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1998.05.27|国会会議録

142回 衆議院・安全保障委員会

岡田委員 私は、日米防衛協力のガイドラインの関係について、非常に時間も限られておりますが、幾つか質問したいと思います。

まず、通告してありませんけれども、先ほど中島委員の質問で、周辺事態というのは地理的概念ではない、こういうふうに両大臣がお答えになったわけでありますけれども、私は、いつも説明が不親切で非常にわかりにくい、こういうふうに思うわけです。

私なりの理解では、周辺事態というのは、定義上、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態ということでありますから、そこは確かに地理的概念とは違う要素が入っております。したがって、地理的に線を引いて、この線の中は周辺事態対象地域、この線の外は周辺事態対象地域ではない、そういう意味での線引きはできない、そういうあやふやさが残る、そういう意味で地理的概念ではないということだと理解しますが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

岡田委員 その上で、次に、安保条約と周辺事態法の関係でありますが、例えば先般の外務委員会におきまして、高野政府委員の方で、周辺事態法の三条の後方地域支援に言う安保条約の目的の達成というのは、これは安保条約六条の目的ということになる、こういうふうに答弁されているわけでございます。

しかし、私は、この三条の一号の後方地域支援だけではなくて、二号の後方地域捜索救助活動、三号の船舶検査活動、これはいずれも安保条約の中での話、つまり、そもそも周辺事態法というのは防衛協力のガイドラインの実施法でありまして、防衛協力のガイドラインというのは日米安保条約に基づく米軍に対する協力ということでありますから、一号だけじゃなくて、二号、三号も含めて、いずれも安保条約という枠の中での話だというふうに理解しますが、そういう理解で正しいでしょうか。

小渕国務大臣 二十二日の衆議院外務委員会におきます高野北米局長の答弁は、周辺事態における米軍に対する協力は日米安保条約の枠内であることを踏まえ、周辺事態が生じ得る地域であり、我が国周辺の地域について、従来の政府統一見解で明らかにしておる極東及び極東周辺との関係でお答えしたものでございますが、そのときの答弁に対しまして、いろいろとメディア等でこれを取り上げられております。もしお許しいただければ、この場で北米局長から真意を御説明させていただければありがたいと思います。

岡田委員 その御説明はしていただいて結構だと思いますが、その前に、一号、二号、三号とも安保条約の枠の中の話ですねという確認はよろしいですね。

佐藤(謙)政府委員 重複するかもしれませんけれども。

まず、周辺事態でございますけれども、周辺事態は第一条に規定してございますように、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」ということであります。

それから、安保条約との関係でございますけれども、その点については、後方地域支援に、「周辺事態に際して日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の目的の達成に寄与する活動を行っているアメリカ合衆国の軍隊」、こういう規定でございます。

それからさらに、後方地域捜索救助活動あるいは船舶検査活動に際しまして、米軍に対する後方地域支援が行われる場合、その対象となる合衆国軍隊は安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍である、こういう関係になろうかと思います。

岡田委員 時間も非常に限られておりますので、聞かれた点だけ答えていただきたいと思うのです。

今、三条の一号、二号、三号、全部安保条約の枠の中である、こういうお話がございました。?違うのですか。

佐藤(謙)政府委員 私がお答えいたしましたのは、要するに、米軍との協力の関係で、対象となる米軍というのは安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍である、こういうことを申し上げているわけでございます。

岡田委員 正確に言えばそういうことだと思います。

そこで、昨日、防衛庁長官が先般の北米局長の答弁は不正確であるというふうに言われたと報道されているのですが、これは不正確と言うべきなのか、あるいはわかりにくいと言うべきなのか、そこはどうなのでしょうか。

久間国務大臣 不正確という言葉は適切でなかったかもしれません。誤解を与えるおそれがあるのではなかろうか、そういう趣旨でございます。

要するに、周辺事態と極東ないしは極東周辺という地理的概念とを比較して、パラレルで比べるということ自体が果たして適当なものであろうかどうか、そういう意味で言ったわけでございます。

