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2008.02.07|国会会議録

第169回国会 衆議院予算委員会 平成20年2月7日

岡田委員 民主党の岡田克也です。

きょうから、あした一日かけまして、野党の方から、福田総理初め各閣僚に質問したいと思います。

私からは総理を中心に質問したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

まず、総理にお聞きする前に、きょう持ってまいりましたが、さきの補正予算の審議のときに我が党の菅代表代行の質問がありまして、各市町村長の、中期計画の策定、暫定税率延長あるいは道路特定財源維持、そういったものに対する賛同の署名簿というのがあるということで、ここに現物を持ってまいりました。

確かに三冊に分かれているわけですが、ただ、この署名について、冬柴大臣から全員の署名があったという御答弁がありまして、これは事実に反しているのではないかということで、御説明と釈明をいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 去る一月二十八日の当委員会におきまして、貴党の代表代行でもあられる菅直人委員が質疑されました。その中で、私の発言に誤りがありました。質疑者の菅代表代行に対してはもちろんのことですが、委員長そしてまた予算委員の皆様方、また国民に対しても、心からおわびを申し上げたいと思います。

御案内のとおり、道路の中期計画(素案)の中には、全首長、すなわち千八百七十四人、当時でございますが、の意見を寄せていただきました。そして、そのような記述がございました。これが私の頭に刻み込まれていたときに、この三冊を大臣室へ持ってこられまして、首長直筆の署名による道路特定財源諸税の暫定税率延長等に関する要望です、このように聞かされましたので、私はすべての首長が、先ほど千八百七十四人が意見を寄せていただいた、その人たちが署名をしていただいたというふうに誤信をしてしまいまして、その結果、先日の答弁となってしまいました。

その後、担当者から、当時は合併前でございますが、千八百人の市町村長のうち六人の市長さんの署名が欠けているということを知らされまして、びっくりしまして、直ちに菅委員にもおわびを申し上げ、この衆議院の予算委員会でそのことを申し上げておわびを申し上げる、訂正させていただくということを申し上げた次第でございます。まことに軽率であったことを重ねておわびし、訂正をさせていただきたいと思います。

岡田委員 その現場に私もおりましたけれども、大臣もかなり勢い込んで全員がと答弁されましたので、以後、よく気をつけていただきたいというふうに思います。

そこで、この署名ですが、私、ちょっと見本を持ってまいりました。名前はちょっと差しさわりがあるかもしれませんから消しておきましたが、気がつくことは、同じフォームで全員が署名をしているということであります。では、一体だれが集めたんだろうかということで確認をしましたところ、私が承知している限りでは、任意団体である道路整備促進期成同盟会全国協議会、今、兵庫県の加古川市長が会長をしておられるということですが、この団体が集めたということであります。

この団体と国土交通省の関係というのはどうなっているんですか。

冬柴国務大臣 任意団体でございますので、国土交通省とは全く関係はございません。

岡田委員 国土交通省のホームページを探しますと、この団体にリンクされているんですね。事務局長は旧建設省のOBであります。

ついでに言いますと、これは二〇〇六年のさる新聞社の報道ですけれども、この全国協議会が出版をしていると。出版をしておりまして、例えば道路時刻表とかあるいは永田町・霞が関エリアマップなる本を出版いたしまして、そしてその本を地方整備局あるいは北海道開発局に買わせていたと。合計で七千百万円であります。今はまさかそんなことはないだろうと私は期待をいたしますが、しかし、二〇〇六年の報道の段階でそういうことがございました。

つまり、これも恐らく道路予算を使っているんだと思いますけれども、それだけの予算を使って、七千百万円の予算を使って本を買わせ、かつ、事務局長は国土交通省OBでありますから、これは密接に国土交通省と関係のある団体である、そう言わざるを得ないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

冬柴国務大臣 道路整備局は、書籍を、必要な部分についてはその判断で買っております。

それから、事務局長がOBだからそれが関係があると言うかどうか、それは皆さんの判断だとは思いますが、そういう事実はございます。

岡田委員 今大臣は、書籍は必要があれば買っていると言われましたが、たしかこれが報道されたときに、国民の理解を得られるように見直しを検討したいと国土交通省は言ったんじゃないんですか。今でも買っているんですか。

冬柴国務大臣 もちろん、我々の、今、原油価格高騰の折から、国民の皆様に苦しい中を暫定税率維持をお願いしている立場から、あらゆる点について不快な思いをしていただかないように、自粛すべきものは自粛するということはもう申し上げているとおりでございます。

岡田委員 それではお聞きしたいと思いますが、この署名集めですけれども、この任意団体が行ったということですが、国土交通省の職員が集めたということはありませんね。

冬柴国務大臣 そういうことは聞いておりません。

岡田委員 もしあったとしたら、大臣はどう思われますか。

冬柴国務大臣 前回も北海道の事例ですかでそのような指摘をされました。したがいまして、全国の出張所長あてに、そういうことがないかどうか、あったら知らせてほしいということで今調査をしているところですけれども、今のところはそういうことはございません。

岡田委員 これは、もしそういう事例があれば、大臣もそれなりの責任を感じていただかないと困るということになりますよ。

それでは、総理にちょっとお聞きしたいんですけれども、全国の市町村長が、六人の例外があったとはいえ、私は六人の例外があったというのは非常に救われた気持ちがするんです。ほぼ例外なくすべての市町村長が、こういった役所ないしは役所に関係する団体の求めに応じてサインをする、道路特定財源を守れ、あるいは一般財源化すべきでないとか、そういったことにサインをするということについて私は非常に違和感を感じるんですけれども、総理はいかがですか。

