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施政方針演説に対する衆議院本会議代表質問(原稿)

施政方針演説に対する代表質問



平成30年1月25日
無所属の会 岡田 克也

私は、民進党と無所属の衆議院議員14名からなる会派、無所属の会を代表し、安倍総理の施政方針演説について質問します。

(財政健全化)
まず、財政の健全化について質問します。

財政健全化は、持続可能な社会保障を実現するために、先送りの許されない重大問題です。人口減少の中、大きな借金を抱えたままでは、国家の衰亡は避けられません。安倍総理は施政方針演説の中で、憲法改正に関して、「子や孫のために新たな国創りを進めていこう」と呼びかけました。しかし、財政の現状は、子や孫にとっても、あまりにも過酷です。人口減少問題とともに、財政健全化こそ、次世代のために政治が取り組まなければならない最重要の課題です。憲法改正ではなく、財政健全化なのです。以下、具体的に質問します。

安倍総理はたびたび、消費税率引上げ分の使い道の見直しにより、2020年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成は困難になると発言しています。しかし、これは国民を欺くものです。消費税の使い道の見直しがなくても、2020年度の国と地方のプライマリー赤字は8.2兆円が見込まれていました。消費税率引上げ分の使い道の見直しは1.7兆円にすぎません。正直に、財政健全化に失敗したと認めるべきではありませんか。安倍総理の答弁を求めます。

安倍総理は施政方針演説の中で、「財政健全化を確実に実現する」と明言しました。言葉の軽さに驚きました。プライマリーバランス黒字化は財政健全化の第一歩にすぎないからです。その目途すら立てられないでいるのです。「財政健全化」をどういう意味で使っているのか、「確実に実現する」とは何を意味するのか、全く不明です。それぞれの意味について、安倍総理の答弁を求めます。

主要国が金利の正常化に向かうなか、日本だけがいつまでもゼロ金利政策を続けられるわけではありません。金利が正常化すれば国債費は膨張し、それだけで財政赤字は大きく増加します。安倍総理には、その危機感がないのでしょうか。この5年間で、国債残高を160兆円も増やしています。企業収益が改善し、失業率が低下する今こそ、将来を見据えた歳出改革に取り組まなければなりません。改めて、安倍総理にその決意と具体策があるか、答弁を求めます。

次に、財政健全化の観点から、今回の政府予算案について質問します。

財政法29条は、「特に緊要となった経費の支出を行うため必要な予算の追加を行う場合」に、補正予算を編成できると規定しています。しかし、今国会提出の補正予算案には、この規定に合致しているか疑問のある歳出項目が多くあります。例えば、「ものづくり補助金」として1,000億円が計上されています。実に6年連続、補正予算で措置されています。しかも、当初予算の中小企業対策費1,800億円に比べ、極めて大きな予算規模です。とても「緊要となった経費」とは言えません。必要があれば、当初予算で堂々と計上すべきです。安倍総理の答弁を求めます。

安倍内閣では、毎年度当初予算で公共事業関係費が6兆円計上されており、来年度も同様の水準です。他方、この間、補正予算で計上された公共事業関係費は計7兆円に上ります。これでは、当初予算だけを見て議論しても意味がありません。今年度補正予算案の公共事業関係費の計上も、来年度当初予算ベースで公共事業関係費を前年度並みに抑制していると言うための小細工ではありませんか。安倍総理の答弁を求めます。

来年度当初予算案では、国債発行額が33.7兆円となり、「国債発行額を6年連続で減額した」ことが強調されています。しかしこれは、以上指摘してきたように、歳出の一部を今年度補正予算で先食いした結果にすぎません。補正予算を使って、来年度予算案の見かけを良くしているだけです。このような偽装はやめて、国民に分かりやすく正直な予算案とすることが、財政健全化の第一歩と考えますが、安倍総理の答弁を求めます。

(原発問題)
次に、原発問題について質問します。

先般、日本政府が、国際協力銀行を通じて、欧州の大手ウラン濃縮会社の買収交渉に入ったとの報道がありました。濃縮ウランの安定調達を確保するためとも伝えられています。政府として、このような検討を行っている事実はあるのでしょうか。安倍総理の答弁を求めます。

