トピックス

1998.03.12|国会会議録

142回 衆議院・安全保障委員会

岡田委員 民友連の岡田克也でございます。

きょうは一般質疑ということでございますが、基本的な問題について順次聞いていきたいと思います。

事前に通告していた順番とは少し変わるかもしれませんが、まず、日米防衛協力の指針につきまして、先ほど浅野委員も触れられましたので、そこから入っていきたいと思います。

先ほどの質疑にもございましたが、周辺事態の定義の問題であります。浅野委員の質問に対して外務省の方からもお答えがあったわけですが、あるいは予算委員会で私も一時間ほどこの問題をやらせていただいたわけでございます。予算委員会の場では若干議論が混乱したように思っておりますが。

外務省にお聞きしますが、もし法律で周辺事態の定義を書くとすれば、どういう書き方になるでしょうか。先ほどのお答えは、日米間の防衛協力の指針の中に書かれている表現をそのまま北米局長はお話しになったと思うのですが、もし日本の法律で周辺事態について定義をするとすれば、どのような定義の仕方になるというふうにお考えでしょうか。

高野政府委員 日米ガイドラインにおきます。辺事態の定義は、去年の九月二十三日に最終報告が出ておりまして、そこに記述されているとおりでございます。

それを踏まえまして、現在その実効性確保のためのいろいろな方策について関係省庁で検討しているわけでございますが、その中で、やはり法整備も必要だ、あるいは必要な場合に日米間の取り決めも必要だという考え方でございますが、そこに具体的にどのように記述するかということはまさに現在検討中でございますので、この段階で申し上げることは困難でございます。

岡田委員 法律ということになれば、より厳密な定義が必要になるというふうに思うわけでございます。

それで、これは予算委員会でも質問させていただきましたが、議論をわかりやすくするために例を引いて申し上げますと、例えば石油ショックというのがありました。中東において産油国が石油消費国に対する石油の販売というのを制限した、これは、ここで言う日本の平和と安全に重要な影響を与える事態ということになるのでしょうか。

高野政府委員 周辺事態に関しましては、先般来の国会でも御説明申し上げておりますが、軍事的な観点が全くないような状況ということに関しましては、これは周辺事態ということにはならないというふうに考えております。

今の先生の御指摘の具体的な事例がそういう事態でございましたら、私どもは、それはいわゆる周辺事態に該当しないというふうに考えることになると思います。

岡田委員 今の軍事的な観点というのは、事態の発生地における軍事的なことがないという意味なのか、日本においての軍事的なものがないという意味なのか、どちらなのでしょうか。

例えば、今石油ショックの例を挙げましたが、イラン・イラク戦争、第二次石油ショックがまさしくそうだったのですが、中東で戦争が起きた、これは軍事的なことが起きているわけですね、そのことによって日本への石油の供給が途切れる、こういう場合は周辺事態に当たるのでしょうか。

高野政府委員 今軍事的な観点と申し上げましたのは、軍事的な観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるかということでございます。

したがいまして、我が国の平和と安全から見て軍事的な観点から影響はないということになりますと、これは、ここで言う周辺事態ということには該当しないというふうに考えております。

岡田委員 ということは、もし法律で周辺事態を定義される場合には、単に日本の平和と安全に重要な影響を与える事態だけではなくて、軍事的観点から見て日本の平和と安全に重要な影響を与える事態、少なくともそういうふうに定義されるということになる、こういうことですね。

高野政府委員 先ほどの繰り返しで恐縮でございますが、具体的にどういうふうに法整備の中でこれを記述するかということはまさにこれからの検討でございますので、ここで申し上げる段階ではないというふうに考えております。

岡田委員 それでは、もう一つ例を引いてお聞きしたいと思います。

例えばマラッカ海峡を挟む国で何か問題が起きて、日本のシーレーンが影響を受ける可能性が出てきた場合は、今おっしゃった軍事的観点から日本の平和と安全に重要な影響を与えるというには私は当たらないと思うんですが、いかがでしょうか。

