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1998.04.17|国会会議録

142回 衆議院・安全保障委員会

岡田委員 続きまして、日米防衛協力のガイドライン関連立法につきまして、周辺事態、国会承認を中心に、今の横路委員の質疑を受けまして続けさせていただきたいと思います。

まず、今回の立法でありますけれども、基本的に日米の防衛協力というものは一体何かということの認識からスタートしなければいけないというふうに思うわけであります。

基本的に、米軍というのは今世界の中でただ一人の警察官として活動しているわけでありますが、米軍が世界の中で警察官として活動していく中で、一定の条件のもとで日本がその米軍の行動に対してこれを支援していくというのがこの立法の一番ポイントのところではないか、そういうふうに思うわけですが、長官はそういう御認識でしょうか、お聞きしたいと思います。

久間国務大臣 米国が世界の警察官として活動する、その一翼を担うというような位置づけではないのではないかと私は思っております。

あくまで今回のガイドラインは、日米安保体制という体制ができ上がっている、その中で、我が国の平和と安全に重要な影響が出てきた場合に、我が国も主体的にいろいろな行動をしますが、やはり日米双方が連絡をしながら、協力しながらやった方が非常にいいというようなケースを想定しながらそれに備える、そういうものだと思っております。

世界の警察官として活動する米軍を日本が助けるといいますか、サポートするというような役回りではない。あくまで我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合にどうするか、そういう問題だというふうに認識しております。

岡田委員 日米安保共同宣言の中で、アジア.太平洋の平和と安定のためにという中心テーマがあったと思いますが、では、世界の警察官というのは横に置くとして、少なくとも、アジア・太平洋の平和と安定のために米軍が活動する、その中で日本が一定の範囲の中でこれを支援していく、協力していく、こういう視点は当然あると思いますが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 アメリカはあるいはそういう意識を持っているかもしれませんし、それは私はわかりませんが、少なくとも我が国の立場としてはそういうものではない。

日米安保体制というのは我が国の平和と安定のために非常に役立ってきた、そして平和が続いた、その恩恵というのはアジア・太平洋地域に広がっておる、そういう認識はございますけれども、アジア・太平洋地域の全体の平和と安定を守るために米軍が活動する、それを日本がサポートする、そういうような積極的な、いわゆるアジア・太平洋の警察官としてのアメリカ、それをサポートする日本という位置づけではなくて、あくまで我が国は我が国の平和と安定を守っていく、そういう立場。そして、それをアメリカにもまたサポートしてもらう、一緒になってやっていく、それが結果としてアジア・太平洋地域の平和と安定、そしてさらなる発展に寄与している、そういうような認識でございます。

岡田委員 この問題の深入りは避けたいと思いますが、今の長官のお話は、アジア・太平洋の平和と安定ということと日米安保条約をそういうふうにお考えだとすれば、結局、日米安保条約あるいは米軍の存在が瓶のふたである、日本の行動を制約しているということを日本政府が認めたということにしか私は論理的にはつながってこないと思います。しかし、この点は別の機会にさらに議論したいと思います。

先般、イラクの問題で、日本の立場をどうすべきかということで、国連決議がきちんとあるのかないのかとかいうことも含めて日本の態度を問われたときに、私は日本国政府は非常にあいまいな答えに終始したというふうに思うわけです。米軍の軍事行動に対して支援するか支援しないかということについて、明確には述べることができなかった。

しかし、今回のこのガイドラインの問題は、長官いろいろおっしゃいますから日本のことに限定しても結構ですが、日本のこの周辺事態の定義に当てはまれば国連決議がなくても米軍の単独行動に対して日本がそれを支持するのですよ、こういうことですね。国連決議がなくても米軍の行動に対して日本はそれを支持し支援するということは当然あり得る、そういう重い話だというふうに私は思うのですが、これは当然のことだと思いますが、長官の御認識をお聞きしたいと思います。

久間国務大臣 我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、そのために行動する米軍に対しては、我が国は適切な対処をしていきます。

岡田委員 つまり、そのときに国連決議がなくても、行動する米軍に対して日本は支援をする。長官、ちょっとお答えください、今のお答えはそういう意味ですね。意味かどうかを聞いているのですから、長官にしかお答えできませんよ。長官、お願いします。

