣 昨年末の九州の南西海域における不審船の事案の事例を振り返りまして、防衛庁並びに海上保安庁等でその対処についての検討を行いました。そして、その教訓 を生かして、やはり当初から、武装工作船の可能性の高い不審船については不測の事態に備えて、政府の方針として当初から自衛隊の艦艇を派遣するというふう に取り決めというか、したわけでございます。

これは、海上警備行動の発令によって海上自衛隊の対処が行われるわけでありますけれども、九州南西海域の事案に見られるように、その地点に行くまでに半 日ないし数時間かかるわけです。基地においてその海上警備行動の発令を待って出るとなりますと、もう事態が大変な事態に発展する可能性もありまして、速や かに対処に移れるためには、その近傍海域まで所要の準備をして待機し、そして、その時点においては、内閣総理大臣の命によりまして海上警備行動に移れる方 が対処がより確実に行われるという観点から、この海上警備行動の発令が必要になった事態に至った場合に自衛隊が迅速かつ適切に対処できるようにあらかじめ 備えるために措置をするわけでございます。

この措置につきましては、その準備時点におきましては公権力の行使を行うものではないし、こうした準備が行われることが、海上警備行動が自衛隊法の八十 二条で定められている以上、当然のことであって、この条以外の特段の法律上の規定が必要であるというふうには考えていないわけでございます。

岡田委員 その際、だれが命令をするんですか。そして、その法律的な根拠はどこにあるんですか。

中谷国務大臣 防衛庁長官がこれを命じるわけでございます。

この例としましては邦人救出の例がございまして、かつて、インドネシア等で治安が悪化したために邦人が国の離脱をする必要の際に、やはり邦人救出の一環 として近傍において自衛隊機が待機をいたしましたけれども、この際もそのような措置をとったわけでございます。

岡田委員 今、法律的な根拠についてはお話をいただけなかったわけでありますが。

こういうふうにしてどんどん拡大をしていくわけですね。私はインドネシアのときも問題だというふうに申し上げたんです。今回は、特に問題になるのは、フ ル装備していくわけでしょう。不審船に対処できるように武装して出すわけですよ。そして法律の根拠がない。長官命令だとおっしゃられますけれども、長官が 命令するという規定は法律上ないはずです、準備行為について。本来、海上警備行動であれば長官が総理大臣の承認を得た上で発動する。その前段階だと言いま すけれども、現場にそういった武装したフル装備の自衛隊を出す、この場合船ですが、ということについて事実上ノーチェックじゃないですか。そういう形でど んどん法律を超えて拡大をしていくということが非常に問題があるというふうに私は申し上げるわけです。必要性は私も認めないわけでありません。しかし、法 律の根拠がなく、解釈でやっていくというやり方には非常に違和感を感じる、そのことを申し上げておきたいと思います。

もう一つ申し上げます。きのうの朝日新聞の一面トップであります。

新聞をお読みでない方もいらっしゃるかもしれませんが、今のテロ特措法に基づく海上自衛隊の派遣について、今回、イージス艦の派遣、それからP3C哨戒 機の派遣について、海上自衛隊の幹部が米軍に対して、そういうことをした方がいいという働きかけをした、そういう記事であります。

これは事実なんでしょうか。

中谷国務大臣 私も昨日の朝刊を見まして、その事実を読みました。この事実につきまして、早速、在日米海軍、また海幕の担当者、本人ですけれども、に直接事情を聞きまし たところ、四月十日にチャップリン在日米海軍司令官と会談をしたことは事実でありますし、これは月に数度そのような会合は行っております。報道にあるよう に、米側から海上自衛隊のイージス艦とかP3Cをインド洋に派遣することを要請するというふうに働きかけをしたということはないということで事実を確認い たしました。米側にも確認をいたしました。

よって、その内容につきましては事実と反する報道でありますので、その新聞を報道した新聞社に対して抗議を行ったところでございます。

岡田委員 今、事実に反する報道だと明確に言われました。もしこれが事実であれば、長官は責任をとらなければいけませんよ。このことが事実であったとすれば、あるいはこれに近いことがあったとすれば、私は非常に大きな問題があると思うんですね。

まず、官房長官は、イラクに対する米軍の攻撃があった場合に今のテロ特措法の中でそれができるかどうか、基本的には、今の法律の中ではできないという趣 旨のことを言われていると思うんですね。それをいわば、しかし先取りする形で、イージス艦やP3Cを出すということは、これはイラク以外に考えられないわ けですね。もうアフガンの話はほとんど終わりつつあるわけで、今さら新しい、そういう高性能な艦船や飛行機を出す意味はないわけですから。そういう意味 で、政府が慎重に決めなければいけない政治的な問題について海上自衛隊がそれを先取りをした、あるいはこれは国会が承認をする話、それについて現場が独走 した。

