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1999.01.27|国会会議録

145回 衆議院・予算委員会

岡田委員 民主党の岡田克也です。

時間も限られておりますので、端的に聞きたいと思いますから、端的にお答えいただきたいと思います。

まずは野田大臣、政府委員制度の廃止の問題でありますが、この問題につきましては、私どもの菅代表が一昨日質問をいたしまして、それなりのお答えは野田大臣及び総理からいただいているわけでありますが、私は、まだ若干のあいまいさが残っている、こういうふうに、拝聴しておって思いました。議事録を確認しても若干のあいまいさがあると思います。

そこで、端的に聞きますので、イエス、ノーではっきりお答えをいただきたい、そういうふうに思いますが、政府委員制度で自自の合意は、参考人、つまり政府の職員を国会側の要求によって出席させることができるというのが自自の合意であります。もうちょっと詳しく言いますと、「執行状況・技術的説明のため、国会側からの要求により、政府職員を参考人(仮称)として出席させることができる」ということであります。

問題は、この国会側の要求によりということの意味であります。この意味を野田大臣にお聞きしますが、ここで言う国会側というのは質問者である、つまり、質問者の意に反して政府職員が答弁をすることはない、こういうふうに考えていいかどうか、野田大臣の御意見をお聞きしたいと思います。

野田(毅)国務大臣 今、岡田委員申されたとおりであります。ここが一番大事なポイントでして、質問者の要求もないのに、勝手に委員長が政府委員を今までなら指名をしてということがあり得たわけです。逆に言うと、一方で、これは国会法の第七十条で、現行の政府委員は、言うなら、権利として、国会に通告すれば出席し、発言することができるという裏づけがあったわけです。そういう点で、それじゃよくない、どういう名目であれ、そういうことはやらないということなんです。

岡田委員 ということは、例えば、質問者、私が説明員を要求しないにもかかわらず、委員長が指名をするとか、あるいは委員会の理事会で多数決で決める、こういうような形で答弁をさせるということは一〇〇%ない、こういうことでよろしいですね。もし、よろしければ、総理も同じ考えかどうか、確認をしておきたいと思います。

野田(毅)国務大臣 これは、そういう考えであります。ただし、そのときに、ぜひここはお互いしっかり頭に置いておきたいと思います。委員会の運営も変わるんだということもあわせて行われるということです。

今のように、一方が質問側で一方が受け身側でという、いわゆる一方通行的なことではなくて、議会運営そのもの、委員会運営そのものが双方向の議論になるということ、これが大前提であるということでなければ、この議論は成り立たないんです。そういうことをぜひ、現行の委員会のやり方が根本から変わるんだということもあわせて御理解を願いたいと思います。

岡田委員 委員会が双方向になるというのは結構なことだと思います。そのとおりだと思います。

もう一度総理に確認しますが、質問者が求めないのに政府職員が答弁をすることはないという点について、そのとおりだという確認をしていただきたいと思います。

小渕内閣総理大臣 プロジェクトチームで合意したことは、そのとおりであると思います。

岡田委員 プロジェクトチームで合意したかどうかではなくて、総理としてそういう考え方であるかどうかを確認しているんです。

小渕内閣総理大臣 基本的考え方はそのとおりだと思います。

岡田委員 この点が非常に大事なポイントであるということは、野田大臣おっしゃるとおりであります。

今かなり明確なお答えはいただいたと思いますが、この点について、もしこれが実現しないということになりますと、野田さんはこの責任者ですよね。閣僚の中での政府委員答弁の責任者であるというふうに聞いておりますが、野田さんが先ほど答弁されたとおりのことが実現されなければ大臣をやめるぐらいの決意を持ってこれをやっていただく、こういうことで理解をしておきたいと思います。

次に参ります。

国連の平和活動の位置づけについてお聞きしたいと思います。

きのうから何度か議論もあり、そして内閣の考え方というのも示されておりますが、まず、この自民・自由合意の中で、従来の憲法解釈が変わったのか変わらないのかという点について総理に確認したいと思います。

従来の自由党の考え方というのは、国連決議に基づく多国籍軍への参加とかあるいは国連軍への参加というのは、これは憲法九条の問題ではない、憲法前文からくる話であって、したがって、場合によっては、武力行使も含めた幅広い範囲でそれに参加することが憲法上は可能であると。それに対して、そういう国連の決議がない場合についてはかなり抑制的に、従来政府が考えてきたよりもむしろ狭く、九条を厳格に運用する、これが自由党の小沢党首の議論であります。

