トピックス

2/5 予算委員会質問(気候変動・脱炭素対策、核兵器禁止条約)

【委員会】 衆議院予算委員会
【日 時】 2月5日(金)10:11~10:51(40分間)

動画はこちら ⇒ YouTube 【岡田かつや国会論戦】 https://youtu.be/1doWwoDgQfk

【質問要旨】
Ⅰ.気候変動・脱炭素化対策
  1. 脱炭素社会実現の必要性
  2. 2030年目標
  3. グリーン成長戦略

Ⅱ.核軍縮の必要性・核禁条約の意義
  1. 米国の政策転換と日本
  2. 核禁条約の評価
  3. NPT運用検討会議
 
Ⅲ. 北方領土
  1. 施政方針演説とシンガポール会談合意
  2. 国境線画定と平和条約締結

Ⅳ.攻撃能力保持
  1. 射程延伸と敵地攻撃能力
  2. 攻撃能力保持の問題点

==================== 以下  議事録 ====================

次に、岡田克也君。

◎ 岡田委員 立憲民主党・無所属の岡田克也です。
 今日は、まずは気候変動、脱炭素化について総理と議論していきたいと思います。
 総理は、昨年の国会で脱炭素化の宣言をされました。二〇五〇年に温室効果ガスをゼロにする。その発言を聞いたとき、私の率直な感想は、よかった、間に合ったというものでした。
 つまり、世界の各国が、特に先進国が二〇五〇年ゼロということを次々に主張する中で、残っていたのは安倍総理の日本と、そしてトランプ大統領のアメリカ。そのアメリカが大統領選挙でバイデン候補の当選が決まった、そのタイミングで総理の宣言が出てきた。これがもし遅れれば、日本だけがいつまでも二〇五〇年ゼロが宣言できない状態が続く、そうなれば、これは非常に孤立化してしまう。そのことを懸念しておりましたので、総理が宣言されたことを私は、ほっとしたとともに、評価もしています。
 大きなベクトルがようやく合ってきたな、方向性ですね、二〇五〇年ゼロという、そこは同じですから。そういう中で、まだ気になる点もいろいろありますから、少し議論したいというふうに考えています。
 まず、この脱炭素社会実現、総理は国民に対して、なぜそれを目指しているのかということを簡単に説明していただけませんか。

◎ 菅内閣総理大臣 これは元々は、産業革命の時代から、化石燃料について消費する中で世界は経済成長してきている。そうしたツケというんですかね、まさに地球の温暖化が進んできている中で、近年は、気候変動、これが極めて大きく、異常気象が世界各地で発生してきております。世界全体でこの気候変動問題に対して取り組んで、脱炭素、このことを進めていかなければ地球そのものが大変な状況になる、そういう思いでもあります。
 私は、そういう中で、日本は、カーボンニュートラル、これを皆さん必要だと思いながらも、なかなか踏み切れていない、そういう状況にあったと思います。私自身は、環境対策というのは、経済の制約ではなくて、次の成長の原動力になるというふうに思っていますし、するべきだというふうに思います。我が国経済が再び成長していく一つの柱が、やはりこのグリーンだというふうに思います。
 今や、委員からお話がありましたように、脱炭素による経済成長というのはもう世界の潮流だという認識をしています。世界中で、ビジネス、金融市場、これも大きくそういう方向に向かっているということも事実であります。
 そういう中で、私自身、二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言いたしました。社会経済を大きく変革をさせて投資を促し、また、生産性を向上させて産業構造を大転換させ、力強い成長をもう一度日本に取り戻したい、そういう思いであります。

◎ 岡田委員 今の総理の答弁を聞いて、ちょっと私はほっとしたんですが、前段の部分ですね。
 つまり、今までの総理の施政方針演説を見ても、昨日の答弁を見ても、成長戦略として脱炭素化だということが強調されていて、もちろんそれは大事なことです、私もそのとおりだと思います。だけれども、その前段、つまり、何のために私たちはこの地球温暖化、気候変動に対応しなきゃいけないのか。もちろん、経済成長の糧にするというのはいいんですが、もっと大きな、人類の未来にとってこの問題は極めて深刻だ、その前提が必要だというふうに思うんですね。そして、そのことを国民にどうやって理解してもらうか。そこがなければ、いや、成長戦略なら私は関係ない、そういう意見も出てきかねないわけですね。
 世界の若者が気候変動について行動しています。グレタ・トゥンベリさん、そして、世界の各国で若者がデモンストレーションをしている。私たちの未来を奪うなというふうに言っています。こういう活動について総理はどう受け止めておられますか。

