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2007.02.13|国会会議録

166-衆-予算委員会-7号 平成19年02月13日

岡田委員 民主党の岡田克也です。

きょう午前中、トップで菅代表代行が格差の問題を中心に質問されました。私も、格差や経済の問題を中心に、四十五分間という限られた時間ですが、安倍総理の御見解をお聞きしたいと思います。



まず最初にお聞きをしたいと思いますが、所得税の定率減税を廃止することになっております。ことしの六月から一・七兆円の負担増が始まるわけですが、こ れは恒久的減税の一環として行われたものであって、経済の状況が変わったのでもとに戻すんだという説明をされていると思います。



恒久的という言葉は、経済の状況が変わればもとに戻すという意味ではないと私は思っておりますが、それはさておいたとしても、一方で、法人税もその恒久 的減税の名のもとに減税がなされたわけですね。法人税率を変えました。その法人税の税率を三四・五%から三〇%に下げたわけですが、そこはそのまま据え置 いて、そして、加えて設備投資に対する法人税の減税までして、そして、個人の所得税は当然のように増税をしている。やはり国民感情として、そのことに対し て割り切れないものを多くの国民が感じていると思います。



どうしてそういう形で、両方廃止するというならわかりますよ、一方はさらに減税して、法人税の方ですね、所得税の方は当然のように戻すのか。そのことについて納得のいく説明を総理に求めたいと思います。

安倍内閣総理大臣  詳しくは財務大臣からお答えをいたしますが、いわば定率減税について、当時の小渕総理が恒久的という言葉を使われたのは、これは一年限りでなく、期限を定 めないで制度改正を行い、その後特に法律改正を行わない限り継続していくという趣旨で、継続的な減税、こう表現をしたわけでありますが、しかし、そもそも その趣旨としては、大変経済が厳しい状況であったので、経済がある程度回復するまでは、こういう趣旨で導入されたということにおいては、これは当時の小渕 総理もそういうお考えであったということは間違いがない、こう思うわけであります。



景気の状況もやっと回復傾向に至った中にあっては、この定率減税を廃止するというのは当然のことであろう、このように思うわけでございます。



そしてさらに、法人税については、減価償却についての法人税の見直しを行ったわけでありますが、やはり今、世界の中で競争力を高めていかなければいけな い、そして投資も引き入れて、引き込んでいかなければいけないという中にあっては、当然そうした投資が活発に行われるようにするためにも、我々はこの法人 税の減税を行った、こういうことでございます。

詳しくは財務大臣がお答えいたします。

岡田委員 私が聞きましたのは、恒久的減税ということで、今の総理の恒久的減税の説明は私は納得しませんが、それは今回、横に置きます。本来の問題ではありません。私が聞きたいことではありません。



一方で所得税については、恒久的減税という中で所得税と法人税をやったわけです、パッケージで。所得税については当然のようにもとに戻し、法人税につい ては、それを戻さないばかりかさらに減税するという、そのことが納得できないと申し上げているわけです。納得のいく説明を求めたいと思います。

尾身国務大臣  ただいま総理から説明ございましたが、八年前の小渕政権のときに、いわゆる定率減税を実施いたしました。そのときは消費がマイナスになっていて、一・七% ぐらいのマイナスになっておりましたし、経済全体もマイナス成長ということでございました。雇用状況も非常に厳しい状況でございました。かつ、金融面でも 不良債権の問題が深刻化しておりまして、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が相次いで破綻をするという日本経済にとって極めて厳しい状況でございまし た。



この状況に対応して、臨時異例の措置として定率減税をしようということになりまして、一九九九年、平成十一年から、所得税につきましては、税額の二〇% を減税する、二十五万円を限度とする、住民税については、税額の一五%を控除して四万円を限度とするということを決めたわけであります。



しかし、その後、経済が順調に回復する中で、例えば昨年の経済見通しも、二〇〇六年一・八%という増加になりました。それから、名目成長率も、かつての あの時期には一・八%減とマイナスでございましたのが、二・〇%の増加を見込みというふうに大幅に改善をされております。雇用情勢についても、いわゆる有 効求人倍率が低かった、〇・五であったのが、一・〇八にまで上がってきております。それから、不良債権の比率も、かつては六・一%でございましたのが、 一・五%まで低下をして、いわゆる不良債権問題はほとんど解決した、こういうことになっております。