高野政府委員 そもそも、このガイドラインとの関係におきまして、我が国と米国との関係の防衛協力でございますので、この協力は安保条約の枠という中における協力であるということがまずございます。

それから、先ほど来の国連との関係で申し上げれば、安保条約自体にもございますけれども、そもそも日本及び米国はそれぞれ国連憲章の原則というものを遵守するという立場での協力を安保条約も含めて行うということでございます。決議が具体的にあるかどうかということは、またそれは別の問題でございますが、いずれにしても、そういう基本的な原則の中で日米間の防衛協力が行われる。決議が必ずしも必要ないということだと思います。

岡田委員 長官も同じ御認識でよろしいですね、決議がなくてもこのガイドラインというものは発動される。お答えいただきたいと思います。

久間国務大臣 立場が外務省ではございませんでしたので答弁を控えましたけれども、今度のガイドラインの中にも、国連憲章あるいは国際的な取り決めを尊重するということをうたっているわけでございます。

ただ、国連決議とまではうたっておりませんので、そういうような枠内で活動する米軍、しかも我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合には、それはしかるべくいろいろな対処をするわけでございます。

岡田委員 つまり、イラクのときに国連決議があるのかないのか、あのときは私はグレーだったと思いますが、そういうような場合でも、米軍が武力行使するということについて世論は非常に割れたと私は思うのです。

今回の場合、日本に直接関係のあることとはいえ、そういう国連決議、安保理決議が場合によってはない場合にも日本は協力するのだ、そういう重い話だということを政府はまずきちんと国民にメッセージを発する必要があると私は思うのです。何か非常に、大したことない、単に協力するだけですよ、そういうふうに説明されているように思うわけですけれども、これはそういう意味では非常に重い話である、重要な話であるということだと思います。私は、だからやらなくていいとはもちろん言っていません。やらなければいけないという前提で、しかし、物事の重要性はきちんと政治は国民に対して伝える必要がある、そういう前提でお話をさせていただいているわけでございます。

そこで、周辺事態の定義でありますが、この定義は非常に重要であります。

つまり、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態の場合にのみこの米軍に対する支援ということが行われるわけでありまして、もしそうでなければ、先ほど言いましたように、世界じゅう、世界の警察官として行動する米軍に対して、日本はあるいは自衛隊は憲法九条の許す範囲でどこでも協力するということになりかねないわけでありまして、そこを日本の国益、つまり我が国の平和と安全に重要な影響を与えるというところでぴしっと切っているところにこの意味がある、こういうふうに思うわけでございます。

そこで、この定義が不明確ですとそこが非常にぼやけてしまうわけで、例えば今までのこの国会での御議論の中で、軍事的な観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるというふうに御答弁をいただいております。単なる我が国の平和と安全に重要な事態ということじゃなくて、軍事的な観点から見てという御答弁をいただいているわけですが、そうであればそのことを法律に書くのが当然だと私は思いますが、いかがでしょうか、周辺事態の定義として。

久間国務大臣 日米防衛協力という形でございますので、その一環として、ガイドラインの取り決めであり法整備でございますから、やはり軍事的な要素があるということになりますけれども、周辺事態を定義するというよりも、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が発生したときにどうするかというような観点から法律はつくっておりますので、その周辺事態の中身が軍事的であるとかないとか、そういうようなことを法律に書かなければならないということにはならないのじゃないか。

むしろ周辺事態という事態が、日本の平和と安全にとって重要な影響を及ぼすような事態が発生したときに、米軍に対してどういう協力をするか、あるいは自衛隊がどういうような行動をとるか、そういうようなことについて基本計画をつくって国会へ報告しようとしているわけでございます。

そういうのを見ていただくと、軍事的要素というか、要するに武力的な要素といいますか、そういうもので日本の国民の生命等にいろいろな事態が発生しないように、先ほど機雷の話をしました

けれども、そういうようなことに対して自衛隊が協力する、あるいはまた情報収集する、そういうようなことになろうかと思うわけでございまして、法律にそれを書き込まなきゃいかぬというようなことにはならないのじゃないかと思っております。

