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1997.05.07|国会会議録

140回 衆議院・厚生委員会

岡田委員 新進党の岡田克也です。

まず、昨日示されました医療保険制度に関する合意というものについてお聞きをしたいと思います。

この合意というのは与党三党における合意だというふうに私は理解をいたしますが、そういう理解でよろしいのでしょうか。

津島委員 そのとおりでございます。

岡田委員 ということは、社民党の合意も、社民党もこれに合意しているというふうに考えてよろしいですか。

中川(智)委員 そのとおりでございます。(岡田委員「大きな声でお願いします」と呼ぶ)

小さな声で言いたいのですが、そのとおりでございます。

岡田委員 この文章の中に、例えば3のところで、「与党医療保険制度改革協議会と厚生省は」云々云々で「とりまとめるよう努める。」それから4のところで、「政府は」「速やかに実施する。」こう書いてありますが、これを見ると、まるで厚生省、政府もこの合意案の当事者であるかのような書きぶりなんですが、厚生省はこの合意との関係はどうなるのでしょうか。

小泉国務大臣 合意案を尊重して対処したいと思います。

岡田委員 それでは、与党三党による合意であるというふうに理解させていただきたいと思います。

そもそも、この合意に基づいて、けさ、修正案が示されたわけでありますけれども、その前のもともとの法案は政府提案でございます。政府提案でありますから、与党もそれに対して異論があろうはずがない。与党の同意を得て政府としてお出しになったものだ。議院内閣制である以上、当然のことだと思うわけであります。その与党が同意されて、事実上与党がお出しになったと同じような原案を与党みずからが修正されるということはちょっと理解に苦しむわけでありますが、一体どういうことなんでしょうか。

津島委員 昨年十二月の予算編成時の三党合意におきましても、今後においても国民世論あるいは国会の審議に十分に耳を傾けた上でよりよい方向を目指すということになっておりますので、私ども三党で改めて修正をいたしましたのは、そのような精神に基づくものであると考えております。

岡田委員 国会での審議を踏まえてということでありますが、しかし、国会の審議でも与党は政府提案の法案に対して異論があろうはずがないのであって、ということは、我々野党の意見を酌み入れてこの合意ができた、こういうことでございますか。

津島委員 同じ本委員会の委員としての御質問でありますが、私の方からむしろ問いただしたいわけでありますが、与党の委員会の委員は一たん?\x94\xBF府案が出されればその後はこれに対して修正、改善を求めてはいかぬという考え方をもし岡田委員が持たれるとしたら、ちょっと私としては意見を異にすると言わざるを得ないわけであります。

岡田委員 今のお話でありますが、しかし、議院内閣制のもとで政府案として法案が出てきたものをまた後から与党が変えられるというようなことでは、これは政府案というのは一体何なのだろうか、あるいは閣議決定を経たということは一体どういう意味なんだろうかという根本的な疑問があるのですが、そこのところはいかがでしょうか。

津島委員 その点は、最初に申し上げましたとおり、昨年の予算のときから、国会における審議、それから国民世論の動向等に対して、今後十分に耳を傾けて進めていくべしというのが与党三党の間の合意にもなっておると考えております。

岡田委員 それでは、与党の中での議論の結果こう変わったということですから、しかも、この委員会での審議の結果変わったということですから、具体的にお聞きしますけれども、老人入院負担が平成九年度が千円で、十年度、十一年度と年度ごとに百円ずつ上がっていく、これは与党の中の、この委員会におけるどういう議論に基づいてこういうふうに変わったのでしょうか。

津島委員 当委員会において入院費用のあり方について御議論がございまして、例えば一例を申し上げますと、介護保険体制が始まりますと一割負担というものが予定をされておる、そういうことの中で今の政府原案の入院費というものをどういうふうに考えるのかという質疑応答がございましたが、そういうことについても我々は勘案した上で、外来と入院とのバランスということも考慮した上で、このような修正提案をさせていただいたものであります。

岡田委員 確かに私も、介護保険で一割の定率負担がある以上、将来の負担のあり方として定率にすべきであるということを申し上げた記憶がございます。しかし、今、津島委員おっしゃるように、そのことと老人の入院負担を毎年百円ずつふやしていくということは、むしろ定額ではなくて定率であるという話をしているわけですから、直接は関係のない話であります。私の記憶では、委員会にずっと出ておりましたけれども、入院患者のところについて定額で少しずつふやしていくという議論がされた記憶はございません。この点、中川委員、いかがでしょうか。

長勢委員 今回御提案申し上げておりますような具体的な提案は、本委員会ではなかったかと思います。ただ、今、津島先生から御説明ございましたように、入院費の自己負担のあり方については種々問題点が指摘されておったわけでございますので、そういう問題点を踏まえてよりよい修正をしなければならない、こういう判断のもとに修正をさせていただいたものでございます。

