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2005.04.11|マスコミ

対談 Gackt x 岡田克也 

通常国会が始まり、小泉首相と激論する岡田民主党代表。政権交代への本心から「堅い」と言われる素顔まで、近年の政治不信を憂うGacktが硬軟交えて語り合った!

Gackt(以下G) 岡田さんは、イメージしていたより、なんだか優しい雰囲気の方ですね。

岡田 いやいや(笑)。

G もっと生真面目な、ガチガチのイメージがあったので。

岡田 ああ、闘っているときはね(苦笑)。国会は議論の場ですからね。

G すごく暖かい雰囲気を醸しだす人だなと思って。不思議な感じです。

1月中旬、民主党役員室で行われた特別会談。岡田代表にGacktが、小泉首相のことや日本の未来について迫った。

岡田 いただいたライブDVD、見ましたよ。映画のDVD見るのが趣味なんです。

G その趣味は僕も一緒です。ふだんテレビは一切見ませんけど、映画は大好きで。

岡田 17日に神戸で阪神・淡路大震災10周年の式典があったときも、3時間の新幹線の中で1時間寝て、2時間はDVDで映画を見ていたんです。

G 震災当時、僕は関西にいたんです。
3日前から徹夜で遊び続けて、車で阪神高速をグルグル飛ばしてたんですよ。ただ、その日に限って早めに帰って寝た5分後くらいに地震がきたらしく……。全く覚えていないんです。パッと目が覚めたら、タンスが胸のあたりに倒れてきていて。

岡田 それで起きなかったなんて、よっぽど疲れていたんですね(笑)。

G 熟睡していて(笑)。最初は泥棒が入ったと思って、焦ってタンスをどけたら、壁にヒビが入っていて。テレビをつけると、さっきまで走っていた高速道路が全部、倒れていて、友達も何人か亡くなってしまって……。

岡田 そうですか……。震災追悼式典で遺族代表の方が挨拶されましたが、ジーンと胸にくるものがありました。ご主人と娘さん2人を亡くされ、一人だけ生き残った。生きていれば娘さんは21歳と19歳だと……。やはり人命は何よりも重いと改めて感じました。

G ところが、地震から3年も経つと、他県の人たちは、さも何事もなかったように、すっかり過去のこととして捉えているんですよね。そのことが悲しくて。
神戸の学校で日本初の防災科の学校ができたのに、去年、そこの生徒と話したら定員割れの状態だと聞いて。新潟でも対応は後手に回るし、日本人はどうしてこうも大切ないろいろなことを忘れられる人種なのかなと不思議でならなかった。

岡田 確かに日本人は忘れっぽいよね。それでも新潟県中越地震のときは阪神で被災した人たちがボランティアで助けに行っていましたね。東海地震や中南海地震も起きることは確実と言われています。

G 対策は万全ですか?

岡田 万全じゃありませんね。たとえば、小泉総理の下でも無駄な公共事業などに巨額の予算を投じているわけですが、もっと災害に対する備えに重点的に使って欲しいところです。

G  阪神・淡路大震災の後、東京では首都高速の補強工事が始まりました。でも、実際、あの工事に関わった人に話を聞くと「補強工事は建前で、意味がない」と、 言ってたんです。やらなければならないことの優先順位がおかしい。そこに利権が絡んでいることはもう皆、わかっていると思うんですよ。

岡田 それでも、怒らない。

G そこが不思議ですよね。

岡田 これからは限られた税金をどうやって有効に使うかという時代ですからね。一時的に雇用を増やすための公共事業という発想は、本当に変わらないと。僕らは、それは政権が変わらない限り無理だと言っているわけです。

G 政権交代をしないと公共事業は変わらない。でも、実際に建設に関わっている業者が、票につながっているという問題もあるし。

岡田 まぁ、そういう人には民主党はほとんど応援してもらってないから(笑)。Gacktさんは投票には行かれたんですか?

