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1999.04.13|国会会議録

145回 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会

岡田委員 民主党の岡田克也です。

官房長官の記者会見の御予定があるようなので、通告した順序を若干変えながら質問したいと思います。

まず、日米安保体制について、もう一度ちょっと議論の整理をしておきたいというふうに思っております。

外務大臣にお伺いをいたします。

一九九五年に、東アジア・太平洋地域安全保障戦略、EASRと言われるものが出されたわけでありますが、その中でこういう表現がございます。「アジア太平洋地域における米軍の前方プレゼンスは地域安全保障と米国の全世界的な軍事態勢にとって不可欠な要素である。太平洋における前方展開戦力は、世界規模の危機に迅速かつ柔軟に対応する能力を保障する。」こういう記述がございます。もちろん、これは日米合意したものではなくて、アメリカの政府の考え方あるいは国防総省の考え方を示したものだということでありますが、こういう太平洋におけるアメリカ軍、つまり前方展開戦力というのは世界規模の危機に迅速かつ柔軟に対応する能力を保障するという表現について、外務大臣としては同じような認識でおられるのでしょうか。

高村国務大臣 米国の戦略でありますから、私が、それがどういう認識かと言われるのも、有権的にこうだ、ああだと言う立場にはないと思いますが、やはり安保条約というものは、我が国の安全と極東、これは条約地域としてまさにそういうことになっているわけでありますが、その平和と安全が保たれることによってアジア太平洋全体についても平和と安全、そしてグローバルな意味でも平和と安全に貢献しているということは、それは結果的に言えるだろうと思います。

それから、今の言葉の中にこういう意味が含まれているのかどうかよくわかりませんが、例えばアジア太平洋に展開している部隊が中東に展開するというようなこともあり得べしということを意味しているのかどうか、ちょっと私、今お聞きしてよくわかりませんが、仮にそういうことが含まれているとしても、それがけしからぬということでは全然ないだろう。私たちが特に日米安保条約、安保体制の中で求めていることは、我が国の安全と極東の平和と安全、こういうことでございますけれども、それ以上のことを米国の戦略として考えているからといって、それに対して、それは違うだろうとかそうだろうとか言う立場には必ずしもないのだろう、こういうふうに思っています。

岡田委員 大臣、ちょっと先走って答弁されたと思うのですが、日米安保条約の問題はちょっと横に置きまして、アジア太平洋において存在している米軍の存在、プレゼンス、それが世界戦略、アメリカの追求する世界的規模での危機への対処ということに役に立っているんだというアメリカ政府の認識について、外務大臣としては認識を共有されるのか。けしからぬとかそういうことを私は聞いているわけじゃなくて、認識を共有されるのか、いや、そういう認識は違うということなのか、いずれなんでしょうか。

高村国務大臣 必ずしも違うということではない。ただ、共有という意味で、極めて積極的に共有するかどうかという話でありますが、まさにそれはアメリカの世界戦略の一環であろうと思っていますし、日本とすれば、それは許容しているということでございます。

岡田委員 これは日米安保条約とは少し離れた話だと思うのですが、このナイ・レポートの中に出てくる表現は、アジア太平洋における米軍のプレゼンスそのものについての考え方だと思います。

ただ、そういう表現と並んで、こういう表現もあるのですね。「日米関係は米国の太平洋安保政策と米国の地球規模の戦略目的の基盤となっている。日米の安全保障同盟はアジアにおける米国安全保障政策のかなめ(リンチピン)である。」こういう表現もあります。ここのところはこういう認識を共有されますか。

高村国務大臣 共有ということ、意味がいろいろ広い意味でありますけれども、そういう認識をアメリカが持っていることは困ったことだとは毛頭思っておりませんし、ある意味で共有しているということでございます。

岡田委員 今、共有しているという御答弁があったわけですが、少なくともアメリカは、アジア太平洋における米軍の存在というものが、場合によってはアジア太平洋を超える世界的な、例えば中東とかその他の地域も含めた世界戦略にとって重要な意味を持っているという認識をしている、そして、それを支えるものとして日米関係というものが、あるいは同盟関係というものがある、こういうことだと私は思っております。

そういう中で、では次に、先ほど大臣はちょっと先走ってお答えになったと思うのですが、日米安保条約とそういう米軍の存在というものをどう考えるか。

先ほども少し答弁されましたが、日米安保条約は日本と極東の平和の確保のためにある。しかし、在日米軍というのが、必ずしもその目的だけではなくて、それ以外の目的のためにも存在している、さっき言ったような広い意味で存在している。そこのところをもう一度ちょっと、どういうふうにお考えなのか御説明いただけますか。

高村国務大臣 日米安保条約は、その最も重要な条文である五条、六条から見てわかるように、我が国及び極東の平和と安全のためにあるわけでありますが、現実に、我が国及び極東の平和と安全が保たれることは、アジア太平洋あるいはグローバルの平和と安全に貢献しているということにもなるわけであります。それは一般的な話としてもそうでありますし、そしてもう一つ、在日米軍が、ある場合には中東その他世界に別の任務を与えられてそこに移動するということもそれは当然あり得る話だ、こういうふうに思っております。

ただ、日本にいる目的は、あくまで極東と日本の平和と安全のためにいるわけでありますが、場合によってはほかの任務を与えられてほかに移動するということは、それは、NATOにいる米軍だって逆にこっちに来ることだって場合によってはあり得るでしょうし、軍隊の一般的な属性としてそういうことはあるんだろう、こういうふうに思っております。

岡田委員 今の御説明は、冷戦期における日米安保条約の説明としては私はよかったんだと思うんです。冷戦華やかなりしころはそういう形で、主として日本及び極東の平和のために在日米軍基地に米軍が存在していると。しかし、冷戦期においてすらそれがだんだん、そのためだけではなくて、その軍隊が、移動するという表現をお使いになりましたけれども、別の目的に活用されることもあったと。

しかし、冷戦が終了して、もちろん朝鮮半島という冷戦の遺物が極東にはありますので、なお大臣がおっしゃったような意味での日米安保の役割というものは私はあると思います。ある程度の重要な意味を持っているとは思いますが、しかし同時に、アメリカとしてはより広い範囲での、例えばアジア太平洋であったり、場合によってはそれを超える範囲での米軍のプレゼンスを確保することが非常に重要で、そのために在日米軍基地というものがある、だんだんそういうふうに重点が変わってきている、今やもう相当重点が移ってしまった、こういうふうに考えるんですが、そのような認識はお持ちではございませんか。

高村国務大臣 米軍のプレゼンスというものが抑止力になっているということは、それは冷戦期であろうと、あるいは冷戦が終了して相変わらず不確実性が残っている今の状況でも、やはりそれは、国際情勢が違うんですから全く同じに機能しているとは言いませんが、米軍のプレゼンスが抑止力として働いているということは、私は基本的に同じことなんだろう、そういうふうに思っております。

岡田委員 今、アジア太平洋地域において展開している米軍というのは約十万、その中で日本に四万強、朝鮮半島を除けばほとんど日本ですね。これはいつの時点かということによって変わってまいりますが、大体日本に四万強、韓国に四万弱、そして洋上に一万強、その他はほとんどいない、こういう状況でありますから、朝鮮半島における米軍というのはもう非常に限定した役割のためにあるわけで、それを除けばほとんど日本だというのが現実であります。しかも、海軍に対する基地というか、港としてはもうこれは圧倒的に日本が重要な役割を果たしている、その機能をかわって担うところは基本的にはない、こういうことだと思うんです。

