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3/18 外務委員会質問 (在外公館・外務公務員給与法改正案 北方領土について)

【委員会】 外務委員会
【日 時】 3月18日 15時7分~15時51分 (44分)

 動画はこちら ⇒ https://youtu.be/jaTjETbzwwk

【質問要旨】
1.在外公館・外務公務員給与法改正法案について
2.北方領土問題について

                     ―――――― ◇ ―――――― 

次に、岡田克也君。

◎ 岡田委員 まず、法案について若干質疑をしたいと思います。
 今回、フィリピンのセブに総領事館を設置するということですけれども、例えば、他のASEAN国の比較で見ると、インドネシアなどは総領事館が多いわけですが、タイはチェンマイだけ、ベトナムはホーチミンだけ。そういう中でフィリピンに二つ目の総領事館を置くことにしたというのは、若干、バランス上どうなのかなという感はありますが、なぜフィリピンに二つ目の総領事館を置くことにしたのか、お答えいただきたいと思います。事務方でいいです。

◎ 垂政府参考人 外交実施体制を強化するため、二百五十公館の実現を含め、体制の強化に努めているところでございます。また、地理的特性など、各地域ごとの事情を勘案しつつ、戦略的な在外公館の配置を進めております。
 セブは、成長著しい東南アジア主要国の一つであるフィリピンの第二主要都市でございますし、邦人渡航者数や日系企業者数も大幅に増加していることを踏まえまして、今般、総領事館を新設したところでございます。
 また、フィリピンは、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有し、南シナ海の問題を含め、地域及び国際社会が直面する課題に取り組む戦略的パートナーでございます。
 在外公館の配置は、安全保障上の観点や戦略的対外発信、資源獲得、日本企業支援といった経済上の観点、テロ対策を含む邦人保護、国際社会における我が国への支持獲得等、総合的に勘案して進めるものであります。
 こうした観点から、フィリピンに二つ目の公館を設置したところでございます。

◎ 岡田委員 既にダバオに総領事館があるわけですね。セブも、予定されている管内の在留邦人は約三千人、日系企業は二百五十社と、そんなに多いものではないし、ダバオは更に邦人も企業も少ないという中で、これは二つを一つにできなかったのか、そういう気がしてならないんですが、いかがでしょうか。

◎ 垂政府参考人 御指摘のとおり、さきにダバオにも総領事館を設置しているところでございます。
 ただ、ダバオでの設置理由と今般のセブの設置理由、それぞれ異なるところでございます。
 ダバオにつきましては、二〇一六年に就任したドゥテルテ大統領の地元であり、政治的な重要性、こちらを勘案したところでございます。また、ダバオを含むミンダナオ地域は、イスラム過激派によるテロ発生の不安定要因が存在しております。そうした意味からも、邦人援護に加え、地域の治安、テロ対策の観点からも現地における情報収集の必要性があったというふうに考えております。
 また、セブにつきましては、先ほど申し上げました経済的な理由及び在留邦人、それから、当地を、セブを訪問する日本人観光客、こちらが非常に急増しているということもありまして、セブにも設置を求めているものでございます。
 地理的特性、地域ごとの事情を勘案しつつ、戦略的に在外公館の設置を進めているところでございます。

◎ 岡田委員 大統領の要請があったからというのは、大統領が求めたらつくるのかという、ちょっとよくわからない理由だったと思うんですが。
 いずれにしろ、ちょっとフィリピンの問題はともかくとして、総領事館というのをどういうふうに位置づけるのか。大使館のないアフリカの国々に大使館をつくっていくということの意義は私は認めるんですが、しかし、どんどん何でもふやせばいいというものでもないだろう。よほど交通手段が限られていて、かけ離れた場所にあるとか、そういう特別の理由がある場合を除いては、やはり、総領事館をむしろ減らして大使館に機能を集約する、そして、その枠でもってアフリカに新たな大使館を設けていく、そういうスクラップ・アンド・ビルドの考え方に立つことも、限られた資源を有効に使うという意味では重要なことではないかというふうに思うんですが、この考え方について、大臣のちょっと御見解を聞いておきたいと思います。