そういう考え方はこの自民・自由の合意では採用されなかった、つまり、従来の政府の憲法解釈がそのまま通った、こういうふうに考えてよろしいのでしょうか。

小渕内閣総理大臣 今般の自自合意におきましては、従来の政府の憲法解釈を変更しない点で一致をいたしており、政府としては従来の憲法解釈を変更する考えのないことはしばしば申し上げておるとおりでございます。

岡田委員 そうすると、野田大臣、今の総理の御答弁のとおりだとすると、自由党の主張というのはどこへ行ったのか。憲法論、解釈論を変えないということになりますと、自由党の主張は全面却下された、憲法に関しては全面却下された、こういうふうに考えられますが、そういう理解でよろしいですか。

野田(毅)国務大臣 自由党の憲法に対する解釈は、それはそれとして厳然としてあって結構だと思っています。しかし、そのことと、現実の、具体的にどういうような政策判断を下すかということとはおのずから違ってくることだと思っています。

そこで、この連立内閣をつくるに当たって、自由党の今までの解釈は解釈として、連立政権に当たっては、今日までの政府の憲法に対する見解を前提とする中で連立政権をつくった、こういうことでありますから、私としては、連立内閣、小渕内閣の一員として政府の憲法解釈に従っていこうということと同時に、自由党においても、その政府の憲法解釈という枠の中でこれからのさまざまな事柄、法案等について対応していこう、こういうことであります。

岡田委員 今まで例えば小沢党首がテレビ等で何回も述べてきたことは、従来の憲法解釈が非常にあいまいでずるずる拡大していく、そういうことをやめて、きちんとルール化しなきゃいけないんだ、こういうことを言っていますね。

ルール化するということは、それは、小沢党首言うところの、国連決議がある場合にはいいけれども、国連決議がない場合には抑制的にやるんだ、こういうことをおっしゃっていると思うんです。その憲法解釈がとられなかったということは、じゃ、小沢党首みずから認められるように、ずるずる拡大する危険があるものに合意したということになりませんか。

野田(毅)国務大臣 私どもはそうは理解しておりません。

ただ、その点で、今までの憲法解釈等について、いわゆる湾岸戦争のころに行われた説明というものと、今回、ガイドラインに基づく周辺事態法に関連する解釈の問題について、前回までそれほど十分な整理がなされなかった説明の事柄が今回はきちんと整理をして説明ができるという、言うならそこのところの説明ができたという理解の上でやっておるわけでありますから、そういう点では、私どもは、この政府の解釈のままでずるずると拡大解釈的なことにつながっていくということにはならないという歯どめができたと思っています。

岡田委員 今おっしゃったのは個別具体的な話でありまして、従来自由党が言っていたのはそういう話じゃないはずですね。ですから、国連決議がある、ないできちっと分けて、そういう議論がいいかどうかは別ですよ。しかし、国連決議がない場合には憲法九条というものを非常に厳格に運用していく、そして、従来政府がやっていたことはそれがかなりいいかげんだ、こういうことを言っていたわけですから、そういう解釈をとらなかったということは、私は政策合致していないと思うんですね。だから、政策に基づいて、政策が一致するからその実現のために自自連立をつくるんだとおっしゃりながら、ここの政策が全然一致していないのになぜ政策合意なんということを言われるのか、私は全く理解できないんですが、いかがでしょうか。

野田(毅)国務大臣 今回、憲法上できることと、それから政策判断としてやること、やらないことということの整理ができたわけであります。そういう点で、私は、政策の一致というか、これは完全にできたと考えております。当然のことだと思います。

岡田委員 政策と憲法を分けられたけれども、憲法をどう考えるかなどというのは一番政策の基本のところじゃないですか。そして、従来、そのことを自由党の中では国連安全保障という概念を用いて盛んに説明してこられたわけでしょう。それが全部憲法論としては却下されて、それで合意するというのは、これは野合そのものじゃないですか。

野田(毅)国務大臣 民主党の岡田さんからそういうことを聞くとは思わなかったんですが、民主党の中でも憲法に対する解釈が随分違うんじゃないでしょうか。

私は、国会に憲法調査委員会を置くか置かないかについても、現にこの前、民主党の中でも随分議論の違う意見が公に表明されていることだと思っています。私は、そういう点で、憲法についての解釈が云々ということだけで今のようなお話になるのはいかがかというふうに思いますよ。

岡田委員 憲法についていろいろな考え方があるというのは、それは民主党もそうですけれども、自由党も自民党も同じだと思います。問題は、今回の自自合意、そして連立政権をつくった理由が、政策が一致したことをもって、その一点で合意したんだというふうにおっしゃるから問題になるわけですよ。政策が一致していないのにそういうことをおっしゃっているということは、それは国民を欺いていることになるんじゃないですか、そういうことを申し上げているわけであります。