したがって、ナイ・レポートもそうですし、それから日米安保共同宣言もそうですが、アジア太平洋における米軍の役割というものが非常に強調をされるわけですけれども、それは、やはりそれに対する裏打ちとしての日本の基地、こういうものが当然の前提としてあるんだ、そういうふうに私は認識をいたしますが、大臣はそうじゃないとおっしゃるのであれば、ではほかに、アジア太平洋における米軍のプレゼンスというものを維持するために、日本の基地以外にどういうものを想定されておられるんでしょうか。

高村国務大臣 質問の趣旨が必ずしも私理解できたかどうかよくわからないわけでありますが、いずれにしても、日米安保条約において日本の国内に米軍が基地を持つ、その直接の目的は、あくまで日米安保条約の条約区域である日本の安全、日本そして極東の平和と安全、これを守るためにある、こういうことであります。そして、そのことがひいては四十年間まさにアジア太平洋の平和と安定のためにも役立ってきたわけであります。これからも役立ち続けるであろう、こういうふうに思っております。

特に冷戦構造が崩壊したとき、一部ではありますけれども、もう日米安保は必要ないんじゃないかとかいろいろな議論があった中で、これからも必要なんですよ、これからも今までと同様必要なんですよと、そういうことを強調していろいろ言ったということでありまして、必ずしも今までとこの意味が変わってきたとかそういうことではないんだろうと私は理解しております。

岡田委員 冷戦が終了して、これからも必要であるということを強調するためにやや言い過ぎている部分があるというようなニュアンスの御答弁だったんですけれども、私は、冷戦終了前からもうそういう変化というのは次第に始まっていた、冷戦終結がそれを加速した、そのことについてナイ・レポートあるいは日米共同宣言というのは認めたものだというふうに理解をしております。

非常にわかりやすく言えば、今までは、自分の家を守ってもらうために自分の家の三畳一間か何かを貸して用心棒を雇っていた、ところがその用心棒が、最近は夜になるとどこかへ出かけていって隣の町を一生懸命警戒して回っている、時々三畳間に帰ってきて何か御飯食べたりしている、そんな感じになってきたんじゃないのかなというふうに思っております。

いずれにしろ、ここの認識がもし日米間で違う、あるいは、同じなんだけれども、国内向けにいろいろな配慮があって言い方をぼかしている、こういうことになるといろいろな弊害が出てくるんじゃないか、そのことを私は非常に心配をしているわけでございます。

例えば、この周辺事態法における位置づけについても、アメリカはかなり幅広い範囲での、例えばアジア太平洋地域全体における米軍の活動について日本が後方支援をするということを期待しながらこの法律ができてきたんじゃないか。ところが日本は、そうじゃなくて、日本の平和と安全ということで非常に限定した範囲を言っている。そこに認識のギャップがあるんじゃないか、今でも残っているんじゃないかというふうに思いますが、そういう懸念に対してはどのようにお答えになりますか。

高村国務大臣 周辺事態というのは、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態ということを法案の中にも明確にしているわけで、その点について米側から日本の平和と安全だけじゃないよなどと言われたことは一回もないわけで、ふだんから密接な連絡をとりながら、そういうギャップが少しでもあるとは思っておりません。

岡田委員 大臣、そうお答えになりましたが、しかし、その日本の平和と安全というものは一体何なのかということについて、この国会でも議論が錯綜しているといいますか、我々も議論しながら、ぴしっと明確に伝わってこないわけであります。そういうあいまいさの中で米国に対しても説明をしているということではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 そういうふうには思っていません。まさに安全保障の問題で、非常に柔軟に対応できるために、表現を余り確定的に、この一線を越えたら一切ないとかそういうことにしないというのはむしろ通例でありますし、日米間で密接な協議をやっている中で、そこに日米の間で特に認識のギャップがあるというふうには考えていないということでございます。

岡田委員 それでは、ちょっと話を戻しますが、日米安保体制とか日米同盟という表現と、それから日米安保条約という表現と、例えば日米共同宣言の中にもその辺を使い分けながら説明している部分が私はあると思うのですが、基本的に、そこの整理を外務大臣としてどのように考えておられますか。

高村国務大臣 日米安保条約というのは、まさに条約そのものですから、これはきっちりしているだろうと思うのですが、日米安保体制といった場合に、日米安保条約を中核とした日本と米国の同盟による安全保障体制をいっているわけで、その中には、お互いに外交的に連絡をとり合ってこういう外交を展開しようよとか、もろもろのことが含まれると思いますが、その中核は日米安全保障条約である、こういうふうに考えております。

岡田委員 日米安保共同宣言の中で、日米安保条約を基盤とする日米安全保障の関係が、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域の安定、繁栄の基礎である、こういう表現がございます。それから、米国の軍事的プレゼンス維持はアジア太平洋地域の平和と安定の上で不可欠であることで一致した、日米の安全保障の関係は米国の肯定的な関与を支える極めて重要な柱の一つとなっている、こういうことで、アジア太平洋における米軍のプレゼンスというものを日米安保条約は支えている。それから、日米安保条約というのは、日米の安全保障の関係、日米同盟と言いかえてもいいと思いますが、日米同盟の基盤になっている。その日米同盟というものが、アジア太平洋の安定と繁栄のさらに基礎になっている。大体そういう整理でこの日米安保共同宣言というのは書かれているのかな。

つまり、日米安保条約そのものがアジア太平洋の平和と安定に資するというよりは、日米安保条約があって、日米安保条約を基盤として日米の同盟があって、広い意味の同盟ですね、その日米の同盟がアジア太平洋における平和と安定を維持するための基礎になっている。そういう関係だと考えてよろしいでしょうか。

高村国務大臣 日米安保条約を基盤とする両国間の安全保障面の関係が、アジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基盤であり続けるということが、御指摘の日米安保共同宣言でうたわれているわけでありますが、ここで言う両国間の安全保障面の関係とは、日米安保条約に基づく日米安保体制に加えて、そのほかの日米両国が行う外交努力、安全保障面での協力をも包含する、より幅の広い協力関係を総称するものでございます。

日米安保共同宣言において、このような日米間の安全保障面の関係が二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを日米両国の首脳が再確認しているのは、アジア太平洋地域において依然不安定要因が存在する中、米国は、引き続きその軍事的プレゼンスを維持することにより、この地域の平和と安定を維持していく上で不可欠な役割を果たしていること、及び、日米安保条約に基づく日米安保体制は、過去四十年間、我が国及び極東に平和及び安全をもたらしただけでなく、結果としてアジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みとして有効に機能していることを踏まえてのものであります。したがって、米国がアジア太平洋地域の平和と繁栄のために日本がより大きな役割を果たしていることを求めているというわけでは必ずしもないんだろう、こういうふうに思っております。

委員がおっしゃっていた、アジア太平洋の平和に日米安保条約じゃなくて日米安保体制が基礎になっているのか、こういうふうなあれですが、日米安保体制が基礎になっていて、日米安保体制の基礎が日米安保条約でありますから、日米安保条約が全体の基礎になっていると言っても、それは間違いではないのではないか、こういうふうに思っております。