こういう経済情勢の中で、定率減税を二回に分けてもとに戻すわけでありまして、これは増税とは全く異なるものであると我々は考えている次第でございます。



法人税の問題につきましては、日本の法人税は、全体の税率が大体四〇%で、アメリカ、ドイツと比べて世界一高い、この二つと並んで世界一高いという状況であります。



経済がグローバル化をいたします。あらゆる世界じゅうの企業が、どこの国に生産活動の拠点、経済活動の拠点を移すかということを企業が選ぶ時代になりま した。企業が国を選ぶ時代になりました。そういう時代になったときに、日本という国が企業活動にとってプラスになるような、有利になるような条件にしなけ ればならない。少なくともマイナスでないような、イコールフッティングの条件を整えなければならないと考えております。



そういう観点から見ると、減価償却については、ほとんどの国が一〇〇%まで償却できる、日本だけが九五%までしか償却できないということでございまし て、その点、世界並み、ほかの国並みに一〇〇%まで償却できるという制度に、イコールフッティングの制度に直したわけでございます。これは、大企業だけで はありませんで、中小企業も直しまして、経済全体の体質を改善する、少なくとも国際的にイコールフッティングにするという考え方で行ったわけであります。



したがって、これは、しかも減価償却でありますから、最終的には増収減収ゼロでございまして、減税をしたということには当たらないと考えておりまして、むしろ、経済活動を活性化するという意味ではこういう改革が必要であるというふうに考えております。

岡田委員  聞いていないことを長々とお答えになったわけですが、今おっしゃったような法人税の問題、国際的な比較の問題、そういう議論があることは私もわかります。 だけれども、本来、税制の全体の見直しは、あなたたちはことしの秋からやるんだとおっしゃっているんじゃないですか。そのときに、法人税も、所得税も、あ るいは消費税初めそのほかの税金も含めて全体をこうするという絵を示した上で法人税を減税するというならわかりますよ。なぜ、つまみ食い的にここだけ減税 をし、そして一方で所得税を増税するのか。



今、日本経済、輸出と設備投資はそれなりに好調だ。だけれども、消費に本当にそれがきちんと波及していくかどうかが問われているときに、これだけ消費を冷やすことをしているということが私にはわからない。

私は思うんですけれども、安倍さんは、いろいろな方のお話を聞かれると思うけれども、経済財政諮問会議の関係もあるんでしょうけれども、経済界の声、特 に輸出関連の製造業のトップの声を聞き過ぎているんじゃないですか。もっと国民の声をしっかり聞く必要があるんじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣  当然、私は国民の声を聞いています。経済財政諮問会議には、それぞれ民間議員が、その方々の見識を買われて議員に就任をしていただいているわけでありま す。他方、実際にいろいろな困難を抱えている国民の声も、私も、できる限りお伺いをしようということで、できる限り地方にも足を延ばしていろいろなお話を 伺っているわけであります。



しかし、日本全体としては、景気は回復をしているわけであります。それはもう間違いがないことであります。そして、先ほど、午前中の議論でも申し上げま したように、やっと雇用においても明るい兆しが見えてきました。高卒、大卒の就職内定率も上がってきました。初任給においても、上げていこうという動きが 出てきた。

ですから、私たちは、さらに新経済成長戦略を前に進めながら、景気の拡大、そして成長を目指していきたいと思っております。

岡田委員 所得税の定率減税をやめる、六月から一・七兆円、住民税と合わせて負担増になるわけですが、このことに関してはもう一つ言わなきゃいけないことがあります。それは、公約違反という問題です。



特に、武部幹事長、安倍さんはそのもとで幹事長代理をしておられたと思いますが、都議会議員選挙あるいは総選挙、サラリーマン増税をしないと何回もその ことを主張された。しかし、総選挙が終わったら、定率減税を全部廃止するということを決められた。これはどう考えても約束違反、公約違反だと思いますが、 安倍さんはどう考えておられますか。

安倍内閣総理大臣 いわゆるサラリーマン減税というのは、被用者の、所得をすべて把握している人たちを、これはこの人たちから税金を取りやすいということで、この人たちを目がけて増税を行うことを我々はサラリーマン増税、このように申し上げているわけであります。