岡田委員 私は、今回、非常に問題だと思うのは、これは予算関連の法案だからであります。つまり、政府としては、予算案についてこれが最善のものである、こういうことで出してこられているわけです。予算委員会でも長時間の審議をした。しかし、今回のこの法改正によって予算も変わってくるわけです。厚生省の御提案でも、一千五百億円ぐらいの歳入減が生じる、こういうことになるわけであります。

そうすると、政府の提出された予算案についても当然どこかでいじらなければいけないということになるわけです。政府が自信を持ってお出しになっている予算案についても、そういった形で勝手に後から変えることができるというようなことは、本来、予算について国会で審議して通っているわけでありますから、私はあり得ないことだと思うのですが、いかがなものでしょうか。

津島委員 政府の側のお考えは、もしあれであれば大臣から御意見を賜るべきでありますが、私どもは、長い間の国会の歴史の中で、与党が提案をいたしました予算案は予算案として、国民の理解を得るために最大の努力をすると同時に、また、委員会等で交わされる意見あるいは国民世論に基づいてさらなる修正を加えるというケースはたくさんございます。特に、厚生委員会が扱うような国民生活に影響の大きい法案については、そのようなケースが非常に多かったと私は受けとめております。

そういう意味で御理解をいただきたいわけでありますが、ただ、当然のことながら、予算的な立場から申しましても、行政側において対応できるような最大限の努力をしなければならないということは当然のことでございましょう。

岡田委員 私は、ちょっと話が違うと思います。つまり、委員会で与野党が話し合ってその結果として法律の原案に修正を加える、あるいはその結果として予算も変わるということは、それは私はあって全くおかしくないことだと思いますけれども、野党サイドがそんなことを何も言っていないのに与党が勝手に法案を変え、予算も変える、こんなことは今まであったのでしょうか。私は、そこに基本的なおかしさがあるというふうに申し上げているわけであります。

津島委員 与野党の枠組みというものがいろいろ変化してきておりますから、昔のことについては十分調べてみないと何とも申せませんけれども、国会及び委員会の審議のあり方、建前から申しまして、そのことは拒まれている、つまり、与党が修正をするということが拒まれているとは私は考えておりません。

岡田委員 私は、この点はどうしても納得することができません。とりわけ、予算について政府がお出しになって、それは、予算案が予算になったものについて、何ら特段の、外的な事情の変更があったりすれば別でありますが、そういうのがないのに、いや、あれは違っていましたということで差しかえてしまう。そういうことは、私、非常に考えにくいわけであります。この点について、私は、基本的な疑問があるということをまず申し上げておきたいと思います。

さて、そういう上での話でありますけれども、突然、きのうになってこの合意ができ、そして、きょうになってそれが法案の形で出てまいりました。これは、与党の中で御議論になった結果、こういうものが出てきたと思うのですけれども、社民党の方は、この合意及び改正案で了解しておられるわけですね。

中川(智)委員 議論はやはり物すごくありまして、最終的な形でこのようにお出ししたことに対しては、もう責任を持って提案者となりましたけれども、いわゆる抜本改革をまず指し示して、その後から国民負担をお願いするという姿勢は崩しておりませんし、さまざまなところでずっと主張してきたことはございます。

でも、そのようなさまざまな経過を経て、そしてこの形にならざるを得なかったじくじたる思いがあることは、本当に岡田委員おっしゃるとおりで、もういっぱいの議論がございましたし、譲れないところもずっと主張してきましたが、最終的にこのような形で出させていただいた。そのあたりでお許しください。

岡田委員 私は、許すとか許さないとかいう話ではもちろんございません。ただ、ここで言う負担増の話ですね、老人の、お年寄りの入院についても、当初は千円だったのが、年度を経るごとに百円ずつふえていく話でありますとか、外来の薬剤の負担の話でありますとか、こういうことについて、社民党さんもこれを熱心に主張され、法案の形で出されたということは事実であるというふうに、当然そうなるわけですけれども、もし御異論があればおっしゃっていただきたいと思います。

中川(智)委員 そのようなことをずっと主張してきた事実はございません。薬剤のところ、入院費のところに関しては、意見はずっと一貫して社民党は申し述べてきました。これ、この答えだけじゃだめですね。薬剤のところ、入院費のところは、もう国民負担がこんなに高くなるということに対しては、一貫して、それはたえられないという主張はしてまいりました。

岡田委員 そういう主張はされたけれども、最後はこの法案の提案者になられた、こういうことですね。

さて、この法案が出てきたのがきょうであるということで、私は非常に心配しておりますのは、この厚生委員会、健康保険法の改正案についてかなり審議をしてきたことは事実でありますけれども、この改正案についてはきょう議論が始まったばかりでございます。

