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2004.08.02|国会会議録

小泉総理のサミット報告に対する衆議院本会議代表質問

民主党代表の岡田克也です。私は民主党・無所属クラブを代表し、総理の報告に関連して、総理の国政・外交に対する基本的な姿勢・考え方を中心に質問を致します。

新潟、福島、福井の集中豪雨被害について

質 問に入る前に、先日発生した新潟・福島・福井、そしてこのたびの四国・中国の豪雨災害について、亡くなられた方々のご冥福を祈るとともに、被害に遭われた 多くの皆様にお見舞を申し上げます。また現在、復旧にあたっておられる方々、全国から支援に駆けつけておられるボランティアなど関係者のみなさまに、心か ら敬意を表します。

私は福井を訪れ、被災者の皆さんとお会いして、何点か、政治が取り組むべき課題があると痛感しまし た。第一に、被災した関係自治体から、激甚災害指定の早期実施を求める声が強くあげられています。今までの例をみると実際に指定されるまでには、被害状況 の算定に数ヶ月を要するなど時間がかかるケースがほとんどです。迅速な指定が必要です。第二に、私は大規模な災害発生のたびに繰り返される激甚災害指定の 陳情をみるたびに、何かが間違っていると感じます。被災者や被災した関係自治体の立場にたてば、算定に時間をかけるのではなく、まず概算によって速やかに 仮指定を行うなどの制度改革が必要です。第三に、住宅を失われた被災者の皆さんとお会いして、改めて生活の基盤である住宅を失うということが人生にとって いかに大きなことかということを痛感しました。被災者生活再建支援法による支援対象に、住宅本体部分への再建支援を含めるべきとの声に真摯に耳を傾けるべ きです。第四に、今回の集中豪雨では、ひとり暮しや寝たきりのお年寄りが避難できずに多く犠牲になりました。高齢化社会に即した災害対策について真剣に取 り組む必要があります。

以上、私がいま指摘した四点について、小泉総理も新潟入りされ同様の印象を持たれたのではないでしょうか。是非、総理のお考えを聞かせて頂きたい。答弁を求めます。

今国会の対応について

総 理は参議院議員選挙直後の記者会見において「野党の意見にも耳を傾けろと言う国民の声だと受け止める」「議論によって国民の不信や懸念を解消していく」と 発言しました。今国会は年金問題やイラク多国籍軍への自衛隊参加について、国民に対し説明責任を果たす絶好の機会です。それにもかかわらず、選挙後はじめ て開会したこの国会が、わずか8日間という会期なのはどういうことなのでしょうか。まったく納得できません。現時点でも国民の約8割は先の国会で成立した 改正年金法に反対し、同じく約6割がイラクにおける自衛隊の多国籍軍参加に納得していません。国民の意識と政府の考えにこれだけの乖離があることが明らか になったときに、なぜ十分な議論を行おうとしないのですか。答弁を求めます。

私は参議院選挙直後から、少なくとも1ヶ 月の会期をとってこれらの問題を十分議論すべきと主張してきました。加えて、集中豪雨発生に伴う災害対策、日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の解明などの重 要課題も発生しています。総理、時間がない、忙しいというのは言い訳にはなりません。国会は国民に対する説明の場であり、総理が最も時間を割くべきことで す。総理は最近、有名タレントや著名人と会うのにお忙しいようですが、違和感を覚える国民も多いはずです。総理が今なすべきことは、国会審議を通じて国民 への説明責任を果たすことであって、人気取りではありません。

総理、予算委員会や党首討論を開いて国民の前でおおいに 議論しようではありませんか。国会がお決めになったことだとの言い逃れはゆるされません。国会会期がわずか8日間であることに強く抗議するとともに、なぜ 国民に対し説明責任を果たそうとしないのか、総理の答弁を求めます。

年金改革について

次に、年金改革問題について伺います。年金問題は参議院選挙の最大の争点でした。そして選挙を通じて示された改正年金法に対する国民の審判は明らかにノー でした。民意は明らかです。少なくとも、民意を受けてしっかりと国会で説明することは最低限の責任です。総理出席のもと、予算委員会や厚生労働委員会で十 分な議論を行うべきですが、現時点ではその機会が民主党には与えられていません。大きな怒りを感じながら、この場で私の考えを明らかにします。