定率減税については、すべての方々、自営業者の方々も当然入っておられますから、これはサラリーマン増税とは言えないと思います。

岡田委員 今の御説明は小泉総理と同じ御説明なんですが、しかし、所得税の納税者のどれだけが給与所得者、つまりサラリーマンだと安倍さんはお思いですか。

尾身国務大臣 この税を考えるときは、私は、税の国際比較というのをする必要があると思っております。

岡田委員 質問に答えてくれよ。そんなこと聞いていないよ、全然。全く答えていない。質問に答えなさい、質問に。何割かと聞いているんだよ。



安倍総理も、そして財務大臣も御存じないようですから申し上げますが、九割が給与所得者です、所得税納税者の九割なんですよ。ですから、サラリーマン増 税しないと言ったら、九割の人に増税しないと約束したわけです。しかし、残りの一割があるから全体を増税したって構わないんだ。これは明らかに公約違反な んですよ。そういう不誠実なやり方がまかり通るというのは、私は見過ごせないんですね。



やはり、マニフェスト選挙、しっかり国民に政策を約束してやる選挙、それが簡単に破られてしまう。例の復党問題も同じですよ。郵政民営化に反対するよう な人はこれは古い自民党だといって追い出しておいて、一年たったらまた戻す。そういった簡単な公約破り、そういったことを安倍さんはこれからも行われるつ もりですか。

安倍内閣総理大臣  それは、働いている方の九割近く、八割強という事務方の話でありましたが、大体九割とすれば、しかし、私が申し上げているこのサラリーマン増税というの は、所得を把握しやすいからといってその人たちに増税をすることはしないということであって、今岡田委員がおっしゃった言い方で言えば、働いている人の中 の例えば九割がそうであるならば、では、例えば消費税であれば、その九割がそうだからといって、ではサラリーマンだけにかける税金かということになるわけ でありまして、ですから、私が申し上げているのは、所得が把握しやすいからといってサラリーマン、被用者に……(発言する者あり)場外の方は静かにしてい ただけますか、雑音ですから。いわば所得を把握しやすいからサラリーマンを目がけて増税するようなことはやらない、そういうサラリーマン増税は私たちはし ないとお約束をしたわけであります。(発言する者あり)

金子委員長 委員外の皆さん、やじを気をつけてください。

岡田委員 安倍総理、当時は幹事長代理ですが、安倍幹事長代理が今のようなお話を選挙のときにきちんとしていれば問題ないですよ。全くしていないんですね。サラリーマン増税しないと言われれば、サラリーマンは増税なしだと当然思いますよ。



そのことをまず御指摘申し上げ、さて、安倍総理にちょっとお聞きしたいんですが、安倍総理は、代表質問に対する答弁の中で、二極化の問題、格差の問題に ついて、過去の景気回復局面を見ても、経済の拡大に伴い、賃金も上昇している、今後とも、労働市場がタイトになることを通じて、賃金が上昇することを期待 したい、こういうふうに答弁されていると思います。きょうも、わざわざ一九六〇年代の下村・都留論争まで引用されて菅さんにお答えになっていました。



しかし、私、基本的認識が誤っていると思っているんです。つまり、もちろん経済成長していけば一定の雇用改善は当然あります。しかし、今、これは日本だ けではなくてアメリカやヨーロッパの国々がここ十年ぐらい、日本は最近かもしれませんが、直面しているのは、経済成長をしても、あるいは繁栄する中で、そ れについていけない、そういう人たちが大量に発生するという二極化の問題なんです。ですから、経済成長をすればそういう問題が、格差の問題が当然解決す る、そう考えるのは基本的認識が間違っていると思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣  今の質問にお答えをする前に、我が党の公約について申し上げますと、サラリーマン増税についてですが、その公約においては、所得が捕捉しやすいサラリーマ ン増税を行うという考え方はとらない、これはちゃんと、所得が捕捉しやすいということが書いてありますから、そういう意味でのサラリーマン増税は行わない という説明をちゃんと公約でしているということは申し上げておきたい、このように思います。



その上で、先ほどの質問にお答えをさせていただきたい、このように思うわけでありますが、成長をすることによって、そして、それによって景気を拡大して いくことによって、この景気の果実、まさに成長の果実を家計にも広げていく、あるいはまた、雇用の拡大、非正規雇用者の方々にも正規雇用者への道を開いて いくことにつながっていく、成長によってですね。そういうメカニズムは私は今も変わらない、このように思っているわけでございまして、私どもといたしまし ては、さらに新経済成長戦略を進めていきたい。



