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2010.08.13|記者会見

外務大臣会見記録(平成22年8月13日)

外務大臣会見記録(平成22年8月13日(金曜日)15時06分~ 於:本省会見室)

○冒頭発言
(1)中央アジア訪問について
○民主党代表選
○日韓併合100年に関する総理談話
○北方領土返還に係る米国の関与
○閣僚の靖国神社参拝
○米軍再編問題
○パキスタンにおける洪水被害
○相互確証破壊(MAD)
○鳩山前総理の中国訪問

冒頭発言
(1)中央アジア訪問について

【岡田大臣】私(大臣)からは、先般、カザフスタン、ウズベキスタン、中央アジア+日本の第3回外相会合に出席をしてまいりました。そして、その際に両国の外相、あるいは大統領への表敬など、大変意義深い議論ができたと思っております。
 そもそも日本対中央アジアの外相会談というのは、基本的には2年ごとにというはずだったわけですが、4年ほど間が開いてしまいました。今回、私(大臣)がまいりまして、2年後は東京で、更にその2年後は、おそらくキルギスでということで、もう一度軌道に乗せて、そしてしっかりとやっていきたいと思います。
 中央アジアはなじみのないという方もいらっしゃるかもしれませんが、地政学的にも極めて重要で、旧ソ連邦、ロシアに接しており、かつ中国とも接していると、周辺にはイランなどの国もありますし、ユーラシア全体の真ん中にあるという意味で、非常に重要な位置にあります。かつ、エネルギーや資源、特にカザフスタンのウランとかレアアースとか、そういった日本にとって非常に貴重な資源の供給国でもあるということで、しっかりとした関係をこれからも築き上げていかなければいけないと改めて感じたところであります。

民主党代表選
【フジテレビ 清水記者】本日のケーブルテレビの番組収録において、大臣が民主党代表選において、小沢前幹事長の出馬は困難であるという認識を示されたということですけれども、改めて小沢前幹事長の出馬が困難と思われる理由についてお聞かせいただけますでしょうか。

【大臣】私(大臣)は困難と言ったつもりはないのです。基本的に、代表選に出る、出ないはご本人が考えることで、いいとか悪いとか、そういう立場にはございません。そういう前提の下での発言です。

日韓併合100年に関する総理談話
【産経新聞 酒井記者】先日の日韓併合100年に合わせた総理談話ですけれども、韓国政府が例の文化財の引き渡しについて、日本語文を翻訳するときに「返還」という言葉を使って地元のメディアに説明していたようなのですが、こうした韓国政府の対応について、外務大臣の所見と、またこれに対して抗議などの考えがあるかどうかお聞かせください。

【大臣】そういう報道があることは承知をしております。ただ、それは韓国政府内の対応でありますので、そのこと自身にコメントすることはございません。総理大臣の談話の中での表現については、談話のとおりであって、それ以上でも、それ以下でもございません。

【共同通信 斎藤記者】今の質問の関連で、一応念のためにお伺いしますが、一部の韓国メディアが、日本が首相談話を出した際に、参考としていわゆる韓国語の仮訳を出した中の表現は「返還」だったとの報道もありますが、そうした事実があるのかどうか、一応念のために確認させてください。

【大臣】そういう事実はございません。日本側が作成した仮訳では、「引き渡し(インド)」ということで表現をしております。「引き渡し」です。

【フリーランス 上出氏】今の日韓100年の談話については、賛否の立場からいろいろな声が聞かれるのですが、改めまして、外務大臣として、この談話の意義ですね。自民党辺りから批判の声もあるのですけれども、改めて国民に向けた今回の談話の意義。民主党でなければ、多分私は出なかったのではないかという気もするのですけれども、そういうことも含めて、意義を改めてお聞かせいただきたいと思います。