◎ 茂木国務大臣 一つのお考えではあると思います。日本として二百五十公館の実現を目指す中で、実館が存在しない国への大使館の新設であったり在外公館の質の向上、これは極めて重要だと思っております。
 そして、アフリカ等で、どうしても、兼館になっておりますと、なかなかその国のトップに大使がアクセスできない、兼館になっている方がですね、こういった課題もあるところでありまして、これもふやしていきたい。
 一方で、総領事館については、在留邦人の保護であったり、通商経済活動の処理、政治経済その他の情報の収集、分析、そして広報文化活動等、さまざまな役割を担っておりまして、外国の主要な都市、これに今設置をしているところでありまして、両方やれれば間違いなくいいわけでありますけれども、そこの中で、大使館をどうしていくか、総領事館をどうしていくか。できれば、私としては、両方バランスよくふやしていきたい、こういったことで考えております。

◎ 岡田委員 私は、特に先進国と言われる地域の総領事館の役割というものはもう一回しっかり見直してみた方がいいんじゃないか、過去のいろいろな歴史の中で置かれているけれども、交通手段やあるいは情報手段が変わった中で、果たして今の体制が必要なのかどうかということはもう一度検討してみる必要があるのではないかというふうに思っております。
 次に、事務方で結構ですが、今回の在勤基本手当の額を決定するに当たって一般生計費等調査というのを行っているわけです。その調査をつくるに当たって関与した者として、現時点において、調査の具体的内容、あるいは、果たして意義があるのかどうかということについて、簡単に説明していただきたいと思います。

◎ 垂政府参考人 お答えいたします。
 在勤基本手当につきましては、外務人事審議会の勧告に基づき、平成二十三年度より、民間企業の手法に準拠し、民間調査会社に毎年委託して行っている生計費調査の結果、物価の変動の影響を反映させております。また、為替相場の変動の影響も加味し、こうしたことにより、客観性を担保した上で、適正な基準を定めているところでございます。
 その中でも、生計費保障につきましては、食料品や衣料品等の日常生活費に充てるものであり、国内勤務時と同水準の生活を在勤地においても維持するという購買力補償の原則に基づき算定しているものでございます。

◎ 岡田委員 それから、大臣にちょっとお聞きしたいんですが、在外職員というのは超過勤務手当というのは支給されないというふうに私は承知をしているんですが、これはなぜなんだろうか。もちろん勤務の特殊性というのはあると思いますが、でも、例えば民間の商社なんかだと、ちゃんと超過勤務手当を出しているんじゃないかと思うんですね。
 働き方改革も随分言われる中で、やはりめり張りのある働き方ということを考えたときに、本当に超過勤務手当を支給しないということでいいのかどうか。あるいは、女性の職員もふえていますが、在外で女性の職員が働く場合に、やはり、残業手当、超過勤務手当を出さないということは、勤務時間がやたら長くなってしまう、そういう心配もあるわけですが、果たしていいんだろうか。
 これは一回ちゃんと議論してみた方がいいのではないかと私は思っておりますが、そういう問題意識はありませんか。

