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2010.10.28|その他

岡田幹事長×舛添要一「総理にしたい人」元ナンバー1「激突対談!」

岡田 舛添さんといえば、昨年の総選挙のとき、岐阜から名古屋へ向かう車中で偶然ご一緒したときのことを思い出します。

舛添 当時、新型インフルエンザにパンデミック(世界的大流行)の兆しがあって、二人で一生懸命、手を洗ってたんだよね(笑)。

岡田 遊説では大勢の人と握手しますからね。それで手を洗いながら舛添さんが、「もし政権交代となっても、新型インフルの件は厚労相としてきちんと引き継ぎますよ」と仰った。ああ、これは国のことをきちんと考えておられるんだなあ、と印象的でした。

舛添 あれ以来、岡田さんとは、これからの日本をどうするということで、時々お話ししてますが、党を二分する激しい代表選後に幹事長に就任されて一カ月が経ちました。いかがですか。
岡田 親しい人には「何度火中の栗を拾うのか」と言われましたが(笑)、もう一カ月かという感じです。しばらく党務をやってなかったから、党内外の人間関係を構築することを中心にやってきましたが、そろそろ、いろんな問題について積極的に取り組んでいかねばならないと思ってます。

舛添 そのひとつとして、小沢一郎元の代表政治資金規正法違反の問題について、検察審査会が起訴議決をした件がありますね。

岡田 この問題は、二つポイントがあり、ひとつは国会での対応、もうひとつは党としての対応です。前者については、野党は小沢元代表を政治倫理審査会(政倫審)に呼ぶ、あるいは証人喚問をすべしと主張しており、与野党できちんと議論することが必要です。ただ、野党側も証人喚問して何を訊くのかが必ずしも明確ではなく、この問題が政争の具、内閣を叩くための手段になっている面もある。

舛添 それを言うなら民主党が野党だったときにも、国会同意人事などで、反対のための反対としか思えない場面もあった。いま民主党の中に、プロの検察官が法と証拠に基づいて捜査して何もでなかったものを、なぜアマチュアの検察審査会が強制起訴なんてやるんだ、という声がありますが、私には違和感があります。

岡田 検察審査会制度は、我々が法律を通してつくったわけですから、制度そのものに疑義を述べるのは間違ってます。スタートして間もないので不備はあるにせよ、今回の決定そのものに疑義を呈するようなことがあったとすれば、正しくなかったとは思います。

舛添 一方で我々は国会議員ですから、国民から疑いをもたれたら、公の場でそれを説明すべきです。私も「舛添が都知事選に出る」なんて言われ、エライ迷惑でしたが……。

岡田 ハハハ。

舛添 腹を立ててもしょうがないから、「根も葉もない話だ」と説明するわけです。小沢さんぐらい力のある人なら、やはり国会の場で説明することが政治家としての責務だし、小沢さんの説明を聞いて国民が「これは冤罪だ」と納得すれば、また小沢さんが復権する余地も出てくるわけです。

岡田 ただ今回の件は、裁判で争われる可能性が非常に高い。裁判に係わることは黙秘できる。国会の場でそれほど意味のあるやりとりがあるとは思えません。

舛添 それならそれで「係争中であるのでお答えできない」と言えばいいんであって、ご本人がまだ一度も国会の場に出てきていないのはやはりおかしい。

岡田 野党は国会に呼ぶべきと仰るが、では小沢さんを呼んで、何を訊きたいのか仰ってください、とお尋ねしても未だ返事はありません。果たして本気で証人喚問なりをやるつもりなのか、単なるパフォーマンスなのか、わからないなというのが率直な感想です。

舛添 何が訊きたいか。そこはやはり例の四億円の原資の話であり、政党交付金の使途ですよ。小沢さんには、新進党などの解党時に残った金をどうしたとか、交付金で土地を買ったとかいう話がついてまわっている。政党交付金の使途に制限がないといっても、国民の税金である以上、おのずから限界はあるはずです。

