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2005.06.22|国会会議録

決算行政監視委員会 平成17年06月22日

細川委員長この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。松本君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

岡田委員民主党の岡田克也です。

きょうは、決算委員会、私は、日韓関係あるいは子育て支援、年金などについて総理と意見を交わしたいと思っております。

最初に、いつものことですが申し上げておきたいと思います。官房長官、厚生労働大臣がお座りいただきましたが、私は呼んでおりませんので、答弁は総理に求めたいと思っております。

さて、きょう六月二十二日は日韓国交正常化四十周年、記念すべき日だと思います。四十年を振り返りますと、決して平たんな道ではありませんでした。それは 過去の日韓関係、例えば創氏改名、神社強制を初めとする日本の朝鮮半島支配のそういった歴史を考えれば、わだかまりがすぐには解けなかったのはいわば当然 だと思います。

しかし、今、日韓関係は、民間のレベルでは大きく変わってきた。それは、先ほど総理もこの場でお話し になったとおりであります。ワールドカップの日韓共催、我々日本人も韓国の選手のプレーに対して拍手を送りましたし、韓国の国民の皆さんも同様に日本チー ムに対して声援をしてくれました。あるいは最近の韓流ブーム。日本男子としては、日本の女性が韓国の男性ばかりに関心を持たれるのは少し残念な気もします が、しかし、韓国でも日本のアニメとかいろいろな大衆文化がもてはやされております。

私は、大きく変えたのは一九九 八年だったと思うんですね。時の日韓のリーダーがやはり大きな役割を果たしたというふうに思っています。小渕首相と金大中大統領です。日韓共同宣言を出し ました。そして、金大中大統領の国会における演説を、私は非常に大きな感動を持って聞いたのを今でも覚えております。わずか五十年の悲しい歴史をもって千 五百年の日韓間の協調、交流のその歴史を否定するとしたら、それは愚かなことだ、過去を直視しながら、しかし未来志向で行こうと。

私は、金大中大統領が日本の国会であれだけ言うには、かなり政治家としてのリスクはとったと思います。韓国の国内にはいろいろな意見が当時もありました。 しかし、そういう中で、共同宣言を出して、お互いがいい方向に流れをつくった。私は、小渕さんと金大中大統領がリーダーシップを発揮して、そしてこういう 流れをつくり出したというふうに評価をしております。

それと比べますと、一昨日の日韓首脳会談は、私は本当に寒々と したものだったと思います。もちろん、韓国側にもさまざまな問題、責任があるというふうに私は考えております。しかし同時に、小泉総理にも責任がある。日 韓首脳会談でいろいろ意見交換できたことはよかったと先ほど言われましたが、実際には、お互い合意したのは、あらかじめ事務方がまとめたペーパー、文書に ついて十分ぐらいかけて確認しただけ、後はずっと、話し合いをしたけれども何も合意がなかった。そういう意味では私は成果がなかったと思いますが、総理は いかがお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 まず、日韓問題について答弁する前に、民主党岡田代表に抗議したいことがございます。

去る六月十九日ですか、議員小泉純一郎君を懲罰委員会に付するの動議、右の動議を提出する。私、何で懲罰されなきゃいけないのか。

聞くところによりますと、私が先週の、延長を決める国会の投票において、酒を飲んでいた、酒気帯びだというような理由で、いいかげんだと厳しく批判され ているようでありますが、私は先週のあの本会議、八時五十分から、夜始まったんですが、あの日は酒、アルコール、一滴も飲んでいないんですよ。そういう、 何も確かめもしないで、でたらめな、無責任な、しかも懲罰委員会に付するというのを、どうして民主党、公党というものがあんなでたらめなことをするのか。 強く抗議したいと思います。

その上で、日韓の首脳会談でありますが、私は、盧武鉉大統領との間で意見の相違もある、歴史認識についても同じ意見とは思えない点も随分ある、しかしなが ら、そのような相違や一部の対立の問題があったとしても、そこで今までの友好関係、交流関係をストップさせていいのだろうか、そうじゃない。

