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2005.02.28|その他

日本の未来・民主党の使命

会員懇談会(2005.2.28)

日本の未来・民主党の使命

政権交代可能な政治にしない限り、政治はよくならない。民主党は、次の総選挙で政権交代を実現する。では政権をとって何をするのか? 年金、分権、安全保障、憲法—-民主党のすべてを語る。

岡田克也■民主党代表

経歴
昭和28年  三重県四日市市に生まれる
四日市市立の小・中学校、大阪教育大付属池田高校を経て東京大学法学部卒業。
  51年 通商産業省入省
  60年  ハーバード大学国際問題研究所(CFIA)に客員研究員として留学
  63年 大臣官房総務課企画調査官を最後に通商産業省退職
平成2年  衆議院議員選挙に初当選
自民党政治改革を実現する若手議員の会の中心メンバーとして政治改革の実現に努力
   5年 羽田孜、小沢一郎氏らとともに自民党を離党、将来の二大政党を目指して新生党結成に加
   6年  新生党を発展的に解消し、新進党結成に参加
  10年  新進党解党にともない、新たな民主党結党に参加、政調会長代理に就任
  12年 衆議院安全保障委員長に就任
民主党政策調査会長に就任
  14年 民主党幹事長に就任
  16年 民主党代表に就任

平成二年に初当選したときは自民党に所属していた。その直前にリクルート事件が発生し、自民党は厳しい批判にさらされていた。そういう中で我々は、政治を変える、政治改革の実行を有権者に訴えて初当選させていただいた。

当時は自民党も活力があって、党内で政治改革の論議を真剣にやっていた。中心になっておられたのは亡くなられた伊東正義さん、引退された後藤田正晴さ ん、あるいは羽田孜さんや小沢一郎さんといった方々だったが、私もその渦中に身を投じ、いろんな場面で政治改革の議論に参加してきた。しかし議論を重ねる 中で、自民党にはもう未来がないということを確信し、離党した。それ以来、新生党、新進党、そして民主党結成に参加してから七年たち、今日に至っている。

私は、政権交代可能な政治にしない限り政治はよくならないという信念をもっている。「自民党ではもう駄目だ。自民党に代わる新しい政党をつくりあげよ う」という思いで一本筋を通してやってきたつもりだ。自民党を離党してから十数年経ったが、ようやく政権選択の時代に入ったという意味では、感慨深いもの がある。

もうひとつ申し上げておかなければいけないのは、別になりたくて代表になったわけではないということだ。私としては、民主党になってから政調会長、幹事 長として忙しくしていたので、自分なりに考え方を整理したいという気持もあった。しかし昨年五月、菅さんが突然代表を降り、小沢さんもお断りになった。そ の中であえて火中の栗を拾ったということだ。その後、参議院議員選挙で勝利して、いよいよ政権選択の時代に入った。私も代表になった以上は、次の総選挙で 政権を交代させることを公約として、いま党の内外で頑張っているところだ。

政権政党としての準備が進む

さて、最初に民主党のことを少しお話しした方がいいと思う。

一昨年の総選挙で民主党は政権をかけた選挙ということで戦ったわけだが、残念ながら政権交代に至らなかった。たしかに、かなり無理があるなという思いは 一方でしつつ、幹事長として全国を走り回った。無所属を入れて三百小選挙区で百六まで取ったが、半分の百五十には届かなかった。比例では自民党以上の得票 を獲得して第一党になった。そういう意味では、総選挙では健闘したといえるだろう

昨年の参議院選挙は、比例で自民党に対して四百三十万票の差をつけた。これはかなり大きな差だ。自民党の方は「決して負けていない」とか、「民主党は社 共の票を食って、その分が増えただけだ」とか、いろんな言い方をしているが、四百三十万という数字がどういう数字かと言うと、例えばブッシュ対ケリーの大 統領選挙でブッシュが圧勝したと言われたが、その差は三百二十万票だ。有権者は日本の倍いる。そういう意味では、四百三十万票差というのは、圧倒的な勝利 であったと言えよう。ただ、投票日には全く笑う気持にはなれなかった。自民党には勝ったけれども政権は交代していない。私が笑うときは政権交代したとき だ。

民主党も七年経って、いろいろな意味で政権政党としての体裁が整ってきた。

政策については後で申し上げるが、政策以外で私がいままで幹事長、あるいは代表としてやってきたことの一つは、党改革だ。

やはり日本の政党や政治はおかしい。もう少しまともにしよう、そういう思いで「透明性」をキーワードに党改革に取り組んできた。例えばいま民主党は本部 も各都道府県連の支部も、監査法人の監査が入っている。これは大企業を監査している法人である。わが党は監査料だけで一千万円以上払っていると思うが、徹 底的に監査をしてもらっている。裏金とかわけの分からない使い方は絶対に認めないという方針でここ数年やってきた。自民党はいまだに例の一億円裁判などで いろんな話がボロボロ出てくるが、民主党は、体質的には全く違う政党になっている。国民が政治を信用できない最大の理由は、やはり政治と金の問題だ。少な くとも民主党に限っては、改革はかなり進んでいる。

もうひとつは、党の意思決定の仕組みをきちんとしようということだ。近代的な組織であれば、代表、幹事長、あるいは常任幹事会、役員会といろいろな組織 を持っている。それぞれきちんと役割分担をする。最終的にはもちろん代表が決断をするわけだが、議論によって物事を決めていく。そういう仕組みもほぼでき あがったと自負している。