岡田委員 私は、いろいろ配慮した上でそういう二段階論をわざわざ採用しているのかなと思いましたが、大臣があっさり否定をされましたので、それはそれで結構なことだと思います。

そうだとすると、日米安保条約というのが当初の目的である極東及び日本の平和の確保のためにあるということから広がって、広がってというか、少なくとも基地の使用というものが、基本的には日本と極東の平和のためだけれども、しかしそれから移動していくというような形で別の目的で使われることは否定しない、こういうことは大臣が最初に言われたわけでありますが、そのときに問題になるのは、事前協議の問題だと思います。

従来のように、極東及び日本の平和と安全のために直接出撃行動をとるときには事前協議の対象になりますと。では、それ以外の、六条で予定していない移動のような場合、移動という表現を使うのは私は余り好まないのですが、六条以外の場合に結果として在日米軍基地が使用されるというような場合にも、これはやはり、日本政府としては全くそれに対してノータッチだということであっては私はいけないのじゃないか。やはりそのときにも、今の事前協議とは違うかもしれませんが、事前協議に類似するような、日本政府として何らかの関与というものが必要になってくるのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、この点については大臣はどのようにお考えでしょうか。

高村国務大臣 その点については、私は委員の考えと全く違う考えを持っております。政府は一貫して委員のおっしゃったような考えをとってきていなかったわけでありますが、これからもそういうことに、今の政府の考え方を維持していくことになるということでございます。

軍隊というのは、それは確かに今日本にいる場合には、日本の平和と安全、極東の平和と安全という任務を持っているわけでありますが、その軍隊は日本にいる限りにおいてはそういう任務を持っているのですが、その軍隊にほかの任務を与えてはいけない、与える場合には我が国の了承が必要ですよということまで同盟関係の中で要求するというのは国際的な常識に合うのかどうかという話なんだろう、私はそう思っております。

例えば、日本にいる軍隊が我が国の安全、極東の平和と安全に全く役に立たないということであれば、それは出ていってくれ、こういう話でありますが、いるときに役に立っている部隊がほかのところで働く必要がある、そこに移動しますよというときに、私たちは、そっちでやることはけしからぬから、日本の許可を得なければ行くことまかりならぬと言うのは、どこの同盟関係であってもそこまで言うことは国際的常識を超えるものだ、私はそう思っております。

岡田委員 大臣は非常に私の質問を歪曲して極端なケースにしておられるんですが、私はけしからぬとは言っていませんし、もしけしからぬとか許可がなければという話であれば、今の事前協議制度は、まさしくけしからぬからやっているわけですか、違うわけでしょう。

高村国務大臣 事前協議制度というのは、アメリカ側が提議をして、そして日本がイエスと言わない限りやってはいけないという制度なんですね。ただ普通でいろいろ協議しましょうよという制度じゃないんです。日本がイエスと言わない限りはやってはいけないという制度であるわけです。

ですから、アメリカの軍隊が例えば中東なら中東に移動しますよというときに、それは行ってはいけないというようなことを言う権限が日本にあるということは、私は、それは国際的常識に反するのではないか、こういうことを申し上げているんです。

岡田委員 私は事前協議とは言っていないので、事前協議に類似するようなという表現をしているんですが、どの範囲でそういうものを設定すべきかということはこれはまた別の議論でありまして、大臣おっしゃるような中東のようなケースまで言うのか、あるいはアジア太平洋の範囲で言うのか、そこのところはいろいろな議論があると私は思います。

しかし、一般論として言ったときに、直接出撃行動だけが事前協議の対象であってあとは全くノータッチですよというようなことで、安保条約全体の中身が変わってきている中で、それで本当にいいのか、こういうことを私は申し上げているわけでございます。実態がそれだけ変わってきているときに、もともとの日本及び極東の直接出撃行動はいいですけれども、それ以外のものについては全くあずかり知らぬ、それはアメリカがやっていることで、日本は基地を貸しているだけですからそのことについては関係ありません、そんなことが私はむしろ通らないんじゃないか、国際的な常識として通らないんじゃないか。それは、やはり日本という国家である以上、国が供与している基地がいかに使われようと私は関係ありませんなどというのはあり得ないように思いますが、いかがですか。

高村国務大臣 安保条約第四条に随時協議というのもありまして、日本と米国ではいろいろなことを随時協議することもできますし、そういう安保条約四条を持ち出すまでもなく、日米同盟関係だってふだん外交的ないろいろな話をしているわけで、そういう中で、米国がどういう行動をとろうということについて我々の意見を申し上げるということは、それは当然あるわけであります。

そうでありますけれども、事前協議という言葉で言われれば、事前協議というのは、日本がイエスと言わない限り一切やってはいけない、日本がイエスと言った場合だけやっていい、そういう制度でありますから、その事前協議の中に、一般的にアメリカがどこかに移動することについていけないというようなことをするのは私は常識的に合わないだろう、こういうことを申し上げたわけでございます。

岡田委員 この議論はさらに深めていきたいと思いますが、最後に一つだけ、事前協議、移動という話をされましたが、日本の基地から空母が移動して、そしてそこから航空機、爆撃機が直接出撃する、これは事前協議の対象にならないというのが従来の政府のお考えのように聞いておりますが、そういう考えを今でも維持されておられますか。

高村国務大臣 まさに一般的に今までいろいろ国会で問題になっていたようなケース、航空母艦が中東に行きました、そしてそこで戦闘に参加するためにそこから戦闘機あるいは爆撃機が飛び立っていきました、こういうときは移動でならない、これは何度も答弁しているところでございます。

岡田委員 今中東と言われましたけれども、例えばそれが極東である場合はいかがですか。

高村国務大臣 それはケース・バイ・ケースで判断されるんだろうと思います。まさに、そのことが、我が国基地から直接戦闘に出撃したというように評価され得るかどうかということで考えられるんだろうと思います。

岡田委員 評価されるという言葉は非常に不明確なんですが、もう一度言いますと、日本の基地、例えば横須賀なら横須賀から空母が出て、そしてそこから直接極東のある地域に戦闘機なり爆撃機が飛び立った、こういうケースはいかがですか。

竹内政府委員 これは従来から申し上げていることでございますので恐縮でございますけれども、いわゆる戦闘作戦行動と申しますのは、言うまでもなく直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動でございまして、そのような戦闘作戦行動のための基地としての日本の施設・区域を使用する際に事前協議が必要とされるわけでございます。したがいまして、米軍がそのような、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動のために我が国の施設・区域から発進する際に、当然事前協議の対象となります。

したがいまして、艦船について申しまして、今極東とかいう話がございましたけれども、大臣から申しましたとおり、それは個々のケースによって判断する必要がございますけれども、一般的に申しますと、その戦闘作戦行動が日本国内の施設・区域を基地として発進され、その艦船がこの施設・区域を出ていくとき、その航行自体が既に戦闘作戦行動の一部として認められるというような場合、これは戦闘作戦行動の基地として我が国の施設・区域が使用される場合に該当するということで、事前協議の対象となるということでございます。

それ以外の、こちらから、日本の施設・区域から出ていきまして、移動いたしまして、後ほど戦闘作戦行動に従事するというようなことであれば、それは発進のときには戦闘作戦行動の対応として、そういうことで日本の基地を使用していることに当たらない、こういうことでございます。