しかし、それだけではなくて、こうしたいわば、今岡田委員は、二層化している、このように表現をされたわけでございますが、なかなかチャンスを生かせな い方々あるいはチャンスそのものになかなか恵まれないという方々に対して、例えば、パートで頑張っていて正規雇用になりたい、不平等であるということを感 じている方々がいるのであれば、均衡待遇を我々は目指していくという中において、パートタイム労働法を改正していくわけでありますし、また、最低賃金も四 十年ぶりの改革を行っていかなければならないと考えておりますし、何度でもチャンスのある社会にしていきたい、そういうチャンスをとらえて頑張ろうという 人たちにはチャンスがある社会にしていくための政策を行ってまいる次第であります。



また、人材の育成を図っていく。そしてまた、就労の促進、生産性の低い中小企業に対して生産性の向上を図るための支援も行ってまいりたい。



我々は、そのように二極に分かれないような政策もしっかりと打っていきたい。と同時に、当然、経済成長をこれは目指していくということは、こうした格差 において、経済を下支えしている人たちの基盤を強化、そして上昇させていくことにつながっていく、このように思います。

岡田委員 ここは基本認識のところ、やはり安倍総理と私の間で大分違うと思うんです。ここの認識をしっかり持たないと政策を誤ります。



つまり、アメリカがまずスタートだと思いますけれども、アメリカあるいはヨーロッパ、日本、それぞれの国々が直面していること、ロバート・ライシュとい うハーバードの先生が「勝者の代償」という本を書いたのはもう十年以上前のことだと記憶していますけれども、結局、繁栄の中でそれに乗り切れない人たちが いる。一つは、そのときに言われたのも、きょう菅さんも言いましたけれども、情報技術の発展、それに乗れる人と乗れない人が出てくる。もう一つは、経済の グローバル化、常に賃金については下押し圧力がかかる。そういう今までにない新しい事態に先進国は直面していて、それをどう乗り越えていくかということが 政治の大きな課題のはずなんです。

その基本的認識を欠いて、いや従来と同じだ、六〇年代はこうだった、そういう認識では、私は対策を誤ると思う。そこの認識はどうなんでしょうか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 いや、ですから、我々は対策を誤っていないんですよ。まさに正しい対策をやっている、このように思いますよ。



今、ITを中心に第三の産業革命が起こっていて、こうした技術を身につけることができるかどうか、そういう機会があるかないか、これが大きな差をつける という認識は、当然我々も持っています。そしてまた、例えば、仕事をしながらさらに研修、職業訓練をして、そういうチャンスがある人はキャリアアップをし ていく、そういうチャンスがない人はなかなかそういう望みがないというのも事実であります。



だからこそ、例えば中小企業においては、あるいはまたパートタイム、非正規の方々はそういう研修をする機会が恵まれていない、ですから、そういう方々に は研修をする機会を我々は提供、確保していかなければならないと考えています。その場を活用して、まさにそうした情報を入れ、また技術を身につけ、未来を 見詰めていくことができるようになっていく、このように思うわけでありまして、人材全体の底上げを図っていくことは私は十分に可能ではないか。



いずれにせよ、成長していかなければ果実が生まれてこないのも事実であります。全体的に成長していきながら、だれも後ろに置いていかないということが大切ではないか、このように私は思います。

岡田委員  安倍さんは、底上げ、底上げ、底上げ戦略と言われますが、私に言わせれば、そのバケツの底が抜けているわけです。先ほども言われました、非正規から正規へ と希望する人にはその願いがかなうようにしたい、こう言われましたね。それでは、そこはどうなんでしょうか。本当に簡単に非正規から正規に行けるのか。む しろ今の制度は、非正規の働き方がふえるようなやり方になっているんじゃありませんか。



平成十五年に、製造業の現場に派遣労働を認めると法改正しました、我々は反対しましたけれども。それから製造の現場もかなり変わりました。もちろん、そ の当時、失業がふえる中で、そういったことが必要だという声も、私は全く理解できないわけではない。反対しましたけれども、理解できないわけではない。し かし、今、経済が大分変わってきた中で、これ以上そういった規制の緩和をするのは間違いだと思うんです。



経済財政諮問会議の中でも意見が出ていますよね。いろいろな偽装請負について今摘発が進んでいますけれども、そういうものを合法化してもらいたいという 声もある。それから、三年間派遣をしたら正社員にする、そういう三年間を外して、永久に派遣で働けるようにすべきだという声も経済財政諮問会議の中で出て いる。