野田(毅)国務大臣 政策一致していないということを盛んにおっしゃりたいようですが、少なくとも安全保障の基本的な考え方についても公表いたしております。そういう点で、未整理であったところについて、特に国連の平和活動への我が国の参加、協力のあり方についてここまでちゃんとしておるわけでありまして、私は逆にお伺いしたいんですよ。民主党は、ではこのことについてこれだけのことをあなた方は自分の党で書けますか。そういったことについて、全体、大きく四項目にわたって、安全保障の基本的考え方について両党間で現に合意しているわけです。

それから、周辺事態法に関しても、一刻も早くこれを整備するということ、成立させなきゃならぬということにおいて、率直に言って、今日本が置かれている環境から見て、皆さんはどうお考えになっているかわかりませんが、私は、本当に大事な、最優先課題の一つでもあるという認識をしています。私は、この点は両党における非常に大事な認識の一致の一つでもあると思っていますよ。

岡田委員 民主党の安全保障政策は、今非常に幅広い視点で議論をしておりますので、幅広い視点という意味は、意見が違うということじゃありません。自民党も自由党も議論していないような根本的なところに踏み込んで議論している、そういう意味であります。したがって、それは間もなく私どもとしてお示しできると思っております。

いずれにしても、今私が申し上げた、憲法について基本的な違いがある、そういう中での政策本意の連立などというのは、私にとっては理解できないということをまず申し上げておきたいと思います。これはまた後でやります。

憲法解釈は棚上げして自自連立ができたということでありますが、その上で、では政策は一致しているのかどうかということについてお聞きします。

政策論として、武力行使、それからそれに一体化するものというのは、これは憲法九条でできない、こういう考え方に政府は立っておられると思いますけれども、そのときに、武力行使及びその一体化の範囲というものが、国連決議がある場合と国連決議がない、例えば日米安保とか、あるいは自衛隊が独自に動く場合で、その範囲というものは異なるのでしょうか、それとも基本的には一致するのでしょうか。総理。

小渕内閣総理大臣 これは一致をしておるものと考えております。

岡田委員 一致をしているということですね。

そうすると、国連決議がある場合と国連決議がない場合の、その憲法上禁じられている武力行使及びその一体化したという範囲は一致している、こういうことでありますが、官房長官はそれでいいのですか。

官房長官のきのうのいろいろな記者会見とかを読んでおりますと、そこを分けておられますよね。きのうの記者会見の中では、国連決議に基づく多国籍軍等の場合については、それは日米安保の上に立ったものではない、国際連合の活動に対する問題でありますから、そこのところは一概に、戦闘行為、武力行為に一体化しないという状況の判断というのが非常に難しい、慎重を期すべきだ、こういうことを言っておりますね。

ということは、官房長官は、昨日の記者会見で、国連決議がある多国籍軍の場合には、むしろ憲法の禁ずる武力行使及びその一体化する範囲というものを広くとって、より慎重に考えるべきだ、こういうふうにおっしゃっているというふうに私は理解しましたが、違うのでしょうか。

小渕内閣総理大臣 実は、御党の菅代表の御質問のときに、いわゆる多国籍軍と、現下国会で法律制定をお願いいたしておりますガイドライン法とやや混同した形で受け取られた点もございましたので、その点につきまして、政府としての統一的な見解を明らかにいたしたわけでございまして、大変恐縮でございますが、改めて、誤解を招かないように、岡田委員十分御承知のところだと思いますが、この点について、政府の考え方を明らかにさせていただきたいと思います。

いわゆる国連平和活動における多国籍軍、多国籍軍という言葉がまず出てまいりますものですから、一体多国籍軍とは何ぞやという議論なしにお話が展開していったという点もございます。そこで、こうした多国籍軍の概念がそういう意味で実ははっきりしておらないということではありますが、いわゆるということで申し上げさせていただければ、その多国籍軍に対する後方支援について、周辺事態安全確保法案にある後方地域支援とは異なる。先ほど申し上げましたように、この点は全く異なっておる。

そして、同時にまた、法律も実は作成をされておりませんで、いわゆる多国籍軍に対する後方支援でございますが、そういう意味で、具体的な関与のあり方については今後検討を進めていく問題であるとは承知しております。政府としては、国会にお諮りしておりますこのガイドライン、指針関連法案でありまして、まずその点についての議論をお願いいたしたいと思っております。

そうした前提で、一般論として申し上げれば、憲法上、多国籍軍にいかなる後方支援をなし得るかについては、個々の具体的ケースにおいて、武力の行使と一体化するかどうかという観点から判断されるべきものである。さらに、実際に多国籍軍に対する武器弾薬の輸送を含めいかなる後方支援を行うかについては、憲法解釈上の問題を加えまして、諸般の情勢を総合的に勘案した上で慎重に判断すべきものと考えております。