岡田委員 今まで国会の場で、まず周辺事態の定義として、軍事的な観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるという御答弁をいただいておりますが、そこはお認めになりますね。

佐藤(謙)政府委員 法文での書き方につきましては、今長官から御説明したように、どういう形での表現がいいかということで、私どもとしては、我が国の周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態ということが、きちっとした格好で法文に記載していくということではこういう形が適当ではないか、こんなふうに考えております。

また、今お尋ねの軍事的観点の点でございますけれども、軍事的観点を初めとする種々の観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、こういうふうに考えておるところでございます。

岡田委員 今の答弁だと、従来の答弁の修正ですから一統一見解を出していただけますか。

佐藤(謙)政府委員 これまで申し上げていることと異なるところはないと思いますけれども、先般、北米局長がこの点について御答弁をしていると思いますけれども、私が今申し上げたのもその考え方に沿った御答弁をさせていただいているわけでございます。

岡田委員 ですから、そういうあやふやな答弁なら、答弁していただかなくて結構です。

前回の高野政府委員の答弁は、

今軍事的な観点と申し上げましたのは、軍事的な観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるかということでございます。

したがいまして、我が国の平和と安全から見て軍事的な観点から影響はないということになりますと、これは、ここで言う周辺事態ということには該当しないというふうに考えております。

とはっきり言われているわけですよ。

ですから、それを何か非常にあやふやな答弁で打ち消すというようなやり方は、私は国会の議論の仕方として非常におかしいと思うのですよ。

もし前回の答弁が違うのなら違うと言っていただきたい。今の防衛局長の答弁は、この高野さんの答弁と実質的に違う答弁を言うことで、最後は同じだという言い方をされましたが、後で議事録を比べてみればわかると思いますが、実質的に違うわけです。違うことを同じだと言うような、そういう白を黒と言うようなやり方は私はぜひやめていただきたい、こういうふうに思います。そのことをまず申し上げておきます。

私は、こういう前提で軍事的な観点ということが入っているわけですから、そのことは法律にちゃんと書くべきじゃないですかということを申し上げているわけです。これは立法技術の問題ではございませんということをまず申し上げておきたいと思います。

次に、安保条約との関係であります。

安保条約との関係につきましては、政府から御説明いただいた新法の概要というところでは触れられておりませんで、はっきりしないわけでありますが、従来の私の質問に対して、例えば小渕国務大臣は、

今回のガイドラインは、あくまでも日本国憲法に基づいて、安保条約の範囲において、特に六条の問題についてきちんと法制化しようという立場で考えておるわけでありまして、我が国としては、日本並びに日本周辺の事態が我が国の安全に大きな影響を与えるということを排除する意味で、日米安保条約を効果的に、その条約の意味が達せられるようにということでの今回のガイドラインの決定だと理解しております。

こういうふうに答弁をされておりまして、あくまでも今回のガイドラインは安保条約六条の枠の中の話である、こういうふうに答弁されているわけでございます。

ここは、そうでないという考え方も当然できるわけですね。別に憲法九条に触れなければ、自衛隊というものが安保条約の枠の外で活動するということも法制上は可能であります。しかし、外務大臣はこういうふうに答弁されているということであれば、私は若干疑問があるのですが、政府のお考えとしてはそういうことであろう。

そうであれば、今度の法律の中にこの安保条約との関係というものをきちんと明記すべきだ、こういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 これは外務省かもしれませんけれども。

安保条約の今言われた六条だけというふうに答弁しておられるのか、その辺は、安保条約の目的に寄与するためにやっているわけですけれども、六条だけということなのか、安保条約全体を指してその枠内でやるというふうに私どもは認識しておったのですけれども、六条だけというふうに限定されますと、六条は施設・区域の提供だけになっておりますので、いろいろな活動というのは、今度の補給にしましても輸送にしましても、もう少し広い概念があっていいのじゃないか。

ただ、六条で言っている施設・区域の提供をするというもとになる目的も含めて、六条が設けられた趣旨といいますか、そういうようなことだというならば、そのとおりかもしれませんけれども、六条だけというふうに限定してしまいますと、若干狭いのじゃないかな。

