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2010.07.06|記者会見

外務大臣会見記録(平成22年7月6日)

外務大臣会見記録(平成22年7月6日(火曜日)14時00分~ 於:本省会見室)

○冒頭発言
(1)キルギス情勢(新政府との関係)について
(2)外交文書の公開について
○米軍再編問題
○イラン情勢
○核軍縮・不拡散に関する有識者懇談会
○日印原子力協定交渉
○日本の国連安保理常任理事国入り
○外交文書の公開
○駐米大使人事
○日本の財政状況
○スーダンへのPKO部隊の派遣
○イスラエル情勢
○北朝鮮拉致問題

冒頭発言
(1)キルギス情勢(新政府との関係)について

【岡田大臣】今朝の閣議において、キルギス共和国新政府との関係について発言をいたしました。キルギス共和国においては、本年4月に政変が発生しましたが、民主化プロセスを経て、6月27日に実施された国民投票の結果、新憲法案及びオトゥンバエヴァ移行期大統領への信任が得られました。我が国はこれまでキルギス共和国における情勢の推移を注視してきました。今般、在キルギス日本国大使館から、7月6日付口上書をもって同国外務省に対し、国民投票が平和的に実施され、オトゥンバエヴァ移行期大統領への信任が得られたことに祝意を表し、日本との関係の継続をすることとしたものであります。

(2)外交文書の公開について

【大臣】外交文書の公開について、別途、報道発表を配付しておりますけれども、明日10時に沖縄返還交渉関係ファイル29冊、日米安全保障条約改定交渉関係ファイル8冊を外交史料館において公開いたします。一定期間を経過した行政文書については、国民共有の知的資源として、これを原則公開する、主権者である国民が主体的に利用できるようにすることが重要であるということは、何度も申し上げてきたところであります。言わば、これは外務省だけではなく、政府全体として取り組むべき民主主義の根幹に関わる重要な政策課題であると判断をしております。ただ、今回の公開対象を考えていたファイルの中に、他省庁との調整が必要なものがあり、現在、調整を行っているところでありますので、その1冊については今回の公開を見送り、残りの37冊をまず公開するということにしたものであります。今後ともスピード感を持って公開審査を進め、準備の整った外交記録を順次公開することとしたいと考えております。

米軍再編問題
【AFP通信 長谷川記者】先週末に沖縄県宜野湾市長が国に対して、普天間飛行場の関係で提訴する意向を示しましたけれども、それについての受け止めをお聞かせください。

【大臣】そのように言われたという事実は承知をしております。裁判になれば、それは堂々と裁判において国の主張を展開するということだと思います。

【フリーランス 岩上氏】ゲイツ国防長官がグアム移転費用の日本側の負担増額要求をしたという話が伝えられておりますけれども、これに対して政府はどのように対応するのか。また、このグアム協定を改定することにつながるのではないかと思うのですけれども、もし、このような米側が自分の一方的な要求を突き付けてくるのであれば、日本側ももっと日本の国益とか、あるいは現地沖縄の県民益ということを考えたタフな交渉をする余地があったのではないか、あるいはこれからもあるのではないかと思うのですけれども、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

【大臣】おっしゃるような報道があることは承知しておりますけれども、そのことについては特にコメントいたしません。そして、そのことを前提にした後半のご質問に対しても、今、お答えする状況にはないと考えております。

【フリーランス 岩上氏】それはなぜですか。

【大臣】前半のことについてコメントいたしませんので。いずれにしても、日本としては、少なくとも私(大臣)は、米国とタフな交渉をしてきているつもりであります。

【フリーランス 上出氏】それでは、一般論でお聞きします。今までも、いわゆる思いやり予算その他で、国の税金がこういう問題に使われるということになる訳です。それで、先般もお聞きしたのですけれども、日米合意の中に8月までにやるいろいろな討議と関連して、思いやり予算を流用するということが普天間の問題では日米合意の中で合意された訳です。このグアム移転というものも、そういう予算を出すという点では同じだと思うのですが、一般的な考え方として、国民感情として、米国の言いなりになっているのではないかというような世論もある中で、これを一般的に使うということ、受け入れるということ、一般論でいいのですが、どういう姿勢でこれから臨まれるのか。このような普天間の交渉の後を受けて、国民向けにどのような説明責任を果たせるのか。その辺を、こういう増額についてお聞きしたいと思うのですが。