ですから、もしこれが事実だとすれば、これは大変大きな問題である、これは内閣そのものを揺るがすような問題だというふうに思いますが、総理、総理もこれは事実に反するということで明言されますか。

小泉内閣総理大臣 今、新聞の記事に基づいて質問されていると思うんですが、その新聞の記事の事実はないと言っているんです。これからの問題は、状況判断しながら適切に判断したいと思います。

岡田委員 それでは、新聞の記事については事実に反する、そういうふうに総理からも述べられたと理解します。

それでは具体的な、中の法案について入っていきたいと思いますが、まず、この法案の中で、非常にわかりにくい法案なんですが、外部からの「武力攻撃のお それのある場合」と「予測されるに至った事態」、そういう言葉が使われているわけですが、それぞれについて、ちょっと具体的に、違いがわかるように中身を 述べていただけませんか。

中谷国務大臣 この法案における武力攻撃のおそれのある場合と予測される場合の違い、これにつきましては、武力攻撃のおそれのある事態というのは、現行の自衛隊法の七十 六条に防衛出動下令の規定がありますけれども、これと同じでございます。武力攻撃のおそれのある場合において防衛出動ができるという場合でございます。す なわち、この時点における国際情勢や相手国の明示された意図、軍事的行動などから判断して、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが 客観的に認められる事態を指すものでございます。

これに対して、事態が緊迫をして武力攻撃が予測されるに至った事態というのは、自衛隊法の七十七条の防衛出動待機命令等を下令し得る事態です。すなわ ち、その時点における我が国を取り巻く国際情勢などから防衛出動命令が発せられることが予測をされる事態と同様でございまして、この区分につきましては、 現行の自衛隊法と同じ事態が書かれているというふうに御理解していただいて結構でございます。

岡田委員 今の予測されるに至った事態の御説明が非常にわかりにくかったんですね。予測される事態ということを説明されるのに予測される事態という言葉を使っておられて、いわば同義反復というか、全く定義したことになっていないと思うんですが、もう一回言っていただけませんか。

中谷国務大臣 ここで言う「武力攻撃が予測されるに至った事態」というのは、防衛出動が予測される事態と同じでございます。

岡田委員 それでは、防衛出動が予測される事態というのは一体何ですか。

中谷国務大臣 武力攻撃が発生することが予測される事態でありまして、で、その予測というのは、国の危機管理で、この内閣としても、また国会としても、自衛隊の出動、すなわち防衛出動が必要であるということを決断する前の段階です。

岡田委員 ちょっと、私もある程度何を聞くか、少しは事前にも述べていたつもりですし、余りにもお粗末な答弁じゃないですか、今のは。何も語っていないに等しいと思いますよ。こんなことじゃ、これは議論する意味ないじゃないですか。もっと明確に述べてください。

中谷国務大臣 武力攻撃というのはいろいろな事態がありまして、いわゆる着上陸の事態だとか、またテロとかゲリラとかそういう事態が国内で発生して、武力攻撃の条件に該 当する場合がございます。この際は自衛隊が出動して武力行使ができるという規定がありますけれども、その事態からおそれのある事態に防衛出動をかけられる ということであります。

その防衛出動をかける前の段階に、ある程度、自衛隊の待機命令をかけて、予備自衛官の招集とか事前の陣地の構築とか、それの準備をする必要がありますけ れども、いわゆるその準備に着手する際に、今回、国会承認とかの手続を設けたわけでありますけれども、いわゆる防衛出動を下令する前の準備行為を開始する 時点が、予測される事態ということであります。

岡田委員 今長官が言われた、待機命令をかけるとか、あるいは予備自衛官の招集をかけるとか、陣地をつくるとか、それは、このおそれが予測される事態の中で何ができ るかというその中身なんですよ。その中身を使ってこの予測される事態を説明するということは、説明したことに全くなっていないんですよね。もっときちんと 説明していただけませんか。

中谷国務大臣 防衛出動を するかどうかというのは非常に大きな問題で、国家の意思が働くわけでありますけれども、その防衛出動をかける前の段階の準備の段階で、その時点で防衛出動 がかかったら速やかに自衛隊が行動できるために、あらかじめ予備自衛官を招集したり、また陣地構築をしたり、また待機命令をかけたり、その準備の作業とい うものはどうしても必要ではあります。その準備に着手してもいいかどうか、これも国家の意思にかからしめるわけでありまして、その準備行為を始める段階で ございます。