福田内閣総理大臣 極めて多くというか、ほとんど全国の市町村長さんがこういうような署名をされたということでございまして、これは、地方行政にそういう自治体の長の方々は責任を持っているわけですね。ですから、そういう責任を持つ立場として、地域、住民の生活に根差した道路整備の必要性、これは強く常々認識をされていることだと思います。そういう認識を反映した結果、署名をされたというように認識いたしております。

岡田委員 私は、地方に道路予算をという観点で署名をされているのなら、それは市長さんあるいは町長さんのお立場として理解できないわけじゃないんです。ただ、特定財源制度を守れとかそういうことになると国の仕組みの問題ですから、そういったことまで含めて署名を強いているようなことはいかがなものかと。

総理も私と同じ平成二年の初当選ですから、昔のことを覚えておられると思いますが、昔は、いろいろな団体、公共事業ごとに、道路以外も含めて、年末になると大きな集会をやって陳情にどんどん回って、そういうことがありました。最近、大分それは、私は、風景が変わりつつあるなとは思うんですが、道路の世界だけは変わらないんですね。やはり年末に大きな集会を打って全国から市町村長を集めて、そして、とにかく道路予算を守れ、こういうふうに言う。そして、実際に各省庁をぞろぞろと陳情して回る。住民に選ばれた首長がどうして役所に行って頭を下げなきゃいけないんですか。私はすごく違和感を感じるわけです。

そういったことがいまだに色濃く残っているのがこの道路予算であって、私は、これは道路の帝国主義かあるいは道路翼賛会だというふうに思うわけですけれども、こういうことについて総理は違和感を感じられませんか。私は非常に違和感を感じますが、いかがですか。

福田内閣総理大臣 私は、岡田委員とちょっと意見が違うのかもしれぬのですけれども、例えば、予算のシーズンになって、ある団体が集まって気勢を上げる、そしてその後、国会、議員会館を回って陳情する、そういう光景は今でもいろいろな団体がやっているんじゃないでしょうか。私もそういうのを受けたこともございます。ですから、それほど違和感を感じていないということが一つ。

それからもう一つ、道路特定財源のために、この存続のために署名しているんじゃないか、こういうふうにおっしゃるけれども、しかし、今までずっとこういう制度のもとでやってきたわけですよね。ですから、新しい制度をしてくださいとかいうようなことを考える必要はないわけですよ、その制度は存続するという前提に立って。もしこの制度をやめるというのであれば、やはりそれなりの対案を出していただくということが大事なんだと私は思いますけれども。その上でまた議論ができるのではないかと思います。

岡田委員 道路特定財源の話は、後ほどまたしたいと思います。

そこで、一万四千キロの話を少ししたいと思うんですが、この一万四千キロというのは、昭和六十二年六月の四全総、第四次全国総合開発計画に定めたものであります。この昭和六十二年というと、一九八七年ですから二十年前である。二十年前の数字がいまだに通用しているというのは、私は非常にこれまたおかしなことであるというふうに思うんですが、総理はいかがですか。

冬柴国務大臣 おっしゃるように、一万四千キロで決めてありますけれども、現在の整備率は六七%です。すなわち三分の二ができただけでございます。あと三分の一があるわけです。そしてそれは、委員もおっしゃいましたように、閣議決定をし、そして一部は、国土開発幹線自動車道建設法という法律に、きちっと別表に書かれているわけでございます。したがいまして、それには道路の名前から起終点も明らかにされておりますので、地方もそれを期待して、私の方を早くしてくれという陳情があるということでございます。

岡田委員 冬柴大臣は道路建設を推進するお立場ですから、その立場の意見を私は今議論したいとは思いません。

ただ、一言言わせていただくと、せっかく、政府・与党、公明党から二代続けて国土交通大臣が入りながら、ああ、期待された役割を果たしておられないんじゃないか、今や役所の言うがまま、役所の代弁者になってしまっている。そのことは、この問題もそうですし、例えば成田空港の外資の規制の問題もそうですよ、さまざまな問題について、私は、もう少し自民党とは違う視点から大臣としてお務めになることを期待しておりましたので、非常に残念だということは申し上げておきたいと思います。

そこで、総理と議論をする前にちょっと、テレビを見ておられる方に少し定義の説明をしておきたいと思いますが、一万四千キロというのは、高規格幹線道路ネットワーク、これは四全総で、一九八七年、昭和六十二年六月に閣議決定されたものであります。

この内訳は実は二つありまして、高速自動車国道と一般国道自動車専用道路。高速自動車国道の予定路線は同じく一九八七年、国幹道法で決められておりまして、一万一千五百二十キロ、これに一般国道自動車専用道路の二千四百八十キロを足すと一万四千キロになる、こういうことであります。ただし、この一万一千五百二十キロの予定路線のうち、整備計画に乗っかっているものは九千三百四十二キロ、こういうことになっているわけであります。

一万四千というのは、この予定路線と一般国道自動車専用道路を足したものが一万四千、高規格幹線道路ネットワークということで四全総で定義された、こういうことでありますので、このことをまず申し上げた上で、総理に少しお話ししたいと思います。

まず、道路公団民営化の議論というのが小泉総理の時代にございました。そのときに、なぜ道路公団を民営化する必要があるのかという議論を私も小泉総理と随分いたしましたが、そのときの小泉総理の答弁は極めて明確で、いや、無駄な道路をつくらないためである、道路公団を民営化すれば無駄な道路をつくらなくなる、つまり採算に合わない道路はつくらないんだ、だから民営化するんだ、こういうふうに総理はおっしゃったわけであります。

そのことについて、実はこれは、民営化が決まった後、小泉総理と議論いたしました。この一万四千キロというのは、先ほど言いましたように、つまり一万一千五百二十キロのことですから、この一万一千五百二十キロについて総理は、一万一千五百二十キロまでこの道路公団でつくっていく、みんなそれを当然視していた、それを自分はストップしたんだ、これがいかに大きなことか、無駄な部分をつくるということが避けられた、こういうふうに小泉総理はたんかを切られたわけですね。