【大臣】思いやり予算についての今のお話ですが、日米合意の中で、若干それに触れた部分はありますが、具体的なことは別に書いてある訳ではございません。それから、思いやり予算そのものについて、これからどうするかということについては、納税者である国民にきちんと説明できる、そういったことが前提になると考えております。いずれにしても、日米同盟、日本の安全のために米軍が存在しているという中で、全体としてどのようなお互いの負担を行っていくかということについては、しっかりと議論を行っていきたいと考えております。余り、このことの一部だけをとらえて、それが言いなりであるとか、そういう次元で私(大臣)はものを言うべきではないと思います。

【琉球新報 仲井間記者】海兵隊のグアム移転について伺います。5月末に合意した日米共同声明には、グアムに行く海兵隊の構成を再検討するという趣旨の文言も書かれていると思うのですけれども、一方で日本政府の費用負担を定めたグアム協定というのは、指令部が海兵隊について行くことを前提につくられた協定だと思うのですが、移転する兵員の構成が変わるとなれば、グアム移転協定も変化を必要とされるのか、それとも日本政府としては、移転する要員が変わったとしても、日本側の資金負担というのはグアム移転協定に基づいてやるのか、再検討の余地はないのかということをお聞かせください。

【大臣】基本的な人数については、現在、違いはございません。そして、若干の中身の違いというものは、当初想定していたものとは違うものがあるかもしれませんが、それはこれからの話し合いであります。日本にとってそのことが受け入れ可能かどうかということは、しっかりと議論していきたいと思います。その結果として、協定の見直しが必要であるとか、そういうことになるのかどうかというのは中身次第でありますので、今、仮定の議論は余りしない方がいいと思います。

【フリーランス 岩上氏】今、2、3分考えていたのですけれども、先ほどの大臣の回答では、やはりどうも釈然とせず、もう一度お尋ねしたいのですが、ゲイツ国防長官の増額要求というのは、当然国民の血税が使われることになる訳ですから、そうした要求があるということに対して、我々国民の血税を預かっている日本政府が、それに対してどう応じるか、応じないかということに関して、我々一般国民は、もう少し知らされてもよろしいのではないでしょうか。納税者に対して、税金の使われ方ということに対する説明責任という意味でも、この他国からの増額要求ということに関しては、センシティブな問題であるかもしれませんけれども、もう少しご説明をいただきたいと思います。

【大臣】もちろん、日本政府として何か決定をするというときは、国民に対してもご説明するというのは当然だと思います。今はそういう段階ではございません。

イラン情勢
【共同通信 斎藤記者】前回に引き続き、イラン情勢についてお伺いいたします。ご案内のとおりで、オバマ政権は先日、対イラン制裁法を成立させた訳ですが、報道によるとこの制裁法は石油開発をめぐってイランと取引きをしたり、石油製品をイランに輸出したりした外国企業を対象にしているということです。この制裁法の発動によって、日本企業の経済活動に何らかの影響を及ぼしているとお考えになるかどうか。そして、経済活動に支障が出ないように、米側に働きかけるとか、あるいは調整するといったようなお考えはありますでしょうか。

【大臣】法律が成立したことは事実でありますが、その詳細について、現在慎重に検討を行っているところであります。日本企業にどう影響が及ぶのかということについて見極めた上で、必要に応じて米国政府と協議をしていくということになると思います。現時点では特に具体的なことを申し上げる状況にはございません。

【共同通信 斎藤記者】改めてお伺いしますけれども、イランというと核問題にどうしても焦点が当たりますし、それは当然のことだと思いますが、一方で日本とイランの経済関係、これは歴史的に見て深いものもあると思いますが、イランと日本の経済交流、日本企業のイランとの経済活動の全般調整について、大臣はこの重要性といいますか、どのように認識されているのかについて、お伺いしたいと思います。

【大臣】まず、経済関係というより、もう少し広い範囲で考えますと、イランというのは中東における大きな国でありますし、日本との歴史的な今までの交流もございます。そういう意味で、非常に重要な国であると考えております。ただ、イランの累次の安保理決議に対する違反行為に対して、安保理で再度、制裁の決議が行われた訳で、その制裁の決議は日本としてしっかりと、これを守っていく必要があることは当然であります。それに加えて、独自の制裁措置がどのようなものが考えられるかということは、今、慎重に見極めているところであります。我々としては、イランがそういった安保理の決議違反という状況を改めて、そして、孤立化への道ではなくて、国際社会の中で共に生きていくという路線を取ることを非常に強く期待しているところであります。

