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2001.10.12|国会会議録

小泉総理と一問一答、熱論をかわす

岡田委員 総理、民主党も六時間以上議論をしてまいりました。いろいろな論点が出てまいりましたので、きょうは、私の時間が二時間ほどありますので、今までの議論を踏まえながらさらに議論をして少し論点を整理してみたい、そういうふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。



まず、始める前に、先ほど総理の方から、ウサマ・ビンラーディンと今回のテロ事件の関係についての政府の見解が述べられました。昨日の我々民主党の、そういったことについて明快な見解を述べるべきだ、そういう要望に対しておこたえになられたことは率直に評価をしたいというふうに思います。もちろん、中身についてはいろいろ我々として十分でないと思うところもありますので、後ほど申し上げたい、そういうふうに思っているところであります。



さて、少し議論の整理を、入る前にしてみたいと思います。



我々もよく有権者の皆さんから、特にこれは女性が多いんですけれども、いただくのは、今回のテロは大変ひどい、そのことは十分わかる、しかし、なぜそれを武力行使によって解決しなければいけないのか、アメリカの空爆も始まっておりますけれども、そういう解決の仕方ではなくて、きちんと国連決議をして、そして犯人の引き渡しを求め、裁判にかけるべきだ、こういう議論というのは、なお私はかなり国民の中にはあるんだと思うのですね。



民主党はそういう立場をとっておりません。総理もそういう立場をとっていないということは、今までこの委員会の中で何度も述べられておりますけれども、ともすれば、裁判にかけるべきだ、武力行使はだめだという質問者に対して、少し感情も交えながらお話しになっていたものですから、この際、少し冷静に、テレビを通じて国民の皆さんに呼びかけるおつもりで、なぜ我々はこの武力行使を、我々自身がするわけではもちろんありませんが、米国等が武力行使をするということについてこれを是とするのか、そのことについて御説明をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 武力行使をせずにこの事件が解決してテロが根絶されれば、これにこしたことはないと思います。しかし、今回のニューヨークとかワシントンのあの同時多発テロを見てみますと、これっきりで終わるという確信はだれも持てませんね。むしろ、これからまた続いていくんじゃないかという不安の方が強い。



そして、過去のウサマ・ビンラーディン初めアルカーイダの行動を見ますと、各地でテロを起こしている。そして身柄引き渡し要求にも応じてこない。なおかつ、このまま外交努力、あるいはテロ資金管理努力、凍結努力、あらゆる手段を講じて呼びかけても全然耳をかさない。そういうさなかに、今回のテロがまたまた発生したわけであります。



このままそれ??\xA7は武力行使しない、テロ組織を壊滅しない場合、話し合いによってテロが阻止されるのか。だれも保証はない。そういう中で、これはもう話し合っても言うことを聞いてくれないな、武力行使は最後の手段だと思いますが、そこに踏み切った。



しかも、これが国際間の組織になっているわけですね。国際協調のもとにこのテロ根絶に立ち上がったわけでありまして、あくまでも武力行使は一つの手段であります。そのほかの手段も、有効であると思われる手段はすべて活用しよう、各国の国情に応じて、国力に応じてできるだけのことをしようというのが今の国際間の共有している認識だと思います。



アメリカとイギリスは武力行使には参加するけれども、ほかの国は参加しない国もたくさんある。しかし、テロに対しては毅然として立ち向かおうというのが国際社会の中で圧倒的多数の国々であるということでありますので、私は、武力行使を用いずにテロ根絶という保証がないどころか、このまま手をこまねいて、話し合って、出てきなさい、出てきなさい、法による裁きを受けなさいと言っても全然言うことを聞かない相手には、今回やむを得ない措置ではなかったか、そういうふうに判断しております。

岡田委員 今の総理の御発言に若干補足をさせていただくとすると、出てきなさい、出てきなさいと言っても出てこないというのは、国連の安保理の決議があるということですね。安保理決議一二六七、ここで正式にウサマ・ビンラディンに対してその引き渡しを求めた、しかし出てこない、そういう中でこのニューヨーク、ワシントンの大規模なテロ事件が起きた、こういう流れの中で今回の武力行使がある、そういうことだと思います。



では、もう一つお聞きしたいと思いますが、このウサマ・ビンラディンはわかったけれども、ではタリバンはどうなんだ。つまり、それをかくまっているというだけでタリバンまで攻撃をするということが合理化されるのかどうか、こういう疑問があると思います。これについてはどうお答えになりますか。

小泉内閣総理大臣 ウサマ・ビンラーディン個人一人だけの今回のテロ犯行じゃないと私は思っています。ニューヨークの、あるいはワシントンの同時多発テロにおきましても、複数のテロリストが計画性、組織性を持って攻撃したからこそあれだけの大惨事になっているわけでありまして、このウサマ・ビンラーディンの配下に属するテロリストはまだ何人もいると想定するのが自然だと思います、しかも組織的に。それを支援し、擁護している一つの組織がタリバンである。



だから、こういう個人、ウサマ・ビンラーディン個人をたとえ逮捕したとしても、それにつながる組織が破壊されない限りは、依然として続く可能性が強い。その支援する組織、タリバンも一つであります。それを壊滅といいますか、むしろ組織性を持つことができない、テロ行為を行うことができない程度にまで破壊しない限りは、私はテロの不安というのはなくならないのじゃないか。



今回、ウサマ・ビンラーディン個人はもとより、それを支援する組織、それを擁護する政権、これに対して攻撃を加えているというのは、私は、それなりの理由があると思っております。

岡田委員 国連安保理の決議一二六七の中で、もう既に、これはもちろん今回のテロ事件ではありませんが、ケニア及びタンザニアにおける爆弾テロ事件に関して、タリバンがウサマ・ビンラディンをかくまっている、その背後にいるということでタリバンの経済制裁を決めた。



そして、同じく安保理決議一三三三、これは二〇〇〇年であります、先ほどの一二六七は一九九九年十月ですけれども、一三三三において、タリバンが先ほどの決議一二六七を遵守していないということで、さらに資産凍結などの、あるいはタリバン幹部の渡航制限などの制裁強化の決議をしている。



こういうことで、まず、タリバンとウサマ・ビンラディンの関係については、今回のテロ事件ではありませんが、それ以前のテロ事件に関して既に関係を安保理として認めている。そして、今回のことについては、それは証拠がないと言えばないかもしれませんが、しかし非常に疑いが濃いということで、タリバンに対して引き渡しを求めたけれども出てこない、そういうことで今回の武力行使がある、こういう整理だと思っております。



さて、それじゃ次に、犯人の特定の問題であります。 先ほど総理が、冒頭の発言の中で、ウサマ・ビンラーディン率いるアルカーイダと今回のテロ事件の関係について、るるお述べになりました。ただ、今お述べになった中身は、一つは、アメリカ政府、イギリス政府あるいはNATO、フランス、パキスタン、ロシア、そういった諸外国、諸機関がこう言っている、そういう御説明だったと思います。



それ以外のところということで今の発言を見ますと、五でお述べになったところですけれども、ウサマ・ビンラーディンは、八日のテレビ放送において、ニューヨーク、ワシントンを破壊した人々は神より遣わされた旨述べ、称賛した。それから、いろいろ各国から容疑がかけられているにもかかわらず、みずからの関与を全く否定していない。それから、アルカイーダが、米国は飛行機のあらしが静まらないことを知るべきだという声明を出して、さらなるテロを予告している。こういうふうに述べられました。



これは、それぞれ情況証拠ではあると思いますけれども、ウサマ・ビンラーディンがみずからテロを起こしたということを言っているわけではありません。否定していないことをもってそうではないかということを言っているにすぎないわけであります。



そういう意味で、今お述べいただいたことは、私は、国民の皆さんに政府がきちんと説明するという意味で評価いたしますけれども、これだけで我が国が武力行使に対する支援をする、そのためには場合によっては人の命もかかわります、日本人の命もかかわります、もちろん税金もかかわります、そういう中で、今お述べになったことだけで決定することはもちろんできません。そこで大事になることは、総理みずからもお述べになっているように、総理御自身が、公にはできないけれども、米国政府から確信に足るだけの情報を得ている、そこに私はかかわってくると思うのですね。



今、米国政府からどういう中身を情報として得ているのか、そのことをここで示せなどと言う気はもちろんありません。しかしもう少し、どういう状況のもとで示されたのか、外交ルートを通じて示されたのか、あるいは日米首脳会談を通じて示されたのか、少しそのさわりの部分だけでもお話しいただいた方が国民にとってわかりやすいと私は思うのですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは見解の相違になるかとも思いますが、私は、委員会冒頭で発言した内容で十分説得力があると思っております。これで説得力がないとは思いません。この私の冒頭の発言において、内容において説得力がないと思われる方がいるかもしれません。しかし、私どもは、冒頭に発言した私の内容において十分説得力があるものと判断しております。

岡田委員 今のお話は、そうすると、冒頭の発言以外に情報はないということですか。 

小泉内閣総理大臣 冒頭の発言にも、話せない部分もあるがということを報告しております。



しかし、話した中で十分説得力があると思っております。これで説得力がないと思う方もいるかもしれませんが、それは見解の相違だと思います。 

岡田委員 私は、冒頭にお話しのあったことプラス、総理御自身が、話せないけれども自分自身が確信するだけの情報を得ている、その合わせたところで国民は納得していると思うのですね。



そこで、何もお話しできないというのは、それは事柄の性格上わからないわけではありませんけれども、しかし、総理、ここで私は一つだけ確認しておきたいことは、もしこの判断が誤っていたときに、総理はその責任を負うお気持ちは当然おありでしょうねということなんですね。