私は、それでは既にもう決まっている九千三百四十二キロの整備計画以外はすべて白紙、そういうことで確認させていただいてよろしいんですねというふうに申し上げました。小泉総理は、白紙であります、これは大きいでしょう、こういうのは道路公団民営化をやったから言えるんですよ、こういうふうに断言をされたわけであります。これは平成十八年三月二日の予算委員会であります。

時の総理がこれだけ、白紙だと言われたことが、一万一千五百二十キロ、つまり今で言う一万四千キロですよ、一万四千キロがいつの間に生き返ったんですか、総理。だれがそういう判断をしたんですか。総理大臣が国会で約束されたことが簡単に変わっていいんですか。いかがですか、総理。総理。国土交通大臣が総理大臣の前言を翻すことはできないんですよ。だから、総理に聞いているんです。総理に聞いているんです。

逢沢委員長 まず、冬柴国土交通大臣。

冬柴国務大臣 その整備計画、九三四二というのは、平成十五年十二月に、日本道路公団を民営化するという議論のときに、整備計画、いわゆる整備命令が出ていた部分でございます。そのうち七千三百四十三キロは、その段階でもう完成して道路が供用されていたんです。したがって、あと千九百九十九キロについてどうするのか、そのままつくっていいのか。それは、道路公団で有料道路として会社が運営できるのかということの判断をしたわけです。

したがいまして、その結果、岡田さんも知っているように、走行距離に対してかかった費用が、BバイCで、コストはそのベネフィットに見合うのかどうかという検討を全部したんですね。その結果、千百七十七キロについては採算が合う。要するに、それだけで、BバイCは合うけれども、それだけ高い値段を払って償却がなかなかできないということから、千百七十七キロについては、道路公団、すなわちその後の道路会社でつくる、有料道路としてつくる。しかしながら、残りの二千四百八十キロ、一番下に書いてあるところは、これはそのとおりにつくっていくということで決まっていたわけです。

したがいまして、そこで言われた、それは白紙ですというのは、一万四千キロからそれを引いた分は、なるほど計画はあります、しかしながら、それをつくるかどうかということは、いわゆる国幹会議の議を経て、それぞれ、その年その年で決めていくわけです。その後も決めていますよ。したがって、それには民主党からもちゃんと代表が入っていらっしゃるじゃないですか。

岡田委員 いろいろ答弁されますが、当時の小泉総理は、この一万四千キロに相当する一万一千五百二十キロについて、これは白紙であると言われたんですよ。白紙であると言われたことが、いつの間にか、それはBバイCで、何か国土交通省が計算したかもしれませんが、それだけで生き返るんですか。総理の言葉というのはそんなに軽いんですか。一国の指導者の発言というのは、そんなに、国会でその場しのぎでやって、時間あけたら変わるんですか。福田総理、いかがですか。

逢沢委員長 冬柴国土交通大臣、簡潔に答弁してください。(岡田委員「福田総理の意見を聞いているんです」と呼ぶ)

冬柴国務大臣 しかし……(岡田委員「聞いていませんから。聞いていませんから。聞いていません」と呼ぶ)

逢沢委員長 指名します。着席してください。(岡田委員「全く聞いていません。総理。総理、答えなさいよ。総理」と呼ぶ)

内閣総理大臣福田康夫君。

福田内閣総理大臣 別に逃げていませんよ。国土交通大臣がいますのですから、正確なる答弁も、私よりもうまくできるんじゃないかと思っております。

小泉総理は、当時の整備計画区間の九千三百四十二キロを超える区間については白紙である、全部見直すと言っておられましたけれども、こういう答弁をされた、これは承知いたしております。

しかし、これは、九千三百四十二キロを超える区間のすべてを当然に整備するということではなくて、採算がとれる区間か、地域で負担できる区間かなどをよく考えなければならないという趣旨で答弁されたものであります。本当に必要な道路は整備しなければならないという答弁もされておられます。

その一万四千キロの高規格幹線道路については、今、国土交通大臣から答弁しましたように、今般の中期計画において、すべての区間を整備すると決定したものではありません。各区間を整備するか否かは、事業着手に先立って行う事業評価の結果により判断をするということになっております。

また、今回、未供用区間について点検を行ったところでありますけれども、九千三百四十二キロを超えて高速自動車国道の事業着手を行うかどうかは、先ほども答弁したとおり、改めて客観的かつ厳格な事業評価を行うとともに、民主党の皆さんも委員となっておられる国土幹線自動車道建設会議、国幹会議の議を経て決定するものでございます。

岡田委員 総理、ここは本当によく考えていただきたいんですよ。つまり、二十年の歳月の重みということです。四全総をつくったとき想定した日本と今想定される日本と、かなり違うんですね。

例えば、二〇五〇年の数字について、四全総の前提としている二〇五〇年の人口を御存じですか。これは厚生省の人口問題研究所が当時出したものですけれども、一億二千八百万人です、二〇五〇年。今の、同じ人口問題研究所が出している二〇五〇年の数字は御存じですか。これは、私はかなり甘い推計だと思いますが、中位推計で九千五百万人です。つまり、一億二千八百万人と想定した二〇五〇年の人口が九千五百万になっている。ほぼ四分の一減っているわけですよ。

それから、六十五歳以上の人口の割合は、四全総では、二〇五〇年の想定が二五・五三%。それが現時点では三九・六%。これも全然違うわけですよ。これだけ前提が変わっているわけです。

そして、もう一つ言います。国の借金はどうですか。二十年前の国、地方の借金は二百三十八兆円ですよ。対GDP比で六六%。今は七百七十八兆円、対GDP比一四七・六%ですよ。