岡田委員 ちょっとグアムにでも寄り道すればそれでいい、こういうことになっちゃうと思うんですね、今のお話ですと。この辺はもう一度きちんと見直した方がいいだろう、そういうふうに私は思います。

きょうは周辺事態法の審議ですのでこの辺にさせていただきますが、日本がアメリカの庇護下にあったというか、半独立状態にあった、その考え方をずっと引きずって今日まで来ちゃったという感じが私はいたします。ですから、直接戦闘行動という考え方そのものが適切なのかどうかということも含めて、ここはもう少しきちんとした方がいいように思っておりますので、また機会を改めて議論させていただきたいと思います。

それでは、官房長官がお見えになりましたので、もとに戻りまして少し御質問したいと思います。

まず、これはどなたに聞くべきか迷ったんですが、官房長官にちょっとお聞きしますけれども、この法律についての与党の中での、つまり自自間での、自民党、自由党の間での協議というものがいろいろ進んでいるということが報道されておりますし、先ほどの野田自治大臣の方からも、協議をしているという事実についてはお認めになった上での御答弁があった、こういうふうに思うわけですが、いろいろ報道はあるのですが、我々にはその中身が示されておりません。

法案というのは閣議決定されて出てくるわけでありますから、与党の中で意見が違うままで国会に出てくることは本来はあり得ない。たまたまこの法律の場合には、法案が国会に提出された後で自民、自由の連立というのがあったためにこういう変則的な事態になっている、こういうことだと思うのですね。しかし、国会においていろいろ議論されている中で、まだ与党の中で意見がまとまっていないのにこういう委員会で議論をするということは、私は本来的にはおかしなことだ、こういうふうに思います。

自民党、自由党でいろいろ議論されているのであれば、早急にその合意事項というものをきちんとこの場に示されるのが筋ではないか、私はこういうふうに思いますが、官房長官、いかがでしょうか。

野中国務大臣 それぞれ与党間でさまざまな政策について議論がされておると私どもも聞き及んでおるわけでございますけれども、このただいま御審議を賜っております周辺事態の安全確保法案につきましては、現在、国会において十分な御審議をいただいておるわけでございまして、その御議論を踏まえた上で、政府といたしましても誠実に対応をしていきたいと考えておるわけでございます。

今後、ぜひ本委員会におきまして十分な御審議を賜りますことを率直にお願いを申し上げる次第でございます。

岡田委員 一般論としては、今官房長官の言われたことはわかります。しかし、それは、政府の案というのがかちっと政府・与党の案としてある場合に、それを委員会、国会の場で議論して、そして修正をしていく、これならわかりますが、そのかちっとしたものがまだないのですね。政府案はあっても、もう今やそれはあってなきがごときもの、実際の与党間ではそれと全然違う議論をしている。修正含みの議論をしているわけですね。そこで、我々野党としては何を議論したらいいのか、こういうことになると思うのですが、したがって、今の御答弁では私は不十分だと思いますが、いかがでしょうか。

野田(毅)国務大臣 御承知のとおり、この法案は、既に一年前に政府案として国会に提出をされておる法案であります。そこで、内閣の構成が変わったということにおいて、では中身も変えて出し直すべきかどうかについては、そこは考え方の問題だと思います。

ただ、少なくとも、両党間、この連立政権がスタートする前にこの問題の取り扱いについてかなり詰めた議論も行いました。その中で、両党合意事項の中で、「ガイドライン関連法案は、わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態である周辺事態に対し、米国への協力を通じ、日米安保体制の実効性をよりよく確保するためのものである。」そして「政府が提出している周辺事態安全確保法案等については、かかる考え方を明確にするため、今後、両党間でさらに議論を深め、次の通常国会でこれらの早急な成立、承認を期す。」「具体的には、後方地域支援、後方地域捜索救助活動及び船舶検査について、このことを明確にする。」ということで、そこから先の具体的なところを両党間でさらなる協議を進めてきておるということが第一点。

それからいま一つ、政府としては、今日まで、あくまで原案どおり通していただくのがベストであるということを言い続けてきておる立場である、政府としてはね。しかし、国会における審議という中で、単に連立与党間だけの協議でこの法案に関する取り扱いがすべて処理されてしかるべきものであるかどうかということについては、まさに今、本委員会で大変熱心な御議論をちょうだいしておって、実態問題として、与党内のみならず野党をも含めた各党間の中で事実上いろいろ御議論をいただいておるということも承知をしておるわけでありまして、そういう点で、与党内だけで決まればそれでいいということではなくて、野党をも含めた協議が今進行中であるということを受けて、その点について十分尊重をしなければなるまいというのが今日のスタンスであるというふうに理解をいたしております。

岡田委員 もう一度繰り返しますけれども、いろいろ議論をしていく際に、まず、この委員会の場で、国民の見えるところで議論していって論点が整理をされ、そして、並行して例えば理事会において協議していく、こういうことだと思うのですね。ところが、委員会で議論をする際に、政府の中が一本じゃない、ちゃんとした政府の考え方がまとまっていない、政府という言い方が悪ければ与党、連立与党の中で考え方がまとまっていないという中で、何を我々に議論しろというのですか。

高村国務大臣 今、はっきりした政府案を国会に提案しているところでございますから、まさにこの案を審議していただきたいと思います。

これは、連立政権でなくとも、例えば自民党一党で法案を出した場合でも、野党からいろいろな意見があった場合に、それでは自民党の中でどう考えようかという、自民党の中でいろいろな議論をすることもあるわけで、たまたま今度連立政権でありますから、連立政権の与党の中でいろいろしているのかしていないのか、私よく知りませんけれども、そういうことがあっても、政府として出している案ははっきりしているわけでありますから、これについて御審議いただいて、そして国会全体でこれをどう処理するか決めていただければいいのだろう。処理するというのは、このまま通していただくのか、だめだというのか、あるいは何らかの修正を施して通すというのか、私たちはこのままできるだけ通していただきたいということを今申し上げているわけでございます。

岡田委員 基本的にそこが違うと思うのですね。与党と野党をごっちゃにして議論されておりますけれども、与野党で議論してその後修正が加わる、それはわかりますよ。しかし、与党の中で違うのです。

本来であれば国会に出せないですよね、閣議決定というのがあるわけですから。たまたまこれはその前に閣議決定がされていたから国会に出てしまっているわけですけれども、本来審議してはいけないと僕は思うのですよ、そういう状態の法案を。

なぜ閣議決定というものを法案について必要とするのか。それは、政府の中で考え方が一致しているということを具体的に示すために閣議決定という作業があるはずです。その政府の中での意見の統一というものが今ないのでしょう。自由党と自民党、違うわけでしょう。だから、そういうものをこの国会に持ってくること自身が私はおかしいと思います。いかがですか。

野中国務大臣 政府が国会にお願いをしておる法案はこれ以外にないわけでありまして、政府が改めて訂正などして提案をする、あるいは修正して提案する立場にないわけでございまして、ぜひ本案をこの委員会初め国会において御審議をいただきたいとお願いを申し上げる以外はございません。

岡田委員 野田大臣、いかがですか。

野田(毅)国務大臣 政府としての立場は今官房長官から申し上げたとおりでありますし、先ほど私からも申し上げました。何といいますか、実際問題、この法案をぜひ早期に、できれば無傷に近い形で成立ができるということが、政府として一番望ましいことであります。