つまり、私どもも含めて国民の皆さんは、今冒頭に述べられたこの説明しか聞いていない。いろいろな国がこう言っている、それはわかりますよ。でも、それだけで判断しているわけではないと私は思うのですね、それぞれの国も。やはり日本も、同盟国として米国政府から総理に対して、言えない情報提供もあった、その総合判断の中で決めている。そうであれば、もしこのウサマ・ビンラーディンが、アルカイーダが犯人ではないということになったときに、やはりそのことについて政治家としてきちんと責任を負うということを総理がこの場でおっしゃることが、国民の皆さんが確かにウサマ・ビンラーディンだ、そういうふうに確信をするためにどうしても必要なことだと私は思うのですが、いかがでしょうか。 

小泉内閣総理大臣 責任を負っているのは当然であります。これだけ情報を交換し、意見交換し、総合的に判断して、ウサマ・ビンラーディンが犯人である証拠を発表できないからこの国際社会の協調体制に立ち向かうことができないといった責任の方が私は大きいと思っております。

岡田委員 総理は私の質問に答えていただいていないのですね。私が申し上げているのは、総理が……(発言する者あり)では、もう一度言ってください。



総理は、我々あるいは国民の皆さんには入手できない情報を持って最終的に犯人を特定された。もしそれが間違っているということであれば、それはもちろんアメリカ政府の責任もあるかもしれませんが、総理御自身も政治家としてその責任は重いですよ。そのことは感じておられますね。そのことをもう一度お述べいただきたいと思います。 

小泉内閣総理大臣 最初に、冒頭に申し上げたとおり、責任を負っております。 

岡田委員 重い責任ですから、もう少し重々しく言っていただきたかったのですけれども。 それでは、次に参りたいと思います。



この法案を考えていく中で、私は自衛権行使の正当性の問題というのを避けて通れないというふうに思っております。そこで、幾つか御質問したいと思いますが、まず、自衛権行使というのは、米国政府の個別的自衛権行使の正当性ということであります。



米国政府は、先般、安保理に提出したレターの中で、アフガニスタン以外の国々に軍事攻撃する可能性を述べたと伝えられております。今回のこの事件に関して、今後、米国政府の、米国の武力行使が次々に拡大をしていった場合に、日本国政府として、この法律に基づいて米国政府のすべての武力行使に対して支援をしていく、この法律に基づいて支援をしていく、そういうお考えなんでしょうか。 

福田国務大臣 今回の米国また英国、このとった行動というのは、国連憲章第五十一条に基づきます個別的及び集団的自衛権の行使、こういうことで安保理に報告をされております。



これは、一般国際法上は、自衛権というのは、御案内のとおりでありますけれども、国家または国民に対する外部からの急迫不正の侵害に対し、これを排除するのにほかに適当な手段がない場合に、当該国家が必要最小限の実力を行使する権利である、こういうことになっております。



我が国としましては、米国から得た情報その他各種情報をもとに、今回の同時多発テロに対して米軍、英軍がとった軍事行動が自衛権の行使に当たると判断しております。いずれにしても、米国は、国際法上違法な武力の行使を行わない、こういう義務を遵守しなければなりませんから、米軍等の軍事行動が必要最小限度の実力の行使を超えるものではない、このように理解しております。



また、後段でお尋ねの、目的を逸脱するようなことがないかどうかといったような趣旨のことにつきましては、これは、米国が九月十一日のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めるということによりまして国連憲章の目的達成に寄与するという、この目的から逸脱した行動を行うということは我々としては想定はいたしておりません。想定するのは適当でないというふうに考えております。



いずれにしても、具体的に、どのような場合に、どのような内容の対応措置を実施するかしないかということは、これは我が国が自主的に判断することである、このように考えております。 

岡田委員 今、自衛権行使についての中身をお話しになったわけですが、最小限という表現を使われました。そういう言い方もありますが、別の言い方をすれば、侵害行為と反撃行為の間に均衡性があること、これが自衛権行使に当たって必要なことだ、一般的に国際的に認められた考え方だと思います。それを逸脱することはないと官房長官は今言われましたが、それは正確じゃないので。つまり、攻撃はまだ続いているわけですから。



発動の要件としてはよくても、やっているうちにどんどんどんどんそれがエスカレートしていけば、その均衡性が崩れる可能性というのは論理的には排除できないと思います。そこについて、もし均衡が崩れるような攻撃をした場合、例えば、このアフガンの中で一般の市民を大量に、私は、それは攻撃をしていく中で、既にそういったことが起きていますけれども、多少のことはあるだろう、そういうふうに思いますけれども、一般の市民がどんどんどんどん攻撃対象になって亡くなっているというようなことは、それはあってはならないことですが、論理的には考えられるわけですね。そういう場合、どうなんでしょうか。 

福田国務大臣 今回の米軍を初めとする国々の活動というものは、これは目的は何かということですね。



それは、九月十一日に起こったテロに起因するものでありますけれども、過去において何件かあったそういうものに対する、要するに、国際的なテロの絶滅とそしてまた抑止、こういうことがあって、それに同調する国々が立ち上がった、こういうことでございます。ですから、そのテロの絶滅ということを果たすためにどの程度のことが許されるかという問題にもなるかと思いますけれども、これは、この目的を達成するために、では何でもやってもいいんだというわけに私はいかないだろうと思います。



いずれにしましても、やはり米国は、並びにその他の国々も、国連憲章上の義務を遵守するという大原則がありますので、我が国も、国際法上違法な軍事行動を支援する、そういうことはあり得ないはずでございます。

岡田委員 今官房長官言われた中で、これはここ数日来の政府の答弁を聞いていて、もう少し整理した方がいいと思う点が一点あるんですね。つまり、この法律でテロの撲滅を目指して行動するということなんですが、私は、法律上、二つのことを明らかに書き分けていると思うんですね。



一つは、テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることによって国連憲章の目的の達成に寄与する米国軍その他を支援する、簡単にちょっと申し上げましたが。そこで言うテロ攻撃というのは、テロ攻撃一般じゃないですね。テロ攻撃一般じゃなくて、この法律上書いてあるテロ攻撃というのは、「平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃」というふうに特定されていますから。ですから、今の官房長官のお答えを聞いていて私はちょっと正確じゃないと思ったんですが、我々が米軍等に対していろいろな支援をする、我が国が実施をする措置というのは、あくまでもこの具体的な平成十三年九月十一日のテロ攻撃に対して、その脅威を除去するためにやるんだ。



そしてもう一つの方の、人道的な精神に基づいて実施する措置の方はそういう限定がありませんから、一般のテロの脅威に対して行うものだ。そういうふうに明らかに法律上書き分けられていると思うんですが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございまして、我々日本がこれから新法でもって行おうとする活動というのは、これは九月十一日に起こったテロに原因するものであるということでございます。

岡田委員 そうであれば、例えば今回のウサマ・ビンラーディンとかアルカイーダに関係のないテロ、ほかにも国際的なテロはいろいろあります。そういうことに関して、もし米軍等が武力行使をするということになれば、この法律に基づいて我が国が措置をする、支援をするということは、これはできないことですね。いかがでしょうか。

福田国務大臣 おっしゃるとおりですけれども、しかし、過去のものも同じ犯人または団体であるということになれば、今回の九月十一日の事件を起こした犯人、団体、これを撲滅するということが、これが目的にかなう、またこの新法の目的にもかなうことだと思います。

岡田委員 私の申し上げたことと同じことを官房長官が言われたと思うんですけれども。



そこで、例えば米国等がこれからアフガニスタン以外の国を武力攻撃するということがあったときに、その国とこのウサマ・ビンラーディンとの関係が明確であれば、あるいはそのことについてきちんと、先ほど私は、ウサマ・ビンラーディンとそしてタリバンとの関係は過去の国連安保理の決議においても認められているというふうに申し上げましたが、同じような明確さがあれば、私は、場合によっては、そういうことが自衛権行使の名のもとに正当化され、そしてこの法律に基づいて、日本もそれに対し支援することはあり得るとは思いますけれども、しかし、それは単に協力関係にあるだけだとか、明確なきちんとした密接な関係がない場合に、もし米国がそういったアフガニスタン以外の国を攻撃したときに、日本が支援をするということは、私はこの法律の目的を逸脱していると思いますが、いかがでしょう。

福田国務大臣 これからどのようなことになるのか、いろいろ考えますと切りがないのでありますけれども、今時点において私どもは、この地域において行われていることを、これを現在は認識しているわけでありまして、その先を想定するのは現段階では適当ではないのかな、こう思っております。



もちろん、委員のおっしゃるとおりその状況が整えばということであるかもしれませんけれども、しかし、それはあくまでも日本、我が国が自主的に考えることでありまして、そのときに今回のような証拠とかいろいろな状況が整うのかどうか、そういうこともあわせ考えて判断すべきものだと思っております。

岡田委員 私も、米国政府を、疑いを持っているわけではありませんが、しかし論理的な可能性として、米国政府がこの際ということで、直接今回のテロ事件に関係のないテロ組織まで含めて一気に片をつけてしまおう、こういうことで攻撃をしたような場合には、我が国としては、それに対してこの法律に基づいて支援することはできない、こういうことだと思っております。



しかし、そのことについて、もう少し法律上明確にしておくべきじゃないか。もう少し言いますと、米国等の正当な自衛権の行使、その範囲を逸脱した場合には我々は協力できませんということを法律上明確な根拠規定を置いておくべきじゃないか、そういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 どのようなことが起こるかわからないから、その事例について一々具体的な名前を挙げるとかそういうことはできないだろうと思います。



しかし、明らかに、「テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する」、こういうように明確に書いてございますので、これは、その趣旨に沿った我々の活動である、そしてその目的に基づいた自主的な判断に基づくものである、こういうことであります。

