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2005.03.01|国会会議録

予算委員会 2005.3.1

岡田委員 民主党の岡田克也です。

きょうは、まず経済見通しと定率減税の縮減、わかりやすく言えば所得増税について議論をしたいと思っております。

まず、総理に対してお聞きをしたいと思います。基本的にこの質疑は総理と議論したいと思っておりますが、まず、来年度の経済見通しの中で、消費は確実に 増加をする、こういうふうに書かれております。総理はなぜ、来年度消費は確実に増加をする、こういうふうに考えておられるんでしょうか。根拠をお知らせい ただきたいと思います。総理にお聞きしております。総理にお聞きしております。

小泉内閣総理大臣 我が国の経済を展望しますと、確かに現在一部に弱い動きが続いておりますが、大局的には緩やかな回復を続けていると思っております。企業部門におきましては、収益の増加が続いている、堅調である。

そういう中にあって、現在の経済指標を見ますと、失業率一つとってもピークの五・五%から四・五%まで低下してきている。これは六年ぶりの水準でありま す。そして、有効求人倍率も現在〇・九一倍となっておりまして、十二年ぶりの高水準です。そして、雇用環境に関する数字を見ましても、過去二回の回復局面 を上回る水準となっております。雇用状況も改善を続けておりまして、昨年の十―十二月期の雇用者の報酬もプラスに転じております。そういうことを見ます と、景気回復は家計部門に波及しつつあるというふうに見ております。

また、十―十二月期の実質GDP成長率は三期連続マイナスとなっておりますが、これは台風などによる天候要因、また、米国、中国の経済成長が一時的に鈍 化したことなど、一時的な要因によるものと考えております。本日発表されました全国勤労者世帯の一月の消費支出は、昨年に比べて実質で二・六%増加してい るところであります。

また、リストラの進展や企業部門の改善により雇用の過剰感というものは解消しつつありまして、有効求人倍率や新規求人倍率は上昇を続けておりまして、今 後、雇用者数は増加していくものと考えております。さらに、パート以外の一般労働者数が下げどまりつつあるとともに、これまで賃金を下押ししてきたパート 化の流れも鈍化しております。

こういうことを踏まえまして、十七年度におきましても、アメリカや中国などの世界経済の回復が続くことが期待される中に、雇用所得環境は改善し、景気回 復が企業部門から家計部門へ波及する動きは徐々に私は明確になっていくのではないか、そうすれば消費は着実に増加するのではないかと見込んでおります。

こういう状況のもとに、今回の定率減税の見直しに当たっても、民間部門に過度の負担が生じないように配慮したところでありまして、定率減税の縮減を含め た今般の税制改正による平成十七年度の増収額は、来年一月から三月までですから、ことし四月からやろうということじゃないんです、来年の一月から三月まで 千七百億円ぐらいの増収を見込んでおります。これは、景気に対してそれほど大きな影響を与えるものではないと認識しております。

確かに減税の方が国民は喜ぶに決まっておりますが、これは財政状況を見なきゃできません。今のような国債をかなり発行しなきゃならない状況において、減税が将来に及ぼす影響というものもやはりにらんでいかなきゃならないのではないかと思います。

こうした要因を加味した上で、昨年策定いたしました平成十七年度の政府経済見通しにおいては、今後とも、消費が着実に増加することによって、引き続き民 間需要を中心の緩やかな回復を続けると見込んでいるところでありまして、定率減税を縮減する状況にはないという御指摘にはいささか疑問を持っておるところ でございます。

岡田委員 問題は、確信を持って、消費は着実に増加する、そういうふうに言い切れるかどうかの問題ですね。今回の所得の増税は、そういった消費が着実に増 加をするということを前提に導入されていると思うんです。ですから、そこが言い切れるかどうか。希望的観測じゃなくて、きちんと言えるかどうかということ が問題なんです。