◎ 菅内閣総理大臣 ここ近年、そうした活動が広がっているということも事実だというふうに思います。それだけこの地球気候変動に対して危機感を持って世界がようやく広がり始めてきているのかなということは、私自身は認識をしておりました。

◎ 岡田委員 ヨーロッパを中心に、先進国ではかなり、もう既にそういう認識は広まっている。日本がそのレベルにまでいっているかどうかというのは、それは、総理もおっしゃるように、まだ十分には私は浸透していないと思います。
 ただ、最近の気候変動といいますか、異常気象ですね。大雨が降ったり、大きな台風が次々に来る、人が命を落とす、家が流されてしまう、その状況というのは国民も肌で感じていると思うんですね。
 そして、これは将来の話ですが、海面の、水面が上がってくる。グリーンランドや南極の氷が解ける。これは一旦解けちゃうと、もう戻りませんから。すぐにということではありませんけれども、しかし、もう既に島国などでは国土が損なわれている国が出てきているし、百年、二百年の単位で考えれば、日本だって非常に深刻な状況ですね。
 ほかにも、生物の多様性が失われたり、あるいは食料が不足したり、貧困が拡大したり、極めて深刻な、人類が直面する最大の問題、私はそれがこの温暖化だと思います。
 総理はその認識、共有されますか。

◎ 菅内閣総理大臣 そういう思いの中で、私も宣言をさせていただきました。

◎ 岡田委員 バイデン大統領も、最近も、気候変動は人類の存亡につながる脅威だというふうに述べられています。そういった問題意識で、この問題、しっかり対応していただきたいというふうに思います。
 民主党政権のときに、地球温暖化対策税というのをつくりました。温対税と言われるものですね。来年度では二千六百億円程度の税収額。これはなかなか大変な作業でした。反対される産業界の皆さんもおられる中で、何とかこぎ着けた。当時の私の思いとしては、これは小さく産んで大きく育てようと。だから、産みの苦しみはあったけれども、取りあえずつくった。でも、その後八年間、育児放棄ではありませんが、これは育たなかったわけです。最初の制度設計のままですよ。
 こういうことも、カーボンに価格をつけるということを総理も前向きに検討していただいているようですが、今ある温対税そのままとは私は言いません。おかしなところ、十分でないところは変えていただければいいんだけれども、二千六百億円では実際のこの税金の効果が発揮できる規模じゃありませんから、このコロナの状況を見ながら、やがてそれを一兆、二兆というふうに拡大していく中で、この温暖化対策の有力なツールとして私は生かしていただきたいと思うんですが、いかがですか。

◎ 菅内閣総理大臣 安倍政権においても今の固定価格買取り制度だとか地球温暖化対策税、そうしたものについて進めてきているということも事実です。
 それと私、実は官房長官のときに議長を務めていた経協インフラ戦略会議というのがありまして、この中で石炭の火力発電の輸出支援の抜本的見直し、これをやらせていただきました。こうしたことによって、安倍政権の中でも温室効果ガス削減には努めてきました。
 ただ、これを徹底して行うためには、今、数千億円じゃなくて、これからどんどんどんどん増やしていかなきゃならないということも事実であります。私自身、経済産業大臣と環境大臣、二人に対して、同席の下に、そうした方向性というものを研究するように、進めるように、指示もいたしております。

◎ 岡田委員 総理の方から、温対税、炭素税と言ってもいいかもしれませんが、それを積極的に活用するという力強い御発言もいただきました。
 ただ、今石炭の話に触れられたので、このことをちょっと一言言わざるを得ないんですが、効率の悪い石炭火力はやめるというのは、これは一歩前進ですけれども、しかし、高効率の石炭火力はまだ造ってもいいと。しかし、今、石炭火力発電所をいまだに造り続けている国というのは、私は先進国の中でも、ないと思いますよ。二〇五〇年脱炭素だというなら、少なくとも二〇五〇年には、地中にCO2をためるようなそういう技術がうまくできない限りは、石炭火力なんてあり得ないわけですね。
 私は、二〇三〇年以降だって、炭素税で、さっきの温対税で石炭価格が上がっていけば、石炭火力というのはもう採算に合わなくなってくる、そのことが分かっている、それを今造ろうとしていることが理解できないわけですね。
 だから、少なくとも、企業にとってそれは大きなリスクだよということは、きちっと政府として情報発信すべきじゃないですか。いかがですか。

