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2000.02.09|国会会議録

平成12年2月9日 第147回国会 衆議院本会議

岡田克也君 民主党の岡田克也です。鳩山代表に引き続き、経済財政問題を中心に質問をします。

質問に先立ちまして、先ほどの小渕総理の答弁につきまして、二点、お伺いしたいと思います。

総理は、先ほどの鳩山代表の、国会運営のルールを破壊したとの指摘に対して、議会のルールに全く反していないと強調されました。そこには、おごる総理の姿しか見えません。例えば、衆議院の議長の裁断を与党自民党が真っ先に拒否したということは、これは何の問題もないと総理はお考えなのでしょうか。お考えをお聞かせいただきたいと思います。

第二に、NTTドコモの問題であります。

総理は、秘書官が既に名誉毀損で裁判で訴えているということを理由に挙げられましたが、裁判で訴えたことは何の説明にもなりません。今重要なことは、国民が疑問に思っていることに対して率直に答える説明の責任であります。今直ちに納得のいく説明ができないというのであれば、予算委員会等において、今後、総理が、国民が理解できるような説明をされるようにお約束をいただきたいと思います。(拍手)

さて、今国民は、長い不況のトンネルの中で、いつ見えるともしれない出口を求めて苦しんでいます。この戦後最も深刻な不況の直接の原因は、言うまでもなく、平成九年の橋本内閣の九兆円の負担増であります。

橋本前総理は、歴史に残るこの経済大失政の責任をとって総理をおやめになりました。

小渕総理は、この橋本内閣において外務大臣という要職にありました。小渕総理が現在の不況を招いた大失政の責任を橋本前総理と共有すべき立場にあるということは明確に指摘しておかなければなりません。総理にこの点について反論があれば、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

さて、まず来年度の経済成長について質問します。

小渕総理は、施政方針演説において、設備投資や個人消費など民間主導の自律的景気回復を実現させるとの決意を述べられました。

しかし、一年前にも総理は同じようなことをおっしゃったことを覚えておられないのでしょうか。

昨年一年を振り返れば、米国は順調に経済成長を遂げ、アジア経済も予想以上に早く回復をしました。これだけの好条件がありながら、我が国経済は、民間需要への点火がなされないままでした。結局、処方せんが誤っているのではないですか。なぜ、同じことの繰り返しであるにもかかわらず、来年度は民間需要が回復するとお考えなのか、総理の見解をお伺いします。

次に、宮澤大蔵大臣にお聞きします。

宮澤大臣は、さきの予算委員会において、設備投資については慎重に見るべきと述べられました。むしろ個人消費主導の景気回復シナリオを考えておられるようで、四―六月期に消費の回復がはっきりしてくると述べられております。果たしてそうでしょうか。

好景気に沸く米国では、過去十年間、一人当たりの雇用者所得はふえていません。雇用者数の減少や一人当たりの所得の伸び悩みを見ると、消費主導の景気回復は余りにも楽観的に思えますが、宮澤大臣のお考えをお聞きします。

また、堺屋長官は、この個人消費主導の景気回復という考えに同調されるのか、お伺いをしたいと思います。

私は、民需主導の景気回復というのであれば、民間設備投資に期待するしかないと思います。

日本はマクロでは設備過剰ですが、マクロとミクロは違います。国際競争下にある企業は、その生き残りをかけて、情報化投資を中心とする設備投資をせざるを得ない状況にあります。これらの潜在的にある設備投資意欲を政策的に引き出すことが景気対策の重点であるべきであり、情報化投資を対象とした大型の投資減税を行うべきと考えますが、宮澤大臣の見解をお伺いします。

さて、国民は、単に目の前の不況に苦しんでいるわけではありません。この国の未来に対して大きな不安を抱いているのです。二十一世紀の日本が今よりも平和で希望に満ちた国であるのか、自分たちの子供や孫が今よりも豊かに暮らせるのか、多くの人々が深刻に悩んでいます。その不安は、小渕総理がこの国のリーダーになったこの一年半の間に、大きく増幅されたのです。小渕総理がこの一年半に行ったことは、第一に、この国の財政を破綻一歩手前の状況にまで追いやったこと、第二に、やるべき構造改革を次々に先送りしたことです。

まず、財政の問題について質問します。

小渕総理は、施政方針演説において、「景気を本格軌道に乗せるという目的と財政再建に取り組むという重要課題の双方を同時に追い求めることはできない」と言われました。我が国経済の本格回復を待って財政構造改革という大きな課題に立ち向かいたいとも述べています。私には、この総理の二兎を追う者は一兎をも得ずの議論は、根本的に誤っていると考えられます。

