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1998.10.12|国会会議録

143回 衆議院・金融安定化に関する特別委員会

岡田委員 民主党の岡田克也です。

それでは、順次質問していきたいと思いますが、まず大蔵大臣に少し質問をしたいと思っております。

先週の金曜日に、民主党は、政府に対しまして、早期健全化勘定への三十兆円、そして再生勘定への二十兆円、合計五十兆円の政府保証枠の確保のための予算措置をとるべきだということで申し入れをしたところでございます。もちろん、これは単に金額を確保するというだけではなくて、その前提条件がいろいろついておりますが、そのことはまた後で申し上げたいと思いますが、予算措置によってこういった五十兆円の資金枠を確保するということについて、大蔵大臣はどのように評価しておられるのか、考えておられるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

宮澤国務大臣 先般、再生法の御審議がございましたときに、いわゆる十三兆円というものが根拠を失ったわけでございますが、それにかわりまして再生化あるいは健全化のためにどのような金融措置が要るか、財政措置が要るかということは残された問題であったわけでございます。

したがいまして、非常に大きな問題であります再生化あるいはまた健全化等のために十分この施策が行われますように、不安のない財源措置あるいは保証措置等々は当然必要であるというふうに考えておりましたので、先般、そういう御提案があったということを承知いたしまして、具体的にどのような金額が最適であるかはともかくといたしまして、相当大きな国としての準備をしなければならないという御主張は、私は当然のこととして承っております。

岡田委員 今御答弁の中で、具体的にどの程度の財源措置あるいは保証が必要かということは別としてという趣旨の御答弁がございました。

これは新聞報道でありますが、政府の経済戦略会議においても、今年中に数十兆円の公的資本投入を行うべきだという議論がされている、こういうお話も伺うわけでありますが、数十兆円というからには、何らかの根拠があってそういうお話が出てきているはずであります。

私どもは野党でありますし、検査権限もございませんから、一定の仮定に基づいて二十兆、三十兆、合計五十兆という数字をとりあえず出させていただいたわけでありますが、少なくともその程度のオーダーの、つまり数十兆というからには十兆よりは多い、上十兆、三十兆、四十兆というオーダーの話だと思いますが、それだけのものが必要だ、そういうふうに認識をしておられる根拠、それはどこにあるんでしょうか。

宮澤国務大臣 これからの出来事でございますから、具体的な根拠ということをおっしゃいますと、一つ一つは申し上げられませんが、ただ、再生法の定めておられます法の目的からいいましても、あるいは健全化法が志向しておりますところから考えましても、今後我が国の金融機関が、去るものは去り、そして残るものは残り、また強化されていかなければならないというその一つの淘汰と強化の過程におきまして、金融システムが十分に海外からも信用され、国内からはもとより心配ないというところに至りますのには、かなりの時間とかなりの金融的な援助を、援助でいいのだと思いますが、必要とすると考えておりますし、また、これは余談でございますけれども、先般、G7がありましたときに、このような問題についてルービン長官と議論をいたしましたときも、日本が十分な準備をしてくれることが大変に国際金融の安定のために望ましいことだ、そういう発言もございまして、内外ともに相当のオーダーのものが入り用だという認識は、私は多くの人が持っておられるのではないかと思っております。

岡田委員 先般、日銀総裁が米国において、日本の銀行の自己資本の水準が危機的なレベルにある、一部誤解をされた報道もあったようでありますが、しかし、認識としては危機的なレベルにあるということを発言された、そういう報道もございました。

数十兆のオーダーのお金を準備しなければいけないということは、基本的認識において、日本の現在の銀行、とりわけ大手の銀行の自己資本の水準が実質的には相当悪い状況にある、そういうふうに政府としても認識しておられる、こう考えてよろしいでしょうか。

宮澤国務大臣 この点も確とは申し上げかねますけれども、今、金融監督庁がマネーセンターバンクスの検査をなされつつございます。それによりまして初めていわゆる債権の分類あるいは引き当て等につきまして一つのスタンダードが生まれることが期待されておりますし、また、検査のマニュアルもやがて公表されることがあるかと思いますが、そういう状況はこれからのことでありまして、従来は、各行かなり主観的な分類をしておられるように思います。

そのことは必ずしも分類が誠実でないという意味ではございませんけれども、本来、強制されたスタンダードというものがなければその答えというのは勢い緩いものになりやすいと考えるのには理由があると存じますので、したがいまして、非常に厳しいスタンダードで、今後、殊に連結決算なども含めまして精査いたしますと、今考えられておったことはどちらかといえば甘い方、辛い方ではなかろうというふうな想像はできると思います。

岡田委員 お立場もあってなかなか明確なものは言いにくいということはある意味では理解をいたしますが、しかし、逆に言いますと、そういうことについてきちんとした説明がありませんと、これだけ膨大なお金を、もちろんそれは枠の確保とはいえ、最終的に税金によって担保される話でありますから、そういったものについて国民の納得を得ることは非常に難しい、こういうふうに思うわけでございます。

もちろん、今政府が言われている十兆程度のお金で済むということであればそれはそれでいいわけですが、それではとても足らぬということで先ほどの御発言があったと思いますので、そうであれば、そういう実態にあるということについて、やはり実際に最終的な負担をする納税者である国民に対しても、それなりに納得のいく説明というものが前提として必要ではないか、私はそういうふうに思っているところでございます。

そこで、中身に入りたいと思いますが、先般の本会議におきまして、私の質問に対して、大蔵大臣はこういうふうにお答えになりました。厳しく査定して不足額を正確に算定し、それに相当する額を資本注入するということで金融機関の健全化を一気に図るということはわかるけれども、しかしそれは理想論であって、直ちにそれをすれば信用の収縮を招いてしまう、したがって、それは中長期的な課題として考えていかなければいけない問題だ、そういう趣旨の御答弁をいただいたと思うのです。