岡田委員 やや細かい法律論になってしまいますけれども、今おっしゃったのは、第一条の中で「国際連合憲章の目的の達成に寄与するアメリカ合衆国その他の外国の軍隊」という、そこの部分ですね。



つまり、国際連合憲章の目的を達成するような行為を行っている場合にこの法律の対象になるんだということをおっしゃったんだと思いますが、それじゃ、そこで言う国際連合憲章の目的というのは一体何なんでしょうか。 

福田国務大臣 国際の平和と安全の維持などに努めるということだと思います。

岡田委員 ここが私はかなりあいまいだと思うんですね。



例えば、国際の平和と安全の維持に努めているとしても、しかし正当な自衛権の行使を超えているということは私はあり得ると思うんですね。そういう場合も支援するんですか。

福田国務大臣 そのことは、国連憲章に記載されているわけですね。ですから、当然のことだと思っております。

岡田委員 ちょっと今わかりにくかったんですけれども、国連憲章に何が記載されているんですか。

福田国務大臣 国連憲章五十一条です。

岡田委員 五十一条に書いてあるのは、自衛権の行使ができるということが書いてあるわけですね。私が先ほどから申し上げていることは、むしろ、端的に言うと、法律に、日本の行う協力支援活動は国連憲章五十一条に定める正当な自衛権の行使の範囲を超えるものであってはならないということを明確に書いたらどうかということなんです。

福田国務大臣 この国連憲章第二条なんですけれども、加盟国は、目的の達成に当たり、違法な武力の行使を慎むべき義務をすべての加盟国に課している、こういう条文がございます。

岡田委員 国連憲章にどう書いてあっても、今我々の国の法律の話をしているわけで、そういう一般的なことはいろいろ国連憲章に書いてありますが、実際に我が国の中で考えていくときには、我が国の法律にきちんと根拠がないとそれができないんじゃないですか。



国民の皆さんの中にも、どこまでも米国を、何といいますか無条件に信じてついていくということに対しては、私自身も含めて抵抗があるんですね。もちろん、米国政府の判断というのはおおむね誤っていないというふうに今までのことから思いますけれども、しかし我々も同盟国として、イコールパートナーというのであれば、やはり、アメリカの言うことは全部正しいという前提に立って法律をつくるんじゃなくて、そこは、きちんと国際ルールに従って行動するアメリカに対して我々は支援するんだということをきちんと言うべきじゃないか、そういう趣旨で私は申し上げているんです。



官房長官は、あくまでもアメリカの言うことは常に神のように正しい、そういう前提でお話しになっているんですか。

福田国務大臣 この法案は、九月十一日に起こったテロ、これのためにつくった非常に限定的な新法律なんですね。この法律が、それじゃ何をもとにしているのかといえば、やはりそれは国連憲章上の義務ということ、また義務を遵守する、こういうことは一つございます。



またもう一つは、我々が、国際法上違法な武力の行使や国連憲章の目的達成に寄与する活動でないという――ちょっと失礼をしました。ですから、この我々の活動は、あくまでも国連憲章上の義務ということでもって活動をする、こういう内容になっているわけですから、それからもう一つ申し上げれば、日本の憲法の枠内で行うということ、そしてそれも自主的な判断に基づいて活動を規定する、こういうことになっているわけでありますから、疑問があるというのは、ちょっと私にはわからないんです。

岡田委員 私がそういうふうに思う理由の一つは、もし米国等の行う自衛権の行使が範囲を逸脱したという場合に、それは当然我が国としては、この法律に基づく協力支援活動を中止しなきゃいけないと思うんですね。しかし、その中止のための根拠規定が私はないように思うのですね、この法律の中に。だから、そういうのは頭から想定していないということになるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。

福田国務大臣 この法案の趣旨に反するというか、逸脱するということになれば中止するということはあり得るわけですけれども、そのやり方というか、それはそういうときに自主的に判断して中止するわけでございますから、その中止についてのいろいろなルールをつくっているわけではありません。そういうふうに自主的に判断して決めることだと思います。

岡田委員 これ以上この話はいたしませんが、もちろん自主的に判断する、主体的に判断をして日本国政府としては決めるということですが、ほかのところについては、例えば地区の指定のところなどは、規定がちゃんと法律上書いてあるわけですね。実施区域の変更ですね。実施区域の全部または一部がこの法律あるいは基本計画に定められた要件を満たさないものとなったときには、速やかにその指定を変更し、活動を中断しなければいけない、こういう規定があります。しかし、その肝心かなめのもとの行動が、自衛権の行使が正当でないという場合には、こういう規定を置かれていませんから、私はできないんじゃないかと思ってるんですね。いかがでしょう。

津野政府特別補佐人 お答えいたしますと、この法律におきまして、これは第四条で基本計画を定めることにしてございます。それで、その基本計画の変更というのが書いてございまして、これは「第一項の規定は、基本計画の変更について準用する。」ということで、基本計画は変更することができるようになっております。



したがいまして、例えば、これを基本計画の中に、これは二つ、我が国はこのためにするいろんなことをやることができる。一つは、いわゆる米国等に対する支援協力活動ですね。それからもう一つは、難民の国際的な人道的な措置。そういった二つあるんですが、両方とも基本計画の中に入ってまいりますから、その支援活動の方についてはやめる、残りは残っているというようなケースもございますので、基本計画を変更することによって手続自身は全くできないことはないということでございます。

岡田委員 全くできないことはないというのは、かなり苦しい法制局長官としての御答弁だと思うんですが、私は、先ほど言いましたように、法律に書いておくことがベストだというふうに思います。もしそうでない場合というのを議論するのはちょっと早過ぎるかもしれませんが、例えば基本計画の中で対応措置に関する基本方針というものを書くことになっていますね。そこにそういうことを、先ほど言いました国際法上認められた、何といいますか、ルールのもとでの自衛権の行使に対する支援活動であるということをこの基本方針の中に書いておくということは、私は少なくとも必要なことだというふうに思っております。



いずれにしましても、やや話が技術的になりましたのでこの辺にさせていただきたいと思いますが、まだ少しそういったことについて詰めていく必要があるんじゃないか、そんなふうに思っているところであります。



それでは、次に参りたいと思いますが、この法律の中で具体的な話を幾つか取り上げたいと思いますが、まず、時限立法にしているということについて御質問したいと思います。 この法律を時限立法とした、つまり原則的には二年で効力を失う、しかし、必要があるときには別の法律で二年以内の効力を延長できる、こういう仕組みになっておりますが、なぜこういう形で時限立法という形をとられたのか、お答えいただきたいと思います、総理。

小泉内閣総理大臣 この九月十一日に発生したテロ事件に限定しているんだから期限を区切ってもいいのではないかという、いろいろな意見に配慮したわけであります。

岡田委員 事件に限っているのであれば、むしろ期限を切らなくてもいいというのが普通の考え方だと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 そういう考えも十分理解できます。

岡田委員 何となく質問する意欲がなくなるわけですが、ただ、私は、この時限にしたことは評価すべきだというふうに思っています。与党間のいろいろな交渉の中で二年ということになりましたが、私どもは一年ということを言っているんですが、いずれにしても、こういう時限をつけたことは評価されるべきだ。



それはなぜかというと、やはりこの法律は、今までの考え方からすると、もちろん憲法の枠の中でやっていることではありますが、我が国の自衛隊を非常に限られた場合しか海外に送らないという考え方からすると、かなり大きく踏み出したものであることは間違いがないということだと思います。



総理が何度も説明されているように、武力行使は行わないという、そのことで憲法上の制約はもちろん乗り越えているわけですけれども、しかし、あれだけ議論したPKO、そして周辺事態法。周辺事態法は、日本周辺、日本自身の安全に重大な影響があるという限定がついていましたが、今回は、かなり遠くまで自衛隊を、武力集団である自衛隊を出す、実力集団である自衛隊を出すということですから、本来であればもう少し冷静な議論が、時間をかけて、一年、二年かけて議論すべき話だったのだろうと思うのですね。



例えば、将来的ないろいろな議論としては、我々は周辺事態法をつくりました、周辺事態法のときにいろいろな議論をいたしましたが、周辺事態、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態ということに限定をしてああいう法律をつくりました。しかし、我々は武力行使を行わないわけですから、憲法上は、もっと幅広く、例えば米軍に対する支援活動をするということも法律はできるわけですね、同じ考え方であれば。日本周辺じゃなくて、アジア太平洋全体に、日米同盟に基づいて、あるいは日米同盟、安保条約は超えるかもしれませんが、自衛隊が後方支援していく。あるいは、世界全体というのもあるかもしれません。いろいろな議論があり得ると思うのです。そういう議論をきちんとするには、やはり一年、二年、私は時間をかけなきゃいけないと思うのです。



しかし、今回はその時間がない、そういう中で急いでつくった法律ですから、いろいろな意味で安全を見ておかなきゃいけない。その安全の一つが今回のこの二年、我々は一年と言っていますが、その時限立法だ、そういうふうに考えるわけですが、そういう認識でいいのでしょうか。いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 今のような認識も、私は十分理解できます。

岡田委員 どうも総理はこの時限立法を余りお好きじゃないのじゃないかという、聞いてきてそういう感じを受けますが、私は非常に評価をしているのですけれども。



いずれにしましても、民主党としては、今言ったような、緊急に必要な法律で、基本的な議論を少し横に置いてやっている話でありますので、そういう意味で期限を切ることは重要である、必要である、それは二年というよりはむしろ一年じゃないか、そんなふうに私どもは考えておりますので、そのことを申し上げておきたいというふうに思います。



