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10/23 外務委員会(北方領土問題、北朝鮮問題、日米貿易協定)

【委員会】 外務委員会
【日 時】 10月23日(水) 13時30分~14時01分 (61分)

*動画はコチラ
⇒ YouTube 【岡田かつや国会論戦】 https://youtu.be/PBROqcCYIWY

【質問要旨】
1.北方領土問題
 ・共同経済活動に伴う特別な制度
 ・ラブロフ外相の基本認識
 ・今後の領土・平和条約交渉

2.北朝鮮問題
 ・米朝実務者協議
 ・トランプ大統領の短距離ミサイルについての認識
 ・今後の展望

3.日米貿易協定
 ・鉄鋼製品、アルミ製品をめぐる交渉
 ・自動車、自動車部品についての扱い(追加関税、数量規制)

 ( 答弁要求 外務大臣 )

        ―――――――――――◇――――――――

◎ 岡田委員 岡田克也です。
 今日は、茂木大臣に三つの問題について基本的なことを質疑したいと思っております。
 一つは北方領土問題、二つ目は北朝鮮問題、三つ目が日米貿易協定ということであります。
 まず、北方領土問題について、二〇一六年十二月の長門会談で共同経済活動を行うということが確認されて、そのための特別な制度を検討することになりました。特別な制度というのは、日ロ双方の立場を害さない法的枠組みということであります。このことの現在の検討状況をお聞きしたいと思います。
 私がお聞きしているのは法的枠組みの検討状況ということであって、例えば、観光パイロットツアーが計画されているとか、個々のプロジェクトがそれぞれ議論されているとか、そういう中身を聞いているのではなくて、法的枠組みについてどういう検討状況か、お答えいただきたいと思います。

◎ 茂木国務大臣 御指摘の日ロの共同経済活動、これは、日ロがともに北方四島の未来図を描き、その中から双方が受入れ可能な解決策を見出していくという新しいアプローチでありまして、この共同経済活動を進めるに当たって、日ロ双方の法的な立場を害さない形でプロジェクトを実施していく。そのための法的な課題につきましては、次官級、局長級、課長級などさまざまなレベルにおきまして、今時間を割いて議論を進めている途中であります。

◎ 岡田委員 現在の検討状況を、その一端でもいいからお話しいただきたいというふうに思います。
 大臣も今おっしゃったように、この共同経済活動、これを進めることによって相互の信頼関係を増し、やがては領土問題の決着につなげる、そういう新しいアプローチとしてこれをスタートしたはずですが、その前提となる共同経済活動の法的枠組みが、もう三年近くたっても、長門会談というのは二〇一六年十二月ですから、三年近くたっても全く説明もされないということでは、これはとても納得できないわけで、現在どういう状況で、何が問題になってこれだけ時間がかかっているのか、御説明いただきたいと思います。

◎ 茂木国務大臣 これは、日ロ間の今後の領土交渉、そして平和条約を締結していく、こういった中での協議でありまして、それに絡む問題でありまして、岡田委員も外務大臣を経験して、そういった日ロ間の交渉の機微につきまして答弁をさせていただくことは控えさせていただきたいというのはおわかりいただけるかと思うんですが。
 まず、パイロットプロジェクト、今実際に進んでおりまして、これにつきましては、四島交流と同じ方式、手続を用いて実施をしているわけであります。
 それ以外に、共同経済活動のためには、双方で人の移動、こういったものが発生いたしますので、その移動の枠組みについては次官級協議、それから、人の移動に関する局長級作業部会において協議を行っている。
 もちろん、人の移動だけではなくてさまざまな問題が出てまいりますので、それを含めて、先ほど申し上げたような次官級、局長級、課長級におきまして協議を進めているという段階であります。

◎ 岡田委員 今の大臣の答弁で、ちょっと私が理解できなかったのは、この共同経済活動とそれから領土交渉の関係ですが、これが密接に関係するというふうにお答えになったように聞こえたんですが、私は、共同経済活動は共同経済活動として行っていく、その中で信頼感を増して領土交渉に本格的に入っていく、領土交渉を本格化する、そういうふうに理解していたんですが、密接に絡み合うわけですか。

◎ 茂木国務大臣 冒頭申し上げたように、共同経済活動、これは、日ロがともに北方四島の未来図を描いて、その中から双方が受入れ可能な解決策を見出していくというアプローチの一環であります。その実現に向けた取組を通じて北方領土問題の解決、そして平和条約締結につなげていくとの考え方のもとで、この実施を考えているところであります。
 もちろん、共同経済活動、これを実施することによって日ロ間の信頼関係を醸成していく、さらには、それぞれの国民の間の交流も深め信頼関係を醸成していく、そういった環境の中、含めて、領土問題の解決、さらには平和交渉の締結、こういったことにつなげていきたいと考えております。

◎ 岡田委員 これは、三年たっていまだに何も出てこないというのは、そもそも非常に難しい問題をいとも簡単にできるような錯覚に陥って合意したというふうにしか私には思えないんですね。
 共同経済活動を行っていくということになれば、例えば法律関係、民法にしても刑法にしても、どちらの法律を適用するのか。日本の立場からすればロシアの法律を適用するわけにはいかない、当然そうなります。ロシアも同じでしょう。そういう中で双方が納得し得るような、そういう法律の適用について、私はちょっとアイデアが思い浮かばないんですね。
 基本的なことでいいですから、そういうことについてどういう考え方で整理しようとしているのか、話していただきたいと思います。

◎ 茂木国務大臣 領土問題が解決をしていない、ですから、平和条約が締結をされていない段階で行う共同経済活動ということになるわけでありますから、当然、双方の法的な立場を害さない形で、このプロジェクトというものは、民法上も刑法上も、そしてまた人の行き来、移動といったものでも進めていかなきゃならない、このように考えております。