以下、三点について質問します。

第一に、総理は、財政構造改革と財政再建を混同しているのではありませんか。財政構造改革がもし安易な増税や歳出の一律カットを意味しているのであれば、確かに今それを行うことは景気回復に悪影響を与えるでしょう。そのことは橋本政権において実証済みであります。しかし、これらは財政再建ではあったとしても、財政構造改革とは言えません。

私は、財政の構造改革とは、まさに歳出項目の構造にまで切り込んで本質的な改革を行うことだと考えますが、総理の言う財政構造改革とは一体何なのか、お聞かせいただきたいと思います。

例えば、公共事業予算を例として挙げれば、近い将来の少子高齢化社会や人口減少時代の本格到来を踏まえ、公共事業予算の省庁別シェアを大胆に変え、特定財源のあり方について再検討する必要があります。現実にニーズの少ない事業が、単に国から予算が来るからという理由で実施されることのないよう、公共事業予算の地方分権化も極めて重要です。

私は、これらの構造改革を今行うことは、景気に対し何ら悪影響を及ぼさないばかりか、かえって、効率的な公共事業の実施によりその波及効果を高めることになると考えますが、総理はいかがお考えでしょうか、答弁を求めます。(拍手)

第二に、総理の言うように、我が国経済の本格回復を待って財政構造改革に取り組むという考えでは、永遠に財政赤字はふえ続けることになると考えます。財政構造改革を本格的に論議し立法するためには、数年間の真剣な議論と時間が必要です。景気がよくなってから取り組んでいたのでは、実行しようというときには既に景気は下降局面になっているかもしれません。少なくとも現時点においても、財政構造改革の真剣な議論が始まっていなければならず、総理の議論すら棚上げするような姿勢は、全く理解しがたいところです。総理の財政構造改革に取り組む決意をお伺いします。

第三に、八十五兆円の予算のうち三十三兆円を国債に頼るという来年度予算、今後、歳出伸び率がゼロでも毎年三十兆円の国債発行が必要だとの現実は、国民に将来の大インフレか大増税の予感を抱かせ、そのことが景気回復の足を引っ張る結果となっています。

つまり、総理が財政構造改革を先送りしていることが、国民に大きな将来不安を与え、景気回復をおくらせ、一兎をも得ずの結果になっていると考えます。むしろ今必要なことは、将来の財政構造改革のビジョンをしっかり示すことで、国民に将来に対する安心感を与えることではないでしょうか。総理に財政構造改革のビジョンをつくる決意があるかどうか、お伺いします。

以上、三点にわたり私が申し上げたことは、二兎を追う者は一兎をも得ずではなく、小渕総理のように、景気回復という一兎しか追わない者は一兎をも得ずであり、景気回復と財政構造改革の二兎を追う者は二兎を得るということであります。

これでも総理は、財政構造改革に今取り組むべきではないとお考えでしょうか。このままでは、小渕総理は、日本の財政を回復不能な状況にまで追いやり、日本の没落を決定づけた総理として、歴史に名前が残るでしょう。二兎を追う者は一兎をも得ずとの考えを取り消し、財政構造改革に正面から取り組むとの決意を改めてお聞きしたいと思います。

次に、小渕総理の構造改革先送りについて述べます。

橋本前総理は、六つの改革を内閣の最重要課題として取り組んできました。言うまでもなく、経済構造改革を初めとする構造改革の実現は、景気回復のための最も効果的な手段であり、今断固としてやり抜かなければならないことです。それぞれの改革が今どういう状況にあるのか、改めて確認したいと思います。

第一に、行政改革です。

中央省庁等改革基本法に基づき、二〇〇一年一月から新たな省庁体制が発足します。しかし、最も重要な課題である公務員数の削減については、大きな抜け道が残ったままです。

小渕総理は、平成十年八月の総理としての初めての所信表明演説で、十年で公務員の定数は二〇%、コストは三〇%削減すると約束されました。さらに、自民、自由両党の合意で、定数削減率は二五%に拡大されました。

しかし、その後の国会審議で明らかとなったように、この定員削減は、独立行政法人への移管による減少分も含むとされています。移管された人々は、公務員としての身分が保障され、かつ人件費も税金で手当てされるということに何ら変わりはありません。これでは、国民を欺いていると言われても仕方がないじゃありませんか。

それどころではありません。国の行政機関の職員の定員について、一〇%削減することが中央省庁改革基本法に定められています。しかし、この一〇%削減ですら、純減ではないという意見があります。すなわち、一方で一〇%減らしつつ、他の理由で一〇%以上ふやしても法律違反ではないというのです。これでは、何のための定員削減なんでしょうか。

コスト削減のための定員削減であったはずが、コストは全く減っておらず、単なる数合わせに終わっています。これでは、会社ならとっくに倒産しています。今後十年間で国の行政機関の職員の定員を純減ベースで一〇%減らすことを、今国民に対して明確に約束すべきではありませんか。小渕総理の明確な答弁を求めます。

