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1995.06.09|国会会議録

132回 衆議院・安全保障委員会

岡田委員 新進党の岡田克也です。まず、オウム真理教関連で質問をしたいと思っております。

まず、これは事務当局にお答えいただければ結構だと思いますが、本件、オウム真理教関連で処分をされた自衛隊員の五名の氏名、身分、そして規則違反の内容、処分内容について簡単にお答えをいただきたいと思います。

萩政府委員 お答えをいたします。

第一空挺団白井三等陸曹、三月十九日、南青山オウム教総本部に対する火炎瓶投てき事件に関与したこと及びオウム真理教関係者に内部情報を提供したことにより、四月二十八日懲戒免職。

第一空挺団浅野三等陸曹、オウム真理教関係者に内部情報を提供したことにより、四月二十八日停職三十日。この者は即日依願退職をしております。

第二対戦車ヘリコプター隊今中二等陸尉、オウム真理教関係者に内部資料を提供したことにより、五月二十四日付降任一階級下位。即日依願退職をしております。

第一空挺団東山三等陸曹、オウム真理教関係者数人とともに、平成六年十二月、広島市内で建物不法侵入したことにより、五月二十五日付懲戒免職。

第一空挺団郡司直樹陸士長、オウム真理教関係者に内部情報を提供したことにより、五月二十五日停職三十日。即日依願退職をしております。

以上五名であります。

岡田委員 以上の五名の中で、四名までが第一空挺団所属、こういうことでありますが、この第一空挺団というのは一体どういう仕事の中身なのか、御説明をいただきたいと思います。

萩政府委員 習志野にございましで、パラシュートによる降下を専門とする部隊であります。

岡田委員 聞くところによりますと、この第一空挺団というのはかなり選ばれた人たちの組織である、重要な組織である、こういうことであります。

それでは長官にお聞きしたいと思いますが、七日に監督者の行政処分というのが出ておりますが、言うまでもなく最高責任者は長官であります。これだけの隊員の処分を出したこと、あるいは監督者の行政処分を出したことについて、長官としてどのような責任を感じておられるのか、お伺いをしたいと思います。

玉沢国務大臣 オウム真理教に絡んだ反社会的事件に関与した現職自衛官五人に対しましては、厳正なる懲戒処分を行ったところでありますが、この五人の自衛官を監督する立場にある者に対しましても、六月七日付で厳正な処分を行ったところであります。このような事態を招いたことにつきまして、防衛庁長官として、みずからを厳しく律するため、みずから進んで一カ月の俸給月額の二割を国庫に返納することとしたところであります。

オウム真理教が自衛隊を組織ぐるみで取り込んでいたというような事実はなかったと判断しておりますが、今後引き続き、自衛官をどのような意図をもって活動に関与せしめようとしたかという点も含め調査を行うとともに、規律厳正なる部隊を保持し、信頼される自衛隊を確立していくことが私の責務であると考えております。

私も、みずから先頭に立って日本の民主主義を守り、平和と安全を破壊しようとする反社会的集団との闘いをさらに続けてまいる決意を新たにしでいるところであります。

岡田委員 月給二割分お返しをしますというのは、国民から見るとほとんど説得力がないだろうと思います。

ただ、私は、長官みずからおっしゃったように、これからの再発防止というところが非常に大事なことだ、こういうふうに思うわけでありますが、再発防止について具体的に今までどのような対策を講じられたのか、その点についでお聞きをしたいと思います。

玉沢国務大臣 自衛隊に対し不信の念を抱かせ、その威信を失墜させるような事件の根絶を期するとともに、国民に奉仕し、かつ信頼される自衛隊を確立し、厳正な規律の保持に万全を期するため、五月三十一日に各幕僚長等に対し、防衛庁長官通達を発したところでありますが、その通達に盛り込んだ措置の内容については、次のとおりでございます。

隊員教育上の措置といたしまして、「自衛官の心がまえ」を基本とする使命感等の一層の徹底布図り、その結果を把握し、教育の充実を図ること。精神教育等につきましては、社会に対する健全な視野を広め、各隊員がみずからの考え方等の問題点を自覚できるように集配討議等を重視すること。