◎ 菅内閣総理大臣 石炭火力は、やはり安定供給性と経済性というのに優れていますけれども、CO2排出量が多いということがずっと指摘されてきています。
 二〇五〇年にカーボンニュートラルという方針の下に、国内の石炭火力発電所、その在り方としては、まず非効率な石炭火力の廃止、高効率化、次世代化の推進で電源の新陳代謝を図る。さらに、ここが大事で、委員と同じだと思いますけれども、CO2を回収して再利用する技術で脱炭素化して活用したい、こうしたことをこれから徹底して行っていきたい、こう思います。

◎ 岡田委員 CO2を活用する、例えばセメントに材料として埋め込むとか、あるいは人工光合成とか。人工光合成などは、本当にできたらすばらしいというふうに思いますが、まだかなりリスクのあるというか、先々見通しのついていない技術ですから。
 ガスと石炭を比べても、LNGの発電の方がCO2の排出量は半分。だから、もう石炭の出番は私はないと思うんですね、どう考えても。そういったこともしっかり議論していただきたいと思います。
 そこで、二〇三〇年のお話をしたいと思います。
 従来、二〇一三年が、日本政府が基準にしています十四・一億トンの温室効果ガス、それを二〇三〇年には二六%減らして、そして八割削減というのが従来の考え方。その八割がゼロに、総理の宣言によって、なったわけですね。
 このグラフは、私は非常におかしいというふうに前から言ってきたんですが、二〇一三年から三〇年までの十七年間で二六%しか減らしません、そして八割減、今はもう一〇〇%ですが、二十年間でしますと。非常にグラフの角度が、三〇年までは緩やかで、その後、急激だ。従来の説明は、それはイノベーションだ、イノベーションは時間がかかるからと。
 しかし、私は、下に線を引きましたけれども、もし直線で引けば、二〇三〇年段階で四六%ぐらい減らさないと、ゼロにならないんですよ。
 総理も二〇三〇年の数字について言及されていますね。COP26に向けて意欲的な目標を決定するというふうに言われています。意欲的な目標のレベルなんですが、もちろんこれは実態を踏まえなきゃいけませんから、できないこと、十年後というのはすぐ分かっちゃいますからね、そこは分かるんですけれども、でも、四六%ぐらい減らすぐらいのことでないと、国際的にも整合性がないんじゃないかと。
 例えば、二〇一八年のIPCC総会に報告された一・五度C特別報告書では、二〇五〇年ゼロのきっかけになった報告書ですけれども、二〇三〇年は四五%削減、これは二〇一〇年比ですけれども、四五%削減。それから、最近のEUのグリーンニューディールでは、少なくとも五五%削減、これは九〇年度比ですけれども。それが今の世界の相場観なんですね。
 だから、日本も四六%減らすというところに相当近づけないとやはりいけないんじゃないか、そういうふうに思いますが、総理、いかがですか。

◎ 菅内閣総理大臣 この二〇三〇年の削減目標については、二〇五〇年のカーボンニュートラルの目標と整合的なものになるようにしなきゃならない、これは当然のことだと思います。
 そういう中で、水素や洋上風力などの最大限の導入を始め、エネルギー供給の在り方や地方の脱炭素化、あるいは国民の皆さんのライフスタイルの転換も含めて、幅広くここは議論を進めていきたいというふうに思います。
 そして、御指摘のとおり、各国においても様々な目標が示されている、こういうふうに承知しています。日本も、世界に先駆けて脱炭素化を実現するためには、野心的な二〇三〇年の目標、これが必要だと思います。今年の十一月のCOP26、これまでには世界に示すことのできるような、国民の皆さんに示すことができるような、そうした目標をしっかりつくっていきたい、こう思います。