これだけ二十年前に想定した人口から見て人口が減り、そして借金がこれだけふえて、それで一万四千だけはそのまま何が何でもやっていくという、こんなおかしな国がありますか。これで本当に次の世代に対して責任を果たしたと言えるんですか。どうですか、総理。

福田内閣総理大臣 確かに、人口も急速に減る見通しがあるということもございます。そういうことは当然考えなければいけない。そしてまた国の借金も多い、これもそうです。ですから、そういうような状況変化というものはよくわきまえて、その上で計画をつくるということなんですけれども。

では、だからといって、人口が減るから地方道路は要らないのか。地方の活性化は図らなくてもいいのかどうか。地方の経済はどうなるか。国土の発展ということを考えた場合に、また地域の発展もそうですけれども、例えば森林地帯をどうするかとか、そういう自然を守るのにどうしたらいいか、いろいろなことを考えた上で判断すべき問題であって、ただ単に人口が減るからとかいったようなことだけでは私は結論が出ない問題だというように思います。

そしてまた、人口のことでございますけれども、今般の中期計画の素案の作成に際して行った点検におきましては、平成十五年の道路公団民営化時と同様の評価手法により行ったものでありますけれども、この作業には、平成十四年に国立社会保障・人口問題研究所が推計した将来人口をもとに推計された将来交通需要を用いておりまして、我が国人口が二〇〇六年にピークを迎え、その後は減少していく、こういう傾向というものは織り込んでいるのであります。さらに、各区間の事業着手に先立っては改めて事業評価を行うことといたしておりますけれども、その際には、その時点で活用可能なデータに基づいて作業をこれからもしてまいる予定でございます。

岡田委員 BバイCで分析している基準では、たしか二〇三〇年だったと思いますね。だから、それ以降また減っていくんですよ。余りつくり過ぎると、これは維持費だけで大変ですよ。もうそれだけで国の歳出構造が硬直化してしまいますよ。ほかの、社会保障とか介護とか高齢者医療とか子育て支援とか農業とか、さまざまな部門にお金が回らなくなりますよ。だから、二十年前の、先ほど言いましたような、その前提に立ってやっている、それが変わっていないということの異常さをよく考えていただきたいんです。

それは、BバイC分析というのは、国土交通省がやられて、一万四千キロについて全部一以上であるという結論を出されましたよ。しかし、それは前提の置き方で幾らでも変わるのであって、例えば原油価格がこれだけ上がったらどうなりますか。車を利用する人は減るでしょう。また変わってくるんですよ、そうすると。

ですから、もう一回これはきちんと見直して、一万四千キロは本当につくるのかつくらないのか。それはなかなかつらい作業ですよ。一回、これだけやりますといってアナウンスしたものを、いや、実は違いましたと言うことは、それぞれ地元を抱える者としてつらいことではありますけれども、しかし、やはり将来の日本のことを考えたら、一万四千キロを当然の前提にする、そんなばかげた前提で私は議論すべきじゃないと思いますが、もう一度、総理の御意見を聞きたいと思います。

福田内閣総理大臣 私は、二十年前の計画、こういうふうにおっしゃるけれども、道路建設というのは時間がかかるんですよね。長い時間がかかってやっとでき上がる、そういう性格のものでございますから、やはり計画として長期的な計画を持つというのは当然だと思います。そうでなければ、本当に関係者は困ってしまうということになりますし、また、道路ができるかできないかで、その地方が発展するかしないかということにも関係してくるわけでしょう。

ですから、そういうことも含めて考えて、そして、先ほど来御説明申し上げていると思いますけれども、これは、何もこれでもってすべてやりますというふうに言っているわけではないんですね。見直しは当然あるわけでありますし、そして、そういうときには、社会情勢その他の状況を判断して毎年決定していくということでございますから、そういうように、やはり全体を考えて、また地方の発展のこととかそういうことも含めて考えていかなければいけないということを強調させていただきたいと思います。

岡田委員 小泉総理の時代に一たん消えた一万四千という数字が当然のように生き返ってくるから、私は申し上げているわけですよ。

それじゃ、もう一つ、先ほど出ていました一般財源化の話ですけれども、これだけ財政が厳しい中で、なぜ道路だけなのかということが私には理解できないんです。もちろん道路も大事です。だけれども、ほかにも大事なものはある。

先ほど言いましたように、例えば都道府県、市町村に行けば、介護の問題もある、高齢者の医療もある、農業もある。さまざまなことに対応していく中で、なぜ道路予算だけが、最初にこれありきで特定財源になっているのか。一般財源化して、それぞれの市町村で、必要なことは議会と市町村長が決めればいいじゃないですか。国で必要なことは国会と政府が決めればいいじゃないですか。なぜ最初からこれだけは道路ありきということになるんですか。どうして一般財源化できないんでしょうか。

総理の御意見を。当事者は、当然、必要だと言うに決まっていますよ。これは、特定財源と関係のない、全体を見ている総理に聞いているんです。総理、いかがですか。総理、いかがですか。基本的なところですから、総理、答えてください。

額賀国務大臣 これは、岡田委員も御承知のとおり、昭和二十九年に最初に特定財源化されたわけであります。当時は、道路をつくってインフラ整備をして、そういうことで高度成長の基盤がつくられてきたわけでありますから、これは国会の知恵でそういう財源が措置されたわけでありまして、道路をつくることによって恩恵を受ける人たちに負担をしていただく、受益者負担の原則に従って今日まで来た。と同時に、五年に一遍ずつ見直しをして、そして全国の国民の皆さん方の要望にこたえて、道路はつくってほしいというようなことの要望が強かったから今日まで継続をしてきたということがあるわけでありますね。