次に、服務指導上の措置といたしましで、各級指揮官等がきめ細かく身上把握を行い、これに基づく服務指導を徹底すること。隊員が遵守すべき服務関係法令の内容を周知徹底すること及び今回の事件を参考にした服務指導を徹底すること。カウンセリング制度の一層の活用により、隊員の悩みや心理的問題を早期に解決するよう努めること。公務員宿舎は適正に使用されるよう指導すること。

さらに、使命感の育成のための教育や秘密保全の徹底を含む服務指導についての教育等のあり方、自衛官の外出制度のより適正なあり方等を中心といたしまして、制度上改善すべき余地があるかどうかについて検討しでまいりたいと考えております。

岡田委員 自衛隊員がオウム真理教に関連をした今回の事件について、国民が非常に不安に思っている。心配をしている。それはなぜかといえば、自衛隊が、戦車、戦闘機も含めて、そういう武器を持った集団であるからであります。したがって、こういうことが二度と起きないように  つまり、考えてみればオウム真理教が、ここ数年間でありますが、非常に過激な方向に走った、こういうふうに言われているわけであります。その数年間に、選ばれた人たちの集団であると言われている第一空挺団の中で、四名もその禍激な動きに参加をする者が出てきた。これはかなり異常なことではないか、どこかに大きな問題があるのではないか、そう国民は感じて、自衛隊の今の管理体制が本当に大丈夫なんだろうか、そういう目で見でいる、こういうふうに思うわけで糸ります。

今長官からいろいろ具体的に、こういうことをするんだということを御説明いただきましたが、いずれもいわば事務的な説明といいますか、事落的な内容でありましで、本当にこれをやればこういった事件が再発しないのかどうか、大変不安に思うところであります。私はもう少し抜本的なことを考えた方がいいんではないか、こういう気がいたしますが、長官のお考えを聞かせていただきたいと思います。

玉沢国務大臣 オウム真理教がどのような意図を持って今回のこの反社会的な事件を起こしたか、これはまだ解明をされておるわけではございませんが、今までの資料等を見ますと、国家転覆を計画する、あるいはみずから自作自演の、社会を混乱させるためのテロ行為を行う、こういうことが今までの資料等で明らかにされておるわけでございますけれども、彼らがもし国家転覆というものを武力あるいはクーデターに近いようなそうしたことで行おうとするとするならば、当然、彼らは自衛隊員に接触をしてその獲得に努めたものと思うわけでございます。

私が今まで申し上げた中におきまして、自衛隊は、実力組織であるだけに、国民の信頼を中心としなければなりませんけれども、まずもってみずから厳しく隊内の規律を明確にするということが大事であるわけでありますから、五人の懲戒処分を受けた者も含めまして、隊内で厳しく調査した上で行ったわけでございます。今後とも、自衛隊はみずからの姿勢を明確にしまして、規律厳正なる部隊を保持していくということが大事である、こう考えるわけでございますので、従来から行ってきた努力というものを、これも引き続き進めていくということも大事であるということも申し上げておきたいと思います。

岡田委員 長官のおっしゃることはわかるんですが、繰り返しになるかと思いますが、とにかく短期間に現職の自衛隊員の中で五名も、こういったいわば荒唐無稽とも思われるオウム真理教の考え方に賛同をする、あるいはそればかりではなくてその実行部隊となって動いた、こういう隊員州出てきたということは、これはやはり現在の自衛隊の教育あるいは管理、そこに大きな問題があるんではないか、そういうふうに思わざるを得ないわけであります。国民の多くもそう思っていると思います。

したがいまして、それについてこれから庁内でもいろいろ御議論をされて、そういったことが二度とないようにきちんとした体制をぜひ集いていただきたい。既に発表された通達の中身を国民が見ても、これで安全だ、こういうふうには受け取らない方が大多数だと私は思いますので、ぜひ、専門家の意見も聞きながら、そういったあり方、教育のあり方、管理のあり方そのものをもう一度再検討していただきたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。

もちろん、この問題は、憲法に定める基本的人権と絡む問題でありますから、大変難しい問題であることは重々承知をしておりますが、同時に、強力な武器を持った集団の中に起こったそういう事件であるだけに心配をしているわけでございます。よろしく御検討をいただきたいと思います。

さて、次に、午前中、町村委員の方からも同じような質問が出たかと思いますが、有事法制についでお聞きをしたいと思います。

実は、最近、元総理大臣の宮澤喜一さんが「新・護憲宣言」という本を朝日新聞社から出されまして、その中で、宮澤さんにしては随分はっきり物を言われているなという箇所があります。それは有事法制、有事立法の問題でありまして、百二十九ページに出てくるわけでありますが、「わが国が直接侵略を受けた場合すら、具体的に対処する方法、いわゆる「有事立法」について今日までほとんど整備されていないということを、私は強く憂うるものです。」こういう表現が出てまいります。