それでは大蔵大臣は、ここで言う中長期というのはどのぐらいの時間的な長さ、タイミングをお考えになっているのか。目指す方向というのは、例えば強制引き当てであるとか、あるいは株式に対する時価法なり低価法の採用ということが最終的なゴールとしてあると思うのですけれども、そこに至る道筋としてどのぐらいの期間を考えておられるのかということについてお聞かせいただきたいと思います。

宮澤国務大臣 先般、本会議における岡田委員の御質問は、私が理解いたしておりますところでは、銀行に対してどのような強化策を講ずべきかということについて、政府が今考えていることは、そもそも銀行自身が、本当に厳格に検査をしたときにどのぐちいの自己資本を持っておるのか、政府が思っておるほどそんなに大きくないのではないか、とすれば、本来あり得べき姿は、しっかりそれを検査した上で、一体どのぐらい本当のところの姿は不十分なのか、それに対して、したがってどのぐらいのことを政府として公的資金ですべきか、そういうことを言わずに八%云々という議論は本当は実態に問題があるのではないか、こう言われたと私は理解いたしました。

そのことは、私は、恐らくもう間違いなく、間違いなくは余計ですが、本当であろうと。そうではございますが、しかし、今急にそこを厳しく申しますと、勢い銀行は貸し出しの回収を図ります。これは、図るなと言っても図るわけでございますから、そういう貸し渋りの傾向を助長すると思いますし、また、資産の、殊に有価証券の評価にいたしましても、低価法、時価法、いろいろ厳しくするのが含みを与える意味でいいのだとは思いますけれども、これも直ちに資本の率に反映いたしますから、ここからも貸し渋りの状況に入りやすいということを政策担当者として考えますと、おっしゃっていらっしゃることは、恐らく理念的には一番透徹したお考えであろうと思いますが、にわかにそのとおりいたしにくい事情もございますという意味のことを申し上げたと思います。

それならば、いつになったらそういうことをきちっとやれるときがあるのかといっただいまのお尋ねですが、これは私個人の考えで、だれとも議論いたしておりませんけれども、少なくとも二〇〇一年になりますとペイオフが来なければなりません。そのときには金融機関は、政府あるいは預金保険機構といったようなものに寄っかからずに、お客さんにお約束したことはきちんとやらなければならないはずである、またお客さんもそういうふうに銀行を見るはずでございますから、そのときにはそういう姿になっていてくれないと困ると個人的には思っておるわけでございます。

岡田委員 今の御説明の中で、追加的に少し質問したいと思います。

まず、最後のところで、二〇〇一年にはもうペイオフしなければいけない、したがってそのときにはもう既に、今言ったような形での不良債権というか、特に第二分類についての強制引き当ての問題でありますとか株式等についての低価法なり時価法での評価ということが成り立っていなければいけない、こういうお話だったというふうに思いますが、逆に言いますと、じゃ本当にそれは二〇〇一年なのかという議論だと思います。

二〇〇一年からペイオフだということでありますが、預金者の選別はもう既に始まっている、こう考えていいと思います。特に定期預金の期間、半年、一年あるいは二年ということを考えます

と、もう既に銀行の選別は始まりつつある。これは二〇〇一年になって急に起こるのではなくて、どんどん加速していくという状況の中で、金融機関がきちんと情報を開示しないということは、それは、実はもう既に当該情報開示をしない金融機関はもたない状況になるのじゃないかというふうに一方では思うわけでございます。預金者の方がそういうふうに選別してしまう。

それからもう一つは、預金者の方にとって、ペイオフするということの大前提として情報開示があると思うのですね。現在においては、一千万以上も含めて保護するということの大きな理由の一つに、情報開示が十分行われておらないから預金者というのは判断のしょうがないんだ、こういう御説明が政府の方からも従来あったかと思うのですけれども、二〇〇一年になって急に情報開示されたのでは、それは預金者としてはもうそのときには遅いわけでありまして、やはり準備期間を見れば、もう今から既にきちんとした情報開示をしなければ、とても二〇〇一年にペイオフするということにならないんじゃないか、もっと先延ばしになってしまうんじゃないか、こういうふうに思うわけですが、以上の二点についていかがでしょうか。

宮澤国務大臣 ただいまの御指摘は、私も概してそのように考えております。こうやって国会で関連法案の御議論があり、また、金融監督庁の初めての、実際初めてのある意味での厳しい検査が進行しておるという状況の中で、既に銀行間のそういう競争体制についての整備は急速に私は進んでおると思います。それは、ただ合併とか提携とかいうことではなくて、各銀行の内部の問題として、これからは競争に勝たなければ生き残れないという考え方がもう既に確かに私は始まっておると思います。

情報開示することがやがて自分たち自身の利益であるというふうに考え始めることは、もうすぐそこのことであろう。情報開示ができないというところは、何か病気が悪いんだろうと思われやすい。アメリカで今行われている同じことが日本の中でももう間もなく行われ、あるいは行われておる、始まっていると申し上げた方が正確かもしれません。そういう中から、いい商品ができる、いい商品ができないという競争も始まっておると思います。

殊に、外国銀行が参りましたので、それとの関係においてそういう状況が促進されておると思いますので、したがいまして、情報の十分な開示ということは、二〇〇一年になって初めてやれば十分だということではさらさらございませんで、むしろそれが到達点というぐらいなことで今から事柄は始まりつつある、また、そうしてもらうことが望ましいというふうに考えております。

岡田委員 十分な情報開示を行わなくて、当該金融機関が預金者から見放されていくというのは、それは金融機関の一つの判断、経営判断ですからまだしもですが、しかし、預金者から見たときに、十分な情報開示がされていないために損害をこうむった、二〇〇一年からはペイオフするということになるわけですが、その二〇〇一年の以前の段階、一年前、二年前、一九九九年はもう間もなくでありますから間もなく二年前ということになるわけですけれども、そういう段階で政府の責任できちんと情報開示がされていない、そういうことが果たして許されるんだろうか。