◎ 岡田委員 そこまでは従来から言われていることで、具体的にどういうふうにして、無法状態というわけにいかないわけですから、どっちかの法律を適用するしかないと思うんですね。しかし、双方が相手方の法律を適用するわけにはいかないと。
 これはどうやって、例えば、これで商業活動、共同経済活動を行っているときに損害賠償で訴えられるとか、あるいは、たまたま刑事事件に巻き込まれるとか、そういうことはあり得るわけですね。しかし、日本としては、ロシアの法律で、ロシアの裁判所で裁かれるということはそれは認めがたい、当然そうなると思います。
 では、どういうふうにしてこれを解決しようとしているんですか。しかも、三年間もうたっているんですよ。

◎ 茂木国務大臣 五つの共同経済活動、それぞれに活動の内容も異なっております。そして、進めるに当たりましては、あくまでこれから進めるわけですから、どういう事態が起こってくるかという中で、岡田議員の御指摘のような事態が起こらない方がいいんですが、起こることも想定しながらやっていかなきゃならないということでありまして、当然、日本としてはロシアの法律下でということにはならないし、ロシアとしても日本の法律でということにならない中で、それぞれの事案ごとといいますかプロジェクトごとに、どういう枠組みが適切であるか、こういった形であったら両方の法的な立場を害さない、こういったことについて、シミュレーションも含めさまざまな協議を行っているということであります。

◎ 岡田委員 大臣もお認めになったように、それぞれ相手国の法律の適用を認めるわけにいかないわけですから、というと一体どうなるのかというのは全く想像つかないんですね。もう少し具体的に説明していただけませんか。

◎ 茂木国務大臣 でき得れば、それぞれの国が自分の法律で、その方が経済活動をするにしても、自分の国の企業であったりとかそういったものの権益であったりとか権利、こういったものが守れるわけでありますが、私が申し上げたのは、それぞれの法的な立場を害さない範囲でと。そうなりますと、同じプロジェクトを進める中でも、こういう問題についてはこういう処理の仕方があるね、そういったことを一つ一つ積み重ねながら、実際に共同プロジェクトが実施できるような状況をつくっていきたいと思っております。

◎ 岡田委員 今の御説明だと、例えば北方領土は日本の領土である、これは日本国の立場ですね。であるにもかかわらず、日本の刑法や商法、民法が適用されないということを、そういう場合もあり得るということですか。

◎ 茂木国務大臣 そのように申し上げているわけではなくて、北方四島に対する我が国の法的な立場は変わっておりません。

◎ 岡田委員 法的立場を害さないというのは、最初に日ロ双方の立場を害さない法的枠組みということで定義づけられて、二〇一六年十二月の長門会談で決まって、そこから三年間交渉してきて、同じことを繰り返しておられるわけですね。だから、全く事態は進んでいないのではないか。それぞれのプロジェクトが動いているような、先ほど言いましたように、観光パイロットツアーをやりますよとか、そういったことはやっている状況にはなっているが、肝心かなめのところは全然詰まっていないんじゃないか。これでは実際に民間企業は手を挙げませんよ。挙げられませんよね。どういう法律関係になるのか。
 したがって、これは、本来不可能なことを余り十分な検討をしないままにぶち上げてしまったんじゃないか、長門でというふうに私には思えてならないんですが、いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 七十年以上解決されていない問題を解決する、これは決して簡単なことだとは考えておりません。したがいまして、それを突破していくためには新しいアプローチが必要であるということで、共同経済活動をスタートすることになった。
 日ロがともに北方四島の未来図を描いて、その中から双方が受入れ可能な解決策を見出していくということでありまして、確かに、この共同経済活動を進めるに当たって、お互いの法的な立場を害さない、そういう取組というのは困難なものである、そんなに簡単にクリアできるものではない、そのように考えておりますが、同時に、領土問題の解決、そして平和条約の締結、ここに向けてはやはりこの道は避けては通れない。こういったことができないのに、領土問題を解決して平和条約を締結することもできないというのも事実だと思います。

◎ 岡田委員 いや、領土問題を解決したら、つまり国境が明確に引かれれば、経済活動は、その引かれた国境に基づいて、どの国の法律が適用されるか明らかになるわけですから、それはできるわけですよ。
 これは、どこかの国で、同じような国境問題を抱えた問題で、今回と同じような事例というのはあるんですか。この共同経済活動を新しいアプローチということで打ち出された以上、何らかの成算があってやっておられるはずだと思うんですが、先例みたいなものに基づいてやっているんでしょうか。

◎ 茂木国務大臣 岡田委員おっしゃるように、この領土問題が解決すれば、お互いの法的な立場を害さないということになるのは間違いないわけであります。ただ、それができていないから、どうアプローチしていくかということで、新しいアプローチを考えている。
 当然、こういった共同経済活動を行うに当たりましては、これまで他国の間でさまざま行われてきた交渉であったりとか活動、こういったものも参考にしながら、しかし、全く状況は同じわけではありませんから、そこの中で、この北方四島で行う経済活動としてどういった対応が必要であるか、こういったことを考えております。

◎ 岡田委員 それでは、その共同経済活動的なものを領土交渉に先立って打ち出した、どの国とどの国の領土交渉でそういうことがあったか、お教えください。

◎ 茂木国務大臣 きょう、概要でいただいておりまして、それにつきましては、詳細につきましてまた改めて、御要請がありましたら提出をさせていただきます。

◎ 岡田委員 では、それは後ほど、事務方でも結構ですから説明をお願いしたい、説明に来ていただきたいというふうに思います。この委員会にも提出していただきたいと思います。
 それではもう一つ。ラブロフ外相と外相会談を九月二十五日に行われて、その中で平和条約交渉を含む今後の協議の進め方について議論したという報告があるわけですが、私の知る限り、ラブロフ外相の基本認識、これは私が外務大臣のときも同じだったんですけれども、四島は、第二次世界大戦の結果、ロシアのものとなった、そのことをまず前提とするというのはラブロフ外相の一貫した立場ではないかと思うんですが、茂木大臣、同じような認識ですか。

