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1998.03.04|国会会議録

142回 衆議院・予算委員会

岡田委員 民友連の岡田克也でございます。

きょうは、まず景気対策について質問をさせていただきたいと思います。私は、基本的に、この予算委員会での議論を見ておりまして、政府の答弁いろいろあるわけですけれども、もっと景気の現実を率直に認めて、そして速やかに予算措置を伴う景気対策を打ち出すべきである、そういう観点で質問をさせていただきたいと思います。

まず、企画庁長官にお聞きをしたいと思います。

企画庁長官の景気の現状に対する御認識というのは、この委員会で何度も披瀝をされているわけでございます。いろいろなことを言っておられますが、一言で言えば、桜の咲くころには景気は回復基調に乗る。その理由として、三月末で現在のクレジットクランチが山を越える、あるいは二兆円の減税の効果が浸透してくる、したがって、予算が順調に通り、そして四月当初からの実施ということが確保されれば、景気は順調な回復軌道に乗ってまいります。そういう答弁をあちこちで、この場で何回も繰り返しておられる、そういうふうに思うわけでございます。

しかし、例えば、民間のいろいろな予想機関はもちろんでありますけれども、例えば日銀の金融経済月報、これは二月十七日でありますから多少日がたっておりますが、この中では景気の現状についてどういうふうに述べているか。「先行きについては、外需の下支え効果や、家計支出に対する特別減税の好影響などが期待されるが、在庫調整圧力が強まっている中で、最終需要の目立った回復が見込めないことから、今暫くは停滞色の強い展開が続くものとみられる。また、これまでの景気減速によって、わが国経済の追加的なショックに対する耐久力は低下してきているものとみられる。このため、今後、アジア経済の調整がわが国の輸出等に与える影響や、後述するような金融面の動向が実体経済に及ぼす影響などには、十分な注意を払っていく必要がある。」こういうふうに述べているわけであります。私は、この日銀の見通しの方がはるかに常識に近い、こういうふうに思うわけでございます。

企画庁長官は、長官になられる前に、経済企画庁の経済見通しに対して、あるいは景気の現状に対して、非常に楽観的であるということで大変批判的であったというふうに私は認識をしておりますが、今企画庁長官に現実になられて、その楽観論の先頭を走っておられるというのは非常に皮肉な姿じゃないか、そういうふうに私は、大変失礼ですけれども思うわけであります。

本当のところ、企画庁長官の景気認識というものは、今までこの予算委員会で述べられてきたところでいいのでしょうか。もしよろしければ、長々と繰り返していただく必要はありませんが、私の今の発言に対しまして何かコメントがありましたら、よろしくお願いしたいと思います。

尾身国務大臣 まず最初に、経済企画庁の経済の見通しに対する全般的なスタンスの問題でございますが、私自身は、就任以来、経済の現状についてできるだけ客観的に正しくその実態を国民の皆様にお知らせし、必要な対策はとる、そういう方向でやってまいりたいと思って、そのように心がけてきたところでございます。

桜の咲くころには景気は回復し始めるというふうな表現をさせていただきましたが、現在は、御存じのとおり、消費者及び企業の経済の先行きに対する景況感がまだ低下をしておりまして、経済は停滞をしているというふうに認識をしているわけでございます。

ただ、これから先の状況でございますが、二兆円の特別減税あるいは補正予算、それから金融システム安定化策が実現をされることになりました。それによりまして、十二月の初めころの、今にも大恐慌が来るというような感じの心配というものが国民全般からはなくなったと思っておりまして、そういう意味では、コンフィデンスは、金融システムが崩壊するのではないかというような不安感という水準からはかなり回復してきているというふうに考えている次第でございます。

さらに、この十年度の予算及び法人税の減税等を含みます予算関連税制改正関係法案等が三月中に通り、そしてまた昨年十一月に決定をいたしました緊急経済対策、その中には、例えば電気通信の規制緩和とかあるいは人材派遣業の規制緩和とか土地の有効利用に関する規制緩和等々がございますが、そういう関係の法案がこの三月に提出をされて、四月、五月ごろには通って、実施に移されるというふうに期待をしているところでございます。

それからまた、早期是正措置、四月一日でございますが、早期是正措置を控えての貸し渋り現象も四月以降は緩和されてくるだろう。

そういう意味で、この一―三月というのは大変厳しい時期でありますが、それを通り越して、四月になれば次第に順調な回復軌道に復帰してくる、そういう考え方を申し述べたものでございまして、そういう意味で、この十年度予算の、予定どおりといいますか、三月いっぱいにおける、予算を国会が通していただきまして、実施、金が使えるようになるということが大変大事なポイントであるというふうに考えております。

なお、経済企画庁といたしましては、総理の御指示もございまして、自民党の第四次緊急国民経済対策を受け、また昨年十一月の緊急経済対策のフォローアップ、さらには追加の規制緩和策等につきまして、現在関係各省庁と協議をしながら具体策の検討に入っているところでございます。

経済はもとより生き物でございますから、今後の内外の経済、金融の状況に応じまして適時適切な経済運営に努め、できるだけ早く景気を回復させたいというふうに考えている次第でございます。

当面は、繰り返して恐縮でございますが、この十年度の予算及び関連法案を予定どおり三月いっぱいに通していただくことが一番大事な景気対策であるというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

岡田委員 経済企画庁長官というのは、経済、景気の見通しに対して内閣の中でも責任を負う立場にあるというふうに思います。

今のお話ですと、これは従来の繰り返しだと思いますが、四月に入れば回復基調に乗る、こういう御発言であります。もしそういうことが事実でなければ、長官は政治家として責任をどういうふうにおとりになりますか。