逆に言いますと、今の程度の情報開示の状況がしばらく続いていく中で、本当に二〇〇一年のペイオフというのはできるんだろうか。できないんじゃないか。逆に言いますと、二〇〇一年ペイオフが動かせないとすれば、やはり相当前倒しに情報開示というものを政府が義務化して迫っていく、そういう責任があると私は思うわけですが、いかがでしょうか。もう一度お答えいただきたいと思います。

宮澤国務大臣 今回国会で御論議になっております二つのセットのこの金融関連の法案で、情報開示ということが非常に厳しく、殊に野党から御指摘がありましたことは、私はもっともなことだと思っております。

殊に、今おっしゃいましたような時間の関係の中で、そうでありませんと顧客は思わざる損失を受けることがございますので、そういう意味での厳しい法律上の規定あるいは行政が大事であるという御指摘は、私はそういう意味でも当たっておると思います。

岡田委員 今、情報開示の話でありますが、今の結論からいえば、やはり今の段階で第二分類については強制引き当てするということにならざるを得ないんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 これにつきましては、まだ各党間で法案についての御討議が行われておるように伺いますので、私が余り出過ぎたことを申し上げてはならないかと思いますが、第二分類というのは非常に範囲の広いエリアでございますので、いわば結構優等生に近いところから、どうも劣等生に近いところまであるようでございますから、第二というような、漠然と一つの袋にそれを入れていいのか、あるいは、もう一つそれを細かくしていって、そして最後のところは引き当て率を異たらしめるということにするのがいいのか、その辺は恐らく各党間でいろいろに御議論のあるところと思いますが、確かに、今までの第二分類というだけでは何とも問題が詰まっていかない。金融監督庁の今度の検査の結果などでそれが少しわかってくると思いますが、もうちょっと分類を精緻にし、引き当て率などもそれに従うことが入り用なのではないかな。今、おまえどう思うとおっしゃいましたら、私としてはそういう感想を持っております。

岡田委員 民主党の方も、第二分類を一つのカテゴリーとして扱うのではなくて、二つに分けて、それぞれ引き当て率を一〇%、二〇%ということで考えてはどうかという提案をさせていただいているところであります。いずれにしても、そういう形できちんと引き当てをする、そしてそのことが預金者にとってわかる形にするということが二〇〇一年、ペイオフの前提であり、そしてタイミング的には、もうそのタイミングは今だというふうに申し上げておきたいと思います。

それから、先ほど大蔵大臣おっしゃった中で、貸し渋りの話がございます。強制引き当てなどで厳しい引き当てをすると貸し渋りを助長する、こういうお話でございました。それから、低価法にしても貸し渋りを助長すると。

一つ誤解があるかもしれませんので申し上げておきたいと思いますが、民主党は、株式等の評価についての低価法の採用というのは、すべての金融機関にそれを課すということを言っているわけではございません。資本注入に当たって必要な資本額を算定するときには、低価法に基づいて、あるいは時価でも私はいいと思いますが、算定すべきだということを申し上げているわけでございます。

そのことが私は貸し渋りを助長するというふうには思いませんし、それから、貸し渋りを助長するという一般的な話について申し上げますと、確かに、厳しい引き当てをすれば、それを何とか乗り越えようとして貸し渋りをする、そういう金融機関が出てくるのも事実だと思います。しかし、我々が認識している今の大手行を中心とする金融機関の現状からすれば、きちんと計算をすればかなり実は自己資本比率というのは数字は悪いだろう、すべて八を超えているというのは、四とか五とかいう銀行が続出するような状況ではないか、こういうふうに思うわけであります。

逆に、そういうものをきちんと出すことによって、多少貸し渋りをしてそれで乗り越えようということをあきらめさせて、資本注入を受けざるを得ないというところへ追い込んでいくというのが私どもの考え方でありますし、一たん資本注入されれば、そこで一応数字としては必要な引き当てもできて八%も確保できるわけでありますから、貸し渋りをする必然性はなくなるというふうに私どもは思うわけでございますが、その点について、大臣、いかがお考えでしょうか。

宮澤国務大臣 確かにそういう部面もあるということは私も理解いたします。

岡田委員 理解していただくのであれば、野党の言うように強制引き当てをしたりすれば貸し渋りを助長する、そういう言い方はここで訂正をしていただきたいと思うが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 両面があろうかと思っております。

岡田委員 両面があるというのはちょっと私よく理解できませんので、もう少し敷桁して御説明をいただきたい、わかるように御説明いただきたいと思います。

宮澤国務大臣 それは、岡田委員の言っていらっしゃる面もございますし、私の申し上げているような一種のリアクションも起こることもあるのじゃないかと思います。

岡田委員 ですから、それはその大前提としてきちんと数字を出さないから、例えば七とか七・五というところが一%自己資本比率を積み増そうというときには、貸し渋りによって乗り越えようということになると思いますが、実態上はかなり悪い、そういう想定に立てば、それは数字を出すことによってあきらめて資本注入を受ける道をとらざるを得なくなるだろう、そういうふうに考えるわけです。そして、資本注入をせざるを得ないときにきちんと資本注入をしてやれば、それはもう貸し渋りの必要はなくなる、こういうことになると思うのですが、いかがでしょうか。

宮澤国務大臣 それはわかっておりますけれども、基本的に、少なくとも現在あるいはしばらくの間、資金需要の方が我が国の金融機関が供給し得る資全迫ヘよりはるかに大きいという状況がございますから、それがイコールになっておりませんで、需要がはるかに大きいというところから、需要から見ての貸し渋りと申しますか、言葉が正確でございませんけれども、十分な供給が行われないということはやはりしばらくの間あるのではないか、こういうことを申したいわけでございます。