例えば、最近の月例経済報告を見ても、いろいろ悲観的な材料が並んでいます。雇用者数の伸び悩み、製造業の残業時間の弱含み、所定外給与の伸びの鈍化、 こういうことが列挙されています。そういう状況の中で、本当にこれから消費が着実に増加すると言い切れるのか、私は言い切れない、こういうふうに思ってお ります。

例えば、この委員会の議論の中で、企業の収益が伸びている、しかし、そのことが必ずしも所得の増につながっていないのではないか、こういう議論が何度か なされました。バブル直後の労働分配率が高かった時代から、それがバブル前にだんだん戻ってきた、だからそこで底打ちをするんじゃないか、こういう御説明 だったわけですが、私はこの見通しはかなり甘いと思うんです。今まで、バブルの前の段階に戻ったからそこでとどまるのか、もっと労働分配率は落ちていくの か、厳しい状況になるのか、そこの判断が私は違うわけです。

なぜ労働分配率がバブルの前の状況にとどまるというふうにお考えなのか。今の景気の状況を見れば、もちろん国際競争力のある企業は、ある意味でのリスト ラを終えて、そしてそこでしっかりと、あるいは労働分配率が高まっていくかもしれない。しかし、雇用の多くを見ている多くの中小企業は、非常にまだ苦しい 状況にあります。そういう中で、果たして労働分配率がここで下げどまるということが言えるのか。

そこのところについて、総理はどういう見通しをお持ちなんでしょうか。景気は一部はよくなっているかもしれませんが、全体としては非常に苦しいという中 で、私は労働分配率が下げどまり、消費が確実によくなる、こう言い切れないと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、踊り場的な状況だと、経済の専門家はよく踊り場という言葉を使います。これは、確かに一部に厳しい状況が見 られるのも事実です、中小企業あるいは地域によってですね。しかし、全体として見れば、これは失業率も低下してきている、先ほど申し上げました。それから 有効求人倍率、これは増加してくれました。十三年ぶりですか。だんだん、求人数が多くて、求職者数もそれに乗ってふえてきている。雇用者数も増加してきて いるんです。就業者数も増加してきているんです。

そういうことから見れば、大手企業の収益が改善しておりますから、それにつれて設備投資もかなり強気の見方が出ております。そうしますと、必ず大手の周 りには中小が、協力企業がついております。それに対してもいい影響を与えてまいります。それは企業の業種によっても違ってまいります。また、地域によりま して、いいところ、悪いところ、これは確かにあるのは、私は否定いたしません。これにつきましても、私は、全体として改善状況、意欲を出している地域もあ りますし、なかなか改善が及ばない地域もありますが、全体として明るくなってきたなと。

私は、こういう傾向はむしろ内需中心ですから、今まで輸出、輸出と言っていますけれども、幸いにして今は輸出もいいんです、中国、アメリカ初め。それに 加えて、国内の企業を中心に設備投資の部分と、ここで消費にいい影響を与えてくれば確実な景気回復軌道に乗ってくるのではないか、私はそう判断しておりま す。

岡田委員 総理お得意の設備投資も、これは輸出関連ですよ、基本的に。ですから、その輸出のところが、対中国、対アメリカ、それぞれの国の状況がどうなる かということは言い切れないわけです。そういう中で設備投資がどうなっていくかということも、それ自身が私は不透明だと思うし、しかも、設備投資がふえて いるから消費が着実に伸びると私は言い切れないと思います。

ここは、総理は言い切れるとおっしゃるのであれば、しかしそういった輸出の環境が変わる、あるいは先ほど言ったように、企業自身の企業収益が回復しても それが雇用に直接結びつかない、そういう中で、私は、余りにも楽観的な見通しに基づいて消費が着実に伸びる、それは、ある意味では所得税を増税するために あえてそういう言い方をしているんじゃないか、そういうふうに思っております。

総理、一―三月から所得税を増税するというふうに決められましたが、そうであれば、秋の国会で増税について判断しても遅くないんじゃないですか。なぜ、今決めてしまう必要があるんですか。