◎ 茂木国務大臣 ラブロフ外務大臣とは、先日、国連総会の際に初めて外相会談を行いまして、平和条約交渉の締結を含む今後の進め方について話合いをさせていただいた。そして、例えば、来月になりますとG20の名古屋のサミットがございます。そこにはラブロフ大臣、お越しになられる。また、ラブロフ大臣の方からも、できるだけ早くモスクワを訪問してほしい、こういうお招きがありましたので、これは諸般の情勢が許せばということでありますが、できれば年内にも訪問したい、そういうスケジュールであったりとか、さまざまな話合いをさせていただいた。
 当然、お互いの立場、今一致しているわけではありませんが、九月のウラジオストクにおきましても、両首脳間で、交渉責任者であります外相に対して、双方が受け入れられる解決策、これを見出すための共同作業を進めるように指示をする、こういう指示がおりていますので、その指示に沿って今後の交渉を進めていきたいと思っております。

◎ 岡田委員 ラブロフ外相が、四島は第二次世界大戦の結果、ロシアのものになった、そういう認識である限りは、これは交渉のやりようがないと思うんですね。その認識を変えられる、そういう見通しが具体的にあるのか。もし変えられないとしたら、平和条約交渉を含む今後の協議の進め方について協議を行ったと日ロ外相会談の結果として発表されていますが、私は交渉のしようがないのではないかというふうに思いますが、いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 まず、日本政府としてでありますが、日本政府としては、一九五六年の共同宣言、これを基礎として平和条約交渉を加速させる、こういった両首脳の合意を踏まえて、領土問題を解決して平和条約を締結する、こういった基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉をしていきたいと思っております。
 先ほども申し上げたように、現時点において、お互いの立場が完全に一致しているとは思っておりません。交渉事というのはそういうものだと私も思っております。
 また、この委員会におきましても、この後、いずれかの段階で、日米の貿易協定等々についても御議論いただくことになると思います。TPP11のときもそうでした。日米の貿易交渉のときも、当初から、国と国との間、国益も違うわけでありますから、完全に立場が一致するわけではありません。そこの中でどうやってお互いの立場を埋めていくか、これがまさに外交交渉だ、こういった思いで臨んでいきたいと思っております。

◎ 岡田委員 私が申し上げているのは、完全に一致しているわけではありませんじゃなくて、完全に平行線じゃないか、そういう中でどういうふうにして交渉していくのかということを問うているわけです。
 今、大臣は、一九五六年の日ソ共同宣言を基礎とするという日ロ首脳間での確認、共通認識を言われました。私はこれも極めて不思議なことだと思っておりまして、従来、東京宣言とか、海部内閣から細川内閣、それからそれ以降も含めて、日ロの首脳間では、北方四島に領土問題が存在するということは確認されてきた。
 しかし、安倍総理は、プーチン大統領との間では、そういった四島の話ではなくて、一九五六年の日ソ共同宣言を基礎とする、それだけを、従来は東京宣言なども基礎とするということを明確に言ってきたにもかかわらず、一九五六年の日ソ共同宣言のみを取り上げて、これを基礎とするというふうに言われた。
 これは、みずから交渉の対象を、国後、択捉は交渉の対象でないということを認めたに等しいと私は思うんですが、大臣の認識はいかがですか。

◎ 茂木国務大臣 今の点につきましては、岡田委員と若干認識が違っております。
 正式に申し上げますと、日ロ間では、一九九三年の東京宣言、それから二〇〇一年のイルクーツク声明を始め、これまで多くの諸文書や諸合意が作成されてきておりまして、これら全ての諸文書や諸合意を踏まえた交渉を行ってきているわけであります。
 そこの中でも、一九五六年の共同宣言、これは、両国の立法府が承認をし、そして両国が批准をした唯一の文書であります。そして、現在もこれは御案内のとおり有効であります。
 そして、一九五六年の共同宣言の第九項、ごらんをいただきますと、平和条約交渉が継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されること、これを規定しているわけでありまして、じゃ、この九項の平和条約交渉が継続されている、この部分でありますけれども、従来から説明しているとおり、ここに言う平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、これが政府の一貫した立場でありまして、したがって、一九五六年の共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるとの合意、これは領土問題を解決して平和条約交渉を締結するという従来の我が国の方針と何ら矛盾するものではない、このように考えております。

◎ 岡田委員 私は詭弁だと思いますね。
 百歩譲って我が国の基本方針はそうなんだということを言ったとしても、私が聞いているのは、我が国の基本方針を聞いているんじゃないんです。日ロ間での交渉の対象はどうなのかということを聞いているわけです。交渉の対象として、日ソ共同宣言を基礎とするということだけを言って、従来いろいろ言ってきた東京宣言その他のその文言を落としてしまったということは、やはり歯舞、色丹だけが対象であって、国後、択捉は対象から外しているということを日ロの首脳間で合意したということにほかならないんじゃないですかということを言っているわけです。

◎ 茂木国務大臣 今も申し上げたんですけれども、この九項でありますが、平和条約交渉が継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されること、これを規定しております。
 そして、ここで言う平和条約交渉、この対象は四島の帰属の問題である、こういう理解でありますから、何ら矛盾はしていないと考えております。