私どもは、どういう背景で出てきたのかもよくわからない、それから、先ほど来同僚議員がいろいろ厚生省に対して申し上げておりましたように、バックデータもそろっていない、そういう状況の中で今審議をしているわけであります。

私自身も、きのうの夜、この合意をいただいて、そして、慌てて問題点について夜遅くまでかかって検討した、今それに基づいて質問しているというのが現状であります。そういう中で、私は、まさかきょう最終的な結論を出すということにはならないであろう、こういうふうに思うわけであります。もし、きょう採決をするということになりますと、それはやはり、厚生委員会としての歴史に汚点を残すことになる。

私は、いつまでも採決をすべきでないということを言っているわけではございません。どこかでは結論を出さなければいけない、そのことは承知をしております。しかし、きょう提案して、きょう採決ということになれば、厚生委員会というのは一体何なんだ。結局、与党間でいろいろ協議をされる、その隠れみのになっているだけじゃないか。それは、私、やはり国会議員として耐えられないことであります。この点について、きょう採決だというお話もあるようですけれども、提案者の皆さんはどういうふうにお考えでしょうか。

津島委員 修正案が連休後にまとまるということになりまして、御指摘のような、時間が不十分であるというお考えがあろうかと思いますけれども、私どもは、これまで既に四十時間を超える審議を当委員会で本件についてさせていただき、その全体を見た上で提出をさせていただいた修正案でございますから、もとより、それぞれのお立場で、ああもしたい、こうもしたいという点は、これは当然おありかとは思いますけれども、これまでの議論を踏まえて、この辺で完結をしていただきたい、御意見を集約をしていただきたいと申し上げているわけでありまして、ぜひとも御理解をお願いしたいと思います。

岡田委員 与党は与党の中でいろいろ御議論されてきたかもしれません。だからもう十分だということかもしれませんが、我々は、きょう初めて目にしたわけです。それできょう採決しろと言われるのは、極めて不本意であります。私は、これはこの問題に限らない、もっと一般論として申し上げているわけですけれども、こういう形で政府案に対して与党が勝手に修正を出されるということが異例であれば、それに加えて、それを一日で審議しろというのも極めて異例で、これは本当に国会の自殺行為じゃないか、こういうふうに思います。

この点について、野党時代も非常に長くて、いろいろな御経験をされてきた社民党としてはどういう御感想をお持ちでしょうか。

中川(智)委員 そうですね、本当にそのことに対しては責任を感じますし、私は岡田理事のその御意見はもっともだと思いますが、やはりこれは、五月一日実施ということが、施行時期を先送りにして、予算関連ということでの緊急な事態だと思っております。

岡田委員 それでは、大臣にお伺いします。

もちろん、これは委員会の運営の問題ですから、大臣、関係ないとおっしゃるかもしれませんが、しかし、事は厚生委員会の運営の問題であります。やはり私は、議員というのは国会でしっかり議論して、その中でいろいろなことを練り上げていくということだろうと思うのです。今回のように、与党の中で、もちろん連立時代ですから協議するなとは言いませんが、長く議論されて、それで、本来もう少し早く出るべきだったのだろうと思いますが、それがおくれおくれて突然出してきて、その日に採決だというのは、私は正常な議会の姿とは思えないわけでありますが、大臣に、厚生大臣としてではなくて政治家として、そういうことについてどう思うか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

小泉国務大臣 私は、委員会の運営は委員長初め理事、委員の方々にお任せして、口を出す立場にはございませんが、厚生大臣として、この医療保険関係の法案はかなり十分に審議していただいたと思っております。長時間にわたり、ほとんど議論が出尽くしたと言っていいぐらい、多くの方々に熱心に議論いただいた。そういう中での結論でありますので、私は委員会の決定に従わせていただきます。

岡田委員 全体としては、かなりの審議時間を費やしたことは私も認めます。ただ、けさ出てきたものについてはきょうが初めてだということも事実でありますので、そのことを指摘しておかなければいけないわけであります。

とはいえ、どんどん中身を詰めていかないといけませんので、進めさせていただきたいと思います。

さて、この中で、この法が「施行されるまでの間に」、つまり九月一日までの間に「医療改革プログラムをとりまとめるよう努める。」というのが合意の中身になっておりますが、ここで言う医療改革プログラムというのは、先ほどの御説明を聞いておりますと、スケジュール的なものなのかなという気がするのですが、そういったものなんでしょうか、それとも、具体的な改革案そのものが九月一日までに出そろうということなんでしょうか。いかがなんでしょうか。

長勢委員 午前中も御答弁申し上げましたが、四月七日の基本方針を踏まえまして、具体的に内容を詰めていかなければならないものもございますし、また、全部を一遍にやれないでしょうから、それのスケジュール等も中身に入っていく、このように思っております。