小泉内閣総理大臣 これは財務大臣が答弁するところだろうと思いますが、私、税制も今までやってまいりましたので答弁させてもらいます。

これは、定率減税の場合は二分の一、去年の暮れの税制改革でやっていこうと。そして、二分の一縮減していくわけですけれども、四月からではなくて来年の 一月から三月。そして、二分の一、総額大体一兆二千五百億円程度ですかね、半分なんです。全部やれば三兆三千億円になる。

しかし、それを何で二分の一にとどめたか。というのは、ことしの状況をよく見きわめよう、そしてことしの秋以降、暮れのときには予算編成と税制改正が議 論されます。そこで、あとの半分、これは経済状況をよく見ながら判断していかなきゃならない。一挙に三兆三千億の増税、増税という向きがありますけれど も、そうじゃないんです。まず二段階、景気状況をよく見ながら、まずは二分の一にとどめておこうということなんです。そして、ことしの暮れにはそういう、 今言った経済状況を見て、これをよく考えながら、あとの二分の一をどうしようかと。

それは当然、地方の三位一体の地方への税源移譲という問題にも関連してきます、全体の税制改革ですから所得税と地方税の税源移譲。そういうことから、私 は、今回の案というのは非常に景気にも配慮している、経済にも配慮している、財政にも配慮している。それで、年金を三分の一から二分の一に引き上げる、年 金の基礎部分の国庫負担分を。そういうものを総合的に考えた、実に配慮をされた税制改革だと思っております。

岡田委員 まず、今回の恒久的減税ですね、ここの解釈について、政府の御説明の中でも、これは抜本的な所得税の改革をするためのいわばつなぎ的なものであ る、こういう説明をこの委員会の中でされていますね。そうであれば、抜本的な所得税の改革は来年度、来年度に抜本的な所得税の改革をする中でこの定率的な 減税についても議論していけばいいのであって、なぜ一―三月に先行して増税をするんですか、なぜ増税をするんですか。

それは一体的というのであれば、所得税全体についての見直しをする中で考えていけばいい。所得税全体の見通しがはっきりしない中で、もしこういう所得税 になるということがはっきりすれば国民も安心するかもしれません、その具体的な図がない中で増税だけが先行する。そのことは、私は国民の消費に対して大い にそれを冷やすことになると思いますよ。いかがですか。

谷垣国務大臣 委員がおっしゃるように、平成十八年度に私どもは所得税から地方住民税へという形で三位一体の税源移譲を進めていく、そうなれば当然、国、地方を通じた所得課税全体を見直していかなければならない、それは平成十八年度の大きな課題だと思っております。

そして、定率減税の関係でまいりますと、御承知のように、これを入れましたときに、抜本的な所得課税の体系を見直すまでのいわばつなぎの措置という位置 づけでございましたから、そのとき同時にやれと委員はおっしゃっておられるんだと思いますが、私どもは、先ほど総理から御答弁もありましたように、やはり 景気を考えると段階的にやるのが一番よいだろう、半分ずつやっていこうということで、平成十七年度は二〇%やっていくうちの半分をもとに戻そうということ でお願いしているわけであります。

もちろん、平成十八年度どうするかというのは、私どもは、また残りの部分は十八年度に定率減税をいじっていただかなきゃいけないと思っておりますが、それはまたそのときにきちっと議論をしていただくということであろうと思います。

岡田委員 私が心配するのは、橋本内閣のときの九兆円の負担増です。そのことによって景気が失速した。総理、そこまで自信を持って、今消費は堅調だ、これ からも堅調だ、だから増税ができる、こうおっしゃるのであれば、もし消費がこれから軟調になって、そして増税によって景気が失速すれば、総理、当然、日本 国総理大臣としての責めを負わなければならないと思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 橋本内閣のときの増税と同じになるんじゃないかという御批判ですが、当時の状況と違いますね。

まず、当時の金融機関の不安定さに比べますと、現在は不良債権処理も進んでまいりました。予定どおり、大手の金融機関の不良債権は、八%台からことしは目標どおり四%台に縮小する見込みが立っております。