しかし、実際、この国会における熱心な御審議の上で、よりよい中身のものにしていこうという中で、与党内のみならず野党からもいろいろな御議論があることは周知の事実でありまして、そういう点で、与党内調整だけでなくて野党の意見をも十分にそんたくしながら、今論点整理などということで、いろいろ熱心な、委員会としても御努力をいただいておる最中でございます。

そういう点で、与党だけで、両党でまとまればそれでいいんだよ、さてそれについてイエスかノーかというような性格のものではないのではないか。したがって、これはこの審議を通ずる中で、もちろん与党内の意見のすり合わせは私はもう九九・九%でき上がっておると思いますが、しかし、それだけですべてが決着する話なのではなくて、今野党の御意見をも十分拝聴しながら協議をしていただいておるだろう、私はそう認識いたしております。

岡田委員 議論をすぐすりかえられるわけですが、私は別に与野党の問題を言っているんじゃないんです。それは当然です。国会で議論して、そしてよりよいものにしていく、これは当然のことだと思います。その前提として、やはり与党の中で一本化して出してくるべきじゃないですかということを私は申し上げているわけで、議論をちょっとすりかえないでいただきたいと思うんです。

それで、今、野田大臣は、今の政府案が無傷で通ることが望ましい、こういうふうに言われました。そうすると、野田大臣は、自由党に属しておられるが、今の政府案がベストである、こういうふうにお考えなんですね。

野田(毅)国務大臣 小渕内閣の閣僚の一員としてはそういうスタンスであるということは、これは前から申し上げております。

しかし同時に、この点は、連立に至る過程の中で、内容について、国会審議の過程の中で十分に両党間の考え方を反映していくんだということを前提としてやっておるわけでありまして、その点は何ら問題はない、こう私は考えております。

岡田委員 小渕内閣の閣僚の一員になったからこの法案に賛成であるということになると、自由党の幹部としての立場というのは無視をする、こういうことですね。違うんですか。そっちはそっちで大事だというんなら、では、どっちなんですか。使い分けは、そんな、できないと思いますよ。

野田(毅)国務大臣 たびたび申し上げておりますが、少なくとも連立がスタートする前において、先ほど読み上げました両党間のこのガイドライン法案に関連するいわゆるポイントについて、両党間でさらに詰めていこうということまで申し上げておるわけであります。

ただ、少なくとも、この法案が一年前に政府案として提出をされ、この法案をもとにして今御議論をいただいておるということは厳然たる事実でありまして、この法案を御審議いただく過程の中でいろいろな御議論が出てきて、それが反映されていく、そういう過程の中で自自両党間の合意事項が反映されていくものであるというふうに考えておるわけであります。

岡田委員 我々としては、何を相手に議論したらいいのかさっぱりわからないという事態になっているわけですね。政府案なのか、一方で自自の合意というものがいろいろ出てくる。

野田(毅)国務大臣 たびたび申し上げておりますが、現在出されております政府提出の法律案に基づいて御議論をいただいておる。これ以上のものでもなければ、それ以下のものでもないというふうに私は思っております。

岡田委員 それでは、具体的にお聞きしますが、例えば船舶検査ですね、国連安保理の決議が要らないという議論がございます。これについて、外務大臣、いかがお考えですか。

高村国務大臣 周辺事態安全確保法案における船舶検査活動については、国連安保理決議の存在を前提としているわけでございます。これは、周辺事態において、経済制裁の実効性を確保するために船舶検査を行うことが必要となることも想定され、そのような活動を我が国が行う場合に、国連安保理決議という根拠があることが有益であると考えられたためでございます。

すなわち、周辺事態に際し我が国が船舶検査活動を実施する際、船舶の検査を要請する国連安保理決議があれば、国連憲章第二十五条により国連加盟国は自国の船舶が検査を受けることを受忍しなければならないことから、旗国の同意を改めて確認することなく、公海上において他国の船舶を検査することができることとなります。このことから、周辺事態安全確保法案では、国連安保理決議の要請があることを前提といたしました。

これについては、政府としては、国会において十分議論を尽くしていただいた上で、周辺事態安全確保法案が国会での審議を経て早期に成立、承認されることを強く期待しているわけでございます。

国連安保理決議がなくても、こういう場合にやった方がいいじゃないかというような点をこの委員会の中で指摘した委員もおられるわけでありますし、それはそれで一つの考え方だ、こう思います。

いずれにしても、船舶検査をやる場合には国際法上の根拠が必要なわけでありますが、政治判断として、これだけでは狭過ぎる、もう少し広げようというのか、いや、これでいいじゃないかと今の政府の立場を理解していただけるのかという問題だろう、こういうふうに思っております。

岡田委員 最後、非常にあいまいな言い方をされたんですが、例えば、条約とか国際的約束とか国際的な慣行に基づき実施する場合にも船舶検査を認めるべきだ、こういう議論がございます。

条約、国際的な約束、国際的慣行、これは例えば具体的にどういうものを想定しておられるのですか。

高村国務大臣 政府がこういうようなことを申し上げたことはないので、どういうことを想定しているのかと言われても非常に困るわけでありますが、私はこういう案を新聞で読んだことがありますので、どういうことを想定しているのかなと思って私なりに考えた。こういうことを言っている方がどういうことを想定しているのかわかりませんけれども、例えば、国連安保理の決議はなくとも、幾つかの国が集まって、お互い旗国としての権利を放棄するから、お互いの国の中でお互いに船舶検査をできるようにしようではないか、こういうようなことは一つあり得るのかな、こういうふうには思っております。

いずれにいたしましても、政府の立場は、今の案で通していただくのがベストだ、こういうことでございます。

岡田委員 幾つかの国が集まって、お互いその国の中で検査できるようにしよう、こういう話でありますが、ほとんど意味のない話だと思うんですね。その国の中だけですから、第三国に対しては検査できないわけですね。これはあくまでも国連決議が必要になる、こういうことだと思うんです。

例えば、日本とアメリカと韓国の間でそういう検査をできるようにしよう。そうすると、日本と韓国とアメリカの旗を掲げている船に対してはそういうことができる、しかしほかの国にはできません、そういうことを議論することに意味があるんですか。自治大臣、もしあれば。

野田(毅)国務大臣 自民党と自由党の間でさまざまな視点から議論が行われておりますそのうちの一つに、船舶検査に対する対応をどうするかというものが一つのテーマになっております。恐らく、それに関連して、いろいろな中でやりとりがあろうかと思います。

詳しくは、私もそこまで存じてはおりませんが、基本的な考え方として、外国の船舶に対する臨検なりあるいは検査ということについて、いろいろな角度から、例えば、国連海洋法条約の中でいわゆる臨検というものが規定されたり、あるいは国連憲章に基づいても、四十一条なり、あるいはさらなる強制を伴う四十二条なり、そのほかの国際条約というようなことがあることは、もう委員御承知のとおりであります。

