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1996.05.31|国会会議録

136回 衆議院・外務委員会

岡田委員 新進党の岡田克也です。

与えられた時間は一時間でございますので、順次質問していきたいと思います。

基本的には、先般本会議におきまして質問させていただきました問題について、さらに突っ込んで御質問をしたいと思います。

ただ、質問を始める前に一言申し上げておきたいと思いますが、私もあの本会議の速記録をもう一度読み直してみまして、聞いたことにほとんど正面から答えていただいてないというふうに言わざるを得ないと思います。本会議というのはそんなものだ、そういうふうに言ってしまえばそれまでかもしれません。しかし、やはり時間を割いて、そして本会議場というところで聞いているわけですから、そういった問題について正面からきちんとお答えいただくべきではないか、こういうふうに思うわけでございます。

個々の問題は中で触れていきたいと思いますが、やはりそれは、総理それから大臣もそうでありますし、あるいは事務当局もそうでありますけれども、質問というものをもう少し真剣に受けとめていただきたい、そのことをまず御注文申し上げておきたいと思います。

私もかつて役所におりまして経験がありましたのでわかりますが、特に本会議での質問になりますと、ついつい勝手に質問の方を解釈して、当たりさわりのない答えを書くという傾向がどうしてもあると思います。しかし、そういうことを続けていたのでは国会において議論する意味がなくなってくるわけでありますので、そこはよく外務省の方にも考えていただきたいというふうに思っております。

さて、私が聞きました幾つかの質問の中で、共同訓練など、協定の一条二項に定める場合であれば有事であってもこの協定は適用されるのかというふうに聞いたわけですが、これに対して池田大臣は、「戦闘行動が行われているという意味でのいわゆる有事における米軍の戦闘作戦行動への協力としての物品や役務の提供というものには適用されません。」というお答えであります。

私が聞いておりますのは、別に戦闘作戦行動への協力としての物品や役務の提供について聞いているのではなくて、一般論として、有事であっても、つまり戦闘作戦行動が行われている場合であっても共同訓練であれば適用され得るのかということを聞いているわけで、そのことについてまずお答えをいただきたいと思います。

池田国務大臣 まず、本会議における私の答弁あるいは政府側の答弁一般についてでございますけれども、国権の最高機関である国会、その本会議における政府としての対応というのは、これは誠意を持って当たるのは当然だと思っております。私どももそのつもりで、その精神を持って対応しているつもりでございますが、不十分なところがあったといたしましたら、そこのところは基本的にそういう誠意を持っておるということでどうか御了解賜りますようお願い申し上げます。なお、今後ともその点については心してまいりたいと存ずる次第でございます。

さて、今御質問の点でございますけれども、先般本会議でお答えいたしましたのは、委員御指摘のように、そのような状況のもとで戦闘行動をやっている、そういったものに対する支援というものは対象にならないということを申し上げたわけでございます。私は、それはあるいは裏からお答えしたようなことになったかと思います。

正面からとおっしゃいますので、正面からということで申し上げますと、昨日の委員会でも他の委員の御質問に対してお答えしたところがあるかと思いますけれども、有事あるいは平時という概念が必ずしもこれは確定したものではございません。これは一般国際法におきましても、あるいは国内法におきましてもですね。そういうことはございますので、この協定ではそういった切り口から規定しているわけではなくて、共同訓練、PKO等ということで、そういうふうな面からこの対象を限定しているわけでございますので、有事にどうだろうかということはなかなか言いにくいわけでございます。

そういったいわゆる有事と言われるような緊迫した状態、状況があるときにおきましても、例えば極東有事を想定しますと、極東のどこかの地域でそういうことが起きている、そうして米軍がそこでそれに対処する行動をとっている、戦闘行為をやっているという状況のもとでありましても、米軍の他の部隊は、例えば日本の国内にある、あるいは米国内にある。そして、そういったものと自衛隊が共同訓練を行うということは理論上あり得るわけでございまして、そういったものについてこの協定が適用可能であるかどうかということになれば、これはそういったケースを排除しているものではないと思います。