そして、この不良債権処理を進める過程で、賛成、反対、両者から私は批判を浴びました。このまま進めていくとどんどん失業がふえる、倒産がふえる、もう 少しおくらせたらどうかという批判と、いや、もっと早くどんどんやれ、ある程度そういう失業が出てもやむを得ないじゃないかということで、遅過ぎるから もっとやれと、両方から違う批判を受けたわけであります。

結果的には、政府の見通しどおり進んできたにもかかわらず、倒産件数は連続して減ってきています。失業者はふえるどころか着実に減ってきています。就業 者数は着実にふえています。有効求人倍率は着実に増加してきています。だから、今までの悲観論、だめだ、だめだ、悪くなる、悪くなるといって、この二、三 年間言われた悲観論とは全く逆な、政府の見通しどおりに進んでいるわけであります。

そういうことを考えて、私は、当時の橋本内閣のいわゆる増税とは違う。しかも消費税は、私、上げないと言っています。これは民主党とは違いますけれど も、今の状況で、来年の九月までは消費税を上げる環境にない、そういう消費に与える影響も見ておりますから、私は消費税を上げない。それは、民主党は民主 党で、一つの見識で、年金の目的税として消費税を上げろという御意見は御意見として結構だと思います。

しかし、そういう全体の状況を見て、私は、かといって財政をこのまま国債増発に頼っていってもよくないということから、ある程度の増収策を講じなきゃ財 政の健全さ、規律が薄れるということから、今回の定率減税におきましては二分の一縮小することも必要ではないかなと思って判断したわけでありまして、私 は、だめだ、だめだ、橋本内閣の二の舞になって、また消費が落ちて、企業が倒産して、金融機関がかなり不安になるのではないかというそんな状況はもう脱し たのではないかという観点から、今回の二分の一縮小を決断したわけでございます。

岡田委員 今の経済の状況を見て、楽観的な要素、悲観的な要素、それぞれあることは事実です。

私たちは、基本的に今はまだ楽観できる状況にはない、したがって、所得税の全体の見直しの中でこの定率減税の問題も議論していくべきだ、こういうふうに 申し上げているわけです。総理は、いや、今経済の状況は橋本内閣のときとは基本的に違う、だから増税していいんだ、こういうお話であります。それは一つの 判断です。だけれども、もしそのことによって景気が失速すれば、それは当然内閣総理大臣としての責めを負う、そのことをはっきり申し上げておきたいと思い ます。

小泉内閣総理大臣 増税にしても、規模があります、額があります。慎重に配慮したからこそ、増税増税という、定率減税を廃止したから増税という、三兆円程度の増税というならわかりますけれども、来年の一月―三月、一千七百億円程度の増収なんです。

逆に、それではこれをしなかった場合に、財政に対する規律はどうなのかという点も考えなきゃいかぬ。私は、そういうことを考えて、増収策を講ずる場合に も、経済状況、景気全体をよく配慮して、国税については来年の一月から実施する、地方税においては来年の六月から実施する、そういう配慮をしていることも 御理解いただきたいと思います。

岡田委員 私が申し上げていることは、国民がこういう増税先行型では将来に対して不安を持つ、そのことが消費に悪影響を及ぼす、したがって、所得税全体の 見直しの中できちっと位置づけて考えていくべきだ、そういうことを申し上げているわけであります。当然、これで経済が悪くなれば総理としての責めを負う、 そのことは申し上げておきたいと思います。

次に、年金の問題について一言申し上げたいと思います。

先般の党首討論で、私は総理に、全体的な議論を、社会保障制度全体の議論をすることはいい……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にお願いします。