そういった中で、今回どういうことをやろうとするのか。少なくとも、国連決議に基づいて行われるというのであれば、恐らく四十一条なり四十二条なりということに基づいて行われる検査になるんだろう。そのときには、二国間だけでやるような世界ではなくて、恐らく他の国々も参加をしてやっていく。それは国連憲章遵守義務というものが加盟国にはあるわけであって、そうであれば、通常の国際常識、船舶検査で行われるような対処行動というものを国際常識に従ったそういう枠組みの中でやらないと、日本一国だけが異なった対応をするということになれば、その実効性を逆に阻害してしまうのではないかというような懸念が一方ではある。

しかし、日本はそこまであえてやらない。あくまで船長の同意をも前提とするのであるというようなことを動かさないという中での検査をするんですということであるならば、むしろ国連決議ということではなくて、問題は、そのときに船長の同意だけではなくて、旗国の同意が要るか要らないかという部分もあるんだろうから、そういったことをもう少し柔軟に考えて、実効性の上がるようなやり方はないのかねという問題提起を自由党として行っておるというふうに私は承知をしておるわけであって、そういう物の考え方ということについては、自民党のその衝に当たられる方々も、個人意見としては十分なお互いの理解はし合っているように私は承っております。しかし、それは両党間だけで決着できる世界のものではなくて、当然のことながら、野党の皆さん方がこの点についてどういうふうな認識なり主張をしておられるかということをも十分頭に置いた上で、この問題について整理をしていかなければならないというふうな段階になっておるというふうに私は聞いております。

岡田委員 いろいろ今、野田大臣お話しされましたけれども、いろいろ聞いているとか承っているとか、そういう話でありまして、伝聞なんですね、結局。自由党と自民党の間でこういう議論をしている、自由党はこう主張していると承知しているとか、承っているとか。つまり、この場では大臣としての発言で、そういった自由党の主張については直接はお話しにならなかった。それはそうでしょうね、ここで自由党と自民党の違いをそれぞれの大臣が出身の所属の党に基づいて発言し出したら、完全に閣内不一致になってしまいますからね。

ですから、そういう伝聞でお話しになる限りにおいて、我々議論できないのですよ、きちんとした詰めた議論が。だから、国会で議論しないままこの法案が修正されてしまうということになりかねないのですよ、これは。

だから、私は委員長に御要望申し上げておきますが、自由党と自民党、つまり与党間の合意がきちんとできた段階で、この委員会にそれを出していただいて、その上で議論させていただく。そういう時間をきちんと確保していただかないと、これは国民が見ている国会の場で議論しないで決めちゃうことになりますよ。もし理事会でやったとしても同じです、それは。そこをきちんと確保していただけませんでしょうか。

山崎委員長 岡田克也君に委員長として申し上げます。

この法律案、周辺事態法でございますが、これに関しましては、累次の国会で継続審査措置がとられてまいりまして、この案件について国会で審議をすることが各党合意でございます。

さらに、特別委員会が設置されまして、この委員会に付託されましたわけでございます。付託されまして、この法律案を審議するということが合意されまして、審議が続けられているという状況でございまして、これは国会法上も、あるいはあなたがおっしゃる政治的な見地から申しましても、政府提出の法律案につきまして審議を進めたいと存じます。

岡田委員 今お話しされたんですが、しかし、我々何を議論したらいいのかはっきりしないのですね。政府案はありますけれども、政府案と違う議論が今や与党の中で、与党というのは政府を構成する与党の中で進んでいるわけであります。ですから、やはりどこかの段階で、きちんとした、与党としてはこういう考え方であります、政府案とここをどういうふうに変えましたというものが、本来であれば法案で示されるのが私は妥当だと思いますが、少なくとも考え方としてはきちんと出されて、それに基づいてこの委員会で審議をしなければ、この委員会は何のためにあるのか。

もう今やほとんど変わってしまったかもしれない政府案だけを議論しているけれども、肝心の変わったポイントの部分については、審議しないままに委員会が終了してしまうことになりかねません。それは私は絶対認められません。いかがでしょうか。

山崎委員長 岡田委員の委員長に対する御質問と受けとめましてお答えいたしますが、委員個人のお考えであろうかと思います。

この委員会といたしましては、既に、三案件につきまして審議を行うことを決定いたしまして、日程を組み、審議を続けているところでございます。そして、政府提出の案件につきまして質疑が展開されてまいりましたわけでございます。その一環としてあなたも質問をしていらっしゃるという状況にございます。

岡田委員 私が申し上げているのは、ですから、その政府案で与党の中の合意があると我々当然思ってこの審議に入っているわけです。それがいまだに、いろいろ違う意見が出てくるから申し上げているわけです。事情が違うんです、我々が想定していたことと。いかがですか。

山崎委員長 お答えいたしますが、与党間で議論をするということはあり得ると思いますが、これは政府提案でございまして、政府提案の案件三件について審議をするということを与野党間で合意いたしまして、審議を進めているわけでございます。

あなたの御議論は、この特別委員会が設置される以前とか、あるいは設置されました後審議に入る直前までの御議論としてはあるいは議論の余地があろうかと思いますけれども、既にもう審議が始まっておりまして、かなりもう進捗いたしておる状況でございます。

岡田委員 私は、この政府案を審議しないと言っているんじゃないのですよ。現実に審議しているわけです。審議しないと言っているんじゃありません。しかし、これだけを審議して、実は与党の間で違う案がもうほぼできつつある、今、野田さんも、九九%できているというふうなことを言われました。それがなぜ出てこないのですか。そのことについてもやはり議論が委員会でできなければ、結局、国会を飛ばして、勝手に各党が、あるいはそのほかに野党も場合によっては入っちゃうかもしれません。与野党が勝手に談合してつくってしまうと、国民には全然そのプロセスが見えないということになりますよ。

だから、やはりきちんとしたものを出していただいて、委員会で議論をして、国民に見える中で、お互いに修正協議、合意をしていかないと、これは本当に禍根を残すことになりますよ。いかがですか、委員長。

山崎委員長 お答えいたしますが、与党二党で法律案の内容を変えるというようなことはございません。

岡田委員 この点は、引き続き理事会でも議論されることだと思いますし、私も問題意識を持っておりますので、もし仮に、この委員会の場にきちんとした与党の間の修正案というもの、あるいは考え方というものが示されないままにそれが採決されるということになれば、それは私は全く国会を無視した話になる、そのことをまず申し上げておきたいと思います。よろしくお願いをしたいと思います。

山崎委員長 民主的に運営いたします。

岡田委員 それでは、次に参ります。

日米安保条約との関係を少し議論したいと思いますが、日米安保条約の目的の枠内とかあるいは日米安保条約の枠内という議論がございます。目的の枠内と安保条約の枠内というのは基本的に同じだ、こういう御答弁が政府の方からはあったと思いますが、もう一度、安保条約の目的の枠内ということの意味について御説明をいただけないでしょうか。

高村国務大臣 日米安保条約の目的は何かといえば、最も重要な条文である五条、六条から明らかなように、我が国及び極東の平和と安全、こういうことであります。そして、この周辺事態安全確保法案というのは、そのうち我が国の平和と安全ということに着目したものでありますから、安保条約は極東の平和と安全というのも入っていますが、この法案は我が国の平和と安全ということに着目したものでありますから、その目的の範囲内であるということは明らかなことであるということを何度も答弁しているところでございます。