【NHK 別府記者】イランの追加制裁、独自制裁についてですが、日本として独自制裁を出さないという選択肢はあり得るのでしょうか。

【大臣】まだ今、検討に着手したところでありますので、その結論について予断を持って答えることは避けたいと思います。EUなり米国の今回の成立した法律を含めて、それぞれの国の独自の制裁措置をしっかりと見極めた上で、日本としてどういったことが可能なのか、よく検討してみたいと考えているところです。

核軍縮・不拡散に関する有識者懇談会
【読売新聞 川崎記者】本日、核軍縮に関する有識者懇談会の第1回目会合があったと思いますけれども、改めてこの会合の提言は9月までにという話になっているようですが、その提言を具体的にどのように大臣としては生かすおつもりなのかどうか。また、その提言について、本日、委員の方からは、NPTの検討会議の内容も超えるものにしたいという意欲的な発言もあったようですけれども、実際のところ、それを政策として具体化できるかどうかはまた別の問題だと思いますが、そのことに関しまして、大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】まず、本日の核軍縮・不拡散に関する有識者懇談会の立ち上げでありますが、9月までに結論を出すということはどこにも言っておりません。ここでさまざまなテーマについて議論をしたいと考えておりますが、その内の1つが、やはり9月の国連総会の折に開催をする各国外相との議論、そこでどういったテーマで主として議論すべきかということであります。本日は、どういった国の外相に声をかけるべきかということと、どういう内容について議論すべきかということについて、主としてご意見をいただいた訳でございます。言わば、これは核軍縮・不拡散に関する新しいグループの立ち上げということになる訳で、いろいろな余り偏りないような形で、しかも核軍縮・不拡散に熱意を持った外務大臣に対して、是非お声をかけていきたいと考えているところであります。ただ、この有識者懇談会は、そこに留まるものではなくて、その後、さまざまな課題について、しっかりと議論していきたいと思っております。例えば、先般合意された米露の核軍縮条約、その後、どういう形で核軍縮というものを進めていくのか、どの範囲で、どういうものを対象にしてやっていくのかということでありますとか、それから、核の役割の低減、消極的安全保証というものが言われておりますが、消極的安全保証の実効性を高めるためにはどうしたらいいか、あるいは消極的安全保証の先の新たな目指すべきものは何なのか。唯一目的とか、主要な目的とか、あるいは先制不使用とか、いろいろなことが言われておりますが、そういうことについても議論をしていきたいと考えております。先般、インドの問題がありましたが、NPTに加盟していない国々というものを、これから核軍縮というものの枠の中にどのようにして取り込んでいくのかということも重要なテーマだと思っております。そういった基本的な、さまざまな核軍縮・不拡散、あるいは平和利用を取り巻く問題について、骨太の議論と提言をお願いしたいと考えているところです。

日印原子力協定交渉
【読売新聞 川崎記者】関連でお伺いいたします。今、大臣、インドのお話にお触れになりましたけれども、先の日印原子力協定につきまして、一部の報道で、インド側の方から説明をしたいということで、特使を派遣するとか、そういう報道が流れておりますが、これは大臣の方では、既にご承知を何かされていることなのかどうかについてお伺いします。

【大臣】特に承知しておりません。

日本の国連安保理常任理事国入り
【フリーランス 上杉氏】今、参議院選挙というさなかで、ちょっとさぼっていたので、もしかして重複する質問かもしれませんが、マニフェストの中で「安保理常任理事国入りを目指します」と明記されているのですが、大臣がその件に関してお話をされたというのは、余り記憶にないのですが、具体的にどのようなアプローチでそれを目指すのかというのを改めてちょっとお伺いしたいのですが。

【大臣】安保理常任理事国入りというのは、これは日本の外交をやっていく上で、基本的に非常に重要なテーマであるというように思っております。私(大臣)の外交演説の中でも触れていたと、私(大臣)は思いますけれども、具体的にどうやって今後進めていくかということについては、今、政府の中でさまざま議論を行っているところであります。まだ、少し方向性を申し上げるのは、時期尚早かと思っています。

【フリーランス 上出氏】参議院選挙全体の議論の流れをどう見ておられるかということなのですが、今の安保理も含めて、外交問題が全然出ていないと、しかも普天間は完全に忘れられていると、消費税が中心になって、これに対して、これでいいのかなといういろいろな疑問の声を聞くのですが、これはマスメディアの取り上げ方の問題もあると思うのですが、こういう中で、大切な日米安保の問題だとか、そういうことがほとんど触れられていない、こういう状況をどう捉えて、それについて何か外務大臣として是非言っておきたいこと、マスメディアに対してのことですが、そういうことがございましたら、お答え頂けますでしょうか。