岡田委員 しかし、まずは国民が最も不安に思っている年金の問題についてしっかりと骨格をつくるべきだ、そのことを申し上げました。総理は答えがありませんでした。

しかし、その後、テレビ番組などで中川国対委員長は、いや、年金を先に議論することはいいんだ、こういう発言をされています。

ここはぜひ確認しておきたい。これから社会保障制度全体の議論をする中で、まず年金制度の抜本改革を先行して議論していく、そのことについて、総理としての明確な答弁を求めたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、先日の岡田さんとの党首討論でも、そういうつもりで答弁していたんですよ。協議しようというのは、私は私なりに、いい、とりやす いボールを投げたつもりでいたんですよ。それを岡田さんが何かそらしちゃう、受け取らない。党首討論、答弁しながら、どうも感じが違うなと不思議に思いな がら答弁していたんです。

あのときの私の真意は、年金一元化を含む社会保障制度全体一体で議論しましょうということは、年金一元化を先から議論していいということだったんです よ。あのときにそういう質問をしてくれれば、いいですよと。だから、年金だけじゃありません、社会保障制度一般ですよと。それについては、胸襟を開いて話 し合いのテーブルに着きましょうと言っているんですよ。

だから、今言ったように、年金一元化の議論をしましょう、これを私は、何の異論も申し上げるつもりはございません。

岡田委員 社会保障制度全体の議論の中で、私、年金の一元化だけと言っているんじゃないですよ。年金の抜本改革をまず先行して議論する、そのことについて総理の御答弁がいただけたというふうに理解をしておきたいと思います。

次に、政治倫理の問題について一言申し上げておきたいと思います。

この予算委員会でもいろいろ議論されました。その中で、いわゆる迂回献金の議論が行われました。総理も、いわゆる迂回献金はあってはならないというふう に答弁されたと思います。なぜ迂回献金はあってはならないというふうに総理はお考えなのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 迂回献金というのは、今個人に対しては企業献金が禁止されております。しかし、政党に対してはこれは認められておりますから、その趣旨に従って、法律に従って、政党は各企業から、また団体から献金を受けております。

それを党として全体に集めて、党の活動に、あるいは議員活動に使うのは何ら差し支えないけれども、個人に今企業が直接献金することは禁止されているけれ ども、党にはいいんだから、党に献金して、党からそれに、個人に回ってくるというようなことは指名してやってはいけないというのが迂回献金。こういうこと はあってはならないことであるということを申し上げているわけであります。

岡田委員 今総理が言われたとおりだと私も思うんですね。本来、献金は、個人あるいは個人の政治団体は受け取れない。しかし、それを党を経由することで実 質的に行っている。つまり、あらかじめ指名をして、この人に渡してくださいといって党に献金をして、それが個人に行くということであってはならないという ことだと思うんです。

そのほかにも、例えば党でも、五万円以上は名前を出すという規定があります。これをすり抜けることにも場合によってはなりかねない、政党支部に行った場 合ですね。あるいは、本来わいろになる、そういった職務権限のある人が指名によって受け取れば、それをすり抜けることにもなりかねない。そういういろいろ な不透明な問題をはらむのがこの迂回献金です。

ですから、その迂回献金について、私は、政治資金規正法に、あらかじめ指名して献金することを禁止する、そういう規定をきちんと置いたらどうか、こうい う提案をしているわけであります。総理も、指名献金、迂回献金について問題があるという認識をされているわけですから、そういった規定を置くことについ て、私は、基本的に異論ないはずだ、こういうふうに思っております。この点しっかりと、私は、これから関係の委員会で、あるいは与野党で協議をして、国民 の不信を取り除く努力をすべきだと思いますが、いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 今も各党間でこの点につきましては議論がされているということを聞いております。どのような協議をして、どのような改善策を講ずるかに つきまして、政党として政党活動の必要性、そして多くの方々から献金を受ける必要性を認識しているわけでありますので、余り政争の具にしないで、政治の公 正な活動のために建設的な議論を進めていただきたいと思っております。