安保条約全体の枠内での話だというふうに理解しておりますので、その辺、若干委員の御指摘に沿わないのかもしれませんが、私はそういうふうに理解しております。

岡田委員 ちょっと議論を整理しておきますが、これはあくまでも米軍に対する後方支援についての話であります。法制全体じゃございません。

ここは考え方がいろいろあると思いますが、もし六条ということであればそういうふうに書くべきだし、あるいは安保条約全体だとおっしゃるのであれば、安保条約全体といっても、では具体的には何なのか、安保条約の目的達成という意味は具体的にはどういうことなのかということをきちんと政府は説明される必要があると思いますし、そのことは私は法律にきちんと書いておくべき話だ、こういうふうに思うわけでございます。いかがでしょうか。

佐藤(謙)政府委員 今先生がお話しのように、ガイドラインのうち後方地域支援の部分についてのお話であれば、まさにガイドラインの中におきます後方地域支援は、安保条約の目的達成のために行動している米軍ということが前提でございます。それで、現在関連の法案の作業をしているわけでございますけれども、もちろんその法案の作業はこういったガイドラインの考え方に沿って行われているわけでございます。

したがいまして、そういう中で、今おっしゃいましたような、ガイドラインで考えている後方地域支援の対象の米軍がどういう米軍であるかということにつきましては、御質疑の中でその点についてきちっと対応させていただくということになろうかと思います。

岡田委員 その際に、これは六条じゃなくて安保条約全体だというなら、安保条約というのは、軍事だけではございません、非常に幅広い条約ですから、その目的と言われても何のことかよくわからないわけなので、もう少しきちんとお書きになってはどうでしょうか、そういうことを申し上げているわけでございます。

それからもう一点、周辺事態に関してお聞きしたいと思います。

この平和と安全に重要な影響を及ぼす事態、先ほど横路委員も御質問になったわけですが、これは日本に軍事紛争が直接波及してくるような場合だけじゃなくて、機雷がぷかぷか浮かんできて、それを排除しなければいけないような場合も含むのだというのが長官のお答えだったのですが、例えばこういう場合はどうなのですか。

軍事紛争が起きて、その結果として国の支配体制が変わるというか、もっとわかりやすく言いますと、朝鮮半島で軍事紛争が起きて、そして大韓民国がなくなってみんな北朝鮮の支配下に置かれる、そのことが結果的に日本の平和と安全に将来重大な影響を及ぼしかねない、こういう場合もこのガイドラインの対象になるのですか。

久間国務大臣 それは体制が変わっただけの話でありまして、私どもに、それによって平和と安全に重要な影響を与えるというような抽象的な話じゃございませんで、あくまで、先ほど外務省の北米局長から答弁がありましたように、これまで議論をしております中においては、我が国に軍事的な要素を含んで平和と安全に影響が出てくる場合を指すわけでございます。

先ほどのいろいろな答弁のやりとり、私もあのときにおりましたので聞いておりましたけれども、単に湾岸戦争で日本に油が来なくなった、それをもって我が国の平和と安全に重要な影響があるとして、これはガイドラインの対象になるのか、周辺事態になるのかということに対して、それは軍事的要素がないので、そういうことまで考えているわけじゃございませんという、あのときもたしか委員と北米局長とのやりとりだったと思います。

今のまさに例を挙げられましたようなことを是認するわけでもございませんし、私どもはとにかく特定の地域、特定の国を想定するわけではないということを言っておりますので、それを前提にしては答弁できませんけれども、そういうような事態は、少なくとも今考えておる我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態とは直ちには言えないというふうに思います。

岡田委員 この問題はきょうはこの辺にさせていただいて、次に、国会承認の問題であります。

先ほど長官の御答弁を聞いていて、ちょっと違うのじゃないかなと思ったのは、長官は、直接立法府がコントロールすることがシビリアンコントロールだとは思わない、こうおつしゃいましたね。その意味はどういうことですか。

久間国務大臣 ちょっと私の言い方も適切でないかもしれません。直接コントロールすることのみをもってシビリアンコントロールが達成されているというものでは必ずしもない、そういうような言い方でございます。