そしてまた、順調に回復基調に乗るというのであれば、当然、補正予算を今後編成するなどという話は起きてこないはずでありますが、もし政府が景気対策で、公共事業であれ減税であれ、大型の補正予算を組むということになった場合に、そういう楽観的な見通しを述べておられた経済企画庁長官としてどのような責任をとられますか。

尾身国務大臣 私はそのことに対してもただいまお答えをしたつもりでございますが、経済は生き物でございますから、その状況、金融、経済の状況に応じまして適宜適切な対応をするということは総理も申し上げておりますし、私どもも考えているところでございます。

したがいまして、先ほど申し上げましたように、総理の御指示も受けまして、現在、規制緩和のさらに一層の推進等を含めました経済活性化のための対策を講じているところでございますし、適宜適切な対策をとって、十年度の一・九%という、この経済の見通しはぜひ実現をさせていくべく全力を尽くしてまいりたいと考えている次第でございます。

岡田委員 今から半年ぐらいたって、いろいろ、長官が述べておられた前提が狂ってきたということであれば、それは補正を組む一つの理由になると思います。しかし、もし補正を組むということが近々決定をされる、ここ一、二カ月で決定をされるというようなことになれば、長官は国民の前で間違った見通しを堂々と述べていた、そういうふうに評価されても仕方がない、私はこういうふうに思います。もし何かありましたらどうぞ。

尾身国務大臣 私はここで、補正を組むとか組まないとかいうことは総理と同じように一切申し上げておりません。現在は当面この十年度の予算を通していただくことが最優先の景気課題である、そういうふうに申し上げているわけでございます。

岡田委員 今長官がおっしゃっている楽観的な景気見通しの前提として補正をどう考えているのかという問題です。補正をやるとはおっしゃらないわけでありますから、補正なしにそういう楽観的な景気の見通しというものを述べておられるというふうに見るしかないわけですね。もし補正を前提にして述べておられるとすればこれは重大な問題であります。

ですから、補正なしにこういう楽観的な景気見通しを述べて、そういうふうになっていくんだ、順調に回復していくんだ、そういうふうに考えておられるとしか論理的には思えないわけであります。いかがですか。長官はそれとも、大幅な補正予算を前提にして楽観的な景気見通しを述べておられるんですか。

尾身国務大臣 現在提出しております十年度予算が最善のものとして提出をしております。しかし、経済の実情に応じて適宜適切な対応をとるということも経済対策の責任者としては必要なことでございますから、いろんなことを考えながらいろんな対策を検討はしている。

そしてまた、現在ただいま特に重点的にやっておりますのは、規制緩和を中心とする昨年の十一月のフォローアップ、それからまた自民党の第四次経済対策を受けましての政府部内のいろんな検討をしているということでございます。

岡田委員 またこの問題は後に総理とも議論をしたいと思っております。

では次に、通産大臣にちょっとお聞きをしたいと思っております。

通産大臣はアジア経済というものに対して大変な御懸念をお持ちではないか、今までの答弁をお聞きしてそう思います。確かに、このアジア経済の影響というのは我が国にとって非常に深刻な影響を及ぼしているというふうに私は思います。

たまたま私の地元、四日市市で、ある企業が倒産をいたしました。資本金が五千万、年商十億という中堅企業であります。その企業が倒産した理由は、その企業は自動車の生産ラインの一部の部品をつくっていたわけですけれども、韓国の自動車メーカーからの発注がぱったりとまった、そのことによって資金の回転ができなくなりまして自己破産されたわけであります。

あるいは、最近、一部上場の大同コンクリートという会社が破産申請したという記事が載っておりました。この会社も実は四日市市に百人ぐらいの工場を持っております。報道によれば、インドネシアの関連会社が行き詰まり、その資金手当てができなくなって破産の申請をした、こういうことであります。

そういう意味で、非常に狭い私の地元という範囲でもこういう事件が立て続けに起きますと、アジアの経済の後退あるいは金融の問題というものが日本の経済にも非常に大きな影響を及ぼしてきているということを実感するわけであります。

同時に、そういった日本の輸出が影響を受けるというだけではなくて、やはり日本の責任として、アジアの国々が日本に対して輸出をする、つまり日本が輸入をすることによってアジアの経済を立て直していく、そういう役割も非常に大事なことだと思うわけでございます。総理は否定されるかもしれませんけれども、やはりアジアの経済がおかしくなった理由の一つとして日本の去年の春からの不況というものがあったことは、私は否めないというふうに思うわけでございます。

そういう中で、通産大臣は昨日の記者会見の中で、これは報道でありますから確認もあわせてお願いしたいんですが、日本の内需拡大がアジア経済にとって重要である、九八年度予算成立後ある程度の財政出動を考えなくてはいけない、そういうふうに述べたと伝えられているわけでございます。

通産大臣というのは、閣内でも最も産業に近い、つまり現場の声がわかる、そういうお立場でありまして、従来、過去においても政府の景気対策をつくる際に最もその牽引車となってこられた、そういうお立場だろうと思います。そういうお立場から、景気の現状についてどういうふうに認識しておられるのか、そして、昨日の発言は真意はどういうことなのか、お答えをいただきたいと思います。

堀内国務大臣 岡田委員の御質問にお答えを申し上げます。

最近の経済動向というものを眺めてみますと、昨年の秋以来の金融システムの不安等、非常に、マインドの下振れによりまして、個人消費は低迷をいたしております。また、住宅建設は下げどまりの兆しも見られますが、依然弱含みでございます。設備投資も動きが鈍くなってきております。こうした中で、在庫調整のおくれなどから、生産は弱含みで推移をしているということは事実でありまして、企業とりわけ中小企業の景況は低迷をいたしておると考えております。