【大臣】今回の談話については、日本も韓国も含めて多くのメディアからは評価する声が私(大臣)は寄せられていると認識をしております。自民党の中にもいろいろな意見は当然あると思いますけれども、自民党の議員の中にも評価する声はあると思っております。
 意義ということですけれども、まずこれは100年という非常に区切りの年であると、そして、一方では日韓併合条約に基づいて植民地支配を行った、その100年というときに、日本政府として何も言わないということはあり得ない選択だと思います。それを総理大臣談話という形できちんと示すということは、私(大臣)は必要なことであるというように思います。内容的に新たな義務を負うとかそういうものは全くございません。しかし、今の日本国政府の考え方、気持ちをしっかりと表すということは非常に重要なことではないかと思っているところであります。
 もちろん、一部にご批判もあることも承知をしておりますけれども、誤ったときにそれを素直に謝罪するということは当然のことであると思っていますし、これは韓国に私(大臣)が2月に行ったときにも申し上げたことですが、自分の国に誇りがあるならば、自分の国が他国に置き換えられたときにどうなのかという、そのぐらいの想像力は持つべきだと思います。私(大臣)は日本人であることに誇りを持っています。したがって、日本が同じ立場に立って、どこかの国に植民地に化され、そういう形で国を奪われたり、あるいは言葉を奪われたり、歴史、文化を奪われたりするということになったときのことを考えれば、当然それは許し難いことだと私(大臣)ならば考えます。そういう想像力は是非皆さんにも、多くの国民の皆さんに働かせていただきたいと思っています。

【NHK 藤田記者】朝鮮王室儀軌の返還の方法と時期について、現段階でどういうような目途、スケジュール感を持っておられるのかお願いします。

【大臣】まだ特に具体的な話を政府の中で詰めて行っているわけではありません。これから官邸ともよく相談をして、最終的には恐らく条約という形になると思いますので、関係方面とよく調整をしなければいけないと思います。

【共同通信 斎藤記者】これまで与野党から出ている批判のうち、1つ共通して出ている話として、今回、談話の表現はいいとして、今回談話を出すことによって区切りの年、節目の年、内閣が変わればまた談話を出さなければいけないという1つの習慣といいますか、慣例ができ上がりはしないか。また、日本側がそう思わなくても他国が、例えば盧溝橋である、あるいは南京大虐殺である、こうした節目の年を重視する中国であるとか、北朝鮮もあるかもしれません。そうした国々が今回のケースである種の期待感を持つ。自分たちの節目の年にも出してくるのではないか。そうしたことが新たな、いわゆるお詫び談話、謝罪談話を出す圧力になりはしないかという声も出ていますが、こうした議論については、大臣はどのようにお考えなのでしょうか。

【大臣】今の議論でよくわからないのは、内閣が変わるたびにという。別に内閣が変わったから出したわけではなくて、100年という区切りの年だから出したということで、内閣が変わったから出したわけではありません。
 韓国、日韓併合100年で出せばほかにもそういう話は出てくるのではないかということですが、それはそのときの判断の問題だと思います。ただ、韓国という隣国、非常に重要な隣国であり、かつ、併合したという非常に重い事実、そして100年という区切り、そういったことにかんがみて、今回の談話を出すという判断に至ったものであります。

【読売新聞 川崎記者】引き渡しの件に関して、恐らく条約という形になると思うという大臣のご説明がございましたけれども、この条約案件、国会で当然承認は必要になると思うのですが、それはこの秋の臨時国会を念頭に置いてらっしゃるということでよろしいでしょうか。

【大臣】それも含めて、これからよく協議していきたいと思います。国会全体の運営にかかる話ですので、私(大臣)の一存で決める話ではありません。

【共同通信 斎藤記者】今回の談話は、朝鮮半島を対象にしているわけですが、韓国の方々に対する談話であり、その植民地支配というものは当時朝鮮半島全体にかかっていたわけですけれども、そう考えると38度線以北、現在の北朝鮮も当然対象に入っていくのではないかとも受け止められるのですが、談話の中では北朝鮮に対する言及はなかったと理解しています。この辺はどのような判断で言及を避けたのでしょうか。

【大臣】それは国交正常化がなされていないという状況の中で、今回は韓国の人々に対するものとして出させていただきました。もちろん、その趣旨は朝鮮半島全体に及ぶと思いますけれども、まだそういった戦後の問題についての日韓基本条約のようなものもありませんし、そういう状況の中で一方的に談話を出すことには、必ずしもならないのではないかと思います。