次に、国会承認の問題について御質問したいと思います。



まず、ちょっと事実関係を確認しておきますが、この国会承認というのは、我々、非常に簡単に基本計画そのものの国会承認であるかのように議論しておりますが、より正確に言うと、周辺事態法においては、基本計画に基づく対応措置の実施に対する国会の承認、こういうことになっておりますので、私どもも、この法律において同じように国会承認を必要とすべきだ、こういうふうに言っておりますが、それは周辺事態法と同じ仕組みを考えておりますので、正確に申し上げれば、基本計画そのものに対する承認ということではなくて、その対応措置の実施に対する承認である、そのことをまず申し上げておきたいと思います。



そこで、総理は、きのうもいろいろな議論の中で、国会承認は必要ないということをおっしゃいました。その中で、今の政府というのは選挙で選ばれてきているのだ、だから、そこで実際の基本計画をつくるのであれば別に国会で承認を得る必要はないのだ、こういう趣旨の答弁をされたわけですが、それは一日たっても同じようなお考えですか。

小泉内閣総理大臣 これは、政府を信用する、信用しないの問題にもかかわってきますし、時限という問題もあるし、この法案の目的という、いろいろな問題がかかわってくると思いますが、まず、基本計画というのははっきり枠がはまっているわけであります、この法案の趣旨から。武力行使はしないとか地域とか戦闘行為に参加しないとか、そういう基本計画を、この国会の議論を踏まえて極めて限定された中で、憲法の範囲内で基本計画を立てるわけでありますので、そういう点については、私は、政府というものも裁量権を持っていいのではないかと。



国会の権利もあります。しかし、政府としての行政権、判断、しかも時限立法、二年ですから。今の日本の政府というのは極めて民主的な手続で選ばれているわけですから、私はそういう点においては、政府を、どうしてもやることが信用できないという方は別ですが、信用できないのだったら次の選挙で倒してやろうという声も出てくるでしょうし、今の政府において国民が圧倒的に反対するようなことをやるとは思わないと。与党もあるし、野党もあるし、御議論を積み重ねているのですから、その中での行政裁量権、その程度は与えてもいいのではないかと私は思っております。

岡田委員  私は、今の総理のお話に対して異論があります。きのう安住議員もいろいろ申し上げたわけですが、別の角度で申し上げますと、それじゃ、もし政府がきちんとやっているから国会の承認というのは要らないと言うんなら、なぜ防衛出動や治安出動では国会承認を条件としているんでしょうか。お答えいただきたいと思います。

小泉総理大臣 今回は、全く新しい事態なんですよ。周辺事態法じゃ対処できない、PKO法では対処できない、治安出動では対処できない、全く新しい形のテロ攻撃なんです。そういう形での新法ですから、それはしかも時限立法ですから、私は、行政の裁量権というのはこの審議を踏まえて与えられてもいいのではないかと政府としては考えているのです。



それを違うという意見を否定しようとは思いませんよ。承認を必要とするんだという意見もわかっていますけれども、そういう中で、あえて私ども政府としては、政府の裁量権を与えてくれてもいいんじゃないかということを言っているわけです。

岡田委員 周辺事態法のときも、これも各党の協議の中で修正で国会承認というのが入りました。あのときも申し上げたことでありますけれども、やはり私は、基本はシビリアンコントロール。シビリアンコントロールと言うときに、政府によるコントロールもありますけれども、国会によるコントロールというのも重要なものについてはある。何が重要かといえば、やはり防衛出動にしろ、治安出動にしろ、PKOにしろ、あるいは周辺事態法にしろ、実力集団である自衛隊を動かすときには基本的に国会のコントロールというのをかみ合わせているという、これは我が国の基本的考え方だと思うのですね。いかがでしょうか。

福田国務大臣 委員のおっしゃることはよくわかります、わかりますけれども、今回のこの法案は、米国の多発テロ、これに対応するという、こういう非常に限定的な特別措置法であるということでございまして、この対応措置の必要がなくなれば廃止をするということが前提になっているのです。



また、実行上、この防衛出動とか周辺事態についても国会承認が求められるのはいずれもその実施についてでございまして、今回の法案の対応措置の多様性、複雑性、流動性の観点からしますと、具体的な措置は行政府の責任において迅速になされることが、これが実際的であるということが一つあります。



これは、非常に限定的な立法措置であるということでありますけれども、法案成立後は直ちに機動的に対応できるようにしていただきたい、こういうこともございます。基本方針を含む基本計画は、これは国会報告をするというようなこともございますし、この法案どおり御理解いただければと思っております。

岡田委員  周辺事態法でも、先ほど言いましたように、計画そのものじゃなくて、それに対する対応措置が承認にかかわらしめられているということですから、そこは同じなんですね。 私は、余りこの問題を細かくやるつもりはありませんけれども、シビリアンコントロール、つまり自衛隊という実力集団を動かすときには、基本的には慎重に判断しなきゃいけないと。それは、慎重にという意味は、政府もそうであるけれども、やはり国会ということもかみ合わせるというのが基本的に我が国の法制の今までの例であるということを申し上げておきたいと思います。



これに関してもう一つだけ申し上げさせていただくと、例えば、十月九日の参議院の予算委員会において、公明党の山口那津男議員が、与党ですけれども、こういうふうに最後言っておられるのですね。国会がどのような関与をすべきかということについてはまだ議論の余地があっていい、与党からもそういう意見が出ているということであります。我々もそう思っています。



そういう中で、ここはもう一度しっかり考えていただきたい、そういうふうに思うのですが、坂口先生、済みません、今申し上げたのは、公明党の各質疑者、質問者の中で国会承認に対して積極的なお考えをお持ちの方が実はかなり多いのじゃないかという印象を私は受けております。先ほど言いました参議院の予算委員会において山口那津男議員も、国会がどのような関与をすべきかということについてはまだ議論の余地があっていい、総理が相当答弁された後もそう言って食い下がっておられるわけですね。



考えてみれば、周辺事態法のときにも、公明党は国会承認を入れるべきだということで頑張られた。我々と一緒に頑張られたわけです。もっとさかのぼれば、PKOのときは当時の野党はみんなそれを主張したわけですね。そういうことですから、私は、これは公明党が頑張れば、我々も一緒に、協力しますから、十分国会承認ということになり得る話だと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 突然の御指名でございますが、私は今、公明党を代表してその意見を述べる立場にはありません。小泉内閣の一員としているわけでございますから、小泉総理と寸分のすき間もないというのが現在の立場でございますけれども、しかし、先ほどからずっと岡田議員の御発言をいろいろ聞かせていただいておりまして、非常に親近感を持ちながら聞かせていただいておるのも事実でございます。

岡田委員 今の親近感というのは、同じ三重県出身だからということではなくて、中身で親近感を持っていただいているということを期待しておきたいと思います。



それでは次に、任務の場所的な範囲についてお聞きしたいと思っています。



ここは、問題はパキスタンです。パキスタンに行くのかどうかということですね。その件に関して、私は昨日の外務副大臣の御発言というのは非常に重要だと思います。



ここであえて繰り返させていただきますが、パキスタンから帰ってこられて、内情は非常に複雑である、大統領は国運をかけてタリバンとの断絶を決断した、そのことの国内的な影響はあるだろう、民族も複雑だ、大変な騒擾状態が起きる可能性がある、今は平穏だがあすは何が起こるかわからないというふうに述べられました。



田中大臣、この認識は共有しておられますでしょうか。

田中国務大臣 きのう、杉浦副大臣が今委員がおっしゃったような御報告をしたこともわかっております。



そして、きのうのお昼に、休憩時間でございましたけれども、沼田大使のところに電話をかけました。ただ、そのときは、何が起こるかわからないというような、それは杉浦副大臣があのとき、いらしたときの個人的な印象かと思いますけれども、昨日の一番直近の大使からの報告では、きのうも申し上げましたけれども、今、日本で言っているような平穏とは違いますけれども、しばらく平穏な状態が続いているという報告を受けました。

岡田委員 今の外務大臣の御発言は、今は平穏だがあすは何が起こるかわからないという副大臣の答弁を否定されるわけですか。

田中国務大臣 もっと正確に申しますと、否定する、しないではなくて、きのうの言葉は副大臣の個人的な印象でいらっしゃるというふうに思います。今現在の報告は、全体として見ると、パキスタン情勢はコントロールされているというような表現でございます。

岡田委員 現在の話と、しかしあすは何が起こるかわからないという話は、これはちょっと違いますよね。あすは何が起こるかわからないというところは、外務大臣として副大臣の御発言を明快に否定されるんですか。

田中国務大臣 否定するしないとかそういうことではございませんで、今後のパキスタンの状況につきましては、まだ、もちろん予断を許さない部分もあると思いますし、どういう状況が起こるかわかりませんので、その推移につきましては、引き続き注意深く注目をしていかなければならないというふうにはもちろん理解しております。

岡田委員 大臣は今、まだとおっしゃったが、むしろこれからだというのが常識だと思うんですね。これから緊張感が高まっていく、そのことは私は外務大臣も否定できないだろうと思うんです。



そこで私は、昨日の副大臣が、実際に現地を見てこられて、そして、今は平穏だがあすは何が起こるかわからないというふうにこの国会で答弁された、そのことのやはり私は意味は非常に重いと思うんですね。



今回のこの法律の中で、こういう規定がありますね。防衛庁長官は、実施区域の全部または一部がこの法律または基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、実施されている活動の中断を命じなきゃいけない。



つまり、この法律で決めている、要件を満たさないというのは、基本的に、戦闘行為がない、一言で言えばそういうことだと思いますが、それがどうもきのうの杉浦副大臣の話を聞いていると、あす何が起こるかわからないという地域だったら、とても戦闘地域と一線を画したような、あるいは将来においてもそういうことは起こらないということは言えないんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょう。