そういうふうにして、どんどんどんどん緩めて、これ以上緩めていったら、本当に穴のあいたバケツの底になって、そして、コストを全体を抑えなきゃいけな いと経済界はそれは当然考えますよ。そういう中で、政治がしっかりそれを押し戻すような制度改革をしていない限り、この二極化というのはどんどん進んでい くと私は思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣  ですから、先ほど私が申し上げましたように、パートで働いている方と正社員の方々の均衡待遇を我々は目指していかなければいけない。そしてまた、パートで 働いている人、あるいはいわゆる非正規の方々が正規雇用になりたいということであれば、その道を開くべく、いろいろな仕組みを考えていかなければいけない と思っています。また、パートの方々が厚生年金に入りたい、社会保険制度の中に入りたいということであれば、その道をちゃんと私たちは確保していくことも 考えています。



その中で、この労働関係の法律について、我々は六本法律を出しているわけであります。また、最低賃金も約六十年ぶりに今度は改めるわけでございます。そ して、今委員が御指摘になったように、派遣を三年雇ったら正規雇用の申し出をしなければならないということについては、我々は、それをなくしたり長くした りという考え方は今のところ全く持っていないということは申し上げておきたいと思います。

岡田委員 今、総 理は、その三年間を取ることは考えていないとおっしゃったわけですが、請負についても、これの要件緩和、今偽装請負として摘発されているようなことが合法 化するような、そういう制度改正もぜひしないということを、総理、しっかりとやっていただきたいというふうに思います。



総理もお忙しいとは思いますけれども、ぜひ現場もしっかり見ていただきたいと思います。私も、幹事長、代表の時代はなかなか、通り一遍の視察しかできま せんでしたけれども、今、少し腰を据えて、いろいろな物づくりの現場なども、地元も含めていろいろ見させていただいています。やはり三、四年前と比べてさ ま変わりです。それは、三年、四年前も、パートで働いている、例えば子育てが終わった、そういう女性たちが製造の現場で働いているということはありまし た。しかし、今は、派遣で働いている人たちはもっと若い人たちなんですね。本来、正社員になっていてもおかしくない人たちが派遣でたくさん働いているとい う現実、そして、アパートを借りて住んでいて、言われたら全然違うところにまた行かなければいけない。非常に不安定で、結婚もできないし子供もできないと いう人が本当にたくさんいるということをわかってもらいたいと思うんです。



そしてもう一つは、やはり外国人です。

これは、きょうはもう余り詳しい質問はしませんけれども、また別の機会にしたいと思いますが、外国人もすごくふえた。もちろん、それなしでやっていけな いという現実もあることもわかる。しかし、これはやはりきちんとしたたがをはめていかないと、例えば私の地元では、四月から、ある小学校では半分以上が外 国人、そういう学校が出てきます。学校に行く子はまだいいんです。学校に行っていない子供たちがたくさんいる。こういう人たちが、将来、義務教育も受けず に定住化したらどうなるんでしょうか。



そういったことに対して、私は政治が非常におくれていると思うんです。ある意味での究極の二極化になっちゃうんですよ。だから、そういうことに正面からしっかりと取り組んでいただきたい、そういうふうに考えております。

そこで、ちょっと経済の問題に移りたいと思いますが、一年前、総理も官房長官として御参加だったわけですが、「改革と展望」で、二〇一一年の実質成長率 を一・七、名目成長率を三・二と、これはうまくいったケースですけれども、お決めになりました。ところが、安倍総理が誕生してから、「進路と戦略」の中で は、実質成長率が一・七から二・五に、名目成長率が三・二から三・九にと、実質、名目ともに〇・七から〇・八、一年間で急に上がったわけですね、二〇一一 年ですが、数字が。これはなかなか納得しがたいというか、どうしてなんだろうと素朴にそう思いますが、総理、どうして一年でこんなにさま変わりするんです か。

大田国務大臣 参考試算を担当した者としてお答えいたします。

「改革と展望」二〇〇五年改定に比べて、次の二つの点が成長率の違いをもたらしております。

一つは、昨年七月の経済成長戦略大綱、それから、ことし四月に策定いたします生産性加速プログラム、こういった成長力強化を最重要課題と位置づけ推進し ていることを反映しまして、生産性が向上する、それによって、潜在成長率が上昇し、実質成長率が上がるというシナリオを見込んでおります。



それから二番目、もう一つございます。労働力の人口が減少いたしますと、これは成長の下押し要因になりますが、複線型でフェアな働き方を実現させることによって、この下押し圧力が緩和されると見込んでおります。

この二つの点が主に違いますが、今回の試算におきましても、政策の効果が十分に発現しない場合、あるいは外的な経済環境が悪化する場合、この成長制約シナリオもあわせて描いてお示ししております。