さらに民主党の党改革の中で重要なことは地方の強化である。これは政党にとってはきわめて大事なことだ。単に本部だけがあって、そこに若い人がいて、な かなかいい党だというだけではだめだ。地方に行くと、地方議会も弱いし、個々の政治家も地元でどういう活動をしているのか見えてこない。今年から来年にか けて重視すべきは、地方での活動の強化だ。やはり個々の国会議員、あるいはその候補者が地元で地に足の着いた活動をしっかりやっていくことだ。ここは自民 党のほうが、一日の長がある。

もう一つは、地方議員の数を増やしていくことだ。しかも無党派層の考え方をしっかり吸い上げることのできる議員を増やしていくことが重要だ。特定の組織、団体出身の地方議員も大事だが、より幅広い層から支持される民主党にならなければいけない。

東京都議選が七月三日に行われるが、それが一つの試金石になる。まず候補者の数を倍以上に増やそうとしている。そういう地方選挙になると、中選挙区だか ら基本的に複数の候補者を立てることができる。もっとも現職の議員から見ると、なるべくライバルは少ないほうがいい。例えば世田谷は八人区で、一人だった ら間違いなく当選するから現職候補者は一人でいいと考えがちだ。しかしいま、そういうところにあえて三人、四人候補者を立てようとしている。一人区、二人 区は、必ず一人は立てる、四人区以上は複数立てるという方針で候補者を擁立し、ほぼ五十人という大台に届きつつある。

これが成功すると、各都道府県の統一地方選挙でも同じ方針で臨むことができる。若い候補、女性の候補を積極的に擁立して議員の数を増やし、地域に根の 張った政党にしていく。いままでそういう組織的な対応がこの党は不足していたが、幹事長のときにだいたい方向性をつけて、かなりいいところまで進んでい る。

もう一つは、やはり国政選挙である。選挙で勝たなければ政権はとれない。次の総選挙で政権交代をするということは、私の代表としての責任であると明確に 申し上げている。そんなこととてもじゃないができないとお思いの方もいらっしゃるかもしれない。しかし私がいま、地方を歩いてみて感じるのは、いままで自 民党の牙城とされた地方でも民主党に対してかなり大きな期待が出てきていることである。もちろんこれは、自民党の地方政策や農林水産業政策が失敗している ことの表れでもあるが、私は次の選挙で政権交代できると考えて、三百小選挙区で百七十取るということを具体的な数値目標にしている。それに比例が加わっ て、単独で過半数を取る。

今、幸いにして非常にいい候補が各地で手を挙げてくれている。まだ表には出せないが、霞ヶ関からも三十代の若手がかなり候補者になる予定である。どこの 省と言うわけにはいかないが、非常にいい候補が集まっている。もちろん民間からも来ていただいている。

求められる「分かりやすさ」

次の総選挙で勝利することが私の唯一最大の使命であると思っているが、もちろん政権交代そのものは目標・目的ではなく手段だ。政権交代をしてこの国の政 治を変えることが我々に課せられた使命だ。どういうふうに変えるかということがもちろん最も重要になる。そういう意味では、政権を取った場合にどういう政 策を実現していくかという政権政策をはっきりとした形で示さなければならない。

いま党内でかなり活発な議論をしている。先の総選挙、あるいは参議院選挙でマニフェストを示した。これも民主党が仕掛けていったものだ。いままでの選挙 のような、いいことだけを並べた、あるいは役所がつくったような公約ではない。本当に政権を取ればやるという、財源や期限を明示した上での具体的な政策を 掲げて選挙戦を戦っていこうという考え方だ。

民主党は政策を議論するのが大変好きな党だ。個々の政策、具体的な政策は相当なものがある。前の通常国会には五、六十本議員立法を出している。議員立法 を政党として何十本も出すというのは今まで与党・野党を含めてなかった。それだけでも民主党は政策を重視する党と言える。しかも法律として出すためには、 少なくとも国会、衆議院・参議院の法制局を通らなければならないから、いい加減なものは出せない。そういう意味で、かなりしっかりとした政策を持っている ということは申し上げておきたい。

しかし、そういった個々の政策を具体的に議論して詰めることに重点が置かれた結果、全体像が見えなくなってきたということは、率直に反省しなければなら ない。マニフェストというのは具体的な政策である。その具体的な政策が百、二百あって、すぐに法案化できるとしても、「じゃあ民主党政権になったら何が変 わるの」と聞かれたときに、ひと言で答えられなければならない。そういった意味での分かりやすさというものがこれから求められる。

選挙に向けて何を争点にするか。例えば前国会であれば年金、あるいは平和の問題だったと思うが、何を争点にして戦うか、何を政権政策の大きな柱として掲 げるかというところが最も重要なところだ。これから年内いっぱいで、そういった絞り込みの議論をしていきたい。

崩壊している国民年金制度

政策についてお話ししたい。

まず、年金をはじめとする社会保障制度の全体的な見直しである。これは今、最も必要な政策のひとつであり、かつ国民の関心も極めて高い問題だ。年金につ いて、民主党は先の参議院選挙で今までとは違う考え方で制度を組み立てるべきだと考えて、法案の形ですでに国会に出している。年金問題の第一は、今の制度 は持続可能ではないということだ。少子高齢化で保険料を負担する人の数が、これからさらに減っていく。もちろん年金の受給者の数は増えていくから、いまま でのような保険料でそのときの年金額を賄うという形は持続不可能である。その前提に立って制度を再構築すべきと考えている。