ただ、実際にそれを行うかどうかというのは、やはりその状況、その他いろいろな点から考えまして、自衛隊と申しましょうか、最終的には防衛庁設置法に基づく訓練の決定でございましょうから、防衛庁あるいは政府において判断する、そういうことだと思います。

岡田委員 協定の文言上は可能であるというふうに理解をいたしました。

その上で、今大臣もいろいろ御説明になりましたが、基本的な考え方として、これは日米間の問題でありますから、そして、米軍がどこかで戦闘作戦行動をやっているというときに、全く違う場所であっても共同訓練をやるということはいろいろな誤解を招く可能性もあるわけですから、常識的にはそういう共同訓練を日本側としてはやるつもりはない、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。

池田国務大臣 そこのところは、やはり具体的にどういうふうな状況かなということがあると思います。そもそも有事ということは、先ほど申しましたようにきちんとした定義があるわけではございませんから、どのような状況かということがあると思います。

昨日、私は御答弁の中でPKO活動を例に挙げましたけれども、たとえそうでなくても、例えば共同訓練でも、こういうケースはいかがでしょうか。

まず、何もないときに、我が国はもとより極東地域でも特に事がない状況の中で、例えば米国において日米共同訓練が行われておる、その訓練が継続している間に極東のどこかで何か事が起こったというときに、それではこちらの方はこの訓練を直ちに中止する、あるいは取りやめるのが適当かどうかというのはやはりケース・バイ・ケースではないかと存じます。

しかし、概して言えば、共同訓練というのはいわゆる平時において行われるのが通常であるということは言えようかという感じがいたします。

岡田委員 有事の定義が非常に幅広い、いろいろな定義があるということはおっしゃるとおりでありますが、私が今聞きましたのは、戦闘作戦行動を米軍がしているときに、他方で共同訓練をするというのは常識的にはないのではないか。もちろん、さっきおっしゃったような例というものは論理的には考えられますが、では、もう少し狭くして、戦闘作戦行動を米軍が行っているときに、日本として新たにこの協定に基づいて共同訓練を始めることは常識的にはないということはどうでしょうか。

池田国務大臣 常識的にはという先生のお話でございますので、やはり常識的に言いまして、一般的に言えば、概して言えばそういうことだと私は思います。ただ、しかしあくまでそれは個別の状況、そして個々の行動との関係で、その時点で考えるべき話だとは思いますけれども、一般的に言えばそういうふうなことかなと存じます。

岡田委員 大体了解をいたしました。私もそのようなことだろうというふうに思っております。

それでは、次に弾薬の問題でございます。

私が質問いたしましたのは、総理が、弾薬提供についてアメリカ側にニーズがなかったから弾薬を入れなかったんだというふうにお答えになったわけであります。これは愛知議員に対する答えでありますけれども、この間私が聞きましたのは、じゃ、アメリカ側が弾薬を含めたいと、ニーズが出てきたときに、協定を変えて、弾薬を加えることについて日本国政府としては問題がないというふうに考えているのか、こういうふうに質問をしたわけであります。総理のお答えは、日米共同訓練において弾薬が使用されることがあるかどうかということと、米側がその提供を我が国に求めるかどうかということは、全く別の次元の問題であると思います、こういうお答えなんですが、これはお答えになってないわけでありまして、私は、もしアメリカ側が求めればという仮定の話をしているわけですから、日本側としてはどうなのかと聞いているわけであります。それに対するお答えを、総理にかわって大臣の方からお答えいただきたいと思います。

池田国務大臣 本会議における総理の御答弁は、米側のニーズという関係でのお答えであったと思います。

それで、今委員からは仮定の問題として、もし米側にニーズがあればどうかという点でございますが、あくまで仮定の上に立ってお答えをさせていただきますけれども、仮に米側のニーズがあったといたしましても、やはりそれは自衛隊及び米軍双方の支援能力であるとかあるいは相互融通性の問題であるとか、それがあるかどうかといったこと等々、いろいろなことをやはり総合的に判断した上で協定の対象、この協定といいましょうか、そういったものの対象にするか否かを日米双方でさらに検討し結論を出す、こういうことになるんだと思います。