岡田委員  今の御説明でも、四月に生産性加速プログラムをまとめる、これは総理も施政方針演説の中で言われました。これからまとめるものが、何で数字ではもう出 ちゃっているんですか。中身がまだないのにどうして数字だけ上がるのか、非常に不思議な感じがするんですね。ですから、内閣がかわれば考え方が変わるとい うのはわかりますよ。だけれども、安倍さんは、今は総理だ、しかし、一年前も官房長官で中心メンバーの一人だったわけですよ。同じ人間が中心になってやっ ていながら一年でこれだけ数字が上がるというのは、私は政府の数字のその信頼性を問われることになると思いますが、総理、いかがですか。

大田国務大臣 信頼性を問われるとおっしゃられると答えざるを得ませんので、お答えさせていただきます。

成長力強化のための政策がとられることで、供給能力をあらわす潜在成長率が高まります。これが、二〇〇六年度一・六から二〇一一年度二・四%まで高まると見ております。

この背景を御説明いたします。(岡田委員「いや、もういいです」と呼ぶ)

潜在成長率は、資本と労働と生産性上昇で説明されます。まず、生産性につきましては、第一に、グローバル化と、それを生かす国内市場改革……

金子委員長 なるべく簡単にしてください。

大田国務大臣 はい。それからITの本格活用、これによって〇・六%ポイント高まると推計しております。これに労働力減少の下押し圧力が加わる。これが、毎年平均〇・二%から〇・三%見込んでおります。

安倍内閣総理大臣  小泉内閣から私の内閣にかわって、そして新たに、経済財政政策担当は大田大臣が担当大臣として就任をしたわけであります。そして、ただいまその大田大臣か ら数値についても申し上げたわけでありますが、そして、それを算定の基盤として、私どもが「進路と戦略」でお示しをした成長シナリオをお示ししたわけでご ざいます。

岡田委員  ですから、具体的にとる政策の中身が明らかであれば、そういう説明もわかるんです。それを、四月までにまとめる、つまり、今はないと言いながら数字だけ上 げるから、私たちはわからないと言っているんです。ですから、そういうのを聞いていますと、上げ潮路線とかあるいは底上げ戦略とか言いますが、私に言わせ れば、これは底上げ戦略じゃなくて上げ底戦略ですよ。数字だけ勝手につくっている、中身はない。

そして、その数字の中で、一つは、それだけ数字が上がっていくから雇用の問題も改善していくという仮定に立っている。そしてもう一つは、財政もそれでプ ライマリー黒字が二〇一一年に、うまくいけば見込めるという仮定に立っている。私はそこにすごく大きな懸念を感じるわけです。



特に財政の問題は、私は安倍内閣が取り組むべき最大の課題だと思う。今でもそれは変わっていないはずです。経済がよくなってきたときに、ここでしっかり と、経済がよくなってきたのならそれだけ歳出削減もやりやすいわけですから、よりしっかりと歳出削減をやっていくのか、それとも、ここで緩んでしまうの か。



今回の安倍内閣の予算案を見ておりますと、それは歳出削減も私は十分だとは思いませんが、しかし、それは一応たがを小泉内閣のときにはめられた。しか し、そういう中で、それをバイパスする形でやられたのは私は減税だと思うんです。法人税の減税、中小企業に対する減税、これは歳出の増になりませんから、 そういう形で、結局、歳入がふえた分を還元して、もっと歳出削減ができたのに、それをやらなかったということになると私は思っております。そういったこと が続いていくと、これはもう最後のチャンスですからね、財政を立て直す、次の世代のために責任を果たす。そのことをぜひしっかり安倍さんにやっていただき たいというふうに思っております。



そこで、具体的にお聞きをしたいと思いますけれども、歳出削減をよりしっかりやっていくという観点で見ると、公務員の人件費とか公共事業、こういったも のは政府の意思でできますから。経済成長ができるかどうかは、最後はこれは政府の手を離れます。経済は生き物です。だけれども、歳出削減は政府の意思でで きることですから、それをしっかりやっていただきたいと思うんです。



公共事業についてお聞きしたいと思いますが、実は公共事業については、昨年四月の段階で、経済財政諮問会議で、一たんは二〇一一年度まで毎年三%ずつ削 減するということが合意されました。しかし、その後、主として、報道によれば、参議院自民党から異論が出て、選挙もあるじゃないか、結局一から三%という 形で異例の修正をした、こういうことであります。