【大臣】外交がテーマになるということは、実は非常に限られたこの選挙期間の中では、今までもそうたくさんあった訳ではございません。外務大臣としては、少し寂しい感じはありますが、安全保障の問題とか、あるいは温暖化とか核とか貧困とか、そういうグローバルな問題について、是非議論になればうれしく思いますけれども、残念ながら、そういう状況ではございません。
 いろんな討論番組を私(大臣)もできるだけ見るようにしておりますが、消費税の問題が議論の中心になっております。ただ、消費税を今上げるというように言っている政党は、私(大臣)は多分ないと思う訳で、政府も上げるときには、その前に総選挙をやりますということを我々は申し上げている訳で、議論をしましょうと言っているだけですから、それがなぜかすぐ上げるかのようなニュアンスで論じられているケースも結構ありまして、そこは非常に強く、私(大臣)は感じております。

【日本インターネット新聞 田中記者】安保理の常任理事国入りを目指すということですが、ころころ首相が代わる国が安保理に入って、しかもジャーナリストとの真剣勝負を避けて、記者クラブと慣れ合う政治家がいるような国が安保理に入って、果たしてこれは国際的な信用は得られるかという素朴な疑問が浮かぶのですが、大臣のご所見をお伺いいたします。

【大臣】今の説明は、少し取って付けたような感じがしない訳ではないのですけれども、やはり私(大臣)も外務大臣を10か月やってきて、安保理のメンバーに入っているということが、いかに重要かということを改めて感じております。今、理事国ではある訳で、だからこそ、例えば天安号事件なども安保理の理事国ではない韓国にいろいろサポートしている訳ですけれども、やはり安保理の理事国であるか、ないかというのは非常に影響力という意味で大きく異なってまいります。
 その中でも、特に常任理事国というところで、まず、いろいろな話を固めた上で、他の理事国に対して相談があるというのが通常でありますので、やはりこれだけの経済力もあり、そして民主国家であり、世界からドイツと並んでいい影響を及ぼしている国だと見られている日本、しかも核を持っていない国が常任理事国になって、そして世界のためにしっかりと役割を果たしていくということは、非常に意味のあることであると思います。
 ただ、それを唱えるだけではなくて、実現していかなければいけませんので、そのためにどうしたらいいのか、以前もチャレンジをして結果が出なかったということもありますから、よく前回のことも踏まえながら、どういうようにやっていくべきかということについて、いろいろとまず省内で議論しているところであります。
 先般5月にアフリカに行った折も、バイの会談で各国の外務大臣に日本の安保理常任理事国入りについて、私(大臣)は例外なくお話をいたしましたし、いろんな意味で少しずつ、そのための準備は静かに行ってきているというのが現状であります。

外交文書の公開
【共同通信 西野記者】外交文書のことについてお伺いします。今回、37冊を公開されたとのことですけれども、冒頭、一般論としての情報公開の意義についてはご説明があったような気がしますが、今回、1960年の日米安保改定、それから沖縄返還に関する、大きく言うと2つの柱があると思います。安保改定、沖縄、これは密約解明関連というくくりもできると思うのですけれども、沖縄ということについては普天間の問題もいろいろ絡んできます。それから、今後の対米関係ということについても関係してきます。この2つの課題に引き付けた上での今回の公開の意義、それから、どういったことを国民に訴えたいのかということについて、改めてお伺いしたいと思います。

【大臣】どういうことを訴えたいかということではなくて、やはり期限の来たものを順次きちんと公開していくということの一環だと考えていただいた方がいいと思います。特別の意図を持ってやっている訳ではなくて、なるべく迅速に、30年経ったものを公開していく、当たり前のことを我々はやっているということであります。
 沖縄返還、あるいは安保ということですが、今回に尽きる訳ではなくて、まだそのほかにも資料はございます。そういったものを順次、中身を見た上で、必要があれば関係省庁と調整しながら公開していきたいと考えているところです。

【共同通信 西野記者】関連省庁との調整ということで、今回、1冊が公開できない、現段階ではできないということなのですけれども、これは差し支えない範囲で言うと、どういうようなやりとりが省庁間で行われているのか、今後の見通しも含めてご説明ください。