高野政府委員 周辺事態かどうかという判断をする場合には、先ほど来の点を踏まえまして、総合的にその事態についての性質、規模等を含めまして判断することになると思います。

そういうことでございますので、今御指摘のような事態がそういうことになるかどうかということは、いわば仮定の問題としてここで判断するということは困難だというふうに考えております。

岡田委員 確かに、日本のタンカーが何かその当該国の影響を受けて軍事的なものに巻き込まれる可能性があるというようなことであれば、あるいはタンカーの国籍にもよるのかもしれませんけれども、軍事的な意味で日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすということは言えるかもしれませんが、単に、例えばここは通っちゃいけませんよ、迂回していきなさいというようなことであれば、これは、先ほどおっしゃった、軍事的な観点から見て日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすということには明らかに当たらないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

高野政府委員 周辺事態というのは、実際に起きる国際情勢と申しますか、安全保障上の情勢でございますので、具体的な仮定を今設定して、総合的にこれが日本にとっての平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるかどうかということを判断申し上げるということはなかなか難しい問題だと思いますので、先ほどの御答弁の繰り返してございますけれども、仮定の問題を前提としての判断ということは難しいというふうに申し上げざるを得ないと思います。

久間国務大臣 誤解をされるといけませんので。今外務省の方から御答弁がありましたように、周辺事態に入るか入らないかは厳密には言えないわけでございますけれども、今委員が御指摘されましたように、迂回していけば何ら問題ないような状態で起きている場合でも入り得るみたいにとられますといけませんので。

今答弁されたのは基本論でございますけれども、今委員が御指摘になったようなことは入らないであろうというような認識を私どもは持っております。

しかし、周辺事態に入るか入らないかは、その規模、態様を見てみないとわからないという原則論を言っておられるわけでございまして、あの答弁から、あたかも今委員が御指摘になっておられるようなケースでも入る場合があり得るんだというような報道をされますと、非常に違った方に誘導されますので、念のために答弁させていただきます。

岡田委員 先ほど軍事的な観点が全くないようなものは入らないというふうに半歩定義を踏み込んでいただいたと思うんですが、ちょっと具体的な話になると、またすぐ総合的判断ということでもとへ戻ってしまうわけで、ここが非常に私は不明確なところだと思います。

なぜこんなところにこだわるかといえば、この日米防衛協力ガイドラインが適用されるかどうか、どこまで適用するかということは、周辺事態という概念で区切っているからでありまして、ここがしつかりしないと、どんどん議論が広がりかねないというふうに私は思います。

基本的に一番広い考え方としては、例えば、米軍というのは世界の警察官としての一面もありますから、米軍が世界じゅう活動していく中で、日本というのは、世界のどこであれ米軍が行くところについて、多少日本の国益ということは考えなきゃいけないとは思いますが、それに対して幅広く協力していく、これが一番広い考え方だと思います。それを少し限定するのは、例えば地理的にアジア・太平洋地域の米軍の活動に対して日本が幅広く協力していくこと。

私は、村山総理が、ハワイだったかサンフランシスコだったか忘れましたが、日米首脳会談をやられて、日米安保体制はアジア・太平洋の平和と安定のために重要であるということを言われた、これがこういう議論のすべてのスタートだったと思うんです。当時の村山総理はどこまで事態を認識しておられたか別ですけれども、しかし、それがスタートだった。

あのときは、恐らくアメリカの意識は、アジア太平洋地域において米軍が活動するときに、日本に幅広くそれに対して支援してもらう、そういうことを念頭に置いて議論が始まっていたんじゃないか、少なくともアメリカの意識はそうだったんじゃないか、そういうふうに私は思うわけでございます。

しかし、いろいろ検討した結果、やはり日本の平和と安全に重要な影響を与えるというところで区切らないと、どこまでもおつき合いするというのはなかなか国内世論的にも難しいし、あるいは自衛隊の活動というものをそこまで広げていいのか、いろいろな議論がある中で現在の周辺事態の定義というものが出てきたんだ、そういうふうに私は思っているわけでございます。