シビリアンコントロールの仕方はいろいろあろうと思います。まず、行政府の中でコントロールし、そしてまた立法府が行政府に対してコントロールする、そういう間接的なコントロールもあるでしょうし、あるいは直接立法府がいわゆる制服に対してコントロールするやり方だってあると思います。しかし、それがどれが一番いいかというのは、これはまた選択の問題だろうと思います。

岡田委員 そういうふうに言っていただければよくわかるわけであります。

現在でも、治安出動や防衛出動の場合には国会が承認するということになっておりまして、直接的なコントロールというものもあるわけですから、もし国会の直接コントロールがシビリアンコントロールだと思わないということになりますと、今の法律を否定することになるわけであります。

では、治安出動、防衛出動と比べて今回の場合がどうなのかという中身の議論をしなければいけない、こういうことだと私は思います。

その中身の議論ですが、長官、これは予算委員会でも私申し上げたことがあるのですが、急ぐからということをよくおっしゃるのですが、これは全く議論として成り立たないので、これから国会の場で言うことをやめていただきたいと思うのです。

治安出動や防衛出動だって、急ぐ場合には事後承認の道を開いています。場合によっては、私は、治安出動、防衛出動と比べれば、まだ今回の方が時間的ゆとりはある場合が多かろうと思うのですよ。何せ政府の方は計画をつくるわけですから、少なくともそれだけの時間はあるわけですよ。治安出動、防衛出動は、瞬間的に判断しなければいけないことが結構多いと思うのです。そういう意味で、私は、急ぐからという理由は成り立たない、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 確かにそういう面はございます。迅速性をもってやる場合には事後承認でいいじゃないかというような御意見はあろうかと思います。

しかしながら、従来から言っていますように、やはり迅速に対応するというのも大事な要素の一つでございます。それと、防衛出動、治安出動と比べましたときには、国民の権利義務に直接かかわるものでないという面もございまして、それらを考えて報告でいいのじゃないかなというような判断をしたわけでございます。

特に在外邦人の救出等につきましては、これは本当に迅速にやらなければなりませんから、基本計画の決定だって一日でやってしまわなければならないような場合も出てくるわけでございます。

そういうことを考えますと、そのとき、こういう事態が発生するのがいつの政府になるかわかりませんけれども.政府としては、国民の生命財産を預かっているわけでございますから、とにかく早く対応できるようにしてもらいたい、そういう思いが私としては非常に強いわけでございます。

岡田委員 それは治安出動、防衛出動だって同じだと思うのですね。特に防衛出動の場合などは、本当に、時間がたてばどんどん日本国民の権利義務が侵害される、今までも奪われる、こういうことですから、急ぐのは当たり前なのです。それにもかかわらず今の規定があるということをお考えいただく必要があると私は思います。

だから、ポイントは、権利義務の侵害かどうかということに尽きると私は思います。国民の権利義務に関係するかどうかということであります。

私は、このガイドラインの問題というのは、非常に国民の権利義務にかかわる問題だと思います。

一つは、個別の問題で、私もかつて予算委員会で御質問させていただき、先ほど横路委員もおっしゃった、自衛隊が動く上で民間に対していろいろ権利の制限的なことも起こってくる、こういう問題であります。

もう一つは、この後方支援を行うということが、相手国から見れば戦争加担行為であるというふうに見られることも当然あろうかと思います。武力行使は一緒にしていないけれども、しかし、米軍を助けているわけですから、少なくとも愉快な話ではありません。したがって、それに対して、例えばテロで対抗するとか、あるいは直接日本に対して武力攻撃をかけてくるということも当然場合によってはある、そういう重い話ですね。私は、そのことをまず指摘したいと思うのです。

重い話だけれども、それはやらなければいけない場合は当然ある、そういう前提に立った上で、重い話だから、つまり、場合によっては国民の財産や生命まで危険にさらすようなことが将来あり得る話だから国会承認をかけるべきだ、私はこういうふうに申し上げているわけです。いかがでしょうか。