岡田委員 北米局長の御答弁は、周辺事態が生じたときに行う活動は極東ないし極東の周辺を概念的に超えることはない、そういう御趣旨の御答弁だったと思うのですが、先ほど来明らかなように、この周辺事態法で協力の対象たる米軍というのは、安保条約に基づいて活動している米軍ということでありますから、その範囲は極東及びその周辺に限られる。そういう意味では、確かに極東及びその周辺を超えることはないというのは、これはそういう言い方もできると私は思うわけですが、いかがでしょうか。

高野政府委員 先般の外務委員会で御答弁申し上げたわけでございますが、まず、この大前提は、日米の防衛協力の指針に基づきます今回の周辺事態における協力でございますから、これは日米安保条約の枠の中の協力であるということでございます。

それを、あえて安保条約の六条あるいは極東の概念との関係あるいは極東の周辺との概念でどうなるかというお尋ねでございましたので、この前のような御答弁を申し上げたわけでございますが、それは先ほど来御説明がございましたように、そもそも極東の周辺あるいは極東、それから周辺事態というものが地理的概念そのものではないということとの関係で、地理的にどういう関係になるかというような意味でこの関係をきちっとしたんだというふうにとらえられる誤解を受けたということになると、それはそういう趣旨でございませんで、あくまで安保条約の枠の中である、それを安保条約六条あるいは極東、極東の周辺の考え方と照らし合わせて説明するとそういうことになろうかということを申し上げたわけでございます。

岡田委員 ぱっと聞いて誤解を招きやすい、いろいろなことがあると思うのですが、そういう誤解を避けるためには、この周辺事態法の中に安保条約との関係というものを明文で入れるということをすればそういう誤解も生じないのじゃないか。

確かに、この条文だけを読むと、三条の一号は、安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対する云々という表現が出てくるのですが、後は出てまいりませんし、ガイドラインとのつながりで考えれば、確かに安保条約の枠の中の話である、こういう理解ができるわけですけれども、この法律の条文だけ読むと若干誤解を生じる由も確かにあるのだろうと思いますね。

したがって、この法律の中にそういう安保条約との関係をきちんと位置づけるべきじゃないか、書くべきじゃないか、それは私は前から主張しているわけですが、そういう考え方についてはいかがでしょうか。

佐藤(謙)政府委員 若干重複して恐縮でございますが、先と言われましたように、この周辺事態安全確保法の三条第一項におきまして、後方地域支援の定義といたしまして、この安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍、こう書いてございます。

それで、私、先ほど御説明しましたように、この第三条第三項におきまして、後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動に際して「その実施に伴い、それぞれ当該活動に相当する活動を行う合衆国軍隊の部隊に対して後方地域支援として行う自衛隊に属する」云々、こうございますけれども、そこでこの三条第一項第一号で定義しております後方地域支援という概念を引用しているわけでございます。

したがいまして、この後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動に際しまして行われる後方地域支援につきましても、その対象となる米軍は、安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍であるということは、法文上はそういう規定になっているわけでございます。

岡田委員 法律というのは明確でなければいかぬと思うのですね。ですから、いろいろ裏でこう書いてあって、それをつなぎ合わせるとこうなるというようなことでは非常に誤解を招くと思うのですね。

私は、後で触れますが、中国が今回の発言をとらえて言ったのもそういう意味での誤解があるのじゃないかという感じがするわけです。あくまでも安保条約の枠の中の話であるということについても、誤解があるのじゃないかという気もするわけであります。

本来、これはどういうものについて適用するかという基本の話でありますから、私は、法律の第一条か第二条に安保条約との関係という項を起こしてきちんと書くというのが親切な普通のやり方じゃないか、そういうふうに思います。この点はなおガイドライン立法の議論のときに続けさせていただきたいと思いますが、私はそういうふうにしてわかりやすく書くということが必要であるという認識をしております。

そこで、次に参りますが、中国外務省の報道局長が、先般の北米局長の答弁に対して、周辺事態が起こり得る範囲に台湾が含まれるという見解を示したものとして内政干渉であると批判したというふうに報道されております。

まず確認でありますが、先般の外務委員会におきます玄葉委員とのやりとりの中で、私も速記録を読ませていただきましたが、その中では、中国とか台湾という表現は全く出てきていないというふうに理解をしておりますが、その点についてまず確認をしたいと思います。