G 前回は行かなかったんですけど、前々回は行きました。

岡田 私も20代は、ほとんど投票に行っていないんですね。政治家になろうとは思わなかったし、政治に期待していなかったのでね。自分にそういう時代があったから、若い世代が投票に行かない気持ちはよくわかりますけど。

G ほとんどの若いコたちは、選挙の大切さが認識できていないと思うんです。たぶん政治に対して、皆、興味がない。他人事というか、国がどういう方向へ行くのかということ、そのものに興味がない。

岡田 それはある意味で、日本が戦後、今まで、順調に来たということもあるとは思いますけどね。もっと厳しい状況であれば、自分の問題として考えるでしょう。

たとえば、自分自身がイラクに派遣される立場であれば、賛成、反対で投票に行きますよね。あるいは年金が本当にもらえるか、もらえないのか、もらえる額が選挙で決まるということであれば、行くと思うんです。

まぁ、そこは我々の発信力の問題も一つある。僕らはもっとしっかり伝わるように、訴えていかなきゃいけない。

G 僕は政治を語れる人間ではないけど、ただ僕が勝手に思っていることがいくつかあって。小泉さんは最初、すごく期待をされていましたよね。

岡田 うん、デビューは強烈だったよね(笑)。

G カリスマ的な要素もあって、見ているとドキドキするし、楽しかったし、期待させた。政治に興味のない人も、小泉さんを見て、政治に興味を持つことは、すごく大きいことだと思ったんです。
岡田 我々は、なすすべもなかったですからね(笑)。

G でも、この4年間で、ほとんど結果が出なかった。「何かやってくれそうな小泉さん」から「結果が出せない小泉さん」という印象に変わってきている。

岡田 期待が高かっただけに実際との乖離が失望を呼んでいると思いますね。それでもまだ、支持があって、そこが不思議というか、僕から見てもちょっと理解できないところだけどね。

G 実際の実力と、国民の支持率が違うのは、音楽業界も一緒ですが、小泉さんはメディアの利用の仕方が非常に上手だなと思ったんですよね。

岡田 その前が森さんだったことも幸いしたと思うし、我々から見ても、メディアの使い方は非常にお上手ですね。

たとえば、彼は毎日2回、記者会見をしますが、何を聞かれるのか、あらかじめわかっているわけです。だから、事前に答えを準備して会見に臨み、5分で引っ込む。それをテレビで見ていると、常に自信に満ちた答えが返ってくる人に見えますよね。

僕らは、逆に、会見でどんな質問が出るかわからないから、その場で考えて答える。すると、つい伏目がちになったり、真面目な顔になってしまうわけで(笑)。

歴代首相の会見は、新聞向けで、頻度も少なかった。しかし1日2回の会見だと、その日のテーマにポンと答えられ、非常にテレビ向きなんです。それに国民はグッとくる。

G そこがまた小泉さんは上手だった。ただ、僕は、次の選挙では投票率が上がると思っているんです。

ずっと信頼してきた自民党に裏切られたという思いが積もり積もってきたなかで、政権交代ができるかもしれない。もしかしたら、これが最後のチャンスだと思うし。

岡田 おっしゃるとおり、次の総選挙は、本当に政権を選ぶ選挙になります。前回も我々は政権を選ぶ選挙だと言ったわけですが、まだまだ力が足りなかった。だから責任重大ですね。

僕が代表では政権が取れないと、僕自身が判断したら、その時点で代表を辞めます。たとえ、選挙前であってもね。

G 代表になったことを、どんなふうに感じていますか?

岡田 偶然の要素がかなりあります。菅直人さんが急にお辞めになって、参議院選目前でしたし、私が受ける以外、選択肢がなかったわけです。

G これは僕のイメージですが、小沢一郎さんは、岡田さんを過小評価してたんじゃないかな、っていうのがすごくあったんです。ところが、岡田さんのポテンシャは小沢さんが思っていた以上に大きくて、かなり上に行ってしまったんじゃないか、と。

岡田 それはわかりません。でも、小沢さんの力を生かしていかないと、やっぱり政権は取れませんよ。

G 実際、小沢さんとは仲がいいんですか?

