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2011.05.12|TALK-ABOUT [ブログ]

警戒区域(2)-境界線の問題、人々の思い、政治の決断

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前回に引き続き、福島県に行ったときのお話をしたいと思います。

今回いろいろと視察をするなかで、線引きの問題が指摘されました。つまり、警戒区域や計画的避難区域で線引きされたわずか内側にある施設や工場などについて、例外化できないかという問題です。

例えば、南相馬市では、わずか数10メートル離れたところにある隣の工場は操業している一方で、線引きの内側にある「大内新興化学」という会社の工場は操業できないという事態になっています。

わずか数10メートルで、放射線量が著しく異なるということはなく、実際に計測しても、人体に重大な影響を与えるような状況ではありません。

ここで100人を超える人たちが働き、かなり重要な化学物質を作っておられます。働く方々はもちろん外から通われますが、工場を全部閉めるか、あるいは、稼働を認めるか。南相馬市の桜井勝延市長からは、是非認めてほしいと要請がありました。

我々は20キロ圏内ということで、原発の周辺の視察からそのまま防護服を着てお邪魔しましたが、社長や従業員の皆さんは、安全であることをアピールする意味も込めて、普通の服装で対応されました。

ここのところが一部のメディアに載って、いろいろと批判的に書かれたりしましたが、それはともかくとして、こういったわずかに警戒区域圏内に入ってしまった工場は他にもあります。
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そういったところをどうしていくかは、原則はしっかり立てながら、しかし、実態を見て柔軟に政治判断していく必要もあると思った次第です。

同じような例としては、飯館村の老人ホームにも言えます。この老人ホームについては、100名を超えるご高齢の皆さんが、村が主体となった村営の老人ホームに入っておられます。

この100名を超える方を動かして、他の地域で引き取ってもらうとすると、東北にはほとんど空きがなくて、関東圏まで来なければいけません。しかも、それぞれバラバラになってしまい、環境も大きく変わってしまいます。もちろん、移動にかかる問題もあります。

そういうことを考えたときに、もちろん、放射線量の検査はきちんとするという前提で、そのまま特別養護老人ホームを現状で存続させてもらいたいというのが、菅野典雄村長の強い希望です。

1つのコミュニティのようになって運営されている、老人ホームをバラバラにすることで生じるリスクのほうが高いのではないか、ということでした。

もちろん、入居者の方の意思は尊重されなければいけませんが、そのまま残りたいという方に対して、そういった例外措置を認めていくべきではないかとも思いました。

ことは健康に関わる話ですから、しっかりとした議論が必要だと思います。そして、どちらの結論になったとしても批判は出ると思いますが、私が印象に残ったのは、村長が「いろいろな意見はあると思うが、自分の責任で決めさせてもらいたい」と言われたことです。

今回のこの福島県の視察の中で、いろいろな方にお話を伺いました。本当に精魂込めて積み上げてきたもの、例えば、飯館村は日本一美しい村を目指して、村長を筆頭に村民の皆さんが一丸となって村づくり、地域づくりをやってきましたが、それが一瞬にして全部壊れてしまいました。

あるいは、南相馬市でお会いした「前田ポーク」養豚場の経営者の方は、50年間品種改良に努められ、交配によって素晴らしい豚を育て上げてこられたのに、いまは、エサやりも十分出来ないことで、餓死する豚が出てきています。

とにかく、今回の原発も含め、震災・災害の中で、本当にいままで頑張ってきた人生ややってきたことが、もう一度ゼロに近い状態になってしまっている人々の苦しさを改めて感じました。

にもかかわらず、そういう中でもう一回やり直そうと、力強く立ち上がっている人々の思いや気持ち、それをしっかりと受け止めて、政治は間違いない決断、判断をしていかなければいけないと改めて感じたところです。

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