◎ 岡田委員 平和条約を締結するときには、もう国境線が引かれているわけですね。というか、国境線を引くことをもって平和条約であるということは、私と安倍総理との間の予算委員会の質疑でも、安倍総理みずからが明らかに言われました。
 ですから、平和条約を結びます、その後、歯舞、色丹を引き渡しますということは、国後、択捉はその平和条約に入っていないということを認めたようなものじゃないですか。

◎ 茂木国務大臣 必ずしも、先ほどの九項の解釈は違っておりますが、北方四島の帰属の問題を解決して、国境を画定することなくして、平和条約を締結することはない、そこについては岡田委員と考えが一緒だと思っております。
 同時に、では国境を画定するだけかといいますと、当然、どうなるかわかりませんけれども、補償の問題であったりとか、さまざまな問題がどうなるか、一般的な場合、平和条約締結という場合は、そういった問題も含めての解決ということになってまいりますが、国境の画定、これは極めて重要な要素だと思っております。

◎ 岡田委員 補償の問題というのは基本的に日ソ共同宣言の中でもう書いてあるわけですから、基本的にはそこで解決しているというふうに私は思っているんですね。
 したがって、やはり国境の画定ということが残された課題である。日ソ共同宣言では歯舞、色丹についての引渡しのみ書いてあって、それ以外のことは書いていないということは、もう交渉の対象は歯舞、色丹、その帰属の問題に限定されていると見るのが私は普通だと思いますよ。だからこそ、外務省は従来、東京宣言始め、四島の帰属が残っているということを、何度も何度も努力しながら粘り強く交渉して残してきた。それを安倍さんは切ってしまった。
 私は、切ることによって本当に歯舞、色丹だけでも返ってくるということを確信を持ってやられたのなら、それは一つの考え方、私は反対ですけれどもね。面積でいうと七%しかない、そこで決着をつけることは反対ですが、だけれども、そこまで覚悟して、日ソ共同宣言を基礎とするというふうに安倍さんが覚悟を持って言われたのなら、それはリーダーとして一つの判断だというふうには思います。
 しかし、その歯舞、色丹ですら今全く動いていない状態ということだと、何のために大事なカードを切ってしまったのか。これは安倍さんだけじゃなくて、その次の総理もその後もずっと拘束されますよ。せっかくとった東京宣言その他の表現がないまま、それが事実として、交渉の前提はやはり日ソ共同宣言だということは残りますよ。だから、私はこれは外交の大失態だと思うんですが、いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、この一九五六年の共同宣言、ここでの平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、このように理解しておりますので、その意味では、後退した、こういう御指摘については、若干私は意見が違うところであります。
 一九九三年の東京宣言、二〇〇一年のイルクーツク声明、確かに出されて、一つの成果文書である、それもベースにしながら交渉を進めてきたわけですが、現実にそこで国境線は引かれていないわけです。そこの中で、どうやってこの七十年以上一ミリも動いてこなかった問題を解決するか。さまざまなアプローチというのは必要でありまして、共同経済活動によります新しいアプローチもそうでありますし、お互いにできるだけ認識をそろえながら一歩ずつ歩み寄っていく、こういうアプローチが必要になってくると思っております。

◎ 岡田委員 一九五六年、日ソ共同宣言で、四島の帰属の問題だというのは、日本政府はそう思っていたかもしれませんが、ロシア、当時のソ連政府は全くそんなことは考えてもいなかったわけですから、それは日本の考え方としておっしゃっているだけで、別に共通認識には立っていないわけですね。
 いろいろ、動かないものを動かすためにというふうに言われましたが、先ほど最初に申し上げたように、共同経済活動の法的枠組みも具体的な検討が進んでいない。そして、二島に、日ソ共同宣言に戻るという一つの決断を下したのに、歯舞、色丹ですら全く先が見えない。
 私は、外交は結果責任だと思いますよ。こういう状況になっていることについて、私は当然、安倍政権として責任をしっかりと負うべきだと思いますが、いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 まさに今、交渉の途中であります。そして、四島におけます共同経済活動についても、双方の法的な立場を害さない取組というのはどうなのか、これにつきましても、先ほど申し上げたように、さまざまなレベルで議論を進めている段階であります。
 成果を出す、こういったつもりで、しっかりと粘り強くこれからも交渉に臨んでまいりたいと考えております。

◎ 岡田委員 中身がないから、交渉の回数で何とか言い逃れをしているというふうに私には見えて仕方ありません。
 では、次の北朝鮮問題について簡単に聞きたいと思いますが、十月五日の米朝実務者協議は、北朝鮮側に言わせると決裂ということになりました。米国側の認識は若干異なるようです。
 この実務者協議あるいは米朝協議の行く末について、米国政府からどういう説明を受けておられますか。

◎ 茂木国務大臣 十月の四日から五日の米朝の実務者協議に関しましては、米国ともさまざまなやりとりを行ってきております。きのうの晩もポンペオ国務長官とは電話会談を行わせていただきましたが、いずれにしても、重要なことは、昨年六月の米朝首脳共同声明のとおり、朝鮮半島の完全な非核化に向けた北朝鮮のコミットメントを含む両首脳の合意が完全かつ迅速に履行されることだと考えております。
 その上で申し上げますと、米国との間では、現地時間でありますが十月の八日、ワシントンDCにおいて行われました日米韓六者会合の首席代表者会合や、その際の滝崎アジア大洋州局長と米国のビーガン米国北朝鮮担当特別代表との個別の意見交換等を通じて、先般の米朝実務者協議について米側から詳細な説明を受けたところであります。
 また、昨日も電話会談、日米外相で行ったところでありまして、北朝鮮をめぐる最新の情勢について意見交換を行って、今後の方針のすり合わせをするとともに、引き続き緊密に連携をしていく、こういったことを確認したところであります。
 朝鮮半島の非核化に向けて、米朝プロセス、しっかりと日本としても後押しをしていきたいと思っております。