◎ 茂木国務大臣 まず、外務省、在外においても働き方改革はしっかり進めていかなければいけないと思っておりまして、外務省の職員一人一人が海外でのさまざまな勤務環境の中で能力を十分に発揮できるような環境を整備する、これは外交実施体制の強化のための重要な課題だと考えておりまして、在外公館においても、職員の業務や国ごとの特殊性、例えば情報通信システムがどう発達しているかとか、休みの日が日本とは違う日とか、さまざまな習慣もあったりしますので、そういったものも踏まえながら、引き続き、働き方改革の推進に努めていく考えであります。
 在外の職員の勤務の状況と例えば商社の方、似ている部分も確かにあると思うんですが、恐らく、家族ぐるみでの相手国の関係者との人脈構築、こういったことはやはり外務省の職員の方が多いんだと思いますし、赴任している国を考えましても、もちろん、商社でもかなり、アフリカであったり、仕事の環境が厳しいところはありますが、外務省の場合、それ以上に多くの国に、また多くの地域に職員というのが勤務をする。こういう状況にある中で、例えば先進国であればそういうことはできるのかもしれませんけれども、外務省全体の在外ということで考えますと、処遇面においては、在外職員に超過勤務手当、これは支給されておりませんが、日本と異なる海外での業務にしっかり対応できるよう、在勤手当、これで対応を図っているところでありまして、恐らく全世界、こういった形で見たら、この方が適切な対応ではないかなと考えております。

◎ 岡田委員 ちょっとわからないんですが、非常に厳しい勤務地域であれば在外勤務手当をその分かさ上げすればいいわけであって、超過勤務手当を出さないことの理由には私はなっていないように思うんですね。ここで即答しろとは言いませんが、少し問題意識を持っていただいて、検討をしてみてはどうかということを提案しておきたいというふうに思います。
 それでは、次に、がらりと変わりまして、北方領土問題について、きょうはちょっと大臣と議論したいと思っております。
 まず、二月十五日の記者会見で、ラブロフ外相との会談後の記者会見なんですが、外務大臣はこういうふうに述べられています。交渉を前進させるための方策について私の考え方をより具体的に伝えた、フェーズが変わってきていると思っている、原則論をお互い闘わすのではなく、より前向きな話合いに入っている、基本的な立場の違いを埋めていくための共同作業を進め、協議を進展させていく、こういうふうに言われたわけですね。
 フェーズが変わっているとか共同作業、非常に前向きに物事が進んでいるという期待を抱かせるような御発言ですが、もう少し具体的に、もちろん、これは交渉の話ですから限界があることは承知しておりますが、フェーズが変わったとか共同作業というのは具体的にどういうことなのか、もう少しお話しいただけませんでしょうか。

◎ 茂木国務大臣 岡田委員も外務大臣を経験されて、こういった交渉事を進めている中で、話せる限界があるのはよく御存じだと思いますが、ラブロフ外相との間で既に四回にわたります外相会談を行っております。
 特に、昨年の十二月、モスクワを訪問いたしまして、ラブロフ外相と二日間にわたって八時間、これは外相会談としては相当長い時間になると思いますが、そこで本当に忌憚のない意見交換を行ったところであります。
 率直に申し上げて、余り、原則論といいますか、お互いの立場といいますか、もともと主張していた、こういったことを闘わすのではなくて、この議論の多くの時間を、一体、双方が受入れ可能な解決策というのは何なんだろうか、こういう議論に充てている、これが実態のところでありまして、もちろん、完全に立場の違いが埋まっているわけではありませんけれども、これを埋めていくことが重要なんだ、そのためにどう今までにない解決策を見出そうか、こういう前向きな議論が行われている、このように考えております。

◎ 岡田委員 これは予算委員会でも問題になりましたが、谷内前国家安全保障局長が民間のテレビ番組に出て、そこで日ロ交渉について語っているわけです。
 谷内さんは三点を指摘して交渉の困難さというものを言われたと思いますが、三点というのは、まず一つ、北方領土は、第二次世界大戦の結果、正式にロシアのものになった、その事実を日本はまず認めろと。それから二番目、全ての外国軍隊、米軍のことを念頭に置いていると思いますが、外国軍隊は撤退すべきである。三番目、日ロ平和条約をまず結んだ上で領土問題を解決する。
 この三点、いずれも日本としては受け入れがたいもので、したがって交渉は進んでいない、そういう趣旨のことを谷内さんは発言されたと私は受け取っておりますが、この三点の中で受入れ可能なものというのは日本にとってあるんでしょうか。