佐藤(謙)政府委員 基本的な考え方は、先ほど久問長官から御答弁したところでございます。

今回、この周辺事態に対する対応について、私どもは国会への御報告ということを現在検討しているわけでございますけれども、そういうことを判断するに当たって、一つは、今問題になっております国民の権利義務に対する直接的な関係がどうなのかという点、それから、その事態への対応の仕方の迅速性とか、自衛隊が活動をするその行動がどういうものであるかとか、そういったものを総合的に検討の上判断をしていく問題ではないか、かように考える次第でございます。

今のお話でございますけれども、これはまさに、周辺事態に対しますこのような対応によって、今御懸念のような治安に与える影響とかいうようなものもむしろ抑止するようなことも考え得るわけでございますから、一概に、これだから治安に支障を生じ得るので、それで国会に関与を、係らしめる必要があるんだという論理にはならないのではないかな、かように思う次第でございます。

また、米軍への後方地域支援ということにつきましては、今先生がまさにおっしゃいましたように、後方地域支援の性格、また、そういった形で日本が行動をとることにつきましては国際法上も適法なものである、こういうふうに考えているわけでございます。

岡田委員 あと十分残して午後に回したいと思いますが、できたら長官が直接答えてください。今の問題なんかは政治家が答える話ですよ。

日米協力した結果、場合によってはそういうことが起こり得るということは明らかですよね。常に起こるなんて私は言っていませんよ。起こり得る。だから非常に重要な話なんだということを申し上げているわけで、それを、一概に言えないとか、そうでない場合の方が取り締まれるとか、そんな話を私はしているわけではございません。

残りは午後にしたいと思います。

塩田委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

   午前十一時五十二分休憩

――――◇―――――

午後零時五十二分開議

塩田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

質疑を続行いたします。岡田克也君。

岡田委員 それでは、残された時間、まず国会承認につきまして、地方公共団体との関係について確認をしておきます。

国会の外ではいろいろ政府の方がその点について説明をされているようですが、法律上は、地方公共団体の長に対して協力を求めることができるというような書き方になると伺っておりますが、これは、地方公共団体あるいは関係行政機関の長にとって義務になるのでしょうかというのが第一点、そして義務になるというときに、強制手段はあるのかどうか、この点について確認をしておきたいと思います。

久間国務大臣 確かに、そういうような書き方にしたいというふうに思っております。そのときに、果たして法律上の義務と言えるかどうか、これはそこまでの義務にはならないのかもしれません。

しかしながら、何らかの法的な効果を期待できるのではないかというような気がいたしておりますし、また、そのように協力を求めることができるという根拠規定が政府側にありますと、それによって、協力を求めたとき、地方自治体は、それに対して地方自治体の長として正当な理由を付して、できないならできない、あるいはまたやるならやるということで、地方議会に対しても説明がつくのではないかと思いまして、法的効果とまでは言えないかもしれませんけれども、そういう状況を期待してそういう条文を入れたらどうかという方向で今検討しているところでございます。

岡田委員 これは、またいろいろな問題が将来発生する可能性がありますから、義務であればきちんとそういうふうに法律上しておくべきだ、こういうふうに私は思うわけでございます。

それから、民間の場合も、これは協力依頼ということでありますから義務ということではないと思うのですが、果たしてそれでうまく回っていくのかどうか。

例えば民間の会社から見れば、株主代表訴訟も抱え、政府の言うこととはいえ法律の強制力がない単なるお願いについて、そのことが会社の事業活動にマイナスに影響を及ぼす場合に、わかりましたとは言えないということが起こるわけでありますので、むしろ法律できちんとそういうのは書いておいた方がいい。一般的な規定だけではなくて、より細かく、こういう場合にはこういうことができる、そのための手続はこうするということをしっかりと法体系としてつくっておかなければ、これは義務ではないと言っても事実上の強制になりかねないことでもありますので、かえって私権の侵害を招くことになりかねない。ちょうど有事立法についてと同じような議論になるのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 逆に有事立法といいますか、まだ有事の場合の議論はしていないわけでございますけれども、災害等においての義務規定を設けている例がございますけれども、それほどまできっちりと義務化する必要はないのではないか、そういう意見の方が強いのではないかと思いまして、今言われましたような内容で整理を進めているわけでございます。