去る日曜日、硫黄島に伺いまして、追悼式典に出席して、日本軍兵士、米軍兵士の霊に対しまして追悼の念を持って式典に参加したわけであります。遺族の方々 もお見えになっておりました。六十年前に、あの小さな島に、日本軍兵士、二万人以上の兵士が亡くなった。生き残った兵士はわずか千名、そういう激戦地。ア メリカ兵も、七千名近くが亡くなり、負傷者を合わせると二万名を超える。両軍四万数千人の死傷者を出した激戦中の激戦地、悲惨な地域であります。しかし、 六十年たってみて、お互い敵対をした、敵国であった米国と日本は、今同盟国として友好関係を維持している。そして、日本国民も米国民も、戦争をしましたけ れども、遺族の方々でも、二度と戦争を起こしてはいけないということで、友情関係を持って仲よくいろいろな仕事なり交流を深めている。

そういうことを私は盧武鉉大統領との会談でも申し上げまして、いかに戦争がむなしいものであるか、これから十年、二十年、三十年、日韓の将来を考えてみて も、たとえ今の時期において相違や対立が一部にあったとしても、将来、この一部の違いのために友好の流れをとめるようなことをしてはならない。そういう日 韓の友好の重要性、そのために、その対立なり相違を乗り越えて、今後も日韓友好交流の発展、拡大のために努力しようという共通の認識を持てて、実りある率 直な会談だと私は思っております。

岡田委員総理、硫黄島のことは私聞いておりません。なるべく簡潔に、聞いたことを答えていただきたい、時間稼ぎをしないでもらいたい、まずそのことを申し上げておきます。

そこで、先ほど総理が言われたことについて、私から反論しておきます。

あのときに本会議場で、我が党の議運から自民党の議運に対して、今津議員とそして小泉総理と森前総理の三名が顔が赤く見える、酒気帯びではないか、確認 してくれ、こう申し入れたところ、わかりましたと言って一たん引き受けながら、今津議員については確認したけれども、森前総理と小泉総理については確認し なかった。

だから、確認しないでとおっしゃった、違うんです。我々は確認したけれども、答えを出さなかったわけですよ。そういう経緯があったということ、その上で我 々は議運に対して懲罰動議を出したということを、総理はよくその経緯も理解された方がいいと思います。(発言する者あり)

細川委員長お静かに願います。

岡田委員 ちなみに、我が党の全く関係のない三名の議員に懲罰動議を出したのは、それは自民党なんですよ。本会議場では全く指摘もせずに、後になって出し ているじゃありませんか。そういういいかげんなやり方でお互い打ち消してもみ消そうとしている、そういう古い自民党のやり方に対して厳しく抗議しておきま す。

さて、今総理はいろいろ言われましたが、私は予算委員会の場で総理に申し上げました。靖国に行くのは、それは不 戦の誓いで行くのであって、なぜ批判されるのかわからないと総理は言われた。だから、私はそれに対して、もし総理が信念としてそう思われるのなら、それは 中国や韓国の首脳に対してその信念を述べ、説得する責任があると申し上げました。しかし、結局相手方は全く納得していないわけですよ。歴史問題の核心が靖 国問題、こう言っているわけです。つまり、お互いが納得しない状態がまだ続いています。

総理は、いつまでこの状態を続けるつもりですか。これから総理の任期の一年間、こういう状態で日韓関係が続いていって本当にいいと日本国総理大臣としてお考えですか。述べていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 答弁する前にあえて言いますが、私が酒を飲んでいたなんていうのは全くでたらめですけれども、確認したということも聞いていません。

当日、私も本会議場に出席しておりましたけれども、全然、小泉さん、酒を飲んでいるかなんて聞かれたこともありませんし、飲んでいると指摘されたこともあ りません。第一、私は一滴も飲んでいないんですから。そういうことも確認もしないで、懲罰動議を出して、けしからぬ、けしからぬと。どっちがけしからぬで すか。これは、実に、確認もしないでこういうでたらめを言うということの方が無責任で、私はけしからぬと思っております。