憲法上、このような多国籍軍に対する後方支援も、周辺事態安全確保法に基づく米軍に対する後方地域支援も、武力の行使と一体化するか否かという観点からその可否を判断するものでありまして、しかし、既に具体的な法案を国会にお諮りしておる周辺事態に際する日米協力と、法律すら作成されていない多国籍軍に対する支援を一概に単純に比較するのは極めて困難であり、いずれにせよ、政府としてはまずは指針関連法案についての御議論をお願いしておるところでございますが、お尋ねがありまして、この多国籍軍に対する武器弾薬の支援についてということでありましたので、私はそのときに、行為と一体化しないということにおきまして、憲法上の解釈におきましてはこれは許されるものであるという答弁をいたしました。

しかし、実際に政府としてどういう行為を行うかということにつきましては、最初申し上げましたように、多国籍軍そのものについての概念の規定がまだはっきりしておらないこともあり、法的整備もされておらない、当然のことでありますが。

でございますので、官房長官が記者会見におきまして、現政府としてはそのような考え方をしておらないということを申されたことが、政府における不一致ではないかという御指摘がありましたが、私としては、私が答弁したことと官房長官が記者会見で申されたことには何らの閣内における基本的考え方に相違はない、私は官房長官の発言もそのままに理解をしておる、こういうことで御理解いただきたいと思います。

岡田委員 今の御説明で、憲法上の制約と、それから政策的といいますか、これは当然法律が要ると思いますが、法律上あるいは政策的にこうするというのはこれは別だ、こういう論理であります。

そこで、官房長官にお聞きしますが、それじゃ国連決議に基づく多国籍軍の行動というのは、憲法上の問題はちょっと別にしまして、政策論として、あるいは法律上、それはより慎重に考えるべきだというふうに官房長官はお考えなんでしょうか。

野中国務大臣 今総理が申し上げたとおりでございまして、たとえ憲法が許容する範囲であったとしても、またその前提として多国籍軍は概念が明確でもないわけでございますから、たとえの例として憲法が許容する範囲であったとしても、その行動についてより慎重であるべきということは、先ほど総理が申し上げたとおりでございます。

岡田委員 官房長官のお考えは、一つの論理としてはわかるわけでありますが、もちろん多国籍軍が性格がはっきりしないというのは、国連決議に基づく多国籍軍という前提での議論だということであります。

私は野田大臣にちょっとお聞きしたいのですが、今官房長官の言われたことは自自合意とちょっと違うのじゃないですか。自自合意の中ではこう書いてあるのですよね。国連の決議があり、かつ要請がある場合には、「武力行使と一体化するものでない限り、積極的に参加・協力する」。官房長官はより慎重だとおっしゃるし、自民・自由合意は「積極的に参加・協力する」と書いてあるし、ここはどうなんでしょうか。

野田(毅)国務大臣 私は、そこのところは似たようなものだと思っています。それは、多国籍軍というと非常に、何か単一の、この前の湾岸戦争のときのことだけをイメージしがちであります。しかし、実際問題、今、今日はそういうものは存在していませんし、今後どういう形で、本当に国連憲章に基づく国連軍の構成に極めて限りなく近いような形での多国籍軍ということもあり得るだろうし、一体世界じゅうのどれだけの国がそれに参加するのか、あるいはわずか数カ国で構成されるのか。そういう意味で、実際にこれから発生する可能性がある多国籍軍というのはどのようなものであるのかということを、今からあらかじめ特定の形だけを想定することはなかなか難しいのではないか。

そういった点で、その必要性が一体地球上のどこで発生するのか、あるいは日本が国連からの要請としてどういう場面で協力の要請をされるのか、どういう部分の協力を要請されるのか、そういったさまざまなことを考えた場合に、当然日本の持っておる能力ということと無関係に要請があるとも思えない。要請の内容ということとも関連するわけであります。

そういったことを前提として行われた場合には積極的に参加、協力していいんじゃないですかということであって、何かそういうことが発生した場合に、常にアグレッシブにどんどんやっていけということを自由党として言ってきたことではないのであって、そういう点で、今後、どういうことがあるかわからないものを想定して、無理に何でもいつでもということじゃなくて、今官房長官が申されたように、そういった具体的なことを頭に置きつつ、やはり物事というのは慎重に検討していっていいんじゃないかというのは、私はそれで結構なことだ、何ら矛盾する話ではないと思っています。