岡田委員 ここは単なる申し合わせとかそういうことではなくて、法律にきちんと規定を置くということをぜひ御理解いただきたいと思っております。

もう一つの問題、いわゆる政策活動費、これも、現行法上認められている、認められていない、いろいろ議論はあると思います。しかし、やはり政治資金規正 法の趣旨からいうと、何億とか十何億のお金が特定の個人に行って、その先のことがわからない。これはやはり透明性を高めるという政治資金収支報告書の趣旨 から逸脱している、私はそういうふうに思います。したがって、これも、何らかの規制を入れる、そういった個人に対してお金が行くことについて一定の規制を 入れるということをきちんと議論すべきだ、こういうふうに思いますが、その点についていかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 この点につきましても、各党の政策活動費、政党活動費、それぞれ党によって特色があるし、相違があると思っています。どういう政策活動 費をどのような党の役職者、幹部に与えるか、あるいは議員個人に与えるか、どこまで認めるか、こういう点についても各党それぞれ違ってくると私は思います が、どの程度の許容範囲を与えるかにつきましても、私はよく議論をする必要があるんじゃないかと。

確かに、表に出さなくていい金が現行法では認められております。その問題についても、どこまで出す必要があるのか、どこまで出す必要はないのかという点 も含めて、それぞれの党の政党活動ですから、これは大きな違いが党によってある場合もありますから、この点については、十分各党の責任者間で、よりよい改 善策があれば考えてもいいのではないか。私は、現行法で認められることがありますから、それがいかぬ、いかぬというのは、それは現行法を変えなきゃならな いし、そういう点も含めて、よく議論する必要があるのではないか。

特に、最近は規制の面がこの国会で議論されるものですから、寄附する人が非常に迷惑を受けているという声もよく聞かれます。なぜだと。月五万円程度、あ るいは年間十万円程度の献金をしたいんだけれども、必ずマスコミから調査に来る。何でこの人を応援しているのかと。それは、本人、取材される方にとっては 自分の勝手でしょうと言いたくなる。ところが、うるさくうるさくつきまとわれて、あたかもこの人に、この政党に献金をしているのがいけないかのような気持 ちで、もういろいろ調べられる。

では、政党は自分たちの献金を求めていながら、何でこういう煩わしいことをしなければならないのか。自分だって、献金をするのに人に知られたくなく献金 したい。何百万もするんじゃない。一万、二万、三万、これでわいろなんという気持ちは全くない。それで政治家を動かすような気持ちは全くない。にもかかわ らず、一定の、年間五万円多いと、これはだれにしたんだ、どの政党にしたんだとわかっちゃう。この政党に寄附した、この公示者に寄附したとなると、別の人 にも寄附しなきゃならなくなる。

こういう、寄附してくれた方から、少しは政治が考えてくださいよと。規制するばかりじゃなくて、税金だけで政治活動はなされちゃいけないんだ、国民の浄 財、支援者の献金で政治活動をしてもらいたいから自分は税金を払った後献金しているのに、そんな文句を、批判をされるような筋合いないのに一々調査が入る というのは、考えてくれないかと。ちゃんと処理しているところに限って調査に来るんです。なぜなら公表しているからです。

そういう点も、私は、政党同士、献金をしやすいような環境をつくることと……(発言する者あり)

甘利委員長 静粛にしてください。

小泉内閣総理大臣 しっかりと法律を守るということと、一定の規制は必要だということを総合的に議論していただきたいと思います。

岡田委員 多くのことを議論することはいいんですが、まずは国民的な要請といいますか、今ある不信感を取り除くために、私は、政策調査費の問題と迂回献金 の問題、これを優先的に取り組んでいくべきだ。我々もいろいろな要求をしています。だけれども、この二つ、まずしっかり政治資金規正法を変える、そういう 姿勢が私は大事だと思っております。

政策調査費も各党いろいろとおっしゃいましたが、民主党には政策調査費という概念はありません。総理には、例えば一億円のお金が行っているというお話が ありました。私はそのことを今批判するつもりはありませんが、例えば私自身が扱う交際費はホームページでも全部出しているんですね、出しているんです。し たがって、これは党いろいろといいますが、やはり透明性をしっかり高めていく、そういう姿勢で政治資金規正法を変えていく、そのことを申し上げておきたい と思います。