産業の動向を業種別に見ますと、自動車、小売等の消費関連業種では、消費マインドの冷え込みによりまして国内の販売は低迷が長引いているところでございますし、また、鉄鋼等の素材関連業種では、内需の伸び悩みあるいはその他の輸出の問題の影響から、生産が伸びが鈍化をいたしてきております。さらに、パソコン、通信機器というようなこれまで比較的好調であると言われていた電子情報関連業種においても、内需は鈍化の傾向にございます。

こうしたことから、私としましては、景気は停滞をしており、厳しさはますます増しているというふうに認識をいたしております。

そういう意味で、政府といたしましては、既に実施をいたしております緊急経済対策、あるいは、御決定を、御承認をいただきました九年度の補正予算、これには一兆円の公共事業あるいは一兆五千億のゼロ国債の発注などが含まれていると同時に、二兆円規模の個人所得税の特別減税というものがございますし、金融システムの安定化、こういう対策の迅速かつ的確な執行に努めているところであります。

さらに、私の見ているところでは、今この国会において御審議を賜るところの十年度予算においては、法律案などに含めまして、米国を下回る法人税の引き下げ、あるいは有価証券取引税の引き下げ、地価税の凍結というような数字は、この税制の改正により、約二兆数千億の税制改正が行われることになっております。また、電気料あるいは電話料の引き下げによりまして、約一兆円の引き下げの例も行われることになっているところでございます。

これらの施策によって、私の判断といたしましては、消費者あるいは企業を取り巻く環境がこれの実現によりまして改善をされてきて、そして企業活動などが活発化されてくるであろうというふうに思います。その結果、四月以降においては、こういう諸施策の成果があらわれてくることを期待すると同時に、経営者の先行きに対する期待感も含めて企業活動が活性化されて、国内景気というものが改善されてくるんではないかというふうに考えております。そういう意味合いから、私は、この予算案並びにこの国会における関連法律案が通ることによりまして、四月以降においては期待のできる状態があらわれてくるというふうに考えております。

ただ、その際に、先ほど委員からもお話がございましたように、東南アジアの問題というのは、やはり非常に重要な問題として今浮かび上がってきているところでございます。内外の経済金融情勢、こういうアジアの国際情勢、こういうものに対しての臨機応変な措置を講じるということは当然のことだろうというふうに私は思っております。

私の申し上げました財政出動というような問題は、ASEAN経済を見ますと、先ほどのお話がございましたように、通貨、金融というような面での危機をもたらしてまいりました。そういう影響は非常に深刻でございます。タイにおきまして、あるいは韓国におきましては、大きな対外債務についての一応の危機は脱しつつあるというふうに思いますが、いまだに流動性の問題としては目を離せない状態にあります。さらに、現在まだインドネシアにおきましては一千億ドルをさらに超えるような非常に大きな対外債務を抱えておりまして、これの結論がまだ出ていないような状態でありまして、解決すべき課題は非常に多いわけでございます。

そういう意味で、東南アジア向けの対策として経済対策という問題は考えておかなければいけないことであるということでありまして、現在の予算の実行によって、四月以降の国内景気の問題と別の問題としまして、やはり今後のアジアの状況に応じましては財政投融資や貿易保険などを中心といたしました対外応援の対策、こういうものを念頭に置いて、アジア経済が回復基調に戻るようにアジアの産業を支援する。

金融面あるいは流通面の解決をすればそれでいいというものではなくて、各国の産業自体をしっかりと伸ばしていって、それによって、借りた金は返さなきゃいけないわけでありますから、その借りた金を返せるような産業基盤をつくるには、先ほど委員のお話のように、日本を中心とする輸出入の増加、あるいは世界を中心とする輸出入の増加のようなものをASEAN各国においてとり行われるようにしていかなければならないというふうに考えますし、それを行うのはやはり日本の責任であるというふうに考えておりまして、そういう意味合いからの必要な措置を講じなければならないと考えた趣旨を申し上げた次第でございます。

岡田委員 今の大臣の御答弁は、景気の現状認識は余り企画庁と差がないというふうに私は理解をいたしました。そしてその上で、アジア経済の問題、非常に重要だ、そのために、予算ではなくて財投や貿易保険その他でしっかりした手当てをしなければいけない、こういう御説明だったと思います。

私は、アジア経済のためにも、やはり日本が、彼らが輸出をするその対象としてしっかりと輸入してあげるということは大事なことだし、それは日本国民のためにもなるわけですね。安い輸入品が入ってくる、為替のレートも随分変わっておりますから、値段も安くなるわけであります。

そういう意味で、日本の内需を拡大していくということがそういったアジアの経済を立て直すための大前提としてある。それは、そういう手法はいろんなところでされているわけでありますし、内需を拡大するためにどうしたらいいかということを、貿易保険とかそういった対症療法ではなくて、もっとやはり中に踏み込んだ対策が私は必要である、そういうふうに思うわけでございます。

そこで、ちょっと話題を変えますが、この予算委員会で今日までの間、我々は、本予算を修正すべきだ、景気対策をもっと盛り込むべきだ、こういう主張をしてまいりました。それに対しては入り口のところで、いや、景気はそういう現状にありませんというところで、そこでもう議論が終わってしまっているわけであります。政府が、今の両大臣の御答弁のように、いや、景気は春以降回復していくんだと、こういうふうにおっしゃるから、そこで議論はとまってしまいます。しかし、現実はそうじゃない。これはもう自民党の中からも、今の景気の現状がいかに厳しいかということは、そういう話はどんどん出てきているわけであります。