◎ 茂木国務大臣 谷内前国家安全保障局長の発言、これは、委員も今触れていただいたように、日ロ間の平和条約交渉、さまざまな難しい課題がある、こういう趣旨で発言をされたんだ、このように理解をいたしておりますが、例えば、最終的に平和条約を締結する、この段階で、安全保障の問題を何も議論しないで平和条約の締結、そこまで行くということは私は想定できません。それはやはりすることになるんだと思っておりますが、いずれにしても、今、交渉がまさに進められているところでありまして、委員が今御指摘いただきました三点も含めて、我が国の具体的な交渉の方針、その進め方、内容につきましては、外交の機微にわたる問題ということで、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

◎ 岡田委員 ちょっと観点を変えて確認したいと思いますが、日本政府の基本的な考え方は、領土問題を解決して平和条約を締結する、こういうことですが、この日本政府の基本方針は何ら変わっていないということでよろしいですね。

◎ 茂木国務大臣 それで結構です。

◎ 岡田委員 そこで、領土問題を解決してということの意味ですが、昨年二月十二日の予算委員会で私は安倍総理に確認をいたしましたが、安倍総理の発言は、国境を画定することによって平和条約を締結する、平和条約を締結することは国境を画定することでもありますというふうに明確に述べられて、議事録にも残っております。
 つまり、領土問題の解決というのは国境を画定することである、こういうふうに明言されたわけですが、そこの考え方は、日本政府の考え方は変わっていない、確認したいと思います。

◎ 茂木国務大臣 領土問題の解決、北方四島の帰属の問題を解決し国境を画定する、これなくして平和条約を締結することはない、こういう考えに変わりはございません。

◎ 岡田委員 四島の帰属の問題を解決してという言葉が入りましたが、総理は、昨年二月十二日の予算委員会においてはそのことは言われていないんですね。領土問題の解決というのは国境を画定するということであると。
 私は、領土を画定するということかと思ったら、更に踏み込んで国境を画定するというふうに総理は言われたものですから、ちょっと驚いたところなんですが、いずれにしろ、国境を画定するということであるということでよろしいですね、領土問題の解決というのは。

◎ 茂木国務大臣 考える順序ということだと思うんですけれども、四島の帰属が決まらないで国境線を画定するということは、恐らく、ちょっと私の想像を超えている話でありまして、ですから、帰属の問題を解決して国境を画定する、領土問題を解決して平和条約を締結する、こういったことになると思います。

◎ 岡田委員 もう一度確認しますが、国境を画定することなくして平和条約を締結することはない、こういう意味でよろしいですね。

◎ 茂木国務大臣 前段も含めて、国境を画定することなくして平和条約を締結することはございません。

◎ 岡田委員 ここが実は私は心配をしているところであります。さっきの谷内さんの言う三つの話とも関係するわけですが、ロシア側はかねがね、日ロ平和条約をまず結んだ上で領土問題を解決しようと、これはプーチン大統領がセミナーの場で、公の場で突然言われたということもありました。ロシア側のかねがねの主張であります。
 そういうことにはならないということで確認したいんですが、いかがでしょうか。

◎ 茂木国務大臣 国境問題を解決して平和条約を結ぶ、それが日本の考え方でありまして、それが逆になるということは考えておりません。

◎ 岡田委員 日本の考え方はわかるんですが、交渉に当たって、そういう解決というのはあり得ないのかどうか。
 もちろん、私はロシア側の言っていることがよくわからないところもあって、まず平和条約を結びましょう、その上で領土問題だというのは、そこで言う平和条約というのは一体何なのか。通常よく言われるように、平和条約というのは、戦争の停止、賠償問題、そして領土の画定。二つは日ソ共同宣言でもう終わっている。残っているのは領土の画定である。だから、その領土の画定をあやふやにしたまま平和条約を結ぼうと言っているロシアの意図もよく私はわからないんですが。
 大臣は、プーチン大統領あるいはラブロフ外相も恐らく言っていると思いますが、まず平和条約を締結して領土問題をその後解決しようというのは、具体的にどういう意味なんでしょうか。