どういうイメージでということを具体的に申せと言われましても、これから九月一日にかけて火の玉になって取り組む、こういう決意でございますので、今申しましたような内容で、国民の皆様方にこのような御負担をお願いする以上、きちんとしたものを責任を持ってつくり上げていきたい、このことを申し上げさせていただきます。

岡田委員 火の玉は結構なんですが、例えばここの2のところで三つ書いてあるわけですね。「診療報酬制度、薬価決定方式、高齢者に関する医療保険制度」、この三つについて九月一日までに与党の責任で具体案をおつくりになる、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。

長勢委員 できる限り具体的な内容で、国民の方々に御理解できるようなものをつくっていきたい、こういう思いでございます。

岡田委員 できる限りとか、いきたいとかいうことになりますと、本当にできるのかなという不安が先に立つわけであります。今までのいろいろな流れからいっても、結局は、最後に「努める。」というふうに書いてありますし、空約束になるのではないか。だから、構造改革と負担増は一体だ、そうでなければできないということを私どもは申し上げてきているわけであります。

例えばここのところも、九月一日までにもし本当にできるのなら、九月一日まで法施行しなくてもいいのですよ。それまではこの法について審議しなくて、九月一日にできたときにこの改正案を通せばいいのです。今通す必要はないのですよ、本当にできるのなら。何でそういうやり方をとらないのですか。やはりそれは、できないということが念頭にあるからではないでしょうか。私としてはそういうふうに思わざるを得ないわけであります。

そこで、厚生大臣にお伺いします。

厚生省の方も、年内のできるだけ早い時期に具体案を出すというふうにたびたび答弁されておりますが、与党の方は、九月一日ということで一応期限を切られたわけでございます。厚生省の方は、それとの関連において、どういうタイミング、厚生省の出される具体案についてのタイミングをお考えでございましょうか。

小泉国務大臣 本委員会で、できるだけ早い機会に、年度内中に厚生省案としての総合的な、抜本的な改革案をまとめたいというふうに発言してまいりました。しかしながら、今回、修正案におきまして、与党の方から、九月一日までに厚生省として案を取りまとめろという方針が出てまいりました。年度内から年内に、さらにはできるだけ早いというのが九月一日以前というふうに区切られましたから、私としては、この法案が成立し次第、九月一日までの、八月末までのできるだけ早い期間に厚生省としての案を取りまとめて、皆さんの前に提示したいと思っております。

岡田委員 そうしますと、全体のイメージとしては、厚生省が八月末までのなるべく早い時期に具体案をおまとめになる、そして与党の協議会としてもそれと並行して何かおまとめになる、つまり、二種類のものが九月一日というゴールを目指してでき上がっていく、こういうイメージでよろしいのでしょうか。

小泉国務大臣 厚生省としては、今までの審議していただいた意見、また審議会における答申等の意見も踏まえて、総合的な案を提出いたします。それに対して与党がどう反応するか、出てみなければわかりませんし、厚生省の案をどう評価するかというのは、それは皆さんでありまして、私どもが、今出ていないものを、出た後の評価せよといっても、今はできない。しかし、厚生省としては言われたとおり、八月末までに抜本的な案を提示します。

津島委員 私の方からも、六日の合意を前提に申し上げますと、「与党医療保険制度改革協議会と厚生省は」双方とも「今国会で審議中の健保法等改正案が施行されるまでの間に医療改革プログラムをとりまとめる」、それは双方に義務づける形で合意をしておるわけでありますから、今大臣御答弁ございましたように、当然、意見を調整した上で一つの明確な方向を打ち出すことになるというふうに考えております。

岡田委員 今の御説明ですと、与党と、政府の一部である厚生省と御相談をして案をおまとめになるというふうにも聞こえるわけですね、別々のものではなくて。しかし、党と政府は別でありますから、本来であれば別のものが出てきてどこかで調整をする、あるいは、一方が出して、それに対して他方がいろいろ意見を言うというのが本来だと思いますが、今のお話だと、何か混然一体として、厚生省と与党が一体になっておつくりになるというふうに聞こえますが、そこはそういうことなんでしょうか。

小泉国務大臣 厚生省としては、与党の考え方、本委員会での今までの議論の意見、これを参考にしながら、厚生省としての案をまとめるつもりでおります。それに対して与党がどういう反応をするか、これは今後の推移、経過を見なければ、今の段階で断定的に言うことは困難だと思います。

岡田委員 今の説明でよくわかりました。

そこで、お願いをしておきたいと思うのですけれども、厚生省が、政府として厚生省の案をおまとめになる、その段階で与党にお示しになるのだと思いますが、ぜひその段階で、当委員会にもその案をお示しいただきたいというふうに思います。

