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2010.05.27|夕刊フジ

夕刊フジコラム「ズバリ直球」10年5月27日号

韓国海軍の哨戒艦「天安」が3月下旬、黄海の南北境界付近で突然沈没し、46人もの乗組員が亡くなった。この件を調べてきた韓国と米国、英国、オーストラリア、スウェーデン合同調査団は20日、「北朝鮮製魚雷の水中爆発で沈没した」「北朝鮮の小型潜水艇から発射された以外にあり得ない」という調査結果を発表した。
 
調査団はその証拠として、①沈没現場から回収された魚雷の破片が、北朝鮮製魚雷の大きさや形態と一致した②魚雷後部のスクリュー内にあったハングル表記が、北朝鮮のものと一致した-ことなどを挙げた。
 
疑う余地のない物的証拠といえ、日本政府としも調査結果をそのまま受け入れた。北朝鮮が何を意図したのかは分らないが、明らかな違法行為であり、許しがたい武力行使というしかない。極めて遺憾だ。
 
北朝鮮側は「でっち上げだ」と関与を否定し、メディアを通じて「戦争局面とみなす」などと恫喝しているようだ。しかし、調査団によって、これだけ客観的かつ科学的な証拠が示された以上、否認の立証責任は北朝鮮にある。
 
韓国の李明博大統領は24日、調査結果を受けて演説を行った。
 
この中で、李大統領は「韓国を攻撃した軍事的挑発だ」と北朝鮮を厳しく非難し、謝罪や関係者の処罰を求めた。さらに、韓国独自の制裁案を発表し、事案を国連安全保障理事会に付託して、国際社会として責任を問う姿勢も示した。

その一方で、「われわれの究極的な目標は軍事対決ではない。朝鮮半島の平和と安定だ」と冷静に呼びかけた。大統領の深い思いが伝わってきた。
 
調査結果が発表された翌日の21日、クリントン米国務長官が来日し、私と日米外相会談を行った。イラン問題や普天間問題についても話し合ったが、この韓国哨戒艦沈没事案に多くの時間を費やした。
 
会談では、「韓国を支持する」「北朝鮮の行為は許されない」「日米韓3カ国が緊密に連携して対処していく」など、方向性は完全に一致した。約1時間、クリントン長官との5回目の会談は実に有意義だった。
 
今回の事案を安保理で取り上げることについて、常任理事国である中国とロシアは慎重とされる。ちょうど今月29日、韓国・済州島で日中韓首脳会議が行われ、30日には中国の温家宝首相が来日する。わが国としても積極的に働きかけていきたい。
 
ともかく、日本を取り巻く東アジアの安全保障環境は厳しい。韓国で起きたことが日本で起きる可能性もゼロとはいえない。現実をしっかり見すえて、十分な対応を取っていきたい。

(C) 夕刊フジ




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