【産経新聞 酒井記者】談話の中身というより、手続きの話ですけれども、民主党内の一部では拙速というか、あっという間に密室的に談話の内容が決められたということで不満も出ているようなのですが、こういった手続き面での見解はいかがでしょうか。

【大臣】これは物事によりけりだと思います。ただ、50年の村山談話、60年に当たって出した小泉談話も含めて、党内で広く議論したということは余り聞いたことがありません。議論すれば当然表に出ます。その議論のプロセスが出ることがいいのかどうかということは、基本的に外交交渉と同じような中身をある意味では持っているわけで、途中で出れば期待感が高まったりすることもあると思いますし、こういうものは政府の責任で、責任ある立場の者がまとめるというのが、私(大臣)は普通の考え方かと思います。
  そういうサークルの中に入っていなかった方々から批判が出るのは、ある意味ではやむを得ないと思いますが、それ以外にやりようがあるとは私(大臣)は思いません。

【ニコニコ動画 七尾氏】先ほどの引渡しに関しましてですが、確認ですけれども、その際には日本の国会批准が必要ではないかという報道がございますが、これは引渡しに際して国会批准でいろいろ協議することになるのでしょうか。

【大臣】条約の審議の過程で、当然国会の承認が必要になります。

【ニコニコ動画 七尾氏】そうしますと、ねじれ(国会)の中で今回自民党、いくつかの党から反対の声がある中で、ねじれ(国会)の対応の中でなかなかうまく意図した方向に行くというのが難しいとは思うのですが、それはどういった見通しで考えていらっしゃいますでしょうか。

【大臣】それは相手のあることですから、これからのやりようですね。こういった性格の問題については、なるべく全会一致となることが望ましいことは言うまでもありません。したがって、丁寧に進めていく必要があると思います。

北方領土返還に係る米国の関与
【フリーランス 岩上氏】前回の記者会見のときに、50年代の日米交渉についてお聞きいたしました。その数日後、つい最近ですけれども、NHKのETV特集でダレス・重光会談について詳しく報じられました。56年8月19日のロンドン会談の模様、その中身で米国側が圧力をかけて、北方領土を4島返還にするというように働きかけた模様、沖縄を返還しないぞという圧力を加えたという話、そうしたものが表に出てきております。これについて大臣は存じ上げないというお話だったのですけれども、もしご存じないということであれば、ちょっと観点を変えまして、日露資料集、日ソ資料集という公開されている資料があります。そちらに外交文書が出ているのですけれども、このダレスとの会談の後、ロンドン会談を受けて9月に米国側が日本に対して、外務省に対して出している書簡があります。その中に、もし北方4島を返還しないのであれば、サンフランシスコ講和条約に同意しているというのをペンディングにすると、つまりはチャラにしてしまうことも考えているぞという、米国の恫喝とも思える文章が入っています。これはもう公になっているもので私も読むことができて、確認しているのですけれども、こうした圧力が当時、領土、国境の画定に関して米国側から強くかかっていたという事実に関して、大臣はどうお考えになるのか、もう一度お話を伺いたいと思います。

【大臣】その事実を突然言われても私(大臣)は承知しておりませんので、コメントを簡単にはできません。ただ、戦中に米露間でヤルタ会談とか、そういう首脳間の議論の中で、彼らなりの約束事というのがあったかもしれませんが、別に日本はそれに制約を受けるわけではないと。基本的にはそういうことだと思います。

【フリーランス 岩上氏】何しろ外交の歴史の積み重ねたるや大変なものがあって、博学の大臣でもすべての情報を頭に入れているわけではないというのは、これはごもっともだと思います。しかし、重要なことでありますので、時を置いて、もし必要であれば、事前に事務方を通して、この下りなのですけれどもとお示しの上で、準備していただいた上ででも、大臣のご見解を是非、国境、そして領土に関わる重要な日露間交渉に米国が介入してきた、圧力を加えてきたという問題について、ご見解をお聞かせいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【大臣】事前に教えていただければ、多少調べておくことはします。ただ、日露間の交渉に関わることはほとんど公表されていませんから、公表していないものに基づいてのお話はできません。