最近のいろいろな経緯を見ておりまして大変心配しておりますのは、もちろん連立与党の時代だから仕方がないのかもしれませんけれども、政党間だけで話が先行していく、そして、きょう見られるように、委員会の審議が形骸化していく、こういうことが一般的になってくると、国会というのは一体何なのだろうかという、そういう議論に必ずなってくるように思います。

やはり国会の場できちんと議論をする、政府はそれに対して提案をする責任がある、それが本来の筋であるというふうに思いますので、厚生省がおまとめになる時期がいつになるかわかりませんが、たとえ閉会中であっても全く構わないと私は思うのです。できれば、この委員会に小委員会の形で受け皿も用意しておいて、そして厚生省の御提案になったものをそこでも並行して議論をしていく、そして恐らく厚生省は厚生省の審議会でも議論される、そういう形で進めていかないと議会制民主主義というものが非常におかしくなってしまう、そういうふうに私は思いますが、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 厚生省としての案が出た段階で各政党なり委員会がどういう指示なり判断を下すか、今の段階で言えませんが、厚生省が案としてまとまったものを世間に公にするという段階で、委員会の御指示があれば、大臣としても、役所としても、委員会に出席せよということがあれば、私どもは当然出席いたします。その場でどのような議論を交わそうが、それは委員の皆様方の御判断に任せる、委員会の御判断に任せると。

岡田委員 明快に答弁していただきましたので、ありがたく思いますが、ぜひ、委員長にもお願いしておきますが、厚生省がおまとめになったところで、当委員会でもその厚生省の意見を聴取して、そして、この場でも積極的に議論していくというふうにしていただきたいと要望しておきたいと思います。

さて、与党の協議の方に戻りますが、もし与党の方で九月一日までに議論がまとまらないということになった場合は、どうされるおつもりなんでしょうか。

長勢委員 先ほどから繰り返し申し上げておりますとおり、与党三党一致団結をして、夏休みも当然返上して頑張る予定でございますので、そのようなことは全く考えておりません。

岡田委員 今までのいろいろな流れを見ておりますと、予算編成時の与党の合意、そして四月に出てきた基本方針、そして今回でありますから、私も非常に皆さん一生懸命やられるだろうとは思いますけれども、果たしてどうなんだろうかという気がするわけであります。

特に社民党さんの方は、構造改革が先であるということをずっと主張されてこられたわけですね。その上での負担増だと。それは我々の主張とも相通ずるものがあるわけですが、もし九月一日までにまとまらなければどうされますか。

中川(智)委員 私は、本当に楽観的な性格ですので、絶対にまとめてみせると。まとまらなかったことを考えたことはないものですから、まとめる方向で精いっぱいやるというお約束をいたします。

岡田委員 今の御答弁、非常に重いと思います。重い答弁だと思います。政治家としても政党としても、構造改革をやるまでは負担増は認めないと言ってきた、それが今のこの形で九月一日ということで切れているわけですから、もし九月一日にきちんとしたものが出てこずに、そのままこの法律がもう通ったことによって負担増が始まるということになれば、それは社民党として極めて重い責任を負うことになる、そういうふうに私は思います。そのことだけ申し上げておきたいというふうに思います。

中川(智)委員 与党は一応自社さでございますので、社民党の決意は申し述べましたが、それじゃ自民党さんの決意をお願いします。

津島委員 自民党も全く同じような決意で臨んでまいります。

岡田委員 それでは、少し中身に入っていきたいと思います。

この5のところに?から?まで書いてあります。三党の合意ですね。その中で、「薬価差益の解消」「に努める。」、こういうふうに書いてあるわけですけれども、これがなぜここに出てきたのかもよくわからないのです。具体的に構造改革としては、最初の2のところで、「診療報酬制度、薬価決定方式、高齢者に関する医療保険制度」ということで書いてありますから、ここは構造改革じゃなくて当面のものとして書いてあるというふうに私は理解するわけですが、具体的にどのような薬価差益の解消策を与党はおとりになるおつもりなんでしょうか。

長勢委員 御指摘のとおり、最終的にといいますか、公定価格制度の解消というか廃止、見直しが根本的な解決策だろうと思いますが、当面、今現在進めておりますR方式といいますか、薬価基準を決める際に、価格決定の際にとっております薬価差解消の方式がございます。これを引き続きさらに強力に進めていくという方向で当面進めて、できる限り早く抜本改革を実現をしたい、このように思っております。

岡田委員 ということは、九月一日より前に追加的な薬価差解消のための具体的措置をとられる、こういうことですね。

長勢委員 薬価基準の見直しにつきましては、それなりのルールがございますし、時期もございますが、それに向けていろいろな所要の準備もございますが、不断の努力を今後とも引き続きやっていきたい、こういうことでございます。