今の質問ではございますが、私は、日中関係、日韓関係、私の靖国神社参拝が核心だとは思っておりません。核心は、日中、日韓ともに、未来志向で、過去の歴史も直視しながらいかに発展させていくか、友好関係を重視していくか、これが核心だと思っております。

岡田委員確認しないというふうに先ほど総理おっしゃいましたが、それは自民党の議運が確認しなかったんです、あなたに。確認すると約束をしながらしていないんですよ。そのことを申し上げておきたいと思います。

さて、今、総理は、靖国問題は核心でないと。それは総理はそう思っておられるでしょう。しかし、韓国側はそう思っていないわけですね、盧武鉉大統領はそう 思っていないわけであります。だから、そういう中で、今、日韓関係がこういう状態を続けていって本当にいいのか、日本国総理大臣としてそれで、そういう状 態を放置していいのかということを聞いているわけです。

あなたは、日本国総理大臣として日韓関係をしっかりつくっていく責任があるわけです。もちろん、相手にいろいろ、非もあるかもしれません。私はあると思う。しかし同時に、日本国総理大臣として、今の状態を放置できない。

例えばこの前の首脳会談で、大事な話はほとんど何も合意できていないじゃありませんか。六カ国協議について、アメリカと韓国と日本で連携していこうという 型どおりの合意はしたけれども、しかし、六カ国協議、間もなく始まるかもしれない。もっと突っ込んだ議論があってよかった。核開発に対してどう対処してい くか、そういうことについて議論できていないじゃありませんか。いかがなんですか。

小泉内閣総理大臣 北朝鮮の問題につきましても、熱心に率直な意見を交換いたしました。

北がどう思っているか、また盧武鉉大統領がどう思っているかということは、相手の立場がありますので公表すべきではないと思いますが、極めて率直な意見交換を行いました。

そして北朝鮮に対しては、日本と韓国とアメリカが、今後よく協議をし、協力していかなきゃならないという点におきましても一致しております。さらに、この北朝鮮の問題に対しましては、平和的解決、外交的解決しかない、そういう点でも一致していると思います。

表に出せない話もいろいろありますが、私は率直に盧武鉉大統領の考えを聞かせていただいたと思っておりますし、私も率直に私の考えを伝えました。

岡田委員外に出せないということで、本当にそういう話があったのかどうか。私はなかったと聞いておりますが。

では、常任理事国入りの問題はどうですか。常任理事国入りの問題について、何か韓国側に言われましたか、総理。これは向こうが何か言ったじゃないです。総理はどう言われましたか。具体的に教えてください。

小泉内閣総理大臣 首脳会談の場において、常任理事国の話はいたしませんでした。

岡田委員韓国が日本の常任理事国入りに対して反対をしている、そのことに対してどうして総理は議論しなかったんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、外務大臣と外交担当者と、それぞれ意見交換をしております。

限られた時間でありますし、いろいろな問題もありますし、どういう点を話すかということについては、その中でのいろいろな議論の展開次第であります。

岡田委員総理が日本の常任理事国入りをあきらめたのなら別です。しかし、これを何が何でもやっていこうというのであれば、私はやるべきだと思いますが、やはり韓国に対してもきちんと総理みずからの口で説明するのは当然じゃないですか。

そして、きょうの報道によれば、昨日、韓国と中国の両国の首相が会って、そしてG4の提案、これに対して反対していこうということをまた確認しているじゃありませんか。

どうして首脳間でこの問題についてしっかりと議論しなかったんですか。少しでも歯どめをかける、これは総理としての責任じゃないですか。

小泉内閣総理大臣 それは、人それぞれ考えがあります。

岡田さんが首相ではないんですし、盧武鉉大統領でもありません。何を話せばいいかというのは、私が首脳会談で判断すべき問題であります。

岡田委員総理、だからその判断が誤っているというふうに私は申し上げているわけですよ。それほど常任理事国入りというのは大事じゃないんですか。私は、日本の国益、国の利益、国民の利益にとって非常に重要な問題だと思いますよ。