岡田委員 今のお話は一般的なお話でありまして、この強制引き当て、厳しい引き当てをやれば貸し渋りが増すということではないんだろうと私は思うのですね。もっと一般的な話を今大臣はされたんじゃないかというふうに思います。この点はこの辺にさせていただきますが、私は、野党の案をとれば貸し渋りを助長してしまうという考え方は論理的にも成り立たないというふうにここで申し上げておきたいと思います。

それでは、実際にかなりの規模の公的資本を注入するということになったときに、具体的に、例えばAという銀行に対して五千億なり一兆なりの資本注入をするというときに、その金額というものはどのようにしてお決めになるのですか。金額を算定するときの例えば第二分類債権の見方とかあるいは株式の評価とか、そういうものはどういう形でされるおつもりでしょうか。

宮澤国務大臣 それは、殊に各党で修正の御協議が行われていることもありまして、実は提案者から私どもが聞かせていただきたいところでございまして、法案が法律として成立いたしましたら、その法の修正過程、成立過程も伺いまして、政府としてその運用を決めてまいらなければならないと思っております。

岡田委員 それじゃ、提案者の方にお聞きします。

保岡議員 今具体的に積算して申し上げるようなことは、なかなかこれは難しいとは思いますが、おっしゃるように、かなり株式の含み損が出ていることとか、それから不良債権の引き当て、償却をしなければならない実情がどんどん具体化したり、処分が進んでいたりすることや、実体経済が非常に悪くなっている、したがって、それに対するいろいろ先行きの心配がある、そういったことから自己資本比率を高めなきゃならないというような、そういういろいろなことを金融機関も心配していると思いますけれども、そういったことにきちっと対応して、日本の金融システムの安定あるいは貸し渋りというものに的確に対応できる金額というものが、具体的な申請に基づいて積み上げられていくと思います。

岡田委員 もう少しわかりやすく聞きますと、例えば、あるAという銀行に五千億円資本注入すると決めたときに、その株式の評価のところは時価で計算されるわけですか、それとも今言ったような選択制でどちらでもいい、それは銀行の従来から採用しているやり方で計算されるのですか、いずれでしょうか。

保岡議員 その点については選択制になっておりますから、各金融機関ではそれぞれどれを選択するかということで対応していると思いますが、資本注入をする際には、今岡田委員もいろいろ述べておられましたとおり、金融がきちっと貸し渋りその他に対応できるように、あるいは引き当てその他きちっと適正にできるように、そういったことが内外の金融機関に対する信認につながり、今の実体経済を好転させていくために不可欠であるということでありますから、そういうことを参考に投入額が検討されるものと思います。

岡田委員 慎重な言い方でしたが、株式については基本的には時価で計算される、そういう御趣旨の答弁だったど理解するわけですが、それでは、例えば第二分類の債権についてはどのような計算をされる御予定ですか。

保岡議員 第二分類の査定は厳格にやっていかなければならないわけですけれども、先ほど大蔵大臣からもお話がありましたとおり、これは各金融機関のすぐれてリスク管理の経営に関するものでありますから、その第二分類というものが、生かして回収する、したがって、金利減免したり猶予したりするということで上手に回収して焦げつきがないようにしている金融機関もあれば、非常にそれを圧縮して、貸し渋って、そうして自己資本を高める努力をしているところもあるかもしれませんし、それはいろいろ金融機関によって対応が違うと思うのですね。

したがって、そういう資産査定の対応が各行違いますので、それに対して幾ら金額があるかということも、検査等でその資産査定がどういうものであるか把握されていると思います。そういうことなども参考に検討されるものだと思います。

岡田委員 金融機関によってそれぞれ状況は違うということでありますが、国が資本注入をするその額を算定するに当たっては、やはり統一のルールに基づいて計算せざるを得ないんじゃないんですか。いかがですか。それはばらばらなんですか。

保岡議員 一応基準は統一的に決められておるにしても、その具体的な評価あるいは査定というものが各行で違うのは、これは当然なことでございます。したがって、どういう方針で査定しているか、そういう実績等、そういったものもよく見て資本投入額は算定されていくものだと思います。

岡田委員 そうすると、基本的には各金融機関の従来のやり方を踏襲して注入する、こういうことですね。

ということになると、必要額がその結果計算されるわけですから、投入した結果八%をクリアしているということになっても、実態上は金融機関によって計算の仕方はばらばらでありますから、統一的な基準で見たときに八%を本当にクリアしているかどうかはわからない、こういうことですね。

保岡議員 したがって、資本増強の要件の自己資本比率の区分に沿ういろいろな対応にしても、自己資本比率だけで判断するのではなくて、そういったいろいろな状況を総合勘案する部分も含めてないと、これは適切な資本投入にならないと思います。そういうことの自己資本比率だけでない要素というものも非常に重要だと思います。

岡田委員 非常にクリアじゃない御説明なんですが、私はこういうことだと思うのですね。

ですから、きちんとした統一基準を持って投入額を計算するという、そういうことにするのか。そのときはもちろん統一基準が必要になるわけです。あるいは、今おっしゃるように、個々の金融機関の判断に基づいてやる。個々の金融機関の判断を尊重しながら資本投入をするということは、実は、形の上では八%をクリアしているかもしれないけれども、実態上は、それは本当にクリアしているものもあれば、かなり甘いものもあって、本当の意味でクリアしているかどうかはわからない、そういうことにならざるを得ないんじゃないでしょうか。

保岡議員 先ほど大蔵大臣からもお話がありましたとおり、十九行を中心に一斉検査をしておりますし、その他の金融機関にも今鋭意検査を進めております。そういった今までにない集中的な検査を実行しておりますし、そういった検査の結果を踏まえて、実態は正確に把握した上、その実態に沿って資本注入が行われる、こういうことでございます。

岡田委員 実態を正確に把握するというためにはやはり物差しが要るのですね、共通の物差しが。それはあるのですかと。あるいは、実態を正確に把握されるとおっしゃるなら、そういう物差しは少なくともこの法律施行の前にはあるはずですね。そういうことをお尋ねしているわけです。