◎ 茂木国務大臣 もちろん、プーチン大統領の発言について私が有権的に解釈するような権限を持っているわけではありませんが、恐らくそれは、そういう順番であるとしたら、何らかの友好善隣関係の確立とか確認ということなんだと私は思います。それを条約と呼ぶかどうかは別にしまして。
 ただ、平和条約というものは、当然、領土問題の解決があってなされるべきだと思っております。国境線を画定する、領土問題を決着させる。同時に、それ以外も若干の問題が残っております。全てが解決しているわけでありませんが、そういった問題も含めて解決をした上で、平和条約をしっかり結んでいきたいと思っております。

◎ 岡田委員 大臣は友好善隣条約と言われましたが、あるいは、経済とか投資とか、そういうものについて条約を結ぶ、それをもって平和条約と称するが、国境の画定は入っていない、そういうことはあり得ないということでよろしいですね。

◎ 茂木国務大臣 恐らく、それをピーストリーティーとは呼ばないと思います。何らかの形の、協力関係に関する合意書とかそういうものは、経済の分野かわかりませんが、ないとは言いませんが、それを完全な平和条約と呼ぶことは、国際的に、一般的にないと思っております。

◎ 岡田委員 大臣の方からかなり明確に答弁をいただいたというふうに考えておりますので、領土問題を残したまま平和条約を締結するということは日本政府としてはあり得ないというふうに理解をしておきたいと思います。
 もう一つは、日ソ共同宣言を基礎としてというふうに安倍総理とプーチン大統領の間で合意されて、従来は、東京宣言などと日ソ共同宣言を並べて基礎として交渉するということだったのを、日ソ共同宣言だけが基礎になっているという現状について、私は危惧の念を持っているわけであります。
 現に、例えば、ラブロフ外相が、二〇一九年一月十四日の日ロ外相会談後の記者会見でこういうふうに言っているんですね。一九五六年、日ソ共同宣言ですね、一九五六年の宣言を基礎として作業することを確認したが、これは、南クリルに対するロシアの主張を、第二次世界大戦の結果を完全な形で認めることを意味する旨、ラブロフ外相は述べています。
 つまり、五六年宣言を基礎とするということは、第二次世界大戦の結果、北方四島がロシアのものになったということを日本も認めたんだという趣旨でお話しになっていると思うんですが、そういうふうに解釈されかねない危うさは私はあると思います。
 東京宣言というのは、四島それぞれ名前を挙げて、四島の帰属ということで、その四島のどこに線を引くかはともかくとして、四島に領土問題があるということを確認したわけですが、それをあえて言及しなかったということは、結局ロシア側に、もう既に四島は、第二次世界大戦の結果、ロシアのものになったというふうに主張する余地を与えてしまっているのではないかと私は思いますが、大臣の見解を聞きたいと思います。

◎ 茂木国務大臣 日本として、この一九五六年の共同宣言を基礎とするということで、決して、東京宣言であったりとかイルクーツク宣言、これはもう有効ではないということを言っているわけではなくて、これまでも日ロ間では、九三年の東京宣言そして二〇〇一年のイルクーツク声明を始め、これまで多くの諸文書であったりとか諸合意を作成してきておりますので、これら全ての諸文書や諸合意を踏まえた交渉を行ってきているところであります。
 中でも、御案内のとおり、五六年宣言、これは両国の立法府が承認して両国が批准した唯一の文書でありまして、現在も効力を有している。この中身については、岡田委員よく御案内のとおりでありますが、従来から説明してきておりますとおり、ここにあります、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、これが政府の一貫した立場であります。