岡田委員 私は、従来の自衛隊法に言う予 測される事態であれば、また、待機命令をかけたり予備自衛官の招集をするということで法律効果も限られていますから、今のような説明でも通ってきたのかも しれませんが、今回、陣地構築、外に出ていくわけです、自衛隊が。外というのは、基地の外に出ていく、一般市民と接するという意味ですね。そういう新しい 効果を認めるのであれば、やはり定義はもっとかちっと客観的にしておかなければいけないんじゃないか、そういう問題意識で申し上げているんです。

今の答弁は、全く答えになっていないじゃないですか。もう一回答弁されますか。

中谷国務大臣 現行の自衛隊法でも、防衛出動の待機命令という規定がありまして、その時点において待機命令をするわけでありますが、今回の法律は、それをより厳格、明確にして、閣議の決定や国会の承認を必要としたものであります。

で、どういう事態かということでありますけれども、事態というものはもう千差万別でございます。いろいろと、航空攻撃の侵攻とか海上の侵攻とか陸上の侵 攻、また弾道ミサイル、同時多発テロ、ゲリラ、これらの組み合わせ等がありますし、また、大規模であるのか小規模であるのか、また、国なのか国に準じるも のなのか、広範囲、限定かという場合もありますし、予測される場合もあれば、予測されずにいきなりする場合もあるわけです。

ですから、どういう事態かということを明確に言葉で言うのは難しいわけでありますが、一般的に申しますと、予測される事態というのは、自衛隊法の七十七 条の防衛出動待機命令を下令し得る事態でありまして、事態が緊迫して防衛出動が発せられることが予想される場合と同様であります。

すなわち、防衛出動命令より時期的には前の段階ですね。その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張の高まりなどから、我が国への武力攻撃の意図が 推測をされ、我が国へ武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態を指すものでございます。

岡田委員 これは全く答弁になっておりません。政府としてのこの予測される事態についての定義の明確化、そして具体的な事例の例示、これをこの委員会にしっかり示されるということを委員長に求めたいと思います。

瓦委員長 後ほど、理事会におきまして協議をいたします。

中谷国務大臣 この定義というのは、その時点における我が国を取り巻く国際情勢の緊張の高まりなどから、我が国への武力攻撃の意図が推測をされ、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観的に判断される事態でございます。

岡田委員 今委員長に求めましたので、理事会でぜひ協議をしていただきたいと思います。

では、先ほど長官の答弁を聞いていてこれもよくわからなかったんですが、例えばテロとかミサイル攻撃というのは外部からの武力攻撃に当たるんですか、当たらない場合もあるんですか、どうなんでしょうか。

中谷国務大臣 世界で起きている武力攻撃の事態というのは千差万別でありまして、一概に言えないものであります。一般的に武力攻撃というのは国家の主権、国民の生命財産 に大きな影響を及ぼす事態でありまして、いかなる事態にも備えることが大切でありますが、我が国としては、武力攻撃事態の認定につきましては、従来からと 同じでありまして、いわゆる自衛権の発動の三要件に該当するものであるのか、すなわち、計画的、組織的なものによる武力侵攻であるかどうかというような点 を勘案して認定をするわけでございます。

岡田委員 私 は、自衛隊法七十六条の規定と、今回の法制の中に、基本的にこれは同じだという説明を政府の側はされていると思うんですが、違うんじゃないかというふうに 思うんですね。つまり、自衛隊法七十六条は、外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛する必要があると認めるときには防衛出動を命ずることができる、 「わが国を防衛するため必要があると認める」ときはというのが入っているわけですね。しかし、今度の法案はそういうのは入っていないわけですよ。そこは違 うと思うんですよね。同じじゃないと思うんですが、ここをどういうふうに説明されるんですか。

今の説明でいくと、そうすると、我が国としては、我が国を防衛するために必要があるというふうに認めないときも、この新しい法案には乗っかって対処基本方針をつくったりするということになるわけでしょうか。

中谷国務大臣 委員がお話ししたとおり、自衛隊法の七十六条の一項には、「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合に は、」防衛出動を命ずることができるというふうになっておりまして、この「わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」との規定は、外部からの武 力攻撃が発生した場合において、例えば外交努力などその他の手段を尽くしても外部からの武力攻撃を中止させることができないといったふうに、我が国を防衛 するためには自衛隊の出動が必要であると内閣総理大臣が判断した場合に、必要な手続を経た上で自衛隊にその出動が命ぜられるという趣旨でございます。