年金を考えるとき、第二に重要なことは、経済社会の構造が変化して、一つの会社もしくは勤め先で四十年間勤め上げるということがむしろ例外になってきて いる。転職や、あるいは会社員だった方が自ら一念発起して自営業を始めたり会社を興したり、逆に自営業だった方が廃業して会社勤めになる。あるいは主とし て女性の場合、子育て期間は働くことをやめて子育てが一段落すればまた働きだす。そういったいろんなパターンが考えられ、ひとつの勤め先にずっと勤めるこ とを前提とした今の制度は相当無理があると思う。

年金制度の第三の問題点は、やはり国民年金が完全に壊れているということだ。四割ぐらいの人が保険料を払っていない。何より国民年金というのはもともと 自営業者の方のための年金制度だった。つまり「自営業の方には定年がない。資産がある」という前提で国民年金制度は組み立てられてきた。したがって厚生年 金、あるいは共済年金と比べると、その支給額ははるかに少ない。しかし自営業をしている人が、ずっと自営業をやるわけではない。先ほど申し上げたように、 自営業の方が途中で廃業して会社に勤めるということも決して珍しくない。五十歳まで自営業で、そこから会社に勤めたら、その人には定年はある。それから 「自営業の方は資産がある」という前提はもう成り立たないと思う。諸々考えると、やはり年金制度をその職業にかかわらず一元化していくという方向にせざる を得ない。厚生年金、共済年金、自営業のための国民年金、これをひとつの制度で括っていくという方向だ。

先般小泉総理と党首討論をした際にも申し上げたし、小泉さんも言われたのだが、国民年金を一本化するときには、自営業者の所得の捕捉をちゃんとできるか といった、かなり難しい問題がある。しかし、そこを何とかクリアしながら一本化しようということが、私たちの主張である。

基礎的年金は税金で

もう一つは、基礎的な部分について全員に年金がいきわたるようにしなければいけないということだ。このままいくと、おそらく国民年金を四割の人が払って いないという状況で、将来、無年金者がかなりのボリュームで存在するということになる。若い人には「保険料を払わなくても、最悪の場合は生活保護を受けれ ばいい」という割り切り方もあるのかもしれない。しかしそういった形で無年金者がたくさん存在するようになると、介護や医療の保険料の負担の問題にも波及 していく。

民主党の考え方は、そういう基礎的年金の部分は税金で賄ってしまおうということだ。月額七万円程度、夫婦であれば十四万円、全員にもれなく支払おうとい う考え方である。今、国民年金、基礎年金は三分の一が税で、これを二分の一にするということで政府は進めているが、我々は全額税、それも消費税を財源に使 おうという考えだ。二階建ての部分、厚生年金でいえば報酬比例部分を国民年金についてどうするかという問題は残るが、そこも含めて全体を一元化する。

いま何が経済界で起こっているか。保険料の負担に耐えかねて、正社員を減らしてパート、派遣社員に置き換えるという動きがある。パートや派遣も含めて、 多様な働き方があることはもちろん認める。しかし全体をそのように誘導してしまっているというのが現状である。働き方に対して必ずしも中立ではない現在の 制度には、やはり問題がある。そういったことを含めて年金制度の抜本改革をしっかりすることが重要だ。

そのことをやった上で、介護、医療の見直しも重要だろう。特に重要なのは、高齢者医療である。そこでもすべての人が基礎年金を受け取っているとの前提で 考えるのと、一定の保険料や自己負担を求めるのと、かなりの無年金者がいるという前提で制度を組み立てるのとでは、かなり違ってくる。そういう意味でも、 やはり年金の問題をきちんとした上で、介護や医療の問題を議論すべきだ。

国家公務員人件費を削減せよ

党首討論でそのことを小泉総理に申し上げたが、総理から特に返事はなかった。三党合意というのがあって、党派を超えて社会保障制度を議論しようというこ とになっている。私はもちろんそれは必要なことだと思うからこそサインをした。しかしその三党合意に基づく各党の協議は、やはりちゃんと結論が出るという 見通しがなければならない、単なる先送りのための協議であってはならない。三党協議では、政府は平成十九年度が社会保障制度全体の見直しの時期であると 言っている。その裏には、そのとき消費税をアップするということが暗黙の前提としてあると思う。小泉さんの任期は平成十八年の秋だから、小泉さんの任期の 間に少なくとも年金だけはきちっと仕上げ、余力があればもちろん介護、医療もやるということでなければ、「自分の任期が終わった後で全体見直しをする。そ れまでは結論が出ない」というのは、あまりにも無責任ではないか。

社会保障について、なぜいまそんな議論を真剣にしなければならないかといえば、将来の制度が持続可能ではないからだ。その意味では、財政の問題はより深 刻だ。いま政府が言っている「十年後ぐらいをめどに基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を確保する」という方針は、かなり厳しい。しかしそれより遅 らせるわけにはいかない。問題は、そのために具体的に何をするかという絵が何も描かれていないということだ。私は、公共事業をGDP比でいまの半分にする ことは当然の前提だと考えている。半分にするから大変だという意見もあるが、ヨーロッパの国々と比較すると、明らかにいまの公共事業の割合は高すぎる。半 分にするという前提で様々なものを組み立てなければいけないにもかかわらず、整備新幹線など将来の負担につながるようなものをどんどん進めている。これが 残念ながらいまの小泉政権だ。