岡田委員 非常によくわかりにくいのですが、そういう、いつやるかわからないというお話ですと、この5のところに分けて書いてあるということがよくわからないわけであります。構造改革としては薬価決定方式そのものを見直すというふうに言っているわけですから、そのことと、ここに「薬価差益の解消」ということを改めて書いていることのその関係がわからないものですから、私、質問しているわけですが、いかがなものでしょうか。

長勢委員 御指摘のとおり、この抜本改革とは、当面というよりも、できる限り現実にやれるものを早くやっていくという趣旨で5ができておるわけでございます。そういう意味で、ただ、薬価基準の改定そのものは、時期的に、ルールがございますので、それに沿った形でやることになりますけれども、そういう方針をここで明示しておるわけでございます。

岡田委員 従来の厚生省の御答弁では、薬価差益の解消などということも非常に難しい、基本的にメカニズムそのものを、価格メカニズムを導入するようなやり方でやっていかないとできないのだという御答弁だったと思うものですから、ここに「薬価差益の解消」というふうに書いてありますので、非常に奇異な感じがして御質問したわけでございます。

それじゃ、その次の?の「不正請求の摘発と防止」と書いてありますが、これは不正請求がかなりあるという認識をお持ちなんでしょうか。

長勢委員 あるという認識というよりも、あってはならない、また、そういう問題があるようでは、こういう国民の方々に負担をかける際に申しわけが立たない問題でございますので、こういうことのないようにというか、あってはならないことを防止するための、レセプトの審査等の充実や指導の強化ということをこの際さらに進めていこうということについての決意を表明しておるものであります。

岡田委員 こういうふうにお書きになった以上、ぜひ単に書いただけではなくて、きちんとした対応策をとっていただきたい。また、その対応策をとる前提として、不正請求がかなりあるのだという認識に与党サイドはお立ちになっているというふうに理解をいたします。

?の「保険給付における薬剤費支出の不明朗な実態の解消」というのはどういう意味でしょうか。

長勢委員 先般、一部マスコミ等に報道された記事がございましたりしたこともありまして、与党協議会におきまして、その協議の過程で、いわゆる診療報酬の中で薬剤費に払われている費用と、あるいはメーカーの収入あるいは薬価の差、あるいは流通段階でのコストというものとの間に差があるのではないかということが議論になりました。

この点について、厚生省等に、与党協議会といたしましても、いろいろな意味で精査をするようにと強く指示をしてきたところでございますが、今正直言いまして、我々自身もはっきりした実態がつかめていないというのが状況でございます。こういうことはあってはならないことでございますので、何としてでも、不明朗であるかないかということは、これは国民の前に明らかにすべきことでございますので、厚生省においてきちんとこの状況を把握できるようにしてもらいたいということでございます。

岡田委員 それでは、厚生省の方は、この5に書いてある?から?の点について、当面何らかの具体策を、与党の御要望ですからおとりになると思うのですが、その御決意をお聞きしたいと思います。

高木(俊)政府委員 5に書かれております内容、?につきましては、これは計画的な返済ということでございますので、むしろ厚生省というよりも大蔵省の問題ではないかというふうに思っております。厚生省としては、計画的な返済を求めていく立場ということになろうかと思います。

?以下、こういったことについてはかねてから本委員会でも議論がなされておりますけれども、それぞれ適正化に努めていかなければならない問題ばかりであるというふうに思っておりますし、そういった意味では、これまでも私どもとしては努力してまいったつもりでおります。

なお、?でありますけれども、これは、今、長勢先生のお話では、当委員会でもいろいろ御指摘がございました各種データを突合した結果、医薬品の生産量と実際に医療費で払っておる額との間で五千三百億ほどそごがあるではないかという問題もこの中に含まれるというふうに私は理解をさせていただいたのですが、この問題については、私どもとしても、当委員会でも御説明申し上げましたが、一定の資料に基づいて積み重ねてみるとその差が出てくる、ただ、これはそれぞれのデータの性格なり趣旨なりあるいは調査時点なりが違うということでありますから、この五千三百億をもってこれを不正請求だと判断するというふうなことは考えられないわけでありまして、要するに、私どもとしても、そのそごというものについては解明はいたしますけれども、これについてはなかなか難しいものがあるというふうに思っております。

実は、この問題については、それぞれの資料の内容も踏まえまして内部的には一から検討させておりますけれども、今の問題についてはそういうことで考えておりますが、ただ、ここは、このまま読みますと、「保険給付における薬剤費支出の不明朗な実態」というのがございますが、私どもとしては、「薬剤費支出の不明朗な実態」という点については今申し上げた範囲での理解でありまして、それ以上の理解はしておりません。

岡田委員 それでは、先ほどちょっと申し上げましたように、この合意の中で、「診療報酬制度、薬価決定方式、高齢者に関する医療保険制度」、この三つが中心である、こういうふうに書いてありますので、順次お聞きしていきたいと思うのです。

