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訪中報告(Ⅱ)— 深センの発展

 深セン市は、1980年に経済特区に指定されたことで急速に発展し、いまや北京市、上海市、広州市とともに、中国4大都市の一つとなっています。深圳 Huawei、テンセント、BYD、ZTEなど世界的企業が生まれ、本社を置いていることでも有名です。いまも新たなベンチャー企業が次々と生まれています。会談した孟凡利深圳市書記は、市が積極的にビジネス環境を整備することで、人が往来し、イノベーションが活発化してきたことが、発展の原動力となったと説明してくれました。習近平国家主席も、深センを改革・開放のモデルと位置付けています。いくつかの企業を視察してきました。
 

 支援ロボット  国有企業の技術者がスピンオフして起業したMile Bot社は、医療機器を開発しています。GEやシーメンスに負けない品質の機器を、10~20%安く提供できる、いまや世界各地に輸出しているとの説明でした。
 高齢者の歩行や、障害がある人の機能改善のための支援ロボットを開発をしているMile Bot社の社長は、当初から起業家となることを目指して、日本とシンガポールの大学で学んだそうです。私も装着して歩いてみましたが、将来さらに小型化すれば、杖を使って歩くよりはるかに良いのではと思いました。 



 BYDの看板  テスラと並ぶ電動車(EV)の世界的メーカーBYDとトヨタが、深センで2020年に共同出資会社を設立し、中国におけるトヨタのEVを共同開発していることは報道で知っていました。関心があったので訪ねてみました。


 EVは欧米では最近になって導入ペースに遅れがみられていますが、中国市場では多くの国産メーカーが競っており、マーケットは拡大しています。BYDは、元来電池メーカーとしてスタートしましが、今ではEVメーカーとして強い競争力を持ち、タイやトルコ、ハンガリーなどにも工場を建設すると発表しています。トヨタはこの共同出資会社での研究成果を踏まえて、中国市場で既にEVを発売しています。写真は、近々発売予定のもので、完全自動運転可能なものだそうです。EV車  
 規制の少ない中国においては、自動運転などの先進技術を市販車に取り入れやすいということがあります。そして、台数を多く売れば様々なデータも蓄積され、よりよい商品(車)を開発することができます。EVでは、日本のメーカーはトップを走っているわけではありません。特に中国市場でトップ企業のBYDには、日本企業にはない技術やノウハウがあり、トヨタはBYDと組むことで、EV開発の遅れを取り戻そうとしたのではないかと思います。そこに、むしろトヨタの危機感とすごさを感じました。もちろんBYDも、世界のトヨタと組むことで大きなメリットがあると考えたはずです。

 自動運転やドローンの活用でも、日本よりかなり先を行く印象の深センですが、その活力が将来も維持されるかについては、疑問もあります。かつて深センが急速に発展した背景には、すぐ近くにある香港の人材や資本が投入されたことがあります。海外で経験を積んだ優秀な中国人が深センを拠点に起業したのも、自由な香港の存在と無関係ではなかったのではと思います。いまや政治的自由が大きく失われた香港、高速鉄道で15分の近さにある深センの将来がどう変わっていくのか、興味深いものがあります。



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