岡田委員 いろいろ後から理屈をつければ何でも言えるという一つの例だと思いますが、少なくとも自自合意の中にはそんなことは何も書いていないですよ。国連の平和活動への参加については、国連の総会あるいは安全保障理事会の決議があり、かつ要請がある場合には、「武力行使と一体化するものでない限り、積極的に参加・協力する」と、何の条件もついていないのです。むしろ積極的にやると書いてあるじゃないですか。それを今になって、国連、多国籍軍の中身がどうかとかいろいろ言われたけれども、そんなこと全然条件になっていないじゃないですか。

むしろ今まで、例えば、自由党、私は自由党の中の議論は知りませんが、新進党時代とか、小沢一郎さんが言ってきたことは、これは憲法九条の問題じゃない、なぜないかといえば、国権の発動じゃないんだと。つまり、国連が言ってきたら無条件に基本的には受けるんだ、だから、国権の発動じゃないから憲法九条の問題じゃないんだという論理を構成してきたじゃないですか。

今のお話で、いやいや、国連が言ってきても、いろいろな条件をつけて、オーケーするかどうかもわかりません。いろいろなことを言い出したら、それは憲法九条の問題になってきますよ、国権の発動になってきますよ、違いますか。

野田(毅)国務大臣 そういう議論にならないように、私は、決議があった場合だけじゃなくて、要請があった場合ということをあえてこの合意の中で大事なことの一つとして申し上げたわけであります。

それからもう一つ、日本が自分の持っているいろいろなそういう意味での能力を超えて、幾ら国連決議があったからといって対応できるわけがないんですよ。そういったことを考えれば、新進党時代から何もアグレッシブに、国連決議があれば行け行けどんどんでいきましょうという話をしていたのではないと私は思っています。この点ははっきり申し上げておかなきゃならぬのですよ。

ですから、そういう点で、何か国連決議があればどんどんやっていくんだよと言わんばかりの自由党であると思われたら、それは全然違うことであるということは申し上げておきたい。

岡田委員 何でも理屈をつければつけられると思うのですが、野田さん、一つだけ指摘しておきましょう。

朝日新聞の一月十六日、これは大臣になった後のインタビュー記事ですね。ここでこういうふうに野田さんは言っているのですよ。国連の平和活動への後方支援をめぐる自民党との合意について、「「戦闘地域における補給・輸送はやらない」が限界点、ということを明確にした。そうでないところは構わない、という判断をしたということだ」というふうに言っておられるのですね。

つまり、戦闘地域における補給、輸送以外は基本的にやるんだということをインタビューで野田さんは言っているんですよ。今の答弁と全然違うじゃないですか。これは自治大臣になってからの答弁ですよ。どうなっているんですか。

野田(毅)国務大臣 憲法上できる、できないということと、やる、やらぬという判断は別問題であるということが一つであります。

そういう点で、戦闘地域における補給、輸送ということは、我々、憲法上の問題としてもこれは除外をしようということで合意をしたわけであります。それ以外については憲法上の問題ではないので、政策判断としてそれが適切かどうかという判断になるわけです。そのことを申し上げておるのであって、何らその点は矛盾はないと思っています。

岡田委員 その前提として、憲法上認められるものは基本的にやるんだというのが自由党のお考えだったんじゃないんですか。つまり、憲法に触れるもの以外は基本的に積極的にやっていくというのが自由党の御主張であり、かつ自自合意でも、「武力行使と一体化するものでない限り、積極的に参加・協力する」と書いてあるんですよ。そこは先ほどの官房長官のお話、総理のお話と違うじゃないですか。

野田(毅)国務大臣 そういう意味では、今回の周辺事態法などにおいてその部分が入っているわけでありますが、私どもは、だからそれは必要なことだと思っていますし、しかし、やはりそのときの状況によって違うんじゃないですかね。そのこと自体、日本が積極的にそういう形での協力をする必要性がある場合と、それからそこまでの必要性がない場合というのは、それぞれのケースにおいて私は異なった判断がなされて当然だと思うんですよ。

しかし、そのときに、最初から、あらかじめ逃げ腰でもって、そういう責任逃れ的な格好で対処するのか。私は、もう少しニュートラルな判断があっていいんではないか。今までは何じゃかんじゃ言いながら、言うなら国際社会における責任をあえて避けてきたという側面があったのではないんでしょうかという反省に基づいて、はっきりしておきたいということであって、頼まれもしないのに行け行けどんどんでやろうなどとだれも言っていませんよ。

岡田委員 野田さんは極論を言われるわけですが、もう一回最初から議論を整理しますと、基本的に、国連決議がある場合とない場合で分けるという考え方がまず憲法上あるが、それは今回の自自合意ではとらなかった。したがって、憲法は自民党の憲法解釈に立った上で、しかし、政策的に、国連決議がある多国籍軍や国連軍の参加については積極的に参加するというところで、そこで自由党の意図するところを確保した、最初はそういうお話だったと思うんですね。