中谷国務大臣 おっしゃるとおり、その活動をやるのかやらないかという点の判断につきましては、現実に戦闘行為が行われているかどうか、また、この期間においてその活動が行われるというふうに認めるかどうかということでございます。

岡田委員 だから、パキスタンは、きのうの発言を踏まえると、とても今自衛隊を出せるような状況にはないんじゃないかと聞いているわけです。

中谷国務大臣 まだパキスタンに自衛隊を派遣するということを決めたわけではございませんので、お答えしかねます。

岡田委員 この法律で今までと違う点は、公海上じゃなくて第三国まで広がりますよ、ここが一つの大きなポイントなんですね。憲法の禁ずる武力行使の関係からいっても、武力行使そのものじゃないかもしれないけれども、結果的にそれを侵してしまうような可能性がより高まっている、この法律は。だからこそ私は聞いているわけです。



そして、今、じゃ第三国といいますけれども、ディエゴガルシアとパキスタン以外に具体的に何か話があるんですか。今我々は一般的な法律の話をしているのではなくて、この具体的な法律についての議論を、先ほど総理もおっしゃっているようにこの法律は具体的な法律ですから、それについての議論をしている。そういう中で、パキスタンに行くか行かないかはわからないからお答えできないというのは、私は答弁じゃないと思いますよ。もう少し明快に述べていただきたいと思います。

中谷国務大臣 仮にパキスタンに行くとしても、パキスタン政府の同意が必要でございますし、また、そのときの治安状況、いかなる態勢をもって政府が国内をコントロールするのか、また難民の状況はどうであるのか、そして諸外国の動きはどうであるのか、そういうふうな情報をすべて判断をして、派遣する場合には決定するわけでございまして、現状また将来の動向等につきましては、当然のことながら、十分情報収集をして注視しながら、やるのかやらないのか、その時点で基本計画を立てて実施されるというふうに考えております。

岡田委員 一年、二年先の話をしているんじゃないんですね。この法律が成立をすればもうすぐ行動に移るわけでしょう。だからこそ、今急いで審議をされているわけですよね。



私は、まず申し上げておきますが、じゃ第三国に行くなとかあるいはパキスタンに行くな、それを法律論として言っているんじゃないんです。それはまた、パキスタンでも将来いろいろな状況が変わり得るかもしれない、変化はあるだろう。だから、将来的にパキスタンに行くべきでないということを言っているんじゃないんです。しかし、当面、実施計画をつくるときに、やはりパキスタンには行かないということを前提にした実施計画にすべきじゃないか、そういうふうに申し上げているわけですが、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 将来の話ですから、今の時点で私は責任を持って言うことはできません。例えば、米国の対応次第によってはパキスタン国内の情勢が大いに変化するわけでありまして、岡田委員の言うとおり、安全かつ効果的な活動が実施し得るような条件もできるかもしれませんし、今以上に混乱して、非常にそれが実施できないような状況にあるかもしれません。これは、米国を初め諸外国の動向をよく見きわめる必要があるというふうに思います。

岡田委員 さっき長官が同意が必要だからとおっしゃったのは、私はまず納得できないということを申し上げておきます。パキスタン政府が同意すればやみくもに出していく、そういうことはまず認められません。まず日本が主体的に必要性とそして安全性を見きわめて判断する話しだ、そういうことだと思うんですね。もちろん同意というのは解除条件かもしれませんが、しかし基本的には我々が決めることだ。



そういう中で、もちろん、状況がいろいろ変われば、私は先ほど申し上げましたように絶対にだめだと言うつもりはありませんが、今の、あしたはどうなるかわからないというふうな状況を踏まえれば、今の時点ではパキスタンには出せませんねというふうに申し上げているんです。



もう一度答弁いただきたいと思います。

中谷国務大臣 まず、この活動を実施するかどうかにつきましては、政府が基本計画をつくって今後のことを決めるわけでございますので、私も私の所感は申し上げますけれども、政府全体の判断によるというふうに思っております。



それから、パキスタンの同意に関しましては、この法律におきましても、実際に実施する活動地域を相手国と協議して決めるというふうになっておりまして、あらかじめ我が国がこういう考えがあるということを相手国に示して、それに対する同意をいただけるということでございまして、非常に重要な意味を持つというふうに思います。

杉浦副大臣 パキスタンの状況について、私の発言がいささか誤解されている部分があるんじゃないかと思うのでございますが、パキスタンの状況は予断を許さない部分があるという意味で申し上げたわけでございます、非常に複雑でございますが。



ただ、今のところは民間航空機も全く普通のとおり飛んでおりますし、またムシャラフ大統領を初め軍関係者も実は十分コントロールされていると、一部テロ分子と通じている勢力がおりますが、ただそれはごく一部であって、十分コントロールしているというふうに当局は言っておられますし、事態は現在のところ平穏に推移している、ただし、予断を許さない状況である、国内状況であることは間違いないという趣旨で申し上げたわけでございますので、御理解いただきたいと思います。

岡田委員 きのうの御発言とは大分違うなというふうに思いますし、民間航空機も、正常にと言いますが、欠航が相次いでいるんじゃないんですか、今は。



ですから、これ以上申し上げませんが、総理、最後に、もちろんこれから状況がどう変わるかによって、それは、基本計画を実際につくるとき、あるいは自衛隊を出すとき、そのときの判断に最後はかかるんだと思いますが、今の状況を見ると、相当慎重にパキスタンについては考えなきゃいけない、私、そういうふうに思いますが、いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 この法律は地域を限定しておりません。そういう法律を考えて、今の時点で、この地域には行かない、この地域には行くということは特定できないということを御理解いただきたいと思うのであります。その状況を見て判断するしかない。

岡田委員 非常に官僚のような御答弁なんですけれども、この法律が具体的なことを対象にしておって、そして実際の対象、第三国といっても、それは先ほど言いましたように、今のところ想定されるのはごく限られているということをもう一度申し上げておきたいと思います。この点はなお議論させていただきたいと思います。



それから、次に参りますが、武器弾薬の輸送について。



きのうの総理の御答弁を聞いておりまして、私、まず事実認識がちょっと違っているんじゃないかというところがありましたので御質問申し上げますが、総理は、武器といってもいろいろあるんだという中で、ヘルメットとかトラックとか、こういうふうにおっしゃいました。そういうヘルメットやトラックもここで言う武器弾薬に当たるというふうにお考えですか。

小泉内閣総理大臣 今回のこの法案については、今までの武器三原則とは違った解釈をしておりますが、武器弾薬とは何かという議論をし出しますと、防弾チョッキが武器に当たるのかどうかとか、あるいは銃にしても組み立て製の銃があります、この部分は武器なのかどうなのかとか、細かい技術論に入っちゃうんですよ。



そういうことは余りにも技術的に過ぎるし、それよりも、私は、大枠として、戦争に行くためではない、武力行使は行わない、戦闘行為には参加しない、そういう中での、隊員だけの自己保全じゃなくて周りの同僚、同じ部隊で活躍している、そういう人たちが万が一危難に遭った場合は救助できるような武器というのは限られているんじゃないか、その辺は常識の判断でできるのではないかということを言ったわけです。



常識というとけしからぬと言う人がいますけれども、大枠がもう決まっているんですから、そういう中で武器はどれかと言い出すと切りがない。どこまで避難していいのか、さっき言ったようにメートルで、十メートル、二十メートル、五十メートル、百メートルあるうち、そこをやり出すと余りにも細かい議論になって、それは武器といえば、確かに刀も武器ですよね、火器はいいけれども、物資を運ぶ場合に安全な武器もあるんです、知らない人がやったら爆発する武器もあるかもしれない。これをやり出すと切りがないんですよ。



そういう議論はもうお互い常識の範囲でできるのではないか、そこまで技術的にやってどうかなということをきのうの答弁で言ったわけであります。

岡田委員 恐らく総理はやや誤解されていると思うのですが、武器輸出三原則における武器というのは、確かにかなり幅広いもので、厳格に規制をしておりますけれども、自衛隊法上の武器については、既に政府見解が示されているわけですね。その政府見解というのは、もちろん法律に書いてあるわけではありませんけれども、「火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置等」ということになっていまして、そういう意味では、そんなに細かい、紛れたような話にはならないと私は思うのですよ。もし必要があれば、今のこの政府見解を法律の中に定義として書いてもいいわけですね。



私は、こういうものを運ぶということはやはり避けるべきだ、こういうふうに思うんです。



総理のそのときの最大の反論の根拠が、いや、紛れてよくわからないという話だったものですから、今申し上げたように、はっきり分けられますよということを申し上げた上で、それでもなお、この武器弾薬の輸送というのはお認めになるんですかということを改めてお聞きしたいと思います。

福田国務大臣 現時点においては、米国初めこの活動に参加している諸外国の軍隊などが今後どういうオペレーションをするかわからぬ、こういうことでございますので、日本側の対応措置に対するどういうニーズが発生するか、これはもちろんわからないわけでございます。しかし、武器弾薬の輸送、これは周安法の支援内容にも含まれておることでございますし、また、諸外国のさまざまなこん包方式というものがございまして、このこん包方式から推測するに、物資を一々確認するという作業、これは大変なことだと思うんです。



一つ具体的な例で申し上げますと、例えば、百個コンテナがあります、そのうち十個が武器弾薬が入っている、こういうケースを想定した場合に、日本の船でこれを輸送しようといった場合に、武器弾薬はだめで、ほかのものはよろしいということになりますと、船を二隻調達しなければいけない、こういうことになるわけですね。ですから、そういうことが果たして許されるかどうか。また、武器弾薬は日本は運ばないということになれば、ほかの国に頼まなければいけない、こういう必要性も生じてくるわけでございます。



