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平成30年3月28日 第196回国会 外務委員会「米国NPRと核軍縮、北朝鮮と核抑止、非核三原則」



○岡田委員 岡田克也です。

 十五分しかありませんので、条約のことはともかくとして、きょうは、アメリカのNPRについて大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

 二月二日、少し時間もたちましたが、この米国のNPRが発表されたときの大臣談話が話題になりました。私も大変驚きました。高く評価するというふうに言われたわけですが、このことについて、大臣、反省はありますか。

○河野国務大臣 昨年、北朝鮮は、広島に投下された原爆の十倍以上の威力を持つ核実験を強行したのは岡田委員も御存じだと思います。日本列島を核爆弾で海の中に沈めるといった極めて挑発的な声明を発出したわけでございます。

 この北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の進展は、日本の平和と安定に対する重大かつ差し迫った脅威であると考えております。政府には、何よりも国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任がございます。そのためには、この日米同盟のもとで、通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠でございます。

 日本は、専守防衛を旨としておりますから、そして非核三原則を堅持するという方針のもと、北朝鮮の核に対して、核の抑止力をみずから用いることはできません。北朝鮮の核の脅威から国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、米国の核の抑止力に頼らざるを得ないのが現実でございます。

 このような状況のもと、今回、米国が発表した「核態勢の見直し」は、米国のみならず同盟国の安全を確保するという核による拡大抑止に明確にコミットしておりまして、我が国はこれを高く評価するものでございます。

○岡田委員 拡大抑止へのコミットメント、それを評価するということは私は否定するものではありません。しかし、あなたのこの談話は、全体について高く評価しているというふうにとられたのではないですか。

 では確認しますが、このNPRについて、全体を高く評価しているのか、コミットメントを高く評価しているのか、どちらなんでしょうか。

○河野国務大臣 今申し上げましたように、この同盟国の安全を確保するという核による拡大抑止に明確にコミットしているところは高く評価いたします。

 また同時に、アメリカは、今回のNPRにおいても、核兵器の究極的廃絶に向けたみずからの取組に引き続きコミットし、NPT体制の強化、核兵器のさらなる削減を可能とする安全保障環境の追求にも言及をしているということをつけ加えさせていただきたいと思います。

 今回のNPRは、北朝鮮による核・ミサイル開発の進展、急速に悪化している安全保障環境に対処するために、これまでの核兵器の役割を確認し、米国の抑止力の実効性を確保するものと認識をしております。

○岡田委員 今のお答えは明確ではないんですが、文書を見ると、全体を高く評価しているというふうにしか読めないんですね。しかし、私は、それは明らかにバランスを失しているというふうに思います。

 二〇一〇年のNPR、私が外務大臣のときの話ですけれども、このときに書かれているのは、核兵器の数の縮減と役割の減少です。しかし、今回のNPRは、核兵器の役割の拡大というのが一つの大きな流れですね。そこは明らかに百八十度考え方が変わっているわけです。この点についてはどう考えているんですか。

○河野国務大臣 二〇一〇年のNPRにおいても、核兵器が非核攻撃を抑止する役割を担う可能性に言及をしておりまして、今回のNPRにより核の先制使用等の可能性が高まっているわけではないと思います。

 今回のNPRは、むしろ、これまでどおりの核兵器の役割を明確化することによって、相手国がアメリカの意図を誤認をするあるいは誤算をするといったリスクを減らし、抑止力を高める意図を明らかにしたものだというふうに考えております。

○岡田委員 質問に答えてもらっていないので、もう一度聞きます。

 二〇一〇年のNPRは、核兵器の数と役割の低減ということが主張されました。今回、核兵器の役割を拡大、この点についてはどう考えているのかと聞いているわけです。

○河野国務大臣 申し上げましたように、二〇一〇年のNPRでも、核兵器が非核攻撃を抑止する役割を担う可能性ということに言及をしているわけでございますから、核の役割を拡大するのではなく、むしろ、この核兵器の役割を明確にして、誤算、誤認によるリスクを減らすということを意図しているんだと考えております。

○岡田委員 大臣、二回言われましたけれども、核の先制使用についてのNPRの二〇一〇年と今回との比較ですけれども、これは外務省も事務的にもいろいろ言うんですが、確かに、二〇一〇年のNPRでも核の先制使用は否定されておりません。そこは共通です。しかし、具体的な中身においてはかなり変えているということを申し上げておきたいと思います。

 このことは後で言いますが、もう一回聞きます。

 核の役割の低減と二〇一〇年のNPRでは主張しましたし、そういう内容になっています。今回のNPRでは、核の役割の低減ということは貫かれているんですか。

○河野国務大臣 核攻撃及び非核攻撃を抑止するという核の役割というものについては、二〇一〇年のNPRあるいは今次のNPR、変化はございません。

 今回のNPRは、核兵器の役割を明確にすることによって、相手国の誤認、誤算のリスクを減らすということで抑止力を高めようとしているというふうに考えております。

○岡田委員 それは詭弁ですね。

 明らかに、核の役割を低減しようとした二〇一〇年NPRに対して、今回は、役割を低減しよう、そういう考え方はない、むしろ拡大する。あなたは明確化と言われましたが、拡大する。そこは百八十度変わっているということを申し上げておきたいと思います。

 先制使用については、先ほど大臣、言及されました。大きな変更はないというふうに言われますが、大きな変更はあるんです。先制使用について、二〇一〇年のNPRでも否定はしていません。しかし、核兵器を使用する極限の状況について、より具体化して拡大しているのが今回のNPRじゃないですか。