◎ 岡田委員 日米間で緊密な情報交換をしているという御説明ですが、その中で、短距離ミサイルあるいは日本に到達可能なミサイルの扱いというのはどうなっているんでしょうか。
 トランプ大統領はたびたび、それは交渉の対象ではないということを明言しておられます。しかし、日本にとってはそういう交渉であっては困るわけですから、当然そのことについて米側にいろいろとお話をされているはずですが、交渉の対象に短距離ミサイルも含まれるということについて、米側は明確に回答しているんでしょうか。

◎ 茂木国務大臣 あらゆる射程の弾道ミサイルの発射が安保理決議違反であることは明確でありまして、この点は米国とも累次の機会に確認をしてきているところであります。きのうも確認をしました。日米両国として、引き続き安保理決議の完全な履行を進めていきたいと思っております。
 同時に、我が国としても、弾道ミサイルの発射を始めとする北朝鮮の軍事動向について、引き続き、米国等と緊密に連携しながら、必要な情報の収集、分析に全力を挙げてまいります。

◎ 岡田委員 安保理決議違反であることは、これは間違いのない事実ですが、私が聞いているのは、米朝交渉の対象に短距離ミサイルがなっているのか。今は、トランプ大統領は、それはなっていないと何回も明言されているわけです。では、そのことについて、日本政府として、それでは困る、きちんと対象にすべきだということを言っているんですか。
 別に、安保理決議の話じゃないんですよ。安保理決議は国連の話です、安保理の話ですから。米朝協議というのはトランプ大統領と金正恩委員長がやっているわけですから。そこの議論の対象になっていないと思われるから、きちんと対象にすべく日本政府として努力していますか、あるいは今対象となっているんですかということを聞いているわけです。

◎ 茂木国務大臣 日米の首脳会談におきましても、あらゆる弾道の、短距離ミサイルの発射、これは安保理決議違反でありますし、これは単に日本だけの問題ではなくて、日米双方にとっても大変遺憾な問題である、こういった点につきましては米側とも意見を共有しているところであります。
 トランプ大統領、非核化に向けた米朝プロセス、まさに進めているところでありまして、大統領の発言、これは米朝首脳同士の信頼関係にかかわるやりとりの中で行われた発言と理解しております。その上で、トランプ大統領が金正恩委員長との間で相互不信の殻を破り、非核化の先の明るい未来を共有して、北朝鮮の行動を促すという新しいアプローチをとってきている、このことを評価しているところであります。
 いずれにしても、弾道ミサイルの発射、これはあらゆる射程のものが安保理決議の違反であることは明確でありますから、最終的には安保理決議の完全な履行、こういったことを北朝鮮が行うような協議を進めてもらいたいと思っております。

◎ 岡田委員 進めてもらいたいという希望はわかりますが、現実に交渉の対象になっていないとすると、米朝協議、私は簡単なことでは合意しないと思いますが、合意されたときに短距離ミサイルがそこから抜け落ちているということになれば、それは極めて日本にとって国益を害することになるわけです。
 だから、そうならないように、きちんと米側に、例えば国務長官との間でも、両国政府の間でも確認をして、そして、トランプ大統領の今まで対外的に明らかにしている短距離ミサイルは対象外だという発言を訂正させなければ、私は非常に国益を損なうことになってしまっていると思うんですが、もう一回明確に答えていただけますか。

◎ 茂木国務大臣 ポンペオ国務長官との間では、あらゆる射程の弾道ミサイルの発射、これが安保理決議違反である、そういったことを踏まえた交渉をお願いしたいという話をしております。
 その上で、トランプ大統領、まさに大統領の発言、これは米朝首脳同士の信頼関係にかかわるやりとりの中で行われた発言、このように理解をいたしております。

◎ 岡田委員 何を言っているかさっぱりわからないんですが、私の能力では。ここは本当に日本外交は試されているというふうに思います。
 しかし、そうは言ってもしばらくは、北朝鮮の問題は米朝間での首脳会談が行われていて、これはトランプ大統領にとっても極めて重要なテーマですから、なかなか日本独自の外交というのは発揮しにくい面があるというふうには思いますが、拉致問題というのが日本に当然あります。
 今回、国家安全保障局の責任者に北村さんがなったというのは、私は、やはり拉致問題の解決を念頭に置いての人事だというふうに思います。ただ、外交経験のない北村さんですから、やはり外務省との連携というのは非常に大事になるというふうに思うわけですが、NSS、国家安全保障局と外務省の関係、これはアメリカでも安全保障担当補佐官と国務省の関係というのは時として非常に微妙な関係になったりするんですが、茂木大臣のもとで、新しい局長との関係あるいは総理も含めた三者の関係というのはきちんと築かれているでしょうか。

◎ 茂木国務大臣 そのように考えておりますし、更にそういった連携を強化していかなけりゃいけないと思っております。
 北朝鮮との間で、核、ミサイル、そして日本にとって最も重要である拉致問題、こういった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化につなげていく、こういう基本的な考え方のもとで、これはNSCともしっかり連携をしながら外務省としても取り組んでいきたいと思っております。

◎ 岡田委員 国家安全保障局と外務省の関係というのは、一般論としてもこれはなかなか微妙だと思うんですが、特に北朝鮮に関して言うと、より難しい問題が私はあると思うんです。
 かつての小泉総理時代の田中審議官、そしてミスターXとの交渉、批判する方もいる。安倍さんなんかは非常に批判しておられましたけれども。やはり、個人間の交渉という色彩が非常に強くて、組織を挙げてということにはなかなかなりにくい。保秘の関係もあって、そういうことになると、カウンターパートと北村さんがほぼ一対一で話し合って話を煮詰めていく、そういう場面があるのかもしれません。そこまでの関係ができているのかどうか、私はわかりませんけれども。
 そういうことになったときに、総理と局長が相談ずくで進めていくとしても、そこにやはり外交の視点というのが入らないといけない。そうすると、外務大臣は少なくともきちっとそこに組み込まれていないといけないわけですが、そういうお気持ちはおありですか。