岡田委員 私の質問に答えていただきたいんですが、今回の法案は、そういう必要があると認めるときという規定を入れていませんから、そうすると、外部から武力攻撃があれば自動的にこの対処基本方針というのをおつくりになる、こういうことですか。

中谷国務大臣 今度の対処法におきましては、自衛隊の出動ができるという手続を定めているものでありまして、この趣旨等につきましては、自衛隊法の中の七十六条に、岡田 委員が述べられたように、「わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」というその趣旨が残っているわけでございます。

岡田委員 質問に全くお答えいただいていないと思うんですが、外部からの武力攻撃がありました、そのときに、では、対処基本方針はこの法律に基づいてつくる、何も条 件はつけていませんから、外部からの武力攻撃があったときにはつくるというふうに書いてあります。対処基本方針はつくるんだけれども自衛隊の防衛出動はし ないことがある、こういうことですか。そういうことを想定しているわけですか。

中谷国務大臣 対処基本方針をつくっても防衛出動が行われないということはあり得るわけでございます。

岡田委員 そうしますと、しかし、自衛隊を出すということについて、やはり非常に慎重な手続も要るし、あるいは自衛隊も効率的に動かなきゃいけないということでこの法案をそもそも目指したんじゃないんですか。

防衛出動がないということについてもこの法案が適用されるということになると、先ほどの外部からの武力攻撃についての定義も余り明確ではなかったんです けれども、非常に抽象的な状況の中でこの法案が適用される、入り口が非常に不明確だということになりませんか。

中谷国務大臣 自衛隊法の七十六条には、「必要があると認める場合」というのが残っておりまして、その場合に命令をできるということになります。そして、その認定をする かどうかということで、防衛出動を命じる時期と武力攻撃事態対処法における「おそれのある場合」の認定の時期が一致しないというのもあり得るわけでありま すし、また、自衛隊の対処措置だけではなくて、武力攻撃事態の対処につきましては、武力攻撃の発生を回避するための外交上の措置、国民の被害を防止するた めの警報発令等の措置等が武力攻撃事態の認定とともに迅速に実施されることが重要でありまして、このため、武力攻撃事態に至ったときは、防衛出動命令等の 必要性のいかんにかかわらず、これらの対処措置をとり得るようにするために、対処基本方針を定めるということにしたわけでございます。

岡田委員 ですから、そもそも、政府としては防衛出動をする必要がないというふうに認める場合でも必ずこの対処方針をつくらなければいけないというこの法律構成に、私は非常に問題があるということを申し上げているわけです。きょうはこの辺にしておきます。

それから、終わった後の話もあるんですよね。対処措置実施の必要がなくなったと総理が認める場合に、この基本方針を廃止するということですが、総理が認 めるというのも非常に抽象的なところで、私は、こういう国民の権利を制限するような、権利を制限するような法案ですから、初めと終わりがしっかりしてな きゃいけない。いつまでもだらだら続いて、相手からの武力攻撃が終わったにもかかわらずこういった特別な権利関係が続くということは、ある意味で非常に危 険なことだ、そういうふうに考えるわけですが、ここはもう少し客観的に書けないんでしょうか。総理が認めるというのは、私は極めて恣意的だと思いますが、 いかがでしょうか。

福田国務大臣 武力攻撃事態におきまして、その事態の態様に応じて、自衛隊の防衛出動とか、被災者の救助、被害の応急復旧などさまざまな対処措置が実施される、そういうことが想定されるわけでございます。

したがいまして、対処措置の必要がなくなったときというのは、例えば、防衛出動の終了をもって対処措置が終了する場合とか、それから、防衛出動の必要は なくなったけれども、引き続き被災者の救助が必要であるというような場合とか、また、武力攻撃事態の態様によってさまざま考えられるわけでございます。で すから、そういう時点において個別具体的な判断をしなければいけないというように考えているわけであります。

岡田委員 私は、防衛出動の行われているそういう状況と、そして、外部からの武力攻撃が終わって、しかしまだ、今おっしゃったような、被害の復旧とかあるいは被災者の救助を続けなければいけない事態と、かなり質的に違うんだろうというふうに思うんですね。

今、後者の場合というのは、これは災害における対応とよく似たということだと思うんですね。それはやはり、法律の中でもそういう二段階設けておかない と、ある意味では、いつまでも武装した自衛隊がずっといるとか、そういうことにもなりかねないわけで、ここはもう少し私は一工夫を要する、こういうふうに 思うんですが、そういう検討はされなかったんでしょうか。