岡田 小沢さんとは長いんです。政治家になったときからですから……。

G ずいぶん経ちますよね。

岡田 15年ぐらいです。だから、”熱愛感”というのはあまりないんですけど(笑)。だからこそ、長く続いているというふうに申し上げているんですけど。

G 議員の皆さんは、どんなふうにプライベートのお付き合いをされてるんですか? 率直な疑問なんですが。

岡田 まず、あまりプライベートはないですね(苦笑)。

G 雑誌の記事に「夜はほとんど遊びに行かない」と書いてあったんですけど……。

岡田 「夜は早く帰る」というのはウソ(笑)。昨日も11時を超えていました。夜はどうしても会合が2つくらい入って実際には仕事です。あと、SPさんが常について勝手に出歩けませんからね。Gacktさんもそうでしょう?

G 僕はもう、決められた場所だけで。

岡田 僕は買い物とか好きで、身につけるものはほとんど自分で買っていましたけど、それも最近できなくなって、通販で下着を買ったりね(笑)。

年末、初めて家族……というか男の子2人(高1と小4)と3人で、4日くらい、グアムでゴロッとしてきましたけどね。長女は受験で、母親と日本に残ってましたけど。

子供は一人一人個性が違いきょうだいが3人いても全く違うから、これは面白いね。

G 僕にも甥と姪がいて、いちおう「お兄ちゃん」と呼ばれていますが、子供を育てたことがないので、僕が育てられた育て方しかできない。テレビは見せない、とか。

岡田 それは厳しいな(笑)。

G 僕自身もそうだったということもあって「テレビを見るなら本を読め、映画を見ろ」と。自分の意思で見る分にはいいんです。ただ、つけっ放しのテレビを、自分の意思に関係なくボーッと見るのはやめろ、と。

岡田 なるほど。しかし、厳しいな(笑)。今日、お話しして、Gacktさんは問題意識をすごく持っているとわかりました。それを発信されるだけでも並みの政治家をはるかに超える影響力がありますね。

G 岡田さんがここで、「これは約束する」と言われて、ちゃんと実現されたと感じられれば、「この人は約束を守る人だ」ということを世の中の人に伝えます。それは僕にできることです。次の選挙に向けて「政権が変わったら必ずやる」ということはありますか。

岡田 今、僕が言っているのは「持続可能な日本にする」ということ。
つまり、年金や財政の問題ですね。今は要するに40万円の収入なのに80万円近く使っている状態。無駄な金は使わないということで、具体的な数字を出して約束していかないといけないと思っています。

G 今回の震災を含め、災害への対策法案も進めていくことが政治家の方には大きな支持を得られるのではないかと思います。もし東京に震災が起これば、日本の経済はあっという間に崩れ落ちるでしょうから。

岡田  日本は根本的に一極集中していますからね。さらに、少子化も根本問題です。このまま行くと、今から100年後には日本の人口は7千~8千万人に減ります。 働きながら子供を育てられる仕組みを作りたい。今のように中途半端な児童手当ではなくてしっかりとした手当てを出すとかね。

少なくとも、子供を持ちたいと思っているのに持てない人がいる背景には、政治不信があると思っています。

G あと僕は、アジアの中での日本の位置付けがすごく重要な時代に入っているのに、いまだにアメリカだけに囚われている日本は問題だと思うんです。アジア諸国との結びつきをもっと深めていかないと、日本だけが取り残されてしまうのではないか、と。

岡田 私もアジア外交をもっと重視しなければいけないと常に言っているんです。年末にASEAN4カ国を訪問しましたが、世界の中でも、経済的に最もポテンシャルがあって非常に平和な地域がアジア。そのなかに日本はある。すごくラッキーなことです。

G 教育面でも、英語教育だけでなくアジア圏の言葉を必修にすべきと僕は思うんです。
日本の雰囲気が変われば、皆が「変わらなきゃいけない」という意識を持つ一つの契機になる。その意味で政治家の方には変化を期待しています。




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