ことしもう一度骨太方針をまとめられるということですが、そういう中で、もう一度、公共事業の削減、毎年三%というふうに戻すおつもりはありませんか。

安倍内閣総理大臣 公共事業については、構造改革をスタートして以来、我々、もう約半分にしてきた、このように自負をしております。これは大変な困難であったわけでありますが、我々は、構造改革を進めた結果、大幅に公共事業を圧縮したわけであります。



「進路と戦略」の参考試算において、基本方針二〇〇六で示された歳出改革の内容に基づきまして、公共投資の毎年度三%削減など全体で十四・三兆円の削減 に対応するケースと、そして、公共投資の毎年度一%削減など全体で十一・四兆円の削減に対応するケースについて試算が行われておりますが、後者の場合は、 歳出削減のみでは国と地方を合わせた基礎的財政収支は赤字となる結果になっているものでございます。これはもう委員も御承知のとおりなんだろうと思いま す。



公共投資の削減については、基本方針二〇〇六において、今後とも重点化、効率化を徹底し、これまでの改革努力を基本的に継続することとしておりまして、 その際、今後の資材価格や賃金の状況等を考慮する必要があることから、毎年度の削減率は幅を持たせているわけでございます。いわば、今まではデフレ下にお ける歳出の削減であったわけでありますが、デフレを脱却した後は、このように多少幅を持たせなければ、資材また人件費が上がっていくことも十分にあり得 る、このように考えたところでございます。



いずれにせよ、まずは二〇一一年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化することが重要であります。国民負担の最小化を第一の目標に、その 時々の経済社会情勢に配慮をしながら、今後とも基本方針二〇〇六に沿って歳出改革を計画的に実施して、それでも対応し切れない社会保障や少子化などに伴う 負担増に対しては、安定的な財源を確保して将来世代への負担の先送りを行わないようにしていかなければならない、これが基本的な考え方でございます。

岡田委員  今総理も御自身お認めになったように、毎年一%の公共事業費の削減では、我々から見れば、私から見れば、非常に楽観的な成長を遂げた、そういうケースで あっても、二〇一一年に基礎的財政収支は黒字にならないんです。三%カットしたら黒字になるんですよ。そして、黒字にならないということは、総理も今おっ しゃったように、別の財源措置、つまり増税をするということです。



ですから、増税を避けるためにも、ここは公共事業を三%削減する、そういう内閣の方針をきちんとおまとめになるべきじゃありませんか。逆に言うと、一% でいくということは、どんなに楽観的に見たって増税するということをはっきり国民の皆さんに示すことになりますよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣  我々、三%から一%まで幅を持たせましたのは、先ほど申し上げましたように、今までの歳出削減の中においては、まさにこれはデフレ下で行っていた、これか らはデフレを脱却するということを目指しているわけでありますが、賃金やまた資材が上昇している中において、いわば必要な公共事業を確保することができる かどうかということも考えなければならないわけでありまして、それなりの幅も持たせているということでございます。

岡田委員  小泉内閣で公共事業の予算が半分になった、それは、異常に高かったものが半分ぐらいに減ってきたけれども、それでも国際的に見るとまだ高いんですね。しか し、デフレ下でも公共事業を減らしてきた。では、経済が立ち直ってきたんなら公共事業をさらに減らせるはずじゃありませんか。そして、国際的な水準に持っ ていくことができるはずじゃありませんか。



総理もそう思うからこそ、昨年の四月に一たんは経済財政諮問会議、みずからもメンバーですけれども、そこで毎年三%削減するということに合意されたん じゃありませんか。それが参議院から横やりが入って一から三に変えた。総理なんですから、やはり三と総理がおっしゃれば三になりますよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣  ですから、私が先ほど説明しているように、これは何も景気対策的に公共事業をやろうとしているのではないわけでありまして、今でも地方はもっと公共事業を やってもらいたいという声はたくさんあります。しかし、その中でも我々は、財政を再建しなければならないから、公共事業を減らしていくという目標を持って いるわけでございます。



来年度の予算についても補正予算についても、我々、財政規律を守っていくという意思を表明した予算であったということを私は自負しているところでござい ますが、そこで幅を持たせたということについては、これから労賃が上がっていったり、あるいは資材がどんどん上がっていくということも考えなければいけま せん。そういう中で、やみくもに三%、絶対これは決め打ちということは自信を持って言えないという状況であります。ですから、幅を持たせていますが、いず れにせよ、公共事業は減らしていく、この意思には変わりはないということは申し上げておきたいと思います。