それだけに、逆に言いますと、この定義をしっかりしておかないと、もしここで例えば日米間に認識の違いがあれば、例えばアメリカは非常に幅広くとらえていて、場合によっては中東でもあるいはアジア・太平洋全域で米軍が動くときに、日本にそれに対して後方支援を初めいろいろな支援をしてもらうというふうに思っているとすれば、それは日本の今おっしゃった考え方とは少し違いがあるわけで、かえってそのことがいろいろな問題を将来呼び起こすことになるんじゃないか。したがって、この定義はきちんとしておくべきだ、そういうふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

小渕国務大臣 岡田委員の御主張はそれなりに傾聴いたしますが、今回のガイドラインは、あくまでも日本国憲法に基づいて、安保条約の範囲において、特に六条の問題についてきちんと法制化しようという立場で考えておるわけでありまして、我が国としては、日本並びに日本周辺の事態が我が国の安全に大きな影響を与えるということを排除する意味で、日米安保条約を効果的に、その条約の意味が達せられるようにということでの今回のガイドラインの決定だと理解しております。

岡田委員 今大臣が安保条約ということをおっしゃいましたので、関連して少しお聞きをしたいと思います。

このガイドラインの立て方というのは、私は二階建てになっているんじゃないかと思っているんです。つまり、周辺事態というのはガイドライン全体にかかることだと思うんですが、それ以外に、後方地域支援のところは「日本は、日米安全保障条約の目的の達成のため活動する米軍に対して、後方地域支援を行う。」という書き方がしてありまして、場合によっては、これはもう一つここで絞り込んでいるんじゃないかという気がするわけです。

今大臣もおっしゃった日米安全保障条約の目的の達成というのは、具体的に何を言うのか。安保条約というのは非常に幅広いことが書いてありますが、六条に書いてある「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」ということを言っているのか、それとももっと広いことを言っているのか、それはどうなんでしょうか。

高野政府委員 日米の新ガイドラインで、日米安全保障条約の目的達成のために活動する米軍に対して後方支援を行うとございますが、ここで言う日米安保条約の目的というのは、日本及び極東の平和と安全の維持ということでございます。

岡田委員 そうすると、逆に言いますと、この後方地域支援のところは、日米安全保障条約の目的達成、つまり六条がかかっているということは明確でありますが、そのほかのところについてはそういう表現が私はないように思いますので、もう少し幅広い概念である、つまり、そのほかのところというのは、周辺事態というのは六条に規定するよりも広い概念であるというふうに考えてよろしいですか。

高野政府委員 今のお話は、周辺事態における日米間の協力でございます。これは、当然のことながら、このガイドラインそのものが日米防衛協力のためのものでございますので、周辺事態に掲げられている日米間の協力というものは、全体として安保条約の目的に合致するものということになるわけでございます。

いずれにいたしましても、なぜ後方地域支援の部分について日米安全保障条約の目的達成ということが書いてあるかということでございますが、これは安保条約六条に基づく典型的な米軍の活動に対する支援でございますので、そこに特に日米安保条約の目的達成ということを明記したわけでございます。

ただ、全体として、周辺事態に関しましては、安保条約の目的に合致し、この目的のために行う活動であるということには変わりございません。

岡田委員 今局長が安保条約とおっしゃったのは、安保条約六条という意味でございますね。そういうふうに理解をいたしましたが、何かもし異論があれば?よろしいですね。

そうすると、先ほど周辺事態の定義として、総合判断だというふうにおっしゃったのですが、安保の第六条は逆に広がってしまうということになりませんか。

ここでは、日本の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するということですが、極東以外で起きた事案についても、軍事的なものであって日本の平和と安全に重要な影響を与えるということであれば周辺事態に入るということですから、安保六条は極東だけれども、周辺事態というのはもう少し幅広い概念だと私は認識をしているわけですが、そのことが安保の六条の解釈を広げてしまうことになりませんか。