◎ 岡田委員 今、最後は力強く言っていただいたんですが、例えば、洋上風力というのは、恐らく二〇三〇年代は非常に有力だと思いますが、二〇三〇年までに、まだ幾つもないですから、これが立ち上がってくるというのは非常に限られていると思います。水素も、採算ベースに合うような、そういった水素の生産、私は、そう簡単ではないので、二〇三〇年というと、かなり限定されるだろうと。
 そういう中で大事なことは、今既にある代替エネルギー、例えば太陽光とか陸上の風力も含めて、それから省エネルギー技術、そういうものを目いっぱい入れていくことでどこまでできるか、そういう話だと私は思うんですよ。この十年でしっかり方向性をつけなければ、二〇五〇年ゼロというのは夢物語になってしまう、私はそういうふうに認識しているんですね。
 小泉大臣にお聞きしますが、恐らく大臣も同じような認識じゃないかと思います。この十年が大事、いかがですか。

◎ 小泉国務大臣 岡田委員と同じ認識です。十年というよりも五年ですね。
 今、環境省としては初めて官邸に会議をつくりまして、事務方を今環境省が担っている国・地方脱炭素実現会議というのがあります。目標は、この五年のうちに日本の中でカーボンニュートラルの先行地域をつくります。そして、そこから次々にそのエリアを広げて、日本の中に脱炭素ドミノを広げていきたいと思っています。
 そして、日本はどうしても技術、物づくりが好きなので、ついいつも物づくりのイノベーション、技術のイノベーションばかり語るんですが、岡田委員が言うように、十年で間に合うイノベーションは、物づくりの分野で限られると思います。ですので、ルールのイノベーションが不可欠で、その最たるものの一つが、今まで値づけをしなかったものに値づけをする、カーボンプライシングだと思います。それを梶山大臣と一緒に、成長に資する形の設計図を描けるか、総理の下でしっかりと検討を進めていきたいと思います。

◎ 岡田委員 地方から攻め上がるというのは、面白い発想だと思います。中央政府がなかなか動かないので地方からゲリラ的に埋めていくと。ただ、地方でやろうとしても、さっき言ったカーボンプライシングとか国の制度、そこがないと、既存の技術を使うといっても、それは採算に合うかどうかというような問題もありますから、補助金をしっかり国の制度としてつくるとかカーボンプライシングとか、やはりそこの部分はとても大事だというふうに思うんですね。
 もう一つお聞きしたいんですが、二〇三〇年で再生可能エネルギー、電源構成の中でどのぐらいの割合を占めるのか。今ある数字は二二から二四%です。これは、私は、余りにも低過ぎるというふうに思います。
 例えば経済同友会は四〇%、それから、経済界の中には、熱心に進めている、この温暖化対策をやっている、そういう集団がありますが、ここが五〇%。私も、四〇から五〇ぐらいまでの数字にしないと全体のつじつまは合わないというふうに考えています。これも小泉大臣も同じような考え方じゃないかと思いますが、総理、いかがですか。じゃ、小泉大臣で。

◎ 小泉国務大臣 私も倍増が必要だと思っています。
 その上で、なぜそう言うかというと、岡田委員が言ったとおり、もう需要サイドがそれだけの再エネを求めています。全国知事会が四〇%超という提言を出しています。同友会が先生おっしゃったように四〇%、意欲的な経団連の加盟企業などが入っているJCLPという日本気候リーダーズ・パートナーシップというところは五〇%を出しています。
 そして、なぜこれだけ再生可能エネルギーと言うかといえば、我々、今、海外に毎年、化石燃料代で十七兆円を払っているわけです。この毎年外に払っている十七兆円を、何とか日本の地域や国内で回していきたい。全国千七百ある自治体の九割はエネルギー収支赤字ですから、本来だったら使える資源を日本の地域や国内で還元すること、循環させることで、日本を、エネルギーの面においても様々な意味においても、自立する国家と地域につくり上げていきたい、そういう思いです。

◎ 岡田委員 今の小泉大臣のことにつけ加えるとすると、国際企業で、先進的な企業でサプライチェーン全体をカーボンニュートラルにするんだ、取引先もそれを求めている企業が今増え始めている。そうすると、日本の企業もそこに、例えばアップルならアップルに物を納めようとすれば、カーボンゼロで物を作らなきゃいけない。でも、電力を使うときにその電力が再生可能エネルギーの割合が低ければ、そういったこともできないわけですね。そういう意味で、これは、世界の大きな流れを捉えながら、日本もそれに合わせていかなきゃいけない。
 先ほど、この十一月のCOP26、総理も非常に注目されていると思いますが、やはり、ここで今言ったような様々な問題をきちっと整理をして、そして臨まないと、とてもリーダーシップは取れないというふうに思うんです。総理、いかがですか。