では、東アジア共同体構想については何か話しましたか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 将来、東アジア共同体の話はどうしようかということは、常に話し合っております。

岡田委員どうしようかとは、具体的にどういうお話を総理はされたわけですか。

小泉内閣総理大臣 具体的に話を申し上げる必要はございません。

岡田委員 想像されるのは、結局、日韓首脳会談は、私の聞いているところ一時間半、それからその後食事で二時間、三時間半ぐらいお話の機会があったと思う んですが、そういう中で、常任理事国入りの問題や東アジア共同体といった前向きの話や日本の国益にかかわる話が全然できていない。

結局、日韓の間の信頼関係がない中で、そういう話すらできないということに対して総理はどうするんですかと私は聞いているんですよ。このまま一年間こんな 状態で、本当に日本の国民の利益、国の利益は、それは損なわれるんじゃないですか、そこを日本国総理大臣としてどう考えておられるんですかということを聞 いているわけです。答えていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、国によっては全部意見が一致するものではないと思っています。一部に意見の違いがあったから損なわれているというのは、余りにも短絡的な見方だと思っております。

一時期の意見の相違や対立があっても、将来、友好発展が大事だという共通の認識を持っているわけであります。韓国の言うとおりに全部しろとか、中国の言う とおりに全部しろというような考えを私はとっておりません。日本には日本の考え方があります。そういう中で、相違なり違いを認めて友好増進を図っていくと いうのが、国と国として大切なことではないでしょうか。

岡田委員もちろん、それぞれの国にはそれぞれ利害がありますから、対立点があることは当然です。ですから、そういうものを話し合いによって乗り越えていかなきゃいけないんです。

今の小泉総理の発言は、私は物すごく最近気になるんですよ。私は、すべて中国の言うことを聞く、韓国の言うことを聞け、そんなこと一言も言っていません よ。あなたがそういう言い方をわざとして、国民の狭いナショナリズムをあおっているんじゃないですか。そういう手法は、日本国総理大臣として絶対とるべき じゃないんですよ。そういう形で国民のナショナリズムをあおって、みずからの支持を上げようとしている。そういう人が総理大臣になるということは日本に とって大変大きな問題だ、そのことを私は申し上げておきたいと思います。

そもそもこの靖国の問題は、私は四年前を思い出しますよ。自民党総裁選。たしか、ある討論会の場だったと思いますが、司会者が、靖国神社に参拝するかどうかと質問をしました。当時の実質的な候補者は、橋本さんとそして小泉さんの二人です。

橋本さんにまず質問が行きました。橋本さんはたしか、私の記憶に間違いなければ、当時は遺族会の会長です。橋本さんがどう答えるか、私は注目しました。口 ごもりました。そして、行くとは言いませんでした。それはやはり、日本国総理大臣としての立場の重さというものを考えて、彼は、それは目の前の選挙を考え たら、遺族会会長だし、当然行くと言った方がよかったかもしれないけれども、踏みとどまったわけであります。そしてその後、小泉総理は、私は必ず八月十五 日に靖国神社に参拝すると断言されたんですよ。これがこの問題のすべてのスタートなんです。

私は、日本国総理大臣と して、個人の信念も結構です、別に選挙目当てで言ったとは申し上げません。だけれども、やはり日本全体のことを常に考える総理大臣であってもらいたい。国 の利益というものをどう考えるのか、そういう視点を常に忘れない総理大臣であってもらいたいと思います。

今、私は、総理が靖国神社に自分の判断で行かない、こう決断したとしても、変節漢といって批判するつもりは全くありません。どうか総理、勇気を持って決断していただきたい。それが日本国総理大臣としての責任だ、そのことを申し上げておきたいと思います。

もし総理、何かコメントがあれば、おっしゃっていただいて結構だと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、四年前の総裁選挙のときに橋本元総理がどう言われたかについては、とやかく言うつもりはございません。私は私の考えを述べたわけ でありまして、これは自分の信条を申し述べたつもりであります。別に、遺族会の皆さんの票が欲しいとか、そういう目当てではございません。

