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1998.10.08|国会会議録

143回 衆議院・本会議

岡田克也君 私は、民主党を代表して、自由民主党提出、金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律案について質問いたします。

昨日、この法案を一読したとき、私は大きな驚きと失望を禁じ得ませんでした。

我々は、今国会において、金融再生法案を初め関係法案の審議を進め、既に本院において与野党の共同修正を経て、現在参議院において鋭意検討中であります。この金融再生法案において、本年二月に成立した金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律を廃止することとしております。我々は、この金融安定化法と同法に基づく資本注入が失敗であると判断したからこそ、その廃止という結論に至ったはずであります。

しかし、今回の早期健全化法案は、同じ誤りを見事に繰り返そうとしているのであります。同法案は、その第一条において、我が国の金融システムに対する内外の信頼の回復、我が国の金融機能の早期健全化、我が国経済の活性化をその目的としています。しかし、この法案が成立すれば、我が国の金融システムに対する内外の信頼はさらに低下し、我が国の金融機能の健全化はさらにおくれ、我が国経済はさらに混迷を深めるのではないでしょうか。

この法案を取りまとめるに至った自由民主党の一貫性のなさ、混乱ぶりにはまことに驚くばかりであります。

以下、具体的に質問いたします。

第一に、最終的には税金により担保された公的資本の注入に当たり、基本的な事柄は法律によって規定すべきことは当然であります。しかるに、この法案は、金融安定化法と同様に、法案の骨格となる部分の多くが不透明な政令や規則にゆだねられ、行政による裁量の余地を大きく残しています。例えば、過少資本行や著しい過少資本行の定義、資本注入を受ける金融機関の自己資本比率の上限など、この法案の対象となる金融機関の範囲すら明確ではありません。

なぜこれらを法律で規定しなかったのか、また、今述べたことについて、それぞれ具体的にどのような自己資本比率を考えているのか、答弁を求めます。

また、これらの自己資本比率を算定するに当たっての基本的考え方、すなわち有価証券の評価に当たって低価法の採用をどう考えるのか、第二分類債権についてどの程度の引き当てを予定するのかの二点は極めて重要な事柄であります。以上の二点についてどのような考え方をとっているのか、また、なぜ法律により定めなかったのか、さらに、政省令において何らかの規定を置く考えはあるのか、答弁を求めます。

第二に、我々は、安易な資本注入によって、本来存続が不可能である金融機関を救済することは絶対に避けなければいけません。しかしながら、早期健全化法案においては、自己資本比率が著しい過少資本の状況にあるものであっても、公的資本の注入が可能となっています。自己資本比率が二%未満の銀行も著しい過少資本行に含まれるとの自民党の説明でありますが、自己資本比率一%以下あるいは〇%の銀行も場合によっては資本注入の対象となるのでしょうか、答弁を求めます。

また、それらの著しい過少資本行に対する資本注入は、金融機関の経営の健全性確保が困難な金融機関は存続させないとした、自民党も共同修正し賛成をされている金融再生法案第三条に反すると考えますが、この点につき答弁を求めます。

第三に、責任の明確化について質問します。

公的資本注入を受けるに当たり、当該金融機関の減資による株主責任の明確化、配当の禁止、代表取締役などの経営者の更迭、リストラの徹底は当然の前提であると考えます。しかしながら、早期健全化法案においてはこれらの点が明確になっていません。

第五条に規定する資本注入の申請に当たっての経営健全化計画の提出とは、具体的にどのような事柄を含むのでしょうか。例えば、配当はどのような資本注入を受けた場合に禁止されるのですか、減資を伴わない資本注入は認めるのですか、代表取締役は辞任するのですか、人件費はどの程度カットされることが条件となるのですか、これらの点についてそれぞれ答弁を求めます。

第四に、最も重要なことについて、総理及び大蔵大臣に質問をいたします。

まず、この法案の成立、施行により我が国の金融システムに対する内外の信頼は回復するでしょうか。私にはとてもそうは思えません。そもそも、我が国の金融システムに対する信頼が失われた最大の原因は何でしょうか。不良債権の実態や自己資本比率などについて、正しい情報が開示されていないことが最大の原因であることは明白であります。