したがいまして、お尋ねの点について今の段階で一概に申し上げるわけにいきませんけれども、専ら米軍のニーズにかかわっているのかといったら、そうではないというのは御指摘のとおりだと存じます。

岡田委員 相互融通性その他の問題は、ある意味では技術的な問題でございますが、もし弾薬をここに加えるということが憲法上何かの問題があるというふうに大臣はお考えでしょうか。

池田国務大臣 これは、あくまで現在の協定の共同訓練あるいはPKO活動等ということを前提にしての話でございます。そういった枠組みの中で、仮にその対象の物品の中に、御指摘の弾薬でございますか、それを入れた場合にどうなるかということでございますが、私はそれが直ちに憲法との関係で問題になるとは考えません。しかし、それは今回のいろいろな双方の協議の中でニーズの有無、その他を勘案いたしまして、その対象とはしていない、こういうことでございます。

岡田委員 それでは、その次ですが、この協定の適用範囲の問題でございます。

私の方で聞きましたのは、第三国における日米の共同訓練の場合にこの協定は適用になるのか、こういう質問をいたしました。大臣の方からは、「従来、日米共同訓練は日米以外の第三国で実施されたことはない」というお答えでございました。それは事実だろうと思いますが、私が聞きましたのは、仮に第三国で行うことにした場合にこの協定が適用になるのかどうかという、これも仮定に基づいた質問でございます。それに対するお答えをいただきたいと思います。

池田国務大臣 本会議でも御答弁申し上げましたように、これまでの訓練において、日米以外の第三国において訓練が行われたことはございません。また、将来についても、これは私から御答弁申し上げるのは適当かどうかというのは別として、想定はしにくいわけでございますけれども、しかし、委員おっしゃるのは、この協定の条文上それが排除されているか否かということだと思います。そういった理論上の問題あるいは協定の条文上どうかということでございましたら、それは排除されているわけではございません。

岡田委員 そうしますと、例えばこれも仮定の話でございますが、将来、日米韓で合同の訓練を行う、それを例えば韓国で行うというようなことがあった場合に、日米韓ではこの協定に基づいて物品・役務の融通をするということは、それは可能である、少なくとも協定上は可能である、それを実際やるかどうかは政策の問題だと思いますが、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。

池田国務大臣 この協定上それを禁止する規定がないのは御指摘のとおりでございますけれども、しかし、実際にそういうことがあり得るかどうかということ、その蓋然性の問題、あるいは仮にそういったことを提起されたとしてもそれを行うことが妥当かどうかということについては、当然別途の角度からの政策的な判断が入るということは十分考えられるところだと思います。

岡田委員 そうしますと、大臣は何か妥当でないと今お考えになるようなことがあるんでしょうか。それとも、今は全くの白紙であるというふうにお考えなんでしょうか。

池田国務大臣 まず、これまでにそういったことが行われなかったということもございます。それから、恐らく将来、今後についても当然こういうことがあるだろうということが今想像できるわけでもございません。まず、そういったことで、事実問題としてそういった可能性があるかどうか、ましてや蓋然性ということからいうと、非常に確度が低いんじゃないかと思いますので、だから、それを行うべきかどうかという判断を今一概に申し上げるわけにはまいりませんけれども、もしそういったケースが浮上してくれば、それは各方面から検討して政策的な判断はあるだろう、こういう意味で申し上げたわけでございます。今それが先見的にそういうものは妥当でないんだと申し上げておるわけではございません。

岡田委員 恐らく二つの意味があって、一つはそういった三カ国間の訓練を第三国で行うこと自身が妥当かどうかという一つの判断がございますね。それが妥当だということに将来なったときに、その上でこの協定を適用することが妥当かどうかという二つの問題があると思うんですが、もし政策的に三カ国間で第三国で共同訓練を行うことが妥当であるということになったときに、それにプラスしてこの協定を使うべきか使わない方がいいかということについて、何か問題がありますでしょうか。

