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2008.04.02|マスコミ

洞爺湖サミットに向けて、温暖化対策の方向

衆議院議員・民主党副代表・地球温暖化対策本部長 岡田克也氏

今年7月に開催される先進国首脳会議・洞爺湖サミットでは、地球温暖化防止に向けた合意を得るにあたって、日本政府がどのようなコミットメントをするのかが注目されている。また、そのためには、裏付けとなる環境政策が求められている。
今回は民主党サイドから、党の副代表で地球温暖化対策本部長である岡田克也衆議院議員に洞爺湖サミットの展望と環境政策、戦略についておうかがいした。

産業界を説得する努力が必要

――洞爺湖サミットにおいて、地球温暖化問題で先進国がどのような合意に至るのかが注目されている。サミットにおいて日本がとるべき方針についてうかがいたい。

岡田克也 サミットは時の政権が会議をまとめていくものなので、野党である我々としては、会議において何かをするという立場ではない。
ただ、政府に対して、やるべきであるということを申し上げれば、昨年のCOP13・バリ会議での議論の延長線上にあるものを目指していただきたいということだ。
サミットはポスト京都をまとめる上で重要な場である。2050年に世界全体のCO2排出量を半減させるのであれば、先進国はどのような義務を負うべきなの かという議論になるだろう。バリ会議では2020年に、先進国は25~40%削減という消えた数字があるが、日本自身がこうした数字に向かっていくべき だ。

――その具体的数字だが、自由民主党環境部会長の中川雅治氏はインタビューで、「数字は出すべきだが、調整役なので先に出すとは限らない」という発言をしている。
数字をすぐに出す必要はないか。

岡田 議論をまとめていくには、日本自身が何らかの覚悟がないとできないだろう。鴨下環境大臣も、日本は調整役という発言をしているが、日本がリーダーシップを発揮していくためには、数字を出していく必要はあるだろう。
誤解のないように言えば、日本の国益として、数字を持つべきだという考えだ。また、そのために、産業界を説得していく努力を、我々も行っていく必要がある。

キャップ&トレードの導入を検討

――そうした数字を実現するための政策として、現在、キャップ&トレード型の排出量取引制度の導入が検討されている。まだ産業界の一部には反対があるが、こうした制度についてはどのように考えるのか。

岡田 環境政策においては、3つの柱を考えている。一つは今おっしゃったキャップ&トレード。あとは税制、そして自然エネルギー導入の問題だ。この3つがセットになってはじめて、2020年から2050年までのCO2削減の具体的数字が出てくるだろう。
排出量取引については、議論は盛り上がっているが、どのような制度になるかは、まだ決め付けない方がいい。EUの知見なども参考にしながら、できるだけグローバルな制度にしていく必要がある。
だが、ゆっくり考えればいいということではなく、日本は日本なりの考え方を早急にまとめる必要がある。というのは、グローバルな制度としていくにあたって、日本はルールメーカーになる努力をするべきだ。
現在、民主党としては、どのような制度がいいのか検討している段階だ。

――それはキャップ&トレードを導入するという前提での議論ということか。

岡田 その通り。

環境税は一般財源化すべき

――3つの柱の残りについてもうかがいたい。
環境税導入となったとき、どのような制度を考えているのか。

岡田 税については年内いっぱいかけて、党の税制調査会で議論することになっている。炭素に対して課税していくということは、我々の中では共通した認識となっている。あとは、税率や税の使い道だろう。
個人的な意見としては、一般財源化するべきだと考えている。また、税率も現在の環境省が示しているようなガソリン1リットルあたり1・5円というレベルで は効果がないので、その10倍程度として、炭素の使用を抑制し、数兆円の税収がある制度を目指すべきではないか。

――環境税に関連して、今年はガソリンの暫定税率引き下げが議論となった。民主党は暫定税率廃止ということだったが、一方で環境保全にためには暫定税率を引き下げるべきではないという意見もあった。また、ガソリンの値上げによって消費が抑制されるという効果も見られた。
この一連の流れから、環境税導入について知見が得られたのではないか。

岡田 それは問題が異なっている。まず、環境税はガソリンだけではなく炭素すべてにかけられるものだ。したがって、暫定税率を廃止した上で、あらためて環境税をかけていくというのが筋だ。

自然エネ導入はRPS制度の拡大で

――自然エネルギーの導入政策についてもうかがいたい。

岡田 ドイツと比較すると日本は遅れていると言われている。ドイツは固定価格買い取り制度を導入しており、これが普及の引き金になったため、わが党の中にもドイツのような制度を導入すべきだという議論がある。
ただ、この制度は一挙に普及させるにはいいが、効率的な自然エネルギーの導入につながるのかどうか、検討の余地がある。
私としては、今のまま、RPS制度の枠を大幅に引き上げていくという政策の方がいいのではないかと思う。

――最後に、あらためて地球環境問題をめぐる外交政策についてうかがいたい。

岡田 アメリカの大統領は来年には変わる。現在の候補の誰がなっても、環境政策は進むだろう。そうだとすれば、今無理に話をまとめるよりも、新大統領が誕生してから対話していった方がいいという考えもある。
また、インド・中国に対してはやはり、これから豊かになっていく国々として、一定の配慮をしつつCO2排出量の抑制を求めていかなければならない。
もちろん、先進国と途上国には「共通だが差異ある責任」があるということは承知している。だが、やはり彼らにも目標となる数字を持ってもらいたい。おそらくインドも中国もそのことは理解しているだろう。

(聞き手・本橋恵一)




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