そもそも、私ども、日本国民どなたでもそうだと思いますけれども、どこの神社に行くかどうか、人に言われて、行けとか行くなとかいう問題ではないと思って おります。一人の人間として、心の問題として、戦没者の皆さん方に対して追悼の念を持つこと、そして、現在我々が平和のうちに暮らすことができるのも、現 在生きている人だけでこのような世界が、社会ができたものではない、心ならずも戦場に赴かなければならなかった、命を失わなければならなかった、そういう 方々のとうとい犠牲の上に今の社会が成り立っているんだ、平和があるんだということを決して忘れてはならないという気持ちから、私はお参りをしているわけ であります。こういう問題に対して、行くなとか行けとか言われて参拝するべき問題ではないと私は思っております。

岡田委員私は当初から、外国政府に言われて行く行かないの問題ではないということは明確に申し上げております。そして、総理がどう判断するかの問題だということも申し上げております。

ただ、今のお話を聞いていて、一人の人間としてという総理の心情はわかりますが、総理はその前に日本国総理大臣であるということ、そこをしっかり踏まえて、そして大きな判断をしなければいけないんだ、そのことを私は先ほどから申し上げているということであります。

次に、先ほど来話に少し出ましたが、国立の追悼施設の問題です。これは、平成十四年に、福田官房長官時代に既に報告書も出ております。

これについていろいろな議論があるようですが、私は、この問題も外国に言われて決める問題じゃないと思います。それから、靖国神社との関係で決める問題で もないというふうに思います。やはり、国として追悼施設を持つかどうかということは、これは極めて重要な問題ですから、そのこと自身をきちんと議論したら いい、こう思います。

そして、私はつくるべきだ、こう思っておりますが、総理は、検討に着手するとかいろんな言い方 をされているようですが、本当にそれをつくるべきだというふうにお考えなんでしょうか。それとも、今までずっと先延ばしをされました。また先延ばしをされ るんでしょうか。どちらなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 検討するということは、今までの懇談会の提言もありま す。そして、国会の中でも、今議論されているように、今までの委員会での質疑におきましてもそういうような話も出ましたし、与党、野党、それぞれの意見が 出ておるのも承知しております。私としては、それらの過去の経緯も踏まえ、そして、現在出されている各方面の意見を伺いながら今後検討していきたいという のが率直な気持ちでございます。

だから、岡田代表はつくるべしという観点から検討すべしということのようでありますが、私は、つくるべきかあるいはつくる必要はないか、そういう点も含めてよく検討したいと思っております。

岡田委員平成十四年にその報告書が出て以来、今日までこれは放置されたままですね。ですから、今総理がそういう言い方をされますと、結局、任期の間に結論を出さないで終わるんだろう、先送りするんだろうというふうに普通は考えますね。

総理、いつまでに結論を出すということを言われますか、どうですか。

小泉内閣総理大臣 これは、いつまでにという点については、今決めているわけではございません。

それと、つくるべしという意見とつくるべきでないという意見の中にも、さまざまなんです。今岡田さんが言われたように、靖国神社の関係につきましても、靖 国神社と関連づけて考える方もいるし、全く別だという考え方もあるんです。そういう点もありますから、この点につきましてはよく検討していかなきゃならな いなと思っております。

岡田委員私は、靖国神社とは全く別の趣旨のものである、これは報告書の中にも出てきますが、そういうふうに考えております。同時に、靖国神社がつくるなと言う立場にも全くない、これは民間の神社ですから、そういうふうに考えております。

私がつくる必要があると考える理由は、大きく言って二つです。

一つは、やはり、広く戦争の犠牲者に対してそれを追悼する施設というのが日本にはありません。沖縄に今度総理は行かれるようですが、沖縄には平和の礎が あります。あそこには、戦争にかかわった市民も、あるいは外国の兵士も含めて名前が書いてあります。しかし、さきの戦争あるいはその前も含めて、この前の 戦争で八十万人の市民が、例えば空襲とか沖縄の戦いとか、あるいは広島、長崎の原爆投下、いろいろなことで亡くなっている。その大半は女性や子供たち。そ こについて、今、国として追悼するものはありません。そして、靖国神社は国ではありませんし、そしてそれは兵士を祭っている、そういう組織であります。私 は、そういった戦争の犠牲者を広く追悼する施設は必要だというふうに思っています。