池田国務大臣 まずこの協定は、後方支援それから物品・役務の面での協力を決めているわけでございますね。今仮定を置いての御質問のような事態をどうするかあるいは行為をどうするかということになりますと、まずその訓練自体をそのような場所ですることがどうかということが先にくるんだと思います。その後での、付随的にこの協定に従ってやることがどうかという判断になるんだと存じます。

岡田委員 それでは次に、日米防衛協力のための指針の見直しあるいはその他の有事の際の日米協力体制についてお伺いしたいと思いますが、総理の方からは、「具体的にいつまでに結論を出そうということが現時点において決まっているわけではありません。」というお答えをいただいております。

まず、ホノルルで日米安全保障事務レベル協議が開催をされたというふうに伝えられておりますが、そこでどういうことが決まったのか、まず概略、事務当局からで結構ですから、御説明いただきたいと思います。

折田政府委員 五月二十八日にホノルルで日米の実務当局者間、審議官レベルでございますが、通称ミニSSCと称しますけれども、そこで議論が行われたところでございます。いわゆるガイドラインの見直しの議論につきましては、参加者が個人的な立場で、非公式かつ自由な意見交換を行ったということでございまして、次のような点でおおむね意見の一致を見た、それぞれ本国に持ち帰って、それぞれの本国で検討しようということになったわけでございます。

まず第一点は、防衛協力小委員会というのがございます。これは前回のガイドラインを作成するときにつくられたものでございますけれども、従来の防衛協力小委員会、これはSDCと称しますけれども、北米局長、防衛局長、統幕事務局長、在日米軍参謀長、それから在京のアメリカ大使館の公使ということであったわけでございますが、御承知のように、昨年の秋から沖縄に関する行動委員会、いわゆるSACOのやり方が非常によかったということで、その例に倣いまして、単に在京のアメリカ大使館の公使だけではなくて、アメリカ本国の国防省、国務省のしかるべき人等を含むものに改組したらどうであろうか、そしてその上で、さらにワーキンググループを設置して検討したらどうかというような話がございました。

それから九月に、いわゆる2プラス2、外務大臣、防衛庁長官とアメリカ側の国務長官、国防長官との間のいわゆる2プラス2が開かれるということは一応想定されておるわけでございます。これは、いつ開くとか細かなことは決まっておりませんけれども、そういう方向で話をしたらどうかということになっているわけでございますが、それまでの間に作業をしたいわゆる進捗状況について、その2プラス2で、いわゆるプログレスリポートというのですが、報告したらどうであろうかということ。

それから、いわゆる指針、ガイドラインの見直しと、日本国内で、総理の御指示を踏まえまして緊急事態に対するいろいろな対応策を検討しているわけでございますが、両方は非常に関係が深いものでございますので、その関連性をよく踏まえながら、言ってみれば同時並行的に進める必要があるのではなかろうかということ。

それから、今回、指針、ガイドラインの見直しを開始することに合意されたわけでございますが、そこにおきましても、日米間の言ってみれば役割分担の大枠を変えるものではないだろうというような議論があったということでございます。

岡田委員 今のお話で、九月の2プラス2で中間報告といいますか進捗状況の報告をするということも出てまいりましたが、こういう日米防衛協力のための指針の見直し作業はやはり全体のタイムスケジュールが当然あると思うのですね。少なくともこのぐらいで結論を出そう、こういうものは当然あると思いますし、いつまでもずるずると引き延ばしていくというわけにもいかないと思うのです。

そういう意味で、私は、総理にいつまでに作業を終えるつもりかと聞いたわけですが、「現時点において決まっているわけではありません。」というのが総理のお答えでございました。私が聞きましたのは、やはり政治家として、あるいは日本の指導者としていつまでに終えようというおつもりかということを聞いているわけでありまして、これは自然に決まるわけではありません。やはり、総理なり外務大臣、防衛庁長官がいつまでに結論を出すんだという強い決意があって、初めて事務方もそれに合わせて作業をしていくわけでありますから。