保岡議員 それは、債権の分類基準も決まっておりますし、その分類基準に沿ってできるだけ正確な分類がされているかどうか、そういったことを債権について個々に当たって、一つ一つ判断をしてその正確を期すように当局で努力をしている、その結果に基づいて資本注入における要件の判断もしていくものと思います。

岡田委員 こんにゃく問答みたいになってよくわからないんですが、少なくとも私は、国際的に信頼に足るだけのきちんとした要投入額の査定をするということであれば、それは共通の基準が必要であるし、そうであれば、そういう基準についてはきちんとどこかで、それは法律になるのかあるいはもう少し下のレベルになるのか、議論が分かれるかもしれませんが、そういうものを直ちにやはりきちんと決めるべきだ、こういうふうに申し上げておきたいというふうに思います。

それじゃ大蔵大臣にお聞きしますが、今の提案者の御説明を聞いていて、資本注入して例えば八%をクリアした、日本の銀行は、投入した銀行については全部クリアしましたということになったときに、果たしてそれで国際的な信認が得られるかどうかということをお尋ねしたいと思います。

今現在の姿というのは、ドルで資金調達ができないという状況は、個々の金融機関についての経営状態に対する疑念というよりは、むしろ、日本の政府も含めた金融システム全体についての不信感、とりわけ検査ですね。いろいろな不祥事もありましたし、政府がいろいろ数字をいじくっているんじゃないか、操作しているんじゃないか、そういう不信感が国際的にあって、そのことが、いろいろ金融機関が自己資本比率八%をそれぞれクリアしているというような話が出てきてもとても信用できぬということで、日本の金融機関全体が国際的に非常に厳しい評価にさらされているというのが現状だと私は理解するわけですが、今提案者のおっしゃったような話で果たしてその信頼は回復できるのか。もっと言えば、国際的にドルで資金が調達できるような状態にまで行くのか。この点についていかがお考えでしょうか。

宮澤国務大臣 私も岡田委員の言われたような感じをかなり深く持っております。すなわち、それは過去における護送船団方式という行政についての非常な懐疑でございますけれども、その中では、極端に言えば本当の厳しい検査というものも育たない。何となれば、すべての人が生き延びるのであれば厳しい検査をすることの意味は余りないわけでございますから、そういう護送船団方式についての各国が抱いておった疑問というものは相当根深いものがございます。

もちろん、その中で、あの銀行はいい、あの銀行はそうでないというようなことは、ジャパン・プレミアムを払っても外貨が取れない銀行と取れる銀行がございますから、そういうことはございましょうけれども、全体として日本の金融行政、金融システムにかなり根深い疑いを外国が持っておったことは、私は事実であると思います。

そのことを今改めようとしておりますのは、金融監督庁ができて相当検査というものが厳しくなった。あるいは、今度こういう立法が行われることになって、その立法も政府が考えていたよりは修正によって相当厳しい検査とか罰則とか開示とかいうことが入ってきている。それはつまり、振り返って言えば、昨年の十一月から起こった金融破綻の中で、日本がやや慌てながら金融行政あるいは金融のあり方について厳しい考え方を始めたと外国には見えておるわけでございますから、今そのちょうど過程にございます。

かつてはハードランディングが必要なんだという説が相当ございましたけれども、ここまで来ますとなかなかそんなことは言っていられないというようなことにまたちょっとなってきたところでもおわかりになりますように、かなり厳しい批判は従来持っておりまして、それがこういう我々の努力の中で見直されつつありますときに、実は、日本のそういう状況は今世界の信用収縮に一番直接に響いておるものでございますから、とにかくも早く新しい立法ができて、そして日本の金融不安というもの、金融システムの不安がなくなればいい、今はどっちかといえばそういう方に彼らの関心は傾いております。

しかし、本当に日本の金融機関が今までと違って相当厳しい競争の中から立ち上がれるというのは、いつかも申し上げませんでしたか、日本という国が、とにかく徹底的な競争をして倒れるものは倒れて生き残れというような、そういう我々の文化と彼らの文化とがちょっと違ったところがございますものですから、そういうところもあわせまして我々がこういう法案の御成立をお願いして、そして本当に優秀なもの、自己開示ができるものは有利な地位に立ち、そうでないものは不利な地位に立つという、簡単なことのようでございますけれども、我が国の金融行政としては初めてのそういう状況に今向かいつつあるというふうに考えております。

岡田委員 私の質問には直接はお答えいただけなかったように思いますが、今、例えば金融監督庁ができて厳しい検査をする、確かにそのことは期待をされたわけでありますが、現実には従来とほとんど変わっていないのではないか、こういう評価もあるわけであります。

日野長官もお見えになっておられますけれども、例えば、総理官邸に民間の銀行を呼びつけて、そして合併について話し合いをするときに、厳正な検査を任務とする組織の長がそこに同席をしているということは、非常に金融監督庁の権威というもの、あるいは中立性、信頼感、そういうものを損なった、せっかく別の組織にしたのに結局何も変わっていないという失望感を私は与えたというふうに思うわけでございます。

宮澤国務大臣 そこは、私は私なりの異存がございます。

金融監督庁は、そういう検査部門とそれから銀行というものを監督指導する部門と両方を持っておられまして、長官は両方の責任を負っておられますけれども、検査についてはそういう立場の長官は介入をされることはないと私は存じておりますので、そういう疑いを起こすことは私の知っている限りないと考えております。