◎ 茂木国務大臣 恐らく、日朝の平壌宣言をつくる前の段階、田中アジア大洋州局長、この時代というのは、まだ官邸の方にNSCがない時代でありました。そういう時代、田中局長の行動についてどう評価するか、これは歴史的な評価もあるかと思いますけれども、その上で、今実際にNSCというものができて、新しい体制ができている。
 当然、私と総理の間、それから私と北村局長の間、三者の間の連携というのは極めて重要だ、北朝鮮の問題、それ以外の問題を解決する上でも極めて重要だ、こういう思いで関係を強化していきたいと思っています。

◎ 岡田委員 私は、北朝鮮の問題は、殊さらそういった三者の関係がきちんと連携がとれていないと、さっきの北方領土問題じゃないけれども、間違った方向に行ってしまう、そういうリスクも非常にあるんじゃないかというふうに思っております。秘密交渉という色彩が強いだけに、そういうリスクが常にある。
 大臣、一つお願いしておきたいんですが、ぜひ、この局長の北朝鮮のカウンターパートとの交渉、これは当然通訳が入るわけですから記録はある、それは公文書として残していただきたい。もちろん、それが公開されるのは随分後になるということはわかりますが、記録としてはきちんと残してもらいたいと思いますが、いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 済みません。NSCの記録の保管の仕方、それは当然法的な手続に沿ってやられるものだと思いますが、ちょっと私からコメントするのは控えさせていただきます。

◎ 岡田委員 しかし、そこでどういう交渉が行われたかというのは、将来の日本と北朝鮮の関係を規定しますよ。向こうに記録があってこっちが何もないというんじゃ、言われっ放しになるじゃないですか。だから、きちんと記録は残しておく責任が日本政府としてあると思いますよ。安全保障局の話だから外務省とは違うということではなくて、それは政府としてきちっと記録を残されるべきじゃないかというふうに思います。
 かつて、安倍総理が、小泉政権時代の田中さんを評して、記録も残していないといって批判をしたことを私は覚えております。総理もみずからそう言われた以上、記録はきちんと残していただきたいと思いますが、そういったことで働きかけをしていただくとお約束いただけませんか。

◎ 茂木国務大臣 さまざまな交渉につきまして、その結果というのは、何らかの合意であったりとか何らかの協定、何らかの条約というものに全て反映をされるべきだと思っております。そして、その過程で行われました交渉の経過につきましては、それぞれ国内の手続、公文書の管理のやり方に従ってやっていくということで、外務省については私コメントできますが、これは外務省のことではないのでコメントしていないという話を申し上げているだけであります。

◎ 岡田委員 将来の外交にもかかわる話、そもそも国家安全保障局、あるいは局長がやっているとしても、外交の一部ですから、そんな、突然、役所が違うからコメントできないなどということを言うんじゃなくて、これは政府としてきちっと記録を残すということを、場合によっては総理とも御相談の上で確認していただきたい。
 普通は、外交交渉というのは記録を残しますよ。結果だけじゃないですよ、もちろん。だから、そういう交渉の経緯をきちっと記録に残してもらいたい。公開するかどうかというのは、それは将来の話ということを、もう一度御答弁いただけますか。

◎ 茂木国務大臣 委員の御意向については十分理解いたしました。

◎ 岡田委員 次に、日米貿易協定について、少し入り口だけやりたいと思いますが、鉄鋼製品、アルミ製品への通商拡大法二百三十二条の適用について、この日米貿易協定交渉の中でどのような議論がなされたんでしょうか。交渉当事者ですから、大臣は。簡単に御説明いただきたいと思います。

◎ 茂木国務大臣 日米貿易交渉は幅広い議論を行っているわけでありますが、この自動車の問題もそうでありますし、鉄鋼、アルミの問題もそうでありますが、広範な貿易制限措置、これは、世界市場を混乱させ、WTOルールに基づく多角的な貿易体制にも悪影響を及ぼしかねないものであり、極めて遺憾である、日本の立場についてはこうであるということを申し上げ、そして具体的には、今回でいいますと九月二十五日の日米共同声明のパラグラフの四、去年の九月二十六日の共同声明でいいますとパラグラフ七に、「他の関税関連問題の早期解決に努める。」こういった文章を入れさせていただいております。

◎ 岡田委員 通商拡大法二百三十二条、同盟国である日本からの輸入が米国の国家安全保障を損なうおそれがある、そういう論理は全く認められないということは主張されたわけですね。

◎ 茂木国務大臣 主張いたしております。
 そして、その上で、日本からの鉄鋼やアルミニウムの輸入が米国の安全保障に悪影響を与えることはなく、むしろ高品質な日本製品は米国の産業や雇用にも多大に貢献している、こういう旨はしっかりとライトハイザー通商代表にお話をさせていただいております。

◎ 岡田委員 そうだとすると、どうして鉄鋼製品二五%、アルミ製品一〇%という追加関税を残してしまったんですか。日米貿易協定交渉の中で、こういう問題を解決した上で協定を締結すべきだったんじゃないんですか。

◎ 茂木国務大臣 日本の鉄鋼製品、これは委員も御案内のとおり、高品質で代替困難なものが多いこともありまして、製品別の除外の仕組みを通じて、追加関税について、輸出国の中、つまり、日本であったりとか、ほかの、韓国であったりとか、そういう輸出国の中で最も多くの適用除外を獲得しているところであります。
 今後とも、日本政府として、こういった適用除外の獲得状況であったりとか業界の要望等を踏まえて、この問題は、若干、通商交渉そのものとは違ってくる。つまり、関税の、通常の関税引上げの交渉で扱う性格とは若干違ってきますが、今後も日本政府として米国政府にはしっかりと働きかけを行っていきたいと思います。

