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2005.06.02|国会会議録

162-衆-予算委員会-22号 平成17年06月02日

甘利委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。

次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

きょうは、総理の外交姿勢、そして郵政改革について議論したいと思っております。

始める前に一言確認しておきますが、きょうは総理しか呼んでおりませんので、外務大臣そして竹中大臣、そこにお座りいただくのは結構ですが、答弁は求めませんので、委員長もよろしくお願いをしたいと思います。

さて、まず、総理に対して、少し重い質問を最初にしたいと思います。

総理は、極東軍事裁判、いわゆる東京裁判、これについてどういった見解をお持ちでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、第二次世界大戦後、極東軍事裁判が行われましたけれども、我が国は、我が国を含む四十六カ国が締約国となっておりますサンフラ ンシスコ平和条約第十一条により、極東国際軍事裁判所、この裁判を受諾しておりますし、この裁判について今我々がとやかく言うべきものではないと思ってお ります。

岡田委員 今、総理は、サンフランシスコ講和条約第十一条によって極東軍事裁判所の裁判を受諾していると。それは事実であります。

その上で、今おっしゃったことが、とやかく言う話ではないというふうに聞こえましたが、どういうことですか。従来の政府答弁は、異議を唱えるものではない、こういう答弁ですね。同じですか。

小泉内閣総理大臣 受諾しているということは、異議を唱えるものではない、とやかく言うものではない。

岡田委員 総理、いろいろな国会での答弁、後でまた申し上げますが、すごく誤解を招きやすいんですよ。総理ですからきちんと答弁していただきたいと思いますが、受諾している、したがって同裁判には異議を唱える立場にはない、こういうことでよろしいですね。

小泉内閣総理大臣 たびたび答弁しておりますように、受諾しているものであり、異議を唱える立場にはございません。

岡田委員 そうしますと、その東京裁判、極東軍事裁判で有罪判決を受けた二十五名、うち七名が死刑判決を受けておりますが、この人たちに対してA級戦犯と いう言い方を通常するわけでありますが、このA級戦犯に対して総理はどういうお考えをお持ちですか。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にお願いします。

小泉内閣総理大臣 私は、東京裁判におきましては……(発言する者あり)

甘利委員長 答弁中です、静粛に。

小泉内閣総理大臣 A級戦犯のみならず、B級戦犯、C級戦犯、数千人の方々が有罪判決を受けている。それについて、A級戦犯についてどう思うかという御質問だと思いますが、私は、受諾しているわけですから、それについて異議を唱える立場にはございません。

岡田委員 ちょっと総理、多分事実関係を間違っておられると思いますが、極東軍事裁判、これを東京裁判と俗に言いますが、極東軍事裁判において有罪判決を 受けた二十五名について、これをA級戦犯、そのほかの軍事裁判、これは日本の国内もあります、国外もあります。それに対して、B級戦犯、C級戦犯、こうい う区別をしているはずですが、今の答弁だと、東京裁判でかなり多数の方が有罪判決を受けているというふうに聞こえましたが、そこはいかがなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 明確な事実認識におきましては、後ほど調べて、もし御必要があればお届けしたいと思います。事実関係がどうかということについては、今、はっきりと明確に、私が答えて……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にお願いします。静粛にしてください。

小泉内閣総理大臣 誤解を与えてはいけませんので、よく調べて、調査の上、報告いたします。

岡田委員 総理、こういう話は、私、A級戦犯について質問するということは通告してありましたし、基本的なことですから、やはり間違われない方がいいと思いますよ。

そこで、この二十五名、死刑七名、終身禁錮十六名、禁錮二十年一名、禁錮七年一名、そしてあと三名の方が、二人は途中でお亡くなりになり、一人、大川周明氏は途中で精神に変調を来して裁判から外れました。

この有罪判決を受けた二十五名の人たち、重大な戦争犯罪を犯した人たちであるという認識はありますか。

小泉内閣総理大臣 それは、東京裁判でそのような判決を受けたわけでありますし、日本は受諾したわけであります。そういう点においては、東京裁判において戦争犯罪人と指定されたわけであり、その点は、日本としては受諾しているわけであります。

岡田委員 A級戦犯については、重大な戦争犯罪を犯した人たちであるという認識はあるということですね。

小泉内閣総理大臣 裁判を受諾している。二度と我々は戦争を犯してはならない、戦争犯罪人であるという認識をしているわけであります。

岡田委員 私は、もちろん、その二十五名の一人一人を見たときに、いろいろな議論はあるんだろうと思います。しかも、東京裁判そのものについてもいろいろ な議論はある。勝者が敗者を裁いた裁判であったとか、事実関係において間違いがあるとか、あるいは、新しい罪を設定して裁いたとか、いろいろな議論はあり ますが、しかし、我が国としてこれを受諾している、これが議論のスタートだと思うんですね。

そして、その東京裁判において現に有罪判決を受けたA級戦犯に対して、これは重大な戦争犯罪を犯した人たちである、そういう認識にまず立っていろいろな議論をしていかないと議論が迷走すると思うんですが、もう一度、そのことはよろしいですね。

小泉内閣総理大臣 それは、東京裁判を受諾しているということで十分ではないかと思います。

岡田委員 裁判を受諾しているということは、その二十五名について重大な戦争犯罪人であるという判決が出ているわけですから、そのことは受諾しているということですね。

小泉内閣総理大臣 その裁判を受諾しているわけであります。認めているわけであります。

岡田委員 それでは、具体的な話にちょっと移りたいと思います。

五月十六日の予算委員会で、総理が我が党の仙谷委員の質問に対して幾つかお答えになりました。そのことに関して、少し具体的に聞きたいと思います。

まず、総理は、戦没者に対して追悼を行うことに関して、どのような追悼の仕方がいいかということは他の国が干渉すべきでない、こう述べられました。この 干渉すべきでないということは、どこかの幹事長が述べられたように、内政干渉すべきでない、こういう意味ですか。