私はまさしくそういう視点でお聞きをしたいわけでありますが、政府における有事法制の検討状況について、簡単に御質問したいと思います。

三井(康有)政府委員 午前中にも御答弁申し上げたわけでございますけれども、防衛庁がこれまで実施しでまいりました有事法制の研究と申しますのは、自衛隊法の第七十六条の規定によりまして防衛出動が下命されるという事態におきましで、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の諸問題を検討の対象として、昭和五十二年以来研究を行ってきたものでございます。

これまで防衛庁所管の法令及び他省庁所管の法令につきましては、それぞれ問題点を整理いたしまして、五十六年及び五十九年にそれぞれ公表し、国会にも御報告をしたところでございます。また、所管省庁が明確でない事項に関する法令につきましては、現在、内閣安全保障室を中心とする政府部内におきまして検討を加えているところでございます。

岡田委員 いろいろ御検討されているということはわかっているわけですけれども、それじゃ長官にお聞きしたいと思うんですが、もし何らかの有事で自衛隊が出動をしなければいけないという事態、これは予想できないわけですね、突然来るわけです。そのときに、今のこの現行法制下で自衛隊の活動に私は重大な支障があるだろう、こう思うんですが、長官、どう思っでおられるでしょうか。今の法制の中で十分自衛隊の活動はできるというふうにお考えでしょうか。

玉沢国務大臣 骨格におきましてはできると考えておるわけでございますが、なお不備な点は当然検討をして是正をしなければならない、このように思います。

岡田委員 骨格においてはできるということなんですが、例えば、道路に爆弾が落ちて、戦車が通れない、自動車が通れないという状態になっているときに、例えばどうされるおつもりですか。

三井(康有)政府委員 骨格において整備されているということは、同時に申せば、細部についで、今委員御指摘のような個々の問題点が今なお存在しているということでございます。

例えて申しますと、防衛庁所管の法令につきましても、防衛出動時におきます物資の収用等を規定しました自衛隊法百三条の政令が未制定であるとか、あるいは、同じく自衛隊法第百三条による処分を行うという規定がございますけれども、その相手方の居所が不明の場合についての規定を補備しなければならないとか、あるいは同じく百三条に基づきまして土地使用の時期を早めるという規定が必要であるとか、さらに、部隊が緊急に移動する場合に土地等を通行し得る規定が欠けているとかといったことがございます。

さらに、私ども第二分類と呼んでおりますけれども、他省庁の所管する法令におきましても、今先生も御指摘になりました損傷した道路等の通行のため、道路工事等の規制を定めました道路法に関しまして、応急補備に関し特例措置が必要であるとか、その他もろもろの点の整備が必要であるということは、私どももそのように認識をしておるところでございます。

岡田委員 要するに、そういった法律面での整備をしなければ、いざ有事の際に自衛隊は動かせない、動けないというのが実態だと思います。もしやるとすれば、有事だから超法規的にやるということで、すべての法令を無視して行動をするのか、あるいは緊急に国会を召集して、皆さんもう既に持っているかもしれませんが、そういう法律の改正案というものを国会を通過させて、それでも一日、二日ではできないでしょうから、その数日間は自衛隊は動かずにいて、その上で動き出すという、まことにこっけいなことにならざるを得ないんじゃないかと思います。

やはりこれだけの費用をかけて自衛隊を整備しているわけであります。いざ有事の際にそれが動かないということでは、一体何のために税金をかけてこれだけの整備をしているのか、こういうことになるわけでありますので、ぜひそこは、いざというときにきちんと機能し得るような形にしておくということは、私は、防衛政策の最高責任者である防衛庁長官の最低限の責任じゃないか、そういう気がいたしますが、御感想を聞かせていただきたいと思います。

玉沢国務大臣 有事法制研究の目的は、現行法制上不備な事項についての問題点を整理し、研究しておるものでございます。しかし、近い将来に国会提出を予定しているわけではございません。しかしながら、我が国の防衛を担当している防衛庁といたしましては、有事法制については、当然のことながら、研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましいと考えております。

