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2006.03.20|マスコミ

3月特版-政治(11)

「『岡田株』上昇する。でも『代表選には出ません』」岡田克也・民主党前代表

2001年春に小泉政権が誕生して5年が経過しようとしている。昨年9月の総選挙に大勝し、このまま自民一党が圧倒する体制へ移行する勢いだが、ここにきて格差問題など小泉構造改革の「影」の部分への注目が広がりをみせている。政治の現状と課題を岡田克也・民主党前代表に伺った。

【問】昨年の総選挙は「民主惨敗」と言われている。

【答】議席数を大きく減らしたから力足らずだったことは重く受け止める。自民党政権はずっと続いてきた。権力の壁は厚い。それを壊すだけのエネルギーが我々にはなかった。しかし、300小選挙区で民主党候補者が獲得したのは2,480万票とこれまでにない高い得票数だ。二大政党制の基盤が壊れたとは全く考えていない。

【問】解散総選挙は予想していたのか。油断はなかったか。

【答】勿論、解散もあり得るという前提で準備はしていたが、解散の可能性は低いと思っていた。自民党の中がまとめられなくて郵政法案が否決されたのだから、小泉さんは責任をとって総理を辞めるか、そうでなくても解散はしないというのがこれまでのパターンだ。しかし、そもそも解散はしてはいけないという決まりはない。今回の衆院解散で総理はいつでも、いかなる名目でも議会を解散出来るようになったということだ。

【問】僅差でもオセロゲームのように白が黒に変わっていく小選挙区制の弊害もある。

【答】そうは思わない。むしろ、小選挙区制の特長がよく出た選挙だった。小選挙区制の特長は民意の集約にある。比例選挙制は民意の反映だが、ダイナミックな政治をやるには民意の集約が必要だ。昨年の総選挙は民主党に厳しい結果となったが、それだからといって小選挙区制が悪いとは思わない。私は総選挙の結果を受け入れている。ただ、今回の総選挙は、日本の民主主義の観点から必ずしも良い選挙とは言えなかった。

【問】それは何故か。

【答】そもそも国政選挙とは、政党が政策を訴え、それを有権者が選ぶというものだ。日本でもここ数年の間にマニフェスト選挙は定着しつつある。今回の総選挙でも、私は最後まで政策論争を提起し続けた。ところが、小泉自民党の郵政民営化一本に絞った争点隠しによって、政策論不在の選挙に堕してしまった。
小泉さんは日本という国のリーダーなのだから、あのような選挙をやってしまったことについて、ここは率直にそれでよかったのかと真摯に考えてもらいたい。お互いが、メディアを利用して、真面目な政策論のない選挙を続けていけば、有権者の関心は一時的に引き付けることは出来ても、中長期的には政治、民主主義が劣化する。

【問】メディア政治をどう思うか。

【答】あの選挙期間中の、テレビをはじめとするメディアの報道が本当にフェアだったのかという議論はある。
要するに、選挙なのだから、例えば、一つの選挙区を取り上げる時には各候補者を平等に取り扱うとか、そういうルールがあったはずだが、今回の総選挙では、結局、刺客とそれに対する自民党を離党した人の戦いに集約されてしまった。民主党の候補者はほとんど登場しなかった。その結果、政策論も十分に伝えられなかった。新聞は途中から政策中心に切り替えようとしたが、テレビの方は最後まで自民党のメディア戦略に乗っかってしまった。広島6区をはじめ刺客とされる候補者が送られた東京10区、静岡7区、岐阜1区など、対立の構造がはっきりとしている注目の選挙区を重点的に面白おかしく報道したメディアに責任があるのではないか。
自民党の戦略としてはそれでよかったのかもしれない。しかし、メディアはそれに乗ってしまったことを深刻に受け止めて自省すべきだ。メディアには公共性もある。権力に対する批判という視点をメディアは持っていないといけない。視聴率至上主義の発想では、メディアが衰退する。選挙では民主党は負けたが、小泉劇場のお先棒を担いだメディアも負けたと思う。

【問】とは言え、メディア戦略も大事ではないか。

【答】メディア戦略も大事だが、やはり、日本の民主主義というものをどう考えるかということが重要だ。リーダーはそう考えないといけない。党の広報担当レベルの人が選挙戦を有利に運ぶために戦術をいろいろ考えるのはいいが、リーダーは、それが行き過ぎて民主主義が弱体化し、おかしくならないように上手くリードしていかないといけない。