ところが、それでは具体的に、そういった国連決議がある場合には積極的に参加するんですか、こう聞くと、確かに自自合意ではそういうふうに書いてあるが、今野田さんのおっしゃっていることは自民党の言っていることと全く変わらないわけで、どこに自由党の独自性があるんですか。政策が一致したから、政策が大事だから、自分たちの政策を実現するために連立を組んだとおっしゃいながら、どこに自由党の独自性があるんでしょうか、最後にお聞きしておきたいと思います。

野田(毅)国務大臣 いや、だから合意が成立したんじゃないでしょうか。

自由党の考えをそのままそっくり自民党に受け入れてほしい、小渕内閣として、従来自由党が主張してきたことを受け入れてくださいということで合意が成立したのではなくて、自由党の主張というものは、それはそれでこれからもその考えは変わりません。政府の見解は今までどおりでありました。

しかし、その平行線の中で、では、内閣としてどういうふうにやりますかという中で、いろいろ議論をした結果、一番こだわりがあった一つは、湾岸戦争のときにはできないと言われたことが今度はできるようになっているのは一体どういう背景なんでしょう、やはりここだけははっきり説明できるようにしなければいけませんねという中で、それは憲法解釈の変更によってそうなったのではなくて、言うなら、当時はまだ議論が十分に整理されていなかった、未整理。言うなら、そういう点で疑わしいというようなところもあった。

それがやや憲法上の制約という形でできないというイメージにもつながっていたので、この機会にきちんと整理をしました、その整理した結果が今回の合意の内容である、こういうことでありますから、それは我々というか自由党としても、そういうことであれば結構であります、小渕内閣の見解で結構でございますということで合意が成立したわけでありますから、私は何ら問題はないと思いますよ。

岡田委員 自由党の主張をそっくり受け入れられるはずがないというお話ですが、この今のずっと一連の議論を聞いていた多くの方は、自民党の主張がそっくり入っている、そういうふうに考えられるだろうというふうに思います。

さて、では、次に参ります。

ちょっと飛び越して、ガイドラインの問題についてお聞きしたいと思いますが、これは確認ですが、外務大臣、この周辺事態法の中で、従来から安保の枠内とかいろいろな議論がされているわけでありますが、こういう場合というのはこの周辺事態法上認められるかどうかというお聞きの仕方をしたいと思います。

つまり、あるところで周辺事態が発生しました。そして、そのときにアメリカは中立を宣言しました、これは関与しないと。そのときに、日本が独自の判断で基本計画をつくり、そして、ここの後方支援というのは、これはアメリカがなければできませんから、それはできないのですけれども、後方地域捜索救助活動や船舶検査活動に乗り出すということは法律上できますか、できませんか。

野呂田国務大臣 御質問のような事態はなかなか想定しにくいのでございますが、まず、安保条約第六条は、日本国の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する旨が明記されております。この日米安保条約に基づく日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保するためにガイドライン、日米防衛協力のための指針が策定されておるわけであります。そのガイドラインの実効性をさらに確保するために、今回、この周辺事態安全確保法案を提案しているところであります。そのような意味で、周辺事態安全確保法は日米安保条約の目的の枠内であるということが明言できます。

だから、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼすようなことが、そういう周辺事態が起こった場合にアメリカが協力しないということは、あり得ない想定であると私は思います。

岡田委員 法律上できるかどうかということを聞いているわけであります。アメリカは、それは最後はアメリカの国益もありますから、そういう周辺事態に、日本そのものを守るということは、これはアメリカの安保条約上の義務ですよ。しかし、そういう周辺事態で、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすということがあった場合にも、それは日本そのものに対する攻撃ではないということで、アメリカが中立宣言することは十分想定できるのじゃないですか。そういう場合に……(発言する者あり)法律の話をしているのです。そういう場合に、この法律で日本が独自に活動することは可能ですか、不可能ですかと聞いているのです。

高村国務大臣 ほとんどあり得ない想定で、余り意味のあることだとは思いませんが、法律的に絶対できないわけではない。それは、日本の平和と安全を脅かす事態が発生した場合に、後方支援でない幾つかの行動が絶対できないわけではないが、余りあり得ない想定だと思います。

岡田委員 しかし、法律というのはきちんとどうするかということを決めておかなきゃいけないわけですが、先日来総理初め皆さんが御答弁されているように、この周辺事態法というのが安保条約の実効性を確保するための法律である、そういうふうに断言されるのであれば、そういう穴をふさいでおくということに、法律上穴をふさいでおかなきゃいけないということになりませんか。いかがでしょうか。