そういったようなことがありますので、なかなかこれは、これを分けて輸送するというのは、こういう活動におけるオペレーションにおいては非常に困難ではなかろうかということであります。

岡田委員 とても技術的な御説明だったと思うんですけれども、やはり私は、ここは一つはメッセージ性が非常に大事だと思うんですね。つまり、日本は武器弾薬の輸送まではしませんということが、私は、日本の支援活動について、ある意味では理解をしながらも、しかしやはり一〇〇%納得できないでいる中東諸国、複雑な気持ちで見ている中東諸国に対して、いや、日本は武器弾薬の輸送はしないんですよ、そこではっきり線を引きましたよということは、私は、きちんとしたメッセージとして伝わると。



今まで日本が、この委員会の場でもるるありましたように、中東に対してアメリカやヨーロッパとは違うスタンスにある。パレスチナにも随分経済協力もしてきた、イランにもしてきた、そういう日本としての、外交上今まで多大の税金もつぎ込みながら、努力もつぎ込みながら、もちろん外交官も本当に頑張りながら築き上げてきたこの状況を、こんなことで壊すのはもったいないと私は思うんですよ。 だから、ここはしっかりメッセージを送るためにも、武器弾薬は運ばないということにすべきじゃありませんか。

福田国務大臣 武器弾薬の輸送、これをしないということになりますと、この輸送業務全体についての日本の信頼度というものが落ちるんではないかというふうに思っております。



ですから、やはり効果的な輸送というものを実現するために、ぜひこのことは活動の中に入れておいていただかなければいけない。しかし、このことについては、委員の御指摘もございます、私もそう考えますが、慎重な配慮をもってやらなければいけないと考えております。

中谷国務大臣 今官房長官が言われたことに補足をいたしますけれども、どういう実害があるかという一例として、数年前にPKOでモザンビークで輸送調整支援をいたしました。そのときに飛行場にいて、国連の飛行機がやってきたときに、各国が忙しいさなかにその荷物を一生懸命おろしているんですね。そこで、その空港にいた日本のPKO要員が、ふだんからつき合っているから、忙しいからちょっと手伝ってくれと言われたんですけれども、いえいえ、日本は武器弾薬は運べませんというようなことで、中に何が入っているかわかりませんけれども、そういう一般の物資をみんな一生懸命汗水垂らしながらやっているさなかに平然と見ているしかなかったというようなことで、非常に心苦しい思いがしたというようなことが言われました。



つまり、そういう、武器弾薬はだめであるということでありますと、各国が一般的に一生懸命荷物を運んでいる業務すら日本が現場においてできないというような実害もございますので、その点も勘案されて、実際にその地域に行った隊員がどのような苦労をするのか、こういう点も考えながら法案の御審議をいただきたいというふうに思います。

岡田委員 そういうたまたま起きた具体的なことをもって御説明になるのは、私は大臣が御説明になることじゃないと思いますよ。



先ほど言いましたように、日本の外交のその築き上げてきたものをこういうことで壊していいんですかということが第一点。



もう一つ申し上げると、憲法の禁ずる武力行使との関係。もちろん、武器を輸送することは周辺事態法で認められておりますが、したがって、そこで一つの整理をしているわけですけれども、しかし今回の場合は、公海上じゃなくて第三国まで行くという、そういう中でより憲法との抵触のおそれが高まる、そのことを私は憲法に違反するということを言うつもりはありませんが、しかし、急いでつくる法律ですから、少し安全を見た形にしておくことが私は必要なことじゃないか、そういう観点で申し上げております。 官房長官、どうぞ。

福田国務大臣 私、今、武器弾薬の輸送ということでもって、ここに集中して、そこだけ考えてしまうといろいろ疑念が生じるとかいったようなこともあるかもしれぬけれども、やはりこれは原点に立ち返って考えてみる必要があるんじゃないかと思います。



それは何かと申しますと、やはりこれはテロの根絶ということじゃないかと思います。テロの根絶のために諸外国は協力しているわけですね。そこに日本が有効な協力をするということであり、そしてまた、この協力は武力の行使に当たらない協力である、そういうように考えるべきではないかと私は思っておりますので、つけ加えさせていただきたいと思います。

岡田委員 いろいろな御説明がありますが、いずれも説得力があるとは思えませんし、一方では、慎重に考える、慎重に考えるということは、実際はやらないということなのかなと思いますが、それなら今までの説明は全部破綻するわけですね。だから、私はやはり、慎重に考えるとおっしゃるんなら法律上できないことにしてしまうべきだ、そういうふうに重ねて申し上げておきたいと思います。



なお、昨日、河合委員の質疑の中でも、河合委員も、総理のいろいろな御説明があったけれども、この点につきましては、この国会の特別委員会の審議の中でさらに国民の理解を得るための議論が必要であると考えますというふうに述べられています。つまり、与党の中でもそういう議論があるんだ、それだけ微妙な問題なんだということをもう一度申し上げて、ここはぜひ法案修正をして、武器弾薬の輸送はしない、こういう形にしていただきたいと申し上げておきたいと思います。



それでは、次に武器の使用基準に参りたいと思います。武器使用の問題は、総理はきのう、常識の範囲で判断するというようなことをおっしゃいましたが、若干、私は新聞の書き方も総理の御発言を誤解しているんじゃないのかなというふうに思うところもあります。



つまり、これは、憲法の禁ずる武力行使に当たらない武器使用というものをどこで線を引くかという、いわば憲法問題なんですね。



総理は、この法律を前提として武力行使しませんということを何度もおっしゃっています。その具体的な、私は、ある意味では最も重要な部分がこの武器使用の問題じゃないかというふうに思うんですね。そういう意味で、ルールをきちんとしておくということは大事なことだ、別に常識で判断していい問題じゃない、そういうふうに思いますが、私は、総理の発言も私と同じような趣旨だったようにもきのう聞いていて思ったんですけれども、もう一度御発言いただけますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 そうなんです、実際は。



誤解されている面もあるんですが、まず武力行使しない、戦争に行くんじゃない、そして戦闘行為にも参加しない、そういう中にあって、自己保全的な、周りの一緒に働いている、作業している人たちに危難があった場合に黙って見ているわけにいかないんじゃないだろうかという中での武器使用は何かということになって、それをやりとりすると余りにも技術的になるじゃないかと。そういうことは、もう今までに何回もこの議論、過去やってきたわけで、それは常識の範囲内でできるのではないかなということを言ったまでであって、余り技術論に陥ると、この本来の法律の趣旨に対して大きなところが見えなくなってくるんじゃないか、政治家同士の議論としていかがなものかということを言っているわけであります。

岡田委員 私は、今回の場合に、例えば難民がいる、その難民を自衛隊が管理しているというか、自衛隊の管理のもとで難民がいるというときに、その難民が攻撃されたときに、自衛隊自身が攻撃されてないからといってそれをみすみす放置するということは、我々の常識からいうと確かにおかしなことですね。そのことは私はそう思います。



しかし、だからといって、常識だから、必要だからということのみを考えてきちんとした線引きができないということになると、それはまた憲法の禁ずる武力行使をいつの間にか次第次第に侵してしまうということになる。だから、そういうときには、私はむしろ、もしきちんとした線引きができないんであれば、線引きができるようなところまでしか自衛隊は活動しないということにする、こういうことだと思うんですね。



問題は、今回のこの法律の規定が、線引きとしてきちんとしているかどうか、こういう問題だと思います。



これは法制局にお聞きした方がいいかもしれませんけれども、私は、当選してそのすぐ後にあったPKO国会を思い出すわけですけれども、あのPKO法のときの大きな争点として、この武器使用と武力行使の問題がありました。



平成三年九月二十七日の国際平和特別委員会理事会提出の政府見解の中でこういうふうに言っているんですね。憲法の禁ずる武力の行使に当たらない武器使用があるんだ、そして、それは、自己または自己とともに現場に所在する要員の生命、身体を守ることは、いわば自己保存のための自然権的権利であって、武力の行使に当たらないと。



今までの答弁をお聞きしていると、基本的にこの考え方を今回も踏襲している、こういう理解でよろしいんでしょうか、法制局。

津野政府特別補佐人

今先生のおっしゃったとおりでございますが、昨日、この前提条件の若干御説明が足りなかったかもしれませんけれども、考え方としては従来どおりの考えでございます。

岡田委員 ちょっとわかりにくいのは、その自然権的権利というところなんですね。



自然権というのは、人間固有のもの、固有の権利。例えば自分の命を守る、それはいかに国家といえどもその権利を奪うことはできない、そういう意味で自然権というお言葉を使っているんだと思うんですが。自分が攻撃されたときに武器を使って自分を守る、これが自然権だ、これはわかります。同じように、国家が攻撃されたときに自衛権を発動して守る、個別的自衛権を発動する、これも自然権、こういう説明を今までされていますね。



それでは、難民が攻撃されたときにその難民を救うために武器を使うということが、これは自分を守るために直接つながらないとしたら自然権と言えないんじゃないかと思うんですが、ここはどういうふうに説明をされているんでしょうか。    〔委員長退席、久間委員長代理着席〕

津野政府特別補佐人 お答えいたします。



防護、いわゆる今申しました、だれを、どういう人を対象として自然権として武器を使用することができるかということでございますけれども、それは、一つの考え方としまして、いわゆる自己保存のための自然権的な権利として行使するのは、まず自分、自己がございます。それから、第二にございますのは、例えば自己とともに現場に所在している人、そういう人たちも当然、当然といいますか、自己と一緒に、自己の危険を一緒に共有しているわけでございますので、自己に対する危険と同様な危険に直面しておりますので、そういう人たちについても防護するということは、これは従来から、自己とそれから自己とともにその現場にある自衛官、そういうようなことで従来から入ってきているわけでございます。



