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新たなミサイル防衛システム等の閣議決定-疑問だらけ

 12月18日に「新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化について」閣議決定がなされました。9月11日の「ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針」、いわゆる安倍談話が、①イージス・アショアの代替策、②迎撃能力以外の方法による抑止力強化の二点について検討を求めたことに対する結論と位置づけられるものです。

 まず、イージス・アショア代替策については、イージス・システム搭載艦2隻を整備するとしています。しかしそもそも、2017年の日米首脳会談後に唐突に発表されたイージス・アショア導入、「24時間365日の切れ目ない防護」が強調された他には、巨額の費用に見合う具体的な効果の説明は不十分なままです。それに代わるイージス・システム搭載艦2隻が必要と言われても説得力はありません。既に締結した契約をキャンセルすることが政治的に困難であるためのつじつま合わせではないかと思ってしまいます。ましてや閣議決定は、同艦に付加する機能等については引き続き検討を実施するとしており、結論先にありきと言わざるを得ません。洋上で使われたことのないレーダーを転用することが可能なのかという根本的な疑問に加えて、多額の予算と人員を必要とする今回のイージス・システム搭載艦、果たしてそれに値するものなのか、政府の説明が全く足りていません。
 いま一つの迎撃能力以外の抑止力の強化については、引き続き検討を行うと結論先送りになりました。他方でスタンド・オフ・ミサイルの整備・研究開発と12式地対艦誘導弾能力向上型の開発を行うとしています。翼とジェットエンジンで水平飛行するミサイルを巡航ミサイルと言いますが、スタンド・オフ・ミサイルとは巡航ミサイルを意味する防衛省の表現です。ジェットエンジンで飛行するため長距離飛行することが可能で、威力の高い弾頭を搭載することもできます。12式地対艦誘導弾とは、2012年から陸上自衛隊に配備されている地対艦巡航ミサイルで、百数十kmの射程を持ちます。

 今回、これらの能力向上を目指すことを明らかにしたものです。例えば12式地対艦誘導弾の射程は1,000kmとなるとされています。飛行距離を伸ばせば、相手国領土に到達することも可能となることから、将来的には、相手国を攻撃する能力を持つことになります。つまり結論先送りと言いながら、相手国に対する攻撃能力を持つことを、日本政府として目指す旨を決定したに等しいと思います。
 日本の専守防衛を旨としてきた防衛政策の大転換といってよいと思います。それだけに、攻撃能力を持つことがどのようなメリットとリスクを持つかの冷静な比較検討、サイバー・宇宙・電磁波等の新たな領域における対処能力向上との優先順位、そして憲法との整合性など、様々な検討がなされなければなりません。「抑止力の強化は引き続き検討」ということばでごまかし、政策の大転換を国民に対して説明しないままの決定には極めて大きな問題があると思います。次期通常国会において、徹底的な議論が必要です。




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