中谷国務大臣 これは自衛隊法をお読みいただきたいと思いますけれども、防衛出動の終了要件としましては、現行の自衛隊法の七十六条三項におきまして、内閣総理大臣は、 国会の不承認の議決があった場合、または出動の必要がなくなった場合に、防衛出動を命じた自衛隊の撤収を命じなければならないとされております。

一方で、今回の三法案におきまして、このような自衛隊の撤収を命じなければならない要件について、武力攻撃事態対処法第九条第十項の規定において国会の 不承認の議決があった場合を、改正自衛隊法案第七十六条第二項規定において出動の必要がなくなった場合を明記したところでございます。

こういった改正を踏まえまして、議員御指摘の出動の必要がなくなったときについて申し上げれば、改正自衛隊法第七十六条二項に規定する「出動の必要がな くなつたとき」とは、現行の第七十六条三項に規定するものと同じ意味でありまして、防衛出動の趣旨にかんがみますれば、武力攻撃が終局、発生せず、そのお それもなくなった場合や、武力攻撃が完全に排除されるに至った場合を指すものでございます。

このように、「出動の必要がなくなつたとき」との規定は明確な意味を有するわけでありまして、武力攻撃事態法第九条の規定と相まって、現行の自衛隊法七 十六条三項と同様な、明確な撤収要件を示していることから、政府としては、これらのほかに防衛出動の終了についての規定を自衛隊法に設ける必要はないとい うふうに考えております。

岡田委員 もう少し整理した上で議論した方がいいと思いますが、今のお話ですと、私の理解では、自衛隊が防衛出動をやめるということになれば、新しいこの今回の法案 についての対処方針ももうそこで終わるというふうに受け取れたわけでありますが、法律上はそういうふうになっていないということであります。

それからもう一つは、国会の不承認とおっしゃいましたが、それは最初のときの話でありまして、途中で、これは終わったから、あるいは事態が変わったから ということで国会が何らかの意思表示をしてやめさせるということも、やはり私はそういう規定が要るんだろうと思うんですね。そういうことについて議論が必 要だということを御指摘申し上げておきたいと思います。

時間も限られておりますので先に参りますが、メディアの問題というのがあるんですね。この法案では、指定公共機関として、公共的機関と公益的事業を営む 法人というふうに言っているわけでありますが、NHKについてはこの公共的機関の中に明示的に書いてあるわけですが、その他の新聞やテレビなどのマスコミ 機関、新聞社やテレビ局、こういうものは、ここで言う公共的機関あるいは公益的事業を営む法人に入らないということは断言されますか。

福田国務大臣 法案の第二条第五項において、公共的機関として、独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社及び日本放送協会、こういうふうになっておりまして、また、公益的事業を営む法人としては、電気、ガス、輸送または通信を営む事業者をそれぞれ例示をいたしております。

実際にいかなるものを指定公共機関として政令で指定するかということにつきましては、その業務の公益性の度合いによりまして、武力攻撃事態への対処との 関連性などを踏まえて、当該機関の意見も聞きつつ総合的に判断する、こういうことになっております。

民間放送事業者につきましては、公益的事業を営む法人として、警報等の緊急情報の伝達のために指定される可能性はございますけれども、現時点では、その 機能は公共的機関である日本放送協会を主として考えております。また、新聞社等につきましては、もし新聞社ということになれば、その性格上、警報等の緊急 情報の伝達の役割を担うことは一般には考えにくい、こういうことで整理をいたしておるところでございます。

岡田委員 この法律上、指定公共機関というのはかなりいろいろな意味で制約がかかることになっているんですね。

まず第六条、「指定公共機関は、国及び地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。」責任が生じるわけですよ。

そして、十五条、対処措置の実施の指示というのがあります。総理大臣、または所管大臣を通じてその実施すべき措置を、総理大臣または所管大臣は対処措置 を実施できる。つまり、機関がやらないときに自分でできるということになっているんですね。これは非常に強い規定だと私は思うんですが、そういうものにつ いて、今の御答弁で口頭で、例えば民放やあるいは新聞社は入らないと思うとかいろいろおっしゃいましたが、やはり非常にこれは私は危険なことではないか。 もっときちんと限定列挙すべきだ、もし必要があるんなら。

今おっしゃった避難通知をする、これはやはりテレビとか、やってもらった方がいいですよね、どこどこ危ないから避難しなさい。しかし、それだけのことな らそのことを法律に書いておけばいいわけです、こういうことができると。こういうふうに全体に投網をかけるような規定が置いてあると、まさしく、こういう 緊急事態においてマスコミ統制をやるという根拠になるわけですね。いかがですか。