そういう意味で改めてお聞きをしたいと思いますが、日米防衛協力のための指針の見直し作業はいつまでに終えるおつもりですか、お答えをいただきたいと思います。

池田国務大臣 御指摘のとおり、本件は極めて重要な課題でございますので、だらだらとやっておればいいという話じゃないのは当然でございます。我々としても、可能な限り早くその結論を得たい、こう考えております。しかし、重要な課題であるということから出てきますもう一つの要請は、やはり拙速であってはいけない、やはり綿密に作業をし慎重に事を運んでいかなくてはいけない、そういった側面もあるということは御理解いただけると思うのでございます。

そういったことで、先ほど北米局長からも御答弁申し上げましたように、先般ホノルルでの会合で、まず日米間の協議としてはスタートといいましょうか、きっかけを始めたわけでございますが、今後なるべく早くそれを継続していきたいと思いますし、また、当然国内での作業があるわけでございます。

そういったものも鋭意進めてまいりまして、そして先ほど御指摘のございました、ことしの秋にもいわゆる2プラス2が開かれれば、これは開きたいと思っておりますけれども、これを開くことができればその段階において中間報告というお話でございましたが、ホノルルの会議ではたしかプログレスリポートという形だったと思います。つまり、その段階での進展の状況を踏まえて2プラス2に報告をする、こういうことに至ったわけでございます。私どもはそれを受ける立場でございますので、それを受けましたら、その段階での作業の進捗ぐあいを見て、さらに我々として注意を喚起する、あるいはこういう点をというふうに指示あるいは示唆すべきことがあるならばそういうことをしながら、作業をさらに促進していきたいと思っております。したがいまして、今の段階でいつまでということは確定的には申し上げられませんが、作業はそういうふうに精力的に進めていきまして、なるべく早い時期に結論を得たいものと考えている次第でございます。

岡田委員 おおむねいつぐらいをめどにということはございませんでしょうか。

池田国務大臣 恐縮ではございますが、やはり今の段階で時期を切ってということを申し上げるだけの作業の蓄積も積み上げもまだございませんし、今申し上げて今後の進展と少し違うことになってはかえって恐縮だと存じますので、ひとつそこの具体的なめどについてはお許しを願えないかと思います。

しかし、いずれにいたしましても、この政権は永久政権とは考えておりませんので、極力作業を急いでいくつもりでございます。

岡田委員 でき得ればいつまでに作業をやるんだ、そういう総理なり外務大臣のお話があれば、国民もいかにこの問題が重要かということがよくわかるわけでありますし、あるいは事務方の方もそれを前提にして作業していくわけでありますので、ぜひそういうリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思います。

そこで、九月に進展状況について報告があるということでありましたが、実は、ガイドラインの見直しの問題は国内の法制とも密接に関係する問題でございます。そういう意味で、国会としてもこの問題は重大な関心を持って見守っていかなければいけないというふうに考えておりますが、例えばそういった中間的な、中間的というよりは進展状況の報告とかそういうことがあった際に、政府の方から国会に対し報告をする、あるいはその場で議論をするというようなことはお考えでございましょうか。

池田国務大臣 まだこれから作業が始まるわけでございますので確定的なことは申し上げにくいわけでございますけれども、いずれにいたしましても、作業を急ぎまして、その進展状況を踏まえて我々として報告を受け、そしてまたその進展状況いかんによりましてどういう形になるか考えたいと存じますけれども、国会でいろいろまたその御議論を賜るという機会もあり得ようかと存じます。

岡田委員 非常に重要な問題でございますし、法律にかかわる問題でございますから、適宜国会の方にも正式に御報告をいただき、その場その場で議論をする機会をぜひつくっていただきたいというふうに思っております。

それでは、いわゆる有事立法の問題でございます。

この点につきまして、総理の方は、「法制化の問題については、まさに国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえて対応すべきものだと考えております。」そういうお答えでございました。これも私はどういう意味なのかよくわからないのですが、国会における審議を踏まえて対応すべきだというのは具体的にどういうことを考えておられるのでしょうか。もし大臣の方でお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

臼井国務大臣 委員御指摘になりました有事法制研究につきましては、いわゆる現行法制上不備な事項、問題点を整理することにありまして、近い将来国会に提出をする、立法を予定するものではございません。しかしながら、我が国の防衛を担当している私ども防衛庁といたしましては、有事法制については、当然のことながら研究にとどまらず、その結果につき法制が整備されることは望ましい、こういうふうに考えている次第でございます。