本当は我々は予算の修正を主張しているわけでありますが、それに対して政府の側から出てくる話は、いや、予算の修正をしていたら間に合わない、だから予算の修正はだめだという話が出てくるのなら私は議論はかみ合うと思いますよ、しかし、景気は悪くないと言ってしまうからそういう議論ができないじゃないですか。

あるいは、自民党の方から補正という話が出てくる。補正も一つの選択肢かもしれません。しかし、補正にはいろいろ問題がある。財政法二十九条の問題もあります、そういう問題もきちんとここで議論しなきゃいけない。しかし、そういう議論ができないじゃないですか。それは、今経済企画庁長官おっしゃったように、景気は悪くないとおっしゃるから議論できないわけであります。

例えば、我々は、減税中心にやるべきだということを主張しております。それに対して自民党は、公共事業中心だという声も漏れ聞こえてくる。ではどっちが景気対策としていいんだ、こういう議論もここでちゃんとしなきゃいけないはずです。しかし、そういう議論もできない。なぜなら、政府は景気対策の必要性を認めていないからであります。そこを私は非常に懸念をするわけであります。この予算委員会が形骸化しているんじゃないか。それは一にかかって、総理初め政府側が、いや、景気は悪くありませんよと言っているから議論できない状況にあるわけで、総理を初め政府のそういうかたくなな姿勢がこういう議論の余地を残していると私は思います。

このことは、国会自身が機能していない、そういう国民の批判にもなってくるわけでありますが、今の私の意見について、総理、何か御見解ありますか。

橋本内閣総理大臣 一つだけお言葉を返す部分がありますのは、我々は景気を決して楽観して、少なくとも私は楽観した物の言い方をしたとは思っておりません。むしろ、だからこそ機敏に行動する必要性、あるいは経済、金融の情勢に応じた対応、こういうものもここまでもしてまいりましたし、同時に、補正予算の御審議もお願いをし、それにあわせて予算が切れないようにぜひということを繰り返してお願いを申し上げております。

私どもは、楽観して入り口でとめているというつもりはありませんが、同時に、平成十年度予算並びに関連する税制改正を初めとする法律案の必要性、重要性というものを繰り返し強調させていただいておる、私はそうお答えをしたいと思います。

岡田委員 景気について楽観していないというお話ですが、先ほどの経済企画庁長官の御答弁は、桜が咲くころには景気は回復基調に乗るんだ、こういうふうにおっしゃるわけで、これが楽観論でなくて一体何なんだ、こういう気がいたします。

総理の御答弁の中で、金曜日、これは鈴木委員が補正の質問をしたときに、総理がそれに対してお答えになりました。それに対して鈴木委員が、補正について総理は全く言っていないそうですから、ぜひ新聞にはそう書いてほしいですね、こういうふうに発言されましたら、総理は、その席にお座りになったまま、いや、やるともやらないとも何も言ってないということです、十年度予算を成立させてくれとしか言っていないです、そういうふうに叫ばれたと議事録に書いてあります。今の答弁と全く同じですね。

私は、一国の総理がそういうやり方で、本音は今の景気の現状から見れば補正をやらざるを得ない、あるいは追加的な財政措置をやらなければいけないというふうにここまで出かかっていながら、それをおっしゃらないで、この国会の場で、国民の前で、いや、そういうことはどちらとも言ってないんだと、そういう姿勢が非常にわかりにくくしている。そして、もっと言えば、そのことが日本の今の景気の低迷を招いているかもしれない。一国の指導者として、はっきりとしたメッセージを国民に送る責任が総理にあるのじゃないか、そういうように思いますが、いかがでしょうか。

橋本内閣総理大臣 お尋ねがありますから、私はお答えをしてまいりました。

そして、今私どもは十年度予算の御審議を一日も早くとお願いを申し上げております。同時に、十年度税制改正が遅滞なく行えますように、ぜひまた関連する法律案が通過、成立いたしますように、それをお願い申し上げている。まさにそういうお願いを繰り返しております。

そして、私は楽観論をもって物を申し上げているつもりはありませんし、楽観をしていないからこそ特別減税の審議もお願いをし、補正予算のお願いもし、そして金融システム安定化のための方策についても御審議をお願いをし、これらのものを少しでも早く使わせていただきたいということを繰り返し申し上げてまいりました。十年度予算においても、また関連する法律案につきましても、同じことを申し上げている。

確かに、そのお尋ねにお答えをしてくる中に、いろいろなやりとりはありましょう。しかし、まさにそういうお願いを申し上げております。

岡田委員 十年度予算案が最善の予算案である、これを早く通すことが最大の景気対策だ、こういう答弁は何度もお述べになっているわけでありますが、そういう答弁が非常にわかりにくくしている。

その前提として、今の景気の現状をどう見て、そして追加的な景気対策が近々必要とされるのか、されないのか、そこのところをお述べにならないと、何のために早く通せと言っているのかわからないじゃないですか。国民は、ほとんどの人が、いや、その後追加的な財政措置というのが出てくるのだろうというふうに思いながら、総理がそのことを言われないから、議論を聞いていても何にもわからない。もっと率直に国民に語りかける、そういうお気持ちにならないのでしょうか、いかがでしょうか。

橋本内閣総理大臣 先ほど来、経済企画庁長官も、経済企画庁長官としての役割の中から、昨年取りまとめました規制緩和のフォローアップ、さらにこれに党の方でいろいろ御検討いただいたものを政府がまた加え、新たなものをやりたい、そうした努力をしようとしているのだということも申し上げておりますし、また、通産大臣も、みずからの職責の中におきまして、例えばアジアの国々から製品輸入をする、製品輸入をいたします前提で今度は逆に日本から部品が出ていかなきゃならない、そうしたところにおける影響も心配しての発言もいたしております。