六百九億円と公表されていた兵庫銀行の回収不能債権が、実際には十三倍の七千九百億円あったと破綻後判明したことは余りにも有名であります。また、本年三月の時点で自己資本比率が一〇%を超えているとされていた長銀が、実質的には債務超過状態にあったということも、我が国の金融当局に対する内外の信頼を大きく損ないました。日本政府は数字を操作しているとみなされているのです。

このような、我が国金融機関の実態を正しくあらわさない情報開示について、総理は、どのように反省をし、かつ今後どのような基本姿勢で改革しようとしているのか、答弁を求めます。

次に、大蔵大臣は、先般の記者会見において、債権の引き当てを厳しくすること、株式について低価法を採用することについて、金融収縮が進んでいる中では一気に理想的なことはできないと述べておられます。

しかし、このような考え方こそが、現在の金融危機を招いていると言うべきではないでしょうか。現在の金融危機は極めて厳しい状況にあります。我々に残された時間は少ないのであります。私は、理想論から厳しいことを銀行に課そうとしているのではなく、これ以外に日本の危機を乗り切る道は残されていないからこそ、そういう思いで強制引き当てなどが必要であると主張しているのです。(拍手)

第二分類債権に対し実態を反映した引き当てを義務づけ、かつ、資本注入を求める金融機関に対しては、その保有株式を低価法で計算することにより不足する資本額を正確に算定し、かつそれに相当する額を思い切って注入する、そのことで一挙に金融機関の早期健全化を図ることが、現在の金融危機の唯一の解決方法であると私は考えます。このような民主党の考え方に対し、大蔵大臣はどのようにお考えか、答弁を求めます。

最後に、自民党総裁でもある小渕総理にお伺いをいたします。

自民党提案の早期健全化法案では、不完全な情報開示に基づく中途半端な資本注入しか行うことができません。その結果、金融機関の健全化はなされず、仮に我々が目の前にあるこの金融危機を何とか乗り切ったとしても、本質的な問題は先送りされたままになります。来年三月末には再度大混乱を招く事態が予想されます。ことし三月の失敗があったにもかかわらず同じ過ちを繰り返したとあっては、この法案提出の最高責任者である小渕総裁の責任は免れないと考えますが、いかがでしょうか。

総理の明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

   〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕

内閣総理大臣(小渕恵三君) 岡田克也議員にお答え申し上げます。

まず、我が国金融機関の情報開示についてのお尋ねでございますが、我が国金融システムの信認の回復のために、不良債権の開示を積極的に進めていくことが重要であることは言うまでもございません。このような観点から、来年三月期から全金融機関に対し、連結ベースでの米国SEC基準と同様の基準による不良債権の開示を罰則づきで義務づけることといたしております。

次に、最高責任者としての党の総裁としてということで責任を問われましたが、金融機関等の資本の増強に関する緊急の措置の制度を設けること等により、我が国の金融機関の早期健全化を図り、もって我が国の金融システムの再構築と我が国の経済の活性化に資することを目的とする本法案につきまして、早期に成立することを強く期待いたしております。

なお、本法案においては、情報開示につきましても具体的な規定が設けられておると承知をいたしております。

いずれにしても、私といたしましては、金融システム全体の危機を絶対に起こしてはならないという強い決意のもと、金融システムの安定に万全を期すべく、全力を挙げてまいる所存でございます。

残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 岡田委員の御主張は、いわゆる第二分類債権に対してきちんと引き当てを義務づける、また保有株式は低価法で計算をする、そういう厳しい方法によって不足する資本額が幾らであるかを正確に算定して、それに相当する額を注入するならば金融機関の早期健全化を一気に図ることができる、こういう御主張でございます。いわば理論的には極めて明快なお立場、御主張だというふうに承りました。