高野政府委員 極東という言葉でございますが、従来から、これはそもそもそれ自体地理的概念ではないということを昭和三十五年の統一見解でも申し上げておるわけでございます。

仮に、強いて言えばということで、フィリピン以北及び日本周辺地域ということで定義させていただいておるわけでございますけれども、しかし、その問題は、米軍の活動ということからいえば、行動範囲ということからいえば、必ずしも今申し上げた地域に限られないということは、これも統一見解で述べてきているところでございます。

周辺事態との関係でいえば、日本の平和と安全に重要な影響を与えるということでございますから、極東の地域における米軍の活動ということが極東の平和と安全の維持に寄与するということとの関係においては密接な関連があるということは、これまた従来から申し上げてきているところでございます。

岡田委員 だんだん私の頭ではフォローができなくなってまいりましたので、議事録をよく読んで、次回またこの点は詰めて質問をしたいと思っております。

ただ、私が非常に懸念しますのは、一つは日米安保体制というものがかなり法制上、条約上の建前と実態が違ってきているという現実がありますね。

別に日本の基地は日本や極東の平和と安定のためにだけあるのではなくて、今やアメリカの世界戦略基地として中東まで含む重要な基地であります。横須賀は米海軍にとってはなくてはならない存在でありますし、嘉手納は世界じゅうの米軍基地の中でも有数の重要な機能を持った基地であります。実際の機能もそういうふうになってきている。しかし、安保条約はあくまでも日本と極東ということに限定して置かれている。その矛盾が一番出てくるのは事前協議の話であります。

この前のイラク危機の際にも、横須賀から空母が出ていった。日本国政府は、それは出ていったのであって直接出撃したのではないということで関係ないというお立場でありますけれども、現実に果たしている機能としては、そういった中東も含めたアメリカの世界戦略基地としての位置づけとして日本の基地があるわけでありますから、そのことが法制とうまくかみ合ってない。

そういう現実を安保条約というのは想定していなかったわけであります。時代はだんだんそういうふうに変わってきたと思いますが、その矛盾をこのガイドラインはそのまま抱え込んでいる。だから、非常にわかりにくくなっている、そういうふうに私は思っております。

もうそろそろ現実を踏まえた議論をしっかりしないと、結局一いろいろ条約をつくったり法律をつくったりするけれども、現実を踏まえておりませんので、つくっても意味がない。そのことが結果的に、日本国が主体的にそれに対してかかわっていく、あるいはシビリアンコントロールを国民、国会がしていく、そういうことに対して形骸化してしまう、そういう事態に今なっているのじゃないかというふうに私は思っているわけでございます。

いずれにしましても、ここのところはもう一度改めて議論をさせていただきたいと思います。もし何かございましたら。

高野政府委員 米国が世界各地でいろいろ行動している中で、これがこのガイドラインとの関係で日本に対していかなる関係になるのか、あるいは後方支援等について期待しているのではないかという御指摘でございますので、その点だけちょっと申し上げます。

いずれにしても、このガイドラインで対象としていることは、周辺事態、平素の協力、日本に対する武力行動があった際の協力ともちろんございますが、今の問題が周辺事態ということに限って申し上げれば、周辺事態が生じたときに、日本がアメリカとの関係でどう協力するかということがガイドラインで議論されているところでございます。

したがいまして、周辺事態が起きたときに、かつ周辺事態が起きたということを日本が主体的に判断したときに初めて日米間の協力が生じることになります、ガイドラインの周辺事態の関係におきましては。そういうことでございますので、米国の世界各地における行動にすべてこのガイドライン上協力しなければならないとか、あるいは今の議論がそこにまで対象が及んでいるということはございません。

他方、この周辺事態の問題とは別に、周辺事態以外の場合に対米協力することが全く排除されているのかということはまた別問題でございまして、それは、ガイドラインに言う周辺事態における日米協力とは別の文脈において、また改めて考えられるべき問題だというふうに考えております。