 そして、その中には、核によらない重大な戦略攻撃、具体的には、民間人やインフラに対する攻撃、これに対しても核を使うことがあり得るということを言っていて、それは、全く前回のNPRには見られないことだという指摘に対して、どう考えられますか。どう答えますか。

○河野国務大臣 今回のNPRについては先制使用を明確にしたとおっしゃいますけれども、今回のNPRも前回のNPRも先制使用を否定していないというのはこれまで申し上げてきたところでございます。

 今回のNPRは、核兵器の役割を明確にすることによって、相手国が、こうしたことについてはアメリカはやらないであろうという誤認、誤算を防ぐ、そういう意図があるんだろうというふうに思っております。これだけ安全保障環境が悪くなっているわけでございますから、相手国の誤認や誤算によって核あるいは生物化学兵器といったものが使われるリスクを下げる、抑止力を高める、そういう意図があるものというふうに考えております。

○岡田委員 今大臣が言われた話は、戦術核についての議論ではそういう議論はあるのかもしれませんけれども、この先制使用の話というのは、相手が先制使用する可能性があると思えばそれより先に使うというインセンティブは出てくるわけですから、私は、今大臣が言われたことは、この先制使用の議論には当てはまらないというふうに思っています。

 では、もう一つ聞きますが、ソールパーパス、唯一の目的論について、確かに、二〇一〇年のNPRでも、それを直ちに採用する条件は整っていないとしながらも、目指すべき目標であるというふうに書いているわけですね。ところが、今回はソールパーパスは明確に否定されています。ここはどう考えるんですか。

○河野国務大臣 前回も今回も、ソールパーパスということではないということでございますから、そこに特に変更はないというふうに思います。

○岡田委員 前回は、ソールパーパスは、直ちに採用する条件は整っていないが目指すべき目標であると明確にしていたわけですね。今回は、ソールパーパスは目標ではないというふうに否定しているわけです。明らかにベクトルは違うんじゃないですか。

 それを、同じだ、全部同じだと、大臣、先ほどから答弁を聞いていますと言っておられますが、それは詭弁ですよ。

○河野国務大臣 今回のNPRでも、米国は、核兵器等の究極的廃絶に向けた取組に引き続きコミットしNPT体制を強化する、あるいは核兵器のさらなる削減を可能とする安全保障環境の追求にも言及をしているわけで、将来的にアメリカがそうした方向に向かっているという姿勢は変わらないというふうに思っております。

○岡田委員 旗は掲げているということですが、具体的にやっていることは全く逆方向で、二〇一〇年のNPRはその旗に向かって努力しているという姿勢が見えましたよ。しかし、今回は、やっていることはその逆だということです。

 それを同じだというふうに強弁したりということになると、日本だって、核兵器なき世界を目指すなどという旗はもう畳んだ方がいいですよ、大臣の言い方だと。どうですか。

○河野国務大臣 二〇一〇年と今回のNPRを取り巻く安全保障環境は、北朝鮮危機を始めさまざまな状況が悪くなっている中でのNPRでございます。その中にあっても、アメリカは、究極的な核軍縮、核廃絶に向けての取組は引き続きコミットするんだということを言っております。

 環境がいいときにさまざまなプランニングをするのと明らかに環境が悪くなっているときのプランニングというのは、当然その書きぶりは違うんだろうと思いますが、同じ方向を究極的に向いているという点について、違いはないと思います。

○岡田委員 拡大抑止を強く求める余り、このNPR策定作業の中で、核の役割を減ずるのではなくてふやしてもらいたいというふうに、具体的なことはいろいろこのNPRに書いてあるわけですが、そういったことをやってもらいたいというふうに日本の政府から働きかけたという事実はありますか。

○河野国務大臣 岡田委員も外務大臣を経験されておりますのでおわかりだと思いますが、日米間では、日ごろから、日米安保、防衛協力に関連するさまざまな事項について緊密かつ幅広く意見交換を行ってきております。こうした機会を通じて、アメリカの核政策についても意見交換を行ってきております。

 ただし、事柄の性質に鑑み、具体的なやりとりについてお答えするのは差し控えているところでございます。

○岡田委員 二〇〇九年のときにも、私が外務大臣に就任する前、中曽根外務大臣の時代ですけれども、日本に対するコミットメントをふやしてもらいたいという中で、日本の核なき世界を目指すという方向とは明らかに違う方向で日本政府が働きかけたのではないか、そういう疑念があるわけです。今回はそういったことはあるんですか、ないんですか。ここはもう基本的なところですから、具体的なことを私聞いているんじゃないんです、そのことについて大臣の答弁を求めたいと思います。

○河野国務大臣 当時も岡田外務大臣の米国政府宛ての手紙でそうした疑念を否定されたというふうに理解をしておりますが、今回も前回も米国の核政策について意見交換を行ってきているということはございますが、その具体的なやりとりについて対外的にお答えをしたことはないというふうに認識をしておりますので、今回も差し控えたいと思います。

○岡田委員 私のクリントン長官への手紙の中では、日本政府としては働きかけたことはないと考えているが、もしあったと受け取られたとしたら、それは誤解であるということを、公開した手紙の中で述べているわけです。

 これは日本政府の基本的スタンスにかかわるところですから、今回のこのNPR策定に当たって、日本政府として、核の役割を増大してもらいたい、そういったことを働きかけたという事実があるのかないのか、それだけでもやはり国民に対して説明する責任が大臣にはありますよ。いかがですか。

○河野国務大臣 事柄の性質に鑑み、具体的なやりとりについて詳細を申し上げるのは差し控えます。

○岡田委員 終わりますけれども、詳細を語ってくれと言っているんじゃないんです、基本的な考え方をきちんと国民に知らせてくれということを申し上げているわけです。

 続きはまたやります。




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