小泉内閣総理大臣 戦没者に対してどのような追悼をするか他の国が干渉すべきでないと申し上げたのであって、これをおかしいとは私は思っておりません。

そして、内政干渉という定義はないんです。内政干渉というはっきりした言葉の定義はないんです。どれが内政か、今それぞれの国が、いろいろな内政問題について、自分の国はこう思うということを他国に対して言います。

しかし、私の答弁をよく読んでいただきたい。戦没者に対してどのような追悼をするか他の国が干渉すべきでない、これを岡田議員はおかしいと思っておられるんですか。

岡田委員 総理、私ちょっと我が耳を疑ったんですが、何が内政干渉かということはないんだということをおっしゃったと思うんですが、それじゃ、内政干渉の定義、おっしゃっていただけませんか。

小泉内閣総理大臣 それは、その時々、内政というものに対して各国がこれは内政干渉だと言う場合があるでしょう。しかし、内政とは何か、こういう問題について定義はないということを申し上げているわけでございます。

岡田委員 内政とは何かはちょっと横に置くとして、内政干渉の定義を言ってください。

小泉内閣総理大臣 それは、各国で内政不干渉という立場というものはそれぞれの立場がとらなければなりませんが、それでは内政とは何ぞやという定義はないんですよ、内政というのは。それを私は申し上げているんです。

岡田委員 総理、内政干渉というのは、れっきとした、きちんとした定義があります。これは、国会の場でも、政府からの答弁もなされています。ある種の武力 その他の強制力をもって一国が自国の自由裁量で決定し得る事項に対して圧力を加えて自国の意向に相手国を従わせようとする行為、これが内政干渉の定義で す。ですから、強制力をもって他の国の自由裁量に属することについて圧力を加えて従わせようとする行為、これが内政干渉の定義です。

ですから、総理が干渉とか内政干渉とか言っておられますが、それは俗な言い方で言っておられるのであって、この国際法上の内政干渉という考え方に立って 議論しているんじゃないんじゃないですか。物すごくそれは軽率だと私は思うんですが、いかがなんですか。

小泉内閣総理大臣 一般論として、内政干渉という今岡田議員が言っておられること、それはそうだと思いますが、内政ということについては、その国によって とり方が違うんです。だから、ある国にとっての内政、また日本にとっての内政、そういう点について、どれが内政かという定義はないと申し上げているわけで ございます。

岡田委員 総理、私は内政の議論をしているんじゃないんですよ。内政干渉のポイントは、強制力をもって圧力を加えて従わせようとする、これが内政干渉のポイントですよ。

ですから、今回の、どういう参拝をするか、そういうことについて、それが干渉だとか内政干渉、少なくとも法律的な意味での内政干渉には当たらないという ことは明らかなんですよ。総理は全く意味を、常識的な言葉でもって発しているわけですよ。そして、そのことが国際的紛争を招いているわけです。

小泉内閣総理大臣 この点も岡田議員は誤解されていると思います。

私は、戦没者に対してどのような追悼をするか他の国が干渉すべきでないと言っているんです。内政干渉をすべきでないということは申し上げておりません。

岡田委員 最初に総理がそう言われればよかったんですよ。私は、内政干渉という意味かと最初に聞いたんですから。そのときには、あやふやにして答えられた わけですね。(発言する者あり)武部幹事長が言われたことは、全く政治家として無知だし、政治家としての常識に欠ける、そういうふうに言わざるを得ないと 私は思います。

それでは、次に、いつ行くか適切に判断いたしますと言われましたね。このいつ行くか適切に判断いたしますというのは、従来総理が言っておられる適切に判 断いたしますということと比べれば、一歩踏み込んでいると思うんですね。つまり、行くこと前提の議論ですから。総理は、行くことを前提に述べておられるん ですか。

小泉内閣総理大臣 それは、言葉どおりにとっていただいて結構であります。いつ行くか適切に判断する、そのとおりでございます。

岡田委員 いつ行くか適切に判断するというのは、行くこと前提ですねと聞いているんです。

小泉内閣総理大臣 それは、いつ行くか適切に判断するという言葉しかありません。どう判断するかは、人によってとり方が違うでしょう。しかし、それを適切に判断すると、これがいい答弁なんですよ。

岡田委員 総理、いつ行くか適切に判断するという答弁は、総理は撤回されなかったわけですね。

私は、こういう機会に言い直されればよかったんだと思いますよ。つまり、いつも言っているように、適切に判断いたしますというふうに言われればよかった んですよ。それを、いつ行くかというのが加わっていることによって、もう一歩踏み込んだんじゃないかという誤解を与えているわけですよ。だから、今、私は ある意味で総理にチャンスを与えたんですよ。しかし、総理は開き直って、いつ行くかということを今繰り返された。そういう姿勢がまさしく日中関係を、ある いはアジアにおける日本の関係をおかしくしているんですよ。