岡田 我々は話し合いに応じないと言ってるわけではありませんので、野党の皆さんには真剣に議論してもらいたい。

一方で民主党が公党として、この件にどう対応するのかという問題があります。党規約における処分とか措置に該当するのかどうか。手続きとしては、役員会が発議をして、その発議に基づいて常任幹事会で決定することになりますが、現在は、それぞれの意見を述べている段階で、本格的な議論はまだしていません。

舛添 ご自身は、この問題、どう考えているんですか。

岡田 最終的には私の責任でまとめなければなりませんが、役員会でまず議論することですので、それを先取りして行司役である私が何を言うのは控えたいと思います。ただ、いかなる結果になろうとも、きちんと国民に対して説明する責任があります。順序としては、国会での対応が先になりますが、いずれにしろ、そう先まで引き伸ばせる話ではありません。

舛添 別の問題として尖閣沖での衝突事件に端を発した反日デモが中国各地で広がっていますが、一連の政府の対応をみていると、情報収集のやり方がやや稚拙で、司令塔不在といった印象を受けました。

岡田 私は、中国船の船長を逮捕する前半まで外務大臣でしたが、今でも間違った判断だったとは思っていません。国会審議で自民党の先生方が「もっとうまくやれたのでは」とよく言われますが、最初にこの事件に直面したとき、我々は法治国家として法律に基づいて粛々とやっていくことは譲れないと判断したわけです。単なる不法入国ではなく公務執行妨害ですから、〇四年の小泉政権のように取り調べもしないで帰すことはできない。

舛添 外相を替わられた後の対応については?

岡田 その後の対応の中身についてはあえて聞かないことにしてましたので、どう進んだのかは把握してません。政府として「検察が独自に判断して、処分保留のまま釈放した」ということですので、政府の判断は正しかったと思ってます。

舛添 これは岡田さんは口が裂けても言えないだろうけど、検察だって国家の行政組織のひとつですから、これだけ大きな問題について、総理や官房長官が現場の判断にすべて委ねることは、ありえない。現政権の意思と判断せざるをえない。
 
一方で中国という明確に法治国家でない国と、どうつきあっていくのかという部分で、国際法では律しきれない、力が支配する部分があることがはっきりした。私は“ビデオ公開”のカードは、もっと早い時期に切るべきだったと思います。

岡田 ただ私が残念でならないのは、「一〇〇%日本外交の敗北だ」という議論が罷り通ったことです。まず外交を勝ち負けで論じるのは間違いです。また今回の件で、国際社会において“中国異質論”が急速に広がったわけで、日本と中国でどちらが失ったものが大きかったといえば、私は中国だったと思います。

舛添 “中国異質論”は確かに仰る通りなんですが、では尖閣はどこの領土かとなったときに国際社会の半分は、日本の領土なのに中国がゴリ押ししていると理解してくれるかもしれないけど、残りの半分からは数ある領土紛争のひとつと見られているかもしれない。

岡田 まあ、そこは自民党政権時代から、領土問題は存在しないということで片づけてきたし、それが日本の国益にも沿っていた。詳しく説明すると、かえって領土問題が存在することを認めてしまうことになりかねないですから。いずれにしろ日中関係は、重要な二国間関係です。お互いが感情的になったり偏狭なナショナリズムを煽りたてるようなことは厳に慎むべきだと思います。

舛添 恐らく今回の反日デモの背後には若者の不満とか地域間格差とか、あるいは巷間言われているような中国政府内の権力闘争のようなものもあるんでしょう。

岡田 ええ。温家宝首相にしても、胡錦濤国家主席にしても、日中関係は重要であるという認識に立っていると私は確信してます。その二人をもってしても、今回は強硬な措置を連発せざるを得なかった背景には、何かより大きな力が働いたのではないか、と。そこはちょっと読み切れません。

今回の事件がひとつの教訓を与えたとすると、今までは世界に先進国中心のルールがあって、そこに中国をはじめとする新興国をあてはめていく、という発想だったわけですが、必ずしもそれだけではうまくいかなくなった。基本は先進国のルールに合わせてもらうにせよ、ある程度、先進国側が合わせていく必要が明らかになりました。既に経済の分野では、実態が先行して、G8からG20へと世界の枠組みが変わっているわけですから。