この合意では、「与党三党による昨年十二月十九日の確認及び本年四月七日の「基本方針」に基づいて対処する。」こういうふうに書いてありますから、この二つを参考にしながら、その線で、今言いました診療報酬制度や薬価決定方式などについてこれから議論が進んでいくのだろうというふうに思います。

そこで、全体の大まかな方向だけでもこの場でお聞きをしておきたいと思うのですが、診療報酬制度につきましては、基本方針の中でも出来高払いと包括・定額払いの話が出てくるわけでありますが、基本的にこのところをどういうふうに与党はお考えなんでしょうか。これはそれぞれプラスマイナスがあるというふうに私も思いますけれども、量的には出来高払いを減らして包括・定額払いをふやしていく、私はそうすべきだというふうに思うわけですが、与党はその点についてどうお考えでございましょうか。

長勢委員 診療報酬の見直しにつきましては、今先生御指摘のとおり、基本方針に沿ってこれから進めていきたい、こう思っております。

基本方針では、いわゆる出来高払い制度について、我が国の良質な医療に寄与してきたことを評価しつつ、いわゆる定額・包括払いの積極的な活用を図ることによって出来高払いと定額払いの最善の組み合わせを目指すという方針を示しております。

出来高払いにおきましても、例えば急性期医療においては定額払いというわけにはいかないのではないかという御指摘もございますし、また逆に、長期療養型のようなものにつきましては定額払いの方がより合理的なのではないかという御指摘がございます。そういう意味で、各医療分野によりましてどちらがより効率的であるかという観点から、今後の診療報酬等を決定する段階で中医協等でこれからこういう方向で御議論していただきたい、このように思っております。その結果として、今先生の御指摘のような状況、ただ単に定額払いがふえればいいというものではございませんが、最善の組み合わせの中で今先生御指摘のような方向ができ上がっていくものであろう、そのように期待をいたしております。

岡田委員 長く議論されてきたからもう少し具体的なことが恐らくあるだろうと思うのですが、今少しおっしゃった、入院療養患者さんのように、ある意味で慢性的なものについては定額がいいというのは大体コンセンサスがあるのじゃないかと私は思いますが、それ以外に定額払いがどういう分野に適しているというふうにお考えでございましょうか。

長勢委員 事は比較的専門的分野にわたりますので、明確な自信のある答えは私自身余り正確にできない部分がございますが、長期療養の場合ですとか、あるいは一種の検査等について包括的にまとめてできるようなケースですとか、いろいろなケースがあるということを私自身も聞いております。

ただ、それが本当に効率的な医療であるのか、それによって粗診粗療を招くことがないのかという点については、専門的分野から御検討いただくことが必要であろう、このように私は思っております。

岡田委員 今の出来高払いというものが、これをすべて悪者にするつもりは私もありませんが、医療費増大の一つの原因になっているということはお認めになりますね。

長勢委員 出来高払いは、わかりやすく言えば、医師の方々の御判断によって診療すべてについて診療報酬が払われるという仕組みでございますから、ケースによっては乱診乱療になるという御指摘もあるわけでございます。そういう意味で、医療資源の効率化を図るという観点から、仮に出来高払い制の中であっても、そういうことのないように注意していかなきゃならないというふうに思います。

岡田委員 かなり慎重に言われたのですけれども、例えば、与党三党の十二月十九日の確認の中でも、「(試案)」という形でありますけれども、「出来高払制に伴う医療費増大の見直しなどは早急に着手していく。」ということで、出来高払いというものが医療費増大につながっているという認識は示されているわけですね。それから、「検討事項」の中でも、これは同じときに示されたものでありますけれども、「過剰な医療費の削減を図るために、出来高払い方式の診療報酬の見直しに着手する。」こういうふうに書いてあります。

つまり、去年の十二月の段階でこういう認識をお示しだったのが、今のような御答弁で、私から見ればかなり後ろに下がってしまったように思えるわけで、そういうのを拝見していると、本当に九月一日までにさらに前に向いて歩けるのだろうか、そういう不安があるわけでございます。この十二月の段階での、出来高払いが医療費増大の原因になっているという御認識、これは今もお持ちなんでしょうか、どうでしょうか。

長勢委員 先生の御認識と私どもの認識とは全く違いはないと私は思いますし、また、現在、年末のころの認識と変わっているということもございません。そのことを基本方針で表現をしておると私どもは思っております。