単に研究にとどまらず法制化をしていく、この問題につきましては、国民の世論の動向あるいは高まり、並びに国会における議論、御審議の経過、国会議員の多くの皆さん方の御意思、そういったものを踏まえて検討していくべきもの、このように考えております。

岡田委員 今の御答弁は総理とほとんど同じだと思うのですが、私がお聞きしましたのは、そこで言う国会における審議を踏まえて対応すべきだという、国会における審議というのは具体的にどういうものを考えておられるわけですか。国会でどういう審議をすれば政府は法案を出すということになるのですか。

池田国務大臣 ただいまも委員は有事法制どう考えるのだということを御議論なさっております。それからまた、当委員会でもこれまでも幾度か議論があったところでございますし、また他に安全保障委員会あるいは予算委員会等々の国会のいろいろな場におきましてこの問題についてこれまでも御審議がございました。そういったいろいろな御議論のありようというものをよく見ながら、いわゆる成熟してくるのを見てという言い方をかつて政府でしたことがあるかと存じますけれども、そのような状況を見ながら、政府としても、これまでやってまいりました研究を踏まえて具体的な法律案の形にまとめ上げるのが、これが妥当な、適当な状況あるいは環境ができ上がったな、そういうことになれば当然法案の形で御提出することもあろうかと存ずる次第でございますけれども、正直に申し上げまして、今の段階でそれならば環境がそこまで熟成してきておるかといいますと、まだ私はそこまでは至ってないのかと存ずる次第でございます。

もとより、国会の御論議の状況だけではなくて国民世論等の動向もあわせ見ていくということは、先ほど防衛庁長官からの御答弁にもあったところでございます。

岡田委員 かつての社会党が自衛隊も認めません、こう言っていた時期なら、この国会における審議を踏まえて対応していくというのはそれなりに意味のあることだったと思うのですが、その後社民党が自衛隊も認め与党になられて、今野党は大きく言えば新進党と共産党であります。共産党さんの御意見は私ども承知しませんが、我が党が国会における審議すらだめだ、こういうふうに言ったことはないと思うのですね。そういう状況のもとで、国会の様子を見なければいけないということの意味が私にはわからないのです。お答えいただきたいと思います。

臼井国務大臣 委員お説のとおり、我が国を有事の際にいかに守っていくかということは、我が国にとって大変重要な問題でございます。前大綱に基づいて策定されましたガイドラインにおきましても、一、二、三項について研究をいたしたわけでございまして、一、二項というものは一応の結論が出ている環境でございます。また、このたび、平成八年度からは新防衛大綱、新中期防がスタートする、また総理から、日本の危機状態における対応というものもやれ、こういう御指示も出ております。防衛大綱のスタートによりまして、ガイドラインの見直しというものも予定をされている。

こうした中で、私が申し上げました、有事法制というものはいかにあるべきか、将来に向けて、従来ガイドラインの一、二項で検討いたしましたものも検討をし直す必要もあろうかと思います。また、総理御指示の日本の危機への対処、こうした中でもいろいろな問題も出てこようかと思っております。それらのものを将来どのように、現法制下でできるものかできないものかをしっかりと見きわめをして、日本有事の際に適切に対応できる体制というものをつくっていくことが必要だと考えておりまして、それらのことは我々はしっかりやっていかなければいけない、こういうことを今感じておる次第であります。

岡田委員 必要であることは当然ですが、それをどういうタイミングでやっていくのかという問題であります。大臣は、例えばこの一年以内に我が国にとって有事ということが一〇〇%ないということが断言できますでしょうか。断言できないのであれば、もしそういうときにどういうふうにして対処するおつもりですか。既存の法令を全部無視して自衛隊を動かすつもりですか。それとも黙って、法制の今認められる範囲内でしか自衛隊が動けない、結局うまく機能しないということを甘受すべきだというふうにお考えですか。どちらでしょうか。