高村国務大臣 目的の枠内だということを何度も申し上げているわけでありまして、目的の枠内というのは、安保条約の目的が日本の安全と極東の平和と安全、こういう二つのことがあるわけでありますが、周辺事態はその中の日本の平和と安全ということに着目しているわけでありまして、そういう意味で目的の枠内ということを何度も申し上げているわけであります。

岡田委員 日本の安全とおっしゃるけれども、六条というのは必ずしも日本そのものの安全ということじゃないですよね。ですから、私は、今言ったような、これはここできょうはやめておきますが、この法律は不備がある。もし安保条約の枠内だとおっしゃるのであれば、その不備は何らかの方法で防いでおく必要がある。もし、そうじゃなくて、これは安保条約の実効性確保の法律だけじゃなくて、日本が独自に判断し自衛隊が活動することも認めた法律である、そういうふうにおっしゃるのなら、今までの安保の枠内だという答弁を取り消していただきたい。どっちにするのかということを私は問題提起をしておきたいと思います。これはなおこれからいろいろ議論していきたいと思っております。

それからもう一つ、この周辺事態法では、自衛隊法の九十五条が排除されておりません。武器の防護のための武器使用という規定が公海上でも適用される、こういうことになるわけでありますが、そのときに、従来、政府の統一見解がありますね、武器使用と武力行使についての統一見解。資料をお配りしてございます。平成三年九月二十七日、これはPKO法の審議のときかなり焦点になった問題で、さんざん議論した結果こういう統一見解が政府から出されたということであります。

この統一見解の中で、なぜPKO法で武器の使用が認められるかということに対して、二の最後のところで言っているわけですね。「自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、」憲法九条一項で禁止された武力行使には当たらない、こういうことであります。

武器の防護のための武器の使用というのは自然権的権利ではないというふうに常識的には考えるわけでありますが、そうすると、この平成三年九月二十七日の政府の統一見解では読めないはずです。現実に、PKO法では武器の防護のための武器の使用というのは排除されているんですね、適用が。今度は排除されておりません。そこのところについて、基本的にどうお考えなのか、政府の見解をお聞かせいただけますか。

野呂田国務大臣 今お話のありましたものは平成三年九月二十七日の政府統一見解でございますが、憲法第九条の一項の武力の行使について定義をした上で、国際平和協力法第二十四条の武器の使用が武力の行使に当たらない理由として、例えば、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の武器の使用は憲法九条一項に禁止された武力の行使には当たらないとしたところであります。

この見解においては、自己保存のための自然権的権利に基づく武器の使用は、武力の行使に当たらない武器の使用の例として挙げられているのでありますが、武力の行使に当たらない武器の使用をこれに限定する趣旨ではないと思います。

他方、自衛隊法第九十五条に規定する武器の使用は、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段が破壊、奪取されることを防ぐため、武器等の警護を現に担当している自衛官に認められた武器等の防護のためのあくまでも受動的なものであります。また、正当防衛や緊急避難の条件を満たす場合でなければ人に危害を与えてはならないという極めて限定的なものであります。このような武器の使用は、自衛隊の武器等という我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を破壊したり奪取したりしようとする行為から当該武器等を防護するための必要最小限の行為でありまして、憲法の禁ずる武力の行使には当たっておらず、憲法上の問題を生ずることはないと思います。

このように、平成三年九月二十七日の政府見解と自衛隊法第九十五条とは相反するものではないと私どもは考えております。

岡田委員 これも次回以降に持ち越したいと思いますが、今の御答弁は、参議院の本会議で本岡議員の質問に対して総理がお答えになったのと同じだと思いますが、しかし、最小限だからいいんだというのは、これは理屈にならぬだろうと私は思いますよ。今までは、自分を守るための自己保存のための自然権的権利ということで、いわば憲法があるにもかかわらずそれはいいんだという法律構成をしておられたのに、最小限だからいいんだというのは、それは非常に無理がある。

私も、この自衛隊法九十五条が適用されるということは必要かなという気持ちはしているのです。しかし、だからといって、この従来の政府の統一見解では読めないと思いますから、そこのところをもうちょっときちんと、武力行使との関係を整理していただきたい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。

これは、例えば、艦船なんかが行って、その艦船が攻撃されたときに、その艦船そのものの防護ということもこの九十五条に入ってくるわけですから、そのときにどこまで反撃していいのかという問題でもあるわけですね。かなりこれは微妙な問題を含みますから、これからの国会審議でさらに詰めていきたいと思いますし、政府の中でもよく御検討いただきたい、そういうふうに思います。