小泉内閣総理大臣 戦没者に対してどのような追悼をするか他の国が干渉すべきでないという私の発言が、なぜ他の国を傷つけているんですか。そこをお聞きしたい。

岡田委員 総理、私もそのことを今聞こうとしたんですよ。総理がそうやって開き直っていることが問題なんですよ。それこそがこの問題の根源なんですよ。

いや、総理が開き直って、なぜ問題なのかわからないとおっしゃるんであれば、それは一般の人がそう言うならいいですよ。しかし、あなたは日本国総理大臣 なんですから、わからないと言って開き直っているんではなくて、もし総理が信念を持ってみずからが靖国に行くべきだと考えているんであれば、そのことを ちゃんと理解させる責任があなたにはあるんですよ。それに対して異を唱えている人に対して、こういう考え方で行くんだ、そのことは問題ないんだということ を説得しなきゃいけないんですよ。説得もせずに、わからないと言って開き直っている。それは総理大臣のやることじゃありませんよ。

小泉内閣総理大臣 なぜ開き直っていると解釈するんですか。戦没者に対してどのような追悼をするか他の国が干渉すべきでないという私の答弁がなぜ開き直っているととられるのか、理解に苦しんでおります。

そして、今までに、私が靖国参拝するときにどう言っているか、よく調べてください。それは、二度と戦争を起こしてはいけない、今日の日本の発展というの は現在生きている人だけで成り立っているものではない、心ならずも戦場に行かなければならなかった方々のとうとい犠牲の上に成り立っているはずだと、そう いうことを考えると、戦没者に対して敬意と感謝の意を表するために靖国参拝に行っているんであると、もう何回も説明申し上げてあります。決して、軍国主義 を美化するものではないし、日本が軍事大国になるために行っているのではない。この平和のありがたさをかみしめよう、二度と国民を戦場に駆り立てるような ことはしてはいけない、そういう気持ちを込めて参拝しているということは何回も申し上げております。

岡田委員 総理、それがひとりよがりなんですよ。私は、日本国総理大臣として靖国に私自身が行くことはありません。そのことは何回も申し上げているとおりであります。

A級戦犯が合祀をされている。そして、そのA級戦犯合祀に当たって、A級戦犯を昭和の受難者だと位置づけて合祀している。その靖国神社に総理は行くべき でないと私は考えます。総理がどういう思いで行ったとしても、しかし、A級戦犯が合祀され、そしてそのA級戦犯が昭和の受難者として合祀されている。私 は、その一点をもって、靖国には総理として行くべきでないと思います。

総理、あなたがあなたの考え方を言われるのは結構です。しかし、それが相手に通じていないんです。通じてなければ、きちっと説明して理解させるのは総理大臣の責任でしょう。

小泉内閣総理大臣 これも、私は過去何回も答弁しているんです。A級戦犯のために参拝しているのではない、多くの戦没者に敬意と感謝の意を表したい、そういう気持ちから参拝しているのであって、特定の個人のために参拝しているものではございません。

私は、岡田代表が靖国に参拝しないということに対して別に批判するものではありません。それは岡田さん自身の考えでしょう。しかし、私が靖国神社に参拝 しているということは、今までも申し上げておりますように、多くの戦没者の犠牲の上に今日の日本の繁栄があるんだから、そういう戦没者に対する敬意という もの、感謝というものを決して現在でも忘れてはならないという気持ちから参拝しているわけでありまして、この点については何回も申し上げております。

岡田委員 それでは、現に、総理の靖国参拝を理由として、今、日中関係が極めて緊張関係にある、この事実は認めますね。どうですか。

小泉内閣総理大臣 それは、靖国参拝に対して意見の相違はございます。しかし、全般的な日中関係を考えますと、今までにない日中経済の交流は深まっております。交流も拡大しております。

私は、一時的な一部の意見の対立が、日中全体の友好関係というものを考えれば、そういう意見の一部の対立を乗り越えて、日中友好関係の重要性をお互いが認識すべきだと思っております。

そして、私が申し上げておりますように、私の靖国参拝に対する考えがひとりよがりだと言われましたけれども、なぜひとりよがりか、その批判も私は理解に苦しんでおります。

岡田委員 総理、日中関係はいいと言いますけれども、今いいはずがありませんよ。そこまで開き直ると、ひとりよがりじゃなくて、もう完全な開き直りですよ。

そして、そういう中で、先ほど総理御自身が言われた例えば常任理事国入りの問題、これは、日本としての国の利益、国民の利益のかかった重要な問題だと思 います。私は、野党ですけれども、この問題はいろいろなところでサポートしていきますよ。だけれども、幾ら努力しても、あるいは外交の現場でそれぞれが努 力したって、まだ中国ははっきりノーとは言っていませんよ、だけれども、日本が常任理事国入りするということについて、今の日中関係、日韓関係、そのきっ かけは総理の靖国参拝の問題です。この問題がきっかけになって、常任理事国入りの問題がますます難しくなっているじゃないですか。

あるいは、六カ国協議はどうですか。北朝鮮をめぐる六カ国協議、この問題は、もちろん拉致の問題の解決のためにも、そして核開発を何とかとめていくため にも、極めて重要な六カ国協議であります。しかし、北朝鮮に対して最も影響力を行使し得るのは中国。その日中関係がこれだけぎくしゃくしていて、もちろん 日本だけに責任があるとは私は言っていませんよ。だけれども、総理の靖国参拝の問題が一つの原因になっていることは事実、大きな原因ですよ。

そういう中で、常任理事国入りの問題とか北朝鮮をめぐる六カ国協議、首脳会談すらできないというこの現状、それに対して日本国総理大臣としてどう考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 首脳会談は、昨年十一月において胡錦濤主席とも行いましたし、その後、温家宝首相とも会談をいたしましたし、ことしになってから、四月においても胡錦濤国家主席としております。