二番目は、やはりさきの戦争についての思いがだんだん風化してまいります、記憶が風化していきます。そういうときに、あの戦争の悲惨さを思い、二度と繰り返してはいけない、そういう誓いを立てるためにも国としての施設が必要だ、私はそういうふうに考えております。

総理はいつまでにと言われませんでしたので、このままいくとずっとまた先送りされるんだろうなという気はしますが、私は、これはぜひ必要なものであり、つ くっていただく、その決断をしていただきたい。少なくとも政権がかわれば、私たちはしっかりそのことについて実現をさせていただくということを申し上げて おきたいと思います。

さて、話題を変えまして、子育て支援についてちょっと総理のお話をお聞きしたいと思います。

最近発表になりました平成十六年度の合計特殊出生率は一・八八九ということで、前年に比べてまた下がりました。したがって……(発言する者あり)一・二八 八ですね、一・二八八九。したがって、今までの政府の政策が効果を上げていないという、まだ下向きのトレンドが変わっていないということであります。

私は、もっとそのことについて総理は危機感を持たれるべきだ、そして大きな政策の転換を図るべきだ、こう思っております。いろいろ、十二月には子ども・子育て応援プランなども出ましたが、その中でもまだ抽象的で、具体的な政策は不足している、私はこう考えております。

この子育て支援策について基本的に総理はどうお考えなのか、余り長くなくていいですから、お答えをいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 少子化の問題、これは今後の日本の発展を考える上でも極めて重要な課題であると受けとめております。

少子化、子育て支援、どうしたらお子さんをもっと持ちたいなという意欲を若い皆さんが持っていただくかという点からも、子育て支援策というのは、各党も積 極的に、関心を持ち、提言をされているということも承知しております。政府としても、少子化の問題というのは一役所の問題ではないということから、先日来 から、官房長官を中心にいたしまして、経済界も労働界の代表の方も加わっていただきまして、この少子化問題、深刻に受けとめて取り組んでおります。

今後、社会保障のあり方を議論する場合にも、少子化の問題は避けて通れない課題だと思っておりますので、政府としても今後、このような少子化傾向にいかに 歯どめをかけるかという点について、さまざまな意見を伺いながら、対応策をしっかりととっていきたいと思っております。

岡田委員 今、総理はキーワードとして、日本の発展、それから、どうしたら子供を持ちたいというふうに思ってもらえるかという二つのことを言われたんです が、私、根本が違うと思うんですよ。一番大事なことは、子供を生み育てる意思がありながらそれができないでいる人たちに対してどうやって政府が手を差し伸 べていくか、ここがやはり政策として一番大事なところだと私は思うんですね。

つまり、子供を生み育てたい、そういう 人の立場に立った政策というものが大事だと思います。子供を産みたいけれども経済的な理由で産めない、持てない、そういう人たち、あるいは仕事との両立が できない中で子供を産むべきかどうか迷っている、そういう人たち、あるいは不妊治療を受けたいけれども経済的な理由でそれがかなわない人たち、そういう人 たちの立場に立って政策をきちんとつくっていくべきだと私は考えております。

そして、そういう中で、この子育て政策について、これから五年間が極めて大事だ、こう言われておりますが、総理、この五年間、なぜ重要なのか、お答えいただけますか。

小泉内閣総理大臣 今後、少子化の傾向がはっきりしますから、この少子化の問題、子供を育てるという問題は、早く手を打たないと後々深刻な影響を与えるということから、できるだけ早く手を打っていかなきゃならないということであります。