◎ 岡田委員 日本政府の考え方はそういうことですが、ロシア側にはロシア側の主張があって、それで折り合いをつけたのが私は東京宣言だったというふうに思うんですね。四島の帰属の問題というものが残っているということを明確に確認した、お互いが合意したということです。それまでは、ソ連時代には領土問題は存在しないと言ってきたわけですね。それに対して、いやいや、領土問題は四島にあるということを確認した。
 そういう意味で、私は東京宣言は非常に重要な確認だったというふうに思うわけですが、それをあえて言及しなくなった。いやいや、言及しなくても、かつて言及していたからとか、宣言そのものは無効になっていないからというふうに幾ら言ったところで、数あるそういった確認文書の中で五六年宣言だけを取り上げて基礎とするというふうに言ったということは、私は、ロシア側に、四島の帰属の問題というのはないんだ、もうこれは全部ロシアのものだということを主張する、そういう根拠を与えてしまっているというふうに考えるんですが、大臣、いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 岡田委員の御懸念は承りました。
 その上で申し上げたいのは、今交渉を行っておりますが、まさにこれは四島の帰属の問題、領土の問題について交渉を行っているということであります。

◎ 岡田委員 四島の帰属といいますが、五六年宣言は、国後、択捉は名前が出てくることもない、歯舞、色丹については平和条約締結後引き渡す。ロシア側は、それは引き渡すということであって、所有権を認めたということでは必ずしもない、こういうふうにも言っています。非常に、そういう意味では、ロシア側の、四島は、そもそも第二次世界大戦の結果、ロシアのものになったという主張に根拠を強く与えかねない、そういう状況ではないか、そういうふうに私は思うんですが、なぜ安倍総理は五六年宣言だけを取り上げたんでしょうか。従来のように東京宣言あるいはその他の宣言を並べるということをやめられたのか。そこはどういうふうに理解したらいいんでしょうか。

◎ 茂木国務大臣 先ほども申し上げましたが、これまでの諸宣言そして諸合意を踏まえた交渉を行っておりますが、五六年共同宣言、これは両国が承認して両国が批准した唯一の文書であるということで、その部分にハイライトを当てているわけでありますが、五六年宣言、九項は御案内のとおり二つの要素からできておりまして、一つが平和条約交渉が継続をされるということ、そしてもう一つ、平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡される、こういったことが規定されておりまして、そして、この平和条約交渉の対象となるのはまさに四島である、これが日本の立場でありまして、そういった立場を踏まえて交渉を行いたいと思っております。

◎ 岡田委員 現在の日本の主張はそういうことかもしれませんが、その当時どうだったのかという問題もあります。少なくとも、名前は出てこない、国後、択捉は。歯舞、色丹についても、引き渡すという表現だけであって、それは本来日本のものであるということにもなっていない。そこは、日本の主張は、いや、認めたということになるんだと思いますが、そういう状況の、かなり問題が残る五六年宣言だけにしたというのは、よく私はわからないんですね。
 もう一つ、安倍総理がこの五六年宣言のみを基礎にすると、まあ、のみと言っているわけじゃありませんが、これだけを取り上げたというのは、少なくとも、歯舞、色丹は戻ってくるという確信を得てこういう言い方をされたのかというふうには思うんですね。しかし、現実にはそういう状況にはなっていない。
 交渉を今されているということだろうと思いますが、進展は具体的にないという状況で、私は、やはり安倍総理がプーチン大統領の意図を読み誤ったというふうに考えざるを得ないんだと思いますが、いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 安倍総理、プーチン大統領との間で、もう二十四回にわたります首脳会談を行っております。さまざまなやりとりを行う中で、意思の疎通といいますか信頼関係は、私は構築できている、間違いなく構築できていると考えておりまして、プーチン大統領の考えを総理が読み間違っている、この御指摘は当たらないと思っております。
 その上で、こういった交渉事、委員も御案内のとおり、最終的にまとまるまで表面に出てまいりません。その間、さまざまなやりとりがありますが、そうすると、交渉に直接かかわっていらっしゃらない、しかし関心を持たれている方からすると、全く進んでいないんじゃないか、こういう御心配をいただくというのも十分理解をするところでありまして、まず粘り強く交渉してしっかり結果を出して、それを国民の皆さんに、また国会の皆さんにお示しできるように、粘り強く交渉責任者として努めてまいりたいと思っております。