それから人件費をいかに節約していくか。ようやく政府でも、地方に勤務している国家公務員について五パーセント引き下げという話が出始めた。しかし東京 などは別の調整をするから、公務員人件費という意味では二、三パーセントの減にしかならない。いま都道府県市町村に行くと、一割以上カットしているという ところも出てきた。まず国家公務員の人件費についてしっかりと削減するという方針を出すべきだ。民主党は選挙で「人件費の一割削減」ということをマニフェ ストに書いた。しかし一割でも十分ではない。団塊の世代が引退するが、そこを一〇〇パーセント補充しないようにすれば、それだけでかなりの定数減になる。 辞める直前の高い人件費から新人に代わるだけでもベースは下がる。

それにプラスして、現在の水準をどうするかという問題がある。ご存じのように、公務員の賃金水準というのは、労働基本権が認められていないことの見返り で人事院制度があって自由にはいじれない形になっている。しかし、はたしていまの人事院制度の算定の仕方が正しいのかという議論も行わなければならない。 私たちとしては近い将来、公務員には労働基本権を認めて、そういう交渉の中で、民間と比べて高いということであればそれを是正していくという方針で臨むべ きだと考えている。

ちなみに公務員に労働基本権が認められていないのは、先進国では日本だけだ。OECDからは「いったいなぜ日本は労働基本権を認めてないのか。先進国とは言えないじゃないか」という批判がある。

そういう公共事業あるいは人件費を中心に改革をしていくことが必要だが、そうはいっても十四兆ぐらいつじつまを合わせないと基礎的財政収支の均衡は図れ ない。これはかなりきつい数字だ。かなり思い切ったゼロベースでの財政の見直しについて、明確な方針を出さなければならない。もちろん、経済の状況を見な がらそれをやっていくということになるのは当然だ。しかし十年後プライマリー・バランスを均衡させると言いながら、具体的な姿がないといういまの状況は、 明らかにおかしい。それをしっかり示すことが重要である。

分権は基礎自治体重視で

分権も重要だ。小泉さんの三位一体の改革は全くビジョンがない。私は「三兆円の地方への委譲」について、「では三兆円の先の話はどうなったのか」という ことを国会でも質問した。「まず平成十八年度まで三兆円をやって十九年度以降についてはそのとき考える」というのが小泉さんの答えだ。そのときは小泉さん は総理ではない。地方分権は国の骨格を変える問題だから、やはり将来のきちんとしたビジョンがあって、それに基づいて、最初の三年間で何兆円。次にはどう するといった姿が描かれなければならない。

民主党の考え方は、まず基礎自治体を重視しようということだ。基礎自治体というのは市町村である。市町村のできることは市町村がやる。市町村ができない ことを県がやる。県ができないことを国がやる。そういう補完性の原理に立って仕事の再分配を行う。仕事の再分配だけではなくて、当然最終的な姿としては税 源を委譲して、自らの収入の中でやっていただくということだ。その過程でいくつか解決しなければならない問題はあると思う。

ひとつは市町村の単位が小さすぎるということだ。もちろん今回のいろんな合併騒動の中で、「自分のところは小さくてもいいから自力でやっていくんだ」と いう町長さんが何人もいらっしゃる。それはそれで結構だと思うが、やはり将来は相当なことを市町村にやっていただくことになる。例えば一万人の町では、お そらく役場の職員は百人ぐらいだと思うが、百人でそれぞれの分野でエキスパートをもって地域密着の仕事をしていくのは、かなり無理がある。やはり市町村は 二十万、三十万ぐらいの塊にしていくことが望ましい。

しかし、それを今のように合併特例債のような餌で釣るやり方をすると、結局何のために合併するのかが分からなくなる。本来は、より効率化して税金の無駄 遣いを減らしていくために合併するというのが本筋だ。しかしいまは公共事業を目当てに合併をしている。こんなことを繰り返していると景気対策の名の下に全 国に箱物をつくったことの再来になってしまう。

そういった形で市町村をある程度括って一定の規模にし、その上に県があり、場合によっては道州制導入も、という議論は当然ある。市町村がある程度の塊に なれば、例えば私の出身の三重県は人口百六十万だから、三十万都市が五つできる。そうなると県というのはちょっと中途半端な規模になってくる。だとする と、県が合併して州になるということはあっていい。ただ気をつけなければいけないのは、道州制の議論を先行すると国の権限が州にいくだけで、結局住民に最 も身近な基礎自治体にいかないということになりかねない。やはり順序は基礎自治体重視で、そこから議論をスタートさせるべきだ。

基礎自治体に財源、税源、権限をもたせるということだから、当然しっかりとした責任をもってもらわなければならない。そういう意味では、地方自治体の破 綻制度とか情報開示についてもきちんとした法整備が必要だ。つまるところ、やはり最後は国民のレベルをどう考えるか、信じるか信じないかということだと思 う。

選挙をやっているといろんな方にお会いするが、総じて日本国民は立派な人が多いと思う。責任を持たされれば、しっかりとその中で自治が機能していくと考えている。そういう意味での本当の分権を実現していくことが重要だ。