いずれにせよ、有事法制の研究にとどまらず法制化をするか否かという問題は、高度の政治判断にかかわるものであり、国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえて検討すべきものであると考えております。私といたしましては、国会の御理解が進み、国民世論が熟せば、有事法制の法制化についで適切に対処していくことはやぶさかではないと考えております。

岡田委員 高度の政治判断とおっしゃいますが、その政治判断をするのは総理であり、そして防衛庁長官であると思いますし、世論も、やはり必要だと思う人が声を上げて主張しない限り世論というのは出てこないわけでありますから、私はぜひ長官に、他人事のようなことではなくて、責任を持ってこれを進める、そういう姿勢を出していただきたい、こう思うわけであります。

今までは、まことに残念右ことながら社会党が自衛隊の存在そのものを認めてこなかった、そういう歴史があります。しかし、今や社会党党首である村山総理は自衛隊の存在をきちんと認め、しかも今、総理大臣の立場にあるわけでありますから、むしろこの内閣こそ、長年の懸案であった有事法制について、その立法化に向けて第一歩を踏み出すにふさわしい陣立てになっているのではないか、このように思うわけでございます。

長官の御意見をもう一度聞かせていただきたいと思います。

玉沢国務大臣 有事法制の法制化につきましては、各党各会派の御理解、御認識をいただくとともに、国民世論が熟すのであれば適切に対処していくことはやぶさかではないと考えておるわけでございます。今後も、思い出したように論議をするということではなくしで、もっと大きな広い議論をぜひ国会においても行っていただきたい、このように思います。

岡田委員 国会の議論はもちろんでありますが、与党できちんと態度を決めていただきたいと思います。我々はいつでも議論する用意があります。そのことだけ申し上げておきたいと思います。

次に、PKOにおける武器使用について少し議論をしたいと思います。

この点については、私も外務委員会で質問もさせでいただいたところでありますが、現行法をつくるに当たってさまざまな議論がなされたわけであります。そして、その結果として今、正当防衛、緊急避難に該当するような場合、その隊員の個人の判断による武器使用というものが認められでおって、部隊としての武器使用というのは基本的に認めない。認められるのは、いざという場面で武器を使用しないという、いわば待て待てという意味での部隊長の命令というのはあっでも、使っていいという、あるいは使えという、そういう部隊としての指揮命令というのはだめなんだ、こういうことになっていると思うわけでありますが、果たしてこれでPKOの隊員として行かれる自衛隊員の安全が守られると、長官、そういうふうにお考えでしょうか。

玉沢国務大臣 国際平和協力法第二十四条第三項は、自衛隊員等の生命または身体を防衛するためやむを得ない必要がある場合に、個々の自衛官の判断により武器の使用を認めております。防衛庁といたしましては、国際平和協力業務に従事する自衛官が、法の規定に従って適正に武器を使用し、もってみずからの安全を確保し得るようにとの観点から、今後とも法の趣旨の徹底を図っていきたいと考えております。

今までにPKOにおきましては数回の経験があるわけでございますが、危険であるあるいは身の危険を感ずるというような点におきましては、部隊長の判断によるかあるいは個人の判断によるかは別といたしましても、危ないという認識は共通のものがあるだろうと思うわけであります。

したがいまして、部隊長が命令によって武器使用をやると仮に決めたとしましても、危険性というものは去らない。ここを考えた場合に、平和協力業務といいますのは、あくまでもその地域において平和を維持するという仕事に従事をするわけでございますから、むしろ個々の隊員がその使命を全うするためにその責任を明確にし、個々の隊員が銃の発砲等におきましても責任を持つ、こういう趣旨をより徹底していった方がこの平和協力業務の趣旨に合うのではないか、私はこのように考えます。

岡田委員 例えば威嚇射撃のような場合を考えたときに、自衛隊法ではそういうものは個々の判断ではしてはいけないということになっております。条文上そうなっております。それがなぜPKOの場合には、そういうこととはむしろ逆に、個々の判断でなければしてはいけないということになっているのか、そこはどういうふうにお考えなんでしょうか。

○國方説明員 お答え申し上げます。

国際平和協力法第二十四条第三項につきましては、自衛官などの生命または身体を防衛するためにやむを得ない必要がある場合に、いわば自己保存のための自然権的な権利の発動として武器の使用を認めるという趣旨の規定でございまして、個々の自衛官に武器の使用の判断をゆだねでいるものでございます。