【フリーランス 岩上氏】公表されているものがあります。

【大臣】政府として公表したものなら、それはコメントできます。

閣僚の靖国神社参拝
【毎日新聞 西田記者】15日は政権交代後、初めて迎える終戦記念日ですが、大臣は先日の会見で靖国神社には参拝しないということを仰って、全閣僚が今回は参拝を見送るという流れになりそうです。全閣僚が参拝を見送るということが、先ほど話題になった日韓併合100年の首相談話もそうですが、歴史問題を乗り越えて、新たな東アジアの協調関係をつくっていこうという、その民主党政権の外交の一環ととらえてよろしいのでしょうか。大臣のお考えをお願いします。

【大臣】それは私(大臣)がお答えする立場にはありません。私(大臣)がほかの閣僚にこうすべきだとか、具体的にお願いをしたわけではありません。私(大臣)の考えとしてはありますけれども。今回、全閣僚が参拝しないということになったというのは、私(大臣)は経緯は存じませんので、特にコメントは差し控えたいと思います。私(大臣)の意見は前に申し上げたとおり、A級戦犯が合祀された靖国神社に参拝すべきではないというのは、私(大臣)が随分前から言ってきていることです。

【毎日新聞 西田記者】関連で、大臣が民主党代表時代に小泉総理が参拝されていた際に、その国益を損ねているというように強く批判されておられましたけれども、今回その閣僚が参拝しないことによって、外交面に与える影響といいますか、日韓、日中関係に与える影響はどういうように考えておられますか。

【大臣】そういう意味での影響は靖国参拝をすればあると思いますが、基本的に靖国参拝をするしないというのは、本人自身の判断の問題だと私(大臣)は思います。A級戦犯を合祀しているということをもって、私(大臣)は行くべきではないということを申しているわけです。

米軍再編問題
【琉球新報 滝本記者】本日8月13日は沖縄国際大学にヘリが墜落して6年経ったということで、その関連でお伺いしたいのですけれども、当時岡田大臣は民主党代表で、その当時、民主党として米国側に申し入れされてて、その申し入れの中には普天間飛行場の代替施設なき返還を行うことという項目を挙げられて、米国側に、要請に行かれたのは当時のネクストキャビネットの外相の前原さんでありましたけれども、岡田代表名で出されているということです。今現時点での岡田さんの立場は名護市辺野古への日米合意を推進という立場になっているわけですけれども、この違いが、へリが落ちて6年間、普天間はそのままある状況は変わらない中で、何が岡田さんの中で変わったのか、あるいは変わっていないのか、その辺はいかがなのでしょうか。

【大臣】当時の文書は党としてまとめたものであります。もちろん私(大臣)は代表ですから、そのことについて当然責任を負っている訳ですけれども、私(大臣)自身が、考え方と言いますか、一つの考え方に至ったのは、それは前も申し上げたと思いますが、2005年の秋に日本国政府として一定の日米間で結論に至ったということです。それまでにはいろいろなオプションがあったかと思いますが、そこで一旦結論を出したということです。私(大臣)はその時点からなかなか県外、あるいは国外という選択は難しいなというように考え始めた訳であります。

【琉球新報 滝本記者】その関連で、その日米合意は当時の政権が米国側と結んだということになるのですけれども、その一方で当時野党であった民主党として、同じ要請書の中には、当時の議論の中でアクションプログラムというか、民主党として沖縄の基地をどういうように縮小できるのかということを筋道を立てて計画を立てるべきだという議論があったと思います。それが積み重ねていかれれば、民主党の中での議論というのも醸造されて、うまくなっていったのかなと思うのですが、それがなかなか見えない、少なくとも我々には見えないのですけれども、なかなかそこの部分が議論されなかったのではないか、そこの議論を怠っていたのではないかという見方もあると思うのですが、そこの部分についてはどういうようにお考えでしょうか。