しかし、先ほども申し上げましたけれども、小泉政権のときに、やはり道路財源は一般財源化していってもいいのではないかという考え方を示しました。しかし、その場合、特定財源でありますから、ユーザー、負担者の理解を得なければならないということが条件でありました。

そして、安倍政権のときに、これは、じゃ、何の法律をもって一般財源化をするのかということを明確にして、揮発油税を改正して、道路整備を上回る分については一般財源化を図るということに考え方をまとめていただいて、福田首相が今回、その改正法案を出させていただいた。だから、はっきりと、道路特定財源から区分をして一般財源化をしてという形になったわけでございます。

岡田委員 余ったものは一般財源にすると。まず道路予算ありきなんですね。

私は、額賀大臣のこの予算委員会における答弁を何回か聞かせていただいて、やはり財務大臣ですから、財務大臣らしく答弁された方がいいんじゃないかと思うんですね。まるで道路族の一人みたいな答弁をされているじゃないですか。やはり財務大臣としては、なるべく特定財源じゃなくて一般財源の方が望ましいというのは当然だと思うんですね。それを何か道路族の親分のような答弁をしているのは、私は非常に理解しがたいことであります。

そこで、総理、ちょっとお聞きしますが、総理、聞いておられますね。

小泉総理の時代に、まず、二〇〇一年、聖域なく見直す方向で検討したい、こう言われました。結論は政府・与党の合意ですが、一般財源化を図ることを前提に、納税者の理解を得つつ、具体案を得る。確かに、納税者の理解を得つつというふうに入っていますよ。だけれども、一般財源化を図ることを前提にと言ったんですよ。これは政府・与党合意なんですよ、二〇〇五年。それで、安倍内閣になって安倍さんが、揮発油税を含めて道路特定財源全体を見直しの対象としたいと。

全然こうなっていないじゃないですか。余ったものを一般財源化すると言っているだけじゃないですか。根っこから一般財源にしないと、一般財源とは言えませんよ。

総理、どうなんですか。この小泉総理の時代の発言から後退したということはお認めになりますか。いかがですか。総理です、総理に聞いているんです。総理の発言ですから、総理大臣。

福田内閣総理大臣 小泉政権のもとでは、納税者の理解を得つつ、一般財源化を図ることを前提として見直しを行う、これは基本方針と決めたものであります。

そして、安倍政権では、税収の全額を道路整備に充てることを義務づけている現在の仕組みを改め、毎年度の予算において道路歳出を上回る税収は一般財源とすることは見られました。

今回の政府案におきましては、こういうような見直しの方針に沿って初めて一般財源化を法律に盛り込んだものでございまして、現行案がこれまでの方針から後退しているわけではありません。

岡田委員 安倍さんは、二〇〇六年十一月には、揮発油税を含めて道路特定財源全体を見直しの対象としたい、こう言われたんですよ。ただ、その後後退されて、余ったものは一般財源化、こう言われている。私は、ですから、その後退した安倍総理のそういう視点で総理は言っておられるわけですから、小泉総理のときと比べればはるかに後退していますねと確認しているんです。いかがですか。

額賀国務大臣 道路特定財源というのは、道路をつくることによって恩恵を受ける方々に負担をしていただいているわけでありますから、納税者の皆さん方の理解を得なければ、これは全面的にその転換をすることはできないわけでございます。

したがって、今度の改正によって、揮発油税の分について、あるいはまた石油ガス税も含めますけれども、道路整備を上回る部分については一般財源化をするということで明確にしたわけであります。

岡田委員は、道路ありきと言っておりますけれども、では民主党は、暫定税率を廃止する、あるいはまた全部一般財源化を図るということを言いながら、なおかつ道路の水準は維持すると言っております。当初のころ、そういうことを言っておりました。しかもなおかつ、今はどうなっているか知らないけれども、暫定税率を下げたらガソリン税を下げますというふうに言っております。転々と、何を考えているのかわからないところがあります。

だから、そこは、全国的に、あるいは地方も都市部も、道路をつくってほしいという要望はあるわけであります。日本の国土全体のバランスを考えても、これは順次つくっていかなければならない。民主党が言うように暫定税率をゼロにしたら、それはほとんど、新しい一般国道だとかバイパスの工事も、みんなとは言わないけれども、相当停滞をしたりなんかいたします。そういうことについてしっかりと計画を立てて、我々に対案を出してください。そうすると、はっきりとしたその議論ができると思います。

岡田委員 大臣、今、一般財源化の話をしているんですよ。私の質問に全然答えていないし、違うことばかり言っているじゃないですか。

総理、この道路特定財源について、今、財務大臣も言われましたけれども、道路特定財源というのは、道路に関する受益と負担の関係が明確であることから、納税者である自動車ユーザーの理解が得られてきた、こういうふうに予算委員会で答弁されましたけれども、基本的にそういうふうにお考えですか。つまり、特定財源というのは、ユーザーの受益と負担の関係がはっきりしている、だから道路をつくらなきゃいけないんだ、そういうロジックですよね。そうお考えですか、今でも。総理の発言について聞いているんです。時間がないから、やめてください。

逢沢委員長 額賀財務大臣。短く。

額賀国務大臣 これは、道路特定財源は、おっしゃるように受益者負担であります。道路をつくるために負担をしていただいているわけであります。これが長く続くと、一方で、財政的に硬直化が起こって、弊害が起こることもあります。その上に立って私どもは判断をして、揮発油税を改正して一般財源化を図っているということでございます。

福田内閣総理大臣 同じことを何回も繰り返すようでございますけれども、道路特定財源については、自動車ユーザーが道路利用から得る受益とガソリン税の形でお願いする負担との関係が、他の行政分野に比較して明確であるということから制度化しているものでございます。