これは、国際平和協力法案を国会に提出するに当たりまして、政府として、国際平和協力業務に従事する際の武器の使用に関しまして、憲法上禁じられております武力の行使との関係についで慎重に検討を行った結果に基づくものでございます。

部隊としての武器使用につきましては、国際平和協力法案の審議の際に、すべてのケースが憲法上の問題があるというわけではないが、いろいろな形態があり得ることから慎重を期して差し控えている旨の答弁がなされているところでございまして、こうした判断から、現行の国際平和協力法では部隊としての武器使用は許されていないところでございます。

岡田委員 なかなか議論がかみ合っていないと思うのですが、私が申し上げたのは、自衛隊法八十九条二項で、自衛官が武器を使用するには、正当防衛または緊急避難に該当する場合を除いては、当該部隊指揮官の命令によらなければならない、こういうふうになっているわけであります。つまり、威嚇射撃のような場合を考えた場合に、個々の隊員が勝手に武器を使用したのではかえっで危険がある、やはり部隊としで隊長の指揮下のもとで行動すべきであるという考え方、これは当然の考え方だと思いますが、それに立っているわけであります。ところが、PKOの場合にはそれが全く逆になっている。

私は、先ほど長官おっしゃいましたが、しかし、隊員として行かれる自衛隊の方の身になれば、部隊として出ているときに、威嚇射撃なども個々の判断でやっでいいですよというのではなくで、それはやはり部隊として武器を使用していく、威嚇射撃もしていく、そのことが隊員の皆さんの安全にもつながってくる問題ではないか、こういうふうに考えるわけであります。やはり出す以上は、国として精いっぱいのことをして、手当てをして出してあげたい、これは当然のことではないか、こういうふうに考えるわけであります。

実は、先ほど引用いたしました宮澤喜一さんの「新・護憲宣言」の中にも同じようなくだりが出てまいります。百六ページでありますが、これはPKOについて触れたところであります。その中で、「あれだけの仕事をしてもらうのに、「べからず、べからず」と封じ手ばかりをいっぱい並べざるをえなかったから、行った人は大変だったろうなということです。例の正当防衛と武力行使の問題ですね。」こういうふうに言っておられるわけで、当事者である総理ですらそういう問題意識を持っておられるわけであります。

外務委員会でも申し上げましたが、PKOの法律をつくったときには、社会党は野党でした。この法律に太反対で、牛歩までしました。しかし、今その社会党が与党の一角を担い、そして、総理大臣まで出しているわけであります。ですから、そういう状況のもとでもう一度この武器使用の問題をきちんと議論をすべきだ、こういうふうに思うわけで、そのためには、現実に隊員を送り出される立場にある防衛庁長官がリーダーシップをとってこの議論を巻き起こしていかないと、議論は進まないわけであります。この点についてぜひ長官の御決意を聞きたい、こう思いますので、よろしくお願いいたします。

玉沢国務大臣 法律の見解を変えてまでやれという御趣旨がと伺ったわけでございますが、私といたしましては、あくまでも国際平和協力法第二十四条の第三項に基づきまして、海外における行動の場合におきましては、その法の趣旨を隊員一人一人が徹底をして持つことによってその国際平和協力業務を行っていくということが大事であると考えております。

岡田委員 私は、現行法のもとでその法律に違反しでやれなどということは一言も申し上げでおりません。立法論として、防衛庁長官が発案されて法律を改正をするということにしてはどうかということを申し上げでいるわけでありますので、その点について長官の御意見を聞きたいと思います。

玉沢国務大臣 ただいま法律を変えるという考えは全く持っておりません。

岡田委員 実際に隊員で行かれる自衛隊員の皆さんの気持ちを思うときに、本当にそれでいいのだろうか、こういう気がするわけであります。ぜひ御議論をしていただきたい、こういうふうに思っております。宮澤元総理ですら、今言ったように言われでいるということも念頭に置いていただきたい、このように思います。

時間もなくなってまいりましたので、次に移りましで、ゴラン高原のPKOの問題であります。

これも外務委員会で何度も聞いてきたところでありますが、まず確認でありますが、十一月に派遣をするということについては正式に断念をされたのでしょうか、どうでしょうか。