高野政府委員 お答え申し上げます。

先般の二十二日の外務委員会における御答弁は、先ほど申し上げましたように、周辺事態と安保条約の関係、それからさらに、それに基づく極東との関係について申し上げたとおりで、それ以上のことは申し上げておりません。

岡田委員 どこが入ってどこが入らないなどということは事前に言えない話でありまして、基準はあくまでも日本の平和と安全に重要な影響があるかどうかというところで切るわけでありますから、この中国外務省の反応はやや報道に引きずられた面もあると思いますね。

北米局長の御答弁が、台湾も含まれるというふうに直接言われたような、そういうふうに受け取られるような報道でもあったかと思いますが、いずれにしても、こういう誤解が生じるということは非常に望ましくない事態でありますので、外務省の方で中国に対してもきちんと説明をしていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

高野政府委員 繰り返してございますが、先般の私の答弁の方から、台湾とか中国といった言葉を用いていないということは確認させていただきたいと思います。

それで、二十五日、中国外交部より在中国日本国大使館に対して、周辺事態及び我が国周辺の地域に関する当方の説明について外交部発表がございましたが、あのような趣旨の申し入れがあったわけでございます。同時に、東京においても同日夕刻、在日本中国大使館に対して、我が方としてのこの問題に関する考え方を説明したところでございます。

我が方からの中国に対する説明は、周辺事態に関しての基本的な考え方、これは先ほど来御答弁申し上げておりますように、あくまでもその事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断する性格のものであるということ。それから、台湾をめぐる問題についての我が国の基本的立場、これは日中共同声明において表明しているとおり、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認した上で、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重するものであり、我が国としては、中国政府が台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると承知している。いずれにせよ、我が国としては、かかる基本的立場を堅持した上で、台湾をめぐる問題が関係当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望しているということを含めまして、中国側に説明したところでございます。

岡田委員 そこで、ちょっと追加的に幾つか確認したいと思います。

この周辺事態というのは、認定行為というのは法律上出てこなくて、基本計画を策定するということで周辺事態の認定もあわせ行うということになるのだと思いますが、その際に、これはアメリカはアメリカで判断をする、日本は日本で独自に判断するということでありますから、例えば米国が周辺事態であるということでいろいろな米軍の活動が始まった場合にも、日本としては、これは我が国の平和と安全に重要な影響があるとは言えないということで周辺事態に該当しない、したがって、米軍に対する後方地域支援その他の活動はやらない、頭の体操でありますけれども、こういうことはあり得る、こういう認識でよろしいですね。

高野政府委員 ガイドラインにおける周辺事態において、日米両国は適切な措置をとり、協力を行うということになっております。日米両国は、このような事態の発生が予想される状況下、情報交換とか政策協議を強化するということになると考えられますので、周辺事態についての共通の認識が得られるようその過程で努力するということになると思います。そういうことから申し上げますと、実際上、その意味での認識の差が出てくるということは想定し得ないというふうに考えております。

いずれにいたしましても、我が国として、この周辺事態をどう考える、判断するかということは、今回、国会へ御提出した周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案にございますとおり、周辺事態が発生しているという判断のもとに、この法律案に基づき、特定の対応措置を実施する必要があると認められる場合には基本計画案を策定し、これを閣議決定するということで、これはあくまで自主的に我が国としてするということでございます。

岡田委員 それから、この周辺事態に該当する場合に、二条では、政府は周辺事態に際して適切かつ迅速に後方地域支援等を実施し、我が国の平和及び安全の確保に努めるものとする、こういう規定がありますが、当然を前提にしているのかどうかわかりませんが、私はここで抜けているなと思いますのは、この周辺事態に該当する、つまり我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生したとしても、それ自身は相対的な概念でありますから、一〇〇%ということはないわけで、程度の問題ですね。