【大臣】そういう御批判もあるかもしれませんね。

【琉球新報 滝本記者】加えて、同じ要請書の中で、日米地位協定についても言及がありまして、その中には当然あの時は基地の施設外での墜落であったわけですけれども、その施設の中の事故であっても、自治体の関係者が立ち入りを要請した場合はそれを速やかに米国側が応じることというように改訂すべきだと申し入れておられるわけですけれども、まさに民主党は日米地位協定の見直しを掲げて、今もおられて、今後交渉に入られると思うのですが、今のところ環境条項についての言及がいろいろ飛び交っておりますけれども、この基地の事故についての立ち入りということについて、前向きに今後見直しをということを当時も求めておられた御姿勢というのは貫かれるお考えでしょうか。

【大臣】結局物事を成し遂げようというときに優先順位を付けなければ、単に要求するだけなら何でもできますけれども、政権与党として1つ1つきちんと結論を得ていかなければいけないという前提で物事を考えなければいけないということです。我々も例えば地位協定も見直しも必要があると、基本的にはそう考えていますが、今これだけ率直に言って普天間の移転の問題、これが最重要課題ですから、それが日米間でいろいろ議論をやっている時にこれでもかこれでもかと次々要求を突きつけることが普天間の移転に良い結果をもたらすとは私(大臣)には思えません。したがって、順序立ててやっていかなくてはいけないということだと思います。

パキスタンにおける洪水被害
【読売新聞 川崎記者】パキスタンの洪水被害に関しまして、自衛隊のヘリの派遣を検討しておられると思うのですが、これの派遣をするかどうかの結論をいつ頃までに出されるおつもりなのか。また現時点での検討状況についてお伺いします。

【大臣】パキスタンの洪水による被害は甚大でありまして、日本国としても出来る限りの支援が必要だと考えています。人道的な見地に加えて、私(大臣)も先般パキスタンの外務大臣とも意見交換したわけですが、アフガニスタンの問題を考えるときにパキスタンは非常に重要な位置づけになるということでもあります。したがって、そういう日本の支援の一環としてヘリを派遣できないかということについて、現在検討を行っているところです。もちろん現地の治安状況やそういったこともしっかり踏まえて行わなければなりませんので、現時点では現地調査のために外務省と防衛省の職員が今晩出発する予定になっております。その報告を受けて、支援が可能かどうか、どういう支援が効果的かということについて、内閣としての結論を出したいと考えています。

【読売新聞 川崎記者】今、大臣がおっしゃられた、今晩、外務省と防衛省の方が現地に行かれるということですが、何人の方がどれぐらいの日程で行かれる予定なのか、ご存じであれば教えてください。

【大臣】あまり詳細をお話しするべきでないと思いますが、現地調査をするために必要なだけの人数を出すということです。ただ、あくまで調査ですから、20人、30人になるわけではありません。

【読売新聞 川崎記者】いつ戻ってきて報告を受けるご予定なのかについて。

【大臣】一応の目安はあるのですが、しかし行ってみないとわからないという部分もあります。あまり時間をかけてしまうと、今度はせっかく派遣をしてもあまり意味がないということになってもいけませんので、迅速に彼らに調査結果を持ち帰ってもらいたいと思いますが、いつということを明確に申し上げる状況ではございません。
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相互確証破壊(MAD)
【フリーランス 岩上氏】前回、核の傘、核の抑止力に関連して、相互確証破壊戦略(MAD)についてご質問さしていただきました。その折り合い、大臣は、相互確証破壊戦略という理論は、もう古い過去の理論であるというように、ばっさりと一蹴されました。その後、私は不勉強なのかなと思いまして勉強してまいりましたが、相互確証破壊戦略が今日、有効性を失った古い学問である、古い体系であるということは見当たりませんでしたし、今日も生きているのではないかというのが、私のつたない勉強の結果でした。大臣がこの時おっしゃった真意はどういったものであったのか、そして、今日も核戦略がありますし、核の抑止力とか、核の均衡という言葉は使われており、核の傘という言葉も使われている訳ですから、MADに代わる核戦略というものがあるのか、相互にお互いを滅ぼす力があるからこそ均衡するという戦略であり、手続きに代わる手法、理論があり得るのか、ご説明願いたいと思います。