柳井政府委員 お答えを申し上げます。

外務委員会でも御説明申し上げる機会がございましたけれども、御案内のとおり、カナダ部隊の一部との交代を検討しているわけでございます。三カ月ごとに人事のローテーションがあるということで、これはたしか五月の半ばごろに岡田先生から御質問があってお答えしたと記憶しておりますが、その時点で、可能性の問題でございますが、我が国が参加する場合の最も早い交代時期は十一月であったわけでございます。与党間でもいろいろ御検討願ってきたわけでございますが、五月中には結論を得ませんで、継続検討ということになったわけでございます。

そういうことから、またカナダ側といたしましても人事ローテーションの関係があるので、六カ月ぐらい前に知らせてほしいということを言われておるわけでございます。そういうこと等からいたしまして、現時点になりますと、事実上この十一月には間に合わないということでございます。なお、検討は引き続き行っているところでございます。

それから、国連及びカナダに対しましては、我が方の国内の検討状況を随時お知らせしてございます。

岡田委員 国連、カナダ、あるいは中東の、調査団を派遣した先の国々に対して、十一月派遣はできない、これこれこういう理由によってできない、そういうことをはっきり言うべきであると私は思いますが、そういうお気持ちはありませんでしょうか。

柳井政府委員 十一月というタイミングにつきましては、先ほど御説明したような性格のものでございますので、必ずしも関係国すべてに十一月というタイミングを知らせたわけではございません。特に、カナダと国連との間では、先ほど申し上げたようなローテーションの関係があるので、一つの想定されるタイミングとして先方も承知しておりましたので、そういうようなタイミングにつきましては事実上無理になったということは既に伝えでございます。

岡田委員 事実上無理になったということを伝えてあるということでありますが、なぜできないのか、その理由も明確に伝えないと、日本の外交というのは一体どうなっているんだ、こういうことになるだろうと私は思うのです。

そこで、これはお願いでありますが、関係国に対してきちんと理由をつけて、これこれこういう理由で十一月派遣は無理である、このことをぜひ出していただきたい。もう最低限のことだと私は思うわけであります。そこまで出せないということになりますと、本当に日本の国というのはよくわけがわからない、理解不能の国である、こういうことになるのではないかと思います。

それから、新聞によりますと、昨日、河野外務大臣が村山総理にお会いになって、サミット前に来年二月の派遣決断を進言した、そして、もしこれは決断をしないと日本の国際信用を著しく損なうおそれがあるというふうに言われた、こういう報道がされておりますが、これは事実でありましょうか。

柳井政府委員 御案内のとおり、ハリファクス・サミットにおきましては、村山総理がクレチエン・カナダ首相とお会いになる予定でございます。したがいましで、その時点で村山総理からどのように御説明いただくかという点につきまして、昨日、河野外務大臣が総理とも協議をなさったという経過がございます。

ただ、その内容につきましては、ちょっと私の方から申し上げられる立場にございませんので、その点は御理解をいただきたいと思います。

岡田委員 ここでは、カナダという国に対して、それを意識して二月の派遣を早く決断しなければいけない、こういうことであります。これは、カナダに限らず、中東諸国にとっても同じことだと思います。

政府もあるいは与党も調査団を派遣して、別に出すという約束はされなかったとは思いますが、しかし、出す可能性があるから調査団も派遣したわけでありますし、そして、その調査の結果、指摘された問題点については国連からもきちんと返事が返ってきているという状況で、出さない、こういうことになりますと、私は、中東諸国からも日本の外交に対する不信、こういうものが出てくると思いますが、この点についで外務省はどういうふうにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

柳井政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、与党間の検討も引き続き行っていただいているところでございます。また、政府としても検討を続けているところでございますが、これまでの検討経過も踏まえまして、やはりできるだけ早期に政府としての結論を出したいというふうに考えております。

岡田委員 柳井局長は多分私と同じ気持ちだろう、こう思っているわけですが、この新聞記事を見てややほっとしたのは、河野外務大臣も、このままほっておいたのでは国際信用を著しく損なうことになるのじゃないかということで、認識はきちんとされているということが今回わかりまして、私もその点はほっといたしました。後は、外務大臣の政治家としてのリーダーシップの問題であると私は思います。

連立与党でいろいろ難しい問題もあるかと思いますが、事は日本の国際的信用にかかわる問題でありますので、ぜひ与党の間でよくお話しいただいて、きちんと意思決定をしていただきたい、このことを最後に御要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

ありがとうございました。




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