福田国務大臣 警報などの緊急情報の伝達のために放送事業者が指定公共機関に指定される、そういう可能性はあるんでありますけれども、テレビや新聞などのメディアに対しまして、報道の規制などの、言論の自由を制限するとか、そういうようなことは全く考えておりません。

岡田委員 今、平時において国会で官房長官が答弁されても、いざというときに、やはり先ほど最初に申し上げたことなんですが、権力というのは恐ろしいものなんです ね。だから、いざとなればそれはいろいろなことをやる、そういうことに備えてきちんとしておくということが国会あるいは法律の役割だと私は思います。

そういう意味で、もし、おっしゃったような警報の通知ということであれば、警報の通知についての規定をきちんとこの法律上置いておけばいいんで、そのほ かのことについて一般的に投網をかけるようなやり方は、これはぜひやめるべきだと思いますが、総理大臣、いかがですか。そのぐらいの御見識ありませんか。

福田国務大臣 今回の法制につきましては、いわゆる有事事態に対応する根幹的な考え方を示したということで、今後、国民の安全とか保護とかいうものにつきましてより詳細 にわたる体制を整えるために二年間の猶予をいただいた、このようなことでございまして、それの中でその問題も対応すべきではないかと考えております。

岡田委員 これは、この法律の中に書いてあるから言っているんですよね。これからやる話じゃなくて、法律の中に既に規定があるから申し上げているわけであります。

これは、委員長ぜひ、ここは非常に大事なところなんで、まず公共的機関の定義の問題、これも今はっきりしませんでした、指定公共機関の問題ですね。それ から、民放や新聞社が入るのかどうか、そのことについてまず政府としてきちんと見解をまとめていただきたい。

その上で、私は、法案を、これは変えないと無理だと思います、ここのところは。しかし、その前提として、政府としてどう考えるかということをもう一度きちんと出していただきたいと思いますが、理事会で御協議いただけませんでしょうか。

瓦委員長 理事会で協議をさせていただきます。

岡田委員 続いて、三条の関係について、時間も限られておりますが、参りたいと思います。

かなりこの法案、私、いいかげんだと思うのは、「万全の措置」なんという言葉が出てくるんですね。万全の措置というのは災害対策基本法にあるといえばそ のとおりなんですが、私は、これも随分、国は万全の措置をとらなきゃいけないということになると、何でもやるということですから、これも権利侵害の可能性 という意味においては非常に危険なことだと思います。

具体的な質問も考えておりましたが、時間の関係で省略をいたします。

ここで、一つ基本的なことを聞きたいと思いますが、武力行使をするときの民法や刑法やあるいは行政法の関係というのは一体どうなるんでしょうか。ここ が、私は、いろいろな官庁の説明を聞いても必ずしもはっきりしないわけですね。武力行使時において、相手が敵であるというときにはこれは余り議論はないの かもしれませんが、例えば国民に対してどういう関係になるんでしょうか。

ただ、戦闘行為が行われている最中に、これは一つの例ですけれども、たまたま自分が日ごろから気に食わない市民が近くにいたからこれをやっつけた、ある いは住居を、その人の住宅を壊した、これはもちろん通常の刑法や民法の適用になるというふうに考えるわけでありますが、戦闘行為に関連して、例えば、個人 の住宅の中に敵がいる、この個人の住宅を破壊しないと戦えない、こういう場合は民法、刑法の関係というのはどうなるんでしょうか。

中谷国務大臣 まず、基本の認識でありますけれども、我が国に侵攻する他国の軍隊が攻撃を行って自衛隊がそれに対して対処するような地域におきましては、民間人に対する避難誘導を適切に実施をして、民間人に被害が及ばないように措置をするというのが基本でございます。

その上で、自衛隊による行動がございますけれども、それにつきましては、国際法規、慣例を遵守し、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」という法的な制約を課しているわけでございます。

そこで、武力行使による敵の殺傷が、自衛隊法八十八条に基づく正当行為であるとはいえ、不可抗力による場合を超えて、仮にも故意によって民間人に危害を 加えるようなことがあれば、そのような行為はもはや適法に行われた正当行為とは言えないわけでありまして、その意味で、自衛隊法八十八条は自衛隊に超法規 的な権限を与えるものではございません。