◎ 岡田委員 交渉の中身が交渉当事者以外はわかりませんから、そういうふうに言われてしまうと、なかなかそれ以上言いにくいんですが、でも、そうやって期待を持たせてずっと引っ張ってきたけれども、もう随分時間もたったけれども、いまだに具体的なことは何ら見えてこないというふうに思うんですね。
 では、大臣、一月二十日の本会議での外交演説で、こういうふうに大臣は言われたんですね。十二月に、ラブロフ外相と時間をかけて議論を行い、本格的な平和条約交渉の協議に入ることになった、こう言われました。私はこれを聞いていて、おやっと思ったんですが、では、今までは本格的じゃなかったのかと。
 大臣の前任者や前々任者の時代は本格的な交渉をやっていなかったのかというふうにも受け取られかねない、そういう一言だと思うんですが、どういう意味ですか、本格的な交渉の協議に入ることになったというふうに言われたのは。

◎ 茂木国務大臣 冒頭申し上げましたが、昨年十二月に、私として外務大臣に就任後初となります訪ロを行いまして、平和条約交渉について、ラブロフ外相と二日間にわたって、八時間、相当じっくり時間をかけて議論を行って、本格的な交渉に入ることができたと考えておりまして、双方の基本的な立場の違いを埋めていく方策について、お互いが知恵を出しながら突っ込んだやりとりを行った、こういったことで、御指摘いただきましたこの国会におけます外交演説、そこではその部分をそう表現させていただいたということであります。
 日ロ交渉につきましては、安倍総理そしてプーチン大統領の間で、二〇一六年十二月の長門での合意、そして一八年の十一月のシンガポールでの合意がなされ、これらに基づきます交渉が進められるとともに、四島での共同経済活動、そして八項目の協力プランなど、日ロ関係全体が大きく進展をしてきているわけでありまして、これと並行しまして、私の前任者、前々任者の外相間でもしっかりと交渉が行われてきているわけであります。
 政府として、領土問題を解決して平和条約を締結する、この基本方針のもとで、引き続き粘り強く交渉していきたいと思っておりますが、やはり、どこまでのスコープで議論をするのか、ある程度確定をされるような作業をしていかなきゃならない。それを一つ一つ詰めていく、恐らくそれが交渉なんじゃないかなと思っております。
 ただ、こういった交渉というのは、一つのことが合意しても、全体が合意しなければ合意にはつながらない。ナッシング・イズ・アグリード・アンティル・エブリシング・イズ・アグリード、これが基本でありますから、そういったことで全体のスコープを決めながら一つ一つ議論をして、最終的にもう一回確認する、こういうプロセスに入るんだと思っております。

◎ 岡田委員 例えば、大臣は今、共同経済活動に言及されましたが、共同経済活動を合意したときは、領土交渉が進まない中で、まずは共同経済活動を行うことで信頼関係を醸成していこう、こういうことだったと思うんですね。だから、それまで領土交渉が進んでいないということはお認めになった上で、まずは信頼関係醸成のために経済活動をやっていこう、こういうことだったと思うんです。
 その共同経済活動自身も、いろいろなアナウンスはされますけれども、実際にどういう法律的な基盤の上で行うのかということについては全く触れられていない。どちらの法律を適用するのか、あるいは第三の道があるのか。第三の道しか私はないんだと思いますが、では、どういう第三の道があるのかということについては全く聞こえてこない。私は、交渉は停滞しているというふうに言わざるを得ないと思うんですね。
 共同経済活動については、大臣はどういう認識ですか。