第二は、社会保障制度改革です。

特に、医療制度の抜本改革は、平成九年に、二〇〇〇年度には医療制度改革を実現し、新たな制度を導入するとの当時の与党合意に基づき検討がなされてきましたが、結局、抜本改革は二年以上先送りされることが決定されました。

平成九年に二〇〇〇年度からの抜本改革が約束されたのは、言うまでもなく、健康保険法の改正により、医療費の国民負担増、一割の自己負担が二割に決まったこととの関係においてであります。私は、当時、厚生委員会の野党側筆頭理事を務めておりましたが、小泉厚生大臣も与党の責任者も、明確に二〇〇〇年度までの抜本改革を約束しました。

しかしながら、医療制度の抜本改革はまたもや見送られ、高齢者の患者負担の増加が決められました。構造改革、抜本改革なくして負担増なしの約束は、またもほごにされたのです。

先日、社会保障制度審議会は、今回の医療制度抜本改革の先送りを厳しく批判するとともに、利害関係者を除く第三者で構成された臨時医療制度改革調査会の設置を提言しました。社会保障制度審議会は総理の諮問機関であり、これらの批判や提言は総理に対してなされたものであります。

総理、総理はなぜ医療の抜本改革に取り組もうとしないのでしょうか。そして、異例とも言える社会保障制度審議会のこれらの批判と提言に対して、どうお考えでしょうか。答弁を求めます。

第三は、金融システム改革です。

金融システム改革は、二〇〇一年四月のペイオフ解禁を一つの目標に進められてきました。そのペイオフ解禁が突然、昨年末、延期になりました。宮澤大蔵大臣は、たびたび、ペイオフ解禁は予定どおりやると言いながら、与党三党の政調会長会議で延期が決まると、調整の中身について私が言うことはないと述べ、簡単にその結果を丸のみしてしまいました。与党の政策責任者にすべてを任せるのでは、大臣とは一体何なのでしょうか。特に、ペイオフの問題は与党三党でも意見が分かれていただけに、宮澤大臣の対応には大きな疑問が残ります。

そして、この重要な問題に対し、小渕総理は外向けに全く発言していないのです。橋本政権の進めた改革の中で唯一実績があったとされる金融システム改革までもが先送りされてしまったのです。

宮澤大臣は、与党の政策責任者との間でどのような議論をされ、なぜペイオフ解禁延期に賛成したのか、答弁を求めます。(拍手)

また、亀井自民党政調会長は、この問題は総理からすべて任されていたと述べたと伝えられていますが、総理は、ペイオフ解禁延期問題について、大蔵大臣や亀井自民党政調会長にあらかじめどのような指示をしていたのか、答弁を求めます。

今、六つの改革のうち、代表的なものを取り上げました。その他の教育改革や経済構造改革、全く進んでいません。すなわち、小渕政権の本質は、改革先送り政権なのです。

小渕政権が改革先送り政権であることの具体例をもう一つ挙げておきましょう。

総理は、今まで数多くの政策諮問機関をつくってきました。最初に鳴り物入りで発足したのが経済戦略会議です。経済戦略会議の報告書ができたときに、だれもが、小渕総理が報告書の実現のためのリーダーシップを発揮すると考えました。しかし、各省庁から批判が出るのを見るや、たちまち君子豹変し、文字どおりただの作文になってしまったのです。この戦略会議の中心人物であったある経済学者は、せっかくの提言を放置するなら、会議という名の器をつくるだけという意味で、箱物政治と呼ばれるだろうと述べています。

総理は、経済戦略会議の最終報告を、今後どのように各省庁を指導し実現していく決意か、答弁を求めます。

経済戦略会議、「二十一世紀日本の構想」懇談会、少子化への対応を推進する国民会議、ものづくり懇談会、社会保障構造の在り方について考える有識者会議、教育改革国民会議など、次々に箱物をつくりながら、その提言をつくるに当たって何らの方向性も示さず丸投げをし、できた結論は一部を適当につまみ食いするのみで、重要な改革は行わず、そのまま放置するという、無責任で無内容な政治こそが小渕政治の本質ではないでしょうか。これでは、国民は将来に期待を持てないだけではなく、目の前の景気もよくなるはずはありません。

今政治に求められているのは、第一に、将来への確信、二十一世紀への新しい展望を持たせるだけのビジョンの提示であり、そして第二に、そのために今、勇気を持って、変えるべきものは変える、改革するという国民への説得とリーダーシップだと思います。

総選挙を近くに控え、今さえよければという考えがまかり通る現状を心から憂え、今も大切だが未来はもっと大事という選択肢を国民の皆さんに提示して、私の質問を終わります。(拍手)




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