【大臣】冷戦終了後の国際社会の大きな変化の一つは、国家対国家ではなくて、国家でない集団というものが新たな脅威として出てきたということです。あるいは、なかなか表現が難しいのですが、普通、国家というのは、いざというときに自らの国家、国民を守るという前提で考えていたのが、国家の中にも必ずしもそれに該当しないような場合もあるということです。相互確証破壊(MAD)というのが適応されるのは、例えば、ロシアと米国というのは、今でも有効かもしれません。しかし、テロ集団が核を持つとか、あるいは北朝鮮が持つとか、別に北朝鮮と米国の間で相互確証破壊が成り立っている訳ではありません。したがって、おそらく部分的であるということです。相互確証破壊というのは、お互いが失ってはならないものを持ち、そして、均衡しているという中で成り立つ話でありますので、そういう前提が満たされないケースが多くなっているのが、現状だと考えております。

【フリーランス 岩上氏】米ソもしくは米露の間にそもそも築かれてきたMADが今日も有効であるということでしたが、私がお伺いしたかったのは、米国と中国との間にこうした関係が成立しているとお考えか。もしくは、今後、MADに向かって両者が近づいていく(とお考えか)。これは一種の不信に基づくけれども、おかしな話ですが、相手を必ず滅ぼせるので互いに手を出さないという信頼関係でもありますから、米中間は、北朝鮮、テロ集団との間にはそういう関係性は結べないかもしれませんが、米中間は両超大国として、その方向へ向かっていくであろうか、向かっているのか、あるいは、既に成立しているのか、この点についてお考えをお聞きしたいと思います。

【大臣】私(大臣)は、相互確証破壊というのは、論理的にはそういう考え方も有り得るのかなとも思いますが、一人の人間として見たときに、そういった非人間的な論理を受け入れることはそもそもできません。そういう意味で、非常に論理的に突き詰めていった結果、一つの結論になったかもしれませんが、もう少し冷静に人間であるということに立ち返って物事を考えるべきだと思っています。

【フリーランス 岩上氏】ということは、MADというのは、倫理的に余り好ましくないという大臣の個人的なお考えということで受け止めてよろしいのでしょうか。それは、日本には、米国の核の傘がさしかけられていて、米国によって、ロシアあるいは中国との間から核攻撃を受けないという保障を受けているのだということとは、相矛盾いたしませんか。この点についてお願いします。

【大臣】相互確証破壊という考え方が広く受け入れられたかどうかということです。つまり、一部の専門家の間ではそういう議論がありました。そして、ある意味では、核武装を増やす方向に機能したことは間違いありません。相手より多く持つという軍拡競争につながったということです。そういうことに対する反省というのは、私(大臣)は広く共有されていると思っています。

鳩山前総理の中国訪問
【日本テレビ 野口記者】鳩山前総理が、来週月曜から水曜まで中国に行かれて、温首相と会談することになっています。これは民主党内の議員懇談会という形で、党外交の一環だと思うのですが、それとは別に、来月にも菅総理の名代としてロシアに行く予定があるやにも聞いております。前総理と言えども、政府の人間ではない一衆議院議員がこういうふうに外交の表舞台に立つということに関して、大臣としては望ましいとお考えでしょうか。それとも望ましくないとお考えでしょうか。

【大臣】若干、議論を整理させて頂きたいのですが、まず中国に行かれるという話は聞いていますが、どなたにお会いになるということは私(大臣)は承知しておりません。ただ、議員外交として各地にいろいろな議員が出かけられると、しかもそれが総理経験者であれば、尚更ですが、それは基本的には外務省としては歓迎すべきことだというように思っております。ロシアに行かれるのは、私(大臣)からもお願いした件ですけれども、潘基文事務総長が中心になって温暖化の問題で一つのパネルを作ると、それには日本の代表として誰を出すのが良いのかという議論の中で、鳩山前総理にお願いしたものであります。

【日本テレビ 野口記者】それは何か期待するところが他の人ではなくて鳩山さんにあったのでしょうか。

【大臣】総理の時代に、温暖化の問題に対して熱心に取り組んでおられた、知見もある、そういう方だから最も適任であると考えたものであります。




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