楽観してというようなことではありませんし、現時点において審議していただいております予算、税制改正等をできるだけ早く御審議いただきたいと申し上げるのが、政府の真剣な姿勢としては当然のことではないかと私は思っております。

岡田委員 ややしつこいかもしれませんが、それでは総理、補正予算、いろいろ自民党からもそういう声が上がっているし、あちこちでそういう報道がありますが、例えば、もう三月も四日でありますけれども、この補正予算について、三月いっぱいまでに政府として補正予算の決定をすることはないということを断言できますか。

橋本内閣総理大臣 先ほど経済企画庁長官も、同種の御質問に対して、経済は生き物でありますという言葉を使いました。そういうことにならないためにも、少しでも早い御審議をお願い申し上げたいと思います。

岡田委員 経済は生き物だという一般論は私もそのとおりだと思いますが、じゃ、三月いっぱいまでのこれから二十日間余りの間で、どういう大きな変化があって、つまり、今必要ないというふうに判断しておられるならどういう大きな変化があって補正の決定に至るのか。私は、そういうことについてきちんと説明する政治家としての責任がある、そういうふうに思います。

私がこういうことをいろいろ申し上げているのも、先ほど言いましたように、景気対策をとるとして、公共事業中心か、減税中心かという議論もある。あるいは、この本予算を修正するのか、補正予算かという話もある。そして同時に、財政構造改革法をどうするのだという話もあります。財政構造改革法を今のままやっていけば必然的に公共事業中心にならざるを得ない、そのことはこの委員会で何度も指摘がされたところであります。したがって、もし減税の方が効果があるということであれば、例えば弾力条項を置くとか、毎年赤字国債を減らしていくという規定を凍結するとか、そういう具体的な議論をしなきゃいけないわけですね。

しかし、最初に戻りますが、そういった追加的な財政措置の必要性について、現実には恐らく認めておられながら、この場では形式論で切り抜けられるものですから、そういう深まった議論ができない。ただ単に時間が過ぎていく。その間に、国民の方はますます政治に対してあるいは政府に対して不信感が募る。それが今の姿じゃないでしょうか。(発言する者あり)

越智委員長 静かに願います。

岡田委員 それじゃ、この予算修正について、私は、総理についていろいろな責任があると思うのですね、今までのことについて。いろいろな責任がある。

例えば、具体的には余り申し上げたくはないのですけれども、まず第一は、昨年春の九兆円の負担増、これによって日本の景気の決定的な後退を招いた。これは政府の、総理の責任があります。そして、財政構造改革法、これに基づいてデフレ予算を組んだ。これも総理の責任であります。三番目には、早期是正措置の影響を軽く見た。四番目は、二兆円減税のタイミングを誤った。

もし二兆円減税が前の国会の間に議論され、そしてその国会で通過をしておれば、年末のボーナスの時期に間に合った。そうすれば恐らく、二兆円であってもかなり景気にいい影響を及ぼしたはずであります。それが、国会が終わってから減税措置を打ち出されたためにこの国会にずれ込んだ、そして実施も二月、三月あるいは六月ということに分散した、このことの影響もかなり大きいです。

そういう、今申し上げた四つの点、私は総理に非常に大きな責任があると思います。そのことについても総理は責任をお認めにならない。例えば九兆円の負担増については、いや、今景気が悪いのはそのせいではなくて、アジアの景気後退が主たる原因である、そういう答弁をされたと思います。そういったことで責任を認めない。私は、そういったことについてきちんと責任を認めた上で、そしてこの国会審議の中できちんと、だから今追加的な財政措置が必要であるということを総理は言われるべきだと思うのですよ。

私は、今いろいろ申し上げたことについての総理の責任もありますけれども、より大きな責任は何かといえば、今これだけ審議している中で、そして景気の現状が非常に厳しいということはわかっている中で、そうじゃないという楽観的な予想を振りまいて、総理は楽観的じゃないとおっしゃるかもしれませんけれども、楽観的な予想を振りまいて、そして追加的な財政措置について口をつぐんで、そしてこの予算案が通った後で、通った後というのは衆議院を通った後だと思いますけれども、いきなりどかんと追加的な景気対策、財政措置を打ち出す、補正予算を打ち出す、こういうやり方は私はだめだと思うのですよ。

そして、もしそういうやり方をされれば、私は、そういうやり方について政治家として総理の責任、これは徹底的に追及したいと思います。もし今総理がみずからの今までのことをお認めになって、だから財政措置を自分としてはやりたい、協力してくれ、そういうことであれば我々は中身の議論というのはできると思うのですよ。そういうものを全部はねておいて、そしていきなりだまし討ちみたいにどかんと補正予算を組む、そういうやり方は私は納得できないのですが、いかがでしょうか。

橋本内閣総理大臣 大変恐縮ですが、この紙をちょっとお目通しをいただきたいと思います。

私は、この委員会の御論議というもの、党派を超えて評価すべき御意見というものは評価する、そしてその上で、これに対して、現実に例えば難しいと思うとかいうお答えをすべきだと思い、してまいりました。そして今、そういう御答弁の大変できにくい環境にございます。だれのせいということではございません。

しかし同時に私は、議員が今、これが私の責任だと言われましたもの、それぞれ議員としては私を批判する論拠をお持ちと思いますので、その批判はちょうだいをいたします。私は私なりにいろいろと申し上げたいことはございますけれども、少なくともそうした御批判を私は無視するつもりはありません。