それからもう一つは、その場合、現場に入っている人たちの中でも、やはり自衛官の職務、そういったものと密接に関係がある、そういった関係がある人たちが、守る必要があるという部分がございます。そういう人たちを、いわゆる管理のもとに入ったというようなことで、今回対象にしているということでございます。

岡田委員 今の説明で、同僚の自衛官が危険を共有しているというところまでは私はわかりましたが、最後の一番肝心な、今回の法律で初めて認めた概念に対する御説明がよくわからなかったんです、実は。もう一度お答えいただけますか。

津野政府特別補佐人 この、先ほどのにつけ加えましたのは、不測の攻撃を受けた場合に、当該自衛官とともに行動をして対処せざるを得ない立場にあるというような自衛隊員以外の者が自衛官と一緒に共通の危険にさらされた場合に、その現場において、その生命、身体の安全の確保について自衛官の指示に従うことが期待される関係にある、そういうようなときにあるときは、その当該自衛官において、自己と一緒にその者の生命または身体を防護するために武器を使用する、そういうことは、なお、いわば自己保存のための自然権的権利の範疇に入るであろうということで整理をしているわけでございます。

岡田委員 ちょっと私、今の説明では納得できませんね。 私はむしろ、ですから、今回のような難民等の場合というのは、自分自身の自然権じゃなくて、自衛官以外に、自分を、みずから守るすべを持たない人たちが日本の自衛隊の管理下にあるというときにそれを助けるということは、いわばヒューマニズムの視点から当然じゃないかというような論理立てができるんじゃないかと思うんですね。その方が常識にかなっていると思うんですよ。ですから、そういう形で御答弁をちょっと考えていただけないか。今の、申しわけないですが、法制局長官の御説明だと、私ちょっと納得できないです。



ぜひここは、やや技術論になりますから、テレビの入っている場で余りすることもどうかと思いますのでこれでやめますが、ぜひ政府としての見解をしっかり煮詰めていただいて、そして平成三年九月のPKO法のときにも特別委員会の理事会に政府見解は提出されているわけですね、紙で。そういう形で政府の見解を、我々もわかるような論理的な見解をまとめていただいて、ぜひ提出をしていただきたい、こういうふうに思います。委員長、いかがでしょうか。

久間委員長代理 後ほど理事会で協議いたします。

岡田委員 それを見た上で、我々はこの新たな武器使用の拡大ということを認めるかどうかということを判断させていただきたいというふうに思います。



それでは、時間も大分押してまいりましたが、個々の話はこのぐらいにさせていただいて、少し総論的な話をさせていただきたいと思います。



私は、今回のこの法案は、これはこれで中身はこれから詰めなきゃいけませんが、基本的に新しい法律が必要だ、こういうふうに思っているということは何度も申し上げているわけです。しかし、今回の法案というのは、自衛権の行使、アメリカの個別的自衛権の行使、あるいはNATOの集団的自衛権の行使ということを前提にして組み立てられている法案だと思うんですけれども、本来、世界の平和を守っていくために、国連中心の集団的安全保障という考え方、それから各国の自衛権の発動という考え方、これはどういう関係にあるべきだ、総理はどういうふうにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 まず、国連中心、集団的自衛権が必要だという観点に立っても自衛権の確立が大事だと思います。その国、国が責任を果たす。自分たちは何にも力のある自衛隊なり軍隊なり組織を持ちませんよと他の国にお願いする前に、自分でできることはやります、できるだけの自分の体制をつくります、まずみずからの国はみずからで守るという意欲のない国にどうして他の国が援助の手を差し伸べるでしょうか。そこが必要なんです。他国が守ってくれるかどうか心配するよりも、まず自国のことは自分たちでやりますというこの姿勢を見て、初めて他国が援助の手を差し伸べると思うのであります。それが国連中心です。自分たちは何も用意していませんよ、何かあったらみんな一緒にお願いしますという態度でなく、そこをまずはっきりしておかなきゃなりません。その上で集団的自衛権、国連中心というのはあるのではないでしょうか。



国連中心だったらば、まず自国はこれだけのことをやります、他国にもし危険があった場合に、世界の平和を守るためには自国はこれだけのことができます、しかし、自国に危険があった場合は、自分だけでできない場合は、自分は一生懸命やりますけれども他国もお願いしますというのが、私は集団的安全保障じゃないかと思います。その姿勢をはっきりして、自分のことはやりません、あとお願いしますというのだったら、まさに国際社会から信頼を失う、国際社会の中で名誉ある地位を占めることはできないと思います。

岡田委員 自分のことはまず自分できちんとやるべきだということは、それはそのとおりですね。しかし、国連憲章の理念といいますか、基本的な考え方は、どういう考え方に立っているのでしょうか。



現実にどうかという問題はありますけれども、私は国連憲章そのものは、やはり国連中心の安全保障、悪いことをする国が出てきたらみんなでそれをやっつけるんだ、やっつけるんだという意味には武力行使も含めて最終的にはやりますよ、しかしそれができるまでの間は自分でまずやってください、そのことは認めますよと。そういう意味で、中心は、軸は国連中心の集団的安全保障、しかし、それまでの間のものとして、いわばサブとして、副として個別的自衛権、集団的自衛権の発動、こういう考え方に国連憲章自身は立っているのじゃありませんか。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 正式に集団安全保障と自衛権については、これは今議員が言われたように、国連憲章第五十一条において「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」と規定されているわけです。



そして、この規定は、自衛権の行使は集団安全保障が機能するまでの暫定的なものであると国連憲章が想定していることを示すものと考える、他方、集団安全保障の担い手として予定された憲章第四十二条及び第四十三条に基づく正規の国連軍がいまだ設立されていない、ここなんですよ。正規の国連軍はいまだ創設されていないのですよ、国連中心といっても。そこが問題なんです。



あとのことはまたいろいろあれします。

岡田委員 まさしくそこなんですね。



しかし、湾岸戦争のときは、これは正規の国連軍ではありませんけれども、国連憲章の例外としての多国籍軍ということを安保理で認めて多国籍軍を編成した、こういうことですね。ですから、正規じゃありませんが、それに準ずるような形で多国籍軍ができたと思うのですね。 私は、もちろん、国連をつくったときの理想、これは大事だと思うのですね。総理おっしゃるように、しかし現実には動いていないじゃないか、それはそのとおりですよ。しかし、やはり基本的にはそういう考え方に立たないとだめだ。



つまり、自衛権の行使というのは、最初の議論に戻りますが、正当な自衛権の行使をやっているうちはいいけれども、しかし、だれも侵略戦争をやると言って他国に武力侵入する国はないのであって、結局は、我が国も、かつても含めて自衛権の行使という名のもとに戦争が始まっている。だから、そういうことを防止するためにも、国連の枠組みをつくったというその理想というのは、私は絶対忘れてはいけないことだと思うのです。



総理の答弁をお聞きしていると、そこがすっ飛んでしまって、何か、自衛権の行使というのは当然だから、これは当然であります、断固支持します、例えば今回のアメリカの武力行使に対しても断固支持するとおっしゃるけれども、私は、やはりそこに政治家として、本来であればこういうことは望ましくないんだ、認められてはいるけれども、一番いいのは国連中心でやっていくことなんだ、しかし、それは理想だけれども現実はなかなかそういかないんだという、いわば理想と現実の相克といいますか、政治家としてのそこに悩みとか、そういうものが少しはかいま見えた方が私はいいんじゃないかと思うんですが、総理を見ていると、やれ行けどんどんで、自衛権行使、自衛権行使だ。そこはいかがなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 では、今、こういうテロが発生して、何もしないでテロが防止できるんでしょうか。そうじゃないでしょう。



それで、今、アメリカが自衛権を行使して立ち上がって、国連でも安保理でも決議して認めているわけですよ。国際の平和と安全に対する脅威だと認めているわけです。そして立ち上がっている。これをアメリカ初め世界各国に日本が断固支持しないで、どうなるんですか。断固支持するのは行け行けどんどんだと言う人がいますけれども、断固支持しないで日本はどうなるんですか、この状況を見て。



アメリカと同盟国でない国もアメリカを支持している。日米安全保障条約で同盟国で、日本がこういう事態を見て、ああ、断固支持しません、ちゅうちょします、ちょっと待ってくださいと言ってどうなるんですか。私は、断固支持するのは当然だと思いますね、今の国際社会がテロに立ち向かおうというときに。



それを、行け行けどんどん、何々どんどん、何言っているのかわからないけれども、むしろ断固支持しない方が、日本政府、日本国民の信頼を国際社会で落とすことになると私は思っています。    〔久間委員長代理退席、委員長着席〕

岡田委員 総理のお話を聞いていると、ほかの国もどんどん行っているから日本も乗りおくれちゃいけないというふうに聞こえますよね。私は、そういうものじゃなくて、日本として主体的に判断する話だ、そういうふうに思います。今まで、では従来我が国政府はどういう考え方をとってきたかということもやはり私は踏まえるべきだと思うのです。



例えば、あのコソボのときに、我が国はそれに対して断固支持と言ったでしょうか。コソボに対するNATO軍の空爆に対して、我が国政府のそれに対するコメントは、やむを得ずとられた措置だと理解するという言い方です。それから、アフガニスタン、スーダンへのテロ報復攻撃に対して、十分に理解するという言い方ですね。



支持するということを言ったことも過去にあります。しかし、そこは非常に注意深く、支持という言葉をなるべく使わないように、理解という表現にとどめてきたのは、やはりこの国連憲章の考え方があるからなんです。もし各国が勝手に自衛権の行使をどんどんし出したら、国連なんて要らなくなりますよ。