岡田委員 それが、総理官邸に同席をするという象徴的な姿がそのことに対する疑念を非常に招いているということを私は申し上げているわけであります。

あるいは、厳しい立法がされて開示義務が課されるというふうにおっしゃいましたが、そのことが今まさしく議論していることなのですが、この程度のことで本当に国際的に、きちんと日本はやっているという、今までの評価を覆すだけのものになっているのかどうかというところがポイントだと私は思うわけであります。私が先般申し上げた厳しい引き当ての話でありますとか株式の評価方法について、大臣は、それは理想的にはそうだとおっしゃいましたが、私は理想かどうかということで言っているのではなくて、このぐらいのことは最低やらないと、今の日本の金融システムあるいは銀行に対する国際的な評価は変わりませんよ、だから事態は変わりませんよということを申し上げているわけでございます。このことについて、もし何かコメントがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

宮澤国務大臣 先般もそこは上手に表現できませんでしたけれども、まさにやがてそうあるべきだ、そのあるべきときはいつと思うかとおっしゃいましたから、それは遅くとも二〇〇一年かなと申し上げましたが、そういうふうに向かっていく中で、今突然いろいろなことが一斉に理想的な程度にまで行われますと、現実に日本の経済はもう貸し渋り状況がひどうございますから、それを少なくとも一時的には非常に悪化させることは疑いない。いや、それはいいんだ、そこを通らなければ本当のものにならないのだという御議論であればまたそうでございますけれども、現実の行政としてはそこはいいのだというわけにはなかなかまいらないということを実は申し上げたかったわけでございまして、それで、ごらんのように銀行株がかなり激しく上がったり下がったりしておりますのは、やはりこのことは銀行にとってなかなか容易なことでないという認識は、私はそこにかなりあらわれているのではないかと。それが、その受け取り方が必ずしも正しいとは申しませんけれども、行政としては、現実に日本経済にあるこういう貸し渋り不況というものは、やはりこれは考えざるを得ないということを申したかったわけです。

岡田委員 貸し渋りの話は先ほど議論いたしました。私は、厳しい基準で引き当てなどをしたとしても、きちんとそれに基づいて資本注入をしてしまえばそのことが貸し渋りをさらに助長するということにはならない、こういうふうに先ほど申し上げたところであります。

いずれにしろ、大臣の今のお話を聞いておりますと、何か二〇〇一年まではどうも日本の金融機関はドルで調達できないというふうにも聞こえるわけでございます。私は、そういう状態を抜本的に変えるためには、前倒しして、早くきちんとした国際的なスタンダードでやらなければいけない、こういうことを申し上げているわけでございます。議論は最後までかみ合わなかったようにも思います。

それでは、時間もありますので次に参ります。

今の法案の中で、これは提案者にお聞きしますけれども、先般の私の質問に対しまして、著しい過少資本行の定義は、自己資本比率が、国際行については〇から四%だというふうに提案者はお答えになっているわけでありますが、例えば〇とか一とか二とか、その程度の過少資本行について資本注入があり得べしということになりますと、きょう成立をいたしました金融再生法との間に大きな矛盾が出てくるのではないか。

本来、事実上破綻をしたあるいは救いようのない金融機関については、それは整理手続に入っていく。もちろん、その結果また生き返れば、そういうことも想定されるわけでありますが、公的管理にするかあるいは金融整理管財人の手続に入っていくというのが再生法の基本的考え方だと思うわけですが、〇%まで資本注入できるということになりますと、この再生法というのは、長銀についてはお話がありましたから適用されるのだと思っておりますが、それ以外の金融機関についてはもう使わない、こういうことになるのだと私は思いますが、いかがでしょうか。

保岡議員 確かに、〇とか一とか二とかいうそういう極度の過少資本行の場合は、存続が困難であるというようなことが認められるようなケースもあると思うのですね。しかしながら、一方、地域がこぞって必要不可欠な金融機関としてこれを支えていこうということで話し合いができたような場合、そしてそれが公的な支援によって存続が十分可能である場合は、これはやはりそういう著しい過少資本行といえども今度の再生法の対象にしていくべきだ、こう考えているわけでございます。

岡田委員 今のお話は、存続は困難だ、しかし地域が支えていくというふうにおっしゃったのですが、地域が支えていくというのはどういう意味ですか。例えば地域の、その地場の資本が、それに対して民間資本が、自己資本をふやすために増資に民間企業が応じるということをおっしゃったわけですか。それとも、別の意味をおっしゃったのでしょうか。

保岡議員 それはいろいろなことが考えられると思います。その地域によっておっしゃるような努力のできる地域もありましょうし、その他いろいろ、金融機関の支援策というものはみんなで話し合われていろいろな角度から対策が講ぜられる、そういうものだと思います。

岡田委員 その他いろいろな角度からとおっしゃいますが、具体的にどういうことを言うのでしょうか。今のお話だと、存続が困難だ、しかも地元で増資に応じる、そういうところもないというような状況で、なおかつ、それに対して公的資本を注入するということをお認めになるわけですね。もう一度確認しますが、いかがでしょうか。

保岡議員 そのとおりでございます。

岡田委員 そういうことになりますと、この金融再生法というのは何のためにつくったのかということになるのだろうと思います。

この金融再生法では、例えば「金融整理管財人による管理」のところで、その要件の一つとして、「その業務の全部の廃止又は解散が行われる場合には、当該金融機関が業務を行っている地域又は分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずるおそれがあること。」こういうふうになっていますね。だから、再生法の建前は、すべてが金融整理管財人や公的管理に行くのではなくて、その中でも特に、地域の資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずる場合にこの整理管財人という規定の適用がある、こういうことなんですね。

にもかかわらず、今のお話は、地域に重要な影響がある場合にはこの再生法でいかないのだ、そうではなくて今提案中の早期健全化法でいくということになりますと、まさしく定義上も再生法の余地というのはなくなるのではないですか。自民党の皆さんはこの再生法を民主党や新党平和と一緒に共同修正されたわけですが、あれは一体何だったのですか。お答えいただきたいと思います。