岡田委員 今の局長の御答弁は私も全く同じ認識であります。だからこそ、周辺事態の定義をしっかりしておかないと、そこにいろいろなことがかかっているのじゃないかということを申し上げたかったわけであります。

今、局長は、周辺事態以外の米軍の活動について日本がどう協力するかというのは別の問題だ、協力もあり得るという趣旨の御答弁だったと思うのですが、それに関連してちょっとお聞きしたいと思うのです。

米国が世界の警察官として活動している。現実には国連というものがあるわけですが、国連が動かないということはしょっちゅうあるわけであります。拒否権が発動されれば国連というのは動かないわけですね。そういうときに、米国が単独であるいは友好国と協力をして特定の地域、国に対して武力行使する、こういうことは現実にあり得るわけですし、現実にあったわけですが、日本国政府として、米国が国連の決議を経ないでそういった武力行使をするということに対して、一般論として聞きますけれども、それは基本的に認めないという立場ですか、それとも、それは場合によっては認めるという立場ですか。

小渕国務大臣 明確な国連の決議がなく米国が行う武力行使とは実は何を意味するのか、なかなか定かではありませんが、いずれにいたしましても、具体的事例が生じる前に、米国の行う武力行使につきまして国際法上の判断を下すことは差し控えさせていただきたいと思います。

他方、米国は、国連憲章のもとで違法な武力行使を慎む義務を負っております。我が国としては、同盟国たる米国がこうした義務違反を犯すことはそもそも想定いたしておらないということでございます。

岡田委員 想定しておられなくても、現実にそういうことは過去にもあったと思うのですね。例えば中米でアメリカが国連決議を経ずに特定の国に武力介入するということはありましたし、一般的にそういうことは起こり得る話だろうと思います。

例えばリビアに対して攻撃をいたしましたね、米軍が、空軍が。あれも国連決議とは全く関係なかったと私は思うのですが、こういうものについて、いかがですか。

竹内政府委員 我が国といたしましては、アメリカによりますあらゆる行動について常に判断を明らかにするという立場にはないわけでございます。それは、いろいろな背景、事情、我が国として承知していない事情もその行動の背後にはある場合もあるからでございます。

ただし、米国が国連憲章上の義務といたしまして、違法な武力行使は慎まなければならないというような一般的な義務を負っているということは確かでございます。

ただいまリビアについてお尋ねがございましたけれども、当時国会でも御答弁申し上げましたけれども、その件につきましては、米国としては自衛権の行使であるという立場をとったということでございます。

ただし、我が国といたしましては、この当事者でもなく、また米側の行動をめぐる具体的な事実関係の詳細を承知しているわけではないので、具体的な行動に対する法的判断を行う立場にない、こういうことであったと記憶いたしております。

岡田委員 今の条約局長の御答弁はちょっと大臣の答弁とは違うように思いますが、いずれにしても、国連決議がなくても、米国が単独であるいは友好国と武力行使をするということはあり得る話であります。

国連がきちんと機能すれば、将来国連軍というものができれば、全部集団的安全保障の中で解決されるのだと思いますが、そういう事態になっていない。憲章自身も集団的自衛権というものを認めているわけですから。それから、そもそも言えば、日米安保条約だって、これは国連が機能する以前の段階の話ですね。

だから、集団的自衛権ということでうまく説明できる場合、できない場合があると思いますけれども、それをひっくるめて、米国が国連の決議を経ないで武力行使をするということは当然あり得ることだし、日本としてもそれを認めていく、是認するということはケースによってはある、こういうふうにお答えになるのが正直なお答えだと思いますが、いかがでしょうか。

竹内政府委員 先ほど申し上げましたとおり、常に我が国として米国の行動について評価を下すというわけではございませんが、知り得る限りの情報に基づきまして我々としての判断を示すということはあろうかと思います。