まず、参議院選挙を通じて、国民が最も政府に不信感を持ったのは、政府が正直でないということです。「現役世代の平均的収入の5割を維持する」との説明 が、モデル世帯についての、しかも65歳時点でのことであり、多くの国民に誤解を与えました。また年金財政を見直すにあたり、最も重要なデータである出生 率が法案成立後に明らかになりました。これらの点について、総理は参議院選挙期間中もほとんど言及・説明することはありませんでした。改めて国民に説明不 足を詫びるとともに、説明責任を果たすことを求めます。

次に、改正年金法は、持続可能でないという問題があります。 国民は、少子高齢化時代において、保険料が上がること、あるいは年金給付が削減されることは、ある程度やむを得ないことだと納得していると思います。国民 が問題にしているのは、制度が持続可能ではないということです。特に加入者の約4割が保険料を納付していない、即ちすでに制度として破綻状態にある国民年 金については、何ら根本的解決策が示されていません。総理ご自身も、参議院選挙中に年金の抜本改革の必要性に何度も言及していました。総理は、今回の改革 案が抜本改革でないことを明確に認めるべきです。答弁を求めます。

政府の改正年金法は廃止すべきです。年金制度が国民 の信頼の上に成り立っている以上、いったん白紙にし、議論をやり直すことが必要です。このまま改正年金法を施行すれば、年金制度に対する国民の不信感は更 に高まります。国民が信頼しない年金制度は成り立ちません。参議院選挙で示された民意は「年金を一から議論し直すこと」であったのは明らかです。民主党は 今国会の冒頭に、衆参両院に「改正年金法廃止法案」を提出しました。廃止法案を十分な議論もなく廃案にすることは、「年金を一から議論し直す」という民意 を否定することになります。本当にそれでいいのでしょうか。ここは日本国総理大臣としての大きな判断が求められています。この廃止法案をどう取り扱うの か、総理の答弁を求めます。

選挙期間中を通じて、総理は三党合意に基づく与野党協議にたびたび言及されました。私は年 金制度の一元化を含めた社会保障制度について政党間で協議するとともに、国会に小委員会を設けて議論することは必要なことだと考えています。年金制度を含 めた社会保障制度を少子高齢化時代において,持続可能なものとすることは政治の大きな責任です。

しかし、抜本改革の 論議が改正年金法を正当化する隠れ蓑になってはなりません。本格的な抜本改革論議の前に、まず国民が納得していない改正年金法を廃止しなければなりませ ん。加えて、小泉総理が本気で年金の抜本改革を与野党で議論したいと言うなら、その基本的方向性を明確にすべきです。国民年金を含めた年金制度の一元化 や、その前提となる納税者番号制の導入などについて、民主党は必要だとの結論を出し、参議院選挙におけるマニュフェストに明記しました。これらの問題につ いて、選挙期間中の小泉総理の見解は一貫性を欠いたと思います。総理はどう考えておられるのか改めて見解を求めます。

ま た、先日、細田官房長官は「小泉総理任期中に、消費税の引き上げを決定することもあり得る」と発言しましたが、その日の夕方には総理はこれを否定したと報 道されています。小泉総理は将来の消費税引き上げを任期中に決定することすら否定されたのでしょうか。仮にそうだとしたら、来年の介護保険や再来年の高齢 者医療制度の見直しは、消費税抜きで抜本改革するということを考えていることになります。他方で消費税の問題について、総理は「介護もあるし、医療もあ る」と言ってきました。真意はどちらなのか明らかにすべきです。答弁を求めます。私は選挙期間を通じて少なくとも年金制度の抜本改革のためには、将来の消 費税の引き上げは避けられないと明言してきました。将来の消費税引き上げについて、何ら決定をしないとの前提では抜本的な年金制度の改革論議は不可能であ ることは、与野党を問わず心ある議員の共通認識です。総理は任期中は消費税を引き上げないと明言されました。総理の公約は守らなければならないと思いま す。しかし、任期中の消費税引き上げ決定の可能性については、完全には否定されなかったと思います。消費税についての議論は自由だが、自分の任期中は決定 はしないという縛りをあらかじめかけてしまうことは無責任であり、消費税引き上げの準備期間に数年を要することを考えれば、次の総理大臣を逆に縛ることに なりかねません。国民に対して正直ではありません。この問題についての総理の責任ある答弁を求めます。