岡田委員 総理の御発言に対して、自民党の中ですら責任とってやめろなどという話が聞こえてくるという報道もありますから、総理が非常に我々野党のことも含めて気にされるのはわかります。しかし、そんなことを一々気にせずに、総理としてみずから国民に対してきちんと語りかけるということは大事だと思うのですよ。

我々は別に、野党ですけれども、総理が率直にみずからの責任をお認めになり、そしてこれから追加的な財政措置が必要だ、だからその中身について議論したい、あるいはやり方について議論したい、補正なのか当初予算の修正なのか、公共事業中心なのか、それとも減税なのか、あるいは財政構造改革法について修正しなきゃいけないんじゃないか、そういう御提案があれば、きちっと受けとめられますよ。そういうことについて総理の踏み出しがないから私は、議論が後退している、あるいは議論が生産的なものになっていない、そういうふうに思います。

今総理が御指摘になったその紙もありますけれども、しかし、もし総理がそれだけが気になっているということであれば、私はちょっと総理の心臓も小さ過ぎるんじゃないか。そんなことを気にせずに、どんとやられればどうですか。何かありますか、総理。

まあ、何もないようですから、いずれにいたしましても、私はやはりこの国会の場で、予算委員会の場で、景気の現状について、そして追加的な財政措置のあり方について、きちんと議論するというのが本来だと思います。そういうことについてやっていないということが、私は、政治不信、あるいは経済全体に対する国民の信頼というものも後退させているんだ、そういうふうに思うわけであります。現在のこの経済不況の原因、直接的にはいろいろありますが、基本的には政府に対する信頼の問題なんですよ。それが後退している、そういうふうに私は思っております。

そこで、その政府に対する信頼の問題ということで、一つ追加的に御質問したいと思います。

厚生大臣に対して御質問したいと思うんですが、先般の自民党の発表された景気対策の中で、これは文章を読んでも中身が必ずしもはっきりとしないわけでありますけれども、不動産を証券化する。しかもただの不動産ではなくて、いろいろわけありの不動産も含んでいる、その不動産を証券化した商品を購入する。しかしそれはなかなか民間資金では難しい、だから厚生年金基金を活用すると思われる記述があるわけです。

厚生大臣はかねがね、厚生年金の基金の自主運用ということを言っておられる。厚生年金のもとの保険料というのは、やはり年金受給者のために最もよい条件で最も有利に運用していくのが責任である、そういうふうにいつも言っておられますね。そのことと、こういった不良不動産の証券化したものについて基金の金を投入して民間資本の先導役を果たす、こういうことについて、厚生大臣は賛成でしょうか、反対でしょうか、それとも絶対反対でしょうか。

小泉国務大臣 厚生年金基金、これは確実に有利に運用しなくてはいけない。そして今、一つの案として自民党が考えている不動産を証券化する商品についての購入はどうかという質問なんですが、政府がこの商品を買えとか買うなとかいう問題ではないと思います。また、それは政府はできない、民間に運用は委託しておりますから。その商品が有利であれば買えばいいし、不利であれば買う必要はない。厚生年金基金というのは、安全で確実に有利に運用するのが筋であります。

岡田委員 今の御答弁ですが、自民党の景気対策は、それをある程度、強制まではいかないかもしれないが、意図的に買わせる、そういう趣旨だと思うんですね、そうでなければ景気対策にならないわけですから。民間が買えないものを先導して買わせるというわけですから、民間がリスクがあって負えないようなものを負わせるということなんですよ。だから、そういう一般論の話じゃないと私は思うんです。

今の小泉大臣の御答弁は、そういった一般の民間と同じ条件でなければそれは買えません、そういう御趣旨ですから、先導的な役割を果たすことについては否定しておられる。そういうふうに受け取りましたが、それでよろしいですね。

小泉国務大臣 政府は強制できませんし、また不利な商品を買えなんと言うはずはありませんし、むしろ不利な商品を買うなと言っても、買えということは言えません。

岡田委員 今まで、財投の歴史を見ますと、郵貯にしても厚生年金基金にしても、必ずしも有利でないものも買わされてきたという歴史があるから私は非常に気にしているわけで、今の厚生大臣の御答弁は、そういった過去の事実も踏まえた上で、強制することはない、つまり市場の一般の民間の事業者が買わないようなものは買わせるわけにはいかない、そういうふうに断言をされたというふうに受けとめます。

いずれにしても、きのうの郵貯についての郵政大臣の御発言もありましたけれども、三十兆円の資本投入以来、どうも私は、政府のやっておられることはおかしいのじゃないか、こういうふうに思うのですね。今までは、民でやることは民にお任せします、政府の役割は最小限ですというふうに言っておられた中で、もちろん緊急の必要性というものは私も否定するものではありませんけれども、三十兆円の投入、そして今回の年金基金の活用、あるいは郵貯、簡保資金で株を購入しろと。何か五年か十年昔に戻ってしまった、政府が何でも手を出してやりますよ、そういうふうに私は受け取れるということを申し上げておきたいと思います。

次に参ります。日米防衛協力の指針であります。

前回少し議論をしたところを整理したいというふうに思っておりますが、国会承認の問題でございます。前回の答弁の中で、あるいはその後の防衛庁の記者会見の中で、防衛庁長官は、周辺事態発生に伴う自衛隊の出動ということに国会承認が要るか要らないかという問題について、いろいろなことを言っておられます。