岡田委員 そうすると、その目的の枠内という表現を法文の中に書かれるというお考えはあるのですか。

高村国務大臣 政府といたしましては、今提案しているものがベストだと考えておりますから、このまま通していただくのが一番ありがたい、こういうことでございます。

岡田委員 目的の枠内という表現、今の御説明なんですが、結局、目的が同じであるということを示しているだけで、日米安保と周辺事態法の関係については何も言っていないと思いますね。ベクトルが同じ方向を向いていると言っているだけで、それがどういう関係にあるのかということは言っていない、そういうふうに思いますが、いかがですか。

高村国務大臣 私が申し上げているのは、目的というのは、極東と我が国の平和と安全である、そのうちの我が国の平和と安全に着目したのがこの法案であるということでありますから、まさに枠内である、こういうことを申し上げているので、委員がおっしゃっている意味が、ちょっと私わかりかねます。はっきり整理できないのですが、私が申し上げていることは、私が今言ったとおりでございます。

岡田委員 例えば、日米安保条約の実効性を確保するためにこの法律があるんだということにした場合には、何か問題がありますか。

高村国務大臣 政府の基本的立場とすれば、そういう言葉を、いずれの言葉であっても条文の中に書き込む必要はないと思っていますが、この法案が実効性を確保するためのものかと問われれば、実効性もしくは信頼性、そういったものを確保するためのものであると言ってもいいだろう、こう思っています。

岡田委員 実効性を確保するためのものであるというふうに位置づけた場合に、この周辺事態法の中で、後方地域支援については米軍の存在というものを大前提にしておりますが、後方地域捜索救助活動と船舶検査活動については、これも大臣に前に御質問したところでありますが、そういう縛りがかかっておりません。したがって、非常に極端なケースを想定すれば、米国が周辺事態であると認識しない、あるいは認識したとしても米国としては関与しないということになった場合でも、先ほどの後方地域捜索救助活動と船舶検査活動については日本だけの判断で協力といいますか活動ができる、こういうことに、法律の立て方はそうなっていますね。そのことは、かつて国会でも大臣がお認めになったと思うのです。

そうしますと、日米安保条約の実効性を確保するためにやるんだということになると、そういった、米軍があるいはアメリカが全く関与しないというときに日本だけの判断でやるということについては、これは排除するということになりますが、そういう考え方でよろしいですか。

野呂田国務大臣 周辺事態とは、先ほどから言っておりますように、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありまして、かかる事態に際して、我が国が主体的な判断によって自衛隊の活動を含む対応措置を講ずることはいわば当然のことでありまして、米国の関与があると否とにかかわらず、問題があるとは考えていないところであります。

なお、周辺事態に際しまして、ガイドライン法案に基づき自衛隊が実施する後方地域捜索救助活動や船舶検査活動は、今おっしゃるように、後方地域支援のように日米安保条約の目的の達成に寄与する活動をしている米軍の活動を前提としたものではございませんけれども、これらの活動も、周辺事態に対応して我が国の平和と安全の確保のために実施されるものでありますから、我が国及び極東の平和と安全の確保という日米安保条約の目的の枠内にあると言うことができると思います。

岡田委員 ちょっと、議論を混乱させないために少し整理したいと思いますが、私が申し上げているのは、この後方地域捜索救助活動や船舶検査活動について、それぞれ米軍の存在を必要とする、こう言っているわけではありません。それはなくていいのですね。

非常に極端な話をすれば、例えば米軍がどこかで武力行使をしている、しかし後方地域捜索救助活動や船舶検査活動については手が回らないからそれは日本だけがやる、そういう話であれば、これは、この法律、日米安保条約の実効性を確保するという考え方に立っても十分成り立つ話だと思うのですね。

しかし、周辺事態全体について、アメリカとしてはこれは関与しません、こう言っているときに、後方地域支援というのはアメリカ軍がなければできませんが、後方地域捜索救助活動や船舶検査活動についてはこれは日本だけでできますから、全体について米軍が関与しないときに、日本が後方地域捜索救助活動や船舶検査活動を日本だけの判断でやるということがこの法律上は可能になっている、そういうことを認めることが先ほど言った日米安保条約の実効性を確保するという趣旨だと、この法律がそういう趣旨だとすれば、そうじゃないのじゃないですかということを申し上げているわけです。わかりますか、私の申し上げていること。

佐藤(謙)政府委員 周辺事態の判断そのものについては、これも何度も申し上げているところでございますが、日米それぞれ、おのおの主体的に判断をするということでございます。

しかし、実際の問題といたしましては、それに至るまでにいろいろな情報交換、協議等もございますので、日米双方で判断が異なることはまず考えられないということでございますし、そういう事態におきまして、日本の平和と安全に重要な影響があるという事態において米軍が全くそれに関与していないということも、実際上の問題としては非常に考えにくいのではないか、こういうふうに思います。

岡田委員 実際上どうかという議論はそれはあると思いますが、しかし、それがどういう事態になるかということは一〇〇%想定できないわけですから、結局、法律の立て方がどうなっているかという議論をまずきちんとしておく必要があると思うのですね。

そういう中で、私はこれは基本的には根本の議論だと思うのですね、この法律の性格いかんと。日米安保条約の実効性を確保していくためのそういう法律なのか、あるいは、それをはみ出して、自衛隊が日本だけの判断で活動するということも認めた法律なのか。ここは法律の基本的性格のところだと思います。

私は、自衛隊が日本の判断だけで活動していくということが一般的にだめだと言うつもりはありません。例えば邦人救出とか機雷の掃海などは、自衛隊法の中で日本単独の判断でできることになっています。そういうものに準ずるものとして、もちろん事態は、日本の平和と安全に重要な影響がある事態という周辺事態に限られてはいますが、そういう邦人救出や機雷掃海に準ずるものとして、後方地域捜索救助活動とか船舶検査活動について日本だけの判断でできるようになっていると、この法律が。

私は、そういう議論はもう少し議論を深めて、自衛隊というものがどういう場合に活動をする、どこまで認めるべきなのかというきちんとした議論をした上で、自衛隊法の中で考えていくべき問題でありまして、このどさくさの中で、この周辺事態法の中でそういう余地を認めていくというのは避けるべきじゃないか、こういうふうに考えているのですが、防衛庁長官、いかがでしょう。

野呂田国務大臣 先ほども申し上げたところでございますが、後方地域捜索救助活動や船舶検査活動は、いずれにしましても、周辺事態に対応しまして我が国の平和と安全の確保のために実施されるものであり、我が国の平和と安全に大きく貢献するものでありますから、これは我が国及び極東の平和と安全の確保という日米安保条約の目的の枠内であるということを先ほど来申し上げておるわけであります。

しかし、周辺事態は、前提として、各国がそれぞれの国益確保の観点から主体的に行うということになりますので、米国の関与があると否とにかかわらずできるということについては、法律上は私どもは何ら問題がないと思います。しかし、先ほど政府委員から答弁しましたように、そういうそごは実態問題としては起こらない、いろいろな協議を濃密にやっていきますので、実態上そごは起こらない、こういうことを申し上げておる次第であります。

岡田委員 防衛庁長官に端的にお聞きしますが、この法律が日米安保条約の実効性を確保するための法律であるという考え方はお認めになりますか。

野呂田国務大臣 そのとおりであります。

岡田委員 もしそうだとすると、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態があって、しかしアメリカはアメリカの国益判断に基づいて、これについて関与しませんということを言っているときに、日本だけが判断をして動いていく、この法律に基づいて活動していくということは、それがなぜ日米安保条約の実効性を確保することになるのですか。