それで、私が委員会で申し上げましたのは、ただいま御紹介もいただきましたが、今、各銀行は、まことにこの辺の引き当て、分類が勝手自由でございますので、それは許されることはできない。今、金融監督庁において十九行を中心に細かい検査をやっておられますから、その結果として、貸し倒れの実態等が明らかになってまいると思います。それによって、金融監督庁が検査用のマニュアルを公表するとか、あるいはガイドラインを策定するとかして、ともかく各銀行が一律のスタンダードで処理をしてほしい、それが私は第一段階だと考えております。

その際、第二分類債権というのは確かに問題の債権でございますが、これを非常に厳しくいたしますと、各銀行はいわゆる信用の回収を図る、あるいはそこから急激な信用収縮が起こる。それは、銀行の側におきましても、また今まで貸し出しを受けていた側におきましても、そういうことが恐らく現実にはどうも起こらざるを得ないであろう。非常に急激にやりますと、そういうことは実は起こる気配がもうかなりございますから、そこはやはり政策的な配慮が必要ではないか。

殊に、例えば銀行の立場で申しますと、私ども、今、いわゆるベンチャーキャピタルのようなものはできるだけ育成してほしいと考えておりますけれども、銀行からいいますと、それは大した担保もないし、最近のつき合いだし、こんなものは悪い債権にした方がいいという気持ちにどうしてもなりますので、そういう点もやはり考えなければならないのではないかと思います。

同じようなことは、今の、有価証券の評価に低価法をすべきではないか。それは、その方が厳しゅうございますから、長い目で見れば、金融機関にとってもきっとその方が余裕が出るので、私はそれは行く行くの姿としてはそうあるべきだとすら思いますけれども、今の現実は、低価法と原価法の選択を国際的にも認められておりますし、これもまた、一挙に厳しくやりますと信用を収縮するという問題に恐らくつながる、それも見やすい道理でございますから、これも中長期的な課題として考えていかなければならないのではないかと思っております。

簡単に申しますと、岡田議員の言われますことは、理論的には極めて明快でございますけれども、政策選択としては、今のような我が国の状況において、それはやはり中長期的な課題とすべきではないかと私どもは考えておりまして、いわば、ベストではないかもしれませんが、ベターなことを考えておりますので、それをもちましてこの法案には反対だというお立場をおとりくださらずに、御再考賜りたいと思うわけでございます。(拍手)

   〔保岡興治君登壇〕

保岡興治君 岡田克也君にお答えします。

過少資本行、著しい過少資本行の定義についてのお尋ねでございますが、それぞれの定義は金融再生委員会の規則で定めることとしております。

なお、過少資本行については自己資本比率が四%以上八%未満の金融機関を、また、著しい過少資本行については自己資本比率〇から四%未満の金融機関を念頭に置いております。

有価証券の低価法による評価及び第二分類債権の引き当てについてのお尋ねでございますが、これらについては、今大蔵大臣が述べられた考えと同じ考えでございます。

それから、資本増強の対象についてのお尋ねでございますが、著しい過少資本行であっても、地域経済にとって不可欠なものであって、その存続のために地域経済界が一致して協力しようとする場合など、健全化を図って業務を継続させるという方向で公的支援をすることが適切な場合もあるので、対象となる場合もあり得ると考えています。このような場合は、経営の健全性確保も可能と考えられることから、言われました金融再生法第三条に反するものではないと考えているところでございます。

残余の質問については、他の提出者からお答えを申し上げます。(拍手)

   〔山本幸三君登壇〕

山本幸三君 岡田議員にお答え申し上げます。

経営責任や株主責任の明確化等の具体的内容についてのお尋ねでございますけれども、株式等の引き受け等の要件といたしまして、本法律におきまして、経営健全化計画の確実な履行等を通じて、金融再生委員会が定めて公表する経営責任、株主責任の明確化のための方策等に関する基準に従いまして、これらの方策の実行が見込まれることが挙げられております。

具体的には金融再生委員会において定めることとなるわけでありますが、配当の停止、必要な場合の減資、役員数の削減、代表権のある役員の退陣等が、自己資本比率の区分その他の要素を勘案して盛り込まれることになると考えております。(拍手)




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