一つは、PKFとの関係を述べられたところで、PKFというのは、一応シビリアンコントロールは確保されているけれども慎重を期すという立法府の意思に従ったのだ、こういうふうに述べておられますね、これは国会答弁の中でそういうふうに述べられているわけであります。

確かにPKFというのは後で修正した。PKOそのものについては国会承認は要らない、しかしPKFについては要る、これは後での国会での修正であります。しかし、その修正をしたのは当時の自民党、公明党、民社党、圧倒的多数ですね、国会の院の構成においては。それだけの多数の政党が立法府の意思としてPKFの場合にも国会承認が要るということを表明したわけです。その国会の意思の表明というものは、現在においても引き続いてあるというふうに私は考えるのです。

そういう意味では、従来のPKOに関する政府の御見解というものは、考え方が一部修正をされた。したがって、PKFは例にならずというのは成り立たない議論じゃないかと私は思いますが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 シビリアンコントロールが確立されているかどうかということと、国会承認を経るか経ないかということは、必ずしも軌を一にするわけじゃございませんで、シビリアンコントロールというのは、御承知のとおり、政治がとにかく軍に対して優位性を保っておればいいわけでございますから、現在の憲法のもとで、いろいろな自衛隊法なり現在の制度のもとで、文官の総理大臣あるいは防衛庁長官、そういうのがちゃんと機能するという形になっておるわけだから、それはそれであるわけですけれども、ただ、立法政策として、我が国の自衛隊が海外に出ていくときに、それをどの程度国会との関係を持たせるか、そういう判断の問題になるわけですね。

そのときに、御承知のとおり、今言われたように、PKFについては、シビリアンコントロールとしてはこれでいいけれどもということで出しましたけれども、国会の意思として、これは承認がより望ましいのだという意思によってあのように決まったわけでございます。そういう意味で、これから先も自衛隊が海外に出るときにどう判断するかというのについては一つの例になるのじゃないかと思います。

しかしながら、今度の周辺事態のときに、果たしてそういうふうに海外まで出ていくことになるのか、我が国周辺で後方地域支援なり主体的な活動をするのか、いろいろあると思うのです。

だから、それらについては、まさに国会の御審議を経ながら、議論を聞きながら、これから先どうやっていくか、これはやはり立法政策の問題に絡んでくるものでございますから、そういう意味で今幅広く検討を行っておるという状況でございます。

岡田委員 長官は、そのほかにも、邦人救出との対比において、邦人救出というのは緊急にやらなければいけない、だから国会承認の時間的な余裕がないんじゃないか、こういうことも言われております。しかしこれは、今の防衛出動であっても、あるいは命令による治安出動であっても、場合によっての事後承認ということを法律上規定しているわけであります。承認されなければ、そこでやめると。だから、同じような構成にすれば、時間がないということは理屈にならぬだろう、そういうふうに思います。

それから、もう一つ大臣が言っておられるのは、国会というのは、行政府に対して最終的には内閣不信任案という形で優越権を持っているんだ、だから、内閣不信任案があるから、国会承認なんてことをしなくたって、政府が出したものについて文句があれば不信任案を出せばいいじゃないか、こういう御趣旨だと思うのですが、私は、これはちょっとシビリアンコントロールという考え方を誤解されているんじゃないか。

我々が国会承認と言っているのは、自衛隊の活動に対して、国会が直接に承認という形で影響を与えるということを主張しているわけで、行政府に不信任案を突きつければいいじゃないかということを言い出したら、これは、国会というのはシビリアンコントロールについては基本的に必要ないという議論にもつながってくる議論で、私はかなり暴論だと思うのですが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 先ほど冒頭に言いましたように、シビリアンコントロールというこの言葉の意味からいきますと、現在の日本の憲法なり法律はそういう制度については確立されておるということを言ったわけでございます。

ただ、個々の具体的な自衛隊の行動等について、どこまで国会との関係で承認を必要とするとかしないとか、そういう問題については、まさに立法府が法律を決められるときに立法府の意思として決められる問題であって、これは、シビリアンコントロールという抽象的な言葉の持っておる響きといいますか、それとは直接には関係しないということを言っているわけでございます。

政府に対するコントロールがきかない場合は、政府が勝手に、要するに外国に対して義務を負うようなことをやってしまった場合、これは大変でございますから、これについてはちゃんと、いわゆる条約で義務を自分が負う場合には国会の承認を、批准をするという形になって、憲法上そういう制度ができております。それ以外については、政府に対してはいつでも国会が優位性を持って変えることができるというふうに、我が国の憲法は、そういう点では非常にすばらしい憲法としてでき上がっておる。

ただ、その中で、自衛隊のいろいろな行動についてはどこまで国会にかからしめるか、これは立法政策の問題で、立法府が政府に対して、政府から案を出されましても、それに対して、これはすべきであるという、まさにこの間修正されたような形で立法府の意思としてきちっと決めることによってそれは守らせることができるという、そういう形で、我が国のシビリアンコントロールは法制上は非常に行き届いておるというふうに思っておることを私は言ったわけでございまして、これから先のことについて、だから要らないとか、そういうことを言っているわけじゃないわけでございます。

岡田委員 今までのシビリアンコントロールについての政府の御見解、あるいはPKFについての国会承認の経緯、そういうものを踏まえて、長官は、いや、法案を出しても、それを立法府で修正すればいいじゃないかとおっしゃったけれども、そうじゃなくて、そういったいろいろな議論を踏まえて、提出の段階で国会承認についての政府のきちんとした考え方を出すべきだというふうに私は申し上げているわけでございます。