岡田委員 総理、ここもしっかり認識をしていただきたいんですが、例えば、総理が最近内閣府でつくった日本二十一世紀ビジョン、次のリーダーはこのビジョ ンに従ってやらなきゃいけないと総理言われましたよね、この二十一世紀ビジョンにもはっきり書いてあります。なぜこれから五年間が重要か。それは、団塊 ジュニアの世代が今三十代、その三十代の団塊ジュニアがやはり三十代の間に方向転換できないとかなり手おくれになる、そういう問題意識なんですよ。だから この五年が大事だ、ここに集中的に政策展開しなければいけない、そういうことの中で語られていることですから、余りゆっくりされちゃ困るわけです。大きな 政策転換を急がなきゃいけない、そういう観点で私は申し上げているわけであります。

民主党としては、いろいろな具体 的な政策も既に今年度の予算の審議のときにも申し上げております。出産時助成金の創設、出生児一人当たり二十万円の助成、所要額が二千二百億円、それから 学童保育施設一万四千カ所を二万カ所に、九百六十億円、小学生までの医療費の窓口負担を一割に、四百五十億円。そういった対策を講じていくことで、私はか なり変わるんじゃないか、こう思っております。

そして、一番大事なことは、やはり経済的支援ですね。子供を産めないことの最大の理由として、やはり経済的理由を挙げる人が一番多いわけであります。

きょう発表された政府税制調査会の報告の中で、所得控除制度から税額控除制度にすることも考えられる、こういうふうに子育て支援について述べております。 総理は、この税制調査会でそういうふうに述べていることについてどうお考えですか。所得控除制度から税額控除制度に変えていくべきだということについてど う思われますか。

小泉内閣総理大臣 これは、所得控除、税額控除、どちらをとるにしても、財政状況、税収にも影響し てきます、財源とのにらみもあります。そして、この点につきましては、今後、政府の税制調査会と与党の税制調査会もあります。その中で議論していかなきゃ ならない問題でありますが、要するに、児童手当一つとってみても、額をふやすということについては、どなたも余り反対はないと思います、歓迎すべき問題だ と思いますが、その給付をするための財源をどう捻出するのかという問題になると、必ず一方では強い反対なり抵抗が出てまいります。

これは、今も児童手当、第一子と第二子が月額五千円ですか、第三子から月額一万円にしようということについて、民主党はもっとふやせという意見だと思いま す。そういう点につきましても、ふやした場合には、それじゃ、赤字国債で手当てするわけにいかぬということで、財源というものを考えなきゃならないという ことから、少子化の問題、児童手当をもっと増額しなければならないという問題が出ると、必ずそれではどこの部分を増税するのかという問題が出てくると思い ますので、こういう点については、給付をどの程度増額するのか、そしてその財源手当てをどうするのかというのは、私は、今後、年末の予算編成に向かって、 政府においても与党においても、また野党においてもそれぞれ提案なされると思いますので、よく見きわめていかなきゃならない問題だと思っております。

岡田委員 今、政府税調、党税調と言われましたが、まず私が申し上げたいことは、税の世界だけの議論にこれはとどめるべきじゃないということなんですね。 もちろん、所得控除より税額控除の方が、税金をより少なく払っている人にとって相対的に有利になる制度ですから、私はその方がいいと思います。しかし、 もっといいのは、やはり手当なんです。

つまり、所得税を払っていない、そういう所得層の人にとっては税額控除も所得 控除も意味がないわけですから。やはり手当にして、そして所得税を払っていない層まで、これは子育て世代というのはそんなに所得が多いわけじゃありません から、そういう層にもきちんと行き渡るようにするためには、私は、むしろそういった所得税の控除制度を整理して手当に振り向けるべきだ、そういうふうに考 えております。

我が党の主張は、配偶者控除や扶養控除を廃止して、これは約二兆円出てきますから、そういったものを もとにして、総理がおっしゃった今、月々五千円を一万六千円、子供一人一万六千円規模の新たな子ども手当制度を創設すべきだ、これははっきり私たちは申し 上げているわけですよ。

そういったことについて、何年もかけて議論するんじゃなくて、先ほど言いましたように五年間 がこれは限界ですから、一刻を争う問題ですから、年末までにしっかりと児童手当も含めたトータルの議論をしていただいて結論を出していただきたい、そのこ とをお願い申し上げておきたいと思います。