岡田委員 その総理の発言を前提にしたとしても、私、納得いかないんですね。

つまり、六十五兆円という数字が、今は五十九兆になっていますが、ありましたよね。そのときに、国際競争力の確保として二十四兆円なんですよ。国際競争力の確保というのはユーザーと関係ありますか。それはもちろんトラックとか貨物輸送もありますけれども、ほとんどはやはり自家用車ですよ。国際競争力を強化するために道路を使っているわけじゃありませんよ。

つまり、ユーザーから見たら、自分たちの道路じゃない、国際競争力の強化のためのそういう違う目的で自分たちの税金が使われているということにならないですか。いかがですか、総理。破綻していませんか、論理が。論理が破綻していませんか。

冬柴国務大臣 私どもは、国民に広くどういうことを要請されるかということを聞きました。十万一千人を超える国民から、そしてまた、先ほど議論になりましたけれども、当時、千八百七十四名に上るすべての首長さんからも意見を寄せていただきました。これはすべてです。そして、それを超えて、また、二千九百人ですか、超える学識経験者の方も、道路整備の必要性についていろいろな議論をしていただいていますよ。そういうものを踏まえてこれをやっているわけです。

それから、道路財源といいますけれども、道路をつくるためには、総理もおっしゃいましたように、長い時間がかかります。だって、第二名神は、四日市、あなたの選挙区を通りますよ。そして、そこから私どものところを通って神戸まで行く百十七キロのものですけれども、菰野から亀山までは供用開始平成三十年ですよ、これは今から十年かかるんですよ。そしてまた、茨木から神戸までも三十年ですよ。ですから、そういう長い期間がかかり、しかも巨額の資金が必要だから、安定的な……(発言する者あり)ちょっと待ってください。ちょっと聞いてください。安定的な財源というものをしなきゃならないから、道路特定財源と言えるんですよ。

岡田委員 私は長期計画の話を聞いているんじゃないんですよ。要するに、国際競争力の確保ということで一般のユーザーから税金を取っているのは、もし総理のような特定財源の論理を認めるのならおかしいんじゃないかと言っているわけですよ。いかがですか、総理。総理以外にならもうお答えいただく必要はありませんが、総理、どうですか。

福田内閣総理大臣 単に国際競争力ということだけでなくて、いろいろな要素は入っているわけですよね。ですから、そこだけ切り出して云々というのは妥当性は私はないというふうに思います。

用途のことですから、詳しくは国土交通大臣の方から答弁をさせていただきます。

岡田委員 繰り返しますが、六十五兆円の中の二十四兆円が国際競争力の確保ということで位置づけられているということです。

道路の話はこれで終わりますけれども、最後にもう一度、先ほど言いましたように、一万四千キロ、二十年前の四全総をつくったときと時代状況が全く変わっているということが一つ。それからもう一つは、これから十年間で事業費ベースで五十九兆円という道路投資をするということでありますけれども、五十九兆といったら国民一人当たり五十万ですよね、一億ちょっとですから。十年間で国民一人一人に五十万円負担してください、税金なりその他収入で取り上げて五十万で道路をつくりますよ、四人家族なら二百万ですよと。本当にそれで国民は納得しますかね。

一方で、これから財政が非常に厳しくて、いや、将来的には増税が避けられない、そういう声も聞こえてきますよね。消費税も上げなきゃいけないかもしれない。そして、いろいろな社会保障も含めて歳出カットしなきゃいけない。そういう中で、道路だけは一人五十万、これから十年間でいただきます。私は、それが国民にとって説得力ある話だとは決して思わない。ですから、そのことはもう一度、これからまたあした以降議論していきますが、しっかりと見直していきたいというふうに思っています。

次に、地球温暖化の問題について申し上げたいと思います。

総理は、施政方針演説の中で、「低炭素社会への転換」ということを言われました。私は、このことは評価しております。ただ、私も少し行ってみたんですけれども、昨年十二月のバリ島でのCOP13、ここで国際NGOとか、あるいはEUの国々、私も政治家とか官僚とかいろいろな人と会いましたけれども、NGOの皆さんとも会いましたけれども、そこで日本の評価は非常に低かったんですね。

ちょっとこれを、これは現地の新聞の広告ですから、私はこれを見て非常に残念な思いをしました。つまり、ブッシュ大統領と福田総理とハーパー・カナダ首相が温暖化の問題で数値目標を入れることをブロックしているんだ、邪魔しているんだ、こういう趣旨の新聞記事なんですね。

確かに、日本政府は、数値目標を入れることには抵抗しましたよね。二〇二〇年に二五から四〇%先進国は削減するという数字が最初は入っていた。これに反対したことは事実じゃないですか。だから書かれたんですよ。私はそれは非常に残念だったんです。

そのときの説明は、それはアメリカを先進国のグループの中にとどめておくためには必要だという説明をしていましたが、それだけだったんですか。やはり国内で反対があって、日本も二〇二〇年で二五から四〇という数字は困る、だから抵抗されたんじゃないですか。いかがですか、総理。

鴨下国務大臣 今、岡田議員がお話しになったときに私もバリにおりましたので、この新聞を拝見しました。ある種の衝撃を私たちも受けましたけれども、これは単純に日本を非難したというよりは、むしろ日本にもっと積極的にかかわってくれ、こういうようなメッセージも込められているわけでありまして、単純に、これで、では日本は全く怠けている、こういうようなことの評価ではないというふうに私はその会議の中の雰囲気を見て感じております。

加えて、数値目標については、あそこで、では日本が中期目標についてそれなりの数字を言うというようなことで、果たしてあのCOP13、気候変動枠組み条約の十三回の締約国会合が成功したかどうかというようなことについては、これは現実の話として、新たな枠組み、すべての国が入る枠組みというのができ上がったわけでありますから、この段階では、私は日本の戦略は成功したというふうに確信しております。