日米同盟に偏るな

外交、安保だが、基本的には私は、日米同盟は重要だという前提に立っている。圧倒的に世界の中で大きな力をもつアメリカと日米安保条約を結んでいること は、日本にとって貴重な資産であり、この同盟は大事にしていかなければならない。ただそこで考えなければいけないことは、そうはいっても、それぞれの国益 を背負っているということである。当然何でもアメリカに協調していけばいいということではない。今の小泉政権は日米同盟にあまりにも偏り過ぎていること だ。

今でも残念に思っているのは、イラク戦争が始まったときに小泉総理は「これを支持する」と言われた。いままでの日本の外交であれば「理解する」に止め た。そこで「支持する」と言ったことに対して利害得失いろいろ言う人がいる。国連決議があったと強弁する方もいる。常任理事国のいくつかが明確に反対して いる中で始まった、いわゆる先制攻撃的なイラク戦争に対しては、やっぱり日本としての考え方をきちんと示すべきではなかったかという意見もある。私はやは り国の基本的な姿勢として、少なくとも「理解する」に止めるべきではなかったかと今でも思っている。

これから日米安保をやっていく中で、私が一番気になっているのは、いまのブッシュ政権の先制行動の傾向に、はたしてどこまで歯止めがかかるのだろうかと いうことだ。これもこの前、党首討論で小泉さんと議論したが、あまり議論は深まらなかった。ブッシュ政権の安全保障論の根幹に、「テロリストと大量破壊兵 器が結びついている。テロリストには失うものがないから、やったらやり返されるという抑止の議論が通用しない。だからこそ、場合によっては先制攻撃をす る」という考え方がある。

もう一つは、新しい脅威の出現とともにアメリカは圧倒的に強くなったということだ。言葉は適切ではないかもしれないが、先制攻撃論の背景には驕りもある と思う。アメリカがそういった形で国連とか安保理の決議とか、そういったことと無関係にどんどん動いていくとき、日本はどこまでお付き合いすべきなのかと いうことはしっかりと議論しておくことが必要だ。憲法に触れることのない範囲で自衛隊が武力行使する、米軍にお付き合いさせていただくという考え方は、国 連決議があればともかく、ない状態でどんどん協力させていくということは、アメリカとともに日本が世界から孤立していく道になりかねない。ここを日米間の 信頼関係に基づいて、どのようにハンドリングしていくかは、極めて重要なことではないか。

アジア外交を重視

そして外交、安保を語る際に日米同盟と並んでもうひとつ重要な視点は、やはりアジアだ。アジア外交重視というのが民主党の基本的な考え方だ。アジアと いっても非常に幅広いが、中国、韓国はもちろん、ASEAN、あるいはインドなど。私は日本がアジアの中にあることはラッキーなことだと思っている。ラッ キーという意味は、世界で最も経済的な発展の可能性に富んだ地域だということだ。いろいろな紛争の種はあるが、しかしこれからのもっていきようによっては 最も世界で平和で豊かな地域に育つ可能性のある、そういう中に日本があるということだ。そのために日本に何ができるか、もっと積極的に関わることを考えて いくべきだ。

中でも中国とどう向き合うかということはきわめて重要だ。私はこの前の日米安保協議の中で、中国に対して抑えた表現、すなわち中国に建設的な役割を求 め、ある意味では巻き込んでいくという考え方が示されたことは非常によかったと思う。もちろん、経済面ではどんどん交流が進み、相互補完関係になってい る。安全保障面では、そうはいっても隣国であるし、中国がどういった安全保障政策をとってくるかは、日本にとっても非常に重要な問題なので、相互信頼を高 めながら、お互いにとってプラスになるような外交を展開していかなければならない。

憲法改正への対応

最後に憲法の問題について申し上げたい。自民党は結党五十年ということで、秋までに憲法改正草案を出すということだから、条文の形で出してくるだろう。 民主党の方はすでに昨年、民主党憲法調査会の中間報告を出しており、それをさらに深めたものを今年の春に出したいと考えている。これは条文の形ではない。 考え方をきちんとまとめて出したいと考えている。かなり議論としては煮詰まりつつあるが、その上で今後の憲法改正についてどう考えるのかという問題があ る。

まず、いま憲法改正の手続き法がないので、これをつくるべきだと与党が言っている。これについて否定する必要は全くない。憲法改正はまだ先だから、今年 絶対やらなければいけないという理由もないが、しかし今年やってはいけないという理由はそれ以上にない。憲法改正手続き法をつくるというのであれば、それ は民主党も議論に参加をしてつくっていけばいいし、そういう方向で物事が進んでいる。

そこで憲法改正そのものだが、これはまずやり方として二つの道がある。どちらを取るか。

一つは、それぞれの政党が全面改正の姿を示してぶつかり合う。これはおそらく答えは出ない。憲法前文から始まって全部を見直すというものをぶつけ合った ら、民主党か自民党かどちらかが三分の二取るまで憲法改正ができないということになる。もう少し論点を絞り込んで、例えば基本的人権に新たな権利を加える とか、あるいは先ほどの地方分権のところをもう少し具体的に書き込むとか、あるいは憲法九条について具体的に議論するとか、そういったことに絞り込めれ ば、そう時間をおかずに、実現する可能性はある—-時間をおかずと言っても三年から五年ぐらいはかかると思うが。

この二つのどちらの道を行くのか。憲法論議というのは憲法を改正するということと同時に、いろんな政治的な思惑、状況の中で出てきている話なので、まず は民主党の考え方をまとめた上で、次のステップとしてどちらの道をとるのかを、相手もあることだから、自民党の考え方も見極めながら党として考えていきた いと思っている。