私は、今後原発の新増設は一切認めるべきではないと考えています。これは、民主党政権時代の決定でもあります。新増設がなければ、近い将来、確実に原発ゼロの時代が来るのです。安倍総理は将来の原発の新増設について、はっきりと語ってきませんでした。しかし、ウラン濃縮会社の確保に多額の公的資金を投入するということになると、新増設を含め、長期間にわたり原発を推進することが前提になっていると考えざるを得ません。安倍総理、そろそろ正直に、原発の新増設を将来行うと明言すべきではありませんか。その上で、そのことの是非をしっかりと議論しようではありませんか。安倍総理の答弁を求めます。

安倍政権が原発再稼働を進めるなかで、使用済み核燃料を保管する各原発内の貯蔵プールの容量が限界に達しつつあります。それだけではありません。使用済み核燃料を原発内の貯蔵プールで保管し続けることは、テロ攻撃や大規模災害といった不測の事態を考えても、極めてリスクが高いと指摘されています。福島原発事故当時、私は与党の幹事長でした。4号機の燃料プールは崩壊の危機にあり、仮にそうなったら、東日本全域に放射能汚染が拡大しかねないとの強い危機感を持ったことは忘れられません。使用済み核燃料を貯蔵プールから取り出して金属容器で保管する乾式貯蔵に切り替えるなどの対策が急務です。悲劇を繰り返さないために、これこそ最優先で行うべきと私は考えますが、安倍総理の答弁を求めます。

(憲法の平和主義)
次に、憲法の平和主義について質問します。

安倍総理は年頭記者会見で、「憲法の平和主義の基本理念は今後も変わることはない」と明言しました。他方で、一昨年5月の私との党首討論で、日本国憲法の平和主義とは他国を侵略しないことだと答弁しています。これでは、日本国憲法の平和主義は、当たり前のことを言っているにすぎないことになります。しかし、日本国憲法は他国にない特別の平和主義を定めた憲法であるというのが、多くの国民の理解ではないでしょうか。安倍総理の考える憲法の平和主義の基本理念とは何か、改めて答弁を求めます。

かつての日本は、自衛の名のもとに戦争を始めました。この反省に立って、武力行使に抑制的であろうとしたのが、日本国憲法の平和主義です。自国の生存に関わる場合に限り、必要最小限度の自衛権を行使することを除いては、武力を行使しないということこそが、平和主義の具体的内容だと私は考えます。したがって、限定なき集団的自衛権の行使は、明らかに憲法の平和主義に反すると考えなければなりません。この私の考えについて、もし反論があれば、安倍総理の答弁を求めます。

憲法の根本原則の一つである平和主義に反する内容である限り、9条の改正は、いかなる手段を取ろうと不可能です。したがって、まず国会において議論を尽くし、平和主義について共通の認識に至ることが必要です。その上で初めて、憲法9条の議論がなされるべきです。平和主義を曖昧にしたまま、9条の改正を行うことはあり得ないと考えますが、安倍総理の見解を求めます。

(核軍縮・不拡散)
次に、核軍縮・不拡散について質問します。

安倍総理は、核軍縮・不拡散について、核保有国と非核保有国の橋渡し役になると、世界そして日本国民に説明しています。しかし、安倍政権は核軍縮に本当に真剣に取り組んでいるのか、私は大きな疑問を持っています。以下、具体的に質問します。

オバマ大統領が策定した2010年の米国の「核態勢の見直し」(NPR)は、核兵器の役割を低減することを明記しました。トランプ政権はこれを転換し、核兵器の役割を拡大しようとしていると報じられています。具体的には、水上艦や潜水艦から発射できる新型の核巡航ミサイルの開発や、新たな小型核兵器を開発すると伝えられています。トランプ政権の核政策について、安倍総理はどう考えているのか、答弁を求めます。

米国の核軍縮は日本に対する抑止力の低下を招くとして、沈黙し、場合によっては静かに反対するというのが、かつての日本政府の姿勢でした。私は、2010年のNPR策定にあたり、外務大臣としてこの考え方を転換しました。核兵器の役割低減を更に一歩進めるよう、オバマ大統領に求めたのです。米国の核抑止力と核軍縮の関係を、現時点で日本政府はどう考えているのか、明確な見解が求められています。安倍総理の答弁を求めます。