私は、従来のシビリアンコントロールについての考え方の中で一番問題になるのは、国民の権利義務に関係するかどうかというところだと思います。もう一つの、我が国にとって重大な事態であるかどうかというのは、周辺事態の定義からも、この前も申し上げましたが、重大な事態であるということは間違いなく言える。

国民の権利義務に関係するかどうかというところについて、例えば今の自衛隊法の百三条、防衛出動時における物資の収用という規定がございます。自衛隊の任務遂行上必要があると認められるときには、知事が、病院その他政令で定める施設を管理し、土地、家屋もしくは物資を使用し、あるいは保管を命じ、収用することができる、こういう規定でございます。一種の権利を制限している、非常時における権利を制限している規定でございます。

これと同様の規定は、こういった周辺事態出動の場合に必要がないとお考えですか。

久間国務大臣 財産権等との関係で私権の制限については非常に慎重を期さなければならないわけでございます。今の防衛出動の場合は、ちょうど災害の場合と同じで、非常時の場合に、それをすることによってより大きな公共の福祉が確保できるという場合に非常に限定された規定であると思います。

そういう意味では、周辺事態のときに果たしてそれに匹敵するような私権の制限をすることが可能かどうか、これはやはり議論があるところでございまして、そういう意味で今幅広く検討しているわけでございますけれども、現在の検討段階では、罰則まで設けて私権を制限するようなそういう規定は難しいんじゃなかろうかというような方向に意見は結構出ております。

しかしながら、今各省庁で、特に古川官房副長官を議長とする各省庁とのいろいろな会議でこれから先の法整備はどうあるべきかについて議論をしているわけでございますので、そういう中でこれから先、今委員の御指摘のようなそういう点も踏まえながら、議論が集約されていくんじゃないかというふうに思っているところでございます。

岡田委員 続いて百四条には「電気通信設備の利用」という規定もございますね。私は、罰則を設けるかどうかというのは一つ議論があると思いますが、もしいずれにしろこういう百三条、百四条的な規定がない場合に、じゃ、民間に自主的に協力してくださいとお願いすると思うんですが、これは一種の行政指導であります。しかし、法律の根拠がない行政指導になってしまうんじゃないか。

こういう非常事態でありますから、例えば極東で現実に戦争が始まっている、そしてそれに対して米軍が武力行使している、そういう中で自衛隊として日本の憲法の枠内で後方支援をしているわけですけれども、そういう事態で、こういった規定がなくて、できたら協力してくださいとこう言ったところで、それはかなり現実には強制になるんですね。そうしますと、それは法律の根拠のない行政指導ということになって、非常に不透明になってしまう。それよりはきちんと規定を置いて、その規定を背景にして行政指導をしていく、それが私はきちんとした考え方じゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

久間国務大臣 ガイドラインの実効性を確保するためにはどういうような法整備が必要か、そういうことについて今種々の広範な範囲の中から議論をしているわけでございます。

今委員が御指摘になりましたようなそういう点も踏まえ、協力を求める根拠が要るんじゃないかという議論もございます。しかしながら同時に、協力を求めたときに、罰則がなくて本当に協力が担保できるかというような意見もございます。それに対して、それはなくても、協力体制をつくる方法等でそれはカバーできるじゃないかといろいろな議論があるわけでございます。

そういう中で、今委員が御指摘になりましたような意見も踏まえながら、これから先どういう形が一番ふさわしいのか、先ほど冒頭に言われましたような私権の制限等の問題もございますので、私どもは慎重にしながらも、しかしながら、実効性が確保できるためにはどういうふうな、少なくともそういう協力を要請する規定ぐらいは要るんじゃなかろうかというような意見等も結構あるわけでございますので、そういう点も踏まえながら今議論を重ねているところでございます。

岡田委員 これは邪推かもしれませんが、国会承認を避けるために、法律の規定を置かずに協力するという体制にして、したがって私権の制限は形式上はない、だから国会承認も要らない、こういうことを考えておられるんじゃないかという気もするわけであります。

いずれにしろ、これはシビリアンコントロールの問題でありまして、国会承認にかからしめるかどうかなどというのは、いろいろな議論の積み上げが必要ですけれども、基本的には私は政治家のリーダーシップの問題だ。こういう場合にはシビリアンコントロールのためにきちんと国会承認させろ、そういうことをまず大臣が、いろいろな議論の結果、議論していてまだ決まっていないとかそういうことじゃなくて、大方針をきちんとお立てになって、それに基づいて組み立てていくというのが本来じゃないでしょうか。大臣の御答弁を聞いていると、議論している議論していると言うだけで、何か長官の御意思というものが伝わってこないわけですが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 先ほど委員も御指摘になりましたけれども、緊急性を要する場合については事後的にでもいいじゃないかとか、例えば邦人救出の問題とかいろいろございますが、そういうような議論もありまして、必ずしもこういう方針でこうやれというような形で言うほど、みんな機微な非常に微妙な問題ですから、それほどはっきりしたわけじゃないわけでございまして、それだけに議論もいろいろ出るわけでございます。

余り委員と私とで基本的な認識は違いはないと思うのですけれども、ただ、できるだけこういうことについては慎重に検討していかなきゃならないということから、今、いろいろなたたき台をもう構わず出していいから、どんどんやってくれということを言っております。それゆえに新聞等にいろいろ出ておるようでございますけれども、あれだって固まっているわけでも何でもないわけで、案については遠慮なく出して結構だということを言って、今どんどん議論をしているところでございますので、どうかもうしばらく検討させていただきたいと思います。

岡田委員 この議論の続きは、安全保障委員会その他でまたさせていただきたいと思います。

ほかにもいろいろ議論したい点がございましたが、時間が参りましたので、終わります。




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