私自身は、憲法改正は政治家としては夢のある話で惹かれるわけだが、しかし現状を考えると、何が何でも成し遂げなければいけないナンバーワン・プライオ リティではないと思っている。必ずしも憲法が変わったから世の中が変わるというものではない。憲法が変わればすべて物事が変わると思っている人はいないと 思うが、そういう意味で、先ほど述べた財政の話や社会保障制度の話や、そういったことの方がプライオリティとしては高いと私自身は判断をしている。しか し、憲法を特に優先的に議論すべきだという流れができつつあるのであれば、民主党もそれに乗っていくことは、必ずしもやぶさかではない。

ナショナリズムをあおるな

Q 竹島問題をどういうふうに解決するか。

岡田  お互い知恵を出していかなければいけない。領土問題というのはナショナリズムと直結するから、日本も韓国も熱くなる。もちろん竹島の場合は実効支配されて しまっているから、時間が経てば経つほど日本は不利になるという面はある。したがって放っておけばいいということではないが、といっていろんな意味で軌道 に乗りつつある日韓関係という大きな流れの中で、こういった個別具体的な問題を処理していくという方針に立たなければならない。あまりナショナリズムをあ おるような方向にはもっていくべきではない。

Q ライブドアの話などは、あれだけキャピタルマーケットが変わっているのに、それに対応した法体系がなくて、事件が起こると何か考える。みんな後追いではないか。

岡田 私は基本的には経済は自由にやったらいいという考え方だから、あまり国が関与すべきではない、市場に任せればいいと思う。政治はやはり分配の問題とか教育といった市場が機能しないところに関与すればいい。

政治もそうだが、経済界もかなり不用意だったのではないか。温室で、こんなことは起こらないだろう、遠い世界の話だと思っていた部分もあるのではないだろうか。しかし、現実に起こって初めて気がついたという感じがする。

私は、堀江氏のメディア論には全く与しない。非常に乱暴なことを言っていると思う。ただ、彼がいま認められたルールの中でやったことについて、政界のお 歴々が「けしからん」というのは全くおかしなことだ。ルールの中でやったことがどうして批判されるのか。

しかし立法論として今後どうすべきかという新たな立法論としての議論は当然あったらいい。これは冷静な議論が必要だ。金融庁なりが、いきなり法改正案を出してきたりというのは理解しがたいが、ちゃんと議論して対応策を考えたらいい。

台湾独立も武力統一も認めない

Q 台湾問題に対する見解は?

岡田 私 と民主党の考え方は、「台湾の一方的な独立は認めない。しかし中国の武力行使についても反対する」というものだ。冷静に考えれば、台湾にとっても中国に とっても現状維持というか、少なくとも武力紛争に至らないことが大きな利益だ。それしか答えがない。経済的に台湾・中国もこれだけ補完関係にあるわけだか ら、お互いがぶつかり合って失うものは非常に大きいと思うが、得るものはほとんどない。

どういう場合に冷静な対応ができないということになるかと考えると、やはり台湾ナショナリズムがどんどん高じて、台湾に住む人たちの気持が制御できなく なるという事態になると非常に緊張感が高まってくる。したがって日本としては、そういったことにならないように、アメリカとも協調しながら、どう進めてい くか。そういう問題だと思っている。

Q 高齢者に働く場所を与えると日本の将来も変わってくるのではないか。

岡田 老 人とか高齢者という言葉があるが、何歳以上が老人なのだろうか。老人に対して壮年、そして青年、私は今の体力から言うと七十ぐらいまでは壮年でいいのでは ないかと思う。団塊の世代がこれから六十を超える時代に入ってくるが、彼らが今までとはちょっと違う、何かしてくれるのではないかという期待感がある。も ちろん会社には定年があって、その定年を延ばすことも大事だが、NPO活動とかいろんな形で社会との関わりを持っていく、その中には収入を得られるものも ある、そういう新しい日本に変わっていく起爆剤になってくれるのではないか。

そういう社会にもっていかないと、もったいない。意欲に富み、元気な方がたくさんいる。しかも日本では諸外国とは違って定年になっても働きたいという人がまだまだ多い。そういう意欲を生かせるような政治というのが必要だと思っている。

同時に、やはり子どもを産み育てやすい社会をつくることも重要だ。これもこれから五年ぐらいが勝負だ。団塊の世代があって、団塊ジュニアがあって、団塊 ジュニアがだいたい三十代前半ぐらいだ。この人たちが結婚して子どもを産むかどうか、今のところ残念ながら出生率は毎年減っている。だから団塊ジュニアの ジュニアでひとつの塊ができるかどうかというのは、ここ数年にかかっている。そういう意味で我々は「ヨーロッパなみに子どもに対して月一万六千円の子ども 手当を支給しろ」と言っている。

また働くという意味では女性の労働力化がある。女性がもっともっと働きやすい環境にするということもいろんな意味で大事なことだ。これから労働力人口が減っていくことをカバーする大事なポイントだと思っている。

女帝について

Q 憲法改正と女性天皇を認めるかどうかの問題とが絡んでくることが、果たしていいのか。憲法改正と皇室典範の改正とは法体系が違うし、切り離した方がいいのではないか。

岡田 皇室典範の改正はかなり急ぐ話なので、憲法とは絡めない方がいいと思うが、皇室典範の改正、つまり女性天皇を認めるという話については、ここ一、二年で結論を出さないといけない問題だろう。