「日本と米国が、力を合わせて、世界の人々に『希望を生み出す灯』となる」。広島で安倍総理は、オバマ大統領とともに、核なき世界を目指して努力することを世界に力強く発信しました。トランプ大統領になって、米国の核政策が大きく変わろうとしていることに対し沈黙していることは、安倍総理の政治姿勢の一貫性を問われます。広島での発言は何だったのか、核なき世界を願う世界中の人々に対して、明確な答弁を求めます。

(女性宮家の問題の検討)
次に、女性宮家の問題の検討について質問します。

天皇陛下の御退位について、衆参議長、副議長のリーダーシップのもと、各党間でしっかりとした議論がなされ、合意形成されたことは、国会の歴史に残る大きな成果であると私は考えます。天皇陛下の御退位に関し、国会の果たした役割について、安倍総理はどう考えているのでしょうか。答弁を求めます。

残された課題もあります。特に、女性皇族の婚姻による皇族数の減少が確実に見通されるなか、天皇陛下の御公務の負担を軽減するとの観点から、女性宮家の問題は極めて重要です。女性・女系天皇の問題とは切り離して、女性宮家の問題の検討を急ぐべきと考えますが、安倍総理の見解を求めます。

退位特例法の付帯決議では、女性宮家の問題は、政府が特例法施行後速やかに検討を行い、国会に報告するということになりました。来年5月以降、政府における検討が始まるということです。しかし、このことは、国会における検討を妨げるものではないはずです。天皇陛下の御退位のときと同様の枠組みで、国会において速やかに女性宮家の問題の検討を始めるべきです。内閣総理大臣として、国会に対して異論を述べる立場にないと思いますが、念のため、安倍総理の答弁を求めます。

(安倍総理の政治姿勢)
最後に、安倍総理の政治姿勢について質問します。

政権発足から5年。安倍総理の最大の問題は、国民の信頼が失われていることです。最近のメディアの調査でも、安倍内閣を支持しないとする人の何と4割以上が、その理由として、安倍総理が信頼できないからと答えています。歴代総理の中でも際立って高い数字です。極めて深刻な事態と考えますが、安倍総理はどう受け止めているのか、答弁を求めます。

国民が安倍総理を信頼できないと考えるのは、国民に対して正直ではないからです。その具体例が、森友学園をめぐる問題への対応です。国有地売却に際し8億円を値引きしたことについて、会計検査院が根拠不十分と断じると、安倍総理は、「財務省が国有地を正しい適切な価格で売買していると信頼していると申し上げた」などと答弁しました。私は耳を疑いました。総理の夫人自身が名誉校長であり、まさに当事者であるにもかかわらず、他人事のように官僚に責任転嫁する。日本国総理大臣として、恥ずかしくありませんか。安倍総理の答弁を求めます。

なぜ、この問題が発覚し、国会でも大きく取り上げられたときに、値引きの妥当性を財務省に調査するよう強く命じなかったのでしょうか。税金の無駄遣いに加えて、安倍総理や夫人との関係も取り沙汰された問題です。事実関係を明確にして、説明責任を果たそうとするのが普通ではないですか。国民に対し、あまりにも正直ではなく、かつ無責任です。安倍総理は深く反省すべきです。答弁を求めます。

今からでも遅くはありません。財務省は、森友学園との交渉記録はないが、近畿財務局内の記録はあることを明らかにしました。この際、森友学園に関する政府内のすべての記録を公開し、説明責任を果たすべきです。総理が命じれば実現します。安倍総理の答弁を求めます。

民主主義国家における政治は、国民の信頼によって成り立っていることを考えると、事態は極めて深刻です。そして、国民の安倍総理に対する信頼を取り戻すことができるのは、安倍総理御自身だけです。この国会で、どれだけ真摯に国民に対して向き合うかにかかっています。

まず、私の質問に対し正直に説得力ある答弁を行うことです。そのことを期待して、私の代表質問とします。




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