ただいま一言申し上げますと、米国が武力を行使いたしますときには必ずしも国連決議がある場合には限られませんで、もちろん自衛権の行使というのは、そういういとまがない段階で武力の行使が行われるわけでございますが、国連憲章上、それは直ちに安保理事会に報告しなければならないということになっておりますので、米国もそういう国連憲章上の義務に従って行動しているというのが一般的な評価であろうかと思います。

岡田委員 それでは、今回のイラクの問題ですが、今小康状態ということでありますけれども、今回のイラクの問題で国連決議があるのかないのかはっきりしない、解釈が分かれていると思うのですね。

アナン事務総長は、決議が要るとまでは言わなかったかもしれませんが、協議が要るということは最近おっしゃったように報道されておりますし、アメリカは、そういうものは必要ないとクリントン大統領が述べたという報道もございます。

基本的に、今回のイラクについて、今後もし協定違反、査察を何らかの形で受け入れないということがあって、そして米軍なりあるいはイギリスの軍隊が武力行使をするということになった場合に、それは新たな国連決議が要るというのが日本国政府のお考えでしょうか。それとも、従来の、アメリカが述べているような国連決議の六八七でありますとか、もっとさかのぼって、六七八が根拠になっているというのが日本国政府のお考えでしょうか。

小渕国務大臣 先般、国連の安保理で全会一致で通過いたしました決議案は、イラクが今日までとってきた態度に対しまして明確なメッセージを与える意味で大きな成果があったというふうに理解をいたしております。

そこで、今委員お尋ねの点につきましては、イラクに対してどのようなことが発生するかという前提でのお話ですが、我が政府としては、先般の決議に基づいてイラクとしては改めてUNSCOMの査察を即時全面的に受け入れて、国連の意思、国際社会の意思に十分な答えが出るものというふうに理解をいたしております。

そこで、お尋ねの点につきましては、冒頭申し上げましたように、今回の決議が武力行使を是認するとかしないとかということでない、強力な査察に対するメッセージだ、特にアナン事務総長とイラク側に結ばれたものを強力にバックアップするという意味での決議でございますので、したがって、この武力行使云々については、これは、従来、六七八から始まりました種々の決議案を否定するものでも是認するものでもない、こういうことでございます。

岡田委員 なかなか明確なお答えがいただけないわけですが、私は、やはり六七八にしても六八七にしても、これは米国の武力行使の根拠たり得ないというふうに思います。これで武力行使が認められるというのは明らかにおかしいわけであります。

例えば六七八というのは、クウェートが現実にイラクに占領されているときにあらゆる手段をとっていいということを決めたわけでありますが、そういう占領という事態がない状況で、一たん戦争が停戦になった上でそこまで戻るというのは相当無理があると思いますし、六八七の方は停戦に当たっての条件を決めているだけでありますから、その条件に違反したからすぐ武力行使できるという根拠というのは、まず議論としては成り立たないのだろう、私はそういうふうに思います。

もう少し実態に即した議論をすれば、国連決議がなければ米軍が動けないかというと、そういうことになると、これまたイラクが何をしてもいいのかということになるわけで、やはり国連とは離れたところで、世界の警察官として米国が武力行使をしていく、それは自衛権の従来の範疇からは外れるわけですね、外れると言わざるを得ないと思うのですが、しかし、そういう米軍の活動についても何らかの、いろいろな条件があると思いますが、認めていかざるを得ないというのが今の国際社会の現実じゃないかと思います。

そこを率直に認めていかないと、従来の国連の決議あるいは自衛権の行使という枠組みの中で議論しようとするとかなり無理があって、自衛権とか国連決議というものの範囲を不当に拡大して全体がおかしくなってしまっている、これが現実ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

加藤(良)政府委員 委員が御指摘になられました国連決議についての解釈を私から申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