私は、意見の一部の相違があるから全体の関係が悪いというふうにはとっておりません。また、一部の意見が違うから関係を悪くしようという気もございません。

この靖国参拝を殊さら取り上げておられますが、岡田代表は、靖国参拝がいけないというんですか、いいんだけれども、中国が言うからいけないというんですか、どっちなんですか。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にお願いします。

岡田委員 私は、まず、国民の皆さん、特に遺族の皆さんが靖国参拝をされるその心情はよくわかります。しかし、日本国総理大臣たる立場にある人が、A級戦 犯が合祀され、そして、それについて昭和の受難者とまで言っている靖国神社に日本国総理大臣が行くべきでないというふうに思っています。今、外国政府に言 われて行く行かないを決める問題ではありません。それはまずみずからが判断すべきです。ですから私は総理に判断を聞いているわけですよ。

今現に、これは日中間だけじゃありませんよ。この前シンガポールの首相にお会いしましたが、シンガポールの首相も非常に心配をしておられました。もちろ ん日韓関係もです。アジア全体が今、この問題をきっかけに日中関係がおかしくなるんじゃないか、そして、日中関係がおかしくなればアジア全体が影響を受け るということを深刻に心配しているんですよ。そのぐらい、今大きな波及効果がある。そして、日本自身にとっても、先ほどの常任理事国、あるいは六カ国協 議、拉致の家族の皆さん、そして核開発があれば、日本の安全保障にとって極めて大きな影響がある。

そういう大きな問題がたくさんある中で、総理として、総理の判断をみずからすべきじゃないか、全体をとらえて、それは総理の信条から見れば問題はあるか もしれないけれども、しかし、そこは総理大臣だからきちんと判断すべきじゃないか、そういうふうに申し上げているわけです。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、そうすると、靖国神社に参拝するのは悪くはないけれども、中国の関係を考えて、中国が好ましいと思わない、嫌だと言っているから行くなということなんですか。(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にお願いします。質問中です、静粛に。

岡田委員 総理、議論をすりかえないでもらいたいんです。

A級戦犯を合祀した靖国に日本国総理大臣は行くべきでない、それは自分の判断でそういうふうに決めることであって、外国に言われて決める問題じゃない、 私はずっと一貫してそういうふうに申し上げています。そして、総理、自分で判断しなさいと。そうじゃないと言うなら、中国や韓国、この靖国参拝に異を唱え ている国に対して、みずからの信念を語って説得しなさい。説得もしない、ほうり出して、何で問題になるかわからないといって言い放つ。

総理、その結果として、日本の国益は結局どうなるんですか。国民挙げて、あるいは外務省を先頭に、みんなが本当に努力をして、日本の国の利益、国民の利 益のために、北朝鮮との交渉、これをいかにしっかり運んでいくのか、あるいは常任理事国の問題、あるいは東アジア共同体をつくっていくために、やはり日中 関係、日韓関係、日本とアジアの関係がいかに大事か、そういう視点で大きな判断をすべきだということですよ。総理、そこがおわかりになりませんか。

小泉内閣総理大臣 私は自分の判断で靖国神社に参拝しているんですよ。他の国がいけないとかいいとか言っているから参拝しているんじゃないんです。自分の判断として靖国神社に参拝しているんです。その理由は再三申し上げております。

そして、中国の首脳とも韓国の首脳とも会談するたびに、靖国の問題が出るたびに、私は私の信条を説明しております。そして、日中関係、日韓関係の重要性も共有していると思っております。

岡田委員 総理、私は、総理の選択肢は三つしかないと思っているんですよ。先ほど来申し上げていることですが、一つは、みずからの判断で行かないと決める こと。そして二番目は、相手を説得し、総理の考え方を相手を説得する中で貫いていくこと。しかし、総理はいずれもやらないんです、今。単に放置をして、そ の間、国の利益がどんどん失われていく。そうしたら、三番目の選択肢しかもうありませんよ、総理。それは、総理が日本国総理大臣をやめることですよ。もう そこまで大きな話なんだということ、日本の国の利益がかかっている話でもある、日本の将来がかかっている話でもある、そういう認識はありませんか。

〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 それは、私は理解できないんですね。靖国に参拝しなければ中国との関係がよくなる、中国との関係を考えると、中国が靖国参拝というものに対して不快感を持っていると言うから私に退陣せよという議論とどうして結びつくのか。

岡田さん自身が靖国に参拝しないということは、私は批判いたしません。中国が靖国に参拝するのを不快感を持つということも、別に私はそういう考えである ということは理解しております。しかし、今の議論を聞いていると、総理大臣の職務として参拝しているものでない、私の信条から発する参拝に対して他の国が 干渉すべきではないと思っているんです。

そして、これはやはり信条の自由というのがありますから、心の問題ですから。そういうことを考えて、私としては、そういう心の問題にまで他の人があれこれ言うから……(発言する者あり)

渡海委員長代理 御静粛に願います。

小泉内閣総理大臣 どうかということを考えるよりも、自分自身の判断で考えるべき問題ではないか。これが、総理大臣を退陣しなきゃならないというふうには考えておりません。

岡田委員 総理、揚げ足をとるつもりはありませんが、言葉をもう少し正確に言われた方がいいと思います。

例えば、信教の自由の問題だとおっしゃいました。憲法の保障する信教の自由というのは、国家権力が個人に対して特定の宗教を強制しないということであっ て、日本国総理大臣が、おれは信教の自由があるんだから、そういう話は全く憲法というものがわかっていないんじゃないかと私思うんですよ。