したがって、それ以外に、短期的にはその周辺事態に対処した方がいいのだけれども、より中長期的な観点から考えたときに、例えば当該国との長期的な友好関係とかそういうものも含めて、場合によっては、形式的には周辺事態に当たるけれども我が国としてはそういった活動はしない、つまり計画はつくらない、こういうことも論理的にはあるのだ。つまり、国益という観点から見て、我が国に及ぼす平和及び安全の確保ということよりも重いような場合には基本計画はつくらないことはあり得るというふうに思うのですが、この点はいかがでしょうか。

佐藤(謙)政府委員 私どもの考え方としては、やはり我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態が発生している以上、それに対して必要な対応措置を講ずる必要があるということで、いわばそれは一体と申しましょうか、そういう考え方で対応することが適当であろう、こういうふうに考えているわけでございます。

岡田委員 これは政治家の判断の問題ですから、大臣に御答弁いただきたいと思うのですけれども、そういうものも含めて周辺事態という定義で読んでしまうという考え方もできますが、私は国益ということを考えたときに、多少我が国の平和及び安全に影響が及ぶとしても、我が国の自衛隊その他が活動することによってより大きな国益が損なわれるような場合というのはある。したがって、そういう場合には、あえて行動をとらない、あるいは三つの類型の中の一定の部分はとらないということは十分あり得ることだと思うのですが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 この法律あるいはその前のガイドラインもそうですけれども、キーワードとして我が国の平和と安全に重要な影響がある場合、そういうような表現をしているわけでございまして、この「重要な」というキーワードがありますので、いろいろなことを総合的に考えて、我が国の平和と安全に重要であるかどうかを判断して対処するということでございます。

安保条約の場合は、例えば極東の平和と安全に重要なという、重要という言葉は入っておりません。それに対してここは入っているわけでございますので、我が国が自主的にいろいろな判断も加え得るというようなことは、そこでやり得るのではないかと思っております。

岡田委員 これもまた後ほどゆっくり議論したいと思います。

次に、自衛隊法の改正でありますが、今回、船舶、艦船等も自衛隊法の改正によって邦人救助に使うことができることになるということなのですが、現在の自衛隊法九十五条で「武器等の防護のための武器の使用」という規定がありますね。この規定は、その場合にも適用になるのでしょうか。

そして、もしなるとすれば、従来PKO関連の法案審議の中で、政府が御答弁された自然権的な権利だから武器の使用は武力行使にはならないという説明と整合性がとれなくなると私は思うのですが、いかがでしょうか。

太田(洋)政府委員 お答え申し上げます。

現在、自衛隊法百条の八についての改正をお願いしております。今回、この点につきまして、自衛隊の航空機だけが現行法では輸送に充てられることになっておりますけれども、この改正によりますと、自衛隊の船舶等もこれに充てることができるようになります。

その際、その船舶について、通常なかなか考えにくい事態でございますけれども、この船舶が航行しているような場合に、自衛隊法の九十五条、これは自衛隊の保有しております船舶、航空機その他の装備品に対する攻撃が万々が一ございました場合について、この警護に当たる自衛官がそれを守るために武器を使用することができるというような根拠でございまして、今回も、この艦船の問題につきましてそういう万々が一の事態がありました場合には、この九十五条の適用が排除されないというふうに考えております。

岡田委員 私は理由を聞いているのです。つまり、自然権的権利という従来のPKOのときの御説明でいけば、自衛隊の装備を守るというのは自然権的権利なのかという、そこのところを聞いているわけです。いかがなのでしょうか。

太田(洋)政府委員 端的に申し上げます。

PKO法の場合には、隊員個人の生命身体を防護するというためのものでございまして、これは一言で申し上げれば、自然権的な権利というふうに解しております。

一方、自衛隊法の九十五条は、自衛隊の持っております艦船、航空機等の装備品、これは我が国を防衛するための重要な手段でございます。これを守るためということでございまして、おのずからちょっと違う法的な考え方から出ておることでございまして、別に考えていただきたいと思います。

岡田委員 時間が参りましたので、終わりますが、私は国内でそういう装備品を守るために武器を使用するというのはいいと思いますが、九条は海外における武力行使を原則として禁じているという考え方に立てば、これは少しはみ出しているというふうに考えざるを得ないのじゃないかというふうに考えております。なお引き続き議論したいと思います。

終わります。




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