【問】有名人やタレントを候補にして選挙に勝ちに行くという戦略をどう思うか。

【答】全否定するつもりはない。あくまで候補者次第だ。知名度が高いだけでなく、中身もある候補者なら良いと思う。ただ、ライブドア前社長の堀江貴文氏のように「国民は馬鹿だ」という人は、政治の世界には入ってはいけない人だと思う。

【問】民主党は堀江貴文・ライブドア前社長に出馬要請をしたのか。

【答】総選挙直前にライブドアサイドの求めに応じて面会したが、堀江氏の発言を聞いて、「民主党の考え方とは合わない」、「民主党から出せる人ではない」と判断し、出馬要請は一切しなかった。
国民の人気を集められるのならどんな考えの人でもよいと割り切るのも一手だろう。民主党から堀江氏が出馬すれば若者の人気を集め、選挙の流れが変わった可能性もある。しかし、政治は何でもありに堕してはいけない。それでは政治が劣化する。

【問】小泉劇場に拍手喝采した国民についてはどうか。

【答】先程も言ったように、2,480万人が民主党候補者に投票した。そこはかなり確信に満ちた投票だった。小泉劇場、メディア政治と言われる中で、それでも2,480万人が民主党に投票されたことは有難いことだ。国民すべてが小泉劇場に拍手したわけではない。自民党の方は3,250万票とったが、その中には初めて選挙に参加した人々も多かったと思う。自民党圧勝の中で、これからどのような政治が行われていくか、引き続き関心を持って見守ってもらいたい。「サラリーマン増税はしない」と言っていた自民党が、所得税や消費税の増税を当然のように主張していることや、格差は悪いことではないと小泉首相が発言していることに対して、違和感を持っている人々は多いのではないか。

【問】喫緊の政策課題は。

【答】経済のグローバル化と人口減少時代への対応だ。所得格差の拡大は、基本的にはグローバル化の中で出てきている問題だ。それに政治がどう対応するかだ。私は、グローバル化自身を否定するという立場には立たない。グローバル化を前提にした所得再分配政策や実質的な機会の平等の実現が必要だ。

【問】アジア外交が行き詰っている。

【答】先日の予算委員会で、完全に行き詰っているアジア外交についてどういう展望を持っているのかを小泉さんに質したが、私が聞いてもいない靖国問題を話すばかりで、具体的な答えはなかった。靖国に行くか行かないかはその時の総理が決めることだ。私は、総理は行くべきではないと思う。靖国に行くなら行くで、それを乗り越えて韓国、中国とどういう信頼関係を築いていくのかというビジョンを、安倍さんや麻生さんなど次の総裁候補は語るべきだ。アジア外交が現状のままで続けば、日本国の利益、国民の利益が大きく損なわれる。そのことに大きな懸念を覚える。

【問】人口減少問題にどう対応するべきか。

【答】人口減少時代への対応は最も重要な政策課題だが、人口減少は長期的に見れば、多くの先進国に共通のトレンドであり、それ自体が問題であるということではない。日本の場合には、それがあまりに急激で、いつ歯止めがかかるのか見通しがつかないという点で大きな問題がある。
では、政治は何をするべきか。まず、急激な人口減少に歯止めをかけるために出生率の低下を改善する。そのために、子育てと仕事がきちんと両立する社会を作る。総選挙の民主党マニフェストでは、子供の食費、被服費などを概ね賄える程度ということで月額16,000円の「子ども手当て」を設定した。これを第1ステップとして、将来的には医療費や教育費などを考えると月4万円程度にまで引き上げるべきだろう。次に、人口が減少していく中で、年金や高齢者医療、介護をはじめとする、世代間の助け合いという現在の社会保障制度の仕組みがこれ以上もたないところまで来ている。税方式の導入を中心とした制度、仕組みへの抜本的な改革が必要だ。さらに、これ以上、次の世代に負担を先送りしないという意味で財政再建への取り組みが急務だ。人口減少が明らかであるにもかかわらず、国の借金は増え続けている。公務員人件費、公共事業、地方交付税など思い切った歳出削減の具体策が必要だ。
これらの問題はいずれも小泉政権の下でなおざりにされてきた。人口減少という大きな転換点にある今、大きな政策転換をやるという政治の明確なメッセージが必要だ。