◎ 菅内閣総理大臣 ある意味では、日本の本気度が、この十一月のCOP26、その方向で決められるんじゃないでしょうか。ですから、そこに向けて政府としては全力を挙げて取り組んでいくわけでありますけれども、今まではどうしても、経産省、環境省と、なかなか政府が一つになり切れなかったんですけれども、私は、このカーボンニュートラルを実現するために経産大臣と環境大臣を留任させました。それは、今日に至るまで、海外のことが、進出する場合に、必ず両省で対立をしてなかなか意見を一つにすることができなかったものですから、そういう意味で、このCOP26というのは極めて大事なことだというふうに認識をして取り組んでおります。

◎ 岡田委員 経産省と環境省、協力してしっかりやってもらいたいと思うんですが、グリーン成長戦略、昨年決定されました、政府として。この中にも非常に気になることがあるんですね。
 それは、二〇五〇年に、再エネは最大限導入を図るが、電力需要を一〇〇%再エネで賄うことは困難であると。ここは議論の分かれるところでしょう。一〇〇でいける、そう言う人たちもいる。そして、二〇五〇年に電源構成の約五〇から六〇%とすることを一つの参考値として今後議論を進めると。
 私、五〇から六〇というのは余りにも低過ぎるんじゃないか。これは二〇五〇年の話ですよ。例えば、二〇三〇年の目標、イギリスは六〇・六、ドイツは六五。だから、それから二十年かかってそのレベルまで行かないというのは、これはやはり、私は余りにも後ろ向きだというふうに思うんです。
 もちろん、一つの参考値としてとは言っていますけれども、これをベースにして議論を進めていくということですから、このグリーン成長戦略、政府が決定したものですが、ここの部分、変えるべきじゃないですか。いかがですか。

◎ 菅内閣総理大臣 いずれにしろ、五〇%から六〇%の数字に対して、意欲的だと言う人もいれば低過ぎると言う人も実はいることも、これは事実であります。現状からすれば、そういう思いなんでしょう。
 そういう中で、先ほど申し上げましたけれども、本気度というのは、やはりこのCOP26の十一月に示す数字だというふうに思いますので、まさにそこに向けて、私ども内閣挙げて取り組んでまいりたいと思います。
 せっかくの機会でありますから、経産大臣にもどうぞ。

◎ 梶山国務大臣 二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けては、大変容易な道のりではないと思っております。政策を総動員して、あらゆる選択肢を追求していく必要があります。
 審議会の議論の中では、二〇五〇年は技術的な不確実性が高いことから、幅を持ってシナリオ分析という形で進めてはどうかという御意見もありました。
 いろいろな方からヒアリングをしております。当然、様々な団体からも聞いておりまして、そのヒアリングでは、二〇五〇年の再エネの見通しとして、一〇〇%という団体もあります。八〇%程度、二七から五四%程度、四〇から五〇といった、大変幅の広い見解が示されております。
 こうした御意見を総合的に勘案して、今後シナリオ分析を進めていく上での参考値として、例えば再エネであれば五、六割という数値をお示ししたところでありまして、これが政府目標ではありません。これをベースに、どういった課題があるのか、どういったイノベーションをする必要があるのか、また、何を克服すべきかということを議論した上で、その上下の数値について議論をしていくということであります。
 そのための参考値ということで、目標値ではないということを、御理解をいただきたいと思います。

