存立危機事態
●存立危機事態とは
日本が外国から武力攻撃を受けたときに、自衛隊は内閣総理大臣の命令によって武力を行使します。これは、国民の命と暮らしを守るための国家としての当然の権利です。しかし、同盟国が武力攻撃を受けており、かつ日本の存立がおびやかされるような事態(存立危機事態)であれば、日本が武力攻撃を受けていなくても、武力行使できるということが、10年前の安全保障法制によって定められました。ただし、あくまで「我が国防衛のための必要最小限度の武力行使にとどめる」などの厳しい限定をしています。
●台湾有事と日本
台湾有事、即ち不幸にして中国軍が台湾に対して武力行使するような事態が発生した場合に、日本がどう対応すべきか。私はまず優先されるべきは約2万人の日本人の日本への移送だと考えます。その上で、台湾は大切な友人であり、台湾の人々、特に女性や子どもを数百万人規模で日本で保護することや台湾に対する物資の支援などに全力を挙げる必要があります。
しかし、日本自らが武力行使をすることは「我が国の防衛のため」「日本の存立が脅かされる」などに該当しない限り認められていません。また、日米共同で中国と戦争するとなれば、双方で数万人規模の自衛隊員を含む軍関係者の死傷者が予想され、日本のインフラや大都市に対する攻撃も覚悟しなければなりません。ウクライナ戦争で何が起こっているかをみれば、容易に想像できることです。ウクライナに軍を送っている国はありません。
●政治家の軽々しい発言
日本の有力な政治家の一部に「台湾有事は日本有事」とか「存立危機事態になる可能性が 高い」というような軽々しい発言が相次いでいることに私は強い危機感を持ち、11月7日の予算委員会において、高市総理に軽々しく発言すべきでないと思うが高市総理の見解を問う旨質疑。当初は慎重に発言していた高市総理ですが、「武力行使を伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースであると私は考える」「存立危機事態になる可能性が高い」と突然踏み込んだ軽々しい発言を行ったのです。
米国政府は台湾有事となった時に、武力行使をするか否かは明言しないという戦略です。日本政府も同様でした。高市発言はそれを飛び越えて武力行使の可能性が高いと答弁したのです。全く不用意な発言でした。
●政治がなすべきこと
確かに中国の反応は過激で、それに対する反発から高市発言を擁護する声もあります。しかしそれでは、台湾有事には自衛隊も武力行使すべ きだという無責任な言動がネットを通じて更に拡大しかねません。戦争が国民に対してどのような悲劇をもたらすか、冷静になって考えることが大切です。そして、日中両国の国民感情が制御不可能な事態とならないよう、政治の責任は重大です。
高市総理は「存立危機事態に関する私の答弁は日本政府の従来の政府の立場を変えるものではありません」と発言しています。しかし明らかに高市発言は従来の政府の立場と矛盾しており、この点を何ら説明していません。
私は高市総理が発言を撤回することが政治的に困難であることは理解しています。しかし、発言が誤解を招きかねないものであったと認め、再び同じ発言を繰り返さないことを国会答弁で明らかにする必要があると考えます。そうでなければ、国会における高市発言が公式答 弁として 残 ってしまうからです。将来今回と同様の誤った対応が繰り返されないように、高市総理のまわりに適切に助言できる人材を配置することも必要不可欠であると思っています。