野呂田国務大臣 委員の御指摘は、あくまでもそういうそごが起こるという前提に立っての質問でございますが、私どもは稠密な協議を重ねて周辺事態に対応するということになりますから、日本とアメリカが周辺事態の認定においてそごを生ずることはあり得ない、こう考えておる次第です。

岡田委員 そごが起こることはあり得ないという御答弁ですが、じゃ、そごが起こる、つまりアメリカが関与しないのに自衛隊が日本の判断で活動していくことは望ましくないという判断をしておられるわけですか。

野呂田国務大臣 法律上、単独の行為は、もちろん国益保護と主体的な判断によってできるわけですが、実際上、そごを来して日本が単独でやる、アメリカもまた単独でやるというような事態は想定されない、こういうことを申し上げておるわけであります。

岡田委員 ここはこの法律の基本的性格のところでありますので、私は、ちょっと議論を整理して、次回答弁していただきたいと思います。防衛庁長官の言っておられることと外務大臣の言っておられることが少し違うのかもしれませんし、いずれにしろ、この法律が日米安保の実効性を確保するためのものであるという前提に立てば、私は、日本だけの単独で行動するというのはそこから外れる話になる、こういうふうになると思います。それは実際には起こらないからいいんだとか、そういうのは答弁になっておりません。法律上できることになっているということについてどう考えるのか、その点についてきちんとした答弁をいただきたいと思います。もし今できないのであれば、この委員会の場にその考え方を示していただきたい、そういうふうに思います。

野呂田国務大臣 何度も申し上げておるわけでありますが、たとえ日本が単独でやろうと、我が国の平和と安全に大きく寄与し貢献する行為でありますから、私は、日米安保条約の枠内における行動である、こういうふうに申し上げているところです。

岡田委員 ですから、それは日米安保条約の目的の枠内という表現の中で、目的が共通しているという中で、非常にごまかしておられると思うんですね。我々が言っている日米安保条約の枠内という意味は、日米安保条約の実効性を確保するための法律である、そういう認識で言っているわけで、そのことはどうですかということを先ほどからお聞きしているわけでございます。

時間の関係でこの辺にいたしますが、ここは基本的なこの法律の性格の議論ですから、きちんとした答弁を次回はいただきたい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。

それから、官房長官にせっかくおいでいただいておりますので、ちょっとお聞きしたいと思いますが、邦人救出のところであります。

前回もいろいろ議論いたしましたが、今まで御答弁いただいているのは、例えば今度の改正で艦船の派遣ということが認められるようになりました。その艦船には、武装した護衛艦なども場合によっては入る、こういうことでございます。これは、従来は主として輸送の用に供する航空機ということで非常に抑制されておりましたが、今回の場合には、艦船については非常に広がる。

私は、広がること自身について絶対にだめだ、そういう意見を持っているわけではありませんけれども、しかし、邦人救出を必要とするような事態というのは、かなり周辺で紛争が起こっていたりするわけで、そういうところに武装した自衛隊の船を出していくということは、ある意味では今までとは大分違う話。主として輸送の用に供する飛行機だけを出しておって、しかも閣議決定で九十五条適用も排除していた、そういう事態とは大分質的に異なる話だと思います。

したがって、少なくとも防衛庁長官ではなくて内閣の判断として、内閣総理大臣がそういうことを決定するということに私はすべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

野中国務大臣 私が法律的に解釈してお答えするのが適切かどうか迷うわけでございますけれども、委員が今御指摘のございました、在外邦人等の輸送を規定いたしております自衛隊法第百条の八の趣旨は、申し上げるまでもなく、外国における緊急事態に際しまして生命等の保護を要する邦人等を、外務大臣からの依頼に基づきまして防衛庁長官が自衛隊により本邦への輸送をするというものでございまして、この法律の改正案によりまして、輸送手段として輸送に適する船舶が追加をされるといたしましても、さきに述べました自衛隊法の趣旨が変更されるものではないわけでございますので、現行のとおり、外務大臣からの依頼に基づきまして防衛庁長官が権限として行うことが適切であると考えておる次第でございます。

岡田委員 従来の趣旨が変更されるものではないという御答弁ですが、しかし現実には、主として輸送の用に供する航空機から武装した護衛艦まで変わるわけですね。そこについて、それだけ実態が変わることについて、もう少し縛りを強くした方がいいというのが私の考えでありますが、官房長官はそうすると、そういう武装した護衛艦を紛争地域に非常に近いところに、たとえ邦人救出という目的のためであっても、出していくということについては何の心配もしておられないということですか。

野中国務大臣 法制局長官がお答えするのが道かもわかりませんけれども、私は、先ほど御答弁申し上げましたように、その内容において異なるものではございませんので、従来どおり、外務大臣の要請によって防衛庁長官が行う権限の範疇に入るものだと思っておるわけでございます。

岡田委員 いつもハト派的発言をしておられる官房長官に若干期待をしたんですが、余り成果はありませんでした。

最後に、内閣法制局長官にお聞きして終わりたいと思います。

武器使用の問題で、前回議論しましたときに、自衛隊法九十五条は自然権的権利ではないというふうにおっしゃいました。従来、武器使用と武力行使について議論していく中で、自然権的権利だから、自己保存のための自然権的権利だから武器の使用は認められるという議論があったわけですが、その自然権的権利というのは、いわば憲法を超える存在としてある、あるいは当然の、憲法の規定の、条文の前提としてそういうものがあるから、九条があるにもかかわらずそういうものは認められるんだ、こういうふうに私は理解をしております。

今回は、自然権的権利ではないということになりますと、改めてやはり憲法九条との関係をきちんと説明する必要が出てくると思うのですが、この点について、長官、いかがお考えですか。

大森(政)政府委員 憲法九条との関係を考えます場合に、自然的権利に当たるかどうかで憲法九条との関係を仕分けするということを従前から議論しているわけでございません。あくまで、やはり憲法が原則として禁止している武力の行使に当たるかどうかということがその仕分けの基準でございまして、その当たらない一例として、生命、身体を防護する目的による武器使用というのは自然的権利であるから武力行使に当たらないんだ、こういうふうにお答えしたにとどまるわけでございます。

したがいまして、あくまで憲法九条に言う武力の行使に当たるかどうかという観点から、正面から検討してみなければならないというわけでございまして、少し従前の答弁と重複いたしますけれども、自衛隊法九十五条に基づく武器の防護のための武器の使用と申しますのは、我が国を防衛するための重要な物的手段である自衛隊の武器等の破壊や奪取から当該武器等を守るため、武器等の警護に当たる自衛官に極めて限定的かつ受動的な条件のもとで認められた最小限度の行為である、これは従前から御説明いたしているわけでございます。

このような行為というのは、憲法九条が禁止している武力の行使、すなわち我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行動というものには当てはまらないのではなかろうかということでございます。

岡田委員 この議論、続きは次回やりたいと思いますが、自衛隊という物的、人的組織、そして向こうが攻撃をしかけてきた、それに対して反撃をする、そういうことですと、私は、そこにぴたっとはまってくるだろう、その定義に入ってくるんじゃないかというふうに思っておりますので、この点について、次回また引き続き議論させていただきたいと思います。

終わります。

山崎委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。




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