時間がないので、次に、ちょっと経済問題、一つ参ります。

宮澤大蔵大臣、きのうもちょっとお話しになっておられましたが、一―三月の景気の動向というものがこれからの景気回復を図る上で非常に重要だ、こういうふうに認識を新聞のインタビューとか記者会見でお述べになっておられますが、基本的に、どうして一―三月が大事だというふうにお考えなのか。時間がございませんので、端的にお話しいただけますか。

宮澤国務大臣 三月は、御承知のように企業においての決算期でございますが、経済の動きに関係なく決算は過去の業績を反映いたしますので、したがって、どうも今度の決算というものはかなり暗いものにならざるを得ないだろう。企業のマインドは、したがってかなり暗いと思っておかなきゃなりませんが、そのことがいろいろ雇用の問題に影響するのではないか。大企業間では労使のいろいろな交渉が行われる時期ですが、それに限らず、中小企業を含めて、雇用のところで、どうか労使でもう一辛抱してもらいたいという、その問題を一番心配しております。

もう一つは、金融機関に対して公的資金の導入が行われるちょうどその時期でございますので、これが国民が納得するような形でできて、金融機関への信頼が確保されるかどうかというのもこの時期でございますので、そういう意味で申しております。

岡田委員 そこで、一―三月非常に大事だ、しかし、どうも一―三月はかなり消費中心に厳しいことになりそうだ、こういう話もあるわけですが、私は総理にお聞きしたいのですが、所得税の減税、これはさすがに十二月とは言えずに六月ですか、前倒しということになったようですが、本来は、これは一―三月の減税なんですね。どうして、一月から減税するような、そういう意思決定をされなかったのでしょうか、総理。

宮澤国務大臣 多少技術的なことがありますのでお答えを申し上げますが、前回も申し上げましたが、源泉徴収票の問題でございます、端的に申しますと。

源泉徴収票は、税法が確定をいたしましてから二カ月たちませんと、源泉徴収票が実際に使われるようなことに事実上できないという問題がございます。したがいまして、一月の減税を源泉徴収票でいたしますためには、十一月あるいは十月には少なくとも法律が確定していなきゃならないというどうもやむを得ない事情が、民間にお願いをしている、それも大企業あるいは一人二人の企業はよろしいのですが、中のところがどうしてもそれが無理であるということから、現実には十一年の所得から減税が行われるにもかかわらず、普通一―三が年末調整になってしまう。

それについて御批判がありまして、今度は、とにかく二〇%大体引けばいいはずでございますから、定率でございますから、それだったら六月でもできるではないか、これがぎりぎりのところでございました。

小渕内閣総理大臣 今大蔵大臣が御答弁をされましたことが、技術的な問題も含めまして極めて困難な問題でございました。

しかし、景気回復という意味から考えますれば、経済界を含めまして、第四次補正を行ってまで法人課税の前倒しをすべきだという議論もございました。

ただ、この問題について、私は、総裁選挙で申し上げたことについて、公約違反でないかという大変御批判もちょうだいいたしておりますが、それ以降の二つの臨時国会におきましても、これは今申し上げたような理由も含めまして十一年度からの税制改正でお願いをいたしたいということを申し上げておりますので、いろいろとこれは御主張はございましたけれども、この問題を、十年度の中での補正によって税制改正を行い還付を行うというようなことはなかなか困難であるということにつきまして、御理解をいただきたいと思います。

岡田委員 私は、今所得税について議論しているのですが、宮澤大臣おっしゃるように、準備に二、三カ月かかる、それはそのとおりであります。そんなことは前からわかっているわけですね。

それなら、どうして総理が総理に御就任になった直後から――大体、所得税の減税の骨格は総裁選挙でみずから明らかにしておられたでしょう、その次の臨時国会の冒頭でもお話しになったわけでありますから、もうわかっていたわけですね。残っていたのは、国と地方の調整の問題でありますとか細かい技術的な話でありますから、それを早急に詰めて、どうして前国会かあるいは前々国会に所得税法の改正案を出して一月一日から実施できるようにしなかったのか、そこが問題だと思うんです。空白の三カ月があるわけですよ、そこに。

この一―三月、大変重要な時期だと宮澤大臣もおっしゃったけれども、私もそう思います。この一―三月にもし景気が失速するようなことがあれば、私はこの所得税の減税が一―三月に現実にできなかったということが決定的になると思うんですよ。そこに私は総理の責任というのが当然出てくると思いますが、この点につきましてはなお引き続き追及したい、こういうふうに思っております。

いずれにしても、一―三月景気が失速するようなことがあれば、これは減税が現実にできなかったということが非常に大きい。そして、それは小渕総理自身の決断がおくれたことによるものだということを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。




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