◎ 岡田委員 私が聞いているのは、通商拡大法二百三十二条に日本からの輸入というのを適用するのは、これはおかしいという日本の主張、先ほど、大臣、お認めになりました。そうであれば、そこをしっかり解決した上で協定を結ぶべきだったんじゃないんですか、貿易協定を。
 今や、この日米貿易協定と、そして、鉄鋼製品、アルミ製品に対する通商拡大法に基づく追加関税というものが並立している状態を認めてしまった。だから、この二つは矛盾しないんだということを制度的に担保してしまったんじゃないですか。いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 いや、そういうことはありません。通常の関税がどうなるか、これにつきまして基本的には交渉をさせていただいて、今回の合意のような結果になったと考えております。
 その上で、この鉄鋼、アルミの追加関税の問題は通常の関税の引下げ交渉とは異なる性格のものでありますが、先ほど申し上げたように、かなりの部分で、日本の企業、適用除外の獲得をしております。さらには、業界の要望等々につきましてもいろいろな話を聞いております。
 そういったものも踏まえて、米国政府とは今後も話合いを続けていきたいと思っています。

◎ 岡田委員 実害が少ないからいいという話じゃなくて、基本的考え方としてどうなのかということを私は問うているわけですね。
 ですから、この貿易協定と通商拡大法の二百三十二条が併存しているという状況を認めたということは、将来的に自動車あるいは自動車部品についても通商拡大法二百三十二条が適用される余地を私は大きく残してしまったんだということになるということを申し上げているわけですが、いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 自動車それから自動車部品につきましてはまだこの適用が行われていないというわけでありまして、この部分につきましては、昨年の日米共同声明におきましてもパラの七で、今回もまた改めてこの扱いにつきまして、誠実な履行がなされている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動はとらない、その旨が明記をされまして、日本の自動車・自動車部品に対する追加関税は課されない、こういう趣旨であることは、首脳会談の中でも、二対二、つまりトランプ大統領と安倍総理、私とポンペオ国務長官四人のとき、それから拡大会合といいます大きな会合においても、二回にわたって確認をさせた。
 もちろん、日本として、この協定、発効しましたら誠実にこの協定を履行していきたいと思っておりますので、自動車・自動車部品に対する追加関税を課されるということはない、このように考えております。

◎ 岡田委員 その追加関税を課すことのないということの理由が問題なんですね。
 ですから、アメリカ側は、米国の国家安全保障を損なうおそれがあるという論理を持ち出して、通商拡大法二百三十二条の適用を鉄鋼製品、アルミ製品について認めた。鉄鋼製品、アルミ製品の輸入が国の安全保障を侵すおそれがある、損なうおそれがあるというアメリカの論理が残っている以上、それは幾ら口頭で確認したとしても、国家の安全保障を損なうおそれがあるというふうに認定すれば、やはり自動車・自動車部品についても追加関税の可能性は大いに残っているというふうに考えるべきじゃないんですか。

◎ 茂木国務大臣 これは、さまざまな経済連携協定がありますが、この中で、TPPもそうでありますし、日・EU・EPAもそうでありますし、日本が関連しないほかの経済連携協定でも、安全保障上必要な措置がとれるということはほぼ大半の協定で私は規定をされていると思います。
 そういったことをそれぞれの国に認めるという形になっておりますから、こういったものが残っているということ、それをもって日本の自動車・自動車部品について追加関税が課される可能性が高いというのは少し私とは考えが違いますし、それにつきましては、そういった懸念が出ないような形できちんと共同声明の中にも明記をし、その趣旨を具体的に確認をさせていただいたということであります。

◎ 岡田委員 今私が議論しているのは、今回の日米貿易協定案の中におっしゃるような表現があることについて議論しているのではなくて、日米貿易協定と鉄鋼製品、アルミ製品が併存しているということをもって、いわばアメリカの論理を受け入れてしまっている。そうすると、同じような鉄やアルミ製品が国家安全保障に重大な影響がある、損なう、そういうアメリカ側の論理を半ば認めてしまっている以上、自動車・自動車部品についても同じ論理を持ち出されることがあるんじゃないか、そういう余地を残してしまったんじゃないか。
 だから、鉄鋼、アルミ製品についてきちっと解決して、追加関税を撤廃した上でこの貿易協定を結んだならわかりますけれども、併存させてしまったということは私は大きな問題だということを申し上げているんです。いかがですか。

◎ 茂木国務大臣 鉄鋼、アルミの場合は、日米通商交渉が始まる前から既に発動されていたものであります。一方、自動車・自動車部品については、この追加関税等々について、トランプ大統領の発言はありましたけれども、発動されているものではない。そういった中で交渉を進めた結果、車につきましては、二三二について回避をした。また、鉄鋼、アルミにつきましても、他の関税関連問題の早期解決に努める、こういったことを明記をしておりまして、これは基本的に努めるということで合意をしているんですから、今後、その方向で考えていることであります。

◎ 岡田委員 まあ、車について回避をしたということで、総理みずからも国会答弁の中で、そのことはトランプ大統領との間で確認をしましたということを繰り返しておられますが、これは予算委員会で玉木委員が求めた議事録ですね、日本側がどういう主張をして、アメリカ側がどういうふうに答えたか、これがないと実は本当のところは判断できないわけです。
 したがって、これは予算委員会だけではなくて、本委員会でも議事録をきちんと提出をしていただきたいというふうに思いますが、委員長、いかがでしょうか。