【大臣】調整が終わり次第、速やかに公開したいと思っております。そう時間をかけるべきものではないと思っておりますので、1か月とか2か月とか、そういうようには考えておりません。調整中でありますので、それ以上のことは今、申し上げるべきではないと思っております。

【NHK 別府記者】沖縄返還と安保改定に関する外交文書、まだまだたくさんあると思うのですけれども、その中で今回この37冊が来たということは、どう理解したらいいのか。特に機械的にというよりも、これが面白いからとか、これは重要だという何らかのセレクションのクライテリアはあるのでしょうか。

【大臣】特にそういう判断はいたしておりませんし、すべきではないと思います。順次公開できるものを公開していくということであります。ただ、この分野で安保、沖縄返還について38冊本というくくり方で今まで言われてまいりましたので、そのくくりで出させていただいたということでございます。
 しかし、ほかにもこの関連の文書がいろいろなファイルに入っているということは、当然想定される訳で、これがすべてということではございません。

駐米大使人事
【フリーランス 上杉氏】駐米大使の人事についてですが、ユーラシア21研究所の吹浦氏のブログによると、駐米大使が朝日新聞の船橋洋一氏に内定したと書かれているのですが、そのような事実はあるのか、あるいはそのような予定はあるのかお聞かせいただけますか。

【大臣】ございません。

日本の財政状況
【フリーランス 岩上氏】少し前の話になりますが、G20の方で先進国の財政赤字問題が話題になって、その時に日本が仲間外れにされたなどという言い方で、日本は非常に問題児であるかのような報道、論評がかなり流されました。ところが、ゆくゆくきちんと調べてみると、ストロスカーンIMF専務理事は、先進国の財務赤字の削減目標の中で、日本が例外扱いされたのは、実は差し迫ったリスクが日本の財政状況になく、つまり、逆にリスクが少ないから仲間外れというか、例外扱いをしたというようなことが報じられています。こういう非常に混乱した報道が続いていることと、同時に選挙の真っただ中で、各党の表現は控えますが、少なくとも菅総理は、ギリシャを何度も何度も引き合いに出されて、財政破綻が起こるリスクは日本にもあるのだというようなことを述べられてきています。こうしたことを、この報道の混乱だけではなく、政府もその混乱に拍車をかけて、日本がいかにも財政破綻が間近に迫っているかのような表現で国民に対して説明していることは非常に問題があると思うのですが、この点、いかがお考えでしょうか。

【大臣】日本とEUの加盟国を同列に議論すべきではないという発想があったからこそ、扱いが変わったということだと思います。しかし、日本の現在の国債発行残高などを見ても、それが他の世界のどこの国を見てもないだけの、例えば、対GDP比で見て、飛び抜けた発行額になっていることは事実であって、こういう状況を更に悪化させていくということは、これは許されない状況にあると私(大臣)は思います。ですから、やたら危機感を煽る必要はないと思いますが、やはり政治の責任としてそういう状況に歯止めをかけて、そして是正していくということが、私(大臣)は強く求められていると考えています。

【フリーランス 岩上氏】しかし、日本は同時に250兆円の対外資産があり、500兆円の政府資産があり、1400兆円の個人金融資産があるとも言われております。純債務で見たら、日本はさほどの大きな債務国家という問題もあります。こうした見方に立った上で、ただ一点、非常に心配なことがあって、米国債を日本は大量に保有し、あるいは買い増しをしているということです。この米国債の暴落のリスクというものがあるのではないかということが予てよりも噂されております。米国との特殊な関係からかんがみて、日本が自由に米国債を売ったり買ったりできている訳ではないのではないか、いざとなると暴落のリスクがもしあったときに、現実にそうなったときに、日本の対外資産というのは、大変な大きなダメージを受けるのではないかという不安があるのですが、この米国債の保有とリスク、それから、それに対して日本政府は売却も含めて自由にリスク・コントロールができるのかどうか、これについてご見解をお示しください。

【大臣】さまざまなことを考えて、政府としては、米国債を買っていると思います。それ以上のことは、マーケットに関わる話ですから、大臣が、閣僚がコメントすることは控えたいと思っております。それから、今のお話の中で、日本政府としての債権ということを言われましたが、具体的にどのようなことを指しておられるのか、よく討論会などでも、日本政府の持っている、例えば、貸付債権というようなことが言われることがありますけれども、それは一方で、原資になっているものといえば、従来で言えば、それは郵貯であったり、今で言えば国債であったりする訳ですから、本当の意味での純債権とは言えないものが沢山含まれている訳で、その辺はもう少しきちんとした議論が必要だと思います。