ただ、これから先の話はまた岡田議員とも十分に議論をさせていただきたい、こういうふうに思っております。

岡田委員 次のパネルを見ていただきたいんですが。

要するに、日本がこれだけ疑心暗鬼で見られるのは、この十年間のパフォーマンスが余りにも悪かったということだと思うんですね。一九九〇年の基準、十二・六億トン。二〇〇五年度の排出量は十三・六億トン。七・七%ふえました。

実は、二〇〇八年から二〇一二年まで、京都議定書の削減約束では一九九〇年比六%削減なんですね。それが、二〇〇五年度は七・七ふえたし、二〇〇六年度も、多少減ったとはいえ六・四プラスなんですよ。六%減らすまで持っていくのは不可能ですよね。ですから、森林吸収源対策で三・八とか、京都メカニズムで外国から買ってくるものが一・六ということで、何とかやりくりできるかどうか、六%削減という目標が達成できるかどうか。来年は無理ですけれども、二〇〇八年は私は無理だと確信をしますけれども、二〇一二年でもこれができるかどうかというのは相当厳しいところに来ている。

ですから、いろいろな、特にヨーロッパの国々が順調に排出量を減らしている中で日本が逆にふえているということが、日本は熱心でないという評価につながっていると思うんです。つまり、この十年間、一体日本は何をしてきたのかということですよ。

確かに、小泉政権のもとでも、クールビズだとかいろいろなことを言いましたよ。精神運動、国民運動も結構です。だけれども、やはり仕組みとしてかちっと減らすようなものはなかったんですよ。いかがですか。そういうものをきちんと入れていかないと、温暖化税とか、国内キャップ・アンド・トレード方式の排出権取引とか、あるいは自然エネルギーの導入とか、そういうものをきちんと入れていかないと、これは二〇一二年で終わりじゃありませんから、この先さらに厳しい削減目標をやっていかなきゃいけないわけですから。

この十年間、総理はどう評価されますか。そして、これからどうされるおつもりですか。総理の御見解を聞きたいと思います。

鴨下国務大臣 岡田議員がおっしゃっているように、七%削減する、これはなかなか大変なことであります。加えて、ことしから日本は京都議定書の第一約束期間に入ったわけでありますから、この五年間に達成しなければいけない、こういうような意味においては、私は岡田議員と問題意識は共有をしております。

加えて申し上げますと、今、新たに、政府の中では、京都議定書の目標達成計画について、新しい達成計画をつくって、この三月にも閣議決定をして熱心にやっていこう、こういうようなことでございます。

そういう中で、産業界も自主行動計画の中でさらに深掘りをする、加えて民生部分、業務部分、さらには運輸部分、それぞれが最大限の努力をしてやっていこうじゃないか、こういうようなことをこれから閣議決定をして、温対法の改正まで含めましてやっていこう、こういうようなことでありますので、ぜひ達成するために国民の皆さんもそして産業界も協力をしていただきたい、こういうことを申し上げたいと思います。

岡田委員 ですから、二〇一二年までに六%削減という目標を達成するということであれば、今大臣が御説明になったようなことをいろいろやりくりやりくりして、あるいは可能かもしれません。

しかし、問題はそこで終わるのではなくて、二〇二〇年に、それが、後ほどまた時間があれば議論したいと思いますが、日本の目標がどうなるかはわかりませんが、例えば二〇とか二五とかあるいは三〇とか、そういう数字が控えているときに、単なる通過点でしかないわけですよ、二〇一二年は。むしろ余裕を持って二〇一二年に六%削減を通過していかないと、二〇二〇年に国際社会の中でこれから議論されるような数字にはならないんですよ。

だから、私は、こんなやり方で本当にいいのか、もっとしっかりとした制度的な枠組みを入れないとだめなんじゃないかということを申し上げているわけです。

さて、時間が非常に限られていますので、総理にちょっとお聞きしたいんですけれども、今環境問題の議論の前提になっているのは、IPCCの第四次評価報告書、昨年出たものですね。これに対しては、ゴア副大統領と並んでノーベル平和賞がIPCCに対して贈られている。

中身は非常に多岐にわたるわけですけれども、四百五十名の代表執筆者、そして二千五百名を超える専門家の協力で三年間かけて検討したと。温暖化には疑問の余地がない。いろいろな議論がありました、しかし温暖化には疑問の余地がない。それから、二十世紀半ば以降の気温の上昇のほとんどが人為起源の温室効果ガスの増加によりもたらされた可能性がかなり高い、九〇%だと。現状のままでは二十一世紀により大規模な温暖化がもたらされる。二度C程度の気温上昇に抑えるためには、地球全体の温室効果ガスが次の十年から二十年の間にピークアウトし、二〇五〇年までに少なくとも半減しなければならない。既存の技術と今後数十年で実用化される技術で温室効果ガス濃度の安定化は可能である、つまり二度程度に抑えることができる。今後二十年、三十年の努力と投資がかぎである。こういう報告書になっているんですね。

ダボスで総理はこのIPCCの報告書にも言及されたと思うんですが、そのとき、総理の表現は、警告、科学者たちの警告というふうに言われたと思うんです。私は、警告ではなくて、これを議論の前提にすべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

福田内閣総理大臣 IPCCが提供してくれた科学的知見、これは気候変動に関する貴重なよりどころとなる資料として評価はいたしております。ですから、御指摘のIPCCの報告書についても真摯に受けとめなければいけないと考えております。これは、楽観的に考える人もいるかもしれませんけれども、しかし、楽観的に考えて、そして取り返しのつかないことになってはいけないということを含めて、私は真摯に受けとめるべきであるというふうに考えております。