最後に、年金の問題について、私は今非常に危機感を持っております。つま り、国会に設置をした協議会、今まで実質三回、四月から開きました。この協議会の設置は、これは総理御自身も私に対して、ぜひそういうものをやるべきだと おっしゃった。私もそのことに異存はありません。しかし、懸念していたのは、単に協議会をつくるだけで、先送りに使われてしまうのではないか、そのことを 懸念しておりました。今、現実に起こっているのはそういうことなんですね。

つまり、第一回目、私は参加をしました が、その場で、例えば丹羽さん、自民党の社会保障制度調査会長は、昨年の年金改正は画期的であった、ことしの課題は国庫負担率の引き上げだと。つまり、国 庫負担率の引き上げが課題だと。そんなことを議論するために協議会をつくったんじゃありませんよね。あるいは、公明党の冬柴さんは、昨年の年金改正は持続 可能ですぐれた改革だ、こう述べられました。そういう状況の中で、本当に年金の真剣な議論ができるのか、私は大変懸念をしております。

総理に、ぜひ、自民党の議員に対して、与党の議員に対して、この協議にまじめにちゃんと対応するように、真剣に議論するように、郵政のときの総理のかなり 露骨なリーダーシップの発揮、その半分でいいですから、それを発揮していただいて、議論ができるような、そういう状況にしていただきたいと思いますが、い かがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 年金の協議会につきましては、去る四月に第一回の与野党協議が行われて、今月に入って一回、計四回ほど行われたということは承知しております。

そういう中で、それぞれ各党参加しておりますから、各党が一致していないということも承知しておりますが、一致していないけれども、この年金を含めた社会 保障制度全体というのは、どの政党が将来政権をとるについても、最も国民の重要な関心事であるから、しっかりした持続できる制度をつくっていこうという趣 旨であります。

私どもとしては、確かに、年金一元化の問題一つとってみても、最初に厚生年金、共済年金、国民年金を 一緒にやるという考えを岡田さんは持っているようでありますが、その一元化が将来できれば望ましいということは私申し上げておりますが、その前にも、まず 厚生年金と共済年金を一元化する話が先じゃないですかと申し上げているんです。それに対して異議が岡田さんはあるようでありますけれども、それから国民年 金をどうするかとやっても遅くないじゃないですか。そういう点も、違うからけしからぬというような場にするんじゃなくて、それでは、まず厚生年金と共済年 金を一元化するときにはどういう方法があるんだという議論を進めても、私は決しておかしくないと思うのであります。

各党がそれぞれ意見が違うから決裂させようというんじゃなくて、違いを乗り越えて、これを持続可能な制度に持っていくというための年金協議会だと私は思っておりますので、その点、ぜひとも御理解、また協力をいただきたいと思っております。

岡田委員 総理は全然わかっておられないんですよ。一元化の問題について、与党が何と言っているかわかりますか。まず共済と厚生年金の一元化が重要であ り、その細かい具体論をこの協議会の場で議論しよう、こう言っているんですよ。そんな議論をしていたら秋になっちゃいますよ。

私が言っているのは、まず国民年金を含めた一元化が可能かどうか、そのことの議論が先だと。それをきちんと見極めた上で、もし可能ということになったとき に、では手順としては共済と厚生年金を先に行うということもそれは選択肢ですよ。しかし、まず議論すべきは、国民年金を含めた一元化が可能かどうかのしっ かりとした議論なんですよ。それを、目の前の、もう既に閣議決定もされている共済と厚生年金の具体論をあの協議会の場で議論し出したら、それだけで二カ 月、三カ月は優にたってしまう、秋になってしまう。それは、総理御自身が秋までに年金改革、抜本改革の骨格をつくると約束したことに反しているから申し上 げているわけであります。

どうか、総理が、年金改革についてもっと国民の立場に立って真摯に議論していただきますようお願い申し上げて、私の質問を終わります。




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