スーダンへのPKO部隊の派遣
【NHK 別府記者】スーダンのPKOですが、ようやく5年前に和平合意があって、来年1月の南部独立の住民投票の運びで国際社会の関心も非常に高いものだと思うのですが、高い意義と比べて、何がネックになっているのか、治安なのか、お金なのか、どこら辺に今あるのか、分かる範囲で教えていただけないでしょうか。

【大臣】これは政府の中で議論しているところであります。官房長官も一週間後に結論出すというように言われておりますので、中でどういう議論をやっているかというのは、あまり言わない方が良いと思います。言えば、またバラバラだとかというように表現されてしまいますので、結論が出た段階で、その結論に沿ってきちんと説明したいと思っております。

イスラエル情勢
【共同通信 齋藤記者】先日、トルコのダーヴトオール外相と電話会談されたという発表がありましたので、その件についてお伺いしたいのですが、ダーヴトオール外相が国内紙とのインタビューで、例のガザ支援船の襲撃事件について、イスラエルは断固謝罪すべきであると、もし謝罪できないのであれば、国際的調査を受け入れろと、そうでなければ断交だと、かなり踏み込んだことを発言したと伝えられております。この件についてお伺いしたいのですが、トルコのイスラエルに対する非常に強い姿勢について、我が国として支持するのかどうか、そして、トルコが言うような国際的調査の受入れを求めていく場合に、日本として協力する用意があるのかどうか。これは、日本国内ではそれほど大きなニュースになっていませんが、かなり現地では大変な波紋を呼んでいる話でありますので、その点明確なコメントをいただければと思います。

【大臣】まずは、トルコの外相との電話会談の中身は、お話はしない方が良いと思います。ただ、沢山の方が亡くなった事案でありまして、トルコ側の主張、伝えられるような主張と、私(大臣)は断交と言われたのかどうかは確認できておりませんけれども、国際的な調査か、あるいは謝罪というようなことをトルコが主張しているということは私(大臣)も耳にしております。これを国際社会がどう受け止めるのかということについては、それを議論する場がある訳ですから、そういう場で議論に委ねるべきで、日本が個別にあまり方向性を明確にしない方が現時点では良いと思います。まだ当事者間で話し合いが行われている最中であります。ただ、トルコの外相には、私(大臣)の方から沢山の方が亡くなり、あるいは怪我をされたことに対するお悔やみとお見舞いは申し上げ、そしてそういうことが繰り返されてはならないということは申し上げたところであります。

【共同通信 斎藤記者】イスラエルは「緩和してきている」と言ってはいるものの、実際にガザに対する封鎖というものは、まだ完全に解除された訳ではありません。日本政府は完全解除を求めていますか、そして、完全解除を求めてイスラエル側に働きかけるお考えはありますか。

【大臣】この話とガザの話、そして、今回の事件は一応別の問題として、私(大臣)は議論されるべきことだと思います。ガザの封鎖といいますか、そこにアプローチすることについて制限を加えるということについては、基本的に、あまり省内で、私(大臣)のところに上がってきていないので、率直に申し上げられないのですが。この記者会見で初めて詰まりましたね・・・、なかなか難しい問題だと思います。難しい問題ですが、ガザ地区に対して直接外からアプローチするということは、ガザ地区の今、置かれている国際的な位置ということとも関係いたしますので、そう簡単な問題ではないと思います。自由にそこへ船舶が着いたり、離れたりすることができるのかどうかということについては、かなり国際法的にも微妙な問題だと思います。したがって、少し専門的に議論してみないと、この場ではお答えできません。

【共同通信 西野記者】これは、G8の首脳会談の宣言の中にも扱われていて、「一定の緩和については評価すると同時に一層緩和していく」ということは、G8の中でも合意されている内容だと思いますが、今のご答弁というのは、それよりも後退したものなのでしょうか。

【大臣】ですから、完全に自由化できるかどうかということについては、少し検討が必要だというように申し上げました。

北朝鮮拉致問題
【毎日 西岡記者】北朝鮮拉致問題についてですが、一部報道で金賢姫元死刑囚の来日の可能性が報じられていましたが、窓口はおそらく外務省が担当されていると思いますが、現時点で訪日の可能性とその日程的な目途みたいなものでお伝えいただけるものがあればお願いします。

【大臣】特に申し上げることはございません。




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