臼井国務大臣 今お説の、近い将来日本に危機状態が起きるということは私どもは想定をいたしておりませんが、先ほど来お話にございましたとおり、ガイドラインの見直し、これもいよいよこれから進めていく、日本の危機に対する対処方針についてもまさにこれからスタートする、これらのものはでき得る限り努力をいたしまして、早い時期に結論を出すように努力をしていかなければいけない。有事の際にはいかにあるべきか、現法制下でやり得べきものは極力やっていく、また緊急に対処するべきものは総理の指示のもとで、また新たなる対処方針というものも国民、国会に御理解を得る、こういうこともあろうかと思います。

岡田委員 やはりこれは私は政治の怠慢だと思うのですね。しかも社会党が自衛隊は合憲であるというふうに認めた以上、本当は障害はないはずなんですね。社会党が自衛隊は合憲であると認めたということは、しかも自衛隊が必要であるというふうに認めたということは、やはり有事があり得るという前提に立ってそういうものを認めたはずでありますから、そうであれば有事に対処するための法制をきちんと整備しておくのはこれは国会の仕事であり、政治家の仕事である。

そのことについて、何かやるのかやらないのか、やるとは言いながら、いつまでにやるのかはっきりしないというのは、私は、それは余りにも無責任なことではないか、もしそういうことなら、もう防衛予算は来年はなくしたらいい、そういうふうにすら思いますね。だって、有事のときに使えないものを、金をかけて、国民の税金を使ってやる必要はないじゃないか、そういう極論も私は出てくると思うのです。

その点について、再度防衛庁長官に、有事法制についてどういうふうに、どういうタイミングでお考えなのか、しっかり御答弁をいただきたいと思います。

臼井国務大臣 先ほどお話しいただきました、我が国においては年間予算約四兆八千億円、こういう貴重な国民の税金をちょうだいをして、日本を守るための防衛力の整備というものを年々いたしているわけでございます。

御承知のとおり、これらにつきましては、一朝一夕に現在の自衛隊というものをつくれるものではございません。絶えず着々と実施をしていって初めてそういうものができる、こういうふうに考えておりますので、その点はもう委員御承知の上での御意見でございますが、私どもは、引き続き日本の将来、国防をしっかりと担っていくためには、今後息を抜かないで着々と防衛力整備をしていくべきだ、このように考えている次第でございます。

また、御指摘の有事法制につきましては、繰り返しになりまして恐縮でございますが、今新しい防衛大綱もできましたし、また中期防もできた、またガイドラインの見直しもスタートしている、総理の御指示の、日本の危機に対する対処方針というものもこれから検討される。これらのものを、結論が出た中で、有機的な関連の中でもって、いかにして日本の有事に対する法制を考えていくのか、それは改めてこれらの関係の中でもって将来考え直すべきものである、こういうふうに思います。

岡田委員 時間の都合もありますので、この問題はこの辺にさせていただきますが、ぜひ、与党の中でも、政府の中でも、真剣に御議論いただきたい、こういうふうに要望しておきます。

次に、日米安保共同宣言について、限られた時間ではございますが、御質問したいと思います。

日米安保共同宣言の中で、アジア太平洋地域の平和と安定のために重要であるというくだりについてどういう意味かという質問をしたところ、総理は、アジア太平洋地域に安心感を与え、結果としてこの地域の安定要因として作用しているという意味である、こういうふうに以前お答えになっております。重ねて私本会議で質問いたしましたが、そのときには余り意味のあるお答えは返ってまいりませんでした。

私は、安保条約の存在そのものがアジア太平洋の安定に役に立っているということの意味がよくわからないのです。存在そのものが安定に役に立っているというのは、もう少し敷伍して言うとどういうことなのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。

池田国務大臣 御承知のとおり、さきの大戦の後長い間、半世紀近くにわたっていわゆる冷戦構造という時代が続きました。そういった東西両陣営の厳しい対峙の構造の中にあって、我が国は何とか安全を維持することができたわけでございますが、それはやはり日米安全保障条約というものがあり、それに基づく米軍の日本における存在、そうしてまた一たん緩急あればさらに増援もあるぞ、そういう体制というものが我が国の安全を守る上で大きな役割を果たしたと考えるわけでございます。そうして、それはまた我が国だけではなくて、極東地域の安定、平和もその目的としているわけでございますから、やはり我が国周辺地域の安全にも寄与するところがあったと思います。さらに申しますならば、この日米安保条約の対象となっていない、より広いアジア太平洋という地域の安定にとっても、それはやはり効果はあったのだと思うのでございます。

