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2001.12.20|その他

わが国の現状と民主党の立場

まだ終わっていない“55年体制”

私は1990年に初当選しました。当時は自民党の経世会です。政界に入 る際に一番頼ったのは小沢一郎さんで、以来、政治家としては父親・小 沢一郎、母親・羽田孜という関係で来ました。自民党を離党したのは2回目の選挙の直前の93年春で、ちょうど宮沢内閣に不信任案が出て、小沢さんや羽田さんと不信任案に賛成して新生党を作ったわけです。自民党で党内改革をしていくのは無理だと見切りをつけ、代わるものを作ろ うと離党したわけです。

基本的に日本の政治は55年体制で、自民党と社会党が二大政党として 55年以来、細川政権まで続きました。55年体制の特徴は二つあり、一つは政権交代がなかったことです。自民党は与党、社会党は野党ということが長く続き、野党・社会党は政権を取る意欲すらなかった。もう一つはイデオロギー対立です。東西対立を反映して西側の価値観や考え方を代表する自民党と、東側を代弁する社会党という形ではっきり分かれていました。

そんな中で自民党はそれなりの役割を果たしてきましたが、むしろ経済が良かったので、それに乗る形で政権与党でいられたのだと思います。55年体制は細川政権が出来て崩れ、一翼を担う社会党はなくなりま した。今の社民党を見れば、完全に社会党陣営は壊れています。しか し、片割れの自民党は残っており、その意味では55年体制が完全になくなったわけではない。むしろパートナーを取っ替え引っ替えしながら自 民党が政権の中心に座っているという意味では、まだ55年体制は続いて いるとも言えます。よく自民党を「沈みゆくタイタニック号」と言うのですが、まだ、民主党も含めて代わる物が出てこないから自民党の時代 が続いているに過ぎません。妥協の道選ぶ? 小泉首相

小泉さんは自民党にとって最後のカードだと思います。もし、小泉さ んがダメだからもう一回元のスタイルに戻していいかというと、国民は絶対ノーだと思います。そんな中で小泉首相がもし改革をどんどん進めれば、当然、自民党の従来の既得権や支持基盤とぶつかります。小泉改革が進めば党の自己否定になるし、逆に改革をつぶせば国民の痛いしっ ぺ返しが来る。小泉さんと自民党は今そういう関係にあるのではないかと思います。小泉さんが孤立の道を行くか、妥協の道を行くか。実はどうも最近、妥協の道を行くんではないかと思えてなりません。

9月の同時多発テロに端を発して、自衛隊を出すというテロ特措法を作る際、我が党の鳩山代表と小泉総理とでトップ会談があり、その時私も同席しました。小泉さんが青白い顔で目をつぶってじっと上を見ること約1時間、その間話したのは2回だけ。非常に孤独感が漂っていました。民主党の提案に小泉総理は半分位の可能性で乗るのではと思ってい たのですが、与党内でしっかりたがをはめられ、我々の提案に乗りませ んでした。総理は言葉の上では非常に歯切れよく、自分の意志を主張しているように思えますが、あの時点を境にだんだん妥協を続けるようになってきたのではという気がします。

象徴的なのが、道路公団など7特殊法人の問題です。鳩山さんとの党首討論で小泉さんは「もし自分を切れば自民党に明日はない。自民党は つぶれるんだということを抵抗勢力の人たちはよく覚えておいた方がいい」とたんかを切りました。しかし実はその前日、某ホテルで自民党幹部と会い、道路公団をはじめとする決着についておおまかなところで合意していたのです。道路公団、医療制度の問題、あるいは2次補正を結 局認めてしまったことなども含め、表面上は改革を唱えながら実質的にはかなり巧みに妥協を進めている、そんな感じがしたのです。

まだ小泉 さんの支持は期待感で高いですが、年が明けて予算が通るくらいになると、いろいろな法案が出てきますので、国会で議論する中で「実際はこ の程度なのか」と広く認知されていくだろうと思います。

第三者機関の実効性は?

小泉改革の中間評価は道路問題で言うと、毎年3000億円の税投入をや めると決断したことは評価します。しかし結局それ以外、償還期間50年 を30年にするとか、整備計画をもう一回採算性の面から見直すとか、いろんなテーマがありますが、これらを全部先送りしてしまったのが今回 の与党と総理との合意です。すべては第三者機関を作ってそこで議論することにしたわけですが、その第三者機関がいつできるのか、02年4月 ぐらいに法案が国会で審議されて速やかに通ったとしても4月か5月、 それから委員を選んで急いで議論を始めても最低半年です。03年春ぐら いに第三者機関の結論が出ることになれば、そのころは総理大臣が替わっているかもしれません。第三者機関にどういう権限と役割を与える か全く議論せぬまま、総理と与党の間で合意したのです。

トリック秘めた医療制度改革

それから医療制度改革です。総理はよく「三方一両損」という言葉を 使いますが、この言い方にはトリックがあります。三方とは医者と国民 と保険者で、それぞれ損をするようにというのですが、そうではなく、 まず、いかに必要で効率的な医療を実現するか議論すべきです。「三方 一両損」と言っても、国民と保険者は一緒ですから、保険料でも税金で も自己負担でも結局国民の財布から出るわけで、今回診療報酬が下がって「国民も医療提供者側も痛みを負った」というのは違います。診療報 酬は基本的に人件費と物価ですから、人件費も物価も下がっている中で 診療報酬が減るのは当然。それ以上の痛みは医療提供者側にないわけで すから、国民が一方的に痛みを負担していると言っても過言ではありま せん。

もう一つ重要な問題に経済があります。私は基本的に小泉改革と今の 景気後退とは切り離して議論すべきだと考えます。ただ、不良債権処理 を進めれば一時的に景気が悪くなるのは当然です。これはどこかで越え なければいけないことで、予定通りやっていくしか手はないと思いま す。もちろん、中小企業が苦しんでいることに対策は必要ですが、経団 連に名を連ねるような大企業が「景気が悪いから何とかしろ」と政府に 言う姿を見ると、それは違うと思います。基本的には自らの力でやって いくのが市場経済であり、政府が魔法の杖を持っているわけではありま せん。そこをはき違えてやってきた結果が現在のこの国の破滅的な財政 状況ではないかと思います。その意味では公共事業などを財政政策の一 環として増やしていく考えには立つべきでないと思います。

政権交代がない民主主義はあり得ませんので、大きな流れは我々の側 にあると確信しています。実現が遅れるのは、我々にとってだけでなく 日本の民主主義にとって大きな問題だと考え、一日も早く民主党が一人 前になり、ご期待に応えられるよう頑張ります。(この講演は01年12月 20日にありました)




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