岡田委員 この問題はこれで終わりますけれども、ただ総理、やはり参議院に弱過ぎますよ。総理も一度は決めたんですから、官房長官のときに。しっかりとそこは総理としてのリーダーシップを発揮すべきだ、そのことを申し上げておきたいと思います。



最後、五分間、ちょっと核の問題、特にインドの核の問題について、少し総理の見解をただしておきたいと思います。



先般、シン首相も来られて、いろいろな議論を総理とされたと思いますが、アメリカとインドの間の、米印の原子力協定、これについて記者会見で問われて、 総理は、まだ日本政府の態度は決まっていない、こう言われました。私は、これは絶対に簡単に認めてはならない話だ、こういうふうに思っているんです。つま り、これは結局、今までの国際的なルールに反して核を持ったインド、もちろんパキスタンもそうですけれども、そこに対して、それを是として認めて、そして 一定の核燃料を供給していくということです。



今でもインドは五十発、六十発ぐらいの核を持っているのではないかという話もありますが、そういう形でアメリカが核燃料を一定の民間の原子力発電に供給 することで、インド自身が自家生産する核燃料、それを核兵器の生産に充てることができる。恐らくインドが百発、二百発の核兵器を持つのは時間の問題になっ てしまうだろう、こういう議論もあるんです。



つまり、今までの五つの国が核を持ってきた時代から、インドを含めた大きな六つの核大国が出てくる、そういう瀬戸際に今あるんだという基本認識、総理、お持ちですか。

安倍内閣総理大臣 日本が今まで核の不拡散また核不拡散体制の維持強化に力を注いできたのは、これは委員も御承知のとおりであろう、このように思います。



インドにつきましては、インドの戦略的な重要性、同国において増大するエネルギー需要を手当てする必要性ということについては私も理解をしているわけで ありますが、同時に、NPTに加入していないインドへの原子力協力については、国際的な核軍縮、不拡散体制への影響等を注意深く検討する必要がある、この ように思います。

以上の点を考慮しながら、今後とも、本件に関する国際的な議論の場に積極的に参加をしていく考えであります。

岡田委員 総理の御発言で、何回も私は気になっているんですけれども、インドの戦略的な重要性というのは具体的にどういったことなんでしょうか。



よく言われているのは、こういうことですよ。一つは、アジアに核大国は一つより二つの方がいい、戦略バランスから考えてその方がいい。アメリカの中には そういう声はある。しかし、これは日本にとっては、今までの政策とは全く違う政策ですね。もう一つは、経済的にインドは大事だ。これはわかります。だけれ ども、では経済が大事だったら核を持っていいのか、では北朝鮮やイランに対して日本はノーと言えるのか。

そういったことに対してきちんと説明できる、そういう答弁を求めたいと思います。いかがですか。

安倍内閣総理大臣  まず、日本とインドでありますが、お互い、日本とインドは価値を共有していると思います。自由や民主主義、基本的な人権、法律の支配といった価値を共有し ている、これは間違いないことだろうと思います。そして、インドは極めて親日的な国である、これも間違いのないことではないか、こう思います。



そして、今後インドはさらに発展をしていく国であります。人口もふえていきますし、目覚ましい台頭が期待されるであろう。我々はこのチャンスを生かしていかなければならない、こう考えています。

そしてまた、インドはいわば安全保障上においても極めて重要な位置がある……(発言する者あり)済みません、ちょっと筆頭理事、静かにしていただけますか、しゃべりにくいので。極めて重要な位置を占めているわけでございます。



そういう意味において、戦略的な重要性、これは私は否定する人はいないのではないか、こう思うわけでありまして、原子力の供給グループにおいて議論がな されるわけでありまして、その中において、日本もしっかりと他の国々とともに議論をしていかなければならないと考えております。

岡田委員 これは、戦後の核政策の大きな岐路です、今。総理の判断で、そこで全く今までと違う方向に行きかねないという重大な岐路に立っているということをしっかり認識してもらいたいと思います。



原子力供給グループの話が出ました。ここでは全会一致が原則です。日本が反対したら、アメリカとインドの原子力協定はできません、基本的に。それだけの ポジションに日本はあるということもしっかり踏まえていただいて、そして、核に対して、これは絶対に核の拡散を認めてはいけない、核のない世界を目指して いくんだという日本の基本方針、外交の基本方針を総理の代で曲げてしまうことにならないように期待をして、強く期待をして、私の質問を終わりたいと思いま す。




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