◎ 岡田委員 目標値じゃなくても、これをベースに議論していくということになれば、やはりそのベースの数字として適切かどうかということが当然問われるわけですね。
 先ほど言いましたように、二〇三〇年段階でイギリスやドイツはこれ以上の、六割以上の数字を目標として掲げている。それから二十年かかってそのレベルに行かないというのは、私は納得できないですね。
 それはいろいろな意見がありますよ。いろいろな意見がある中で、一〇〇%いけるという意見も、今大臣おっしゃったように八〇%という意見もあった。それを取らずに五〇から六〇という数字を選んだというのは、私は非常に恣意的だと思いますよ。
 だから、これはもう少し、別に一〇〇にしろと言っているわけじゃありませんし、これからの技術開発がどういうふうに進んでいくかということは、これは不確定な要素がありますから、幾つかのシナリオを置くというのはいいんですが、ベースが五〇から六〇というのはおかしいでしょう、私はそう思っています。
 小泉大臣に聞きます。
 小泉大臣の考えは大分違うんじゃないですか。環境省は、今ある電力の全体の量、これは再エネだけじゃなくて、石炭とか原子力全部含めた、その量の二倍までは再生エネルギーのポテンシャルはあるんだというふうに言っています。
 一方で、この五〇とか六〇とか、あるいはもっと低い数字を言った人の中には、日本には平地が少ないとか、あるいは遠浅の海が少ないとか、そういうことを言っていますね。でも、コストという話が出ましたが、日本の再エネのコストは、確かに現時点ではまだ高いけれども、国際的に見ればもう十分に既存のエネルギーと競争できるところまで来ている。だから、そんなに新たな開発をしなくたってできるはずでしょう。小泉さん、どうですか。

◎ 小泉国務大臣 岡田委員に御紹介いただいたとおり、我々環境省は、日本の中で、今のエネルギー需要の二倍の再生可能エネルギーのポテンシャルがあるとデータを出しています。それを考えれば、我々の前提は、いかに再生可能エネルギーの導入量を拡大するかです。
 その中で、私は再生可能エネルギーの不信論を払拭したいと思っています。よくコストと言われます。しかし、コストは海外でも下がり続けています。日本も間違いなく、これから下がります。そして、再生可能エネルギーは、太陽光、風力を含めて、晴れたときはいいけれども、そうじゃないときはどうするんだとか、風が吹くときはいいけれども、吹かないときはどうするんだと。海外は、それを調整するためのイノベーションをやっているんです。
 私は、日本の技術とかを考えれば、なぜそういったイノベーションに、より日本の技術と知恵を使わないのか。それがあった上で初めて、十七兆円、外に払っているお金を日本の中に戻すことができる、エネルギーの自立も、財政的にも、気候変動対策にも資する、そういった思いがありますから、政府全体として今後決めていく中で、環境省として、気候変動を取りまとめる立場として、必要な主張をしていきたいと思っています。

◎ 岡田委員 今言ったその数字、五〇から六〇とか、そういう数字は元々は総合エネルギー調査会で議論されている。総合エネルギー調査会、経産省の審議会の一つですね。エネルギーの安定供給というものを主なタスクとしている。もちろん、そのほかの、価格の問題とかいろいろやっていますが、やはり元々はエネルギーの安定供給なんですよ。
 私は、やはり今、二〇五〇年カーボンゼロだということが政府の方針として決まっている以上、やはりその考え方を基にして、まず閣内できちっと調整すべきじゃないかと。五〇とか六〇とかいう数字が独り歩きするんじゃなくて、環境省と経産省と、あるいは関係省庁が集まって、まずどのぐらいを目指そうか、そのことを、もちろん専門家の意見も聞いて、まず決めるべきじゃないか。で、そのことが可能なのかどうかという検証をすればいい。それは五〇、六〇じゃないだろうというふうに思うんですが、総理、いかがですか。

◎ 菅内閣総理大臣 二〇五〇年のカーボンニュートラル、これを実現するために、具体的な政策、道筋、そうしたものを、専門家の意見も踏まえながら、これから検討を進めていくわけであります。
 そういう中で、議論を経た後に二〇五〇年を決定する際には、今後の我が国の社会や産業の基本的な方向性を位置づける極めて重大な数値になりますので、これは、専門家の意見、関係者からも様々な意見は聞かせていただきますけれども、最後はまさに内閣として、二〇五〇年ゼロに向ける、向かうという、そうした方向性をしっかりCOP26までにはつけたい、このように思います。