さらに、具体的に、武力の行使に当たる自衛官に対しては、こうした法的制約を担保するため、違法な命令をした場合や上官の命令に違反した場合には、他の 公務員にはない厳しい罰則が科せられるところでございまして、このように行動をしてまいることでございます。

岡田委員 基本的に民法や刑法の適用はあるんですか、ないんですか、戦闘行為のときに。

中谷国務大臣 これは、正当防衛ということを考えていただきたいと思いますけれども、外国から我が国を侵略されたときに、自衛権に基づいて武力の行使ができるというの は、これは国際法、国連憲章にもございますけれども、認められている行為でございます。そこで、自衛隊法の七十六条の一項の規定がございますけれども、防 衛出動を命ぜられた自衛隊は、我が国を防衛するため、八十八条に基づいて、国際の法規、慣例を遵守し、かつ事態に応じて合理的に必要と判断される限度にお いて必要な武力を行使することができる、いわば国家の正当防衛行為でございます。

ところが、外部の侵略者はどうするかというと、こういった国内の法規とか国際法を無視して我が国の国民の生命財産を脅かすものでありまして、自衛隊は国 民の生命財産を守るために敵を排除するという戦闘行為を行うことになります。このような戦闘行為に際して、この八十八条の要件を満たしている限りにおいて は、行政法規等の法律、法令に従わない場合があるとしても、それはこの八十八条に基づく緊急事態における正当行為として許されるものであるというふうに考 えているわけでございます。

岡田委員 私は、民法、刑法の関係はと問うたのに対して答えていただいていないと思いますので、また同僚議員が改めてこの点については厳しく質問すると思いますが、今、最後におっしゃった行政法規の関係も、そうするとこういうことですか。

例えば、今回、自衛隊法の改正で、河川法の問題がありますね。事前に協議しなきゃいけない、河川に構築物をつくるときに。しかし、それはできないから通 知でいい、こういうことにいたしました。こういう規定も、戦闘行為の最中は、常識的には、そんな、知事を捜して通知するというのは困難なことだと思います が、しかし、では、通知しなくていいということは何を根拠に言えるんでしょうか。法律上の根拠は置かれているんでしょうか。

中谷国務大臣 繰 り返しますけれども、この事態というのは異常な事態でありまして、そもそも、外部の敵の侵入者は、我が国の法律とか国際法を無視して、あらゆる手段を使っ てくるわけでございます。これに対して、これを排除しなければならないわけでありまして、その行為が自衛隊法八十八条でございまして、これは正当行為とし て許されるものでございます。

しかし、超法規的かどうかといいますと、やはりこの行為につきましては、不可抗力による場合を超えて故意に民間人に危害を加えるような行為や、上官の適 法な命令に故意に背くような行為は、かかる行為を禁じた刑法または自衛隊の規定に違反するものでございまして、完全に超法規であるということではございま せん。

岡田委員 こういう基本的なことは、政府としてぜひ整理された方がいいと思うんですよね。今の話を聞いていますと、ですから、敵の武力行使があった、そしてその前 後、自衛隊が陣地を構築したり、いろいろ現場に駆けつける、そこは今回の自衛隊法の改正で手当てをするんだけれども、戦闘行為になったらもうそれは関係な いんだというお話でしょう。

その根拠は何かといえば、この八十八条の二項で、「合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」、だからその範囲ではいいんだ。しかし、それは本 当の法治国家なんですか。それこそまさしく超法規じゃないですか。今回、この有事法制をつくるというのは、そういうことがないためにつくっているはずが、 結局、非常に限定されたところについては法律を整備するかもしれないけれども、戦闘行為のときにどういうふうに考え方を整理するのか。

私も、そういうときに一々知事を捜して通知するとか、それは非現実的だと思いますよ。でも、そうならそうで、どういう場合にはどういうことができるかと いうことを法律で明確にしておくということが、これは有事法制の意味ですから、そこの肝心な部分が全部抜けているんじゃないですか、この法案は。いかがで すか。

中谷国務大臣 個人にも正当防衛というものがありまして、自分の命に危険が及ぶ場合には、法を超えて自分を守るということは認められているわけでございます。国家にも、 やはりそういう外国の勢力によって、日本の法律等を無視して我が国民を殺傷する場合に、その事態をいかに排除をして国民を守っていくかという行為自体が必 要でございまして、その場合に際して、本当に緊急事態でございますが、自衛隊法八十八条の規定で、そういった国家の防衛行為を行えるということによって、 国民を守る行為をするわけでございます。