とにかく、いろいろな意味で粗過ぎるんですが、私がお願いしたいことは一つ。この事態を放置すれば、日本の重要な国の利益、国民の利益、国益が失われる 状況にある。それを打開する責任は、少なくとも日本国総理大臣としてのあなたにあります。どうやって打開するのかを教えていただきたい。

小泉内閣総理大臣 日本としては、日中間の交流を拡大していき、なおかつ経済の依存関係もますます深まっております。そのような日中の友好性というのは、 両国、認識を共有しておりますので、そのような点について、お互い理解を深めていく必要がある。そういう中で、今後の、日中間の協力はもとより、国際社会 の中での協力も考えていくべきではないか。

一時的な意見の相違があったとしても、将来を展望すれば、日中関係の重要性というのはお互いよくわかっていると思います。そういう中で、今後、話し合い、また交流を重ねていく必要があると思っております。

岡田委員 総理、本当に今日本の国の利益がかかっているんですよ。北朝鮮の核武装、どんどん準備進んでいるじゃないですか。あの拉致家族の皆さん、どうで すか。そういった問題について、総理としてきちんと解決する責任がありますよ、総理。あるいは、東アジア共同体ということを総理も言われるけれども、日中 がお互いいがみ合って、東アジア共同体なんてできませんよ、そんなもの。

そのことについて、総理がみずから打開していく責任があるんです、総理大臣ですから。その自覚がないんなら、もう一回言います、総理、やめるべきです、あなたは。

小泉内閣総理大臣 その自覚がないならやめるべきだという岡田さんの意見は意見として承っておきます。

しかし、信教の自由のために私は靖国参拝しているんじゃないんですから。心の問題だと。心の問題と信教の自由という、宗教と違います。私は、神道を奨励するために靖国神社に行っているんじゃありません。その点はよく考えていただきたい。

そこで、繰り返しますが……(発言する者あり)

渡海委員長代理 御静粛に願います。

小泉内閣総理大臣 戦没者に対してどのような追悼をするか他の国が干渉するべきでないということに対して、岡田さん、ちっとも答弁しません。これが本当にいけないんですか。(発言する者あり)開き直りだと言っておりますけれども、そう思わないんですか、岡田さんは。

渡海委員長代理 御静粛に願います。

委員各位に申し上げます。質問も聞こえません。御静粛に願います。

岡田委員 総理、私は申し上げているじゃありませんか。戦没者に対してどういう形でそれを弔うかということは、それは日本が決めることです。しかし、ほか の国が意見を言うことはできます。これは内政干渉ではありません。意見を言うことはできます。しかし、決めるのは私であり、総理御自身です。そのことは はっきり申し上げているじゃありませんか。しかし、現実、いろいろな問題がこのことに端を発して起きているときに、それを解決する責任も同時にあなたにあ ると申し上げているんですよ。

だから、どういう解決の仕方があるか、私は二つ申し上げましたけれども、私はあなたに、靖国に行くのをやめるべきだと一回も言っていませんよ。自分がそ の解決策を見つけるべきだ、その責任があなたにあると言っているんですよ。それがない。このまま放置する。それはいつかはなんて言われますが、本当に今重 要な局面で、日本にとって、日中関係、日韓関係あるいはアジアの関係、そんな時間はないんですよ。だから私は、それならあなたはやめるしかないというふう に申し上げているわけです。

小泉内閣総理大臣 今、岡田さんは私に対して、靖国神社参拝をやめろとなんか言っていないと言われた。そして、どのようなこれからの日中間の関係を考えて いるかということでありますので、私は、一部の意見の対立があっても日中の友好は重視だということで、これからいろいろな分野において協力していこうとい うことで、胡錦濤国家主席とも話し合いの中で共通の認識を持ったわけでありますので、経済の交流のみならず、文化、スポーツ、あらゆる分野において友好協 力関係を深めていくような話し合いをこれからも進めていきたい。

さらに、国際社会の中でも、国連改革のみならず、北朝鮮の問題につきましても今協力を進めております。そういう中でお互い話し合いをしていく必要があり ますし、将来、時間をかけても、私が日中友好論者であるということをよく理解していただくように、これからも努力をしていきたいと思っております。

岡田委員 私が申し上げたのは、総理御自身がみずからの信念を貫いて、そして、そのことについてアジアの国々に説明をして理解をされる、それだけ説得する 自信があるのなら、それも一つの考え方だ、一つの答えだと申し上げたんです。しかし、それができないのなら、それは総理御自身が行かないか、やめるかしか ないんですよ。そのことを私は申し上げているわけです。できないんじゃなくて、もしできるというのならやってくださいよ。しかし、総理はずっと言いっ放し じゃないですか。それは日本国総理大臣としてとるべき態度じゃないということを申し上げているわけであります。

次に、郵政の問題について質問をしたいと思います。

総理、郵政の民営化ですが、先ほども質問が出ていろいろ言っておられました。簡潔に答えていただきたいんですが、何のために民営化するんでしょうか。ま だ国民の多くはそのことがわからないと言っている。私たちもわかりません。何のために民営化するのか、簡潔に答えていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 まず、この郵政の改革というもの、これは国民の利便の向上、そして経済の活性化、行政改革、財政改革、そして物流改革等、広い分野でこの郵政民営化は資すると考えております。

なおかつ、民間にできることは民間にということについては民主党も賛成していたはずであります。郵便局の仕事は本当に国家公務員じゃなきゃできないんで しょうか。私はそうは思いません。そういう点から考えて、そもそも論に反対だという、公社のままがいいという民主党の考え方については、私はむしろわから ない、民間にできないと思っているのかどうか。