ただ、現実に今安保理をめぐる状況がどういうふうになっておりますかということになりますと、十一日にクリントン大統領とアナン事務総長の会談が行われました。その終了後のアナン事務総長のコメントでございますが、これは記者からの質問で、武力行使が行われる場合に安保理からの承認が必要か否かについてクリントン大統領との間に意見の相違があるのじゃないかという問いかけに対しまして、クリントン大統領との間には見解の相違はない、自分は既に何らかの協議が必要であると述べており、これに変更はない。さらに質問がございまして、安保理における投票は必要かという点につきまして、投票が必要であるとは言っていない、イラクとの間に停戦をもたらした合意は武力行使が一時停止されたことを意味するものであり、したがって、必要があれば武力行使の引き金が引かれる可能性があるということである。

もちろん、これはすべて、自分の今回達成した合意が非常に真剣なものである、その外交努力というのをさらにイラクに緊迫感を持ってもらいながら進めていきたいという文脈の中でなされたものでございますが、そういう事実関係はございます。

岡田委員 実は、米軍が世界の警察官として、国連を離れあるいは自衛権の範囲も外れる中で活動していくということを日本としてどうとらえていくかという問題は、ガイドラインの問題に直結する問題だと思うのですね。

例えば日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような場合に米軍がそういう活動をとった、国連決議もない、米国の自衛権の範囲でも説明できない、そのときに、日本が、それはだめですよということになって日米協力しないのか、あるいはするのか、すぐ判断を迫られる問題でありますから、私は、ここのところについてきちんとした考え方を日本として出すべきではないか、そういうふうに思っております。

それがなければ、結局、ガイドラインに基づいて日本が米軍に協力していくというときに、たちまちそこで判断停止になるというか立ちどまってしまうことになる。そのことは日米関係について非常に重大な影響を及ぼすことになるのじゃないか、そういうふうに思っていることを敷衍したいと思います。

もう時間も三分しかございませんが、最後に海兵隊の問題についてお聞きしたいと思います。

沖縄の海兵隊の問題について、予算委員会でも議論が少しございました。そして、朝鮮半島が安定した後に、沖縄の海兵隊について、全体の兵力構成の中で議論ができるのじゃないか、こういう議論があったと思いますが、現在、朝鮮半島にある在韓米軍について、その役割というものをどういうふうに見ておられるでしょうか。

高野政府委員 朝鮮半島におきましては、北朝鮮による兵力の前方展開が継続しておりますし、軍事境界線を挟む兵力対峙の状況が続くなど、依然として緊張した状況にございます。このように、特に朝鮮半島を含め、この地域の国際情勢というものは引き続き不安定要素が存在している。

そういう中で、在韓米軍はこの地域の平和と安定の維持のために重要な役割を果たしているということでございまして、日米安全保障共同宣言で確認されているとおり、この地域における米軍の前方展開部隊は、現在のこの地域の情勢、安全保障環境にかんがみ、これを維持することが適当であるという判断でございます。

岡田委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、私は、朝鮮半島が安定した後、いつになるかわかりませんが、今朝鮮半島にある米軍の中の陸軍の部分については、役割は終えるのではないかというふうに思っております。

そういう中で、朝鮮半島が安定したときには当然状況も大きく変わるわけですから、極東の米軍、つまり今朝鮮半島にある米軍と日本にある米軍の全体の再構成の議論というものをしなければいけない。恐らく陸軍は要らなくなる。そうすると、日本にある空軍、海軍、そして海兵隊、これを朝鮮半島との関係でどう位置づけるかという問題に当然なると思います。

私は、今の日韓関係の現状を見たときに、韓国にとっては、あるいは統合後の朝鮮半島にできる国にとっては、日本に米軍がいるということは重要なことであると思いますし、同時に日本にとっても、朝鮮半島に米軍がいるということは、残念ながら重要な国益だというふうに言わざるを得ない現実があると思います。

そういう意味で、朝鮮半島安定後に、海兵隊も含めて、朝鮮半島に何らかの形で米軍が存在し続けるように、今から、韓国、日本、米国で安定後の米軍のあり方について議論を始めることが非常に重要なことではないか、私はそういうふうに思って、問題意識だけを申し上げて、時間が参りましたので、またの機会に質問させていただきたいと思います。




TOP