舛添 一方、今国会では平成二十二年の補正予算が提出されますが、日本経済は待ったなしの状況が続いてます。

岡田 仰る通りです。我々は景気対策を三段階で考えてます。既に第一弾として予備費一兆円を執行してますが、第二段がこの補正予算、第三段が来年度の本予算です。バラマキではなく、成長戦略にのっとって、野党の皆さんの意見も踏まえて五兆五百億円の補正を組むことを決めたところです。

舛添 あえて申し上げると、補正と並行して仕分け作業をされているわけです。相当ご苦労なさってムダをカットしているのはわかるんだけど、景気刺激策となると、現実的にはコンクリートから人へではなく、コンクリートそのものをやらないといけない。民主党の政策との整合性を気にして、景気対策が大胆さを欠くことにならないか。個々の議論は国会でしていきたいんだけど、予算が通った後で、その運用の仕方は相当考えなきゃいけない。

岡田 国会で議論した結果ごもっともだ、ということに関しては修正していきます。ただ気をつけないといけないのは、修正するとまた時間がかかるんですね。それだけ予算の成立が遅れることになる。

舛添 そうなんですよ。私は補正予算を人質にして、自民党みたいに財政健全化法案に賛成しなければダメだと言うつもりはありません。この国に反対のための反対をしている余裕はない。

岡田 意図的にそうしようとしている人がいるとは言いませんが、景気対策はタイミングが大事なので、修正を必要とする場合にも手早くやる。その意味で私は政府の予算を国会で一字一句変えさせてはならない、とは思っていません。

舛添 財政の話が出たので、お聞きしますが、消費税に関してはどうお考えですか。

岡田 税制全体の議論をする中で避けては通れません。特に社会保障の財源をどうするのか、という問題です。ただし仮に消費税を上げると決めた場合は、必ずそれを公約に掲げて選挙の“洗礼”を受けなければならない。年金の財源など、よほど説得力のある使い道とセットで議論しないと難しい。次の解散までの内閣の最大の仕事じゃないですかね。

舛添 私は消費税を社会保障目的税として位置付けないと国民の理解は得られないだろうと思います。そのあたりは自民党政権の社会保障国民会議で相当シミュレーションをやってます。政権交代しても、自公の遺産で使えるものは使っていただきたい。

岡田 よく吟味させていただきます。

いずれにしろ、参院では我々は少数なので、当面は法案ごとに協議していくことになります。ただ法案ごとに相手が替わるというのは、なかなかキツいですよね、これ。迅速に物事を進められない。協議を積み重ねる過程で、信頼関係ができて、ともに政権を担っていただけるところが出てくることを期待してます。

舛添 例えば郵政法案にしても、民主党にも反対の人がいるし、自民党にも賛成の人がいる。このあたりを整理するために、小選挙区制度にメスを入れるのもひとつの手だと思います。個人の政策的な背景よりも先に、選挙制度のしがらみで政党が決まっている部分がありますからね。

岡田 選挙制度をいじるつもりは、私はありません。“政権交代ある政治”を目指して導入した現行制度が、ようやく定着してきたところですから。

舛添 政権与党の幹事長としては、そう言わざるを得ないんだけど、税制・社会保障制度・選挙制度などについてはみんなで議論をしていくことが必要です。

岡田 大事なのは、委員会の現場だと私は思ってます。もちろん問題によっては幹事長が直接関わらないといけない場合もありますが、基本は現場で議論して、たがいに納得できるものをつくっていく。従来のような対決型ではなく、与党も野党もお互いがよりよい政治を目指して競い合っていく。

よく私は、「マジメすぎる」とか「固すぎる」とか言われますが(笑)、マジメであることが評価されない政治が良い政治なのか。自己弁護ではなく、心底そう思っているんです。

(C) 週刊文春




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