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2013.08.29|夕刊フジ

韓国側から伝わってこない関係修復への強い思い(夕刊フジコラム「ズバリ直球」13年8月29日号)

 先週末、ソウルで開催された「日韓フォーラム」に出席してきた。両国の政治家や企業経営者、学者などが集まって、率直に意見交換するもので、今回で21回目となる。過去には、サッカーW杯の日韓共催を最初に提案するなどの実績もある。

 日韓関係が冷え込むなか、韓国の有識者が現状をどのように考えているかを知りたくて出席したのだが、非常に気になったことがある。私は「日韓の危機的状況を何とかしなければ」と意見を述べたが、韓国側からは関係修復への強い思いが伝わってこなかったのだ。

 私が外相時代(2009年~10年)も、日韓併合条約発効100年で、非常に難しい年だった。だが、当時の菅直人首相が改めて植民地支配を認め、謝罪をする談話を発表したり、韓国側と連携しながら北朝鮮問題に対応し、両国関係は良好だったと思っている。

 その後、韓国の憲法裁判所が、日韓請求権協定などを無視して「韓国政府が(慰安婦問題について)具体的措置を取らなかったのは違憲」との判決を下し、昨年8月には、当時の李明博大統領が島根県・竹島に強行上陸して、日韓関係は一気に冷え込んだ。

 韓国側にも大いに問題がある。李氏の竹島上陸などは、日本としてはとても受け入れられない。だが、私はこういう状態を何とか乗り越えなければならないと思う。

 そのためには、日本側としては、歴代政権が認めてきた「村山談話」や、小渕恵三首相と金大中大統領による「パートナーシップ宣言」を引き継ぎ、未来志向の関係を構築すべきだ。

 安倍晋三首相は、村山談話を「全体として引き継ぐ」と言いながら、「植民地支配」や「侵略」については明確ではない。日韓フォーラムの感触では、韓国側は「安倍首相が今後、どういう対応を取るのか」について、疑心暗鬼になっているようだった。

 民主主義と市場経済という基本的価値を共有する日韓両国がいがみ合っているのは、両国にとっても、東アジアにとっても、世界全体にとっても、大きなマイナスであるということを認識すべきだ。安倍首相の口から、日韓の過去と未来について、しっかりと述べていただく必要がある。

 韓国側も、よく考えてほしい。

 朝鮮半島の日本統治時代に戦時徴用された韓国人らが、新日鉄住金に個人補償を求めた訴訟で、ソウル高裁は今年7月、新日鉄住金に賠償を命じる判決を下した。現在、韓国最高裁に上告されている。

 日本政府としては、それらは日韓基本条約ですべて解決されているという立場であり、私もまったく同じ立場だ。ただ、最高裁判決が出れば、韓国政府を縛ることになる。両国政府でよく話し合っていく必要がある。

 これからの100年を見すえ、日韓両政府は冷静になって、賢明な対応を模索しなければならない。(民主党衆院議員)




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