そこで、以上のことを申し上げた上で、例の一億円の問題について、総理に改めて申し上げたいと思います。

最近の報道でも、例えば橋本派の元会計責任者であった滝川氏が法廷でいろいろな証言をしています。例えば、パーティー収入のうちの現金で持ってきた部分 については政治資金収支報告書に載せずに裏金化していた、そういうふうに証言をしているわけであります。あるいは、橋本元総理を初め党の幹部から持ってき たお金についても収支報告書に載せていない、裏金として使っていた、そういう証言があります。そういったことを見ると、ますます疑惑は深まってくるわけで あります。あるいは、日歯の前常務理事の内田氏も公判の中で、橋本元総理を初め当時の橋本派の幹部に一億円の小切手を渡したその場面について、事細かく証 言しているじゃありませんか。

そういったことがはっきりしている中で、私たちが求めている証人喚問、これが実現しないということは一体どういうことなんでしょうか。総理は、あれは党 の問題ではないと言われますが、しかし、派閥というのは自民党の中に位置づけられた存在だと思うんです。しかも、最大派閥です。それを、党の問題ではない ということで切り捨てて、総理が責任を逃れることはできないと思います。

証人喚問に向けて、ぜひこれを実現していくんだということについて、国民に対して総理のしっかりとしたお答えを求めたいと思います。

小泉内閣総理大臣 基本的に、政治資金についての疑問が持たれた場合には、その持たれた議員個人がみずから説明すべきものだと私は思っております。そうい う中で、この橋本氏については、今証人喚問を求める声があるというのも私は承知しております。また、昨年、橋本氏が国会の委員会の場に出てみずからの立場 について質問を受け、答弁されたということも知っております。そして、現在裁判中であります。

そういう議論を踏まえて、各党が今協議をされて、この証人喚問についてはこういう結論が出されたということの報告を受けております。これは各党の国会対 策担当者の間の合意で、次のような合意がなされたと聞いております。いわゆる、証人喚問等については、これまでの与野党間の協議と今後の審議の経過を踏ま え、予算成立までの間、お互いに誠意を持って協議し、今国会での措置について結論を得るよう努力する、これが、各党、この問題についての合意だと聞いてお ります。その合意をどのように具体的な形で決着させるか、私は協議の結果を見守りたいと思っております。

岡田委員 今の総理がお読みになったのは、それは確かに合意であります。しかし、その合意を実現するために重要なことは、自由民主党が前向きになることで す。その総裁は小泉総理その人であります。ですから、小泉総裁が、きちんとやるんだ、疑惑を解明するんだ、そのことをはっきりここの場で言われれば話は進 むわけですよ。総理がそれを言わないから話がとどまっているんです。

もう一度聞きます。この疑惑を解明するために証人喚問を初め必要な措置をとる、そのことをはっきり国民の前で言っていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今まで何度か証人喚問が行われてまいりました。各党が個人をねらい撃ちにしたり、政党をねらい撃ちにしたり、証人の人権を傷つけたりし ないように配慮がなされなければならないということで、これは多数決はやめようというのが慣例になっております。多数党の横暴、政敵つぶしのためにこうい う証人喚問制度を使っちゃいけない。

今の証人喚問についても、何人も証人喚問要求が出ております。これは、何人にするのかという問題も含めて、お互い率直に意見を交換して、この問題に対していい結論を出していただきたいと思っております。

岡田委員 人権の問題はもちろん重要であります。こういった制度が人権侵害につながることがあってはならない。過去にもいろいろなことがありました。しか し、今問題になっているのは、まさしく政治家その人であって、しかも、日本国総理大臣を務めた橋本さんがこういった疑惑が降りかかっている。国民は、もし こういうことが事実であれば、これは政治に対してとても信頼できない、はっきりと事実を知りたがっているわけです。

そのことについて総理がリーダーシップをとって証人喚問を実現していく、他人事ではなくて、自民党総裁としての責任を持ってやっていただきたい、そのことを申し上げて、私のきょうの質問を終わります。




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