私は、民間人で郵便局の経営はできると思っておりますし、四十万人も国家公務員がやる仕事か。民間人の方でも、現在でも郵政事業に携わっている民間の会 社があるわけですから、そういう点を考えて……(発言する者あり)約二十七万人の常勤公務員と短時間公務員を入れると、十二万ですから、合わせて約四十万 人の国家公務員がこの事業に携わっているわけであります。四十万人ではないだろうというやじがありましたから、よく説明しておきます。約二十七万人の常勤 国家公務員と短時間の公務員十二万人、これを合わせると約四十万人の国家公務員がこれに従事している。

民間人になれば、公務員がやる必要はなくなる。ほとんど民間人になる。そして、今の三事業しかやれない分野において、民間の経営者になり、民間会社になれば、それ以外の仕事も拡大できる、そして国民のサービスも向上していく。

私は、そういう観点から、この郵政民営化というのは大改革であると思っておりますし、できるだけ、必要な仕事は公務員がいいという考えを持つ人なら反対 はわかりますけれども、民間にできることは民間にという主張を展開していたはずの民主党が、あえてこの公社のままがいいという反対理由は、いまだに理解で きないんです。

岡田委員 総理、まず申し上げておきますが、公務員でなくするために民営化するというのは、これは極めておかしな議論ですよ。

例えば、公社のままでも、公務員であるという選択もありますし公務員でないという選択もあります。民営化しなければ公務員であり続けなきゃいけないとい うことも必ずしもありません。現に、国鉄や電電は公務員ではありませんでした。独立行政法人も、公務員型の独立行政法人と非公務員型の独立行政法人があり ます。ですから、公務員でなくするために民営化するというのは、私は本末転倒の議論だというふうに思っています。

そして、総理がいろいろおっしゃった中で、民間であればいろいろ多様なサービスもできる、いいサービスができる、一般論としてはそのとおりです。だけれ ども、現実を見きわめたときに、今の郵政公社を本当に民間に持っていってビジネスモデルとして成り立つのか。私は、それは成り立たないと。そして、その結 果何が起こるかといえば、官の肥大化が起こる、そういう結果に必ずなる。だからそういったことはすべきでない、公社のまま改革を進める、まずそこに重点を 置くべきだ、そのことを申し上げているわけであります。

具体的に申し上げましょう。

その前にまず、総理が昔から郵政民営化を言っておられて、昔言っておられたのは、私はそれなりに合理性があったと思うんですよ。郵貯、簡保で集めたお金 が財投資金に直流して、そこで特殊法人、いろいろなむだなことをやってきた。それをやめなきゃいけない、とめなきゃいけない。その時代は、僕は総理の言っ ておられることにかなりの理屈の通っていた部分もあったと思います。

しかし、今や制度は変わりましたよね。したがって、郵貯、簡保で集めたお金を、例えば、二〇〇〇年からこの五年間で郵政公社の持つ国債は五十兆ぐらいか ら百五十兆近くまでふえています。つまり、総理が政権の座にある間にそれだけ国債の保有がふえた。その中には財投債も入っている。財投債というのは、特殊 法人が活動するための国が保証したお金ですよ。つまり、総理自身が特殊法人に対してどんどんそれを支援してきているんじゃないですか。

公社が国債を買うべきではない、財投債を買うべきではない。そして、個々の特殊法人は基本的には廃止をするか民営化する。どうしても残すものがあった ら、それは財投機関債をみずから発行してやっていく、財投債は発行しない。そうすれば、そこで完全に切れちゃうわけです。

総理がどんどん郵政公社に財投債を含む国債を引き受けさせているから、今の特殊法人のむだ遣いが続いているんですよ。そこの認識はないんですか。

小泉内閣総理大臣 郵政公社の保有している国債が大量である、これは問題であるということはおわかりだと思います。だからこそ、将来、時間をかけて、急に ということじゃありません、二〇〇七年四月から始まって、移行期間を設けます。そういうことによって、郵貯、簡保が集めた資金というものは、今まで、安全 を重んじますから、国債を保有せざるを得ないでしょう、安全を考えるならば。しかし、それで果たして民間に資金が還流されていくかというと、そうはならな いと思います。公社だからこそ制限があるんです。

官の分野、特殊法人の分野、これがだんだん直ってきます。もう既に二〇〇一年から始まって、二〇〇七年には預託廃止の問題についても終局を迎えます。そ うなりますと、公社の郵貯、簡保資金の運用というのは、それは経営者の判断にもよりますが、より有利な活用を始めるでしょう。安定かつ有利な運用をすると いうのは、役所、公務員がやるよりも、私は民間人に任せた方が発展の可能性は多いと思います。

今までの道路公団の改革とか、住宅金融公庫の改革とか、あるいは特殊法人を独立行政法人にするとか、年金福祉事業団の廃止とか、いろいろ、特殊法人とい いますか、出口の方の改革もしてまいりました。これからも続けていかなきゃなりません。しかし、その資金を賄ってきた入り口の郵貯、簡保のこの入ってきた 金というものを、民間になれば、それは採算も考えるだろう、有効性と将来の負担というものも両方考えなきゃならない。

そういう点を考えれば、公務員が運用するよりも民間人に任せた方が、いろいろなサービス事業も展開されるし、成長分野にその金は行き渡っていくであろう という観点から、私は、今まで官の分野の改革が必要だと。民主党も提言してきたんじゃないでしょうか。私は、そういう方向性として、官の分野に集中し過ぎ るお金を民間の分野に流していこうということを考えても、本来だったらば、民主党はこの民営化に賛成していただけるのではないかと期待していたんです。そ れが、郵政公社のままがいい、民営化に反対だということについては、多少残念に思っているんです。