【問】格差問題など小泉構造改革の「影」の部分への注目が広がりをみせている。

【答】所得格差はグローバル化の一つの結果だ。小泉総理は、統計上、格差拡大は認められないとか、格差があることは悪いことではないと言っている。勿論、格差がある程度はあるのは当然だ。すべて結果の平等を保障しろと私は言っているのではない。問題は、格差が拡大し、格差が固定化することにある。日本の社会を支えてきた中間層の厚みがなくなっている。これは日本の政治の安定にとって大きな問題だ。中間層の厚みというものを、一つの政治的資産として、これからも大事にするべきだ。政治はそういった部分にしっかりと光を当てていかなければならない。
一方、グローバル化は、格差拡大の大きな圧力になっている。やはり、アジアの国々と同じレベルのモノを作っている部分については、労働力コストの押し下げ圧力が強烈に効いてくるから、格差拡大というのは、グローバル化の中で避けられない現実だ。そのことが深刻な問題であると受け止めて、対応を考えるべきだ。小泉さんのように、格差拡大が認められないということで、問題意識にすらないということでは手遅れになってしまう。

【問】具体的にどうすればよいのか。

【答】一つは、実質的な機会の平等の実現だ。例えば、教育における機会の平等を実現するために、特に、公立の小中学校の教育をしっかりと立て直す。親の所得の多寡によって私立の小中学校に入れるかどうかが決まる。東京及びその周辺ではその傾向が高まっている。東京では4人に1人は私立中学校に行く。しかし、地方ではそういう選択肢さえない。親の所得や住む地域によって教育の質が違うということは、機会の平等を損なうことになる。従って、公立の小中学校をしっかりと立て直していくことが重要だ。
所得の再分配という意味では、税制改正が必要だ。株式取引についても10%の暫定税率を本則の20%に戻すという方向性をきちんと出す。相続税、所得税も、もう少し所得の再分配が機能するように、やや行き過ぎたフラット化を考え直す時期に来ている。社会保障、年金、介護などで所得の再分配の機能はある程度発揮されているが、税制ではほとんど発揮されていない。本来、所得再分配は税制が担うべき重要な役割だが、この10年くらいの間にそういう機能が失われている。勿論、昔のように9割税金で持っていかれるような極端なことを言っているわけではないが、改善の余地はある。例えば、最高税率を5%上げるとともに、増税額に該当する部分について、公益目的事業に対する寄付の税額控除を認めることとすれば、良い世の中になる。

【問】それにしても小泉人気が衰えない。

【答】今までの利益分配型政治、利権政治に対する批判が小泉人気に結びついている。しかし、政治資金制度の透明化や森派の強かった新幹線、文教などは改革のメスが入っていない。橋本派は壊れたが、森派は肥大化したとの見方も成り立つ。冷静になった国民が、次の選挙ではより賢明な選択をしてくれるものと期待している。
勿論、民主党は力足らずで未熟なところはたくさんある。未熟なことは今回のメール事件でも露呈された。今後、信頼回復を図りながら、民主党の存在感をしっかりと出していきたい。政権を担う党を作ることは簡単なことではないが、「民主党に政権を任せても大丈夫だ」と確信を与えるような政党になるようもっと努力したい。

【問】今年9月の代表選に推す声もある。

【答】それは全く考えていない。代表になった時から、代表としての最大の責任は政権交代を行うことだと言い続けてきた。「政権交代が叶わなかった以上、当然、代表を辞めるべきだ」と考えて、開票日に辞任を表明した。責任を取って辞めた者がまた出てくるということでは、責任を取ったことにはならない。
私は、野党の代表になるために自民党離党後13年間頑張ってきたのではない。政権交代を実現することこそ、私がやらなければならないことだ。与党になる基礎は出来ている。すでに50歳以下では自民党より民主党の方が明らかに人材の層は厚い。今後はその人材をさらにどう育てるかだ。全国から人材を求めながら育てる。民主党が政権を取った時に、政府をしっかりとリードしていけるだけの有能な人材を育てていくことに全力を尽くしたい。
1955年以降、政権交代が事実上ない国は民主主義国家とは言えない。それは野党がだらしなかったというのが最大の問題だ。それから、自民党にそれなりのフレキシビリティーとずるさがあったということだろう。しかし、本当の改革は政権が変わることで始まる。政権交代の実現に全エネルギーを注ぎたい。

(聞き手・QUICK情報本部岡村健一)




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