ただ、具体的に、今先生、最初に、どういうことを考えられるかということについて、あいまいな答弁をしたことを大変申しわけなく思いますが、事は極めて専門的な分野もあるものですから、この部分とこの部分を定額にするとかしないとか、これを責任を持って与党協議会としてお示しする段階にはまだ至っていなかったというのが現実だと思いますし、このことをこれからの医療協議会でやっていくことがいいかどうか、中医協等もございますので、そこら辺はこれからまた議論をしなきゃならぬと思いますけれども、方針として、出来高払い制と定額制の最善の組み合わせを目指すという考え方は、年末の合意等と全く同じ考え方で取り組んでおるということは明言をさせていただきたいと思います。

岡田委員 ぜひそこのところ、政治の世界での基本的考え方をきちんと明示した上で専門家に御議論いただくのはいいと思うのですけれども、そういう基本的な方針がないといつの間にか利害調整だけになってしまいがちでありまして、私も、出来高払いのいい面がある、物によっては出来高払いにしなきゃいけないということ、そういう場面があることは十分認識しつつ、しかし、やはり基本的な方針をきちんと政治が立てて、その上での専門的な調整に入らなければだめだ、そういうことを申し上げておきたいと思います。

さて、先ほど言いました三つの項目の中の薬価については、私は、この委員会での審議で厚生省は大分踏み込んで御答弁いただいたというふうに思っておりますので、ぜひ価格メカニズムが生きる形で薬価の算定方式、あるいは薬価基準そのものについても抜本的な検討といいますか改正をやっていただきたい、こういうふうに思いますが、厚生大臣の薬価のあり方についての御決意をもう一度お伺いしておきたいと思います。

小泉国務大臣 総合的な、抜本的な改革をするという以上、薬価の問題につきましても思い切って現行制度を改正したい。その際、市場取引の実勢にゆだねるという原則に立って踏み込んだ改革案を出してみたいと思います。

岡田委員 随分、薬価の問題を私も議論させていただきましたが、医薬分業一つとっても、これは時間のかかる話ですね。一年や二年では恐らくできないだろうと思うのです。そういう意味では、早く着手をして、方向性をきちんと行政なり政治が明示して、そして手際よく進めていかないと、とても薬価についての抜本的な改革はできない、五年、六年すぐかかってしまうということでありますので、ぜひイニシアチブを発揮していただきたいというふうに思います。

三番目の、高齢者に関する医療保険制度ということでありますが、ここで医療保険制度というふうに、保険制度というふうに書かれたのはやや私どもにとっては残念なんですが、基本的な考え方として当初は四つぐらいの案が示されていた。それに対して、与党の御協議の中で、高齢者についてだけ別にする案と、現役をそのまま突き抜け方式で上まで延ばしていく案と、大体この二つに絞られたのじゃないかと思いますが、そのうちのどちらを中心に与党の方はお考えでしょうか。

長勢委員 御指摘のように、高齢者医療制度につきましては、現在の老人保健制度が制度的にもう破綻に瀕しておるということは御承知のとおりであります。それについて今後どうやっていくか、特に高齢社会がますます深化をするわけでございますので、その中で老人医療費がますます拡大をしていくという中でどうするかということが喫緊の課題でございます。

今おっしゃったように、四つの案がございました。その中の、一種の独立方式、あるいは、何とおっしゃったですか、突き抜け方式、この二案が今後の検討の対象としてふさわしいのではないかというふうに絞ってまいりました。また、協議会の場、あるいはそこでのいろいろな方々の識者の御意見の中には、両者をミックスしたような案も意見として述べられたこともございました。こういう中で、これから、その二つあるいはその組み合わせという観点から、具体的な方策を模索をしていきたいというのが与党協議会での立場でございます。したがって、どちらにもそれなりにいい点、悪い点あるわけでございますので、どっちが中心ということについて明確に今申し上げる段階ではないのかなと私自身は理解をいたしております。

岡田委員 私どもは、老人の医療については、別方式、しかも税を主体にということを御提案申し上げているわけでございます。いろいろな議論があると思いますが、私はやはり、老人医療についても介護についても、あるいは年金の基礎部分、基礎年金の部分についても、税というものをどう考えていくのかということを一度きちっと議論した方がいいのだろう、税方式と保険方式のメリット・デメリットというものをもう一度全体で議論し直す必要が出ているのじゃないか、こういうふうに思っておりますので、ぜひこの社会保障構造改革全体の議論の中でそういう視点もあわせて厚生省において御検討いただき、厚生省のお考えをお示しいただければ大変ありがたいことだというふうに思います。

いずれにしても、この社会保障構造改革というのは、私も野党だからといって逃げるつもりはありません。私どもも検討させていただき、厚生省の案が出てくれば、それをたたき台にして私どもの考え方も示させていただきたい、こういうふうに思っております。これは大変大事な話でありますし、同時に困難な話でありますけれども、私どもはこの問題について逃げるつもりはございません。前向きに取り組んでいきたいと思いますので、今後ともぜひ議論を続けていきたい、こういうふうに思います。

ありがとうございました。




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