私は当然女性天皇を認めるべきだと思うが、この問題は奥が深い。男系男子という伝統をどうするか、どう考えるか。例外もあったかもしれないが、基本的に は例外はなかったのではないか。ここの議論で世論が二つに割れるようになると、国民の総意に基づいて成り立っている今の象徴天皇制というものにかなり影響 が出てくるので慎重に、しかし迅速に進めなければいけない。女性天皇の問題は国家にとっては極めて重要な問題だと思っている。

それから女性天皇を認めるという場合に第一子を天皇の世継ぎにするのか、それとも男性、女性がある場合は男性を優先にするのかどうかという点についてもきちんとした国民的議論が必要である。

天皇について日ごろ感じていることだが、皇太子も提起されたが、公的な行為、あるいは国事行為も含めて天皇陛下にどういう役割を果たしてもらうのかとい うところについて、もう少しきちんと議論が必要ではないかと思う。一方であまりにも忙しすぎるという話もある。

いつも疑問を感じるのは国会の開会式だ。これは陛下に対する冒涜ではないか。毎回同じセリフなのである。たまたま神戸の地震が起きたときだけは、そのこ とが一言入った。今年は新潟の話とか、災害が多かったのでそういう話題が入るかと思ったら、全く入らない。同じことを十数年間、わざわざ国会に来て時間を かけて同じ紙を読んでお帰りになる。はたして天皇の人権はどこにあるのだろうかという気がする。もちろん政治的な色合いをもってはいけないということは分 かるが、例えば阪神・淡路大震災の十周年追悼式典で陛下は非常にいい挨拶をされた。政治的な意味合いをもたせずに自らの心情を吐露することができるはず だ。そういうことを完全に縛っている今の姿というのは、いかがなものか。

あくまでも単独政権をめざす

Q 鳩山憲法試案をどう評価するか。政権党になるためには総合的戦略が必要だと思うが、民主党として今後公明党とはどういうスタンスでいくのか。市場に任せるのも結構だが、国家として産業政策はやはり必要ではないか。

岡田 鳩山さんの憲法改正試案は党の議論とは別の、鳩山さんのお考えだ。かなり共通している部分はあると思うが、一つの参考意見として、党としても考えていけばいいと思っている。

公明党をどう考えるかというよりも、公明党がどう考えるかという話である。民主党としては、あくまでも単独で政権を取ることを目標に掲げているし、これ は実現可能だと思っている。公明党は自民党とともに今、与党を構成しているわけだから、それについて我々が何か当てにするということはない。

二十一世紀の産業政策ということだが、私は先ほど言ったように、基本的には経済のことは市場に任せるべきだという考え方をもっている。通産省にいたとき も、通産省のやっていることが本当に産業界に役に立っているのかなという疑問が常にあった。戦後の一時期はそういう時期もあったと思うが、おそらく一九六 〇年代ぐらいからはほとんど関係なかったのではないかと思っている。

少なくとも言えることは、お役所がいろいろ口出しをした規制産業はだいたいおかしくなっていて、役所が何も言わなかった自動車とか、電子機器といったところは国際競争力をもっている。結果が示しているわけである。

市場が機能しない部分に政治はもっと力を入れなければいけない。

Q 選挙戦略として公明党に頼らずに単独過半数を取るという方針は正しい。衆議院選挙で単独で自民党が勝てた区はほとんどなかったのではないか。いずれにしても政治の世界に競争原理が働いて、自民党、民主党に切磋琢磨していただくことが有益だ。

岡田 ま ず公明党の話だが、たしかに選挙ごとに二万数千の票が自民党に乗っているという見方はできると思うが、しかしそれによって逃げていく票もある。物事はそう 単純ではない。ただ、自民党は公明党と連立を組んでパートナーとしてやっていくという決断をされたわけだが、そのことが自民党の将来にとって長い目で見て どうなのかということは、もっと自民党の中で議論されるべきではないか。

私が候補者に言っているのは、「まず自らの支援者をきちんと増やして、自民党の候補者と地域で対等に戦えるようにならないと話にならない。そのわずかな 差で勝つ。ベースが風だよりで、駅で街頭演説だけをしていれば票が入るというのではなくて、やっぱり自らを政治家として認め、支持してくれる方を作ってい く日常活動がいかに重要かを認識すべきだ」ということを日々申し上げている。

総理として靖国参拝はしない

Q  アメリカ一辺倒ではいけないというのはそのとおりだと思うが、しかし中国や韓国や、あるいは北朝鮮、その他のアジア諸国に対しても、日本はきちっとした 姿勢というものを保っていかなければいけない。岡田代表が政権を取られて総理大臣に就任されたとき、靖国参拝はどうするつもりか。

岡田 靖 国参拝について、私の考え方はもうすでに何度も申し上げている。私が日本国総理大臣として靖国神社に行くことはない。そのことは今から明確に申し上げてい る。靖国神社に対する国民の気持というのはもちろんよく分かるが、やはり私はA級戦犯が合祀されているのは理解し難い。そういう議論をすると、ではA級戦 犯というか東京裁判そのものがおかしかったという議論もある。私も東京裁判がすべて正しいとは思っていない。しかし、それに代わるものは何もない。本来東 京裁判が不当であったというなら、日本国自らが同じことをやって、そして誰に責任があったのかということをきちっと明確にする責任があったと思う。そこを せずに東京裁判もおかしいというのでは全員無責任体制、あの甚大な被害を及ぼした戦争に対して誰も責任を取らないということになる。それは国家として極め て恥ずかしい話だ。そういう意味で、A級戦犯全員が悪いということではないかもしれない。お気の毒な面はあるが、しかしそれに代わるものがない以上、やは りA級戦犯の皆さんは責任を負うべきで、それが祀られているところに日本国総理大臣が行くということはいかがなものか。

