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1999.11.10|国会会議録

金融行政・ペイオフ・長銀問題等について

<金融行政>

岡 田 現在の我が国の銀行を中心とする金融機関の置かれた状況は、一言で言えば惨澹たる状況である。グローバルな競争力を持った銀行は現時点では無い、バブルの負の遺産である不良債権の処理もまだ終わっていない、金融が傷んでいるということが日本経済全体をおかしくしている。ましていつ金融機関が倒れるかもしれないということで国民生活にも大変な不安を招いている。

大蔵大臣はかつてバブル期の大蔵大臣も務められ、バブル直後の総理も務められたわけだが、どこで失敗をして現在のような状況になったのかとお考えか

宮澤蔵相 1985年には世界の銀行といえば十大銀行はほとんど日本の銀行といったような時代がありました。その間、アメリカが非常に苦労をしてリストラをおこなったが、こちらはそれ(アメリカの苦労)をいいことにして、何となく護送船団行政というものに甘んじていた。それは銀行行政当局にも問題のあることであります。ですから、お答えといたしましては、どこが間違ったかとおっしゃれば、1985年からその後の起こりました状況に対処できなかったということであると思います。

岡 田 実は貿易とか資本の自由化というのは、1960年代に日本がOECDに加盟することによって一区切りつけたわけです。それから金融の自由化まで、一体、30年近い間何をしていたんだろうか。バブルに関して言えば、どんな業種でもバブルに踊った企業と堅実経営を貫いた企業があった。しかし、大手の都市銀行はすべて例外なくそのバブルに踊ったという姿をみるときに、やはりそこには自己責任感覚のなさ、最後は行政が何とかしてくれるという甘えがあったと言わざるを得ず、護送船団方式の影の部分が色濃く出ている。

宮澤蔵相 基本的に同感ですが、特に岡田委員は通産行政にはお詳しいので、通産行政と大蔵省の金融行政とを比べたときに、通産省は貿易・資本の自由化によって権限をなくしたときに、これは自分たちは国民のサービス官庁になるしかないというふうに考えて一生懸命努力した。他方で大蔵省は、統制法規が残っているものですから、あるいは殊に金融行政では護送船団方式というようなものがありますものですから、簡単に言えばのほほんとしておったということ、厳しい言い方ですが、私はそれは本当だったと当時から思っているわけです。

岡 田 宮澤大臣が総理大臣時代に、つまり1992年の8月に当時の宮澤総理は不良債権の問題の深刻さというものを指摘されました。しかしその後この問題は解決が先送りされました。これはなぜだというふうにお考えでしょうか。

宮澤蔵相 実現できなかったのは、私にそれだけの資質がなかったと申し上げるしかありませんが、産業界は金融機関を救済するということに本能的に嫌悪を持った、金融機関は、これは役所が入る、役所が入れば必ず自立性が失われる、あるいは責任者が出ると考えた、お役人さん方はそのうちによくなるだろう、余計なことを総理大臣にはしてほしくない、そういう雰囲気であったと思います。

岡 田 当時の宮澤総理は不良債権問題の重要性を指摘するとともに、その前提として銀行自身がどれだけの不良債権を抱えているかディスクロージャーしないといけないということも述べられました。実態を明らかにして、そして国民に理解を求めれば、私は、必ずしもこのときにやってやれなかったことではなかったのじゃないか、総理が本気になればできたのじゃないかという気がして仕方ないわけであります。

宮澤蔵相 自分の不明を申し上げるしかありませんが、当の金融界が賛成でない、産業界が賛成でないという状況の中では何とかしなければという認識になってこなかった。総理大臣の責任だとおっしゃられれば、もう何も申し上げることはありませんが、そういうことでございました。