一つ一つの事件を見るんじゃなくて、全体を見たときのバランスの中で慎重に考えてきたということだと思うのですが、私は、総理を見ていると、そういう思慮深さが全然うかがえないものですから、そして、ほかの国もどんどん行くから日本も行かなきゃいけないんだ、そういう強迫観念に駆られて行動しておられるように見えるものですから申し上げているわけですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、過去、アメリカの軍事行動に対して強く支持するということを表明しなかった場合もあります。今回は、主体的に日本が判断して、断固支持する、毅然として支持するということを言ったわけですよ、主体的に。



今この時期に、世界が立ち向かって、アメリカが自衛権を行使してテロ撲滅のときに立ち上がっている、そのときに、日本は主体的に、今までそういう表明はなかったかもしれないけれども、今こそ断固支持するべきときだと判断したからそういう表現を使ったわけであります。

岡田委員 私は、各国の首脳もアメリカに対して無条件でどんどん武力行使をしろと言っているんじゃないと思うのです。そこは、アメリカの国の中にも、政府の中にも、当然抑制的に考えていかなきゃいけないという考え方は、今や私はアメリカの政府の中でも主流だと思いますし、各国の首脳もそういうことを述べている。



ですから、私は、総理が日米首脳会談で行かれるときに、こういうふうに言うべきだということをテレビで申し上げたのですけれども、やはり武力行使というのは、今回の事件に対してのその部分はわかるけれども、それをきっかけにして、例えば、一時アメリカが言っていたように、テロのネットワークを破壊するためにどんどん武力行使していくんだとか、そういう形でたがが外れたようなやり方は避けるべきだ、もっと思慮深く行動すべきだということを、私は、同盟国の一員として、総理がブッシュ大統領にお会いになったときに言うべきだったんじゃないんですか、あるいは、これからでも言うべきなんじゃないんですか。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、ブッシュ大統領の会談におきましても、これはテロとの闘いである、アラブとの闘いではないし、イスラムとの闘いではない。極めて慎重なのはアメリカであります。何しろ、アメリカ自身の国民、アメリカの青年の血を流すかもしれない覚悟がなきゃ、武力行使できないんですから。



日本は武力行使しません。今武力行使しているのはアメリカとイギリスでしょう。NATOは、これからどういう態度をとるかわかりませんけれども、集団自衛権の行使ですから。日本は、支持するけれども武力行使しないと言っているんです。それははっきりブッシュ大統領に言いました。戦闘行為にも参加しない、それ以外の分野で支援すると言っているんです。行け行けどんどんだの、戦争やれやれなんて一言も言っていませんよ。



むしろ、日本以上に慎重なのはアメリカだと思いますよ。ブッシュ大統領は、冷静に、自国の青年の血を流すかもしれないという行為に対しては、アメリカ大統領だって、大変私は慎重だと思います、好きこのんで行け行けどんどんなんという態度はとらないと思いますよ。極めて限定的に、抑制的に、冷静に、忍耐強く対応しなきゃならないということを、ブッシュ大統領の口から言っていますから、私とのじかの会談で。



私は、そういう、あらゆる手段を講じてテロを撲滅するという考えはわかるけれども、日本政府は武力行使はいたしません、戦闘行為には参加しません、その中でできるだけの支援をやる、アメリカがこのテロ撲滅のために立ち上がった、その態度は強く支持しますということを言っているんです。しかし、日本は武力行使しませんということを断っております。それが、行け行けどんどん、戦争やれやれなんてとられるのは、まことに心外であります。

岡田委員 私は、日本が武力行使する、しないの話をしているんじゃなくて、米国の同盟国として、米国に対してきちんと見識ある態度をとるべきだということを言っているわけです。



先ほどから総理は、テロと闘う、テロとの闘いだとおっしゃいます。それはそのとおりなんですが、例えば、繰り返しになりますが、米国が武力行使するのは、今回の、このアメリカ合衆国に対して九月十一日に発生したテロ攻撃に対する自衛権の発動としての武力行使であって、それを超えて、一般的なテロ撲滅のためには、それは自衛権の発動ではなくて、国連全体の中の枠組みで解決していくという姿勢が私は重要だと思うんですね。そのことについて明快に述べるべきじゃないかということを申し上げているわけです。



何かおっしゃることはありますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 なかなか理解してもらえないので困りますが、そういう趣旨のことを私は述べていると思っていますが。

岡田委員 それでは最後に、多少時間がまだありますが、もう一つだけ申し上げておきたいと思います。



総理は、法律に基づいていろいろなことをやっていくという、法治主義といいますか、法による支配というか、そういうことについてどうお考えなのかな、ちょっと私不安に思うことがあります。特に自衛隊という一つの実力集団について、さっきのシビリアンコントロールと同時に、法律によってこれの動きを決めていくということは非常に大事なことだと思うのですね。



そういう視点で見たときに、例えば、一時議論されたイージス艦の派遣の問題があります。イージス艦はなくなったかもしれません、私はわかりませんが。しかし、いずれにしろ、防衛庁設置法に基づいて、調査研究名目でこういった実力集団である自衛隊を動かすということは、私は相当慎重に考えないと危ういことじゃないかと思うのですね。法律的にも、なぜそれが調査研究で読めるのかということは、基本的に疑問があります。



もう少し、こういうことについては慎重に考えていく、そういうお考えはないでしょうか。

小泉内閣総理大臣 慎重に考えたからこそ新法をつくっているんです。今までの法で適用できると、拡大解釈すればできると言う方もいます。私はそれが無理だと思うから、法的裏づけがないと、自衛隊が活動する場合には、これはかえって不安を呼び起こすのではないか。また、自衛隊自身も、そういう国民の支持なくて活動するということに対しては快しとしないでしょう。国民もそうです。慎重であるがゆえに新法をお願いしているんです。法的裏づけというのは当然だと私は思っております。

岡田委員 ちょっと私の聞いたことと違うことを言われたんですが、今のお話は、私は周辺事態法に関する話だと思うんですね。これも私は、周辺事態法というのは、日本周辺であって日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態のときの法律、これはさんざん議論をして、当時の小渕総理の答弁もあるわけですね。にもかかわらず、この法律を拡大解釈して自衛隊を今回のテロ事件の対応に使おうとしたという声が政府の中にも一部あったということは、私はそれはあってはならないことだと思うんですね。そういうことは明快にまず否定してください。周辺事態法というのはこういう事態には使えないんだということを、まず総理、明快におっしゃっていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 周辺事態法は適用できない場合の自衛隊活動が今回の事件に際してあるかもしれない、そのためにはやはり新法でその活動を裏づける必要がある、そういう面で私は新法を今提出しているわけであります。

岡田委員 間接的にお認めいただいたと思うんですが、やはり、周辺事態というのを随分議論を国会でもいたしましたが、そういう議論を踏まえて運用していただかないと、国会で一生懸命議論して法律をつくっても何の意味もなくなりますから、申し上げておきたいと思います。



同じことが、先ほどの調査研究名目で自衛艦、船を出すということについて、私はこれも根拠は非常に希薄である、そういうふうに思うんですね。



先ほど総理は新しい法律をつくるという今回のことを言われましたが、防衛庁設置法では、所掌事務の遂行に必要な調査研究を行うと書いてあるんですね。しかし、その所掌事務というのは、まだ法律ができていないわけですから、そういう意味では、私は今回のこの事件に関して自衛隊の船を出すということはできないんだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 確かに新法はできておりませんが、現在の所掌業務の中にも、海上警備行動やら邦人救出やら、またPKO活動とかいろいろございます。そういう活動等をかんがみて、まだどれを使うかはわかりませんが、情報収集をしてその所掌業務を行うという観点で艦艇を派遣するということは可能ではないかというふうに思います。

岡田委員 私は答弁を聞いてますます不安になるんですが、それじゃ、もし今回インド洋まで、アフガニスタンの近くまで船を出したとしたら、それはPKO活動のためなんですか、一体、今いろいろおっしゃったけれども、そのうちのどれなんですか。

中谷国務大臣 まだ実際に派遣するということは決定をいたしておりませんが、どのような情報を収集するかということで、考えられる点といたしましては、テロ活動の再発に関する情報、また人道的な国際救援活動、国際平和協力業務として実施するために必要な情報、また、船舶、航空機の情報、気象、海象、港湾施設の状況等が考えられるわけでございます。

岡田委員 これはよく政府の中で冷静に御議論をいただきたいと思います。



もしこういうことで自衛隊の船をどんどん日本の外に出せるということになれば、何のためにいろいろな今法律の議論をしているのかわからなくなります。ぜひそこは慎重にお考えいただきたいということを申し上げ、最後に、総理、今ファクスで入ってきましたが、狂牛病の問題ですが、新たな狂牛病の疑陽性反応が出た牛が見つかった、そういうニュースが流れております。



この問題は、私は政府の対応のおくれというのは非常に罪が深いというふうに思っておりますが、そのことはそのこととしてこれから議論していきますが、同時に、危機管理として、今回起きたことに対する対応も非常に大事だと思いますが、総理として何かあれば一言伺っておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この国会審議中、東京の食肉市場で狂牛病と見られる牛が発見されたという情報が入ってまいりまして、審議中ではございましたけれども、内々、質問を聞きながらも、農林水産大臣に対しまして、しっかり対応するように、厚生労働大臣とよく連携して、この事実関係をはっきり把握し、予防体制あるいは今までの検査体制、きちんと不安のないような体制をとるように指示したところでございます。



今後、より事実関係を確認した上で、不安のないようなきちんとした対応をしなければならないと思っております。

岡田委員 この問題は、消費者、生産者、いずれにとっても非常に深刻な問題ですから、しっかり対応していただきたい。そのことを最後にお願い申し上げて、終わりたいと思います。




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