民主党としては宗教性のない、そして戦争に行って亡くなった方だけではなくて、空襲その他で亡くなった方も、あるいは外国の犠牲者も含めた、そういった 施設をきちんとつくって、日本国総理大臣はそこに行くべきであるという考えだ。私のイメージにあるのは、沖縄に平和の礎という施設がある。そこに行くと日 本人も韓国人も中国人もアメリカ人も犠牲者の名前がすべて刻まれている。ああいったものをイメージしているのだが、そういうものをきちんとつくって、そし て外国の元首が来られればそこにぜひ行っていただく。そういうふうにすべきだと思っている。

なお、A級戦犯が祀ってあるのがけしからんから靖国神社はA級戦犯を祀るのをやめるべきだと言うつもりはない。靖国神社は一民間の神社だから、そこに対 して国が指図をするというのは基本的にまちがっている。それは靖国神社の判断の問題だと考えている。

Q 東京裁判は平和条約もできていないときに行われたもので、司法裁判ならぬ政治裁判だとの評がパル判事のみならず、アメリカの著名人からも出ている。何 が法源かと言うと、マッカーサーだ。しかも彼自身、後に「裁判はあやまりだった」とトルーマンに言い、また、議会という公式の場で、「日本が開戦したのは 専ら自衛の理由だった」と証言しているほどだ。

岡田 国 際法上おかしい、あるいは今までなかった罪をつくって遡及的にやっているとか、根本的な問題はいろいろあることは私も承知している。ただそうであれば、日 本でどうして自ら裁判を新たに行わなかったのかという問題は残ると思う。そこをせずに、「東京裁判はおかしい」と言い、あるいは日本人が自ら反省し裁くも のを裁いたかといえば、それもやっていないというのは、私はあまりにも国としては情けない姿だと思う。そういう意味で東京裁判をサンフランシスコ条約でも 受け入れたわけである。もちろん満足しているわけではないが、とりあえずそれを是とせざるを得ないと思っている。

Q 東京裁判を受諾したのは(平和条約第十一条)、個々の具体的な判決(単数のジャッジメントでなく、複数のジャッジメンツ)であり、平和回復の後に勝手 に刑の執行をサボったりしないことを約したものであって、裁判についての価値判断はしていない。包括的に受け入れたものではないと解する。

岡田 い ろんな見方があると思うが、膨大な犠牲を出した戦争を、自衛戦争とは言えない。やはりいろんな判断を誤っている。軍部を止めるべきときに止めていない。そ ういうことについて国としてどうして総括ができていないのか。私は戦後生まれだが、総括ができるとしたらこの十年ぐらいしかないと思う。国の尊厳という意 味で言うと、私は残念なことであったと思っている。

Q 今の靖国神社参拝に関する考えは、岡田さん個人のお考えか、それとも民主党のお考えか。

岡田 靖 国に総理として行かないというのは私の考え方だ。菅さんも同じことを言っておられたと思うが、これはもちろん中国が言うから、そうするということではな い。そういう意味でいまの小泉総理の靖国問題は、行っても問題だし行かなくても問題という状況に立ち至っている。そこまでもっていってしまった総理の稚拙 さがある。靖国に多くの方が祀られ、遺族の方がそこに行くというのは自然な感情だ。私は決してそのことを否定しているわけではない。ただ本来であれば遺族 の皆さんというのは戦争で最も被害を受けた方々で、そういう方々が戦争に責任ある人も一緒に祀られているところに行かれるということについて、私は心の中 で疑問をもっている。

遺族会も戦争直後は反戦ということを言っておられた。次第にそれはいろんな理由で変わってきたが。靖国の問題を議論することは政治家としては、かなりリスクをかけているわけだが、私はあえて申し上げておきたい。

会場からのコメント

東京裁判は先勝国の戦敗国に対するリンチだったというのは、パール博士の判決書を読んでも分かる。東京裁判で日本側の証拠書類は一割も採用されていな い、ほとんど葬られてしまった。ああいう不公平な裁判を認めるということは、日本人である限り承知できない。あの戦争の責任を言われたけれども、あの戦争 は国民一丸となってやった。国の方針として決定した以上、いまさらその犯人は誰だとか引っ張り出して裁くということはあってはならない。

会場からのコメント  いわゆるA級戦犯は昭和二十八年の国会で、左派社会党まで含めた全会一致で名誉を回復されている。つまり岡田さんの大先輩たちが真剣に考えて、しかも彼ら は戦争の経緯、ならびに戦争のリーダーたちも全部、我々よりもはるかに知っている。その人たちが名誉を回復して、そして政府が祭神表を靖国神社に送って、 靖国神社が合祀した。靖国神社が勝手に合祀したわけではない。かつ合祀された以後も大平さん、鈴木さん、そして中曽根さんがおまいりした。中曽根さんは昭 和六十年、中国に言われてヘナヘナとなった。これが諸悪の根源である。




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