もし、この政府の民営化に反対するのだったらば、今まで民間にできることは民間にと言ってきたんですから、違う民営化の案があったのなら、違う民営化を 出していくのなら、まだ話し合いの余地があります。しかし、相も変わらず、公社のままがいい、郵政三事業は国家公務員がやった方がいいんだという考え方 は、我々とは見解を異にしております。

岡田委員 繰り返しますけれども、今や入り口と出口は切れているんですよ。それをつないでいるのは、総理自身の、政府の意思なんですよ。だから、それは、 財投債を発行させないということにすれば、そこで切れるんですよ。それだけのことなんです。それをやってこなかったのがあなたなんですよ。百兆円も国債の 引き受けはふえているんですよ。

では、次に移ります。

民間でできることは民間へということですが、今度の法案を見ると、日本郵政株式会社、つまり持ち株会社です、ここには国の出資が三分の一以上入るという ことになっていますね。つまり、これは特殊会社ですよ。純粋民間会社じゃありませんよ、特殊会社。そして、その一〇〇%子会社としての郵便事業会社と郵便 局会社がある。つまり、これは民営化じゃないじゃないですか。特殊会社じゃないですか。

私が特に違和感を感じるのは、国の資本がずっと三分の一以上入り続けるこの特殊会社がどんどん事業を拡張する。株式の売買もやる、投資信託も販売する、 生保の商品もやる、損保の商品も扱う、果てはコンビニの経営もする、そして不動産のリフォームの仲介もやる。今までやっていなかったことを新たに始めるわ けですよ。これが官の肥大化じゃなくて一体何なんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、政府が株式を所有しても、民間と同一条件のもとで、また税負担等も公平なもとにおいて事業は展開していかなきゃなりません。政府が株を持っているから民営化と言えないというのは、誤解じゃないでしょうか。

NTTは政府が株を所有しております。NTTの関連会社も政府が株式を所有しております。しかし、国民も企業もこれは民間会社と思わないかというと、そ うじゃありません、民間会社と思っております。そういう点から、政府が株式を持っているからということで民間会社じゃないというのは、そうではないんじゃ ないでしょうか。

岡田委員 今の郵便局というのは、大きなハードも持っていますし、郵便事業という、民間も一部参入はあるにしても、基本的に国家が担わなければいけない事業をやっている。そこがいろいろ手を出すことの問題を言っているわけですよ。

では、お聞きしますけれども、その郵便局で貸し付けもやりますね。これは、同じ郵便局の窓口で貸し付けもやり、そういったいろいろな損保、生保の商品の 販売もやる。他業禁止という規定が銀行法十二条にありますね。それとの関係はどうなるんですか。つまり、金も貸すし、いろいろな金融サービスもどんどん扱 うということになると、今の銀行法で規制している、つまり、お金を貸す、そういう優越的な地位にあるところがいろいろなことに手を出すと、お客の方もなか なかノーと言えませんから、そういうことについてきちんと規制をしていることとの関係をどう整理されているんですか。

小泉内閣総理大臣 これは移行期がありますから。

郵政が今のままではそういう事業はできません。また、銀行法の関係もあります。そういう点は整合性をとるように、この法案が成立した後に、矛盾がないような規制を改革していきたいと思っております。

岡田委員 総理、申しわけないけれども……(発言する者あり)関係ありません。関係ありません。具体的に、どういう措置を講じようとしているのか言ってください。総理に聞いているんですからね。

小泉内閣総理大臣 それは、どのような事業を展開するかについて、私は経営者じゃありませんから判断するような知識はございませんが、国民の利便に資するような対策はしなきゃいかぬと思っております。

岡田委員 国民の利便という名のもとに、今までの法律の、銀行というものは、その存在が優越的な地位もあるから、いろいろなことができないようにするとい う仕組みの問題とか、そういったことを全部取っ払って、できるような仕組みになっているんじゃないか。あるいは、住宅のリフォームというのは、基本的に中 小企業の分野ですよ。これを、三分の一、巨大な税金の入った会社がやっていくということが本当にいいんですか。

そしてもう一つ言うと、採算の見通しもあるんですよ。

例えば、コンビニは売り上げの一〇%の利益を上げることになっているんですよ。だけれども、御存じのように、今日本のコンビニで最もいいセブンイレブン でも、売り上げの六%台ですよ。そのほかはみんな三%台です。そういう中で、非現実的な数字を出して、これで成り立つ、成り立つと言って、結局は成り立た なくて、最後は、これは全部税金で穴埋めをしなきゃいけませんよ。そういう非現実的な民営化は意味がないというふうに私は申し上げているんです。

小泉内閣総理大臣 その点は全く見解が違います。

それは、コンビニの経営については岡田さん、はるかに知識が深いから、私はどうだとは言いません。しかしながら、現在のままでも官業が肥大化しているんですよ。それをそのまま温存していてはいけないからこそ民営化しているわけであります。

私は、郵政公社がこれから成り立っていけるような民営化案を考えているわけでありますから、その点について、将来確実にこうなるというのは、それはだれ だって、占い者じゃありませんから、一〇〇%予見することはできません。国家公務員がやっていれば確実に大丈夫かといえば、そうでもないんです。民間の経 営者がやっていれば必ずうまくいくかということは、そうでもないんです。お互い努力しなきゃ、国営だろうが民営だろうが、発展しないのは言うまでもありま せんが、私は、郵政公社が民間の会社になって十分成り立っていけるような改革案を今示しているわけであります。

〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

岡田委員 総理、郵貯、簡保で三百四十兆、国民の総資産の四分の一以上という極めて大きなボリュームのお金をどうするかの問題なんです、これは。ですか ら、ギャンブルはできないんですよ。ビジネスモデルとしてちゃんと成り立つということを示してもらわないと。これは最後はどうなりますか。そういった国民 の資産が失われるんですよ。あるいは、それを助けようとしたら、もう一回税金投入して、そしてそれを助けなきゃいけないんですよ。そういったリスクが非常 にある中で、私はとてもそんなリスクはとれないということを申し上げているわけですよ。

では、もう一つ言いましょう。

銀行がありますね。これは一〇〇%民営化するというお話だ。しかし、示された数字だと、二〇一六年に銀行の資金規模が百四十兆円、利益を六千億円弱出 す、こういう想定になっています。そのうち、リスクマネー、貸し付けやあるいはシンジケートローンその他新規業務で三十五兆円運用して三千二百億円の利益 を上げる。

では、この三十五兆円のリスクマネー、例えば貸し付け、まあ、すべてが貸し付けじゃないというお話もあったけれども、しかし、どうやって、どこに貸すんですか。

三十五兆円という規模がいかに大きいかということは、例えば東京三菱銀行の貸出金の規模が三十五兆、三井住友銀行が五十兆、こういうことですから。そう いう中で、それと同じぐらいの規模のお金を、今ゼロからスタートして、取引先もありません、そして専門家もいません、ノウハウもありません。十年後に今の メガバンクと同じぐらいの貸し付けをするというのは絵そらごとじゃないですか。そんなリスクはとてもとれない。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 絵そらごととは思っておりません。一挙にやるんじゃないんですから。だからこそ移行期間を設けているんです。その移行期間の間に、そのような体制がとれるような準備をしていかなきゃならないと思っております。

それを、郵政公社のままでやるというよりも、民営化の方がはるかに大胆で画期的じゃないですか。私は、公社のままでいいというよりは、もっといろいろな 事業が展開できる民営化会社にした方が国民のサービスにも資する、そういう観点から民営化を考えているのであって、今の膨大な郵貯、簡保、約三百四十兆円 に上る資金が一挙に民間に流れるとは思っておりません。

しかし、民間の経営、民間会社になれば、それは私は、必ず民間の分野に流れていくもの、またそのような方向になっていくというのは今までの民間の会社の例を見ても明らかだと思っております。

岡田委員 総理、ちょっとよく考えてもらいたいんですが、移行期間というのは十年ですよね。銀行が、さっき言った同じようなメガバンクは、信頼関係をつ くって取引先を開拓していく、お互い何十年もかけてやっていくわけですよ。それでようやく三十兆とか四十兆の貸付規模を今つくってきているわけですよ。そ れを十年で、ゼロからスタートして、どうやってやるんですか。どこにお客さんがいるんですか。結局、それが絵そらごとだというふうに私は申し上げているわ けです。何かありましたら、どうぞ。

小泉内閣総理大臣 できない、できるというのは、それはそれぞれ意見があるでしょう。住宅金融公庫だって、廃止できないというのが廃止できたんですから。民間になんか住宅金融公庫の商品は開発できないというのが、民間金融機関は開発したんですから。

私は、見解によって違うのは悪いとは言いません。そういう見解もあるというのは承知しておりますが、私は、十分移行期間をとって、そのような国民のいろいろな要望にこたえるような対応はでき得ると思っております。

岡田委員 総理、ひとりよがりにならずに多くの人の意見に耳を率直に傾けていただきたいと思います。今、だれも総理に対して間違っていると言えないんです よ。だから、民営化を前提にすればこういう絵しかかけない、そういう議論が今進行していて、しかし、その結果として、国民の重要な資産三百五十兆円が毀損 される、失われる、あるいは税金でそれを救おうとして再資本注入になって、一〇〇%民間に瞬間ではできても、また資本注入をして救わなきゃいけない、そう いう形になるリスクが非常に高いと思うから、この民営化は私は認められないと申し上げているわけであります。

最後に、もう一点だけ聞いておきます。

総理、この郵政法案、自民党の中で党議拘束がかかっている、かかっていないという議論がありますが、基本的にかかっていないというふうに総務会長が言っていますが、そういうことですね。

小泉内閣総理大臣 我が党の中での問題でありますが、普通、党議拘束の場合は、かかっていないというときにあえて言うんです。言わないときは党議拘束がかかっているというのが慣例だと聞いております。

この問題は、そういう党議拘束がかかっている、かかっていないとか言うまでもなく、自民党議員は良識を持って、最終的には賛成してくれると思っております。

岡田委員 かかっていないと言わない限りはかかっているというと、総理の認識はかかっているという認識ですね、これは。しかし、総務会長は、総務会にか かったのは、国会に出すということについて了承をとったのであって、中身までは了承をとっていない、したがって、改めて党議拘束をかけることが必要にな る、こう言っているんです。

もう一回聞きます。党議拘束はかかっているんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、国会運営は幹事長や国対委員長に任せておりますし、岡田さんも、民主党内のことでは、国会運営のことについてはとやかく細かいことまで指示は出さないと思うんですね。

私は、国会に提出されたからには、最終的には、党内で異論があっても、この政府の法案に、党議拘束かかる、かけない以前に、自民党議員の個々の良識に従って賛成してくれるものと思っております。

岡田委員 終わります。




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