さて、それで、今日では冷戦も終えんいたしまして、かなりの年月もたっておりますけれども、やはりこのアジア太平洋の地域、どこに危険があるとか、どこが脅威であるということではございませんけれども、いろいろ不安定な要因もあり、先行き不透明でございます。

そういった中で、少なくともこの日米安保体制がしっかりしておって、日本あるいはその周辺の地域の安定あるいは平和をきちんと守っていくのだ、こういうことがあれば、これは広くやはりアジア太平洋地域の国々にとってもそれは安心感のもとになると思うわけでございます。いわばそういった作用としてということを総理は答弁されたと思いますが、安保体制、それに基づいて米軍がここに、日本に存在しているということがそういった効果を及ぼしている、こういうふうな意味合いであったと存じます。

岡田委員 今の大臣の御答弁をざっと私なりに解釈いたしますと、アジア太平洋地域、安保条約の対象になる極東及びその周辺地域を除いて、それ以外のアジア太平洋地域においても、一たん何かあったときに、日本にいる米軍がきちんと機能する、究極の姿としては米軍が守ってくれる、そういうことがあって初めて日米安保条約というものがアジア太平洋の平和と安定に役に立っている、重要である、そういう表現になっているの七やないかと思うのですが、そこの解釈はいかがでしょうか。

池田国務大臣 必ずしも委員御指摘のようなケースを申し上げたわけではございませんで、少なくとも日米安保条約の対象になっている日本あるいは極東地域は、うやってきちっと平和を維持していくのだ、こういうことである。そうなれば、その地域の平和が守られていれば、その地域には含まれていないけれども、それに隣接するあるいは近い地域についての安全保障環境についてもそれは当然いい影響を、好ましい影響を持つのだ、効果を持つのだと思います。そういう点が一つあります。

それから、御承知のとおり、あるいは委員の考えておられるかもしれない、推測いたしますところを踏まえて申し上げますと、極東に何か事があった場合に在日米軍がどういうふうに行動するかというのは、必ずしもいわゆる極東地域に限定されているわけじゃございません。極東地域の外の地域の情勢がいろいろ緊迫してくる、そのことが極東地域の安定に大きな、重大な影響を及ぼす場合には、それは極東地域の外に対しても行動するということはあり得る、これは従来から歴代政府も申し上げていることでございまして、あるいはそういったことも広くアジア太平洋の国々が安保体制から引き出す安心感のその源になるという面はあるかもしれません。しかし、私どもはそういった面だけを強調して申し上げているのではなくて、全体として先ほど申しましたことも含めて申し上げている次第でございます。

岡田委員 私が申し上げているのは、極東及びその周辺の地域というより、もっと広い範囲でのアジア太平洋ということで申し上げているわけですけれども、先般のナイ・レポートを読みましても、アメリカの意識は完全に世界戦略の中に在日米軍基地というものを位置づけているというふうに読まざるを得ないくだりがたくさんございます。当然、またそういうふうに考えていると思います。湾岸戦争のときにも、日本の横須賀なり佐世保から艦船が出ていったわけであります。そういう今アメリカが日米安保条約で意識しているその認識と、日本があくまでも日本自身あるいは極東の安全ということに意識的に限定して考えていることの間に非常に大きなずれがあって、そこは外務省も恐らくわかっておられるのですけれども、国民にはきちんと説明しない。そういう状況の中で、何か釈然としないものが残っているというのが私は現実の姿ではないかと思います。

もう時間がなくなってしまいましたので、これ以上きょうはお聞きしませんが、やはり私は、事実は事実としてきちんと国民に説明をする、そこから本当の中身のある議論が始まるのではないか、こういうふうに思っておりますので、ぜひ次回にはそういった点について大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

どうもありがとうございました。




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