しかしながら、何でもやってもいいかといえば、故意に民間人に危害を加えたり、また上官の命令に背いて勝手な行動をしてはならないというように自衛隊法 に規定をしておりますし、刑法や自衛隊法の規定に違反をしないように、そのようなルールを設けて、実効性の担保を図っているわけでございます。

岡田委員 私は、今の議論というのは、これは専門的な法律家の議論にたえないと思うんですね。ですから、ぜひここのところ、つまり、戦闘行為における民事法、刑事法 あるいは行政法との関係をどう考えるのか、そしてその法的根拠は何かということについても、きちんと政府として検討して示していただきたい。何か、自衛権 があるからとか、そういう話じゃないでしょう、これは。一番基本的なところじゃないですか。

では、総理、総理はさっきからずっと他人事のような顔をしておられるから、官房長官でも結構ですが、いかがですか、今の議論を聞いていて。――いや、内閣法制局長官に聞くつもりはありません。いや、今聞くつもりはありませんから。

中谷国務大臣 正当防衛行為というのは、民事、刑事を超えて認められている行為でございますので、法理論的にはそのように説明ができるのではないかというふうに思います。

津野政府特別補佐人 若干、法的な、専門的な話ですが、先ほどから、刑法というお話がございました。この刑法の関係につきましては、まず、当然のことながら、刑法上、正当業務 行為というものにつきましては、違法性阻却で、これは刑法上の罪責に問われるというようなことにはならないということが、これは自衛隊法八十八条の武力行 使についても適用されるわけでございます。これは十分御理解できると思います。

それから、民法の関係でございますけれども、これは、御承知のように、国家の適法行為について、先ほどいろいろ違法行為につきましての議論がございまし たけれども、違法行為であれば、適法なものでなければ、当然、国家賠償法とか、そういった民法上の、国賠法上の責任が出てくる。それ以外の適法行為につき ましては、事案によりましては、例えば、適正な損失補償をしなければいけないようなケースがあり得るというような関係に立とうかと思います。

それは、あくまで国家の、国の公務としての正当行為でございますから、それに対しての規制というところでございますので、その関係では、戦闘行為、いわ ゆる武力行使が行われるような場面におきましては、それは正当行為としての評価を受けるわけでございますので、もちろんいろいろの、例えば憲法の二十九条 のような規制を受けるような面もございますでしょうけれども、そういったところで判断をしていくということになろうかと思います。

岡田委員 今の御説明は、そうすると、刑法や民法は原則的には適用されるけれども、刑法であれば、正当業務行為ということで違法性がなくて罰せられることはない、民 法あるいは国賠法上も故意過失がない限りはそういう責任を問われることはない、そういう説明だというふうに理解をしたんですが、行政法の場合、どうなんで すか。

先ほど言いました河川法、今回、自衛隊法の改正の中で河川法を変えますね、知事に対して通知するということになっていますね。こういう戦闘行為の場合も通知するんですか。しないなら、その根拠は何なんですか。

津野政府特別補佐人 これは、先ほどから防衛庁長官も行政法規等につきましてはお話をしておりましたが、例えば、先ほど言われましたような河川法上の通知の問題でございますけ れども、こういったものは、これはあくまで戦闘、いわゆる武力行使を行われている場所を離れた場合における規制を、特例を設けているわけでございます。

当然、戦闘行為が行われているような場所におきましても、そういった余裕があるかどうかという問題はございますけれども、そういう余裕があるならば、そ れはできる場合もあるかと思いますけれども、基本的に、事態は、戦闘という非常に緊迫した中で、しかもどういうふうに変化するかわからない。そういった状 況の中でそういった行政法規を適用されるということは、これは自衛隊が正当な武力の行使をしている以上は、そういうことにもしも適用を、何といいますか、 適用に対して違反したとしても、適用しなかったとしても、それは正当な業務行為として、何ら法的に問題を生ずるというようなことはございません。

岡田委員 そもそもの発想が、有事においてきちんと自衛隊の活動が法律に基づいて行われるようにということで今の有事法制の提案がされていると思いますが、今のお話 は、戦闘行為のときには、それはもう正当事由かどうかで判断するんだということで、いわばノンルールじゃないですか。それでは、私、やはり説明になってい ないと思うんですよ。法律上の根拠がやはり要るんじゃないか。具体的妥当性について、その場合、一々知事に通知しなきゃいかぬとか、そういうことを言うつ もりはありませんよ。しかし、それならそれで、きちんとそういうものがルール化されていないと、結局、超法規で何でもできるという話につながりかねない問 題だ、そのことを最後指摘申し上げて、同僚議員にかわりたいと思います。

終わります。




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