保岡議員 それは、再生法では、支払い停止のおそれがある場合、まあ破綻ですね。それからおそれが生ずると認められる場合という、もう破綻直前のすれすれの場合というようなケースであると思いますが、本法において、著しい過少資本行の〇から二みたいなケースについては、やはり存続可能である。しかも、地域の経済にとって不可欠であって、地域がいろいろ支援をすることで話し合いができているというようなケースは、やはりこれは破綻で処理するよりも、あるいは準公的管理というような破綻すれすれの対応をするよりも、地域にとっては生きたゴーイングコンサーンの金融機関ということで、それだけ信用も劣化しないで済む。そして、実体経済にとっても影響を最小限に抑えることができるというようなケースがあると思いますね。そういう場合に、これは本法の対象にするものだというふうに認識をいたしております。

岡田委員 今極めて重要なことをおっしゃったと思うのですが、もう一度整理をいたしますと、まず、存続が困難であるという場合で、しかも増資に応ずるとかそういうことではなくて、その他いろいろな意味で、いろいろな意味というのはよくわかりませんが、地域の支援がある、こういう場合には公的資本の注入を、例えば自己資本比率が〇であってもする、こういうことですね。

これは基本的な金融再生法のコンセプトに反する話じゃないですか。やはり存続が困難なものについては、基本的に金融再生法の中で手続に入って整理していく。もちろん、整理の結果、生き返るものもあるとは思いますけれども、整理していくというのが基本的なこの金融再生法の考え方であって、今おっしゃるように、存続が困難でありながら、しかも増資も民間ではできないという中で資本注入をそこにしていくというのは、明らかに再生法と違った考え方に、あるいは反する考え方に基づいている、そういうふうに言わざるを得ないと私は思いますが、いかがでしょうか。

保岡議員 今岡田委員は、存続困難なケースに本法を適用するのかということを言われているように思うのですね。私は、そういうことを申し上げておりません。最初に、存続が極めて困難であるケースは本法の対象にならないことが決まっておりますから、そういう場合でないケースを指して言っております。

岡田委員 今確かに存続が困難だとおっしゃいましたよ。後で議事録を見てください。最初に言いましたよ。だから、そこのあいまいさが非常に問題なんじゃないですか。

大蔵大臣、もし御意見があるならおっしゃってください。

宮澤国務大臣 私も提案者と同じように理解を実はいたしておりました。再生法の方は、破綻処理あるいは破綻に極めて近い場合の処理について考えておられると私は思っておりますが、提案者の言われましたのは、破綻ではない、ただなかなか難しい、しかし、地域でお客さんが、たくさん金を借りられる人がいるとか、地域にほかに銀行がないとか、ですから、そういう場合には地域の人も株でも持とうかということもしばしばあるかと思いますが、仮にそうでなくても、そういう銀行はやはり地域のために必要だ。無論、破綻ではない、破綻に近い状態でもない、そういう場合には救うことができるというのが今御審議の法案の意味しているところだろう。そういう意味では、存続可能というケースについて議論されているのだと思います。

岡田委員 貸し渋りの話は先ほど議論いたしました。私は、厳しい基準で引き当てなどをしたとしても、きちんとそれに基づいて資本注入をしてしまえばそのことが貸し渋りをさらに助長するということにはならない、こういうふうに先ほど申し上げたところであります。

いずれにしろ、大臣の今のお話を聞いておりますと、何か二〇〇一年まではどうも日本の金融機関はドルで調達できないというふうにも聞こえるわけでございます。私は、そういう状態を抜本的に変えるためには、前倒しして、早くきちんとした国際的なスタンダードでやらなければいけない、こういうことを申し上げているわけでございます。議論は最後までかみ合わなかったようにも思います。

それでは、時間もありますので次に参ります。

今の法案の中で、これは提案者にお聞きしますけれども、先般の私の質問に対しまして、著しい過少資本行の定義は、自己資本比率が、国際行については〇から四%だというふうに提案者はお答えになっているわけでありますが、例えば〇とか一とか二とか、その程度の過少資本行について資本注入があり得べしということになりますと、きょう成立をいたしました金融再生法との間に大きな矛盾が出てくるのではないか。

本来、事実上破綻をしたあるいは救いようのない金融機関については、それは整理手続に入っていく。もちろん、その結果また生き返れば、そういうことも想定されるわけでありますが、公的管理にするかあるいは金融整理管財人の手続に入っていくというのが再生法の基本的考え方だと思うわけですが、〇%まで資本注入できるということになりますと、この再生法というのは、長銀についてはお話がありましたから適用されるのだと思っておりますが、それ以外の金融機関についてはもう使わない、こういうことになるのだと私は思いますが、いかがでしょうか。

保岡議員 確かに、〇とか一とか二とかいうそういう極度の過少資本行の場合は、存続が困難であるというようなことが認められるようなケースもあると思うのですね。しかしながら、一方、地域がこぞって必要不可欠な金融機関としてこれを支えていこうということで話し合いができたような場合、そしてそれが公的な支援によって存続が十分可能である場合は、これはやはりそういう著しい過少資本行といえども今度の再生法の対象にしていくべきだ、こう考えているわけでございます。

岡田委員 今のお話は、存続は困難だ、しかし地域が支えていくというふうにおっしゃったのですが、地域が支えていくというのはどういう意味ですか。例えば地域の、その地場の資本が、それに対して民間資本が、自己資本をふやすために増資に民間企業が応じるということをおっしゃったわけですか。それとも、別の意味をおっしゃったのでしょうか。

保岡議員 それはいろいろなことが考えられると思います。その地域によっておっしゃるような努力のできる地域もありましょうし、その他いろいろ、金融機関の支援策というものはみんなで話し合われていろいろな角度から対策が講ぜられる、そういうものだと思います。

岡田委員 その他いろいろな角度からとおっしゃいますが、具体的にどういうことを言うのでしょうか。今のお話だと、存続が困難だ、しかも地元で増資に応じる、そういうところもないというような状況で、なおかつ、それに対して公的資本を注入するということをお認めになるわけですね。もう一度確認しますが、いかがでしょうか。