岡 田 バブル以降の15年間は日本の金融行政の歴史的な大失敗であります。そこをきちんと分析をして、そしてどこに問題があったのかを国民に対して説明をすべきと思う。

宮澤蔵相 ここのところはどうしてもなされなければならない分析が大事な問題として今残っておるということは、私も岡田委員と同様に考えています。

<ペイオフ>

岡 田 ペイオフが2001年4月ということで迫っている中で、預金者が金融機関に預金する際に、判断をするだけの情報というものがなければ、この金融機関が安全であるかどうか自己責任で判断しろといっても、きちんとした情報が出されていない限りそれはできないわけです。

金融再生法施行規則四条に基づいて、金融機関の持つ債権を四つに分類して公表することとしているが、実は第二分類債権がほとんどここでは正常債権に含まれている。これでは預金者には実態がよくわからない、実際にその金融機関の状況がどうなっているかということが預金者に判断できるようなやり方に変えるつもりはないか。

越智長官 正直申しまして、第二分類のところが大変わかりにくいという点はそのとおり、いろいろこれはもっと工夫をしなければいかぬだろうと思っております。

<長銀問題>

岡 田 長銀が国有化されて、そして約四兆円近いお金がつぎ込まれて、リップルウッドに10億円で売るという方向で話が進んでいます。最大の問題は昨年10月の時点で、国会で問題なしと言いながら、11月に国有化した途端に2.7兆円の債務超過であったことだ。このことの責任をどう感じるのか。

宮澤蔵相 昨年の3月に、監督庁は債務超過でないということを認定しておられます。少なくとも夏ごろの時点で債務超過じゃないというふうに、債務超過であると信ずる理由はないと監督庁長官がいっておられます。

岡 田 あのときに日野長官は、現在調査中であるとして調査結果の公表を二ヶ月以上引っ張りました。しかし現実には債務超過とわかっていたはずで、公的管理に移した段階ですでに2.7兆円の債務超過となっていたのですから、現在の四兆円近い国民負担の大部分が、昨年政府の「問題なし」と言っていた時点で確定しておったということになります。

これだけの国民負担を招いたということに対し、国民に対し何の責任も感じないような姿勢に対し大きな疑問を感じます。

宮澤蔵相 一つの企業が生きている時、ゴーイング・コンサーンである時は生きているものはさらに元気になる可能性があります。合併等によりゴーイング・コンサーンとして生き残ることは決して無意味でないと思います。

岡 田 ゴーイング・コンサーンという単語を使われましたがこれはまさしく長銀の経営者がその名のもとに多くのプロジェクト会社を作り債権の飛ばしをやったわけです。先般の鳩山代表の総理に対するこの問題についての質問に対しても、総理は国民に対して詫びるという姿勢は全くありませんでした。大蔵大臣も4兆円の税金を使うことになったことについて国民に詫びる必要なしとお考えですか。

宮澤蔵相 長銀の資産が(8月住友信託との合併破綻後)そういうふうに劣化したことについて政府に責任はなかったかとおっしゃられれば、それは、政治的な責任が一概にないというふうには、これは申し上げるわけにはいかないでしょう。法律的な責任という意味では、これはなかったと思います。

<財政構造改革>

岡 田 小渕総理は景気対策と財政構造改革の関係について、我が国経済が回復軌道に乗り、足元がしっかり固まった段階で、財政、税制上の課題につき検討を行なうとされていますが、これでは、結局、財政構造改革というのは全くできないまま終わってしまうのではないか。

宮澤蔵相 現在の一般会計が既に40%近い国債によって支えられておるわけでございますから、こういうことをいつまでも続けていくわけにはいかない。ただしこれは、我が国の経済がプラスの成長軌道に入ったということについて確信が持てませんと、税・財政改革は可能でない、現実的でないと思います。

岡 田 増税の問題は景気が回復してから本格的な議論が始まるのかもしれませんが、歳出構造の改革の方は、今からでもやっていかなければならない。問題はたくさんある。歳出構造の改革は実際にそれが歳出減という形を取るには何年か必要であり、今から具体的な姿を作り、法律改正をやっていく中で2?3年後にその効果が出てくるのではないか。




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