◎ 岡田委員 私は、総合エネルギー調査会じゃなくて、総理の下でしっかりとした議論すべき場をつくって、政治主導で議論すべきだというふうに思っています。
 時間も限られていますので、北方領土の問題を少し取り上げたいと思います。
 昨日の鈴木さんとのやり取りも聞いていましたが、私、よく分からないんですが、施政方針演説で、総理は、シンガポールでの首脳会談のやり取りは引き継いでおり、これまでの諸合意を踏まえて交渉を進めるというふうに言われました。この意味がちょっと私には分からないんですね。
 シンガポール合意というのは何か。一九五六年宣言を基礎として平和条約交渉を加速化させることを合意したと。このシンガポール合意の最大の眼目は、それまでの日ソのあるいは日ロの首脳会談、歴代会談の中では、諸合意、諸文書を基礎としてということを必ず確認してきたんですね。それは、やはり東京宣言、従来、領土問題は存在しないと言ってきたソ連、ロシアに対して、北方四島の名前を明示して、そしてそこに領土問題が存在するということを確認したのが東京宣言です。もちろん、どこに線を引くかまでは両国で合意していませんが、領土問題が存在するということを確認した。ところが、シンガポール合意では、それをあえて、今までのやり方をやめて、五六年宣言だけを言及した。ここで大きく変わったと思うんですね。
 つまり、五六年宣言というのは、国後、択捉は出てこない、歯舞、色丹も、引き渡すとしか決めていない。そういうものに限定したということは、私は、安倍さんはそこで二島に完全にかじを切ったというふうに思いますし、そう思われても仕方がない。
 ところが、総理は今度、諸合意を踏まえてと言い出した。そうすると、東京宣言やイルクーツク声明、この前、枝野代表の質問に答えていましたよね、諸合意というのはそういうものだと。
 これはシンガポール合意と路線が変わっているんじゃないかと私は思いますが、同じなんですか、総理。

◎ 菅内閣総理大臣 まず、二〇一八年十一月のシンガポールの首脳会談では、一九五六年宣言を基礎とした平和条約交渉を加速させる、このことで合意をすることが確認をされています、日ロの首脳会談の中で。その際のやり取りは引き継いでおり、また、これまで両国間の諸合意を踏まえて交渉していくという、その考えも変わりありません。
 それで、今委員から言及がありましたけれども、この両国間の諸合意というのは、二〇一八年のこのシンガポールの合意のほかに、二〇〇一年のイルクーツク声明だとか一九九三年の東京宣言、こうしたものが含まれております。

◎ 岡田委員 総理、答えてもらっていないんですけれども、二〇一八年の安倍さんとプーチン大統領とのシンガポール合意というのは、諸合意というのを外したんですよ。今まで必ず日本外交の成果として掲げてきた諸合意というのを外して、五六年宣言だけを基礎とすると。だけとは言っていませんが、ほかは言及せずに、五六年宣言を基礎とする。それが、今回また諸合意を踏まえてというふうに総理が言われると、それは、私には元に戻ったんだなというふうにも思われますが、総理は変わっていないと言うから、私には理解できないんです。
 いかがですか。

◎ 菅内閣総理大臣 今私申し上げましたように、まず、シンガポール合意、その際のやり取りは引き継いでおり、これまでの両国間の諸合意も踏まえて交渉を進めていく考えに変わりはない、これが政府の基本的な考え方です。

◎ 岡田委員 日本政府の考え方がどうこうということではなくて、両国が何を確認したか、それは議論のベースですから、大事なんですね。
 シンガポール合意では、諸合意というのは言及されずに、五六年宣言のみが言及された、これを基礎とする。
 じゃ、今度プーチンさんに会ったときに、いや、諸合意も踏まえてとおっしゃるんですか、総理。相手は、シンガポール合意と違うと言って怒り出すんじゃないですか。
 いかがですか。

◎ 菅内閣総理大臣 日本の立場というのは、今私申し上げたとおりに、シンガポール合意、そしてイルクーツク声明、東京宣言、こうしたものが含まれるというのが日本の正式な立場であって、それは変わりありません。

◎ 岡田委員 日本の立場といっても、安倍さんとプーチンさんでそういったものをあえて言及しないシンガポール合意だから注目されたんですよ。それを、また諸合意がと。じゃ、今度の首脳会談で、いや、諸合意もまだ残っているんだよというふうに言われるんですか。
 いや、私は歓迎しているんですよ。やはり今までの、東京宣言を始めとする諸合意がないと二島だけになってしまう、それどころか、安倍さんはその二島すら取れなかった。かなり、私は日本は今、不利な状況になっていると思うんです。それをもう一回巻き戻す、それが菅総理の役割じゃないかと思っています。
 続きはまた別の機会でやりたいと思います。
 終わります。




TOP