ですから、御指摘のように、私が警告と言ったとすると、警告では少し緩いんじゃないか、これを前提にすべきだというようにおっしゃれば、そういうようにも私は思います。ですから、そういうことを前提にしてこれからいろいろな施策を打ち出していかなければいけない、そのように思っております。

岡田委員 総理に明確に御答弁いただいたと思います。私もバリで随分言われたんですが、もうサイエンスは結論を出したんだ、あとは政治家がその前提をどう実現していくか、それは政治家の責任であるというふうに言われました。私はそのとおりだというふうに思いますし、総理の今の御答弁も同じ趣旨だというふうに受けとめます。

そこで、残された時間で削減目標の話を少ししたいと思うんですけれども、総理はダボスで、国別の総量目標を掲げるということは明言されました。これは私も評価をしております。

安倍さんの時代に、クールアース50、ここで二〇五〇年に温室効果ガス半減ということを、これは世界全体でですね、言われたわけですから、世界全体、二〇五〇年、半分にするということであれば、先進国はより大きな削減をしなければならないことは自明であるというふうに思うんですね。そうだとすると、その延長線で伸ばすと、やはり二〇二〇年の段階でかなり大幅な削減をしないとそういう数字にはならないと思うんですが、総理は、二〇二〇年、バリでは先進国は二五から四〇という数字も一時はあったわけですけれども、あるいはそれがいまだに残っているという議論もありますけれども、この二〇二〇年についてどのような数字をお考えでしょうか。

これは総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。恐らく環境大臣と経産大臣で答えが違うと思いますから、総理の御意見を聞きたいと思います。

鴨下国務大臣 先ほどもお話し申し上げましたけれども、日本は九〇年比でマイナス六%、そして、基本的には二〇五〇年には五〇%削減、こういうようなことを前提にしておりますので、その延長上ではおのずと類推できる削減目標というのが設定できるんだろうと思います。

ただ、その決め方でありますけれども、これについては、EUのようにトップダウンで、いわゆるグランドファザリングという決め方ではなく、むしろセクター別に積み上げていって、最終的にどういう削減目標をつくっていくか、こういうような意味での日本のルールを世界に提案していきたい、こういうふうに考えております。

岡田委員 セクター別の積み上げというのは手法としては私もありかなと思いますが、ただ、やはり最終的には、日本全体でどれだけ削減するか、その削減の量が少なければ意味がないわけですよ。二〇五〇年、先進国全体で五〇をかなり深掘りするような目標に向かって進むとすれば、やはり二〇二〇年には二〇とか二五とか三〇とか、そういう数字を日本自身も持たなきゃいけない。だから、個別に積み上げるのはいいんですが、しかし、その結果としてそれだけのものになるかどうかというのは、これは必ずしも楽観を許さないわけですよね。

ですから、国としてこれはやるというきちんとした意思の表明がまず数字としてあるべきじゃないか、こういうふうに思いますが、総理、いかがでしょうか。総理の御意見を聞きたいと思います。

福田内閣総理大臣 二〇二〇年とおっしゃいましたか。二〇二〇年にどうするか、それは、二〇五〇年に半減、我が国としては半減以下にしなければいけないということもあるかもしれませんけれども、半減目標というものを掲げて、その途中どうするか、こういう問題であります。

そこで、私が先日ダボスで申しましたのは、日本としても国別総量目標を掲げて取り組むことが必要だ、こういうことを申したのでありますけれども、一方的に数字を発表すればよいというわけではなくて、他の主要排出国も参加できるような条件を整えながら戦略的に対応していくということが、サミット議長国でございますので、これは議長国としての役割として大事である、こういうふうに思っております。

多くの国の参加を得るためには公平性の確保がかぎでございますので、まず、議員のお配りいただきました表にもございますけれども、基準年は一九九〇年が適当なのかどうか、そしてまた、削減幅の決め方ももっと科学的で透明性の高い方法はないものかどうかというようなことについて、各国ともよく相談しながら決めていく必要があるということでございますので、我が国が数字を示せばいいというものでもないんだというふうに私は思っております。

岡田委員 この表で見てわかるように、各国がかなり野心的な数字を出しているわけですね。そういう中で、日本が自分の数字も持たないでサミットでやるといっても、説得力持ちませんよ、それは。もちろん、アメリカのことはあるかもしれません。しかし、アメリカは大統領がかわりますよね。ヒラリー・クリントンは、二〇五〇年、八〇%削減ですよ。オバマも厳しい数字を言っている。まあ、次の大統領はヒラリーかオバマか、あるいはマケインかということになるんだと思いますが、マケインだってこの環境問題は非常に厳しくとらえていますよ。ですから、気がついたら日本だけが取り残されていたということになるんじゃないですか。

ですから、私が申し上げたいのは、政府もそうだし、それから経済界の一部もそうなんですけれども、とにかくだめだ、だめだと言っている間にどんどんルールが、例えば排出権取引にしても、キャップ・アンド・トレードにしても、でき上がっていく、ルールメーカーになれない、後から乗っかっていく。こういうことでは、私は、日本の将来の競争力という観点からも問題がある。

私は、実は今から三十年ほど前に石油の行政を、第二次オイルショックのときにやった経験がありますが、あのときは、やはり日本の産業界はすごかったですよ。みんなが、何とかこの危機を乗り越えなきゃいけない、石油をなるべく少なくして有効活用しなきゃいけない、省エネしなきゃいけないということで、生産プロセスを全部分析して、無駄なエネルギーを使わないように徹底的にやりました。その結果が、日本のその後の競争力につながったんですよ。今は、それに対して、だめです、だめですと言い続けている姿。私は、それ自身も日本の内向きの姿を示しているように思えてならないんです。

ぜひ、しっかりとこの問題に産業界も対応する、政府も対応する、そのことをお願いしておきたいと思います。

終わります。

ブログ「TALK-ABOUT」もご覧ください。




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