◎ 茂木国務大臣 共同経済活動は、去年も観光等に関するパイロットツアー等々のパイロットプロジェクトを行われてきたところでありますし、ごみの処理の問題、そしてまた養殖の問題、これについても、養殖では魚種を絞ったりとか、そういった形で共同経済活動を本格化させていく、こういった協議を今ロシアとの間では進めている、こういう段階にあるわけでありまして、当然、人の移動の問題であったりとかさまざまな法的な枠組み、これにかかわる問題が出てくるわけでありまして、両国の立場を害さない中で、どうやってこの共同経済活動を進めるか。これは、一つには信頼醸成でもありますし、同時に、こういったことを通じて、より領土問題等々についてクリエーティブな考え方がないか、こういったことを模索する、こういったものにもつながっていくと考えております。

◎ 岡田委員 その共同経済活動の検討が始まって時間も大分たちますが、いまだに具体的なプロジェクト、こういうものがありますとか、こういうふうに人が行って調査しましたとか、そういうことはあっても、では、どういう法的基盤の上に行うのかということについては何も発信されていない。何も進んでいないとしか思えない、そういう状況。つまり、やっている感は出すんだけれども、現実は進んでいないということの典型ではないか、私はこういうふうに思っているんですが。
 何か、では、どういうアイデアで両国の立場を害することなく共同経済活動ができるのか、一端でもいいから、ちょっと御説明いただけませんか。

◎ 茂木国務大臣 昨年の観光のパイロットプロジェクトでも、実際に人の行き来というのは起こっているわけであります。そこの中で、どういう法的な枠組みでやるかという工夫をしながらそういったことをやってきた。恐らく、より大規模なもの、ごみの処理についても、日本の単に技術協力といいますか知見を提供するだけだったらそうではないんですけれども、仮に設備をつくるとかいうことになりますと、その設置であったりとかオペレーションで人が行くことになるわけであります。
 そこで生まれてくる人の移動の問題であったりとか、そこで生まれてくる収益についてどうするかということについて、それは何らかの取決めというのが必要になってくるわけでありまして、こういった事業が本格化すればするほど、そういった詰めの作業も一緒に進めなければいけないという考え方で議論を行っております。

◎ 岡田委員 もっとざくっと言っていただきたいんですが、例えば、国会議員の不逮捕特権が適用されるから大丈夫だと言った国会議員もいますけれども、要するに、何か事件に巻き込まれたときに、刑法とか、ロシアの刑法を適用されるということになると、それはロシアの領土であることが前提になりますよね。といって、日本の刑法というわけにもいかない。どうするんですか、これは。どういう考え方で整理するんですか。

◎ 茂木国務大臣 何かラブロフ外相と議論しているようで、余り、もうこれ以上申し上げられない部分はあるんですけれども、いろいろな人の移動、そしてお金の流れ等々で何らかの取決めというのを行っていかなきゃならない。それが大きな意味では法的な枠組みをつくるということにつながっていく。さらにそれが、より大きな問題としては領土問題の解決ということにつながっていくと考えております。

◎ 岡田委員 私は、安倍総理の任期ももう一年半ということになって、今必要なことは、後の世代にマイナス、負の遺産を残さないことだというふうに思います。
 ですから、せっかく東京宣言を両国で合意したのに、それが今なくなってしまっている状況。そういう状況をもう一度もとに戻して、そして、日ソ共同宣言もいいです、だけれども、同時に東京宣言等も交渉の基礎にする。四島に領土問題は存在する、そういったところに戻す責任が私は安倍政権にはあるんだというふうに思います。
 このまま終わってしまったら、もうそれが前提になって、今後の交渉を非常に拘束することになってしまう。そうならないようにすることも外務大臣の重大な責任だというふうに私は思いますので、安倍さんはやめてしまえば総理大臣じゃなくなりますが、茂木さんはまだ将来がある人ですから、そこはきちんとけじめをつけられるということが私は大事だということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。




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