株主訴訟その他につきましては、これによって損害が生じた、損失を生じたような場合にどうするか、そういうことを担保しておくといいますか、そういうことについて何らかの配慮をする必要があるのかな、それもやはり議論はいたしております。そうしておかないと、協力をして損失が生じたときに、その損失の持っていき方はどこに持っていくのだというような問題等もございますから、今内部ではいろいろと議論をやっているところでございます。

岡田委員 それから、今の話は、結局国民の権利義務に直接関係がないということのためにこういう規定が非常に抽象的になっているのではないか、そういう気がするものですから質問させていただいたわけでございます。

それから、国会承認ということがあることで米国との交渉に幅ができるということはあるのではないかと思うのです。これは、米国から協力の依頼があったときに、日本は、日本の国益に基づいて協力することが――我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような場合であって、協力することが国益にかなうという場合に協力をすることになると思うのですが、しかし、米国から見れば同盟国でありますから、とにかく協力してくれということに当然なるだろうと思います。そういう場合に、国会承認ということが入っておれば、政府が米国と交渉をする際にもまさしく国益を体現して交渉することが可能になる、その選択の幅が広がる、そういうふうに思うわけですが、長官、いかがでしょうか。

久間国務大臣 それはどちらにも関係するわけで、幅が広がる方向にある場合もあるでしょうし、逆に狭まる場合もあるわけでございますから、それをもって承認に係らしめるかどうかという問題とはまた別ではないかという気がいたします。

しかし、それが立法政策上の問題であるかもしれませんが、私どもとしては、先ほどから言っていますように、国民の権利義務に直接かかわる問題ではないということと、迅速に対応しなければならない、そういういろいろな問題を総合的に判断して、内閣の責任において基本計画等を決定して、直ちにそれを国会に報告する、そういう形で行動に移らせていただきたい、そういうふうに思っているところでございます。

岡田委員 この点は引き続き議論したいと思います、

最後に、全く別の議論でありますが、在外邦人の救出のところでございます。

今予定されている自衛隊法の改正の中で、自衛隊機だけではなくて、船舶あるいは当該船舶に搭載された回転翼航空機を加える、こういうふうに改正を検討されているということでございますが、現在ある百条の八の本体の規定の中で、輸送の安全の確保という項目が入っております。これはある意味では当然の規定かという感じもいたしますが、しかし、輸送の安全が完全に確保されたとは言えない状況においても、そこにいる邦人がより危険な状況であれば、その救出のためにあえて危険を冒してでも行かなければいけない場合というのは当然あると思います。それがこの表現が入っていることによって非常に制限されるのではないか、こういうふうな懸念を抱いているわけでございますが、ここについて何らかの修正を加えるお考えは今おありでしょうか。

久間国務大臣 輸送の安全の確保というのは、これは大事な要素でございまして、先般、この百条の八をつくりましたときも、大変いろいろな議論の中で輸送の安全の確保ということで決着したわけでございますので、私どもは、今までのいろいろな議論を踏まえながら、この輸送の安全の確保というのは残したい、そういうふうに思っているところでございます。

岡田委員 この輸送の安全の確保という概念は、具体的にどういうことを考えておられるのでしょうか。

もちろん、その救出機が攻撃を受けて、撃ち落とされるような状況ではこれは出せないことは当然でありますが、これを余り幅広く見ますと、実際には救出ができないということになりかねないわけですが、いかがでしょうか。

太田(洋)政府委員 お答え申し上げます。

ここで輸送の安全の確保と述べておりますのは、この条項の前提として、災害その他の緊急事態ということでございまして、その国が緊急事態に陥っている、例えば紛争があっているとか大災害があるとか、こういう場合でございますけれども、そうであっても、邦人を救出するためにある空港から外へ運び出すということがこの業務の対象になるわけでございますけれども、その空港なり輸送する経路、これが安全が確保されているということをここでは一般的に念頭に置いております。

そういう意味で、その地域なり国全体が緊急事態に陥っているということと、この輸送の安全の確保というのは、そういうふうに考え方を整理しております。

岡田委員 この点はなお引き続き御質問させていただきたいと思いますが、きょうは時間がなくなりましたので、これで終わります。




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