政治とカネ

さ て、またしても国民の政治への信頼を大きく損なう事件がおきています。日本歯科医師連盟をめぐる裏献金事件です。この問題では、既に4月に臼田前日歯連会 長、7月に自民党の吉田幸弘前衆議院議員が逮捕され、さらに数多くの政治家の名前がとりざたされています。自民党の政治資金受皿団体である国民政治協会や 各都道府県に設置された自民党歯科医師連盟支部をめぐる、つじつまの合わない不透明な資金の流れがあります。自民党総裁として、事実関係を徹底的に調査す るとともに、その結果を国民に対して明らかにしていく、説明責任を果すべきと考えます。答弁を求めます。

これらの事件 に加えて、2001年に、当時の臼田日歯連会長が橋本元総理と会食して、1億円の小切手を渡していたが、日歯連の収支報告書にも橋本元首相が会長をつとめ ていた平成研究会の収支報告書にも記載されていなかったことが判明しました。信じられないような事件です。収支報告に載せない、つまり使い放題の裏金が、 自民党内で未だに存在していることについて、党総裁を務める小泉総理はどのようにお考えですか。総理はかねがね派閥は力を失ったと言われてきましたが、今 回の事件は旧態依然たる派閥政治の存在を浮き彫りにしました。不思議なことに自民党総裁や幹事長が今回の事件について、どう考えているのか明らかにされて いません。小泉総理は本件をどう受け止め、どう対処しようとしているのか、国民に対して説明責任があります。答弁を求めます。

今回の一連の事件は、かつてのリクルート事件を思わせる広がりを見せています。リクルート事件をきっかけに、自民党は党を二分する政治改革論議が行われ、 選挙制度や政治資金制度の改革がなされました。不透明な政治とカネの問題は国民の政治不信の大きな原因となっています。政治資金の透明性を高めるための思 いきった改革ができるか否かが、政治が信頼を取り戻すための決め手になります。小泉総理がこういった改革に本気で取り組むのであれば、私はそれに協力する ことにやぶさかではありません。ともに政治に対する国民の信頼を取り戻そうではありませんか。この問題に関する総理の決意と覚悟を国民に対して述べること を求めます。

イラクでの多国籍軍への自衛隊参加などについて

最後に、ただいまの総理からのサミットに関する報告に関連して、イラクの復興支援、わが国の外交のあり方について、私の考えを述べ、総理に質問します。

ま ず、多国籍軍への自衛隊参加に関し、総理が国会や国民に対して説明責任を果していないことを指摘しなければなりません。総理は参議院選挙中に、「いままで と変わらない活動をするのに、日本に帰って相談しないとわかりません、それで日本の総理大臣が務まると思いますか」と街頭演説の中で述べています。まるで 多国籍軍への参加の問題が突然に日米首脳会談で話題になったかのような話しぶりです。しかし、これは明らかに事実に反したごまかしの説明です。現実には、 日米首脳会談と同じ日に、日英外務省間で日本の独自指揮権に関する口頭了解がなされました。多国籍軍への参加は突然出てきた問題ではなく、日本の外務省が 米英両国に根回しを行ったうえで、日米首脳会談で日本側から積極的に持ち出したというのが事実ではありませんか。答弁を求めます。多国籍軍への自衛隊の参 加といういままでにないこと、憲法上の疑義のある重大な問題について、なぜあらかじめ国会で政府方針を説明し、国民の理解を求めようとしなかったのか改め て説明を求めます。また、サミット帰国後も私が国会で説明するよう求めたのに対し、これを無視して閣議決定しました。衆議院で閉会中審査が行われたにもか かわらず、総理は出席を拒み地方で参議院選挙の応援演説をされました。なぜ国会で事後的であれ、真摯に説明しようとしなかったのか、答弁を求めます。