◎ 松本委員長 御提起をいただきましたら、理事会で協議をさせていただきます。

◎ 岡田委員 その上で、では、数量規制については、これは首脳間ではなくて、ライトハイザー・茂木間で確認をしたというふうに伺っております。
 茂木大臣はどういうふうに発言されたんですか。

◎ 茂木国務大臣 九月二十三日の夜でありますが、私とライトハイザー通商代表との間で、この日米貿易協定また日米デジタル貿易協定について最終合意をする、その確認の中で、数量規制、輸出自主規制等の措置を課すことはない、アメリカとして。こういう旨をライトハイザー代表に対して確認をさせていただいて、このことについては、対外的に発表するということでアメリカもいいかということを確認をとりまして、結構だ、そのように発表してくれて結構だと。こういった形で発表させていただきました。
 ちょっと日にち、もしかしたら訂正させていただくことがあるかもしれませんが、五月の中旬ぐらいに一度そういったニュースが出ましたので、一度確認をとっておりました。
 この問題は何度も出てきたんですが、こういう数量規制とか輸出自主規制とか、絶対反対だからという話をしてきまして、それはよくわかっている、そういうつもりはないからということで、最終的に、最後にもう一回確認させていただくということで閣僚間で確認をさせていただいて、これは対外的に発表する、アメリカ側もそれでいいかということで、アメリカ側の了解も得て発表いたしております。

◎ 岡田委員 数量規制といってもいろいろな態様があると思いますが、ガット十一条との関係はどういう議論になったんですか。

◎ 茂木国務大臣 WTOに整合的でない、そういった数量制限、輸出自主規制等の措置を課すことはない、こういったことで確認をいたしております。

◎ 岡田委員 アメリカがWTOに違反するような数量制限、自主規制は行わないと言ったとしても、もうアメリカは既に、数量規制、いろいろやっていますよね。メキシコ、カナダ間でもやっているし。ですから、それはアメリカ側としてはガット十一条に反するものじゃないという前提に立っているんじゃないですか。ですから、約束したといっても、思っているところが違うから約束になっていないんじゃないですか。

◎ 茂木国務大臣 御案内のとおり、USMCA、さらには新KORUS、これには数量規制の規定が入っております。日米貿易協定、これは全く入っておりません。そういった意味では全く別物だと。
 アメリカは、そういう意向を持ってメキシコなりカナダ若しくは韓国と交渉されて、その結果がそうなったのかもしれませんけれども、日本との間では数量規制は課さない、そして輸出自主規制も求めない、こういったことで了解をして、そのことについて何ら今回の協定では触れられていないというのが結果であります。

◎ 岡田委員 ですから、口頭でその確認をとったということですが、協定の中には書いていないわけですね。やるとはもちろん書いていないんだけれども、やらないとも書いていない。そういう状況で、これから第二弾の交渉がスタートするというときに、そういった主張がなされることは絶対にないということを断言できますか。

◎ 茂木国務大臣 そのつもりでこれまでも何度も話をしてきております。
 そして、アメリカ側として、数量規制さらには輸出自主規制、これが必要だと考えたのなら、USMCAであったり新KORUSのように、具体的にその規定を盛り込んだんだと思います。そういう意向はないということで確認をとり、対外的に発表しても構わないということで、全く今回はそういった規定は入っていないということでありまして、今後、このことにつきましても交渉を行うというつもりはありません。
 そして、今後の交渉につきましては、まず両国間で協議を行うということになっております。この協議の中で、どういったことを今後の交渉の対象としていくかということが議論をされるわけでありますが、この協議を通じて日米双方が合意した内容、これが当然協議の対象となるということでありまして、日本として全く協議をしようと思っていない項目、同時に、アメリカとしてもそれについて了解した項目、これが協議の対象となることは全く考えられません。

◎ 岡田委員 そうはいっても、自動車の関税についての協議はしなきゃいけないですよね、撤廃に向けての。そういう中で、その逆としての追加関税とかあるいは数量制限ということは、絶対にアメリカ側は持ち出さないということをお約束いただけますか。

◎ 茂木国務大臣 そのような交渉にしていきたいと思っております。

◎ 岡田委員 それから、先ほどの記録の話なんですが、安倍総理は、十月十一日の衆議院予算委員会でこういうふうに言っておられるんですね。自分の発言は紹介していいが、相手の発言は言わない、こういうルールがありますと。これは、一般的なルールとしてはわからないわけではありません。しかし、今回のことは、協定のまさしく核になる部分、コアの部分ですから、あえて相手方も含めて明らかにするようにということを我々は言っているわけです。
 安倍総理も、相手方の発言についてはそう言っているものの、自分の発言は紹介していいがというふうに言っておられるんですね。だから、少なくとも、日本側の安倍総理そして茂木大臣の発言については、これは直ちに出せるはずだと思うんです。その問いかけによっては大分意味合いが違ってくる可能性がある。
 だから、これはまず第一弾として、全体は予算委員会で、理事会で協議していただいていると思いますが、日本側の数量規制、関税引上げ、それぞれの安倍総理、茂木大臣の発言については、これはこの委員会に提出をしていただけませんか。いかがですか。

◎ 松本委員長 理事会の方に御提起をいただきましたら、理事会で協議をさせていただきたいと思います。

◎ 岡田委員 もう終わりますが、これは安倍総理御自身が認めているんですよ。自分の発言は紹介していいが、相手の発言は言わない、こういうルールがあると。だから、発言していいというルールがあるということをお認めなんですから。しかも、これ、この協定の議論をする上で本当に大事な部分なので、少なくとも、まずは日本側の発言はきちんと明らかにしてもらいたい。
 公表は全体を求めますが、まずは第一弾として、茂木大臣と安倍総理の発言はこの委員会に提出をしていただきたい。そのことを重ねて申し上げておきたいと思います。
 終わります。




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