保岡議員 そのとおりでございます。

岡田委員 そういうことになりますと、この金融再生法というのは何のためにつくったのかということになるのだろうと思います。

この金融再生法では、例えば「金融整理管財人による管理」のところで、その要件の一つとして、「その業務の全部の廃止又は解散が行われる場合には、当該金融機関が業務を行っている地域又は分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずるおそれがあること。」こういうふうになっていますね。だから、再生法の建前は、すべてが金融整理管財人や公的管理に行くのではなくて、その中でも特に、地域の資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずる場合にこの整理管財人という規定の適用がある、こういうことなんですね。

にもかかわらず、今のお話は、地域に重要な影響がある場合にはこの再生法でいかないのだ、そうではなくて今提案中の早期健全化法でいくということになりますと、まさしく定義上も再生法の余地というのはなくなるのではないですか。自民党の皆さんはこの再生法を民主党や新党平和と一緒に共同修正されたわけですが、あれは一体何だったのですか。お答えいただきたいと思います。

保岡議員 それは、再生法では、支払い停止のおそれがある場合、まあ破綻ですね。それからおそれが生ずると認められる場合という、もう破綻直前のすれすれの場合というようなケースであると思いますが、本法において、著しい過少資本行の〇から二みたいなケースについては、やはり存続可能である。しかも、地域の経済にとって不可欠であって、地域がいろいろ支援をすることで話し合いができているというようなケースは、やはりこれは破綻で処理するよりも、あるいは準公的管理というような破綻すれすれの対応をするよりも、地域にとっては生きたゴーイングコンサーンの金融機関ということで、それだけ信用も劣化しないで済む。そして、実体経済にとっても影響を最小限に抑えることができるというようなケースがあると思いますね。そういう場合に、これは本法の対象にするものだというふうに認識をいたしております。

岡田委員 今極めて重要なことをおっしゃったと思うのですが、もう一度整理をいたしますと、まず、存続が困難であるという場合で、しかも増資に応ずるとかそういうことではなくて、その他いろいろな意味で、いろいろな意味というのはよくわかりませんが、地域の支援がある、こういう場合には公的資本の注入を、例えば自己資本比率が〇であってもする、こういうことですね。

これは基本的な金融再生法のコンセプトに反する話じゃないですか。やはり存続が困難なものについては、基本的に金融再生法の中で手続に入って整理していく。もちろん、整理の結果、生き返るものもあるとは思いますけれども、整理していくというのが基本的なこの金融再生法の考え方であって、今おっしゃるように、存続が困難でありながら、しかも増資も民間ではできないという中で資本注入をそこにしていくというのは、明らかに再生法と違った考え方に、あるいは反する考え方に基づいている、そういうふうに言わざるを得ないと私は思いますが、いかがでしょうか。

保岡議員 今岡田委員は、存続困難なケースに本法を適用するのかということを言われているように思うのですね。私は、そういうことを申し上げておりません。最初に、存続が極めて困難であるケースは本法の対象にならないことが決まっておりますから、そういう場合でないケースを指して言っております。

岡田委員 今確かに存続が困難だとおっしゃいましたよ。後で議事録を見てください。最初に言いましたよ。だから、そこのあいまいさが非常に問題なんじゃないですか。

大蔵大臣、もし御意見があるならおっしゃってください。

宮澤国務大臣 私も提案者と同じように理解を実はいたしておりました。再生法の方は、破綻処理あるいは破綻に極めて近い場合の処理について考えておられると私は思っておりますが、提案者の言われましたのは、破綻ではない、ただなかなか難しい、しかし、地域でお客さんが、たくさん金を借りられる人がいるとか、地域にほかに銀行がないとか、ですから、そういう場合には地域の人も株でも持とうかということもしばしばあるかと思いますが、仮にそうでなくても、そういう銀行はやはり地域のために必要だ。無論、破綻ではない、破綻に近い状態でもない、そういう場合には救うことができるというのが今御審議の法案の意味しているところだろう。そういう意味では、存続可能というケースについて議論されているのだと思います。

岡田委員 要するに、破綻ということの意味にも返る問題だと思うのですけれども、例えば、この再生法の中では、金融機関がその財産をもって債務を完済することができない場合、これは債務超過だということだと思いますが、その他金融機関がその業務もしくは財産の状況に照らして預金等の払い戻しを停止するおそれがあると認める場合、あるいは現に停止をした場合、こういうことですね。

そうすると、預金の払い戻しの停止をしたときは、それでもなおかつ、今度の早期健全化法で、例えば日銀特融をやって資金繰りを手当てした上で公的資本を注入するということはあるのですか、ないのですか。

保岡議員 御案内のとおり、六条の第三号に、その存続が極めて困難であると認められる場合でないというのはありますが、おっしゃるように、債務超過の場合は、これは対象にならないことがはっきりしております。

岡田委員 債務超過の場合を聞いたんじゃなくて、例えば取りつけがあって預金の支払いの停止をされた場合、そういう場合はどうなんですか。

保岡議員 それはもう破綻に当たる場合でございますから、できないということでございます。

岡田委員 その辺の非常にあいまいさというものを私は二つの法律を比較していて感じるわけでございまして、そこはやはりちゃんとした切り分けをしておかないと、金融再生法をせっかくつくったのにこれを殺してしまうことになる、その基本的なコンセプトに反することになる、そういうことを申し上げておきたいと思います。そこのところが一つ大きなポイントであるというふうに思っております。

もうちょっと後で整理して、またこの審議は続くと思いますから、引き続き質問したいと思いますが、いずれにしても、せっかく二カ月間議論をしながらつくった金融再生法が事実上機能しないということであれば、これは全く意味がないわけでありまして、そこのところのきちんとした切り分けができるのかどうか。私は、今の法案ではできていない、そういうふうに申し上げて、次の質問者に譲りたいと思います。

終わります。




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