次に、イラクの現状認識について質問します。サマワはじめイラクのどこでテロリストによる攻撃が行われるか予想できない状況にあります。いま戦闘がなされ てないからといって、将来サマワで戦闘が行われないとは言い切れません。従って、サマワがイラク特措法上の非戦闘地域とはいえないというのが民主党の主張 です。総理官邸で私が総理に対してサマワは将来にわたり戦闘が行われないと言い切れるのかと聞いた際、小泉総理は「将来のことはわからない」と断言されま した。しかし、イラク特措法上の非戦闘地域の定義は「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることが ないと認められる」地域であり、総理の言葉に従えばサマワは明らかに非戦闘地域ではないことになります。この点をどう考えているのか、改めて総理の見解を 伺います。

総理は自衛隊の人道復興支援活動についてのみ説明し、安全確保支援活動については、その活動の実態すら明 らかではありません。しかし、武装米兵を輸送したことがあることは航空幕僚長が記者会見で明らかにしています。これまでの間、何度米兵の輸送を行ったのか 説明を求めます。また多国籍軍に参加したうえでの安全確保支援活動、即ち治安活動にあたる米軍の支援活動は、本当に独立した指揮権のもとで行うことが可能 なのでしょうか。そして、武力行使との一体化はあり得ないのでしょうか。総理の明確な説明を求めます。

そして以上の点について十分な説明がなされないのであれば、自衛隊のイラクからの撤退を求めます。

サミットでも議題となった北朝鮮問題について質問します。総理の2度目の訪朝後、72日間が経過しました。いまだに金正日国防委員長が約束した10名の安 否不明者についての調査結果が明らかにされていません。日本はこのまま待つしかないのでしょうか。調査結果がいつまでに示されるのか、総理の責任ある答弁 を求めます。他方で総理は「国交正常化を1年以内にも」と発言していますが、拉致問題に進展がない中、国交正常化交渉をいつ、どのように本格的にスタート するつもりなのでしょうか。それともすでに本格交渉を開始されたのですか。私は10人の安否不明者について、全く回答がないままの本格交渉開始には慎重で あるべきと考えます。小泉総理の責任ある答弁を求めます。

次に大量破壊兵器の問題について質問します。核兵器をはじ めとする大量破壊兵器のテロリストによる使用が大きな脅威となっていることを考えれば、サミットにおいて行動計画が合意されたことは評価できます。しかし 他方で核保有国の核軍縮についての熱気が失われていることが気がかりです。非核保有国に対して、核を持つことを許さない核不拡散条約は、核保有国がまじめ に核の保有量を削減するとの前提があって、その不平等性を超える正当性が与えられます。米国の小型核兵器の開発や包括的核実験禁止条約の批准問題につい て、総理はどうお考えでしょうか。また日米首脳会談でブッシュ大統領とこれらの件についてお話になったのでしょうか。答弁を求めます。

最後に、日米関係について申し上げます。私は先週訪米し、共和党、民主党の関係者と率直な意見交換をしてきました。私が今回の訪米で米国の関係者に最も伝 えたかったことは、日米両国の自立と相互信頼に基づき、より対等な同盟関係の構築が必要であること、そして世界で抜きん出た力を持つ国だからこそ、米国が より寛容であり、謙虚であることが求められるということです。自衛隊派遣に我々民主党が憲法上の理由で反対していることもきちんと説明し、率直に議論して きました。イラク戦争に関して米国政府に批判的な我々を米国国務省やホワイトハウスが、あえて受け入れ、意見を聞き、議論しようという姿勢を見せたこと、 そして現時点で見ればイラク戦争は間違っていたとの認識が、広く共和党関係者にもあることは、アメリカという国の懐の深さを改めて感じさせました。日米同 盟をより深いものにしていくためには、国民的理解が不可欠です。「いざというとき日本を守ってくれるのは米国だけだ」というような底の浅い説明はもうたく さんです。総理が国会において国民に対し日米同盟の重要さ、そしてわが国外交のあり方について説明責任を十分果たすことを強く求めます。総理に反論があれ ば述べていただきたいと思います。

以上国政全般にわたり私の考えを述べてきました。批判だけに終始するのではなく、こ の国の政治に対し責任を持つ政党の代表として基本的な質問をしました。質問者である私に対してだけでなく、国民に対して総理の責任ある答弁を求めます。な お、答弁が不十分であれば、当然のことながら、再質問、再々質問を行うことを申し上げ、私の質問と致します。




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